JP3639289B1 - 孔版印刷用水性インキおよび孔版印刷方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 トリエチレングリコールおよびβ−チオジグリコールのうちの少なくとも一方とジエチレングリコールとを配合する。また、25重量%以上のジエチレングリコールと不飽和カルボン酸系水溶性高分子とを配合する。
【選択図】 なし
Description
マスターの製版・着版・排版動作、インキの供給動作や印刷動作等が自動制御された輪転式孔版印刷機は、デジタル孔版印刷機等の名称でオフィスや学校などで広く利用されている。
W/O型エマルションインキにより印刷された印刷物におけるインキの乾燥は、インキが被印刷体(印刷媒体)である印刷用紙の紙繊維の間へ浸透することと、紙繊維との接触によりエマルションが油相と水相に徐々に分離して、インキの主成分である水が大気と接触して蒸発することとにより進行すると考えられている。しかし、被印刷体に転移したインキ中の水は、印刷後の短時間のうちには大気と接触することができないため、印刷直後の乾燥性は浸透乾燥に頼ったものとなるところ、W/O型エマルションインキの粘度はある程度高く設計されているため、浸透速度は速くなく、そのため印刷直後のインキ乾燥性は充分とはいえなかった。
印刷物の乾燥を速めることは、孔版印刷にとって極めて重要な課題である。印刷物が乾燥しないと作業者はその印刷物を取り扱うことができず、孔版印刷の「短時間で高品質の印刷物を得る」利点が充分に活かされないからである。
一方、従来提案されてきた孔版印刷用水性インキは、印刷機が非使用状態におかれて印刷機内のインキが開放系に長期間放置された状態になると、インキの流動性が失われてしまうという問題点を有していた。そのため、印刷機が非使用状態で長期間放置された後の印刷動作性が低下して、印刷直後もしくは印刷再開直前に印刷機を分解して洗浄しなくては、再び印刷動作を行うことができなくなり、孔版印刷の利点である「操作・作業性の良さ」が大きく損なわれてしまう。
そこで、本発明は、印刷機が非使用状態で長期間放置されても洗浄等の作業を行う必要がなく、また、熱、光、反応性物質の付与等の特殊な手段、装置、エネルギー等を使用しなくても印刷物の乾燥性に優れた孔版印刷用水性インキ、および、それを用いた孔版印刷方法を提供することを目的とする。
第2の本発明は、ジエチレングリコールと不飽和カルボン酸系水溶性高分子を含み、かつ、前記ジエチレングリコールの含有量が25重量%以上である孔版印刷用水性インキに関する。
第3の本発明は、上記本発明に係る孔版印刷用水性インキを用いる孔版印刷方法に関する。
一方、これらの水溶性有機溶剤の配合量の上限については、特に限定はされないが、画像の裏抜けを少なくするため、合計で45重量%以下程度であることが好ましく、35重量%以下程度がより好ましい。
これに対し、本発明に含まれる水溶性有機溶剤は、長期間放置しても大気中へ蒸発しない、印刷機の版胴に残されたマスターの和紙繊維に吸収されにくい、着色剤の凝集を防止することができる、という特性を有している。そのため、こうした水溶性有機溶剤を含有するインキは、印刷機内部に放置されても流動性を維持して固化が抑制されると考えられる。
トリエチレングリコールおよびβ−チオジグリコールのうちの少なくとも一方とジエチレングリコールの合計含有量は、着色剤の凝集を防止してインキの流動性を維持する観点から、着色剤の含有量に対して重量比で2倍以上であることが好ましく、上限については特に限定はされないが20倍以下程度が好ましく、2.5〜6.0倍であることがより好ましい。
水溶性高分子系増粘剤としては、天然高分子、半合成高分子、合成高分子を用いることができる。天然高分子としては、たとえば、アラビアガム、カラギーナン、グアガム、ローカストビーンガム、ペクチン、トラガントガム、コーンスターチ、コンニャクマンナン、寒天等の植物系天然高分子;プルラン、キサンタンガム、デキストリン等の微生物系天然高分子;ゼラチン、カゼイン、にかわ等の動物系天然高分子、を用いることができる。半合成高分子としては、たとえば、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等のセルロース系半合成高分子;ヒドロキシエチルスターチ、カルボキシメチルスターチナトリウム、シクロデキストリン等のデンプン系半合成高分子;アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコール等のアルギン酸系半合成高分子;ヒアルロン酸ナトリウム、を用いることができる。
粘土鉱物系の増粘剤としては、たとえば、モンモリロナイト、ヘクトライト、サポナイト等のスメクタイト系粘土鉱物を用いることができる。
インキ中にアルカリ可溶性樹脂を含有させて、印刷用紙等の被印刷体への着色剤の定着剤等として用いることができる。着色剤として顔料を用いる場合は、顔料の分散剤としてアルカリ可溶性樹脂を用いることもできる。
アルカリ可溶性樹脂は、多量に含有させると印刷機の非使用後の印刷性能に支障をきたす恐れがあるため、インキ中に固形分換算で5重量%以下の範囲で含有させることが好ましく、より好ましくは3重量%以下である。
水中油(O/W)型樹脂エマルションとしては、たとえば、ポリ酢酸ビニル、エチレン−酢酸ビニル共重合体、酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル、ポリスチレン、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、塩化ビニリデン−アクリル酸エステル共重合体、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリウレタン等の樹脂エマルションを用いることができる。これらの2種以上を併用してもよい。
樹脂エマルションは、多量に含有させると印刷機の非使用後の印刷性能に支障をきたす恐れがあるため、インキ中に固形分換算で5重量%以下の範囲で含有させることが好ましく、より好ましくは2重量%以下である。
体質顔料としては、たとえば、白土、タルク、クレー、珪藻土、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、硫酸バリウム、アルミナホワイト、シリカ、カオリン、マイカ、水酸化アルミニウムを用いることができ、これらの2種以上を併用してもよい。
体質顔料は、多量に含有させると被印刷体への着色剤の定着を阻害したり、印刷機の非使用後の印刷性能に支障をきたす恐れがあるため、5重量%以下の範囲で含有させることが好ましく、より好ましくは2重量%以下である。
インキの粘度やpHを調整するために、インキに電解質を配合することもできる。電解質としては、たとえば、硫酸ナトリウム、リン酸水素カリウム、クエン酸ナトリウム、酒石酸カリウム、ホウ酸ナトリウムが挙げられ、2種以上を併用してもよい。硫酸、硝酸、酢酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、トリエタノールアミン等も、インキの増粘助剤やpH調整剤として用いることができる。
不飽和カルボン酸系増粘剤以外の増粘剤を併用する場合、その配合量は、通常、10重量%以下であり、5重量%以下であることが好ましく、2重量%以下であることがより好ましい。
インキの粘度は、印刷装置の印圧等によってその適性範囲は異なるが、一般に、約0.5〜約20Pa・s(20℃、せん断速度100/sにおける粘度)であり、また、(擬)塑性流動性であることが孔版印刷用として適している。
用いられる孔版印刷機は、特に限定はされないが、操作性に優れる点からデジタル孔版印刷機を用いることが好ましい。
(実施例1)
着色剤としてカーボンブラック(三菱化学株式会社製「MCF88」)6.0%、顔料分散剤としてポリビニルピロリドン(第一工業製薬株式会社製「K90」)1.3%、蒸留水20.0%を混合し、ビーズミルで充分に分散させて顔料分散液を調製した。増粘剤としてポリアクリル酸(日本純薬株式会社製「ジュンロンPW150」)0.5%を蒸留水16.0%に溶解し、これに2%水酸化ナトリウム水溶液を10.0%添加して中和した後、先に調製した顔料分散液、ジエチレングリコール10.0%、β−チオジグリコール6.0%、および蒸留水の残部(30.2%)を加えて混合して、実施例1のインキを得た。
表1に示す配合とした以外は実施例1と同様にして、各実施例および比較例のインキを得た。
着色剤としてカーボンブラック(実施例1と同じ)6.0%、顔料分散剤としてポリビニルピロリドン(実施例1と同じ)1.3%、蒸留水20.0%を混合し、ビーズミルで充分に分散させ、これに、電解質として硫酸ナトリウム0.7%、水溶性有機溶剤としてグリセリン4.0%、蒸留水46.0%を混合して水相を調製した。一方、油成分として「サンセンオイル4240」(日本サン石油株式会社製)4.0%と「AFソルベント6号」(新日本石油株式会社製)14.0%、乳化剤としてソルビタンセスキオレエート4.0%を混合し、油相を調製した。得られた油相に水相を徐々に添加しながら乳化して、孔版印刷用W/O型エマルションインキを得た。
印刷機の非使用後動作性は、印刷機を分解洗浄することなく印刷できたものを○、洗浄が必要だったものを×として評価した。
それに対して、比較例1〜7のインキでは、印刷機を非使用状態で放置すると、短期間で印刷機を動作することができなくなってしまった。比較例6では、水溶性有機溶剤を多量に配合させるようにしたが、印刷適性は改善されなかった。また、比較例8のエマルションインキは、水を多量に含有(66.0%)していても、得られた印刷物の乾燥性は速くなかった。
Claims (4)
- トリエチレングリコールおよびβ−チオジグリコールのうちの少なくとも一方とジエチレングリコールと不飽和カルボン酸系水溶性高分子とを含む孔版印刷用水性インキ。
- 前記トリエチレングリコールおよびβ−チオジグリコールのうちの少なくとも一方とジエチレングリコールの合計含有量が12.5重量%以上である請求項1記載の孔版印刷用水性インキ。
- ジエチレングリコールと不飽和カルボン酸系水溶性高分子を含み、かつ、前記ジエチレングリコールの含有量が25重量%以上である孔版印刷用水性インキ。
- 請求項1〜3のいずれか1項記載の孔版印刷用水性インキを用いる孔版印刷方法。
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