JP3642524B2 - 鑑賞用色変わり造形物 - Google Patents
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Description
【０００１】
【発明の属する技術分野】
本発明は、造花や人形，置物などに用いられる造形物に関し、特に、その表面の色の変化を楽しめるようにした鑑賞用色変わり造形物に関する。
【０００２】
【従来の技術】
従来、鑑賞用色変わり造花として本発明者の開発したもの（特願平１０−２４９０１４号）があり、一部に水溶性の染料を仕込まれた吸水部材製の造花を容器内に立てて、同容器に少量の水を注入することにより、毛細管現象で上記造花に吸い上げられる水が、上記染料を溶かして、上記造花を着色するようになっている。
【０００３】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上述のような造花のごとき造形物について、更に色の変化を多様化したり文字を浮き出させたりすることにより、鑑賞効果を十分に高められるようにした鑑賞用色変わり造形物を提供することを課題とする。
【０００４】
【課題を解決するための手段】
前述の課題を解決するため、本発明の鑑賞用色変わり造形物は、容器の内底部に載置される造形物であって、同造形物の表面層の少なくとも一部が淡色（白色またはクリーム色などの淡色）の吸水物質からなる吸水表面層として形成され、上記容器に水を入れた際に上記吸水表面層まで吸水されるための水路が形成されて、同水路の一部に水溶性の染料が仕込まれるとともに、上記吸水表面層の表面に上記淡色と同じ色の非水溶性インキで描かれた絵または文字が記載されており、上記造形物を緩やかに覆って周囲空気層を形成しうる透明材製の覆い部材を備え、同覆い部材の一部に開度調整可能の開口部が設けられていることを特徴としている。
【０００５】
上述の本発明の鑑賞用色変わり造形物では、造形物の吸水表面層における絵または文字が、上記吸水表面層の色と同じ淡色で記載されているので、視認性に乏しい隠れた状態になっているが、上記容器に注水すると、上記水路を経由して上記吸水表面層に吸い上げられる水により上記水溶性の染料が溶けて拡散し、上記非水溶性インキで描かれた絵または文字を浮き出させるようになる。したがって、この造形物を贈り物として用いた場合、贈られた者に絵やメッセージを伝えることができる。
【０００６】
また、本発明の鑑賞用色変わり造形物は、容器の内底部に載置される造形物であって、同造形物の表面層の少なくとも一部が淡色の吸水物質からなる吸水表面層として形成され、上記容器に水を入れた際に上記吸水表面層まで吸水されるための水路が形成されるとともに、同水路の一部に水溶性の染料が仕込まれて、同染料が相互に浸透速度の異なる複数の種類の水溶性染料の混合染料としての組成を有しており、上記造形物を緩やかに覆って周囲空気層を形成しうる透明材製の覆い部材を備え、同覆い部材の一部に開度調整可能の開口部が設けられていることを特徴としている。
【０００７】
このように、造形物の表面層における吸水表面層へ到る水路に仕込まれた水溶性の染料が、相互に浸透速度の異なる複数の種類の染料の混合染料としての組成を有している場合は、上記容器への注水により上記水路に沿い吸い上げられた水で浸透速度の大きい染料（例えば青い染料）が先行して溶け出しながら上記吸水表面層を染めてゆき、ついで浸透速度の小さい染料（例えば黄色の染料）が遅れて溶けて上記吸水表面層に沿い緩やかに進行しながら、先行した染料と混合して、両染料（例えば青い染料と黄色の染料）とは異なる色（例えば緑色）に順次変色させるようになり、このようにして造形物における多様な色の変化を楽しむことが可能になる。
【０００８】
さらに、本発明の鑑賞用色変わり造形物は、容器の内底部に載置される造形物であって、同造形物の表面層の少なくとも一部が淡色の吸水物質からなる吸水表面層として形成され、上記容器に水を入れた際に上記吸水表面層まで吸水されるための水路が形成されて、同水路に、第１の水溶性染料と、水溶性のコーティング材を施された第２の水溶性染料とが仕込まれており、上記造形物を緩やかに覆って周囲空気層を形成しうる透明材製の覆い部材を備え、同覆い部材の一部に開度調整可能の開口部が設けられていることを特徴としている。
【０００９】
上述の本発明の鑑賞用色変わり造形物では、造形物の吸水表面層へ到る水路の上部と下部とにそれぞれ第１の水溶性染料と第２の水溶性染料とが仕込まれて、下部の第２の水溶性染料には水溶性のコーティング材が施されているので、容器内の水が上記水路に沿って吸い上げられてゆく際に、上記コーティング材が溶け去るまでは第２の水溶性染料は溶け出さないので、上部の第１の水溶性染料が先に溶けて上記造形物の吸水表面層を着色する。ついで、上記コーティング材が溶け去ってから上記第２の水溶性染料が溶け出して着色を開始し、その上昇に伴い上記第１の水溶性染料による着色部分へ第２の水溶性染料が到達することにより、混合色を発生するようになるので、造形物の表面における色彩の変化が著しく多様化されるようになる。
【００１０】
また、上述の本発明の各鑑賞用色変わり造形物は、上記造形物を緩やかに覆って周囲空気層を形成しうる透明材製の覆い部材を備え、同覆い部材の一部に開度調整可能の開口部が設けられているので、同開口部の開度調整により上記造形物の周囲空気層の湿度を変化させることができるようになり、これに伴い上記造形物の吸水表面層における水溶性染料の移動が様々な形態で行われるようになって、同造形物の表面における色彩の多様な変化が、透明な上記覆い部材を通して観察できるようになる。
【００１１】
【発明の実施の形態】
以下、図面により本発明の実施形態について説明すると、図１は本発明の一実施形態としての鑑賞用色変わり造形物を示す縦断面図、図２は図１のＡ−Ａ矢視図である。
【００１２】
図１に示すように、上部の開いた皿状の容器１の内底部に、造形物としての造花２が立設載置されており、造花２は紙，パルプ，発泡樹脂などの吸水物質からなる花弁２ａと、同花弁２ａに水分を送給しうる多孔質材で作られた水路２ｂとを備えるとともに、同水路２ｂを取り囲む紙などの吸水物質からなる茎２ｃおよび葉２ｄを備えて構成されている。そして、水路２ｂと茎２ｃとの間には不浸透性の円筒状仕切部材３が設けられている。
【００１３】
造花２は、初期状態では白色またはクリーム色などの淡色を有しているが、水路２ｂの上部には花弁２ａに彩色を与えるための水溶性の第１の染料（例えば赤色染料）４ａが仕込まれており、水路２ｂの下部には水溶性の第２の染料（例えば青色染料）４ｃが外周面に水溶性のコーティング層４ｄを施されるようにして仕込まれている。また、茎２ｃの下部には、浸透速度の異なる青色と黄色の水溶性染料の混合染料４ｂが仕込まれている。
【００１４】
さらに、容器１および造花２を緩やかに覆って周囲空気層を形成しうる透明なガラスまたはプラスチック製の覆い部材５が設けられ、同覆い部材５の一部に開度調整可能の扇形開口部６（図２参照）が設けられている。
【００１５】
本実施形態では、全開時に開口部６に整合しうる開口７ａを備えた回転可能の円筒状つまみ７が、扇形開口部６の円弧状部に沿う円筒状周縁部６ａに嵌め込まれている。
【００１６】
上述のような造形物において、本実施形態では、吸水表面層を有する葉２ｄの表面に、葉２ｄの初期の淡色と同じ色の非水溶性インキ（例えば油性インキ）で描かれた絵または文字２ｅが記載されている。
【００１７】
上述の第１実施形態の鑑賞用色変わり造形物では、葉２ｄの吸水表面層における絵または文字２ｅが、上記吸水表面層の色と同じ淡色で記載されているので、視認性に乏しい隠れた状態になっているが、容器１に水10を注入すると、水路としての茎２ｃを経由して葉２ｄの吸水表面層に吸い上げられる水により水溶性の染料４ｂが溶けて拡散し、非水溶性インキで描かれた絵または文字２ｅを浮き出させるようになる。したがって、この造形物を贈り物として用いた場合、贈られた者に絵やメッセージを伝えることができる。
【００１８】
そして、染料４ｂが、相互に浸透速度の異なる青色と黄色の各染料の混合染料としての組成を有しているので、茎２ｃの下部から吸い上げられた水で浸透速度の大きい青色の染料が先行して溶け出しながら上記吸水表面層を染めてゆき、ついで浸透速度の小さい黄色の染料が遅れて溶けて上記吸水表面層に沿い緩やかに進行しながら、先行した染料と混合して、両染料とは異なる色の緑色に変色させるようになり、このようにして造形物における多様な色の変化を楽しむことが可能になる。
【００１９】
さらに、花弁２ａの吸水表面層へ到る水路２ｂの上部と下部とにそれぞれ第１の水溶性染料（赤色）４ａと第２の水溶性染料（青色）４ｃとが仕込まれるが、下部の第２の水溶性染料４ｃには水溶性のコーティング材４ｄが施されているので、容器１内の水が水路２ｂに沿って吸い上げられてゆく際に、コーティング材４ｄが溶け去るまでは第２の水溶性染料４ｃは溶け出さないので、第１の水溶性染料４ａが先に溶けて花弁２ａの吸水表面層を赤色に着色する。ついで、コーティング材４ｄが溶け去ってから、第２の水溶性染料（青色）４ｃが溶け出して着色を開始し、その上昇に伴い第１の水溶性染料４ａによる着色部分へ第２の染料４ｃが到達することにより、順次混合色（紫色）を発生するようになるので、造形物の表面における色彩の変化が著しく多様化されるようになる。
【００２０】
さらに、造形物としての造花２を覆う覆い部材５が設けられて、同覆い部材５の一部に開度調整可能の開口部６が設けられるので、開口部６の開度調整により造花２の周囲空気層の湿度を変化させることができるようになり、これに伴い造花２の吸水表面層における染料の移動が様々な形態で行われるようになって、造花２の表面における色彩の多様な変化が、透明な覆い部材５を通して観察できるようになる。
【００２１】
本実施形態の造形物における吸水表面層は、その吸水性により外気中の煤煙などに接触すると汚れを生じる恐れがあるが、同吸水表面層の表面の主要部などに、クリヤラッカーなどの透明な不浸透性コーティング層が施されると、清掃が容易となり、また、その透明性により上記吸水表面層における色の変化の視認に支障をきたすことはない。
【００２２】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明の鑑賞用色変わり造形物によれば次のような効果が得られる。
(1) 造形物の吸水表面層における絵または文字が、上記吸水表面層の色と同じ淡色で記載されているので、視認性に乏しい隠れた状態になっているが、上記造形物を載置した容器に注水すると、水路を経由して上記吸水表面層に吸い上げられる水により上記水路に仕込まれた水溶性の染料が溶けて拡散し、上記非水溶性インキで描かれた絵または文字を浮き出させるようになる。したがって、この造形物を贈り物として用いた場合、贈られた者に絵やメッセージを伝えることができる。(請求項１)
(2) 造形物の表面層における吸水表面層へ到る水路に仕込まれた水溶性の染料が、相互に浸透速度の異なる複数の種類の染料の混合染料としての組成を有している場合は、上記容器への注水により上記水路に沿い吸い上げられた水で浸透速度の大きい染料（例えば青い染料）が先行して溶け出しながら上記吸水表面層を染めてゆき、ついで浸透速度の小さい染料（例えば黄色の染料）が遅れて溶けて上記吸水表面層に沿い緩やかに進行しながら、先行した染料と混合して、両染料（例えば青い染料と黄色の染料）とは異なる色（例えば緑色）に順次変色させるようになり、このようにして造形物における多様な色の変化を楽しむことが可能になる。（請求項２）
(3) 造形物の吸水表面層へ到る水路にそれぞれ第１の水溶性染料と第２の水溶性染料とが仕込まれて、第２の水溶性染料には水溶性のコーティング材が施されていると、容器内の水が上記水路に沿って吸い上げられてゆく際に、上記コーティング材が溶け去るまでは第２の水溶性染料は溶け出さないので、上部の第１の水溶性染料が先に溶けて上記造形物の吸水表面層を着色する。ついで、上記コーティング材が溶け去ってから上記第２の水溶性染料が溶け出して着色を開始し、その上昇に伴い上記第１の水溶性染料による着色部分へ第２の水溶性染料が到達することにより、混合色を発生するようになるので、造形物の表面における色彩の変化が著しく多様化されるようになる。（請求項３）
(4) 上記造形物を覆う透明材製の覆い部材が設けられて、同覆い部材の一部に開度調整可能の開口部が設けられるので、同開口部の開度調整により上記造形物の周囲空気層の湿度を変化させることができるようになり、これに伴い上記造形物の吸水表面層における水溶性染料の移動が様々な形態で行われるようになって、同造形物の表面における色彩の多様な変化が、透明な上記覆い部材を通して観察できるようになる。（請求項１〜３）
【図面の簡単な説明】
【図１】 本発明の一実施形態としての鑑賞用色変わり造形物を示す縦断面図である。
【図２】 図１のＡ−Ａ矢視図である。
【符号の説明】
１ 容器
２ 造花
２ａ 花弁
２ｂ 水路
２ｃ 茎
２ｄ 葉
２ｅ 文字
３ 円筒状仕切部材
４ａ 第１の水溶性染料
４ｂ 水溶性混合染料
４ｃ 第２の水溶性染料
４ｄ 水溶性コーティング層
５ 覆い部材
６ 扇形開口部
６ａ 円筒状周縁部
７ 円筒状つまみ
７ａ 開口
10 水
【発明の属する技術分野】
本発明は、造花や人形，置物などに用いられる造形物に関し、特に、その表面の色の変化を楽しめるようにした鑑賞用色変わり造形物に関する。
【０００２】
【従来の技術】
従来、鑑賞用色変わり造花として本発明者の開発したもの（特願平１０−２４９０１４号）があり、一部に水溶性の染料を仕込まれた吸水部材製の造花を容器内に立てて、同容器に少量の水を注入することにより、毛細管現象で上記造花に吸い上げられる水が、上記染料を溶かして、上記造花を着色するようになっている。
【０００３】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上述のような造花のごとき造形物について、更に色の変化を多様化したり文字を浮き出させたりすることにより、鑑賞効果を十分に高められるようにした鑑賞用色変わり造形物を提供することを課題とする。
【０００４】
【課題を解決するための手段】
前述の課題を解決するため、本発明の鑑賞用色変わり造形物は、容器の内底部に載置される造形物であって、同造形物の表面層の少なくとも一部が淡色（白色またはクリーム色などの淡色）の吸水物質からなる吸水表面層として形成され、上記容器に水を入れた際に上記吸水表面層まで吸水されるための水路が形成されて、同水路の一部に水溶性の染料が仕込まれるとともに、上記吸水表面層の表面に上記淡色と同じ色の非水溶性インキで描かれた絵または文字が記載されており、上記造形物を緩やかに覆って周囲空気層を形成しうる透明材製の覆い部材を備え、同覆い部材の一部に開度調整可能の開口部が設けられていることを特徴としている。
【０００５】
上述の本発明の鑑賞用色変わり造形物では、造形物の吸水表面層における絵または文字が、上記吸水表面層の色と同じ淡色で記載されているので、視認性に乏しい隠れた状態になっているが、上記容器に注水すると、上記水路を経由して上記吸水表面層に吸い上げられる水により上記水溶性の染料が溶けて拡散し、上記非水溶性インキで描かれた絵または文字を浮き出させるようになる。したがって、この造形物を贈り物として用いた場合、贈られた者に絵やメッセージを伝えることができる。
【０００６】
また、本発明の鑑賞用色変わり造形物は、容器の内底部に載置される造形物であって、同造形物の表面層の少なくとも一部が淡色の吸水物質からなる吸水表面層として形成され、上記容器に水を入れた際に上記吸水表面層まで吸水されるための水路が形成されるとともに、同水路の一部に水溶性の染料が仕込まれて、同染料が相互に浸透速度の異なる複数の種類の水溶性染料の混合染料としての組成を有しており、上記造形物を緩やかに覆って周囲空気層を形成しうる透明材製の覆い部材を備え、同覆い部材の一部に開度調整可能の開口部が設けられていることを特徴としている。
【０００７】
このように、造形物の表面層における吸水表面層へ到る水路に仕込まれた水溶性の染料が、相互に浸透速度の異なる複数の種類の染料の混合染料としての組成を有している場合は、上記容器への注水により上記水路に沿い吸い上げられた水で浸透速度の大きい染料（例えば青い染料）が先行して溶け出しながら上記吸水表面層を染めてゆき、ついで浸透速度の小さい染料（例えば黄色の染料）が遅れて溶けて上記吸水表面層に沿い緩やかに進行しながら、先行した染料と混合して、両染料（例えば青い染料と黄色の染料）とは異なる色（例えば緑色）に順次変色させるようになり、このようにして造形物における多様な色の変化を楽しむことが可能になる。
【０００８】
さらに、本発明の鑑賞用色変わり造形物は、容器の内底部に載置される造形物であって、同造形物の表面層の少なくとも一部が淡色の吸水物質からなる吸水表面層として形成され、上記容器に水を入れた際に上記吸水表面層まで吸水されるための水路が形成されて、同水路に、第１の水溶性染料と、水溶性のコーティング材を施された第２の水溶性染料とが仕込まれており、上記造形物を緩やかに覆って周囲空気層を形成しうる透明材製の覆い部材を備え、同覆い部材の一部に開度調整可能の開口部が設けられていることを特徴としている。
【０００９】
上述の本発明の鑑賞用色変わり造形物では、造形物の吸水表面層へ到る水路の上部と下部とにそれぞれ第１の水溶性染料と第２の水溶性染料とが仕込まれて、下部の第２の水溶性染料には水溶性のコーティング材が施されているので、容器内の水が上記水路に沿って吸い上げられてゆく際に、上記コーティング材が溶け去るまでは第２の水溶性染料は溶け出さないので、上部の第１の水溶性染料が先に溶けて上記造形物の吸水表面層を着色する。ついで、上記コーティング材が溶け去ってから上記第２の水溶性染料が溶け出して着色を開始し、その上昇に伴い上記第１の水溶性染料による着色部分へ第２の水溶性染料が到達することにより、混合色を発生するようになるので、造形物の表面における色彩の変化が著しく多様化されるようになる。
【００１０】
また、上述の本発明の各鑑賞用色変わり造形物は、上記造形物を緩やかに覆って周囲空気層を形成しうる透明材製の覆い部材を備え、同覆い部材の一部に開度調整可能の開口部が設けられているので、同開口部の開度調整により上記造形物の周囲空気層の湿度を変化させることができるようになり、これに伴い上記造形物の吸水表面層における水溶性染料の移動が様々な形態で行われるようになって、同造形物の表面における色彩の多様な変化が、透明な上記覆い部材を通して観察できるようになる。
【００１１】
【発明の実施の形態】
以下、図面により本発明の実施形態について説明すると、図１は本発明の一実施形態としての鑑賞用色変わり造形物を示す縦断面図、図２は図１のＡ−Ａ矢視図である。
【００１２】
図１に示すように、上部の開いた皿状の容器１の内底部に、造形物としての造花２が立設載置されており、造花２は紙，パルプ，発泡樹脂などの吸水物質からなる花弁２ａと、同花弁２ａに水分を送給しうる多孔質材で作られた水路２ｂとを備えるとともに、同水路２ｂを取り囲む紙などの吸水物質からなる茎２ｃおよび葉２ｄを備えて構成されている。そして、水路２ｂと茎２ｃとの間には不浸透性の円筒状仕切部材３が設けられている。
【００１３】
造花２は、初期状態では白色またはクリーム色などの淡色を有しているが、水路２ｂの上部には花弁２ａに彩色を与えるための水溶性の第１の染料（例えば赤色染料）４ａが仕込まれており、水路２ｂの下部には水溶性の第２の染料（例えば青色染料）４ｃが外周面に水溶性のコーティング層４ｄを施されるようにして仕込まれている。また、茎２ｃの下部には、浸透速度の異なる青色と黄色の水溶性染料の混合染料４ｂが仕込まれている。
【００１４】
さらに、容器１および造花２を緩やかに覆って周囲空気層を形成しうる透明なガラスまたはプラスチック製の覆い部材５が設けられ、同覆い部材５の一部に開度調整可能の扇形開口部６（図２参照）が設けられている。
【００１５】
本実施形態では、全開時に開口部６に整合しうる開口７ａを備えた回転可能の円筒状つまみ７が、扇形開口部６の円弧状部に沿う円筒状周縁部６ａに嵌め込まれている。
【００１６】
上述のような造形物において、本実施形態では、吸水表面層を有する葉２ｄの表面に、葉２ｄの初期の淡色と同じ色の非水溶性インキ（例えば油性インキ）で描かれた絵または文字２ｅが記載されている。
【００１７】
上述の第１実施形態の鑑賞用色変わり造形物では、葉２ｄの吸水表面層における絵または文字２ｅが、上記吸水表面層の色と同じ淡色で記載されているので、視認性に乏しい隠れた状態になっているが、容器１に水10を注入すると、水路としての茎２ｃを経由して葉２ｄの吸水表面層に吸い上げられる水により水溶性の染料４ｂが溶けて拡散し、非水溶性インキで描かれた絵または文字２ｅを浮き出させるようになる。したがって、この造形物を贈り物として用いた場合、贈られた者に絵やメッセージを伝えることができる。
【００１８】
そして、染料４ｂが、相互に浸透速度の異なる青色と黄色の各染料の混合染料としての組成を有しているので、茎２ｃの下部から吸い上げられた水で浸透速度の大きい青色の染料が先行して溶け出しながら上記吸水表面層を染めてゆき、ついで浸透速度の小さい黄色の染料が遅れて溶けて上記吸水表面層に沿い緩やかに進行しながら、先行した染料と混合して、両染料とは異なる色の緑色に変色させるようになり、このようにして造形物における多様な色の変化を楽しむことが可能になる。
【００１９】
さらに、花弁２ａの吸水表面層へ到る水路２ｂの上部と下部とにそれぞれ第１の水溶性染料（赤色）４ａと第２の水溶性染料（青色）４ｃとが仕込まれるが、下部の第２の水溶性染料４ｃには水溶性のコーティング材４ｄが施されているので、容器１内の水が水路２ｂに沿って吸い上げられてゆく際に、コーティング材４ｄが溶け去るまでは第２の水溶性染料４ｃは溶け出さないので、第１の水溶性染料４ａが先に溶けて花弁２ａの吸水表面層を赤色に着色する。ついで、コーティング材４ｄが溶け去ってから、第２の水溶性染料（青色）４ｃが溶け出して着色を開始し、その上昇に伴い第１の水溶性染料４ａによる着色部分へ第２の染料４ｃが到達することにより、順次混合色（紫色）を発生するようになるので、造形物の表面における色彩の変化が著しく多様化されるようになる。
【００２０】
さらに、造形物としての造花２を覆う覆い部材５が設けられて、同覆い部材５の一部に開度調整可能の開口部６が設けられるので、開口部６の開度調整により造花２の周囲空気層の湿度を変化させることができるようになり、これに伴い造花２の吸水表面層における染料の移動が様々な形態で行われるようになって、造花２の表面における色彩の多様な変化が、透明な覆い部材５を通して観察できるようになる。
【００２１】
本実施形態の造形物における吸水表面層は、その吸水性により外気中の煤煙などに接触すると汚れを生じる恐れがあるが、同吸水表面層の表面の主要部などに、クリヤラッカーなどの透明な不浸透性コーティング層が施されると、清掃が容易となり、また、その透明性により上記吸水表面層における色の変化の視認に支障をきたすことはない。
【００２２】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明の鑑賞用色変わり造形物によれば次のような効果が得られる。
(1) 造形物の吸水表面層における絵または文字が、上記吸水表面層の色と同じ淡色で記載されているので、視認性に乏しい隠れた状態になっているが、上記造形物を載置した容器に注水すると、水路を経由して上記吸水表面層に吸い上げられる水により上記水路に仕込まれた水溶性の染料が溶けて拡散し、上記非水溶性インキで描かれた絵または文字を浮き出させるようになる。したがって、この造形物を贈り物として用いた場合、贈られた者に絵やメッセージを伝えることができる。(請求項１)
(2) 造形物の表面層における吸水表面層へ到る水路に仕込まれた水溶性の染料が、相互に浸透速度の異なる複数の種類の染料の混合染料としての組成を有している場合は、上記容器への注水により上記水路に沿い吸い上げられた水で浸透速度の大きい染料（例えば青い染料）が先行して溶け出しながら上記吸水表面層を染めてゆき、ついで浸透速度の小さい染料（例えば黄色の染料）が遅れて溶けて上記吸水表面層に沿い緩やかに進行しながら、先行した染料と混合して、両染料（例えば青い染料と黄色の染料）とは異なる色（例えば緑色）に順次変色させるようになり、このようにして造形物における多様な色の変化を楽しむことが可能になる。（請求項２）
(3) 造形物の吸水表面層へ到る水路にそれぞれ第１の水溶性染料と第２の水溶性染料とが仕込まれて、第２の水溶性染料には水溶性のコーティング材が施されていると、容器内の水が上記水路に沿って吸い上げられてゆく際に、上記コーティング材が溶け去るまでは第２の水溶性染料は溶け出さないので、上部の第１の水溶性染料が先に溶けて上記造形物の吸水表面層を着色する。ついで、上記コーティング材が溶け去ってから上記第２の水溶性染料が溶け出して着色を開始し、その上昇に伴い上記第１の水溶性染料による着色部分へ第２の水溶性染料が到達することにより、混合色を発生するようになるので、造形物の表面における色彩の変化が著しく多様化されるようになる。（請求項３）
(4) 上記造形物を覆う透明材製の覆い部材が設けられて、同覆い部材の一部に開度調整可能の開口部が設けられるので、同開口部の開度調整により上記造形物の周囲空気層の湿度を変化させることができるようになり、これに伴い上記造形物の吸水表面層における水溶性染料の移動が様々な形態で行われるようになって、同造形物の表面における色彩の多様な変化が、透明な上記覆い部材を通して観察できるようになる。（請求項１〜３）
【図面の簡単な説明】
【図１】 本発明の一実施形態としての鑑賞用色変わり造形物を示す縦断面図である。
【図２】 図１のＡ−Ａ矢視図である。
【符号の説明】
１ 容器
２ 造花
２ａ 花弁
２ｂ 水路
２ｃ 茎
２ｄ 葉
２ｅ 文字
３ 円筒状仕切部材
４ａ 第１の水溶性染料
４ｂ 水溶性混合染料
４ｃ 第２の水溶性染料
４ｄ 水溶性コーティング層
５ 覆い部材
６ 扇形開口部
６ａ 円筒状周縁部
７ 円筒状つまみ
７ａ 開口
10 水
Claims (3)
- 容器の内底部に載置される造形物であって、同造形物の表面層の少なくとも一部が淡色の吸水物質からなる吸水表面層として形成され、上記容器に水を入れた際に上記吸水表面層まで吸水されるための水路が形成されて、同水路の一部に水溶性の染料が仕込まれるとともに、上記吸水表面層の表面に上記淡色と同じ色の非水溶性インキで描かれた絵または文字が記載されており、上記造形物を緩やかに覆って周囲空気層を形成しうる透明材製の覆い部材を備え、同覆い部材の一部に開度調整可能の開口部が設けられていることを特徴とする、鑑賞用色変わり造形物。
- 容器の内底部に載置される造形物であって、同造形物の表面層の少なくとも一部が淡色の吸水物質からなる吸水表面層として形成され、上記容器に水を入れた際に上記吸水表面層まで吸水されるための水路が形成されるとともに、同水路の一部に水溶性の染料が仕込まれて、同染料が相互に浸透速度の異なる複数の種類の水溶性染料の混合染料としての組成を有しており、上記造形物を緩やかに覆って周囲空気層を形成しうる透明材製の覆い部材を備え、同覆い部材の一部に開度調整可能の開口部が設けられていることを特徴とする、鑑賞用色変わり造形物。
- 容器の内底部に載置される造形物であって、同造形物の表面層の少なくとも一部が淡色の吸水物質からなる吸水表面層として形成され、上記容器に水を入れた際に上記吸水表面層まで吸水されるための水路が形成されて、同水路に、第１の水溶性染料と、水溶性のコーティング材を施された第２の水溶性染料とが仕込まれており、上記造形物を緩やかに覆って周囲空気層を形成しうる透明材製の覆い部材を備え、同覆い部材の一部に開度調整可能の開口部が設けられていることを特徴とする、鑑賞用色変わり造形物。
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