JP3638159B2 - 車両用内装表皮材 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
この発明は、車両用内装部品に用いられる表皮材に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から車両用内装品としては、インストルメント、ドアトリム、ピラーガーニシュ等があるが、車両内装をインテグレイト化するために表皮材としては、表面の質感や硬さ等共通のものを使用するのが一般である。従って、内装品の中で耐光性、耐衝撃性等最も厳しい位置にあり、内装表皮材の物性基準とされているインストルメントについて、図4に基づいて説明する。
【0003】
図4(a)及び図4(b)において、図中20Aはインストルメントである。このインストルメント20Aはインストパネル3と、表皮材1A及び発泡ウレタン材2よりなるインストパッド12との三層で構成されている。
【0004】
このインストルメント20Aの三層に使用される材質と成形法としては、まず、表皮材1Aは、塩化ビニール樹脂系の新樹脂材料をカレンダロール装置(図示省略)等でシート加工されたものである。そして、この表皮材1Aは、インストルメント20Aのデザイン形状に、真空成形により形成される。
【0005】
また、インストパネル3はABS樹脂やオレフィン系の複合樹脂材料を射出成形等で成形したものである。このインストパネル3と、前記成形した表皮材1Aとを発泡型(図示省略)内に装着して、双方の中間にウレタン材を注入し発泡型内で発泡させてウレタン材に弾力性を持たせると同時に、インストパネル3と表皮材1Aとを発泡ウレタン材2を介在させた状態で一体に接合し、三層構造としたものである。
【0006】
この発泡型内でインストルメント20Aの成形を行うとき、真空成形する表皮材1Aは、製品部より外周を大きくし、また、インストパネル3の開口部も表皮材1Aは開口しないで、発泡型の洩れ止め押え部として、発泡圧でウレタン材が発泡型より洩れないようにしている。しかし、端材となる表皮材1Aの外周縁部や開口部の押え部にまで、発泡圧でウレタン材2は侵入し付着して流れは止まる。
【0007】
図4(c)は、インストルメント20Aの断面を拡大して示したものである。
【0008】
この図中の表皮材1Aは、厚さを内装品としてよく用いられる0.8mmシートとしている。物性値としては、機械的物性値(引張強さ、伸び率、引裂き強さ・・等)や環境特性値(耐光性、耐熱老化性・・等)の規格値を満足するように化学調合して作成したシートである。真空成形性や成形後の保形性についても、良好な表皮材1Aとしているのは勿論である。
【0009】
さらに、表皮材1Aの表面側には、紫外線吸収剤等を含有させたコーティング剤を塗布して、特に、耐光性等の環境物性を向上させる表面処理層4を設けている。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、インストルメント20Aは、上述のように成形時には製品形状より多少大きめに形成して外周縁部や開口部を切断するようにしている。この切断された端材を表皮材としてリサイクルすることも考えられるが、以下のような点で問題がある。
【0011】
すなわち、発泡ウレタン材2は発泡時に発泡圧で広がるため端材の部分まで付着することになり、しかも、この発泡ウレタン材2は、端材を粉砕し水分離しても表皮材1Aの裏面に付着しており、完全には除去できない。
【0012】
そして、この発泡ウレタン材2は熱硬化性樹脂であるため、熱可塑性の表皮材1Aと同時に加熱されても溶けず、発泡ウレタン材2は異物として混入することになる。
【0013】
よって、引張伸び率が低下して成形性が悪くなる。また、異物である発泡ウレタン材2によって再生された表皮材の表面肌が、凹凸になり質感を低下させる。しかも、この表皮材を使って真空成形をすると、加熱された上に、表皮材が内装品の形状まで伸ばされ薄くなるので、凹凸の隠蔽性の低下傾向がなお強くなり、表皮材へ再生材5を戻し、再使用することができなかった。
【0014】
従って、インストルメント20A等の発泡ウレタン材2と組み合わせた内装品の端材は、表皮材としては再利用し難いという問題があった。
【0015】
そこで、この発明は、車両用内装品の成形時、発泡ウレタン材の付着した端材を廃材とすることなく、再利用した車両用内装表皮材を提供することを目的としている。
【0017】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載された発明は、積層されている表皮材と発泡ウレタン材との端材を微細に破砕した再生材を有する第一層目シートを形成すると共に、新樹脂材料から第二層目シートを形成し、これらを交互に多層に重合させると共に、前記第二層目シートを表面に設定し、
更に、表面側に位置する第一層目シートは前記再生材が新樹脂材料へ混入され、その混入率は、背面側に位置する第一層目シートの混入率より小さく設定したことを特徴としている。
【0018】
請求項2に記載された発明は、請求項1に記載の車両用内装表皮材において、再生材は、表皮材、発泡ウレタン材及びインストパネルの三層構造からなる車両用内装部品において、積層されている表皮材と発泡ウレタン材の端材を微細に破砕して形成されていることを特徴としている。
【0019】
【作用】
請求項1の発明によれば、第一層目シートの表面側に新樹脂材料からなる第二層目シートを重合させていることにより、再生材の混入により生じた第一層目シートの凹凸による質感の低下を、第二層目シートで覆い改質できる。また、同様に再生材混入による伸び率の低下を第二層目シートを重合させることで少なくし、表皮材の真空成形性を良好に保持する。
【0020】
そして、表面側に位置する第一層目シートの前記再生材の新樹脂材料への混入率は、背面側に位置する第一層目シートの混入率より小さく設定したことにより、背面側の第一層目シートの再生材の混合率を極端に上げても表皮材の表面の感触が良好に保てる。従って、全体として多くの再生材を混入することができる。
【0021】
すなわち、表皮材の外観に影響を与えるのは、表面近傍に位置する表面側第一層目シートに発生する凹凸であるため、このシートの再生材の混入率を小さくすることにより、凹凸の発生を抑制すれば、表面を形成する第二層目シートを薄くしても表面に生ずる凹凸を抑制できる。
【0022】
これに対し、外観に影響を与えない背面側第一層目シートは再生材の混入量を多くしても問題はない。してみれば、表皮材の厚さを厚くすることなく、全体としての再生材の混入量を増加させることができ、リサイクル率を向上させることが可能となる。
【0023】
請求項2の発明によれば、再生材は、表皮材、発泡ウレタン材及びインストパネルの三層構造からなる車両用内装部品において、積層されている表皮材と発泡ウレタン材の端材を微細に破砕して再生したことにより、従来廃棄していた端材のリサイクル化が図れる。ひいては、車両用内装部品の同部材への還元の道が開ける。
【0024】
【実施例】
以下、この発明を実施例に基づいて説明する。
【0025】
実施例1
図1(a)(b)(c)は、この発明の実施例1を示すものである。
【0026】
まず、構成を説明すると、図1(a)の符号20はインストルメントであり、インストパネル3とインストパッド12より構成されている。更に、このインストパッド12は表皮材1と弾力性を有する発泡ウレタン材2の二層より構成され、前記インストパネル3と組み合わせて、図1(b)に示すように三層断面構造をしている。
【0027】
この実施例のインストルメント20は、インストパッド12に用いる表皮材1に特徴を有しており、その他は従来のインストルメント20Aと同様である。この表皮材1は、第一層目シート1bとこの表面に重合された第二層目シート1aとから構成されている。この第一層目シート1bは、新樹脂材料に再生材5を混入して形成され、第二層目シート1aは新樹脂材料のみから形成されている。
【0028】
ここで新樹脂材料とは、主に熱可塑性樹脂でありソフトセグメントである塩化ビニール樹脂と、同じく熱可塑性樹脂でありハードセグメントであるABS樹脂とをブレンドして適宜な硬軟の質感をもたせ、表皮材の要求物性を満足させるように調合したものである。従って、何回も物性低下を起こすような熱履歴を受けたり再生材5を混入したものを除外して、新樹脂材料と称している。また、この新樹脂材料は、ペレットやフレーク状の材料形態としている。
また、ここで再生材とは、製品として成形され成形品の外周縁部や開口部等を切断した、いわゆる端材を微細に破砕しカレンダロール装置に投入できるようにしたものを再生材と称している。
【0029】
この再生材の生成は、表皮材に発泡ウレタン材が付着した状態のまま微細に破砕し、続いて、水槽へ流動させ水に浮かんで流出する発泡ウレタン材と、比重が大きく水中に沈む表皮材とを水分離するが、熱可塑性の表皮材から熱硬化性の発泡ウレタン材がその接着力のため、取りきれない。よって、再生材を新樹脂材料へ混入してシート加工すると熱硬化性の発泡ウレタン材は溶融せず異物となり、シートに凹凸を発生させる原因となる。
【0030】
次に、表皮材1の成形法は、まず押出装置部で樹脂材料を可塑化しながら押出装置の先端部に取り付けたTダイから溶融樹脂をカレンダロール部へ押出し、カレンダロール装置の複数本のロール間で、さらにロール加熱しながら圧延して、車両内装材に用いられる適宜な厚さのシートになるように加工を行う。
【0031】
この成形法により第一層目シート1bには、新樹脂材料に再生材5を約75%混入してカレンダロール装置により0.4mm厚さに成形する。次に第二層目シート1aは、新樹脂材料だけでカレンダロール装置で0.4mm厚さのシートに成形し、この第二層目のシート1aを第一層目シート1bの表面側にロール熱圧着にて一枚の0.8mm厚さの表皮材1としたものである。
【0032】
この第二層目シート1aの熱圧着により第一層目シート1bの表面凹凸を確実に隠蔽することができる。また、表皮材1の再生材5の全体としての混入率は約38%となる。
【0033】
そして、この表皮材1の表面には、耐光性を向上させるための紫外線吸収剤や艶調整のための無機剤等を混入させたコーティング材を塗布して表面処理層4を設け、実用に耐えるインストパッド12の表皮材1としている。
【0034】
実施例2
次に、図2及び図3には実施例2を示す。
【0035】
実施例1では、表皮材が、第一層目シート1bと第二層目シート1aとの二層構造であったのに対し、この実施例では、第一層目シート、第二層目シートとが交互に四層に重合されている。そして、各シートは、厚さが実施例1と異なると共に、第一層目シート21b,22bは、再生材5の混入率が実施例1と異なっている。
【0036】
すなわち、この背面側に位置する第一層目シート21bは、新樹脂材料を混入せず、再生材5を100%カレンダロール成形して0.3mm厚さのシートとし、第二層目シート21aには再生材5を含まない新樹脂材料だけで0.1mm厚さのシート21aを前記第一層目シート21bの外側面に重合している。 そして、第一層目シート21bの再生材5による凹凸の隠蔽と、表面側の第一層目シート22bとの溶着性の向上とを図ったものである。
【0037】
また、表面側に位置する第一層目シート22bは、新樹脂材料に再生材5を50%混入して0.2mm厚さとし、この上の表面を形成する第二層目シート22aは新樹脂材料だけで0.2mm厚さとし重合したものである。これにより、第二層目シート22aが第一層目シート22bの表面凹凸を確実に隠蔽する。
【0038】
そして、これら表面側のシート部と背面側のシート部とを加熱圧着し四層構成の表皮材1とする。この四層である表皮材1への再生材5の混入率は全体で50%となる。この表皮材1の表面に表面処理層4をコーティングを行い、実用性のあるインストパッド12の表皮材1としている。
【0039】
更に、図3は、新樹脂材料に再生材5を混入した場合の表皮材1への影響を示している。
【0040】
すなわち、まず、物性の中で最も変化の大きい伸び率でみると、新樹脂材料1aへの再生材5の混入率が上がると表皮材1の引張伸び率は直線的に低下する。しかし、100%再生材5を使用しても210%の伸び率が残っており、真空成形性の規格値としている160%伸び率を満足している。従って、背面側に位置するの第一層目シート21bのように再生材5を100%混入しても使用が可能であることを示している。
【0041】
次に、再生材5が表皮材1の表面質感に与える影響について説明する。
【0042】
図3中の再生材5の混入率と表皮材1の真空成形性との試作結果から、使用可能な良好範囲である3級以上のレベルを得るには、再生材50%を混入した表面側に位置する第一層目シート22bの凹凸を隠蔽するには、新樹脂材料の第二層目シート22aは0.2mm厚さにすることで、再生材50%を混入した第一層目シート22bの凹凸を隠蔽し改質することができる。同様に、新樹脂材料の第二層目シート1aは0.4mm厚さとすることで、再生材5の75%を混入した第一層目シート1bの表面凹凸を隠蔽し改質することができることを示している。
【0043】
この実施例2における、四層よりなる表皮材1の全体としての再生材の混入率は、前記二層よりなる実施例1(図1(c)参照)の混入率に比し約10%多く混入でき、リサイクル効果の大きい表皮材1を作ることができた。
【0044】
これら実施例1、実施例2の内どちらを採用するかは、インストパッド12の表皮材1の生産量との兼ね合いで製造コストを勘案し、実質的な効果判断のもとに選定される。
【0045】
なお、背面側に位置する第一層目シート21bへの再生材5の混入率は、必ずしも100%でなくてもよいことは勿論である。
【0046】
【発明の効果】
以上説明してきたように、請求項1の発明によれば、第一層目のシートの表面側に新樹脂材料からなる第二層目のシートを重合させていることにより、再生材混入により生じた第一層目のシートの凹凸を第二層目の新樹脂材料のシートで隠蔽することができ、質感の良い表皮材が得られる。
【0047】
また、表面側に位置する第一層目シートの前記再生材の新樹脂材料への混入率は、背面側に位置する第一層目シートの混入率より小さく設定したことにより、再生材の混入率を背面側で極端に上げても表面側シートで少なければ、表皮材の表面の質感を良好に保ちながら総合的に再生材を多く混入することができる。
【0048】
請求項2の発明によれば、再生材は、表皮材、発泡ウレタン材及びインストパネルの三層構造からなる車両用内装部品において、積層されている表皮材と発泡ウレタン材の端材を微細に破砕して再生したことにより、従来廃棄していた端材のリサイクル化が図れる。ひいては、車両用内装部品の廃材利用に結びつくという実用上有益な効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 (a)は、この発明の車両用インストルメントの実施例1を示す斜視図である。
(b)は、図1(a)のA−A拡大断面図である。
(c)は、図1(b)B部の詳細図である。
【図2】この発明の実施例2を示す、図1(b)B部の詳細図である。
【図3】この発明のインストルメント表皮材の再生材の混入率に対する引張伸び率及び真空成形性を示す関連図である。
【図4】(a)は、従来例の車両用インストルメントの斜視図である。
(b)は、図4(a)のC−C拡大断面図である。
(c)は、図4(b)D部の詳細図である。
【符号の説明】
20…インストルメント
12…インストパッド
1…表皮材
1a…第二層目のシート
1b…第一層目のシート
21b…背面側に位置する第一層目シート
22b…表面側に位置する第一層目シート
2…発泡ウレタン材
3…インストパネル
5…再生材
Claims (2)
- 積層されている表皮材と発泡ウレタン材との端材を微細に破砕した再生材を有する第一層目シートを形成すると共に、新樹脂材料から第二層目シートを形成し、これらを交互に多層に重合させると共に、前記第二層目シートを表面に設定し、
更に、表面側に位置する第一層目シートは前記再生材が新樹脂材料へ混入され、その混入率は、背面側に位置する第一層目シートの混入率より小さく設定したことを特徴とする車両用内装表皮材。 - 再生材は、表皮材、発泡ウレタン材及びインストパネルの三層構造からなる車両用内装部品において、積層されている表皮材と発泡ウレタン材の端材を微細に破砕して形成されていることを特徴とする請求項1に記載の車両用内装表皮材。
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