JP3639707B2 - 液体吐出ヘッド及びヘッド用基板 - Google Patents
液体吐出ヘッド及びヘッド用基板 Download PDFInfo
- Publication number
- JP3639707B2 JP3639707B2 JP33606097A JP33606097A JP3639707B2 JP 3639707 B2 JP3639707 B2 JP 3639707B2 JP 33606097 A JP33606097 A JP 33606097A JP 33606097 A JP33606097 A JP 33606097A JP 3639707 B2 JP3639707 B2 JP 3639707B2
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- liquid
- movable member
- substrate
- heating element
- discharge head
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Expired - Fee Related
Links
Images
Classifications
-
- B—PERFORMING OPERATIONS; TRANSPORTING
- B41—PRINTING; LINING MACHINES; TYPEWRITERS; STAMPS
- B41J—TYPEWRITERS; SELECTIVE PRINTING MECHANISMS, i.e. MECHANISMS PRINTING OTHERWISE THAN FROM A FORME; CORRECTION OF TYPOGRAPHICAL ERRORS
- B41J2/00—Typewriters or selective printing mechanisms characterised by the printing or marking process for which they are designed
- B41J2/005—Typewriters or selective printing mechanisms characterised by the printing or marking process for which they are designed characterised by bringing liquid or particles selectively into contact with a printing material
- B41J2/01—Ink jet
- B41J2/135—Nozzles
- B41J2/14—Structure thereof only for on-demand ink jet heads
- B41J2/14016—Structure of bubble jet print heads
- B41J2/14032—Structure of the pressure chamber
- B41J2/14048—Movable member in the chamber
Landscapes
- Particle Formation And Scattering Control In Inkjet Printers (AREA)
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、熱エネルギーを液体に作用させることで起こる気泡の発生によって所望の液体を吐出する液体吐出ヘッド及びヘッド用基板に関し、特に、気泡の発生を利用して変位する可動部材を有する液体吐出ヘッド及びヘッド用基板に関する。
【0002】
なお、本発明における、「記録」とは、文字や図形等の意味を持つ画像を被記録媒体に対して付与することだけでなく、パターン等の意味を持たない画像を付与することをも意味するものである。
【0003】
【従来の技術】
熱等のエネルギーをインクに与えることで、インクに急峻な体積変化(気泡の発生)を伴う状態変化を生じさせ、この状態変化に基づく作用力によって吐出口からインクを吐出し、これを被記録媒体上に付着させて画像形成を行なうインクジェット記録方法、いわゆるバブルジェット記録方法が従来から知られている。
【0004】
このバブルジェット記録方法を用いる記録装置には、特公昭61−59911号公報や特公昭61−59914号公報に開示されているように、インクを吐出するための吐出口と、この吐出口に連通するインク流路と、インク流路内に配されたインクを吐出するためのエネルギー発生手段としての発熱体(電気熱変換体)とが一般的に設けられている。
【0005】
上記のような記録方法によれば、品位の高い画像を高速、低騒音で記録することができるとともに、この記録方法を行うヘッドではインクを吐出するための吐出口を高密度に配置することができるため、小型の装置で高解像度の記録画像、さらにカラー画像をも容易に得ることができる等の多くの優れた点を有している。このため、このバブルジェット記録方法は近年、プリンター、複写機、ファクシミリ等の多くのオフィス機器に利用されており、さらに、捺染装置等の産業用システムにまで利用されるようになってきている。
【0006】
そこで、本発明者達のうちの一部は、液体吐出の原理に立ち返り、従来では得られなかった気泡を利用した新規な液体吐出方法及びそれに用いられるヘッド等を提供すべく鋭意研究を行い、特開平9−201966号公報等を出願している。
特開平9−201966号公報に開示された発明は、液路中の可動部材の支点と自由端との位置関係を、吐出口側つまり下流側に自由端が位置する関係にすること、また可動部材を発熱体もしくは、気泡発生領域に面して配置することで積極的に気泡を制御する技術である。
【0007】
上述したような、極めて新規な吐出原理に基づく液体吐出ヘッド等によると、発生する気泡とこれによって変位する可動部材との相乗効果を得ることができ、吐出口近傍の液体を効率良く吐出できるため、従来のバブルジェット方式の吐出方法、ヘッド等に比べて、吐出効率を向上させることができる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
ここで、上述した液体吐出ヘッドに用いられる可動部材の材料としては、様々な物が考えられるが、気泡の発生による圧力を液体の吐出に効率的に利用するために、弾性に優れたニッケルが一般的に使われている。
【0009】
ここで、可動部材の効果を十分に引き出すためには、可動部と発熱体との間に1〜20μm程度のギャップ(間隔)を設ける必要があり、そのため図1のように可動部材の固定部分にギャップと同程度の厚さの台座を設ける必要がある。しかしながら、この構成では、特に発熱抵抗体を高密度に配列するような場合には、可動部材を発熱抵抗体に対し所定の位置に位置決するように台座部に高精度に固定することは困難である。よって、発熱抵抗体を高密度に配列するような場合にも高精度に位置決めできるような構成が求められている。
【0010】
また、上記構成のうち、台座と可動部材とをニッケル等のメッキ可能な材料でメッキ(電鋳)によって形成する場合には半導体技術であるフォトリソグラフィ法を用いて高精度に可動部材の発熱抵抗体に対しての位置決めを行うことができるが、この場合、工程が複雑であり、また、例えば高アルカリインクを用いるような場合にはメッキ材料のインクに対する耐食性の点で必ずしも十分でないことがあった。
【0011】
本発明は上述したような従来の技術が有する問題点に鑑みてなされたものであって、機械的および化学的な耐久性に優れ、かつ、製造コストの小さい液体吐出ヘッド用基板を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために本発明は以下の発明および実施態様を包含する。
【0013】
液体を吐出する吐出口と、該吐出口に連通し、該吐出口に液体を供給する液流路と、液体に気泡を発生させるための発熱体を具備する基板と、前記発熱体に面するように前記吐出口側を自由端として前記液流路内に設けられ、且つ該自由端が前記発熱体の面積中心より下流に位置した可動部材とを備えた液体吐出ヘッドにおいて、
前記可動部材は、可動部材形成材料を前記発熱体を具備する基板上に成膜することにより該基板に対して一端を固定され、他端を該基板に対して距離を隔てて配するように一体的に形成されたものであり、該可動部材形成材料が窒化硅素、ダイアモンド、水素化アモルファスカーボン、炭化硅素のいずれかで形成されていることを特徴とする液体吐出ヘッド。
【0014】
▲2▼ 該可動部材が不純物を添加した窒化硅素で形成されていることを特徴とする▲1▼記載の液体吐出ヘッド。
【0015】
▲3▼ 該可動部材が組成を変化させた、あるいは不純物を添加した、窒化硅素多層膜で形成されていることを特徴とする▲1▼の液体吐出ヘッド。
【0016】
液体に気泡を発生させるための発熱体と、該発熱体に面するように所定の間隔をもって配される片持ち梁状の可動部材と、を備えた液体吐出ヘッド用基板において、
前記可動部材は、可動部材形成材料を前記基板上に成膜することにより該基板に対して一端を固定され、他端を該基板に対して距離を隔てて配するように一体的に形成されたものであり、該可動部材形成材料が窒化硅素、ダイアモンド、水素化アモルファスカーボン、炭化硅素のいずれかで形成されていることを特徴とする液体吐出ヘッド用基板。
【0017】
▲5▼ 該可動部材が不純物を添加した窒化硅素で形成されていることを特徴とする▲4▼記載の液体吐出ヘッド用基板。
【0018】
▲6▼ 該可動部材が組成を変化させた、あるいは不純物を添加した、窒化硅素多層膜で形成されていることを特徴とする▲4▼記載の液体吐出ヘッド用基板。
【0019】
(作用)
上記のように構成された本発明においては、簡単に基板上に可動部材を形成することができる。そしてこの構成材料は耐薬品性及び耐インク性があり、高信頼性のヘッド並びにそれを備えた基板が製造できる。
【0020】
なお、本発明の説明で用いる「上流」「下流」とは、液体の供給源から気泡発生領域(又は可動部材)を経て、吐出口へ向かう液体の流れ方向に関して、又はこの構成上の方向に関しての表現として表されている。
気泡自体に関する「下流側」とは、主として液滴の吐出に直接作用するとされる気泡の吐出口側部分を代表する。より具体的には気泡の中心に対して、上記流れ方向や上記構成上の方向に関する下流側、又は、発熱体の面積中心より下流側の領域で発生する気泡を意味する。
【0021】
本発明でいう「分離壁」とは、広義では気泡発生領域と吐出口に直接連通する領域とを区分するように介在する壁(可動部材を含んでもよい)を意味し、狭義では気泡発生領域を含む流路を吐出口に直接連通する液流路とを区分し、それぞれの領域にある液体の混合を防止するものを意味する。
【0022】
さらに、本発明でいう「櫛歯」とは、可動部材の支点部が共通部材になっており、自由端の前方が開放されている形状を意味する。
【0023】
【発明の実施の形態】
本発明の具体的な実施例を説明する前に、まず、本発明における液体を吐出する際に、気泡に基づく圧力の伝搬方向や気泡の成長方向を制御して吐出力や吐出効率を向上する最も基本となる構成について説明する。
【0024】
図1は、本発明の液体吐出ヘッドにおける吐出原理を説明するための図であり、液流路方向の断面図である。また、図2は、図1に示した液体吐出ヘッドの部分破断斜視図である。
【0025】
図1に示す例では、液体吐出ヘッドは、液体を吐出するための吐出エネルギー発生素子として、液体に熱エネルギーを作用させる発熱体2(本例においては40μm×105μmの形状の発熱抵抗体)が素子基板1に設けられており、この素子基板上に発熱体2に対応して液流路10が配されている。液流路10は吐出口18に連通していると共に、複数の液流路10に液体を供給するための共通液室13に連通しており、吐出口18から吐出された液体に見合う量の液体をこの共通液室13から受け取る。
【0026】
この液流路10の素子基板上には、前述の発熱体2に対向するように面して、弾性を有する材料で構成され、平面部を有する板状の可動部材31が片持梁状に設けられている。この可動部材の一端は液流路10の壁や素子基板1上に固定されている。これによって、可動部材は保持されると共に支点(支点部分)33を構成している。
【0027】
また、可動部材がフォトリソグラフィ法によるパターニング法によって精度良く位置が決められるので、発熱抵抗体との高精度な位置合わせが可能になる。
【0028】
この可動部材31は、液体の吐出動作によって共通液室13から可動部材31を経て吐出口18側へ流れる大きな流れの上流側に支点(支点部分:固定端)33を持ち、この支点33に対して下流側に自由端(自由端部分)32を持つように、発熱体2に面した位置に発熱体2を覆うような状態で発熱体から15μm程度の距離を隔てて配されている。この発熱体2と可動部材31との間が気泡発生領域11となる。
【0029】
発熱体2を発熱させることで可動部材31と発熱体2との間の気泡発生領域11の液体に熱を作用し、液体にUSP4,723,129に記載されているような膜沸騰現象に基づく気泡を発生させる。気泡の発生に基づく圧力と気泡は可動部材に優先的に作用し、可動部材31は図1(b)、(c)もしくは図2で示されるように支点33を中心に吐出口18側に大きく開くように変位する。可動部材31の変位若しくは変位した状態によって気泡の発生に基づく圧力の伝搬や気泡自身の成長が吐出口18側に導かれる。またこのとき、自由端32の先端部が幅を有しているため、気泡の発泡パワーを吐出口18側へ導きやすくなり、吐出効率や吐出力または吐出速度等の根本的な向上を図ることができる。
【0030】
図3は、本発明の液体吐出ヘッドの基本的な機能を説明するための、液体吐出ヘッドの液流路方向に沿った断面図である。
【0031】
図3に示すように、この液体吐出ヘッドは、液体に気泡を発生させるための熱エネルギーを与える複数個(図4では1つのみ示す)の発熱体2が並列で設けられた素子基板1と、この素子基板1上に接合された天板3と、素子基板1および天板3aの前端面に接合されたオリフィスプレート4とを有する。
【0032】
素子基板1は、シリコン等の基板上に絶縁および畜熱を目的としたシリコン酸化膜または窒化シリコン膜を成膜し、その上に、発熱体2を構成する電気抵抗層および配線をパターニングしたものである。この配線から電気抵抗層に電圧を印加し、電気抵抗層に電流を流すことで発熱体2が発熱する。
【0033】
天板3aは、各発熱体2に対応した複数の液流路7および各液流路7に液体を供給するための共通液室8を構成するためのもので、天井部分から各発熱体2の間に延びる液路側壁9が一体的に設けられている。天板3はシリコン系の材料で構成され、液流路7および共通液室9のパターンをエッチングで形成したり、シリコン基板上にCVD等の公知の成膜方法により窒化シリコン、酸化シリコンなど、流路側壁となる材料を堆積した後、液流路7の部分をエッチングして形成することができる。
【0034】
オリフィスプレート4には、各液流路7に対応しそれぞれ液流路7を介して共通液室8に連通する複数の吐出口5が形成されている。オリフィスプレート4もシリコン系の材料からなるものであり、例えば、吐出口5を形成したシリコン基板を10〜150μm程度の厚さに削ることにより形成される。なお、オリフィスプレート4は本発明では必ずしも必要な構成ではなく、オリフィスプレート4も設ける代わりに、天板3aに液流路7を形成する際に天板3aの先端面にオリフィスプレート4の厚さ相当の壁を残し、個の部分に吐出口5を形成することで、吐出口付きの天板とすることもできる。
【0035】
さらに、この液体吐出ヘッドには、液流路7を吐出口5に連通した第1の液流路7aと、発熱体2を有する第2の液流路7bとに分けるように、発熱体2に対面して配置された片持梁状の可動部材6が設けられている。可動部材6は、窒化シリコンや酸化シリコンなどのシリコン系の材料で形成された薄膜である。
【0036】
この可動部材6は、液体の吐出動作によって共通液室8から可動部材6を経て吐出口5側へ流れる大きな流れの上流側に支点6aを持ち、この支点6aに対して下流側に自由端6bを持つように、発熱体2に面した位置に発熱体2を覆うような状態で発熱体2から所定の距離を隔てて配されている。この発熱体2と可動部材6との間が気泡発生領域10aとなる。
【0037】
上記構成に基づき、発熱体2を発熱させると、可動部材6と発熱体2との間の気泡発生領域10aの液体に熱が作用し、これにより発熱体2上に膜沸騰現象に基づく気泡が発生し、成長する。この気泡の成長に伴う圧力は可動部材6に優先的に作用し、可動部材6は図3に破線で示されるように、支点6aを中心に吐出口5側に大きく開くように変位する。可動部材6の変位もしくは変位した状態によって、気泡の発生に基づく圧力の伝搬や気泡自身の成長が吐出口5側に導かれ、吐出口5から液体が吐出する。
【0038】
つまり、気泡発生領域10a上に、液流路7内の液体の流れの上流側(共通液室8側)に支点6aを持ち下流側(吐出口5側)に自由端6bを持つ可動部材6を設けることによって、気泡の圧力伝搬方向が下流側に導かれ、気泡の圧力が直接的に効率よく吐出に寄与することになる。そして、気泡の成長方向自体も圧力伝搬方向と同様に下流方向に導かれ、上流より下流で大きく成長する。このように、気泡の成長方向自体を可動部材によって制御し、気泡の伝搬方向を制御することで、吐出効率や吐出力または吐出速度等の根本的な吐出特性を向上させるこよができる。
【0039】
一方、気泡が消泡工程に入ると、可動部材6の弾性力との相乗効果で気泡は急速に消泡し、可動部材6も最終的には図3に実線で示した初期位置に復帰する。このとき、気泡発生領域10aでの気泡の収縮体積を補うため、また、吐出された液体の体積分を補うために、上流側すなわち共通液室側から液体が流れ込み、液流路7への液体の充填(リファル)が行われるが、この液体のリファイルは、可動部材6の復帰作用に伴って効率よく合理的かつ安定して行われる。
以下に、本発明の液体吐出ヘッドの特徴である可動部材を構成する材料及び製造方法について詳しく説明する。
【0040】
実施例1
まず基板201上にCVD法によって、温度350℃の条件でBPSGを形成する(図5(a))。このBPSGの膜厚は最終的に可動部材の可動部と発熱体とのギャップに相当し、1〜20μmの間で流路全体のバランス上もっとも可動部材の効果が顕著となる値に制御する。次にBPSGをパターニングするためのレジスト203をスピンコートなどにより塗布し(図5(b))、露光、現像する(図5(c))。これにより、可動部材の固定部に相当する部分のレジストを除去する。
【0041】
これをバッファードフッ酸によるウェットエッチングによってレジストのない部分のBPSGを除去する。次に酸素プラズマによるプラズマアッシング、あるいはレジスト除去剤に浸して、残ったレジストを除去する(図5(e))。この上にプラズマCVD法によって、アンモニアとシランガスを原料として温度400℃の条件で1〜10μmの厚さにSiN(SiN膜の組成は、Si3 N4 が最も良いとされるが、可動部材の効果としてはSi:1に対しNが1〜1.5の範囲でも良い。)膜を形成する。このSiN膜は半導体プロセスに一般的に使用され、耐アルカリ性、化学的安定性があり、耐インク性もある。
【0042】
すなわち、この膜が最終的に可動部材となるため、最適の物性値を得る構造および組成を達成する製造方法は限定されない。例えばSiNの形成方法は、先にあげたプラズマCVD法にかかわらず、常圧CVD、LP(低圧)CVD、バイアスECRCVD、マイクロ波CVD、あるいはスパッタ法、塗布方法でも製造は可能である。またSiN膜においてもその応力、剛性、ヤング率等の物理的特性、耐アルカリ性、耐酸性等の化学的特性を、その用途に応じて向上させるために、段階的に組成比を変えて多層膜化する。あるいは段階的に不純物を添加して多層膜化する。あるいは、単層で不純物を添加しても良い。次にSiN膜をパターニングするためのレジストをスピンコートなどにより塗布し、パターニングする。そして、CF4 ガス等を使用したドライエッチング、あるいはリアクティブイオンエッチング法等によって可動部材の形状にエッチングを行なう。
【0043】
最後にバッファードフッ酸によるウェットエッチングを行って可動部の下部に残っているBPSGを全て取り除くと図5(h)に示すように可動部材を形成することが出来る。また、万一、BPSGが可動部下の最奥部に一部、エッチング残りをおこしたとしても、BPSGはインクのようなアルカリ性のものにエッチングされやすく、最終的にインクを供給した時に溶け出すために、信頼性上の問題を起こしにくい。またここでは可動部材のギャップとして、上記のようにBPSGにこだわらず、バッファードフッ酸によるSiNとの選択比が取れるものであれば良く、BPSG以外には、低温、例えば400℃未満で低いものほどエッチングされやすいSiO膜でも良く、Pのみを添加したPSGでも良い。また、上記以外でも、工程上の簡便さの観点から、有機性の材料を使用しても良い。
【0044】
なお、上記において、可動部材の厚さを1〜10μmの範囲で規定したが、例えば公知としてあげられている可動部材のNiに対し、SiNはそのヤング率が約2倍程度高いため、その相対的厚さを1/2としても同等の効果が得られる。
【0045】
なお、上記記述においては可動部材についてのみであるが、この可動部材を支持する部分も同時に作り込むことも可能である。(図4参照)
【0046】
実施例2
可動部材をダイヤモンド膜、あるいは水素化アモルファスカーボン膜で形成することも可能である。実施例1においてSiN膜の代りにメタンガス、窒素、酸素を原料として、マイクロ波(2.45GHz)を使いプラズマを励起させ、基板温度450℃で成膜させればダイヤモンド膜を形成することが出来る。あるいはダイヤモンドよりさらに容易に製造可能な水素化アモルファスカーボン膜(ダイヤモンドライクカーボン)は13.56MHzのRFバイアスによってプラズマを励起させたプラズマCVD法によって形成することが出来る。
【0047】
このようにして形成したダイヤモンド膜はきわめて物理的特性(例えばヤング率はSiNの約3倍であり、相対的に1/3の厚さでも同様の効果が得られる。)にすぐれ、化学的安定性が高く、放熱特性もすぐれている事から、SiN膜より可動部材として適している。また水素化アモルファスカーボン膜はダイヤモンド膜よりその物理的特性は劣るが、SiN膜より勝るので、性能と、製造の困難さ、すなわち製造コストのバランスの観点から、ダイヤモンド膜およびSiN膜と同様に、使用することが出来る。
【0048】
実施例3
可動部材をさらにSiCにしても同様の効果が得られる。SiC膜の組成はSi:C=1:1が最も良いとされるが、可動部材としてはSi:1に対し、Cは0.5〜1.5の範囲でも同様の効果が得られる。
【0049】
以下に、液体に熱を与えるための発熱体2が設けられた素子基板1の構成について説明する。
【0050】
図6は、本発明の液体吐出ヘッドが適用された液体吐出装置の一構成例を示す縦断面図であり、(a)は後述する保護膜がある装置を示す図、(b)は保護膜がない装置を示す図である。
【0051】
図6においては、図1に示した液流路10を第1の液流路14とし、また、液体供給路12を第2の液流路16としており、各々に供給される液体を同じ液体としても良いが、異なる液体を使用すれば、第1の液流路14に供給される液体つまり吐出液の選択の範囲を広げることができる。
【0052】
図6に示すように、素子基板1上に、第2の液流路16と、分離壁30と、可動部材31と、第1の液流路14と、第1の液流路14を構成する溝が設けられている溝付部材50とが設けられている。
【0053】
素子基板1には、シリコン等の基体107上に、絶縁および蓄熱を目的としたシリコン酸化膜またはチッ化シリコン膜106が成膜されており、その上に0.01〜0.2μm厚の発熱体を構成するハフニュウムボライド(HfB2 )、チッ化タンタル(TaN)、タンタルアルミ(TaAl)等の電気抵抗層105と、0.2〜1.0μm厚のアルミニウム等の配線電極104とがパターニングされている。この2つの配線電極104から電気抵抗層105に電圧を印加し、電気抵抗層105に電流を流して発熱させる。配線電極104間の電気抵抗層105上には、酸化シリコンやチッ化シリコン等の保護層103が0.1〜0.2μm厚で形成され、さらにその上に、0.1〜0.6μm厚のタンタル等の耐キャビテーション層102が成膜されており、インク等各種の液体から電気抵抗層105を保護している。
【0054】
特に、気泡の発生、消泡の際に発生する圧力や衝撃波は非常に強く、堅くてもろい酸化膜の耐久性を著しく低下させるため、金属材料のタンタル(Ta)等が耐キャビテーション層102として用いられる。
【0055】
また、液体、液流路構成、抵抗材料の組み合わせにより上述の保護層を必要としない構成でもよく、その例を図6(b)に示す。
【0056】
このような保護層を必要としない抵抗層の材料としては、イリジュウム=タンタル=アルミ合金等が挙げられる。特に、本発明において、発泡のための第2の液流路の液体を第1の液流路の吐出液と分離して発泡に適したものにできるため、このように保護層がない場合に有利である。
【0057】
このように、上述した実施の形態における発熱体2の構成としては、配線電極104間に電気抵抗層105(発熱部)だけででもよく、また電気抵抗層105を保護する保護層を含むものでもよい。
【0058】
本形態においては、発熱体2として、電気信号に応じて発熱する抵抗層で構成された発熱部を有するものを用いたが、本発明は、これに限られることなく、吐出液を吐出させるのに十分な気泡を第2の液流路の発泡液に生じさせるものであればよい。例えば、発熱部としてレーザ等の光を受けるとこで発熱するような光熱変換体や高周波を受けることで発熱するような発熱部を有する発熱体でもよい。
【0059】
なお、前述の素子基板1には、発熱部を構成する電気抵抗層105とこの電気抵抗層105に電気信号を供給するための配線電極104とで構成される電気熱変換体の他に、この電気熱変換素子を選択的に駆動するためのトランジスタ、ダイオード、ラッチ、シフトレジスタ等の機能素子が一体的に半導体製造工程によって作り込まれていてもよい。
【0060】
また、上述したような素子基板1に設けられている電気熱変換体の発熱部を駆動し、液体を吐出するためには、電気抵抗層105に配線電極104を介して矩形パルスを印加し、配線電極104間の電気抵抗層105を急峻に発熱させればよい。
【0061】
図7は、図6に示した電気抵抗層105に印加する電圧波形を示す図である。
【0062】
上述した実施の形態における液体吐出装置においては、それぞれ電圧24V、パルス幅7μsec、電流150mA、電気信号を6kHzで加えることで発熱体を駆動させ、前述のような動作によって、吐出口から液体であるインクを吐出させた。しかしながら、本発明における駆動信号の条件はこれに限られることなく、発泡液を適正に発泡させることができる駆動信号であればよい。
【0063】
【発明の効果】
以上説明したように本発明においては、耐インク性のある材料で形成された可動部材が基板上作り込まれているために、気泡発生領域に対面し、気泡発生領域で発生する気泡を誘導して液体の吐出に効率的に利用可能かつ、簡単に製造が出来信頼性の高い液体吐出ヘッド及び液体吐出ヘッド用基板を提供することができる。すなわち、可動部材の製造コストと信頼性との両立を実現可能とした。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の液体吐出ヘッドにおける吐出原理を説明するための図である。
【図2】 図1に示した液体吐出ヘッドの部分破断斜視図である。
【図3】 本発明の液体吐出ヘッドの機能を説明するための断面図である。
【図4】 図5に示した工程によって作製された可動部材の形状を示す断面図である。
【図5】 本発明の液体吐出ヘッドに用いられる可動部材の製造方法の実施の一形態を示す図である。
【図6】 本発明の液体吐出ヘッドが適用された液体吐出装置の一構成例を示す縦断面図であり、(a)は後述する保護膜がある装置を示す図、(b)は保護膜がない装置を示す図である。
【図7】 図6に示した電気抵抗層に印加する電圧波形を示す図である。
Claims (6)
- 液体を吐出する吐出口と、該吐出口に連通し、該吐出口に液体を供給する液流路と、液体に気泡を発生させるための発熱体を具備する基板と、前記発熱体に面するように前記吐出口側を自由端として前記液流路内に設けられ、且つ該自由端が前記発熱体の面積中心より下流に位置した可動部材とを備えた液体吐出ヘッドにおいて、
前記可動部材は、可動部材形成材料を前記発熱体を具備する基板上に成膜することにより該基板に対して一端を固定され、他端を該基板に対して距離を隔てて配するように一体的に形成されたものであり、該可動部材形成材料が窒化硅素、ダイアモンド、水素化アモルファスカーボン、炭化硅素のいずれかで形成されていることを特徴とする液体吐出ヘッド。 - 該可動部材が不純物を添加した窒化硅素で形成されていることを特徴とする請求項1記載の液体吐出ヘッド。
- 該可動部材が組成を変化させた、あるいは不純物を添加した、窒化硅素多層膜で形成されていることを特徴とする請求項1記載の液体吐出ヘッド。
- 液体に気泡を発生させるための発熱体と、該発熱体に面するように所定の間隔をもって配される片持ち梁状の可動部材と、を備えた液体吐出ヘッド用基板において、
前記可動部材は、可動部材形成材料を前記基板上に成膜することにより該基板に対して一端を固定され、他端を該基板に対して距離を隔てて配するように一体的に形成されたものであり、該可動部材形成材料が窒化硅素、ダイアモンド、水素化アモルファスカーボン、炭化硅素のいずれかで形成されていることを特徴とする液体吐出ヘッド用基板。 - 該可動部材が不純物を添加した窒化硅素で形成されていることを特徴とする請求項4記載の液体吐出ヘッド用基板。
- 該可動部材が組成を変化させた、あるいは不純物を添加した、窒化硅素多層膜で形成されていることを特徴とする請求項4記載の液体吐出ヘッド用基板。
Priority Applications (5)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP33606097A JP3639707B2 (ja) | 1997-12-05 | 1997-12-05 | 液体吐出ヘッド及びヘッド用基板 |
DE69819976T DE69819976T2 (de) | 1997-08-05 | 1998-08-04 | Flüssigkeitsausstosskopf, Substrat und Herstelllungsverfahren |
EP98114671A EP0895861B1 (en) | 1997-08-05 | 1998-08-04 | A liquid discharge head, a substrate for use of such head and a method of manufacture therefor |
US09/128,538 US6374482B1 (en) | 1997-08-05 | 1998-08-04 | Method of manufacturing a liquid discharge head |
US10/071,799 US6834943B2 (en) | 1997-08-05 | 2002-02-11 | Liquid discharge head, a substrate for use of such head and a method of manufacture therefor |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP33606097A JP3639707B2 (ja) | 1997-12-05 | 1997-12-05 | 液体吐出ヘッド及びヘッド用基板 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH11170531A JPH11170531A (ja) | 1999-06-29 |
JP3639707B2 true JP3639707B2 (ja) | 2005-04-20 |
Family
ID=18295290
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP33606097A Expired - Fee Related JP3639707B2 (ja) | 1997-08-05 | 1997-12-05 | 液体吐出ヘッド及びヘッド用基板 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP3639707B2 (ja) |
Families Citing this family (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
US6474792B2 (en) | 2000-07-31 | 2002-11-05 | Canon Kabushiki Kaisha | Liquid discharge head, method for manufacturing liquid discharge head, head cartridge on which liquid discharge head is mounted, and liquid discharge apparatus |
-
1997
- 1997-12-05 JP JP33606097A patent/JP3639707B2/ja not_active Expired - Fee Related
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JPH11170531A (ja) | 1999-06-29 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
US20020093553A1 (en) | Liquid discharge head, a substrate for use of such head and a method of manufacture therefor | |
TW526139B (en) | Fully integrated thermal inkjet printhead having multiple ink feed holes per nozzle | |
KR100435012B1 (ko) | 잉크 제트 헤드 기판, 잉크 제트 헤드, 잉크 제트 헤드기판 제조 방법, 잉크 제트 헤드 제조 방법, 잉크 제트헤드 사용 방법 및 잉크 제트 기록 장치 | |
TW521040B (en) | Fully integrated thermal inkjet printhead having thin film layer shelf | |
JPH1024582A (ja) | 液体吐出ヘッド並びに該液体吐出ヘッドの回復方法及び製造方法、並びに該液体吐出ヘッドを用いた液体吐出装置 | |
JPH1076662A (ja) | 液体吐出ヘッド並びに該液体吐出ヘッドを用いたヘッドカートリッジ及び液体吐出装置並びに該液体吐出ヘッドの検査方法 | |
KR100335589B1 (ko) | 잉크 제트 헤드용 기판, 잉크 제트 헤드, 잉크 제트카트리지 및 잉크 제트 기록 장치 | |
KR100337847B1 (ko) | 액체 토출 헤드 및 액체 토출 방법 | |
JP2000225703A (ja) | 液体吐出ヘッド、該液体吐出ヘッドが搭載されたヘッドカートリッジと液体吐出装置、及び該液体吐出ヘッドの製造方法 | |
JP2000198199A (ja) | 液体吐出ヘッドおよびヘッドカートリッジおよび液体吐出装置および液体吐出ヘッドの製造方法 | |
US6196667B1 (en) | Liquid discharging head, method of manufacturing the liquid discharging head, head cartridge carrying the liquid discharging head thereon and liquid discharging apparatus | |
JPH10337870A (ja) | 液体吐出方法及び液体吐出ヘッド | |
JP3639707B2 (ja) | 液体吐出ヘッド及びヘッド用基板 | |
JPH1158743A (ja) | 液体吐出ヘッド及びその製造方法 | |
JP3530732B2 (ja) | インクジェットヘッドの製造方法 | |
JP3554149B2 (ja) | 液体吐出ヘッドの製造方法 | |
JP3647317B2 (ja) | 液体吐出ヘッド用基板、液体吐出ヘッド、前記液体吐出ヘッド用基板の製造方法、及び前記液体吐出ヘッドの製造方法 | |
JP3592108B2 (ja) | 液体吐出ヘッド、液体吐出装置および液体吐出方法 | |
KR100413680B1 (ko) | 버블 젯 방식의 잉크 젯 프린트 헤드 | |
JP2000225704A (ja) | 液体吐出方法、液体吐出ヘッド、該ヘッドの製造方法、ヘッドカートリッジおよび液体吐出装置 | |
JPH1148488A (ja) | 液体吐出ヘッドの製造方法及び液体吐出ヘッド | |
JP3535817B2 (ja) | 液体吐出方法、液体吐出ヘッド、液体吐出装置 | |
JPH11170532A (ja) | 液体噴射記録ヘッド | |
JP3336312B2 (ja) | カラー印写ヘッド | |
KR20050013856A (ko) | 잉크젯 프린트헤드 및 그 제조방법 |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
RD04 | Notification of resignation of power of attorney |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7424 Effective date: 20000704 |
|
A621 | Written request for application examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621 Effective date: 20020620 |
|
A977 | Report on retrieval |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007 Effective date: 20031117 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20031119 |
|
RD03 | Notification of appointment of power of attorney |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7423 Effective date: 20040119 |
|
A521 | Written amendment |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20040119 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20040512 |
|
A521 | Written amendment |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20040712 |
|
TRDD | Decision of grant or rejection written | ||
A01 | Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01 Effective date: 20050105 |
|
A61 | First payment of annual fees (during grant procedure) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61 Effective date: 20050117 |
|
R150 | Certificate of patent or registration of utility model |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20080121 Year of fee payment: 3 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20090121 Year of fee payment: 4 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20090121 Year of fee payment: 4 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20100121 Year of fee payment: 5 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20110121 Year of fee payment: 6 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120121 Year of fee payment: 7 |
|
LAPS | Cancellation because of no payment of annual fees |