JP3641079B2 - 紫外線吸収剤 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、紫外線吸収剤に関する。さらに詳しくは、紫外線吸収性にすぐれ、たとえば化粧料、繊維、フィルム、インキ、塗料、コンタクトレンズ、眼鏡用レンズなどの原料として有用な紫外線吸収剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
紫外線は、日常生活において常に我々に降り注がれている。紫外線は、波長が320〜400nmの長波長紫外線(以下、UV−Aという)、波長が290〜320nmの中波長紫外線(以下、UV−Bという)および波長が180〜290nmの短波長紫外線(以下、UV−Cという)に分けることができる。
【0003】
人間社会にもっとも大きな影響を与える紫外線は、太陽光によるものであるが、オゾン層によってほとんどのUV−Cは吸収され、UV−BおよびUV−Aが地表に達する。この紫外線UV−BおよびUV−Aによる影響は、人体に対しても、人間を取り巻くすべての物質に対しても及ぶ。
【0004】
UV−Bは、主に皮膚の表面に作用し、急激に日焼けを起こさせ、シミ、ソバカス、皮膚の乾燥などの原因となるが、UV−Aは、皮膚の真皮にまで到達して皮膚の老化を促進するだけでなく、UV−Bによる皮膚の変性作用を増強させることが知られている。
【0005】
これらのことから明らかなように、UV−Bだけでなく、UV−Aからも皮膚を保護することは、皮膚の老化促進を予防し、シミ、ソバカスの発生や他の悪影響を防ぐ意味において重要であり、化粧料の分野において、UV−A吸収剤が開発され、市販されるようになってきた。
【0006】
そこで、従来、UV−Aから皮膚を保護するために、二酸化チタン、酸化亜鉛などの無機粉末を化粧料に用いることが試みられている。
【0007】
しかしながら、前記無機粉末は、紫外線吸収性が低いため、UV−A領域の紫外線を防御するために、大量に用いる必要があるので、化粧料の使用時に透明性に欠け、自然な感触が損われるという欠点がある。
【0008】
また、たとえば4−tert−ブチル−4′−メトキシジベンゾイルメタン(ジボダン(株)製、商品名:パラソールA)などの低分子量の紫外線吸収剤を化粧料に配合することも試みられている。
【0009】
しかしながら、前記低分子量の紫外線吸収剤は、皮膚への刺激性、吸収性などの安全性がわるいという欠点を有する。
【0010】
一方、人間社会に欠くことのできない高分子材料の分野では、たとえば繊維、フィルム、インキ、塗料、コンタクトレンズなどの高分子材料の紫外線による劣化を防止する紫外線吸収剤の需要が高まってきている。さらには、機能性高分子材料の開発が進むなかで、紫外線カットフィルムのように透過光から紫外線を除去するものが市販されるようになってきた。
【0011】
しかしながら、一般に、たとえば前記4−tert−ブチル−4′−メトキシジベンゾイルメタンなどの低分子量の紫外線吸収剤を、繊維、フィルム、インキ、塗料、コンタクトレンズなどの高分子材料の分野で用いたばあいには、製造または成形加工時にかかる低分子量の紫外線吸収剤が揮発、溶出したり、さらにはえられた成形品の表面から揮発したり、表面でのブリードアウト、はじきなどが生じるという問題がある。
【0012】
そこで、前記問題を解決するために、紫外線吸収構造を有する単量体を一重合成分とした共重合体の開発が進められている。
【0013】
たとえば、メチルメタクリレートを主成分とした重合成分に紫外線吸収性モノマーである2−ヒドロキシ−5−アクリロキシアルキルフェニル−2H−ベンゾトリアゾール類を含有させ、かかる重合成分を共重合させてえられた共重合体をコンタクトレンズや眼鏡用レンズとして用いることが提案されている(特開昭60−38411号公報)。
【0014】
しかしながら、前記共重合体は、透明性に劣るものであるため、コンタクトレンズや眼鏡用レンズなどの光学的透明性が要求される製品に用いることが困難である。さらに、コンタクトレンズや眼鏡用レンズの黄変を避けるためには、波長が400nmをこえる光を透過させる必要があるが、前記共重合体は、かかる波長が400nmをこえる光を吸収するという欠点を有する。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、前記従来技術に鑑みてなされたものであり、たとえば化粧料、繊維、フィルム、インキ、塗料、コンタクトレンズ、眼鏡用レンズなどにすぐれた紫外線吸収性および光学的透明性を付与することができ、UV−Aの吸収性にとくにすぐれた紫外線吸収剤を提供することを目的とする。
【0016】
【課題を解決するための手段】
本発明は、式(I):
【0017】
【化2】
【0018】
で表わされる4−tert−ブチル−4′−(2−メタクリロイルオキシエトキシ)ジベンゾイルメタンを含有した重合成分を重合させてえられた重合体からなる紫外線吸収剤に関する。
【0019】
【発明の実施の形態】
本発明の紫外線吸収剤は、前記したように、式(I):
【0020】
【化3】
【0021】
で表わされる4−tert−ブチル−4′−(2−メタクリロイルオキシエトキシ)ジベンゾイルメタンを含有した重合成分を重合させてえられた重合体からなるものである。
【0022】
本発明において、式(I):
【0023】
【化4】
【0024】
で表わされる4−tert−ブチル−4′−(2−メタクリロイルオキシエトキシ)ジベンゾイルメタンが重合成分として用いられているので、えられる紫外線吸収剤の紫外線吸収性がいちじるしく向上する。
【0025】
なお、本発明においては、前記重合成分の全量(100重量%)が前記4−tert−ブチル−4′−(2−メタクリロイルオキシエトキシ)ジベンゾイルメタンであってもよい、すなわち前記重合体が4−tert−ブチル−4′−(2−メタクリロイルオキシエトキシ)ジベンゾイルメタンの単独重合体であってもよいが、かかる重合成分には、必要に応じて、該4−tert−ブチル−4′−(2−メタクリロイルオキシエトキシ)ジベンゾイルメタンと共重合可能な共重合性モノマー(以下、共重合性モノマーという)が、目的に応じて適宜含有されていてもよい。
【0026】
前記共重合性モノマーとしては、たとえばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレートなどの置換されていてもよいアルキル(メタ)アクリレート;メチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、i−ブチルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、スチレン、α−メチルスチレン、(メタ)アクリロニトリル、酢酸ビニル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、エチレン、プロピレン、イソプレン、クロロプレン、ブタジエンなどのビニルモノマー;(メタ)アクリル酸、イタコン酸などのカルボキシル基含有ビニルモノマー;β−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、β−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、アリルアルコールなどの水酸基含有ビニルモノマー;N−メチロール(メタ)アクリルアミドなどのメチロール基含有ビニルモノマー;ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートなどのアミノ基含有ビニルモノマー;(メタ)アクリルアミドなどの酸アミド基含有ビニルモノマー;グリシジル(メタ)アクリレート、グリシジルアリルエーテルなどのグリシジル基含有ビニルモノマー;γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリメトキシシランなどの加水分解性シリル基含有ビニルモノマーなどがあげられ、これらは、単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。
【0027】
前記共重合性モノマーの中では、ガラス転移温度が高く、成形性にすぐれたポリマーを与えることができるという点から、アルキル基の炭素数が1〜4のアルキル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0028】
なお、本明細書において、「〜(メタ)アクリ…」とは、〜アクリ…および/または〜メタクリ…を意味する。
【0029】
重合成分に前記共重合性モノマーが含有されているばあいの前記4−tert−ブチル−4′−(2−メタクリロイルオキシエトキシ)ジベンゾイルメタンと共重合性モノマーとの割合[4−tert−ブチル−4′−(2−メタクリロイルオキシエトキシ)ジベンゾイルメタン/共重合性モノマー(重量比)]は、充分な紫外線吸収性を発現させるためには、0.01/99.99以上、好ましくは0.02/99.98以上とすることが望ましい。また、えられる紫外線吸収剤をたとえばコンタクトレンズ、眼鏡用レンズなどのなかに効果的に分散させ、すぐれた光学的透明性を維持しながら、充分な紫外線吸収性を発現させるためには、前記割合(重量比)は、10/90以下、好ましくは5/95以下とすることが望ましい。
【0030】
本発明に用いられる重合体は、前記4−tert−ブチル−4′−(2−メタクリロイルオキシエトキシ)ジベンゾイルメタンおよび必要に応じて共重合性モノマーを含有した重合成分に、たとえば重合開始剤などを配合し、通常の重合方法によって該重合成分を重合させることによってうることができる。
【0031】
前記重合開始剤としては、たとえばジ−tert−ブチルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド、ベンゾイルパーオキシド、クメンパーオキシドなどの有機過酸化物;アゾビスイソブチロニトリル、ジメチル−2,2′−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、2,2′−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)などのアゾ系油溶性重合開始剤などがあげられる。
【0032】
前記重合開始剤の配合量は、とくに限定がないが、重合成分全量100部(重量部、以下同様)に対して、通常0.01〜5部程度であることが好ましい。
【0033】
また、重合開始剤を配合し、重合反応を行なうときの雰囲気は、たとえばチッ素ガス、アルゴンガスなどの不活性ガス雰囲気であることが好ましい。
【0034】
前記重合成分の重合方法にはとくに限定がなく、たとえば通常の乳化重合法、溶液重合法、塊状重合法などの方法を採用することができる。
【0035】
たとえば前記乳化重合法を採用するばあいには、たとえば高級アルコールサルフェートナトリウム塩、高級アルコールサルフェートアミン塩、アルキルスルホン酸ナトリウム塩、アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウム塩、アルキルフォスフェート、ジアルキルスルホサクシネート、ロジン石けんなどのアニオン系界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミド、ソルビタンアルキルエステル、ポリオキシソルビタンアルキルエステルなどのノニオン系界面活性剤;トリメチルアミノエチルアルキルアミドハロゲニド、アルキルピリジニウム硫酸塩、アルキルトリメチルアンモニウムハロゲニドなどの界面活性剤を、単独でまたは2種以上を混合し、乳化剤として用いることが好ましい。
【0036】
前記界面活性剤の配合量は、とくに限定がないが、重合成分全量100部に対して、通常0.1〜1部程度であることが好ましい。
【0037】
また、たとえば前記溶液重合法を採用するばあいには、たとえばトルエン、キシレン、ベンゼン、シクロヘキサン、n−ヘキサン、ヘプタン、酢酸エチル、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、グライム、ジグライム、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ジオキサンなどの溶媒を、単独でまたは2種以上を混合して用いることが好ましい。
【0038】
重合成分を重合させる際の重合温度および重合時間にはとくに限定がなく、たとえば必要に応じて用いる共重合性モノマーの種類、4−tert−ブチル−4′−(2−メタクリロイルオキシエトキシ)ジベンゾイルメタンと該共重合性モノマーとの割合などに応じて適宜調整すればよい。
【0039】
かくしてえられる重合体は、たとえばラテックスのばあいには、該ラテックスを凝固させたのち、脱水、乾燥させて粉末として収得してもよく、たとえば分散液のばあいには、該分散液中の粒子を濾過、遠心分離などによって溶媒と分離し、乾燥させて粉末として収得してもよい。
【0040】
本発明の紫外線吸収剤は、4−tert−ブチル−4′−(2−メタクリロイルオキシエトキシ)ジベンゾイルメタンおよび必要に応じて共重合性モノマーを含有した重合成分を重合させてえられた重合体からなるものであるが、本発明においては、その目的を阻害しないかぎり、該重合体以外の樹脂などを用い、かかる重合体と樹脂との混合物を紫外線吸収剤としてもよい。
【0041】
前記重合体と混合してもよい樹脂としては、たとえば架橋されていてもよい、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、ポリメチルブテン−1、ポリメチルペンテン−1、ポリイソプレン、ポリブタジエンなどのモノまたはジオレフィンからなる単独重合体や、ポリプロピレンとポリエチレン、ポリプロピレンとポリブテン−1、ポリプロピレンとポリイソブチレンなどの該単独重合体の混合物;エチレン−プロピレン共重合体、プロピレン−ブテン−1共重合体、プロピレン−イソブチレン共重合体、エチレン−ブテン−1共重合体、エチレン−プロピレン−ヘキサジエン共重合体、エチレン−プロピレン−ジシクロペンタジエン共重合体、エチレン−プロピレン−エチリデンノルボルネン共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体などのモノまたはジオレフィンを用いてなる共重合体;ポリスチレン、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−アクリロニトリル−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−アクリロニトリル−メタクリル酸エステル共重合体、アクリル酸エステル重合体で変性されたスチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、スチレンがグラフトされたスチレン−ポリブタジエングラフト共重合体、スチレンがグラフトされたアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体や、これらの混合物などのスチレン系重合体;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリフッ化ビニル、ポリクロロプレン、塩化ゴム、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニリデン−酢酸ビニル共重合体などのハロゲン含有ビニル系重合体;ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル、ポリアクリルアミド、ポリアクリロニトリルなどのα,β−不飽和酸またはその誘導体からなる重合体;ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリステアリン酸ビニル、ポリ安息香酸ビニル、ポリマレイン酸ビニル、ポリビニルブチラール、ポリフタル酸アリル、ポリアリルメラミンなどの不飽和アルコールもしくはアミン類から、またはこれらのアシル誘導体もしくはアセタールからなる重合体や、エチレン−酢酸ビニル共重合体などの不飽和アルコールもしくはアミン類またはこれらのアシル誘導体もしくはアセタールと他のビニル化合物との共重合体;ポリエチレンオキシド、ビス−グリシジルエーテルを用いてなる重合体などのエポキシドからなる重合体;ポリオキシメチレン、コモノマーとしてエチレンオキシドが用いられてなるポリオキシメチレンなどのポリアセタール類;ポリオキシエチレン、ポリプロピレンオキシド、ポリブチレンオキシド、ポリフェニレンオキシドなどのポリアルキレンまたはポリアリーレンオキシド;ポリウレタン、ポリ尿素などのポリウレタン類;ポリカーボネート;ポリスルホン;ポリアミド6、ポリアミド6,6、ポリアミド6,10、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリ−m−フェニレンイソフタルアミドなどのジアミンとジカルボン酸や、アミノカルボン酸、そのラクタムなどを用いてなるポリアミド;ポリエチレングリコールテレフタレート、ポリ−1,4−ジメチロールシクロヘキサンテレフタレートなどのジカルボン酸とジアルコールや、ヒドロキシカルボン酸、そのラクタムなどを用いてなるポリエステル;フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、尿素−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂などのアルデヒドとフェノール、尿素またはメラミンとを用いてなる架橋された樹脂;グリセリン−フタル酸樹脂や、これとメラミン−ホルムアルデヒド樹脂との混合物;飽和または不飽和ジカルボン酸と多価アルコールとからなるポリエステルや、架橋剤としてビニル化合物を用いてなる不飽和ポリエステル系樹脂および該不飽和ポリエステル系樹脂のハロゲン含有変性物;セルロース、酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、メチルセルロースなどのセルロースエーテルなどのセルロースの化学的変性同族列誘導体、天然ゴムなどの天然ポリマーなどがあげられ、これらは単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。
【0042】
なお、前記樹脂を混合させるばあい、えられる紫外線吸収剤に充分な紫外線吸収性を発現させるためには、該紫外線吸収剤における前記重合体と樹脂との割合[重合体/樹脂(重量比)]は、1/99以上、好ましくは2/98以上とすることが望ましい。また、紫外線吸収剤を配合した材料の光学的透明性が低下したり、黄変が生じるおそれをなくすためには、前記割合(重量比)は、95/5以下、好ましくは90/10以下とすることが望ましい。
【0043】
本発明の紫外線吸収剤には、前記4−tert−ブチル−4′−(2−メタクリロイルオキシエトキシ)ジベンゾイルメタン(最大吸収波長λmax:357〜359nm、logεmax:約4.6、ジクロロメタン中)が、その紫外線吸収性が低下することなく、取り込まれているので、前記紫外線吸収剤は、とくにUV−A領域において、きわめてすぐれた紫外線吸収性を呈する。
【0044】
なお、充分な紫外線吸収効果の発現の点から、前記紫外線吸収剤全重量中の4−tert−ブチル−4′−(2−メタクリロイルオキシエトキシ)ジベンゾイルメタンの割合は、0.01重量%以上、好ましくは0.02重量%であることが望ましく、また光学的透明性の低下および黄変防止の点から、10重量%以下、好ましくは5重量%以下であることが望ましい。
【0045】
本発明の紫外線吸収剤は、すぐれた紫外線吸収性および光学的透明性を呈し、UV−Aの吸収性にとくにすぐれたものである。したがって、該紫外線吸収剤は、たとえば化粧料、繊維、フィルム、インキ、塗料、コンタクトレンズ、眼鏡用レンズなどの原料として有用である。
【0046】
【実施例】
つぎに、本発明の紫外線吸収剤を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はかかる実施例のみに限定されるものではない。
【0047】
合成例1(4−tert−ブチル−4′−(2−ヒドロキシエトキシ)ジベンゾイルメタンの合成)
撹拌装置、温度計およびコンデンサーを備えた2リットル容の4つ口フラスコに仕込んだ乾燥テトラヒドロフラン560ml中に、油性水素化ナトリウム(含量約60重量%)80.0g(2.00モル)を27℃で懸濁させ、4′−(2−ヒドロキシエトキシ)アセトフェノン168.18g(1.00モル)のテトラヒドロフラン溶液300mlを、反応温度を45℃以下に保ちつつ、チッ素ガス気流下で滴下した。
【0048】
ついで、水素ガスの発生が緩和になるまで撹拌したのち、4−tert−ブチル安息香酸メチル235.5g(1.20モル)を滴下した。滴下終了後、反応温度を徐々に上げ、還流下で12時間撹拌を続けた。4′−(2−ヒドロキシエトキシ)アセトフェノンの消失をTLC(シリカゲルプレート、展開液:n−ヘキサン/酢酸エチル(体積比:3/1)およびHPLC[カラム:ODS(オクタデシル基が化学結合されたシリカゲル)、4.6×150mm、展開液:アセトニトリル/0.02Mリン酸緩衝液(pH6.8)(体積比:7/3)]により確認したのち、反応液を冷却し、12%塩酸水溶液で中和、分液した。有機層を飽和食塩水で洗浄後、有機層を濃縮してえられた粗結晶をメタノールから再結晶することにより、白色の結晶242.2gをえた。えられた結晶の融点は95〜95.5℃、収率は67%であった。
【0049】
つぎに、えられた結晶について、1H−NMR(日本電子(株)製、GX−500にて測定)、13C−NMR(日本電子(株)製、GX−500にて測定)、赤外吸収スペクトル(以下、IRという)((株)島津製作所製、FTIR−4200にて測定)、紫外線吸収スペクトル(以下、UVという)((株)島津製作所製、UV−240にて測定)およびマススペクトル((株)島津製作所製、GCMS QR5000にて測定)を調べ、元素分析を行なった。これらのデータを以下に示す。
【0050】
これらの結果から、えられた白色の結晶は、目的とする4−tert−ブチル−4′−(2−ヒドロキシエトキシ)ジベンゾイルメタンであることが確認された。
【0051】
合成例2(4−tert−ブチル−4′−(2−メタクリロイルオキシエトキシ)ジベンゾイルメタンの合成)
撹拌装置、温度計、コンデンサーを備えた1リットル容の4つ口フラスコに仕込んだシクロヘキサン260ml中に、合成例1でえられた4−tert−ブチル−4′−(2−ヒドロキシエトキシ)ジベンゾイルメタン100.0g(0.294モル)およびメタクリル酸27.5g(0.320モル)を27℃で懸濁させ、4−トルエンスルホン酸1水和物5.0gおよびo−メチル−4−ヒドロキノン0.1gを添加したのち、反応液中に空気を吹き込みつつ、反応温度を徐々に上げ、還流脱水下で15時間撹拌を続けた。4−tert−ブチル−4′−(2−ヒドロキシエトキシ)ジベンゾイルメタンの消失を合成例1と同様にしてTLCおよびHPLCにより確認したのち、反応液を濃縮し、えられた反応混合物を酢酸エチル240mlに50℃溶解させ、10%水酸化ナトリウム水溶液で中和したのち、分液した。有機層を分取し、水洗したのち、濃縮してえた粗結晶をトルエン−メタノールから再結晶することにより、白色の結晶79.2gをえた。えられた結晶の融点は110〜112℃、収率は66%であった。
【0052】
つぎに、えられた結晶について、合成例1と同様にして、1H−NMR、13C−NMR、IR、UVおよびマススペクトルを調べ、元素分析を行なった。これらのデータを以下に示す。
【0053】
これらの結果から、えられた白色の結晶は、目的とする4−tert−ブチル−4′−(2−メタクリロイルオキシエトキシ)ジベンゾイルメタンであることが確認された。
【0054】
なお、えられた4−tert−ブチル−4′−(2−メタクリロイルオキシエトキシ)ジベンゾイルメタン0.05mmolをジクロロメタン1リットル中に溶解させた溶液の波長200〜500nmにおける吸光度を測定した。その結果を図1に示す。
【0055】
実施例1
合成例2でえられた4−tert−ブチル−4′−(2−メタクリロイルオキシエトキシ)ジベンゾイルメタン(以下、BMABMという)0.01g、エチルアクリレート(以下、EAという)2.0g、メチルメタクリレート(以下、MMAという)17.99g、反応調整剤としてラウリルメルカプタン(以下、LMという)90μl、溶剤としてステアリン酸(以下、SAという)0.12gおよび2,2′−アゾビスイソブチロニトリル(以下、AIBNという)0.02gを耐熱ガラス製管中に入れた。
【0056】
つぎに、前記耐熱ガラス製管内をチッ素ガスでフラッシュしたのち密封し、内容物を70℃で6時間重合させて無色透明な重合体をえた。なお、かかる重合体全重量中のBMABMの割合は、0.05重量%であった。
【0057】
前記重合体を150℃、180kg/m2にて熱プレス成形し、厚さ1mmのフィルムを作製した。
【0058】
えられたフィルムの波長190〜700nmにおける光線透過率をUV−visible Recording Spectrophotometer((株)島津製作所製、UV−240)にて測定した。その結果を図2にAで示す。
【0059】
図2に示された結果から、波長400nmの光線透過率は約75%、波長390nmの光線透過率は0%であり、えられたフィルムがUV−A領減、とくに波長390nm付近までの紫外線の吸収性にきわめてすぐれたものであることがわかる。
【0060】
実施例2
実施例1において、BMABMの量を0.01gから0.02gに、MMAの量を17.99gから17.98gにそれぞれ変更したほかは、実施例1と同様にして無色透明な重合体をえた。なお、かかる重合体全重量中のBMABMの割合は、0.1重量%であった。
【0061】
つぎに、実施例1と同様にして、前記重合体から厚さ1mmのフィルムを作製し、該フィルムの光線透過率を測定した。その結果を図2にBで示す。
【0062】
図2に示された結果から、波長400nmの光線透過率は約35%、波長390nmの光線透過率は0%であり、えられたフィルムがUV−A領減、とくに波長390nm付近までの紫外線の吸収性にきわめてすぐれたものであることがわかる。
【0063】
比較例1
実施例1において、BMABMを用いず、MMAの量を17.99gから18gに変更したほかは、実施例1と同様にして無色透明な重合体をえた。
【0064】
つぎに、実施例1と同様にして、前記重合体から厚さ1mmのフィルムを作製し、該フィルムの光線透過率を測定した。その結果を図2にCで示す。
【0065】
図2に示された結果から、波長400nmの光線透過率は約93%、波長390nmの光線透過率も約93%であり、えられたフィルムがUV−A領減での紫外線の吸収性に劣るものであることがわかる。
【0066】
実施例3
BMABM0.2g、MMA39.8g、AIBM0.04gおよびトルエン60gを反応容器に入れ、該反応容器内をチッ素ガスでフラッシュしたのち、撹拌しながら内容物を約80℃で6時間重合させて無色透明な重合体をえた。なお、かかる重合体全重量中のBMABMの割合は、0.5重量%であった。
【0067】
つぎに、前記重合体の40重量%トルエン溶液を調製し、該溶液をバーコーターにてプレパラートガラスに塗布し、乾燥させ、剥離して厚さ0.2mmのフィルムを作製した。
【0068】
えられたフィルムの光線透過率を実施例1と同様にして測定した。その結果、波長400nmの光線透過率は約45%、波長390nmの光線透過率は0%であり、えられたフィルムは、UV−A領域、とくに波長390nm付近までの紫外線の吸収性にきわめてすぐれたものであった。
【0069】
【発明の効果】
本発明の紫外線吸収剤は、すぐれた紫外線吸収性および光学的透明性を呈し、UV−Aの吸収性にとくにすぐれたものである。
【0070】
したがって、本発明の紫外線吸収剤は、たとえば化粧料、繊維、フィルム、インキ、塗料、コンタクトレンズ、眼鏡用レンズなどの原料として有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】合成例2でえられた4−tert−ブチル−4′−(2−メタクリロイルオキシエトキシ)ジベンゾイルメタンのジクロロメタン溶液の波長200〜500nmにおける吸光度を示すグラフである。
【図2】実施例1〜2および比較例1でえられたフィルムの波長190〜700nmにおける光線透過率を示すグラフである。
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