JP3638013B2 - 真空ポンプ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は真空ポンプに係り、特に半導体製造工程等に好適に使用され大気圧から駆動することができる真空ポンプに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、一対のロータが同期しながら反対方向に回転して吸入排気を行うルーツ型真空ポンプと呼ばれる真空ポンプが知られている。一対のロータは、ケーシング内面及びロータ同士の間にわずかな隙間を保持して、非接触で逆方向に回転する。この種の真空ポンプはロータを多段にすることにより、吸込側では約10−3Torr、排気側では大気圧となるように設計されている。多段のポンプロータのうち、吸込側のロータはあまり高温にならないが(100℃程度)、排気側にいくにつれてロータ段間の圧縮作用により発熱し、およそ200℃程度に加熱される。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
従来、この種の真空ポンプは、かご形の誘導モータによって駆動している。かご形の誘導モータはキャンド構造をしており、積層された鉄芯の溝にロータバーを納め、その両端をエンドリングで接続したかご形のモータロータを備えている。そして、かご形のモータロータを直接にポンプ軸端に取付けていたが、モータの2次抵抗が増加し2次銅損等によるモータロータ等の発熱とポンプの発熱とにより、モータは非常に効率が悪くなっていた。
【0004】
上記のモータロータの温度を下げるため、ポンプの温度を低くすると、半導体製造工程で真空ポンプを通過するガス中の反応生成物が付着し易くなる。そのため、真空ポンプの寿命を縮めることになるので、あまりポンプの温度を低くすることはできない。
また、モータロータの発熱は、真空中で熱伝達媒体がなく、主に輻射によりキャンに熱伝達され、キャン→ステータコア→モータフレームに伝熱される。しかしながら、この伝熱は伝熱量も小さく、モータロータを効果的に冷却することは困難であり、モータロータは高温の状態(約200〜300℃)になっていた。
【0005】
本発明は上述の事情に鑑みなされたもので、モータロータの発熱を少なくするとともにモータロータの冷却効率を向上させることにより、モータ効率を改善することができる真空ポンプを提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上述の目的を達成するため、本発明は、対向して配置された一対のポンプロータを直流モータで同期回転させて排気を行う真空ポンプにおいて、前記ポンプロータの吸込側のそれぞれの主軸端に永久磁石を周設したモータロータを取付け、該モータロータの外周および片側の面を覆ったキャンにてポンプ部を密封し、該キャンの外周にモータステータを配設し、該モータステータは円周等配に磁極歯を備え、該磁極歯には前記それぞれのモータロータの軸線の中心面において対称かつ反対の磁極となるように巻線がそれぞれ装着され、該モータロータのそれぞれの永久磁石により発生する磁界は、モータステータコアによって磁路が前記モータロータ間で形成され閉じるように構成され、該モータロータ間で働く磁気カップリング作用により、該モータロータは、同期して相互に反対側に回転することを特徴とするものである。
【0007】
本発明によれば、モータロータの発熱量を下げるため、従来のかご形誘導モータではなく、直流モータとし、モータロータの構成をロータヨークに永久磁石を周設した構造とした。このことにより、モータロータの2次銅損はなくなり、モータロータの発熱量は激減する。さらに前記永久磁石として磁石粉と樹脂を混合して製造したボンド磁石を使用することにより、永久磁石の電気比抵抗が103〜104μΩ・cm程度であるから永久磁石内部を通過する磁界の変動によるうず電流損失を小さくして発熱を小さくしている。
【0008】
また、モータロータをポンプロータの吸込側の主軸端に取付けることにより、ポンプからの伝熱量を小さくできる。永久磁石は高温下による熱減磁特性があり、一般に100℃を越えると減磁が著しく、モータ性能が悪くなるが、これを防ぐためである。永久磁石の温度を低くすることにより、結果として高温熱減磁特性の良い高価な永久磁石を使用しなくて済む。
【0009】
また本発明の1態様においては、モータロータからキャンへの輻射熱量を増やすために、キャンの内面およびロータ外面を黒色とし、モータロータの冷却効率を高めている。
【0010】
さらに本発明によれば、モータロータの冷却を良くするために、従来のキャン→ステータコア→モータフレームに伝熱される熱伝達経路に加えて、キャンの外面全面を覆い、かつ水冷モータフレームに密着するようにステータコア・巻線を含めて、ゴム・樹脂等のモールド材によりモールドして、モータロータ→キャン→モールド材→水冷モータフレームの熱伝達経路を設けることにより、さらに冷却効果を高めることができる。
【0011】
また、モールド材でモールドすることにより、薄いキャンの外側を真空容器として補強する効果、および、万一キャンが破損するようなことがあっても、大量の外気を吸込むことなく真空を維持することができ、例えば半導体製造工程で使用されるシランガス等と大気との反応による事故を防ぐ安全性をも高めるという効果をも奏する。
【0012】
さらにはキャンの全外面をモールド材でモールドすることにより、ポンプ内部から伝播される騒音の緩衝材としても有効であり、ポンプ外部に漏れる騒音を低減させることができる。
【0013】
【実施例】
以下、本発明に係る真空ポンプの一実施例を図面を参照して説明する。図1は本発明のルーツ型真空ポンプを示す断面図であり、図2は図1のII−II線断面図である。
【0014】
図1および図2において、符号1はケーシングであり、ケーシング1内に一対のポンプロータを構成するルーツロータ2,2が配設されている。ケーシング1は細長状に形成されており、吸込口1sを有した吸込側と吐出口1dを有した吐出側とを備えている。各ルーツロータ2は両端部近傍で軸受3,3によって支承されている。ルーツロータ2,2は2軸ブラシレス直流モータMによって回転駆動されるようになっている。
【0015】
図3および図4は、2軸ブラシレス直流モータMの詳細を示す図であり、それぞれ図1のIII−III線断面図、IV−IV線断面図である。図3および図4に示されるように、ルーツロータ2,2の主軸端2a,2aには、モータロータ5A,5Bが固定されている。即ち、モータロータ5A,5Bは真空ポンプの吸込側の主軸端2a,2aに固定されている。2つのモータロータ5A,5Bは、それぞれ2n極(nは整数)の永久磁石5a,5bを軸芯に対称に等間隔で磁束がラジアル方向に発生するように周設している。
【0016】
図5はモータロータ5Aの詳細を示す図であり、図5(a)は側面図、図5(b)は図5(a)のV(b)−V(b)線断面図である。なお、モータロータ5Bはモータロータ5Aと全く同一の構造であるため図示は省略する。モータロータ5AはS,N,S,Nの4極の永久磁石5aを周設してある。そして、永久磁石5aと主軸端2aとの間には積層されたケイ素鋼板からなる鉄芯5cが介装されている。
【0017】
また、図1、図3および図4に示すように、モータロータ5A,5Bの外周側には耐食性の良好な材料または樹脂からなるキャン7,7を介して1個のモータステータ6が配設されている。キャン7,7はモータロータ5A,5Bの外周および片側の端面を覆っており、これらキャン7,7により真空ポンプのポンプ部を密封している。また、キャン7の内面およびモータロータ5A,5Bの外面は黒色になっている。モータステータ6は、図1、図3および図4に示すように、ウォータジャケット9aを具備した水冷のモータフレーム9と、積層されたケイ素鋼板からなるモータステータコア6aと、巻線8a,8bとから構成されている。
【0018】
モータステータコア6aには、それぞれ6枚の磁極歯U〜Z,U1〜Z1が円周等配に形成されている。そして、磁極歯U〜Z,U1〜Z1には、両モータロータ5A,5Bの軸線の中心面Cにおいて対称かつ反対の磁極となるように巻線8a,8bがそれぞれ装着されており、巻線8bは巻線8aと反対巻きとなっている。前記水冷モータフレーム9に密着するとともにモータステータコア6a、巻線8a,8bおよびキャン7,7の外面の全てを覆うようにゴムまたは樹脂等のモールド材12が設けられている。また図1に示すようにモータフレーム9にはモータドライバ10が固定されている。
【0019】
一方、ルーツロータ2,2の反モータ側の軸端には、互いに噛み合う一対のタイミングギヤ11,11(図1では一方のギヤのみ示す)が固定されており、突発的な外部要因による一対のルーツロータ2,2の同期のずれを防ぐようになっている。
【0020】
次に、前述のように構成された真空ポンプの作用を説明する。図6はモータMの動作を説明する説明図である。なお、図6では図解を簡略化するために樹脂キャン7およびモールド材12を省略している。
2軸ブラシレス直流モータMのコイル8a,8bにモータドライバ10を介して通電すると、モータステータコア6aにはモータロータ5A,5Bをそれぞれ反転して回転させる空間移動磁界が形成される。
【0021】
すなわち、図6(a)の状態では磁極歯U,XにはN極、磁極歯V,YにはS極が形成され、磁極歯U1,X1にはS極、磁極歯V1,Y1にはN極が同時に形成されるように通電するとモータロータ5A,5Bは矢印で示すように、対向する方向に回転駆動される。
【0022】
同様に図6(b)において、磁極歯V,YにはS極、磁極歯W,ZにはN極が形成され、磁極歯V1,Y1にはN極、磁極歯W1,Z1にはS極が形成され、更に図6(c)に示すように、磁極歯X,UにはS極、磁極歯Y,VにはN極が形成され、磁極歯X1,U1にはN極、磁極歯Y1,V1にはS極がそれぞれ同時に形成されるように通電すると、モータロータ5A,5Bは連続した回転力で矢印で示す対向する方向に回転駆動される。
【0023】
モータロータ5A,5Bのそれぞれ永久磁石5a,5bにより発生する磁界は、モータステータコア6aによって磁路が各モータロータ5A,5B間で形成され閉じるように構成されている。したがって、一対のモータロータ5A,5Bには、異磁極面で磁気カップリング作用が働き,必ず同期して相互に反対側に回転する。
【0024】
モータロータ5A,5Bの回転により、一対のルーツロータ2,2は同期回転する。図7は、第1段等の所定段での一対のルーツロータ2,2の動作を説明する図であり、一対のルーツロータ2,2は、ケーシング1の内面及びロータ2,2同士の間にわずかな隙間を保持して、非接触で逆方向に回転する。一対のルーツロータ2,2が位相1から位相4まで回転するにつれて、吸込側気体はロータ2とケーシング1間に閉じ込められて吐出側に移送される。3葉ロータでは、1つのルーツロータで3ヶ所谷部があるため、ポンプ1回転あたり6回排気されることになる。図7に示す第1段等の所定段から排出されたガスは第2段等の次段に導入され、上述と同様な作用がなされる。
【0025】
本発明によれば、モータロータ5A, 5Bの発熱量を下げるため、従来のかご形誘導モータではなく、ブラシレス直流モータMとし、モータロータ5A,5Bの構成をロータヨークに永久磁石5a,5bを周設した構造とした。このことにより、モータロータ5A,5Bの2次銅損はなくなり、モータロータ5A,5Bの発熱量は激減する。
【0026】
また、モータロータ5A,5Bをルーツロータ2,2の吸込側の主軸端2a,2aに取付けることにより、ポンプからの伝熱量を小さくできる。永久磁石は高温下による熱減磁特性があり、一般に100℃を越えると減磁が著しく、モータ性能が悪くなるが、これを防ぐためである。永久磁石の温度を低くすることにより、結果として高温熱減磁特性の良い高価な永久磁石を使用しなくて済む。さらに本発明においては、永久磁石の材質をボンド磁石にすることにより、永久磁石自身のうず電流の発生を抑制しロータの発熱を最小にすることができる。
【0027】
また本発明においては、モータロータ5A,5Bの冷却効率を高めるため、モータロータ5A,5Bからキャン7,7への輻射熱量を増やすためにキャン7,7の内面およびモータロータ5A,5Bの外面を黒色としている。
【0028】
さらに本発明によれば、モータロータ5A,5Bの冷却を良くするために、従来のキャン→ステータコア→モータフレームに伝熱される熱伝達経路に加えて、キャン7,7の外面全面を覆い、かつ水冷モータフレーム9に密着するようにステータコア6a・巻線8a,8bを含めて、ゴム・樹脂等のモールド材12によりモールドして、モータロータ5A,5B→キャン7,7→モールド材12→水冷モータフレーム9の熱伝達経路を設けることにより、さらに冷却効果を高めることができる。また、モールド材12でモールドすることにより、薄いキャン7,7の外側を真空容器として補強する効果、および、万一キャンが破損するようなことがあっても、大量の外気を吸込むことなく真空を維持することができ、例えば半導体製造工程で使用されるシランガス等と大気との反応による事故を防ぐ安全性をも高めるという効果をも奏する。
【0029】
さらにはキャン7,7の全外面をモールド材12でモールドすることにより、ポンプ内部から伝播される騒音の緩衝材としても有効であり、ポンプ外部に漏れる騒音を低減させることができる。
【0030】
図1乃至図7に示す実施例においては、2軸の真空ポンプと2軸のモータについて説明をしたが、真空ポンプが1軸のポンプであったり2軸のポンプであっても、1軸のみにモータを取り付けた場合においても同様な効果が得られる。
【0031】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、次に列挙する効果が得られる。
(1)真空ポンプを駆動するモータを直流モータとし、モータロータを永久磁石を周設した構造とすることにより、従来のモータロータの2次銅損をなくし、ロータの発熱量を下げることができる。このことはモータ効率を高めることになり、従来型のモータに比較して効率を10%以上高めることができる。
(2)永久磁石を周設したモータロータをポンプ吸込側の主軸端に取付けることにより、ポンプロータからモータロータへの伝熱量を下げることができ、永久磁石の温度を下げることができる。このことは、特に高温熱減磁特性の良い高価な永久磁石を使用せずに済み、結果として安価なポンプを製造することができる。
(3)さらに永久磁石として磁石粉と樹脂を混合して製造したボンド磁石を使用することにより、永久磁石自身のうず電流損失を抑制しロータ発熱を下げることができる。
(4)モータロータの温度を下げるため、キャンの内面およびロータ外面を黒色とすることにより、モータロータからキャンへの輻射熱量を増加させることができる。
(5)水冷モータフレームとキャン外周およびステータコア・巻線をゴムまたは樹脂等のモールド材でモールドすることにより、モータロータの冷却効果を高めることができるとともに、ポンプの騒音低減をあわせて達成できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る真空ポンプの一実施例を示す断面図である。
【図2】図1のII−II線断面図である。
【図3】図1の III−III 線断面図である。
【図4】図1のIV−IV線断面図である。
【図5】図1におけるモータロータの詳細を示す図であり、図5(a)は側面図、図5(b)は図5(a)のV(b)−V(b)線断面図である。
【図6】図1におけるブラシレス直流モータの動作を説明する説明図である。
【図7】図1におけるルーツロータの動作説明図である。
【符号の説明】
1 ケーシング
2 ルーツロータ
3 軸受
5A,5B モータロータ
5a,5b 永久磁石
6 モータステータ
6a モータステータコア
7 樹脂キャン
8a,8b 巻線
9 モータフレーム
10 モータドライバ
11 タイミングギヤ
12 モールド材
Claims (5)
- 対向して配置された一対のポンプロータを直流モータで同期回転させて排気を行う真空ポンプにおいて、前記ポンプロータの吸込側のそれぞれの主軸端に永久磁石を周設したモータロータを取付け、該モータロータの外周および片側の面を覆ったキャンにてポンプ部を密封し、該キャンの外周にモータステータを配設し、該モータステータは円周等配に磁極歯を備え、該磁極歯には前記それぞれのモータロータの軸線の中心面において対称かつ反対の磁極となるように巻線がそれぞれ装着され、該モータロータのそれぞれの永久磁石により発生する磁界は、モータステータコアによって磁路が前記モータロータ間で形成され閉じるように構成され、該モータロータ間で働く磁気カップリング作用により、該モータロータは、同期して相互に反対側に回転することを特徴とする真空ポンプ。
- 前記モータは、モータロータの外周に配置されたステータ部をモールド材にて封止したことを特徴とする請求項1記載の真空ポンプ。
- 前記モータは、ステータコアの外周を水冷モータフレームにて構成したことを特徴とする請求項1または2記載の真空ポンプ。
- 前記永久磁石は、磁石粉と樹脂を混合して製造されたボンド磁石であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の真空ポンプ。
- 前記モータロータの外面が黒色であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の真空ポンプ。
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