JP3642136B2 - 肉盛りバルブシートおよびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、エンジン用バルブシート(弁座)として好適に利用される肉盛りを施したバルブシートおよびその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、このような肉盛りを施したバルブシートとしては、銅合金粉末をアルミニウム鋳造合金製のシリンダーヘッドのバルブシート部に肉盛りして形成した肉盛りバルブシートがある(例えば、特開平8−35027号,特開昭62−150014号など)。
【0003】
また、肉盛りによることなく工業的に汎用されているバルブシートとしては、鉄基焼結合金製のバルブシートリングをシリンダーヘッドのバルブシート部に圧入して形成した圧入バルブシートがある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、これらのバルブシートにおいては、シート円周方向に沿った材料の組織が均一であったため、円周方向のどの部位においても耐摩耗性が同等であったことから、実際のエンジンを用いたバルブフェースとバルブシートの摩耗評価試験では、シート円周上で最も高温になるエンジン点火プラグに近い部分が、他の部分に比べて大きく摩耗する傾向が見られた。
【0005】
特に、同一の合金粉末でレーザ肉盛りしたバルブシートにおいて耐摩耗性をより一層向上させることを狙って硬質析出物を大きく析出させた場合には、レーザ肉盛り層が脆くなり、材料欠陥を発生しやすくなるため、点火プラグに遠い部分において必要とされる点火プラグに近い部分の摩耗性向上との相反する特性を如実にバランスさせることができるかという技術課題があった。
【0006】
【発明の目的】
本発明は、上記した従来の技術課題を解決するためになされたものであって、エンジンのシリンダーヘッドのバルブシートにおける耐摩耗性を大幅に向上させると共に、材料欠陥の発生が少ない生産性の高いエンジン用肉盛りバルブシートを提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
そこで、本発明者らは、アルミニウム鋳造合金からなるシリンダーヘッドのバルブシート部に銅合金粉末等の肉盛り合金粉末をレーザ肉盛りする一連の実験とエンジン実機摩耗評価試験を鋭意行うことにより、特定部分における優れた耐摩耗性と材料欠陥の発生しにくい生産性の高いバルブシートを得る試みを重ねたところ、円周方向に沿って硬質析出物の平均粒径が異なる組織を有する肉盛りバルブシートとするのが好ましいことを見いだした。
【0008】
すなわち、本発明に係わる肉盛りバルブシートは、請求項1に記載しているように、円周方向に沿って硬質析出物の平均粒径が異なる組織を有するものとしたことを特徴としている。
【0009】
そして、本発明に係わる肉盛りバルブシートの実施態様においては、請求項2に記載しているように、エンジン点火プラグに近い部分に平均粒径の大きい硬質析出物が分散した組織を有するものとすることができる。
【0010】
同じく、本発明に係わる肉盛りバルブシートの実施態様においては、請求項3に記載しているように、エンジン点火プラグに最も近い部分を中心に円周角で30°の範囲以上90°の範囲以下の部分に平均粒径の大きい硬質析出物が分散した組織を有するものとすることができる。
【0011】
同じく、本発明に係わる肉盛りバルブシートの実施態様においては、請求項4に記載しているように、シリンダーヘッドがアルミニウム鋳造合金からなりかつシリンダーヘッドのバルブシート肉盛り部が銅合金からなっているものとすることができる。
【0012】
同じく、本発明に係わる肉盛りバルブシートの実施態様においては、請求項5に記載しているように、平均粒径の大きい硬質析出物の平均粒径が50μm以上100μm以下である組織をエンジン点火プラグに最も近い円周部分に有し、エンジン点火プラグに最も近い部分を中心に円周角で30°の範囲以上90°の範囲以下の部分以外の部分の組織は硬質析出物の平均粒径が10μm以上30μm以下であるものとすることができる。
【0013】
本発明に係わる肉盛りバルブシートの製造方法は、請求項6に記載しているように、肉盛りに際してレーザビーム,プラズマアークなどの局所的加熱源を用い、円周方向に沿って硬質析出物の平均粒径が異なる組織に肉盛りするようにしたことを特徴としている。
【0014】
そして、本発明に係わる肉盛りバルブシートの製造方法の実施態様においては、請求項7に記載しているように、エンジン点火プラグに近い部分に平均粒径の大きい硬質析出物が分散した組織に肉盛りするようになすことができる。
【0015】
同じく、本発明に係わる肉盛りバルブシートの製造方法の実施態様においては、請求項8に記載しているように、エンジン点火プラグに最も近い部分を中心に円周角で30°の範囲以上90°の範囲以下の部分に平均粒径の大きい硬質析出物が分散した組織に肉盛りするようになすことができる。
【0016】
同じく、本発明に係わる肉盛りバルブシートの製造方法の実施態様においては、請求項9に記載しているように、アルミニウム鋳造合金からなるシリンダーヘッドのバルブシート部に銅合金粉末を肉盛りするようになすことができる。
【0018】
同じく、本発明に係わる肉盛りバルブシートの製造方法の実施態様においては、請求項10に記載しているように、銅合金粉末として、重量%で、Al:1.0〜5.0%、元素周期律表第Va族元素のV,Nb,Taのうち1種または2種以上:0.1〜5.0%、Si:1.0〜5.0%を少なくとも含み、その他Co:10.0〜15.0%、Fe:1.0〜8.0%、Ni:10.0〜15.0%、Mn:0.5〜5.0%等を適宜に含み、残部がCuを基本組成とする粉末を用いて肉盛りするようになすことができる。
【0019】
【発明の作用】
本発明に係わる肉盛りバルブシートでは、円周方向に沿って硬質析出物の平均粒径が異なる組織を有するものとしているので、例えば、耐摩耗性に優れていることがより一層要求される部位では平均粒径の大きい硬質析出物が析出しているものにすると共に耐摩耗性が前記部位程要求されず材料欠陥がより一層少ないことが要求される部位では平均粒径がそれより小さい硬質析出物が析出しているものとすることによって、耐摩耗性向上の特性と材料欠陥が生じがたい特性をバランス良く満足するバルブシートとなる。
【0020】
そして、請求項2に記載しているように、エンジン点火プラグに近い部分に平均粒径の大きい硬質析出物が分散した組織を有するものとすることによって、耐摩耗性により一層優れていることが要求されるエンジン点火プラグに近い部分においてその耐摩耗性がより一層向上したバルブシートとなる。
【0021】
そしてまた、請求項3に記載しているように、エンジン点火プラグに最も近い部分を中心に円周角で30°の範囲以上90°の範囲以下の部分に平均粒径の大きい硬質析出物が分散した組織を有するものとすることによって、エンジン点火プラグに最も近い部分を中心に円周角で30°の範囲以上90°の範囲以下の部分で耐摩耗性がより一層向上したバルブシートとなる。
【0022】
さらに、請求項4に記載しているように、シリンダーヘッドがアルミニウム鋳造合金からなりかつシリンダーヘッドのバルブシート肉盛り部が銅合金からなるものとすることによって、シリンダーヘッド部の軽量化、ひいてはエンジンの軽量化がなされると共に、耐摩耗性に劣るアルミニウム合金製シリンダーヘッド部への銅合金の肉盛りによってバルブシートの耐摩耗性がより一層向上したものとなる。
【0023】
さらにまた、請求項5に記載しているように、平均粒径の大きい硬質析出物の平均粒径が50μm以上100μm以下である組織をエンジン点火プラグに最も近い円周部分に有し、エンジン点火プラグに最も近い部分を中心に円周角で30°の範囲以上90°の範囲以下の部分以外の部分の組織は硬質析出物の平均粒径が10μm以上30μm以下であるものとすることによって、耐摩耗性に優れていることがより一層要求される点火プラグに近い部分において耐摩耗性がより一層向上したバルブシートになると共に、エンジン点火プラグに最も近い部分を中心に円周角で30°の範囲以上90°の範囲以下の部分以外の部分においては材料欠陥の発生が少なく歩留りが良いことから生産性の向上に寄与しうるバルブシートとなる。
【0024】
本発明に係わる肉盛りバルブシートの製造方法では、肉盛りに際してレーザビーム,プラズマアークなどの局所的加熱源を用い、円周方向に沿って硬質析出物の平均粒径が異なる組織に肉盛りするようにしたから、例えば、耐摩耗性に優れていることがより一層要求される部位では平均粒径の大きい硬質析出物が析出しているものにすると共に耐摩耗性が前記部位程要求されず材料欠陥がより一層少ないことが要求される部位では平均粒径がそれより小さい硬質析出物が析出しているものとすることによって、耐摩耗性向上の特性と材料欠陥が生じがたい特性をバランス良く満足するバルブシートが製造されることとなる。また、肉盛りに際してレーザビーム,プラズマアークなどの局所的加熱源を用いたことから、熱影響部を小さくした局所的な急速加熱がなされると共に急速加熱後の自己冷却がなされることによって、上記の如く硬質析出物が適量に析出したバルブシートが製造されることとなる。
【0025】
そして、請求項7に記載しているように、エンジン点火プラグに近い部分に平均粒径の大きい硬質析出物が分散した組織に肉盛りするようになすことによって、耐摩耗性により一層優れていることが要求されるエンジン点火プラグに近い部分においてその耐摩耗性がより一層向上したバルブシートが製造されることとなる。
【0026】
そしてまた、請求項8に記載しているように、エンジン点火プラグに最も近い部分を中心に円周角で30°の範囲以上90°の範囲以下の部分に平均粒径の大きい硬質析出物が分散した組織に肉盛りするようになすことによって、エンジン点火プラグを中心に円周角で30°の範囲以上90°の範囲以下の部分で耐摩耗性がより一層向上したバルブシートが製造されることとなる。
【0027】
さらに、請求項9に記載しているように、アルミニウム鋳造合金からなるシリンダーヘッドのバルブシート部に銅合金粉末を肉盛りするようになすことによって、比重の小さいアルミニウムを素材とすることによるエンジンの軽量化がなされると共に、耐摩耗性に劣るアルミニウム合金製シリンダーヘッド部への銅合金粉末の肉盛りによって耐摩耗性により一層優れたバルブシートが製造されることとなる。
【0029】
さらにまた、請求項10に記載しているように、銅合金粉末として、重量%で、Al:1.0〜5.0%、元素周期律表第Va族元素のV,Nb,Taのうち1種または2種以上:0.1〜5.0%、Si:1.0〜5.0%を少なくとも含み、その他Co:10.0〜15.0%、Fe:1.0〜8.0%、Ni:10.0〜15.0%、Mn:0.5〜5.0%等を適宜に含み、残部がCuを基本組成とする粉末を用いて肉盛りすることによって、肉盛り部に硬質析出物が析出した耐摩耗性に優れた肉盛りバルブシートが製造されることとなる。
【0030】
【発明の効果】
本発明に係わる肉盛りバルブシートによれば、円周方向に沿って硬質析出物の平均粒径が異なる組織を有するものとしているので、例えば、耐摩耗性に優れていることがより一層要求される部位では平均粒径の大きい硬質析出物が析出しているものにすると共に耐摩耗性が前記部位程要求されず材料欠陥がより一層少ないことが要求される部位では平均粒径がそれより小さい硬質析出物が析出しているものとすることによって、耐摩耗性向上の特性と材料欠陥が生じがたい特性をバランス良く満足するバルブシートにすることが可能であるという著しく優れた効果がもたらされる。
【0031】
そして、請求項2に記載しているように、エンジン点火プラグに近い部分に平均粒径の大きい硬質析出物が分散した組織を有するものとすることによって、耐摩耗性により一層優れていることが要求されるエンジン点火プラグに近い部分においてその耐摩耗性をより一層向上させたバルブシートとすることが可能であるという著しく優れた効果がもたらされる。
【0032】
そしてまた、請求項3に記載しているように、エンジン点火プラグに最も近い部分を中心に円周角で30°の範囲以上90°の範囲以下の部分に平均粒径の大きい硬質析出物が分散した組織を有するものとすることによって、エンジン点火プラグに最も近い部分を中心に円周角で30°の範囲以上90°の範囲以下の部分で耐摩耗性がより一層向上したバルブシートとすることが可能であるという著しく優れた効果がもたらされる。
【0033】
さらに、請求項4に記載しているように、シリンダーヘッドがアルミニウム鋳造合金からなりかつシリンダーヘッドのバルブシート肉盛り部が銅合金からなるものとすることによって、シリンダーヘッド部の軽量化、ひいてはエンジンの軽量化が可能であると共に、耐摩耗性に劣るアルミニウム合金製シリンダーヘッド部への銅合金の肉盛りによってバルブシートの耐摩耗性をより一層向上したものとすることが可能であるという著しく優れた効果がもたらされる。
【0034】
さらにまた、請求項5に記載しているように、平均粒径の大きい硬質析出物の平均粒径が50μm以上100μm以下である組織をエンジン点火プラグに最も近い円周部分に有し、エンジン点火プラグに最も近い部分を中心に円周角で30°の範囲以上90°の範囲以下の部分以外の部分の組織は硬質析出物の平均粒径が10μm以上30μm以下であるものとすることによって、耐摩耗性に優れていることがより一層要求される点火プラグに近い部分において耐摩耗性がより一層向上したバルブシートにすることが可能であると共に、エンジン点火プラグに最も近い部分を中心に円周角で30°の範囲以上90°の範囲以下の部分以外の部分においては材料欠陥の発生が少なく歩留りが良いことから生産性の向上に寄与しうるバルブシートにすることが可能であるという著しく優れた効果がもたらされる。
【0035】
本発明に係わる肉盛りバルブシートの製造方法では、肉盛りに際してレーザビーム,プラズマアークなどの局所的加熱源を用い、円周方向に沿って硬質析出物の平均粒径が異なる組織に肉盛りするようにしたから、例えば、耐摩耗性に優れていることがより一層要求される部位では平均粒径の大きい硬質析出物が析出しているものにすると共に耐摩耗性が前記部位程要求されず材料欠陥がより一層少ないことが要求される部位では平均粒径がそれより小さい硬質析出物が析出しているものとすることによって、耐摩耗性向上の特性と材料欠陥が生じがたい特性をバランス良く満足するバルブシートを製造することが可能であるという著しく優れた効果がもたらされる。また、肉盛りに際してレーザビーム,プラズマアークなどの局所的加熱源を用いることから、熱影響部を小さくした局所的な急速加熱が可能であると共に急速加熱後の自己冷却が可能となることによって、上記の如く硬質析出物が適量に析出したバルブシートを製造することが可能であるという著しく優れた効果がもたらされる。
【0036】
そして、請求項7に記載しているように、エンジン点火プラグに近い部分に平均粒径の大きい硬質析出物が分散した組織に肉盛りするようになすことによって、耐摩耗性により一層優れていることが要求されるエンジン点火プラグに近い部分においてその耐摩耗性がより一層向上したバルブシートを製造することが可能であるという著しく優れた効果がもたらされる。
【0037】
そしてまた、請求項8に記載しているように、エンジン点火プラグに最も近い部分を中心に円周角で30°の範囲以上90°の範囲以下の部分に平均粒径の大きい硬質析出物が分散した組織に肉盛りするようになすことによって、エンジン点火プラグを中心に円周角で30°の範囲以上90°の範囲以下の部分で耐摩耗性がより一層向上したバルブシートを製造することが可能であるという著しく優れた効果がもたらされる。
【0038】
さらに、請求項9に記載しているように、アルミニウム鋳造合金からなるシリンダーヘッドのバルブシート部に銅合金粉末を肉盛りするようになすことによって、比重の小さいアルミニウムを素材とすることによるエンジンの軽量化が可能であると共に、耐摩耗性に劣るアルミニウム合金製シリンダーヘッド部への銅合金粉末の肉盛りによって耐摩耗性により一層優れたバルブシートを製造することが可能であるという著しく優れた効果がもたらされる。
【0040】
さらにまた、請求項10に記載しているように、銅合金粉末として、重量%で、Al:1.0〜5.0%、元素周期律表第Va族元素のV,Nb,Taのうち1種または2種以上:0.1〜5.0%、Si:1.0〜5.0%を少なくとも含み、その他Co:10.0〜15.0%、Fe:1.0〜8.0%、Ni:10.0〜15.0%、Mn:0.5〜5.0%等を適宜に含み、残部がCuを基本組成とする粉末を用いて肉盛りすることによって、肉盛り部に硬質析出物が析出した耐摩耗性に優れた肉盛りバルブシートを製造することが可能であるという著しく優れた効果がもたらされる。
【0041】
【実施例】
この実施例においては、最大出力5kWの炭酸ガスレーザを用い、アルミニウム系鋳造合金であるJIS AC2A材よりなる図1に示すアルミニウム合金製シリンダーヘッド1のシリンダーヘッドポート部1Pにある吸気側バルブシート部1Aおよび排気側バルブシート部1Eのうち、排気側バルブシート部1Eに合金肉盛りを施してバルブシート1Sを形成した場合を示すが、この実施例には限定されない。そして、この実施例において、肉盛り合金粉末としては、特開平8−35027号公報に記載の下記成分系組成を有する銅合金粉末を用いた。
【0042】
銅合金粉末組成(wt%):Cu−12.5%Co−6.4%Fe
−12.7%Ni−1.9%V−2.2%Nb−1.2%Mn
本発明の実施例において、アルミニウム合金製シリンダーヘッドのバルブシート部への合金肉盛りは、上記したように、バルブシート温度が高くなる排気側バルブシート部1Eにのみ適用したが、この際の具体的なレーザ肉盛り方法としては、表1に示す硬質粒子(硬質相)を小さく析出させる条件で肉盛り層を形成させてゆき、図1に示すように点火プラグPの付近の必要な領域で同じく表1に示す硬質粒子(硬質相)を大きく析出させる条件に切り替えて排気側バルブシート部1Eに肉盛り層を形成させた。
【0043】
【表1】
【0044】
そして、硬質粒子を小さく析出させる条件と、硬質粒子を大きく析出させる条件とにおいて切り替えのタイミングと時間を調整することにより、表3に示すように、硬質粒子が大きく析出した断面組織を有する領域(図1において円周角θ1,θ2の領域)や硬質粒子の大きさ(平均粒径)の異なる種々の排気側バルブシート部1Eを作製した。
【0045】
このうち、エンジンの摩耗評価試験用としては、各実施例および比較例において1つの条件により1つの気筒のフロント側とリヤ側の2ケの排気側バルブシート部1Eに形成し、また、肉盛りの生産性を見るための実験用としては、1台のシリンダーヘッドの排気側(実験に用いたエンジンが直列DOHC4気筒エンジンであるので2×4=)8ケ所の排気側バルブシート部1Eに形成した。
【0046】
そして、直列4気筒DOHC型エンジンシリンダーヘッドの吸気,排気バルブシート部の加工を行った凹部合計16箇所に3mm以上の厚さで肉盛りを施した。
【0047】
そして、ここで得られたシリンダーヘッド粗材に機械加工を行って所定の寸法,表面粗さに仕上げることによってバルブシート1Sに形成した。ここで、レーザ肉盛りの生産性を見るため同一材料をシリンダーヘッド1台の8箇所に肉盛りしたバルブシート部について、加工面をカラーチェックすることにより、引け巣,ポア,マイクロクラックなどといった肉盛り層の材料欠陥の有無を調べた。各材料において欠陥を発生したシート部の個数を表3にまとめて示す。
【0048】
続いて、材料欠陥の存在しない各実施例および比較例のバルブシート部を形成したシリンダーヘッドを用いて実機エンジン試験を実施した。なお、1台のシリンダーヘッドには4仕様の排気側バルブシート部しか組み込めないために、実施例1〜4、実施例5〜比較例8および比較例9〜比較例11の仕様を有する3台のシリンダーヘッドを作製した。また、比較例12と13については、肉盛り層の欠陥発生率が高すぎるため摩耗試験に供試できるシリンダーヘッドを作製することができなかった。そして、作製した3台のシリンダーヘッドをエンジンに載せて、下記表2の同一条件で3回のエンジン実機摩耗試験を実施した。
【0049】
【表2】
【0050】
エンジン試験終了後のバルブシート部の点火プラグ最近接部(表3では「プラグ部」として表す)とその反対側の部分(表3では「反プラグ部」と表す)の摩耗深さを測定した。なお、相手のバルブフェース部の摩耗には外観上顕著な違いが見られなかったので摩耗量の測定を省いた。
【0051】
これらの測定結果をシート部欠陥発生率の実験結果とともにまとめて表3に示す。
【0052】
【表3】
【0053】
これらの実験結果から、本発明の実施例1〜7においては、実施例6と7のみバルブシート部に欠陥を発生したもののその個数は1個と少なく、エンジン実機試験後の点火プラグ近傍のバルブシート部の摩耗量はいずれも小さく抑えることができたという良好なる結果が得られた。また、バルブシート部の摩擦摺動面の外観もほぼ平滑であり、シール性を阻害するような摩耗痕や欠落ピットも見られなかった。
【0054】
一方、大きな硬質相析出組織を全く形成させていない(すなわち、析出範囲θ1,θ2が0°である)比較例8においては、点火プラグ近傍のバルブシート部の耐摩耗性が不十分であるため、バルブシート部全体の摩耗が著しく大きくなっていた。
【0055】
また、大きな硬質相析出組織の領域が点火プラグ最近接部の15°の範囲しか存在しない比較例9においては、比較例8よりも点火プラグ近傍のバルブシート部の耐摩耗性が改善されてはいるものの、それでもまだ反プラグ側の摩耗量よりもかなり大きく摩耗しているものとなっていた。
【0056】
さらに、大きな硬質相析出組織の領域が点火プラグ最近接部の25°の範囲しか存在しない比較例10においても、比較例9と同様の摩耗状況にあった。
【0057】
したがって、この結果から、実施例1に示されるように、大きな硬質相析出組織の領域が点火プラグ最近接部の30°以上必要なことが分かった。
【0058】
他方、比較例11では、平均粒径で100μmを超える大きな硬質相析出組織の領域が点火プラグ最近接部の90°を超えて存在しているため、バルブシート部の耐摩耗性は良好であるものの、肉盛り時の欠陥発生率が30%と高く、生産性は著しく悪化してしまうものとなっていた。
【0059】
また、比較例12では、比較例11以上に大きな硬質相を広範囲に析出させたために、欠陥発生率はさらに悪化したことから、エンジン試験に供試できるシリンダーヘッドを作製することができなかった。
【0060】
さらにまた、比較例13については、大きな硬質相を析出する条件で全周肉盛りしたため、健全な肉盛り層を形成させることはできなかった。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施例によるシリンダーヘッドのシリンダーポート部を示す平面説明図である。
【符号の説明】
1 シリンダーヘッド
1P シリンダーヘッドポート部
1A 吸気側バルブシート部
1E 排気側バルブシート部
1S 肉盛りバルブシート
1H 平均粒径の大きい硬い析出物が分散した組織領域
P エンジン点火プラグ
Claims (10)
- 円周方向に沿って硬質析出物の平均粒径が異なる組織を有することを特徴とする肉盛りバルブシート。
- エンジン点火プラグに近い部分に平均粒径の大きい硬質析出物が分散した組織を有する請求項1に記載の肉盛りバルブシート。
- エンジン点火プラグに最も近い部分を中心に円周角で30°の範囲以上90°の範囲以下の部分に平均粒径の大きい硬質析出物が分散した組織を有する請求項1または2に記載の肉盛りバルブシート。
- シリンダーヘッドがアルミニウム鋳造合金からなりかつシリンダーヘッドのバルブシート肉盛り部が銅合金からなる請求項1ないし3のいずれかに記載の肉盛りバルブシート。
- 平均粒径の大きい硬質析出物の平均粒径が50μm以上100μm以下である組織をエンジン点火プラグに最も近い円周部分に有し、エンジン点火プラグに最も近い部分を中心に円周角で30°の範囲以上90°の範囲以下の部分以外の部分の組織は硬質析出物の平均粒径が10μm以上30μm以下である請求項3に記載の肉盛りバルブシート。
- 肉盛りに際してレーザビーム,プラズマアークなどの局所的加熱源を用い、円周方向に沿って硬質析出物の平均粒径が異なる組織に肉盛りすることを特徴とする肉盛りバルブシートの製造方法。
- エンジン点火プラグに近い部分に平均粒径の大きい硬質析出物が分散した組織に肉盛りする請求項6に記載の肉盛りバルブシートの製造方法。
- エンジン点火プラグに最も近い部分を中心に円周角で30°の範囲以上90°の範囲以下の部分に平均粒径の大きい硬質析出物が分散した組織に肉盛りする請求項6または7に記載の肉盛りバルブシートの製造方法。
- アルミニウム鋳造合金からなるシリンダーヘッドのバルブシート部に銅合金粉末を肉盛りする請求項6ないし8のいずれかに記載の肉盛りバルブシートの製造方法。
- 銅合金粉末として、重量%で、Al:1.0〜5.0%、元素周期律表第Va族元素のV,Nb,Taのうち1種または2種以上:0.1〜5.0%、Si:1.0〜5.0%を少なくとも含み、その他Co:10.0〜15.0%、Fe:1.0〜8.0%、Ni:10.0〜15.0%、Mn:0.5〜5.0%を適宜に含み、残部がCuを基本組成とする粉末を用いて肉盛りする請求項9に記載の肉盛りバルブシートの製造方法。
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