JP3640819B2 - ジグザグスラブ型固体レーザー増幅器及び発振器 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、半導体レーザー(LD)やフラッシュランプなどの励起光源より端面あるいは側面励起されるジグザグスラブ型固体レーザー増幅器及び発振器に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、ジグザグスラブ型固体レーザー増幅器及び発振器において、回折が起こらない程度に平行光束の被増幅ビームの断面積をジグザグスラブ型固体レーザー材料の入出射面の面積より小さくし、固体レーザー材料に垂直に入射することによって被増幅ビームを増幅してきた。代表的な従来例として、図3にジグザグスラブ型固体レーザーの増幅器及び発振器の構成図を示す。
【0003】
図3に示されるように、ジグザグスラブ型固体レーザーは、ジグザグスラブ型固体レーザー材料100及び励起光源102を有する。固体レーザー材料100は、入射される平行光束の被増幅ビーム104に対して垂直の入射面106、及び出射される被増幅ビーム104に対して垂直の出射面108を有する。固体レーザー材料100は、例えばNd:YAGから成る。励起光源102は、例えば半導体レーザー又はフラッシュランプから成る。なお、参照番号110は励起光源102により励起される固体レーザー材料100の励起領域を示す。図3に示されるように、被増幅ビーム104は、入射面106から固体レーザー材料100に入射され、固体レーザー材料100内の対向する全反射面112a、112bで全反射してジグザグ状に出射面108に伝搬し、その間励起された固体レーザー材料100からエネルギーを得て増幅され、出射面108から出射される。
【0004】
今、被増幅ビーム104の断面が固体レーザー材料100の入射面106及び出射面108に完全に一致しているとする。被増幅ビーム104が固体レーザー材料100の全反射面112a、112bで全反射する内部反射角をθとすると、固体レーザー材料100内の励起領域110で囲まれた部分をどれだけ被増幅ビーム104が伝搬するかの割合を示すエネルギー結合効率Cは次式で与えられる。
【0005】
【数1】
C=(1/(2COS2θ))・(2−1/(2COS2θ)) (1)
このエネルギー結合効率Cは、平行光束の被増幅ビームの伝搬するレーザーモード体積と励起光源により励起される固体レーザー材料の励起体積との重なりの割合で、図3に示される固体レーザー材料100内においてハッチング部分の占める割合に対応する。
【0006】
図4に内部反射角θに対するエネルギー結合効率Cの計算結果を示す。図4より内部反射角が45°のときエネルギー結合効率は100%となり、極めて効率の良い増幅を行うことができるということが分かる。内部反射角が45°の場合には、図3における入射面106及び出射面108は固体レーザー材料100の全反射面112a、112bに対して45°の傾きを有し、固体レーザー材料100内の白抜きの部分がなくなり全部ハッチングされた形になる。
【0007】
しかし、固体レーザー材料100の屈折率が小さい場合や、冷却剤(例えば、純水)によって固体レーザー材料100を冷却する場合は、全反射条件を満足するために内部反射角は45°より小さくしなければならない。このように、内部反射角が45°より小さい場合には、図3に示されるように、入射面106及び出射面108は全反射面112a、112bに対して45°より大きい傾きを有し、その結果、被増幅ビーム104の伝搬するレーザーモード体積と固体レーザー材料100内の励起領域110で囲まれた励起体積とが完全に一致せず、図3の白抜きの部分が生じる。このため、エネルギー結合効率は100%より低下し、固体レーザー材料100内に蓄積されているエネルギーを完全に被増幅ビーム104の増幅に寄与させることはできず、レーザー出力、総合効率の低下を招いたり、被増幅ビーム104が伝搬しない領域における蓄積エネルギーが熱となり、固体レーザー材料100自体が変形したり屈折率分布が生じ、出力レーザービームの品質を低下させる欠点があった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の課題は、内部反射角が45°より小さい場合にも100%のエネルギー結合効率が得られるようにしたジグザグスラブ型固体レーザー増幅器及び発振器を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、固体レーザー材料部に入射された平行光束の被増幅ビームの伝搬するレーザーモード体積と外部励起光源により励起される前記固体レーザー材料部の励起体積とが実質的に重なり合うよう構成された前記固体レーザー材料部を有する本発明のジグザグスラブ型固体レーザー増幅器は、
前記固体レーザー材料部は、平行光束の被増幅ビームが入射する入射部と、励起領域を含み、前記入射された平行光束の被増幅ビームが伝搬する本体と、当該伝搬された平行光束の被増幅ビームが出射する出射部とを有し、
前記入射部、本体及び出射部は、同一材料で一体に形成され、
前記本体は、所定の厚みtと、当該厚み方向tに直交し互いに対向している上側全反射面及び下側全反射面であって、当該全反射面に対して内部反射角θで入射された前記被増幅ビームを全反射する前記上側全反射面及び下側全反射面とを有し、
前記入射部は、前記本体における前記被増幅ビームの伝搬方向であって平行光束の被増幅ビームの入射側へ前記本体から延在するよう配置され、
前記入射部は更に、前記下側全反射面に対して実質的に前記内部反射角θで入射される平行光束の被増幅ビームの入射方向に対して実質的に直交する入射面を有し、
前記平行光束の被増幅ビームの厚みd方向における上側の最も外側を通る光と前記上側全反射面とが最初に交わる位置をpとし、
前記平行光束の被増幅ビームの厚みd方向における下側の最も外側を通る光と前記下側全反射面とが最初に交わる位置をrとし、
前記平行光束の被増幅ビームの厚みd方向における前記入射面の前記上側全反射面側の上端位置をuとし、
前記平行光束の被増幅ビームの厚みd方向における前記入射面の前記下側全反射面側の下端位置をvとし、
前記上側全反射面を位置pから前記入射面に延長して当該入射面と交わる点をwとし、
位置pと点wとの間の距離をgとし、
点wと位置uとの間の長さをeとし、
点wと位置vとの間の長さをfとすると、
前記平行光束の被増幅ビームの厚みd方向の前記入射面の長さe+fが次式
e+f≧d
の関係を満たし、
前記入射面が、次式
g≧t(1/tanθ−1/tan(90°−θ))
の関係を満たすよう位置pから入射側に延長した位置にあり、
前記入射面の上端位置uと前記上側全反射面の位置pとの間にある前記入射部の上側側面は、前記入射部への入射後の平行光束の被増幅ビームの上側の最も外側を通る光が前記入射部内を通るようにそれより外側に形成され、
前記入射面の下端位置vと前記下側全反射面の位置rとの間にある前記入射部の下側側面は、前記入射部への入射後の平行光束の被増幅ビームの下側の最も外側を通る光が前記入射部内を通るようにそれより外側に形成されることを特徴とする。
【0010】
また、上記課題を解決するため、固体レーザー材料部に入射された平行光束の被増幅ビームの伝搬するレーザーモード体積と外部励起光源により励起される前記固体レーザー材料部の励起体積とが実質的に重なり合うよう構成された前記固体レーザー材料部を有する本発明のジグザグスラブ型固体レーザー発振器は、
前記固体レーザー材料部は、平行光束の被増幅ビームが入射する入射部と、励起領域を含み、前記入射された平行光束の被増幅ビームが伝搬する本体と、当該伝搬された平行光束の被増幅ビームが出射する出射部とを有し、
前記入射部、本体及び出射部は、同一材料で一体に形成され、
前記本体は、所定の厚みtと、当該厚み方向tに直交し互いに対向している上側全反射面及び下側全反射面であって、当該全反射面に対して内部反射角θで入射された前記被増幅ビームを全反射する前記上側全反射面及び下側全反射面とを有し、
前記入射部は、前記本体における前記被増幅ビームの伝搬方向であって平行光束の被増幅ビームの入射側へ前記本体から延在するよう配置され、
前記入射部は更に、前記下側全反射面に対して実質的に前記内部反射角θで入射される平行光束の被増幅ビームの入射方向に対して実質的に直交する入射面を有し、
前記平行光束の被増幅ビームの厚みd方向における上側の最も外側を通る光と前記上側全反射面とが最初に交わる位置をpとし、
前記平行光束の被増幅ビームの厚みd方向における下側の最も外側を通る光と前記下側全反射面とが最初に交わる位置をrとし、
前記平行光束の被増幅ビームの厚みd方向における前記入射面の前記上側全反射面側の上端位置をuとし、
前記平行光束の被増幅ビームの厚みd方向における前記入射面の前記下側全反射面側の下端位置をvとし、
前記上側全反射面を位置pから前記入射面に延長して当該入射面と交わる点をwとし、
位置pと点wとの間の距離をgとし、
点wと位置uとの間の長さをeとし、
点wと位置vとの間の長さをfとすると、
前記平行光束の被増幅ビームの厚みd方向の前記入射面の長さe+fが次式
e+f≧d
の関係を満たし、
前記入射面が、次式
g≧t(1/tanθ−1/tan(90°−θ))
の関係を満たすよう位置pから入射側に延長した位置にあり、
前記入射面の上端位置uと前記上側全反射面の位置pとの間にある前記入射部の上側側面は、前記入射部への入射後の平行光束の被増幅ビームの上側の最も外側を通る光が前記入射部内を通るようにそれより外側に形成され、
前記入射面の下端位置vと前記下側全反射面の位置rとの間にある前記入射部の下側側面は、前記入射部への入射後の平行光束の被増幅ビームの下側の最も外側を通る光が前記入射部内を通るようにそれより外側に形成されることを特徴とする。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明の概念を先に説明すると、本発明では、固体レーザー材料の入射面を、また好ましくは出射面を平行光束の入射被増幅ビーム断面に合わせるか又はそれより大きく取り、且つ入射ビームが固体レーザー材料内をむらなく伝搬できるようにする、即ち平行光束の被増幅ビームの伝搬するレーザーモード体積と励起手段により励起される固体レーザー材料の励起体積とが完全に重なり合うようにすることにより内部反射角が45°より小さい場合にも100%のエネルギー結合効率を達成できるようにするものである。
【0012】
以下図面を参照して本発明をより詳細に説明する。
【0013】
図1は、本発明の好適な実施形態によるジグザグスラブ型固体レーザー増幅器又は発振器の概略構成図である。図1において、図3に示される参照番号と同一の参照番号により示される要素は図3のと同一の要素を示し、その説明は繰り返さない。図1において、本発明の好適な実施形態によるジグザグスラブ型固体レーザー増幅器又は発振器の固体レーザー材料10は、図3の固体レーザー材料100と同じ材料、例えばNd:YAGから成り、この同じ材料から成る三角形のプリズム型の入射部分12及び出射部分14を入出射端部のそれぞれに新たに設けている。平行光束の被増幅ビーム16は、入射部分12の入射面18から入射され、固体レーザー材料10内で全反射しながら増幅され、出射部分14の出射面20から出射される。
【0014】
図2に、寸法関係を見やすくするため、図1に示される被増幅ビーム16のハッチングを除いた以外図1と同じ構成図を示す。平行光束の被増幅ビーム16は固体レーザー材料10の下側全反射面22aに対して内部反射角θで入射するとする。図2に示される寸法、位置の記号の意味は次のとおりである。
【0015】
t:固体レーザー材料10の厚み
θ:内部反射角
φ:被増幅ビーム16の入射方向と直交している入射面18と全反射面22a及び22bとが成す角度で、内部反射角θと余角の関係、即ち90°−θに等しい角度
d:平行光束の被増幅ビーム16の厚み
p:平行光束の被増幅ビーム16の厚み方向dにおける上側の最も外側を通る光24と上側全反射面22bとが最初に交わる位置
q:平行光束の被増幅ビーム16の厚み方向dにおける上側の最も外側を通る光24と下側全反射面22aとが最初に交わる位置
r:平行光束の被増幅ビーム16の厚み方向dにおける下側の最も外側を通る光26と下側全反射面22aとが最初に交わる位置
u:入射面18の上側全反射面22b側の上端位置
v:入射面18の下側全反射面22a側の下端位置
w:上側全反射面22bをp点から入射面18側に延長して入射面18と交わる点
g:p−w間の距離
e:w−u間の長さ
f:w−v間の長さ
【0016】
図2から分かるように、被増幅ビーム16が固体レーザー材料10内をむらなく伝搬する、即ち平行光束の被増幅ビーム16の伝搬するレーザーモード体積と励起光源102により励起される固体レーザー材料10の励起体積(固体レーザー材料10のうちの励起領域110で囲まれた部分)とが完全に重なり合うための被増幅ビーム16の厚みdは
【数2】
d=2t・cosθ (2)
と与えられる。内部反射角θの値に関わらず、(2)式を満足するビームを用いれば100%のエネルギー結合効率を達成できる。前述したように、θは45°より小さいのでビームの厚みdは√2tより大きい。一方、θが45°より小さいので、φは45°より大きくなり、そのため固体レーザー材料10の入射端面を斜めにカットした入射面のビーム厚みd方向の長さは√2tより短くなる。従って、上記の厚みdを有するビームを入射させる入射面は固体レーザー材料10の入射端面を単に斜めにカットしただけでは実現できない。そこで、本発明では入射部分として固体レーザー材料10の上側全反射面22bより上側に突き出た構造を用いている。
【0017】
その入射部分である三角形のプリズム型の入射部分12の寸法は、(2)式を満足する被増幅ビーム16の全てが固体レーザー材料10中に入射されその中を伝搬できるようにするために以下の式を満足しなければならない。
【0018】
第1の条件は、固体レーザー材料10におけるビームの入射面18を平面にするため、即ち被増幅ビーム16を入射面18に対して垂直に入射させるための条件で、次式で表される。
【0019】
【数3】
φ=90°−θ (3)
第2の条件は、ビーム厚みdをもつ被増幅ビーム16を受け入れる固体レーザー材料10の入射面18を確保するための条件で、入射面18のビーム厚みdの方向の寸法e+fは原理的にはビームの厚みdだけあればよい。但し、実際には被増幅ビーム16の入射位置ずれ等が多少生じたり、回折が生じたりするのでそれより大きい寸法を有するのが好ましい。従って、第2の条件は次式で示される。
【0020】
【数4】
e+f≧d (4)
第3の条件は、固体レーザー材料内で折り返った入射ビームが固体レーザー材料10の全反射面に折り返るための条件で、換言すると、平行光束の被増幅ビーム16の厚み方向dにおける下側の最も外側を通る光26が下側全反射面22aのr点で全反射し、その全反射した光が次に上側全反射面22bのp点で全反射し、更にその全反射した光が平行光束の被増幅ビーム16の厚み方向dにおける上側の最も外側を通る光24と重なり合うようにして下側全反射面22aのq点に向かうように、被増幅ビーム16を入射面18から受け入れ且つ固体レーザー材料10内で伝搬させる条件である。従って、この条件は、gの長さで表せば、入射面18のv点がr点に一致したときのgの長さ以上であることになる。
【0021】
【数5】
g≧t(1/tanθ−1/tan(90°−θ)) (5)
上記の3つの条件を満たせば、入射面18のv点は平行光束の被増幅ビーム16の厚み方向dにおける下側の最も外側を通る光26上にあるかそれより下側に位置し、u点は平行光束の被増幅ビーム16の厚み方向dにおける上側の最も外側を通る光24上にあるかそれより上側に位置するので、被増幅ビーム16の全てが必ず固体レーザー材料10内に入射され、入射後に固体レーザー材料10内でむらなく伝搬することになる。なお、図2に示される実施形態においては線分u−pにより表される上側側面は平面(線分u−pでは直線)であるが、入射後の平行光束の被増幅ビーム16の上側の最も外側を通る光24が固体レーザー材料10内を伝搬できればいずれの形状でも良い。更に、図2に示される実施形態においては線分v−rにより表される下側側面は下側全反射面22aを延伸させた平面(線分v−rでは直線)であるが、入射後の平行光束の被増幅ビーム16の下側の最も外側を通る光26が固体レーザー材料10内を伝搬できれば、v点がr点に一致することを含めていずれの形状でも良い。三角形のプリズム型の入射部分12の図2における断面形状は、上記3つの条件を満たしたp−u−wにより表される形を取ればよい。
【0022】
被増幅ビーム16が固体レーザー材料10内をむらなく伝搬するためには上記のような三角形のプリズム型の入射部分12及び上記のような下側側面(図2の断面形状の線分v−r)を有すればよいが、このようにして固体レーザー材料10内で増幅されたビーム16を全部出射させるには、出射部分14及びそれと反対側の上側側面(図2の断面形状の線分v′−r′の部分)が、入射部分12及び上記下側側面(図2の断面形状の線分v−r)と同様の構造を取ればよいことは当業者には明らかであろう。三角形のプリズム型の出射部分14も入射部分12の上記3つの条件を満たした構造であればよい。また、図2において、u′を出射面20の下側全反射面側22aの下端位置、v′を出射面20の上側全反射面22b側の上端位置、p′を平行光束の被増幅ビーム16が出射する際にその厚み方向における下側の最も外側を通る光30と下側全反射面22aとが最後に交わる位置、r′を平行光束の被増幅ビーム16が出射する際に厚み方向における上側の最も外側を通る光32と上側全反射面22bとが最後に交わる位置とすると、線分u′−p′により表される下側側面は平面(線分u′−p′では直線)であるが、出射する際の平行光束の被増幅ビーム16の上側の最も外側を通る光30が固体レーザー材料10内を伝搬できればいずれの形状でも良く、また線分v′−r′により表される上側側面は上側全反射面22bを延伸させた平面(線分v′−r′では直線)であるが、出射する際の平行光束の被増幅ビーム16の上側の最も外側を通る光32が固体レーザー材料10内を伝搬できれば、v′点がr′点に一致することを含めていずれの形状でも良い。
【0023】
なお、図2に示される構成では、出射面20は、下側全反射面22a側に向いているが、上側全反射面22b側に向けてもよい。
【0024】
また、本発明においては、固体レーザー材料10の材料は上記の材料に限定されず、ジグザグスラブ型固体レーザー増幅器あるいは発振器の固体レーザー材料に用いることができるいずれの材料でもよい。
【0025】
更に、平行光束の被増幅ビーム16の断面において厚みd方向に対して直交する方向、即ち幅と、それに対応する固体レーザー材料10の入射面の幅との関係は従来のジグザグスラブ型固体レーザー増幅器及び発振器の場合と同じで固体レーザー材料10の幅が被増幅ビーム16の幅以上あればよいことは明らかである。
【0026】
上記実施形態においては固体レーザー材料10内での被増幅ビーム16の増幅について説明したが、この構成がジグザグスラブ型固体レーザー発振器にも用いられることは当業者には明らかであろう。
【0027】
本発明は以上説明したように構成されているので、内部反射角が45°以下のあらゆる内部反射角に対しても、また被増幅ビームの断面がジグザグスラブ型固体レーザー材料の入出射面に完全に一致していない場合に対しても、被増幅ビームの全てが固体レーザー材料内に入射され且つその中をむらなく伝搬するので、100%のエネルギー結合効率を達成することができる。従って、固体レーザー材料内に蓄積されているエネルギーを完全に被増幅ビームの増幅に寄与させることが可能になり、レーザー出力、総合効率を向上させることができる。同時に、被増幅ビームの増幅に寄与しない部分が全くなくなることにより、被増幅ビームが伝搬しない領域におけるエネルギーに起因する熱問題による出力レーザービームの品質の低下を軽減できる。また、内部反射角θを小さくできることにより固体レーザー材料のエッジ部分(図2におけるv及びv′点近傍部分)を極めて緩やかに(即ちφを大きく)できるので大幅に寄生発振を抑制することができる。更に、本発明の好適一局面においては、固体レーザー材料の入射面における被増幅ビームの厚み方向の長さを被増幅ビームの厚みより長くすることができるので、上記エッジ部分を面取りすることができ材料自体の機械的強度をも高く取ることができる。
【0028】
つまり、本発明は、レーザー動作特性の効率を特徴づける主要なパラメーターであるエネルギー結合効率を簡単な構成で100%にできるものである。従って、従来よりも簡便に小型で、効率良く高出力を得ることができるとともに、好適実施形態においては固体レーザー材料自体の機械的強度の向上も期待できるので、高繰り返し、高出力、高効率、高ビーム品質固体レーザーに適している。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の好適な実施形態によるジグザグスラブ型固体レーザー増幅器又は発振器の概略構成図である。
【図2】寸法関係を見やすくするため、図1に示される被増幅ビーム16のハッチングを除いた以外図1と同じ構成図である。
【図3】代表的な従来例としてのジグザグスラブ型固体レーザー増幅器又は発振器の構成図である。
【図4】内部反射角θに対するエネルギー結合効率Cの計算結果を示す図である。
【符号の説明】
10 固体レーザー材料
12 入射部分
14 出射部分
16 被増幅ビーム
18 入射面
20 出射面
22a、22b 全反射面
102 励起光源
110 励起領域
Claims (4)
- 固体レーザー材料部に入射された平行光束の被増幅ビームの伝搬するレーザーモード体積と外部励起光源により励起される前記固体レーザー材料部の励起体積とが実質的に重なり合うよう構成された前記固体レーザー材料部を有するジグザグスラブ型固体レーザー増幅器において、
前記固体レーザー材料部は、平行光束の被増幅ビームが入射する入射部と、励起領域を含み、前記入射された平行光束の被増幅ビームが伝搬する本体と、当該伝搬された平行光束の被増幅ビームが出射する出射部とを有し、
前記入射部、本体及び出射部は、同一材料で一体に形成され、
前記本体は、所定の厚みtと、当該厚み方向tに直交し互いに対向している上側全反射面及び下側全反射面であって、当該全反射面に対して内部反射角θで入射された前記被増幅ビームを全反射する前記上側全反射面及び下側全反射面とを有し、
前記入射部は、前記本体における前記被増幅ビームの伝搬方向であって平行光束の被増幅ビームの入射側へ前記本体から延在するよう配置され、
前記入射部は更に、前記下側全反射面に対して実質的に前記内部反射角θで入射される平行光束の被増幅ビームの入射方向に対して実質的に直交する入射面を有し、
前記平行光束の被増幅ビームの厚みd方向における上側の最も外側を通る光と前記上側全反射面とが最初に交わる位置をpとし、
前記平行光束の被増幅ビームの厚みd方向における下側の最も外側を通る光と前記下側全反射面とが最初に交わる位置をrとし、
前記平行光束の被増幅ビームの厚みd方向における前記入射面の前記上側全反射面側の上端位置をuとし、
前記平行光束の被増幅ビームの厚みd方向における前記入射面の前記下側全反射面側の下端位置をvとし、
前記上側全反射面を位置pから前記入射面に延長して当該入射面と交わる点をwとし、
位置pと点wとの間の距離をgとし、
点wと位置uとの間の長さをeとし、
点wと位置vとの間の長さをfとすると、
前記平行光束の被増幅ビームの厚みd方向の前記入射面の長さe+fが次式
e+f≧d
の関係を満たし、
前記入射面が、次式
g≧t(1/tanθ−1/tan(90°−θ))
の関係を満たすよう位置pから入射側に延長した位置にあり、
前記入射面の上端位置uと前記上側全反射面の位置pとの間にある前記入射部の上側側面は、前記入射部への入射後の平行光束の被増幅ビームの上側の最も外側を通る光が前記入射部内を通るようにそれより外側に形成され、
前記入射面の下端位置vと前記下側全反射面の位置rとの間にある前記入射部の下側側面は、前記入射部への入射後の平行光束の被増幅ビームの下側の最も外側を通る光が前記入射部内を通るようにそれより外側に形成される
ことを特徴とするジグザグスラブ型固体レーザー増幅器。 - 前記出射部は、前記本体における前記被増幅ビームの伝搬方向であって平行光束の被増幅ビームの出射側へ前記本体から延在するよう配置され、
前記出射部が前記入射部と実質的同一形状及び大きさを有し、前記入射部の入射面に対応する面が出射面となる
請求項1記載のジグザグスラブ型固体レーザー増幅器。 - 固体レーザー材料部に入射された平行光束の被増幅ビームの伝搬するレーザーモード体積と外部励起光源により励起される前記固体レーザー材料部の励起体積とが実質的に重なり合うよう構成された前記固体レーザー材料部を有するジグザグスラブ型固体レーザー発振器において、
前記固体レーザー材料部は、平行光束の被増幅ビームが入射する入射部と、励起領域を含み、前記入射された平行光束の被増幅ビームが伝搬する本体と、当該伝搬された平行光束の被増幅ビームが出射する出射部とを有し、
前記入射部、本体及び出射部は、同一材料で一体に形成され、
前記本体は、所定の厚みtと、当該厚み方向tに直交し互いに対向している上側全反射面及び下側全反射面であって、当該全反射面に対して内部反射角θで入射された前記被増幅ビームを全反射する前記上側全反射面及び下側全反射面とを有し、
前記入射部は、前記本体における前記被増幅ビームの伝搬方向であって平行光束の被増幅ビームの入射側へ前記本体から延在するよう配置され、
前記入射部は更に、前記下側全反射面に対して実質的に前記内部反射角θで入射される平行光束の被増幅ビームの入射方向に対して実質的に直交する入射面を有し、
前記平行光束の被増幅ビームの厚みd方向における上側の最も外側を通る光と前記上側全反射面とが最初に交わる位置をpとし、
前記平行光束の被増幅ビームの厚みd方向における下側の最も外側を通る光と前記下側全反射面とが最初に交わる位置をrとし、
前記平行光束の被増幅ビームの厚みd方向における前記入射面の前記上側全反射面側の上端位置をuとし、
前記平行光束の被増幅ビームの厚みd方向における前記入射面の前記下側全反射面側の下端位置をvとし、
前記上側全反射面を位置pから前記入射面に延長して当該入射面と交わる点をwとし、
位置pと点wとの間の距離をgとし、
点wと位置uとの間の長さをeとし、
点wと位置vとの間の長さをfとすると、
前記平行光束の被増幅ビームの厚みd方向の前記入射面の長さe+fが次式
e+f≧d
の関係を満たし、
前記入射面が、次式
g≧t(1/tanθ−1/tan(90°−θ))
の関係を満たすよう位置pから入射側に延長した位置にあり、
前記入射面の上端位置uと前記上側全反射面の位置pとの間にある前記入射部の上側側面は、前記入射部への入射後の平行光束の被増幅ビームの上側の最も外側を通る光が前記入射部内を通るようにそれより外側に形成され、
前記入射面の下端位置vと前記下側全反射面の位置rとの間にある前記入射部の下側側面は、前記入射部への入射後の平行光束の被増幅ビームの下側の最も外側を通る光が前記入射部内を通るようにそれより外側に形成される
ことを特徴とするジグザグスラブ型固体レーザー発振器。 - 前記出射部は、前記本体における前記被増幅ビームの伝搬方向であって平行光束の被増幅ビームの出射側へ前記本体から延在するよう配置され、
前記出射部が前記入射部と実質的同一形状及び大きさを有し、前記入射部の入射面に対応する面が出射面となる
請求項3記載のジグザグスラブ型固体レーザー発振器。
Priority Applications (1)
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JP33977998A JP3640819B2 (ja) | 1998-11-30 | 1998-11-30 | ジグザグスラブ型固体レーザー増幅器及び発振器 |
Applications Claiming Priority (1)
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JP33977998A JP3640819B2 (ja) | 1998-11-30 | 1998-11-30 | ジグザグスラブ型固体レーザー増幅器及び発振器 |
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Family Applications (1)
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-
1998
- 1998-11-30 JP JP33977998A patent/JP3640819B2/ja not_active Expired - Fee Related
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