JP3639289B1 - 孔版印刷用水性インキおよび孔版印刷方法 - Google Patents

孔版印刷用水性インキおよび孔版印刷方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 印刷物の乾燥性に優れ、印刷機が非使用状態に長期間放置された後でも印刷可能な孔版印刷用水性インキを提供する。
【解決手段】 トリエチレングリコールおよびβ−チオジグリコールのうちの少なくとも一方とジエチレングリコールとを配合する。また、25重量%以上のジエチレングリコールと不飽和カルボン酸系水溶性高分子とを配合する。
【選択図】 なし

Description

本発明は、孔版印刷用水性インキ、特に輪転式デジタル孔版印刷機への使用に適した孔版印刷用水性インキとそれを用いた孔版印刷方法に関する。
孔版印刷方式は、オフセット印刷、グラビア印刷、凸版印刷のような印刷方式に比べて、使用後に洗浄等の煩雑な作業を行う必要がない、専門のオペレーターを必要としない等の操作性の良さ、簡便性を備えている。サーマルプリンティングヘッドをデバイスとして用いる感熱製版方式を用いて以来、孔版印刷方式において画像処理のデジタル化が図られるようになり、高品位の印刷物を短時間で簡便に得られるようになったため、情報処理端末としてもますますその利便性が認められている。
マスターの製版・着版・排版動作、インキの供給動作や印刷動作等が自動制御された輪転式孔版印刷機は、デジタル孔版印刷機等の名称でオフィスや学校などで広く利用されている。
孔版印刷用インキとしては、従来から一般に油中水(W/O)型エマルションインキが使用されている。W/O型エマルションインキは、印刷機を非使用状態に放置したときに、印刷機内部のインキが大気と接触していても、インキの成分構成や物性の変化を抑制する機能を有している。すなわち、エマルションインキの内相成分である水は、外相成分である油によって覆われているため、その蒸発が抑制されている。
W/O型エマルションインキにより印刷された印刷物におけるインキの乾燥は、インキが被印刷体(印刷媒体)である印刷用紙の紙繊維の間へ浸透することと、紙繊維との接触によりエマルションが油相と水相に徐々に分離して、インキの主成分である水が大気と接触して蒸発することとにより進行すると考えられている。しかし、被印刷体に転移したインキ中の水は、印刷後の短時間のうちには大気と接触することができないため、印刷直後の乾燥性は浸透乾燥に頼ったものとなるところ、W/O型エマルションインキの粘度はある程度高く設計されているため、浸透速度は速くなく、そのため印刷直後のインキ乾燥性は充分とはいえなかった。
印刷物の乾燥を速めることは、孔版印刷にとって極めて重要な課題である。印刷物が乾燥しないと作業者はその印刷物を取り扱うことができず、孔版印刷の「短時間で高品質の印刷物を得る」利点が充分に活かされないからである。
そこで、印刷物の乾燥性を高めるために様々な改良がなされており、たとえば、紫外線照射により定着乾燥する孔版印刷用紫外線硬化型インキが知られている(特許文献1)。また、環境保全性、安全性の観点から孔版印刷用の水性インキが開発されており、印刷直後の印刷面に塩基を加えて水性インキの紙への浸透性を高める孔版印刷方法が知られている(特許文献2)。
特開2002−30238号公報 特開2001−302955号公報
しかしながら、化学反応による乾燥方式を利用した場合、硬化エネルギーの照射装置や反応液の塗布装置、そのためのエネルギー等が必要とされ、また高価な原材料をインキ中に含有させる必要もあった。
一方、従来提案されてきた孔版印刷用水性インキは、印刷機が非使用状態におかれて印刷機内のインキが開放系に長期間放置された状態になると、インキの流動性が失われてしまうという問題点を有していた。そのため、印刷機が非使用状態で長期間放置された後の印刷動作性が低下して、印刷直後もしくは印刷再開直前に印刷機を分解して洗浄しなくては、再び印刷動作を行うことができなくなり、孔版印刷の利点である「操作・作業性の良さ」が大きく損なわれてしまう。
そこで、本発明は、印刷機が非使用状態で長期間放置されても洗浄等の作業を行う必要がなく、また、熱、光、反応性物質の付与等の特殊な手段、装置、エネルギー等を使用しなくても印刷物の乾燥性に優れた孔版印刷用水性インキ、および、それを用いた孔版印刷方法を提供することを目的とする。
第1の本発明は、トリエチレングリコールおよびβ−チオジグリコールのうちの少なくとも一方とジエチレングリコールとを含む孔版印刷用水性インキに関する。
第2の本発明は、ジエチレングリコールと不飽和カルボン酸系水溶性高分子を含み、かつ、前記ジエチレングリコールの含有量が25重量%以上である孔版印刷用水性インキに関する。
第3の本発明は、上記本発明に係る孔版印刷用水性インキを用いる孔版印刷方法に関する。
第1および第2の本発明の孔版印刷用水性インキは、印刷機を長期間使用しない状態で印刷機内部の開放系で放置されて、インキ中の水がほとんど無くなってもその流動性を維持することができるので、これを用いることにより、印刷機を使用前または後に分解洗浄することなく印刷を行うことができ、非使用後の印刷機の印刷動作性を改良することができる。さらに、本発明の孔版印刷用水性インキは、印刷後の乾燥性が良好であるため、これを用いることにより、乾燥性に優れ、印刷直後に取り扱っても画像が擦れることのない高品質な印刷物を提供することができる。乾燥の原理は主として水の性質を利用したものであって、熱、光、反応性物質の付与等の特殊な手段、装置、エネルギー等を必要としないため、印刷装置の小型化、インキ原材料コストの低減、環境保全、安全性等の点で優れている。
第1の本発明に係る孔版印刷用水性インキ(以下、孔版印刷用水性インキを単に「インキ」と記す。)は、水と水溶性有機溶剤と着色剤を含み、水溶性有機溶剤としてトリエチレングリコールおよびβ−チオジグリコールのうちの少なくとも一方と、ジエチレングリコールと、を含むことを特徴とする。
これらの水溶性有機溶剤のインキ中の合計含有量は、印刷機長期放置後のインキ流動性を維持する観点から、12.5重量%以上であることが好ましく、15重量%以上であることがより好ましい。
一方、これらの水溶性有機溶剤の配合量の上限については、特に限定はされないが、画像の裏抜けを少なくするため、合計で45重量%以下程度であることが好ましく、35重量%以下程度がより好ましい。
さらに、その他の水溶性有機溶剤を併用することも可能である。その他の水溶性有機溶剤としては、室温で液体であり、水に溶解可能な有機化合物が用いられる。たとえば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、イソプロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、イソブタノール、2−メチル−2−プロパノール等の低級アルコール類;エチレングリコール、テトラエチレングリコール、ペンタエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール等のグリコール類;グリセリン;アセチン類(モノアセチン、ジアセチン、トリアセチン);トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノプロピルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、テトラエチレングリコールモノエチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジエチルエーテル等のグリコール類の誘導体;トリエタノールアミン、スルホランを用いることができる。平均分子量200、300、400、600等の平均分子量が190〜630の範囲にあるポリエチレングリコール、平均分子量400等の平均分子量が200〜600の範囲にあるジオール型ポリプロピレングリコール、平均分子量300、700等の平均分子量が250〜800の範囲にあるトリオール型ポリプロピレングリコール、等の低分子量ポリアルキレングリコールを用いることもできる。これらの水溶性有機溶剤は単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
一般に、水溶性有機溶剤であっても、その種類によっては孔版印刷機の内部においても開放系では徐々に大気中へと蒸発してしまうため、印刷機内部に放置されたインキはいずれ固化してしまうと考えられる。あるいは、水溶性有機溶剤が印刷機の版胴に残されたマスターの和紙繊維に吸収されてしまうため、印刷機内部のインキが固化してしまうことも考えられる。さらに、インキ中の水が蒸発した後に、着色剤が凝集する恐れもある。
これに対し、本発明に含まれる水溶性有機溶剤は、長期間放置しても大気中へ蒸発しない、印刷機の版胴に残されたマスターの和紙繊維に吸収されにくい、着色剤の凝集を防止することができる、という特性を有している。そのため、こうした水溶性有機溶剤を含有するインキは、印刷機内部に放置されても流動性を維持して固化が抑制されると考えられる。
本発明のインキにおいて、その液状成分は水と水溶性有機溶剤との混合液である。水溶性有機溶剤を水と混合した場合、その混合液の粘度は、水溶性有機溶剤の粘度の高低に関わらず、低粘度となる。すなわち、インキの液状成分の粘度は、水溶性有機溶剤の粘度の影響をほとんど受けないため、低粘度の水溶性有機溶剤を使用していても高粘度の水溶性有機溶剤を使用した場合と同様に、所望のインキ粘度を得ることができる。一方で、インキが印刷機内部に放置されて水が蒸発すると、インキの液状成分の粘度は水溶性有機溶剤の粘度に近いものとなる。そこで、本発明では、それ自体の粘度の低い水溶性有機溶剤を用いるようにしているので、水の蒸発後のインキの液状成分の粘度上昇を抑制することができ、印刷機内部での流動性を維持することができると考えられる。
水は、印刷物の乾燥性を高める観点から、インキ中に50重量%以上含まれていることが好ましく、65重量%以上含まれていることがより好ましい。インキ中に含有される水は、印刷直後に大気中へ蒸発することができる。さらに、印刷時にインキが印刷用紙の繊維間に圧入されて浸透することによって、印刷用紙内部においてインキと空気との表面積が急速に拡がって水が蒸発しやすくなるため、水の量を多くすると印刷物の乾燥性がさらに向上するものと考えられる。一方、水の配合量の上限は、特に限定はなく、他の配合成分とのバランスから適宜設定されることが好ましい。
着色剤としては、顔料または染料を用いることができ、2種以上を併用してもよい。顔料としては、たとえば、アゾ系、フタロシアニン系、染料系、縮合多環系、ニトロ系、ニトロソ系等の有機顔料(ブリリアントカーミン6B、レーキレッドC、ウォッチングレッド、ジスアゾイエロー、ハンザイエロー、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、アルカリブルー、アニリンブラック等);コバルト、鉄、クロム、銅、亜鉛、鉛、チタン、バナジウム、マンガン、ニッケル等の金属類、金属酸化物および硫化物、ならびに黄土、群青、紺青等の無機顔料、ファーネスカーボンブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等のカーボンブラック類を用いることができる。染料としては、たとえば、塩基性染料、酸性染料、直接染料、可溶性バット染料、酸性媒染染料、媒染染料、反応染料、バット染料、硫化染料等のうち水溶性の染料および還元等により水溶性になった水溶性染料を用いることができる。顔料、染料のいずれかもしくは両方を着色剤として用いてもよいが、顔料を用いることにより画像の滲みや裏抜けが少なく、耐候性にも優れたインキとすることができるため好ましい。
インキ中の着色剤の含有量は、通常1〜15重量%であり、3〜12重量%であることが好ましい。印刷物の印刷濃度をより高めるために、5重量%以上含有させることがさらに好ましい。本発明のインキは、5重量%以上の着色剤を含有しても、印刷機が非使用状態で長期間放置された場合の着色剤の凝集を防止して、印刷動作性を改良することができる。着色剤の含有量が15重量%を超えると、印刷機が非使用状態におかれた後の印刷性能を損なう恐れがある。
トリエチレングリコールおよびβ−チオジグリコールのうちの少なくとも一方とジエチレングリコールの合計含有量は、着色剤の凝集を防止してインキの流動性を維持する観点から、着色剤の含有量に対して重量比で2倍以上であることが好ましく、上限については特に限定はされないが20倍以下程度が好ましく、2.5〜6.0倍であることがより好ましい。
増粘剤としては、水溶性高分子系増粘剤や粘土鉱物系増粘剤を用いることができ、1種もしくは2種以上を含有させることができる。
水溶性高分子系増粘剤としては、天然高分子、半合成高分子、合成高分子を用いることができる。天然高分子としては、たとえば、アラビアガム、カラギーナン、グアガム、ローカストビーンガム、ペクチン、トラガントガム、コーンスターチ、コンニャクマンナン、寒天等の植物系天然高分子;プルラン、キサンタンガム、デキストリン等の微生物系天然高分子;ゼラチン、カゼイン、にかわ等の動物系天然高分子、を用いることができる。半合成高分子としては、たとえば、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等のセルロース系半合成高分子;ヒドロキシエチルスターチ、カルボキシメチルスターチナトリウム、シクロデキストリン等のデンプン系半合成高分子;アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコール等のアルギン酸系半合成高分子;ヒアルロン酸ナトリウム、を用いることができる。
合成高分子としては、たとえば、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリクロトン酸、ポリイタコン酸、ポリマレイン酸、ポリフマル酸、アクリル酸−メタクリル酸共重合体、アクリル酸−イタコン酸共重合体、アクリル酸−マレイン酸共重合体、アクリル酸−アクリルアミド共重合体、アクリル酸−アクリル酸エステル共重合体、アクリル酸−メタクリル酸エステル共重合体、アクリル酸−スルホン酸系モノマー共重合体、アクリル酸−ビニルピロリドン共重合体、無水マレイン酸−アルキルビニルエーテル共重合体等の不飽和カルボン酸系合成高分子;ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリビニルメチルエーテル、ポリN−ビニルアセトアミド、ポリアクリルアミド等のビニル系合成高分子;ポリエチレンオキサイド、ポリエチレンイミン、ポリウレタンを用いることができる。
粘土鉱物系の増粘剤としては、たとえば、モンモリロナイト、ヘクトライト、サポナイト等のスメクタイト系粘土鉱物を用いることができる。
これらの増粘剤のなかでも、側鎖に多数の解離基をもった電解質型増粘剤である不飽和カルボン酸系水溶性高分子増粘剤は、少量でも所望の増粘効果が得られることなどから好ましく用いられる。不飽和カルボン酸系水溶性高分子は、以下の式(1):
Figure 0003639289
(式中、R,R,Rはそれぞれ独立にH、CH、(CH)nCOOH(nは0または1の整数)を表す。)で示される繰り返し単位を含む水溶性の高分子(たとえば、アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸およびイタコン酸からなる群から選ばれる1種以上の不飽和カルボン酸を主鎖に含む水溶性高分子)を意味する。2以上のカルボキシル基を含む場合に、それらが酸無水物を形成していてもよい。共重合体となっている場合の共重合形式は、ランダム型、交互型、ブロック型、グラフト型等のいずれの形態であってもよい。また、高分子鎖の構造は、直鎖型であっても分子内に架橋構造を有する架橋型であってもよい。
不飽和カルボン酸系合成高分子としては、上記の未中和タイプだけでなく、これらの中和塩もその範疇に含まれる。中和塩としては、たとえば、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩、アンモニウム塩、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン塩が挙げられ、具体的には、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリル酸カリウム、ポリアクリル酸アンモニウム、ポリアクリル酸トリエタノールアミン、ポリメタクリル酸ナトリウム、ポリメタクリル酸アンモニウム、ポリイタコン酸ナトリウム、ポリマレイン酸ナトリウム、アクリル酸−メタクリル酸共重合体ナトリウム、アクリル酸−マレイン酸共重合体ナトリウム、アクリル酸−アクリルアミド共重合体ナトリウム等を好ましく用いることができる。
増粘剤の含有量は、その種類や所望とするインキ粘度等によって異なるが、安定したインキ物性を得るために0.01重量%以上であることが好ましく、他のインキ成分の含有量とのバランスや印刷機が非使用状態で放置された後の印刷動作性の観点から10重量%以下であることが好ましく、0.05〜5重量%であることがより好ましく、0.1〜2重量%であることが一層好ましい。
本発明のインキには、上記の成分に加え、顔料分散剤、定着剤、消泡剤、表面張力低下剤、pH調整剤、酸化防止剤、防腐剤等を適宜含有させることができる。
インキ中にアルカリ可溶性樹脂を含有させて、印刷用紙等の被印刷体への着色剤の定着剤等として用いることができる。着色剤として顔料を用いる場合は、顔料の分散剤としてアルカリ可溶性樹脂を用いることもできる。
アルカリ可溶性樹脂としては、たとえば、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−αメチルスチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−アクリル酸エステル−アクリル酸共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ビニルナフタレン−アクリル酸共重合体、ビニルナフタレン−マレイン酸共重合体、イソブチレン−無水マレイン酸共重合体、アクリル酸エステル−アクリル酸共重合体、メタクリル酸エステル−アクリル酸共重合体、アクリル酸エステル−メタクリル酸共重合体、メタクリル酸エステル−メタクリル酸共重合体、アクリル酸エステル−メタクリル酸エステル−アクリル酸共重合体を用いることができ、2種以上を併用してもよい。これらのアルカリ可溶性樹脂は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物、アンモニア水、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン等の任意のアルカリで中和して、水可溶性にして用いることができる。
アルカリ可溶性樹脂は、多量に含有させると印刷機の非使用後の印刷性能に支障をきたす恐れがあるため、インキ中に固形分換算で5重量%以下の範囲で含有させることが好ましく、より好ましくは3重量%以下である。
さらにインキには、水中油(O/W)型樹脂エマルションを含有させて、印刷用紙等の被印刷体への着色剤の定着剤等として用いることができる。着色剤として顔料を用いる場合においては、この樹脂エマルションを顔料の分散剤として用いることもできる。
水中油(O/W)型樹脂エマルションとしては、たとえば、ポリ酢酸ビニル、エチレン−酢酸ビニル共重合体、酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル、ポリスチレン、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、塩化ビニリデン−アクリル酸エステル共重合体、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリウレタン等の樹脂エマルションを用いることができる。これらの2種以上を併用してもよい。
樹脂エマルションは、多量に含有させると印刷機の非使用後の印刷性能に支障をきたす恐れがあるため、インキ中に固形分換算で5重量%以下の範囲で含有させることが好ましく、より好ましくは2重量%以下である。
なお、増粘剤として例示した上記水溶性高分子は、その種類と量によっては、インキの増粘剤以外にも、印刷用紙への着色剤の定着剤等として用いることができる。また、着色剤として顔料を用いる場合においては、顔料の分散剤として用いることもできる。
印刷物の画質を向上させるために、インキ中に体質顔料を含有させることができる。
体質顔料としては、たとえば、白土、タルク、クレー、珪藻土、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、硫酸バリウム、アルミナホワイト、シリカ、カオリン、マイカ、水酸化アルミニウムを用いることができ、これらの2種以上を併用してもよい。
体質顔料は、多量に含有させると被印刷体への着色剤の定着を阻害したり、印刷機の非使用後の印刷性能に支障をきたす恐れがあるため、5重量%以下の範囲で含有させることが好ましく、より好ましくは2重量%以下である。
さらに、顔料分散剤、消泡剤、表面張力低下剤等として、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン界面活性剤、または高分子系、シリコーン系、フッ素系の界面活性剤をインキに含有させることができる。
インキの粘度やpHを調整するために、インキに電解質を配合することもできる。電解質としては、たとえば、硫酸ナトリウム、リン酸水素カリウム、クエン酸ナトリウム、酒石酸カリウム、ホウ酸ナトリウムが挙げられ、2種以上を併用してもよい。硫酸、硝酸、酢酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、トリエタノールアミン等も、インキの増粘助剤やpH調整剤として用いることができる。
酸化防止剤を配合することにより、インキ成分の酸化を防止し、インキの保存安定性を向上させることができる。酸化防止剤としては、たとえば、L−アスコルビン酸、L−アスコルビン酸ナトリウム、イソアスコルビン酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、亜二チオン酸ナトリウム、ピロ亜硫酸ナトリウムを用いることができる。
防腐剤を配合することにより、インキの腐敗を防止して保存安定性を向上させることができる。防腐剤としては、たとえば、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン、1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オン等のイソチアゾロン系防腐剤;ヘキサヒドロ−1,3,5−トリス(2−ヒドロキシエチル)−s−トリアジン等のトリアジン系防腐剤;2−ピリジンチオールナトリウム−1−オキシド、8−オキシキノリン等のピリジン・キノリン系防腐剤;ジメチルジチオカルバミン酸ナトリウム等のジチオカルバメート系防腐剤;2,2−ジブロモ−3−ニトリロプロピオンアミド、2−ブロモ−2−ニトロ−1,3−プロパンジオール、2,2−ジブロモ−2−ニトロエタノール、1,2−ジブロモ−2,4−ジシアノブタン等の有機臭素系防腐剤;p−ヒドロキシ安息香酸メチル、p−ヒドロキシ安息香酸エチル、ソルビン酸カリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、サリチル酸を用いることができる。
次に、第2の本発明に係るインキについて説明する。この第2の本発明のインキは、25重量%以上のジエチレングリコールと不飽和カルボン酸系水溶性高分子を含んでいる。他に、水と着色剤が含まれる。以下の説明において、その他の配合成分や各成分の配合量等、上記第1の本発明に係るインキと重複する記載は省略する。
不飽和カルボン酸系増粘剤は、上記第1の本発明において説明したと同じである。その含有量は、化学構造や所望とするインキ粘度等によって異なるが、安定したインキ物性を得るために0.01重量%以上であることが好ましく、他のインキ成分の含有量とのバランスや印刷機が非使用状態で放置された後の印刷動作性の観点から5重量%以下であることが好ましく、0.05〜3重量%であることがより好ましく、0.1〜2重量%であることが一層好ましい。
不飽和カルボン酸系増粘剤以外の増粘剤を併用する場合、その配合量は、通常、10重量%以下であり、5重量%以下であることが好ましく、2重量%以下であることがより好ましい。
上記第1および第2の本発明に係るインキは、各配合成分を混合させて製造することができる。たとえば、一部の水と顔料と顔料分散剤とを混合し、ボールミル、ビーズミル等の分散手段を用いて顔料を分散させ、一方で、残りの水と増粘剤と水溶性有機溶剤とを混合し、そして、両者を混ぜ合わせるようにしてもよい。
インキの粘度は、印刷装置の印圧等によってその適性範囲は異なるが、一般に、約0.5〜約20Pa・s(20℃、せん断速度100/sにおける粘度)であり、また、(擬)塑性流動性であることが孔版印刷用として適している。
次に、本発明に係る孔版印刷方法は、上記本発明のインキを用いて行われる。具体的には、製版したマスターを準備する工程と、製版したマスターと被印刷体を圧接させることによってマスターの穿孔部から本発明のインキを通過させて被印刷体にインキを転移させる工程とを含んでいる。
用いられる孔版印刷機は、特に限定はされないが、操作性に優れる点からデジタル孔版印刷機を用いることが好ましい。
以下に、本発明を実施例により詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。以下、「重量%」を単に「%」と記す。
(実施例1)
着色剤としてカーボンブラック(三菱化学株式会社製「MCF88」)6.0%、顔料分散剤としてポリビニルピロリドン(第一工業製薬株式会社製「K90」)1.3%、蒸留水20.0%を混合し、ビーズミルで充分に分散させて顔料分散液を調製した。増粘剤としてポリアクリル酸(日本純薬株式会社製「ジュンロンPW150」)0.5%を蒸留水16.0%に溶解し、これに2%水酸化ナトリウム水溶液を10.0%添加して中和した後、先に調製した顔料分散液、ジエチレングリコール10.0%、β−チオジグリコール6.0%、および蒸留水の残部(30.2%)を加えて混合して、実施例1のインキを得た。
(実施例2〜6、比較例1〜7)
表1に示す配合とした以外は実施例1と同様にして、各実施例および比較例のインキを得た。
(比較例8)
着色剤としてカーボンブラック(実施例1と同じ)6.0%、顔料分散剤としてポリビニルピロリドン(実施例1と同じ)1.3%、蒸留水20.0%を混合し、ビーズミルで充分に分散させ、これに、電解質として硫酸ナトリウム0.7%、水溶性有機溶剤としてグリセリン4.0%、蒸留水46.0%を混合して水相を調製した。一方、油成分として「サンセンオイル4240」(日本サン石油株式会社製)4.0%と「AFソルベント6号」(新日本石油株式会社製)14.0%、乳化剤としてソルビタンセスキオレエート4.0%を混合し、油相を調製した。得られた油相に水相を徐々に添加しながら乳化して、孔版印刷用W/O型エマルションインキを得た。
上記実施例1〜6および比較例1〜7で作製したインキ(孔版印刷用水性インキ)、および比較例8で作製した孔版印刷用エマルションインキを用いて、それぞれ孔版印刷機(リソグラフRP370、理想科学工業株式会社製)にて印刷用紙(理想科学工業株式会社製「理想用紙薄口」)に印刷を行い、得られた印刷物の乾燥性を評価した。また、それぞれのインキを用いて、印刷終了後そのまま印刷機を一定期間使用せずに放置したのち再び印刷を試みて、印刷再開時の印刷特性を評価した。それぞれの評価結果を表1に示す。
乾燥性は、印刷終了10秒後に印刷物に触れても指が汚れなかったものを○、30秒後であれば指が汚れなかったものを△、30秒後でも指が汚れたものを×として評価した。
印刷機の非使用後動作性は、印刷機を分解洗浄することなく印刷できたものを○、洗浄が必要だったものを×として評価した。
Figure 0003639289
実施例のインキはいずれも、印刷物の乾燥性に優れ、かつ、1カ月放置後であっても印刷機を動作することができた。
それに対して、比較例1〜7のインキでは、印刷機を非使用状態で放置すると、短期間で印刷機を動作することができなくなってしまった。比較例6では、水溶性有機溶剤を多量に配合させるようにしたが、印刷適性は改善されなかった。また、比較例8のエマルションインキは、水を多量に含有(66.0%)していても、得られた印刷物の乾燥性は速くなかった。

Claims (4)

  1. トリエチレングリコールおよびβ−チオジグリコールのうちの少なくとも一方とジエチレングリコールと不飽和カルボン酸系水溶性高分子とを含む孔版印刷用水性インキ。
  2. 前記トリエチレングリコールおよびβ−チオジグリコールのうちの少なくとも一方とジエチレングリコールの合計含有量が12.5重量%以上である請求項1記載の孔版印刷用水性インキ。
  3. ジエチレングリコールと不飽和カルボン酸系水溶性高分子を含み、かつ、前記ジエチレングリコールの含有量が25重量%以上である孔版印刷用水性インキ。
  4. 請求項1〜のいずれか1項記載の孔版印刷用水性インキを用いる孔版印刷方法。

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