JP3637490B2 - 露光装置及び露光方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は露光装置及び露光方法に関する。更に具体的には半導体装置の製造工程において、パターンの転写に用いられる露光装置及び露光方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
半導体装置のリソグラフィ工程において、マスクに形成されたパターンをウェーハに転写する場合、露光装置が用いられる。従来、0.35μm設計則の半導体装置までは、この露光装置のうち、ステッパー(ステップアンドリピートアライナー)と呼ばれる装置を用いて、パターン転写が行われていた。ステッパーは、マスクを固定して、露光光を照射して、画角ごとに、パターンの転写を行うものである。尚、ここで、画角は、一度に高精度で解像することができる範囲である。
【0003】
ところで、ステッパーの解像度Rは、R=k・λ/NAと表すことができる。ここで、kは、経験定数、λは、光源の波長、NAは、レンズの開口係数である。従って、より微細なパターンをウェーハに正確に転写するためには、露光光を短波長化すると共に、結像光学系のレンズの開口係数を大きくすることが必要となる。
【0004】
一方、レンズの口径は、レンズの開口係数NAを用いて、tan(sin−1NA)と表すことができる。従って、レンズの開口係数NAを大きくすれば、レンズの口径数が大きくなり、開口係数NAが1に近づけば、要求されるレンズの口径数は、急速に大きくなる。しかし、全面に渡って低収差の大口径レンズを製造することは困難である。
【0005】
従って、近年のパターンの微細化に伴い、0.25μm設計則からは、露光装置として、スキャナー(ステップアンドスキャンアライナー)と呼ばれる装置が用いられることが多くなった。スキャナーは、長手方向を最大画角の幅とする細長い領域を露光領域として、この長手方向に垂直な方向にマスクとウェーハとを同期させた状態で、反対方向に走査させ、マスク上のパターン全面を露光するものである。これによって、ステッパーに比して、レンズの大口径化を抑え、レンズの精度を保つことができ、従って、より微細なパターンの転写を高精度で行うことができる。
【0006】
また、さらなる微細化に対応し、70nm設計則からは、より高い解像性能を得られる装置として、露光光源として光を用いる光方式の代わりに、電子ビームを用いる電子ビーム方式のスキャン式露光装置の適用が検討されている。この露光装置は、EPL(Electron beam Projection Lithography)露光装置と呼ばれる。EPL露光装置においても、マスクとウェーハを同期させた状態で、反対方向に走査させ、マスク上での電子ビームの照射位置を相対的に移動させることにより、マスクに形成されたパターン全面を露光し、ウェーハへのパターンの転写を行うことができる。
【0007】
図6は、EPL露光装置において、電子光学系の中心軸が、マスク22上を移動する相対的な位置を示すための概略図である。
図6に示すように、マスク22に形成されたパターンは、細長い4つのストライプ24、26、28、30に分けられている。
【0008】
まず、マスク22は、電子光学系の中心軸が、ストライプ24の下方の、走査開始位置72aに来るようにセットされる。この状態で、加速度+Aで、マスクの走査を開始し、電子光学系の中心軸は、矢印72の方向に移動する。
【0009】
中心軸が照射開始位置72bに達すると、加速を終了する。そのまま等速でマスクの走査を続けた状態で、電子ビームの照射を開始する。中心軸は、等速でマスク22上のストライプ24の上を矢印の方向に移動しながら、電子ビームが照射され、ストライプ24上のパターンがウェーハに転写される。
【0010】
中心軸が照射終了位置72cに達すると、電子ビームの照射を終了する。また、同時に、加速度−Aで、マスクの走査速度の減速を開始する。マスクは、中心軸が、走査終了位置72dに来たところで、速度0となり停止する。
【0011】
その後、矢印72に垂直な方向に、マスクステージ22の走査を開始し、中心軸を、マスク22上の矢印80の方向に移動させる。これにより、中心軸は、隣接するストライプ26の走査開始位置74aに来るように移動する。ストライプ24の転写と同様にして、ストライプ74のパターンの転写を行う。
【0012】
同様に、マスクを走査することにより、中心軸を矢印82、76、84、78の方向に移動し、マスク上に形成されたすべてのストライプ24、26、28、30を照射してウェーハにパターンを転写する。その後、再びマスク22は、中心軸が、ストライプ24の走査開始位置72aに来るように戻され、パターンの転写を終了する。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上述のようにEPL露光装置でパターンの転写を行う場合、電子ビームをマスク22に照射するのは、加速度が0となっている場合、即ち、等速でマスクを走査している場合のみである。
【0014】
図7は、従来のEPL露光装置において、マスク22の走査速度の加速度と、経過時間との関係を示すグラフである。図7において、縦軸は加速度を示し、横軸は時間を示す。
図7に示すように、マスク22上を、中心軸が走査開始位置から、照射開始位置に移動するまでのa〜b間において、マスク22は、加速度+Aで加速される。また、中心軸が照射開始位置から、照射終了位置に移動するまでのb〜c間において、加速度を0として、マスクは等速で走査される。また、中心軸が照射終了位置から、加速終了位置に来るまでのc〜d間、加速度−Aで減速され、dにおいて、減速を終了すると共に、速度が0となり走査が終了する。
【0015】
ここで、マスクに形成されたパターンを転写するため、ストライプに電子ビームが照射されているのは、中心軸が照射開始位置から、照射終了位置にあるまでのb〜c間、即ち、図7に示す、加速度が0となっている時間T2の間のみである。尚、このとき、マスクは等速に走査されているが、この速度は、ウェーハに対する露光エネルギーの面密度とレジストの感度とで決められる。
【0016】
このように、EPL露光装置を用いたパターン転写の際の露光時間には、実際にパターンを転写するため、ストライプに電子ビームを照射する時間T2のほかに、走査速度が等速になるまでのa〜b間の加速時間や、走査を停止するまでのc〜d間の減速時間や、更に、1のストライプから隣接するストライプの走査開始位置に移動するまでの時間等が必要となってしまう。従って、露光処理に多くの時間がかかることとなり、スループットの面において問題である。
【0017】
図8は、ウェーハ1枚あたりの露光時間と、加速度との関係を示すグラフである。図8において、縦軸は露光時間(秒)を示し、縦軸は加速度(G)を示す。図8に示すように、各露光時間は、ストライプの長手方向の加減速時間90、ストライプ間の移動時間92、電子ビーム照射時間及び偏向待ち時間94、ウェーハ搬送や、アライメントなどのオーバーヘッド時間96に分けられる。
【0018】
図8に示すように、加速度が小さくなると、急激に露光時間が長くなる。また、加速度が小さくなるほど、露光時間全体に対する、加減速時間90の占める割合が大きくなっている。
【0019】
上述したように、マスクを等速で走査している間の走査速度は、ウェーハに対する露光エネルギーの面密度とレジストの感度とで決められる。従って、等速走査中に行われる電子ビームの照射に要する時間94は、加速度に関わらずほぼ一定である。従って、電子ビームの照射が行われない加減速時間を短くすることで、露光時間を短くすることも考えられる。即ち、この場合、加速度を大きくすればよい。
【0020】
図9は、マスクステージの加速度と、スループットとの関係を示すグラフである。図9において、縦軸は、1時間あたりの処理枚数(枚/時間)であり、横軸は加速度(G)である。なお、ここで、露光の条件としては、画角のサイズを横20mm、縦25mmとし、ウェーハサイズを300nmφとし、画角の数を1枚のウェーハにつき106個としている。また、電流の密度を0.16A/cmとし、レジストの感度を5μC/cmとしている。
【0021】
図9に示すように、加速度を大きくすれば、単位時間内のスループットは大きくなり、露光時間の短縮化を図ることができる。
【0022】
しかし、EPL露光装置では、マスクを透過した電子ビームを、1/4に縮小して結像する。図9より、35枚/時間のスループットを得るためには、マスクは5G以上の加速度が必要である。しかし、このような高加速度を真空中で実現することは困難である。また、あまりに大きな加速度で、マスクを加速すれば、加速に伴う反力により装置が振動したり、マスクが変形したりするため、正確なパターンの転写が困難になる。
【0023】
従って、この発明は、以上の問題を解決し、加速度を大きくすることを抑えつつ、露光時間を短縮し、スループットの向上を図ることを目的として、改良された露光装置及び露光方法を提案するものである。
【0024】
【課題を解決するための手段】
この発明における露光方法は、パターンの形成された原版と前記パターンを転写する基板とを同期して走査させ、荷電粒子ビームまたは電磁波を、前記原版に照射することにより、試料にパターンを転写する露光方法において、
前記原版及び前記試料を加速して走査を開始する走査開始工程と、
前記原版及び前記試料を加速した状態で、前記原版の照射開始位置に到達した時に、前記荷電粒子ビームまたは電磁波の照射を開始する照射開始工程と、
前記荷電粒子ビームまたは電磁波を照射している状態で、前記原版の所定の位置において、前記原版及び前記試料の減速を開始する減速開始工程と、
前記原版の照射終了位置に到達した時に、前記荷電粒子ビームまたは電磁波の照射を終了する照射終了工程と、
前記原版の走査速度が0になるまで、前記原版及び前記試料の減速を続ける減速工程と、
を備え
前記荷電粒子ビームまたは前記電磁波の照射中に、前記原版及び試料の位置を検出して、前記原版及び試料の目標位置の誤差を算出し、その結果に応じて、前記原版及び前記試料の走査速度を調節するものである。
あるいは、この発明における露光方法は、前記照射開始工程の後、前記減速開始工程前に、前記荷電粒子ビームまたは電磁波の照射している状態で、前記加速を終了して、前記原版及び前記試料を等速に走査する等速工程を備えるものである。
【0025】
また、この発明における露光方法は、前記荷電粒子ビームまたは前記電磁波の照射中に、前記原版の位置を検出して、前記原版の目標位置の誤差を算出し、その結果に応じて、前記原版及び前記試料の走査速度を調節するものである。
【0027】
また、この発明における露光方法は、前記荷電粒子ビームとして、電子ビームを用いることを特徴とするものである。
【0028】
次に、この発明における露光装置は、荷電粒子ビームまたは電磁波を放射することができる放射源と、
パターンの形成された原版を載置して、走査することができる原版載置台と、
試料を載置することができる試料載置台と、
前記原版載置台及び前記試料載置台の位置を検出し、この検出結果から、前記原版及び前記試料の目標位置とのズレを算出し、この算出結果に応じて、前記原版載置台及び/または前記試料載置台の走査速度を制御する制御手段と、
を備え、
前記放射源は、前記原版載置台及び/または前記試料載置台が走査速度の加速及び/または減速中に、
前記原版に対して荷電粒子ビームまたは電磁波を照射し、
前記制御手段は、
前記原版載置台及び前記試料載置台を加速して走査を開始し、
前記原版の照射開始位置に到達して前記放射源による照射が開始されるときに、前記原版載置台及び前記試料載置台の加速を開始し、
前記荷電粒子ビームまたは電磁波を照射している状態で、前記原版の所定の位置において、前記原版載置台及び前記試料載置台の減速を開始し、
前記原版載置台の走査速度が 0 になるまで、前記原版及び前記試料載置台の減速を続けるよう、前記原版載置台及び前記試料載置台の速度を制御することができるものである。
【0029】
また、この発明における露光装置は、前記荷電粒子ビームまたは電磁波を、前記試料上に結像するための光学系を備えるものである。
【0030】
また、この発明における露光装置は、前記光学系が、投影光学系であるものである。
【0031】
また、この発明における露光装置は、前記荷電粒子ビームが、電子ビームであるものである。
【0032】
【発明の実施の形態】
以下図面を参照して、この発明の実施の形態について説明する。なお、各図において、同一または相当する部分には同一符号を付してその説明を省略ないし簡略化する。
【0033】
実施の形態.
図1は、この発明の実施の形態における、EPL露光装置100を示す概略図である。
EPL(Electron beam Projection Lithography)露光装置100には、電子銃2が備えられている。電子ビーム4は、電子銃2から放出される。電子銃2から放出された電子ビーム4は、陽極6、成型絞り8を経て、照明光学系10に入射する。照明光学系10には、照明偏向器12が備えられている。電子ビーム4は、照明光学系10に入射し、照明偏向器12を経て、マスクステージ14に至る。マスクステージ14には、マスク22が載置されている。電子ビーム4は、マスク22を照射し、これを透過した電子ビーム4は、結像光学系16に入射する。結像光学系16には、対物偏向器18が備えられている。結像光学系16に入射した電子ビーム4は、対物偏向器18を経て、ウェーハステージ20に至る。ウェーハステージ20には、ウェーハ34が載置されている。電子ビーム4は、ウェーハ34に照射する。
なお、EPL露光装置100において電子光学系の中心軸は、電子銃2を通り垂直な方向の軸である。
【0034】
また、マスクステージ14には、マスクステージ稼働手段70が備えられ、ウェーハステージ20には、ウェーハステージ稼働手段72が備えられている。また、マスクステージ稼働手段70及びウェーハステージ稼働手段72は、位置制御手段74に接続されている。
【0035】
図2は、EPL露光装置100において用いるマスク22を示す上面概略図である。
図2に示すように、マスク22は、薄い板状の基板である。マスク22には、4つのストライプ24、26、28、30に分割してパターンが形成されている。また、各ストライプ24〜30には、それぞれ、約1.3mmピッチで、サブフィールドと呼ばれる約1mm各の小領域が、横方向に20個、縦方向に100個配置されている。従って、各ストライプ24〜30の幅は26mmである。サブフィールドは、シリコンのメンブレンで形成されている。
【0036】
また、ストライプ26と、ストライプ28との間には、メジャーストラット領域32が形成されている。メジャーストラット32の幅は10mmである。メジャーストラットは、バルクシリコンで形成されている。メジャーストラット32は、サブフィールドがシリコンのメンブレンで形成されているため、マスク22の強度を保つために設けられたものである。
【0037】
また、図2において、矢印42、50、44、52、46、54、48、56は、マスクステージ14が走査した結果、EPL電子光学系の中心軸が、相対的に、マスク22上を移動する方向を示す。
【0038】
以上のように構成されたEPL露光装置100の機能について説明する。
電子銃2は、電子ビーム4を放出する。陽極6は、電子ビーム4を引き出して、電子ビーム4を100kVに加速する。更に、成型絞り8は、加速された電子ビーム4を、正方形に成型する。
【0039】
照明光学系10は、成型された電子ビーム4を、約1mm角の大きさにする。また、照明偏向器12は、電子ビーム4を矢印38の方向、即ち、各ストライプにおいて、長手方向に垂直な方向に、各ストライプの長辺の1点から、対向する長辺の1点までを照射するように走査する。電子ビーム4は、照明光学系10を経て、成型、偏向された後、マスク上に照射する。電子ビーム4は、各ストライプ24〜30に形成されたサブフィールドを照射して、これを転写することにより、各ストライプ24〜30をウェーハ34に転写する。
【0040】
マスクステージ14は、マスク22を載置することができる。また、マスクステージ稼働手段70は、マスク22が載置された状態のマスクステージ14を、矢印40の示す方向に走査することができる。この走査及び照明偏向器12による電子ビーム4の走査により、マスク22に形成されたパターン全面に電子ビーム4を照射することができる。
【0041】
結像光学系16は、マスク22を透過した電子ビーム4を受け、これを1/4に縮小する。また、対物偏向器18は、矢印62の方向、即ち、ウェーハに転写される各ストライプ像の長手方向に垂直な方向に、各ストライプ像の長辺の1点から、対向する長辺の1点まで照射できるように電子ビーム4を走査する。電子ビーム4は、結像光学系16を経て、縮小、偏向され、ウェーハ34上に、照射する。
【0042】
また、ここで、ウェーハステージ稼働手段72は、ウェーハステージ20を、マスクステージ14と同期して反対の方向に走査させることができる。即ち、マスクステージ14が、矢印40の方向に走査した場合には、ウェーハステージ稼働手段72は、ウェーハステージ20を、矢印60の方向に走査する。
【0043】
ここで、パターン像は、ウェーハ34上では1/4に縮小される。また、マスク22上のサブフィールドは1.3mmピッチである。このため、マスクステージ14の走査速度、あるいは加速度は、ウェーハステージ20の走査速度あるいは加速度に対して、4×1.3=5.2倍となる。
【0044】
ここで、マスクステージ14とウェーハステージ20との位置は、レーザー干渉計(図示せず)によって測定され、位置制御手段74に伝えられる。位置制御手段74は、目標位置との誤差を算出し、これを、マスクステージ稼働手段70及びウェーハステージ稼働手段72にフィードバックすることにより、各ステージの走査速度を制御する。加減速中の露光においては、このフィードバック制御の応答速度を向上させる。さらに、加減速中の露光では、位置制御手段74は、フィードバック制御に加えて、各ステージ14、20の予測位置を計算して、これを、マスクステージ稼働手段70及びウェーハステージ稼働手段72に伝えて制御するフィードフォワードの手法をも取り入れている。
【0045】
図3は、この発明の実施の形態における露光方法について説明するためのフロー図である。
以下、図3に従って、この実施の形態において、EPL露光装置100を用いて露光する方法について説明する。
【0046】
まず、電子ビーム4の照射に先立って、マスク22を、照射開始位置42aへ移動する(ステップS2)。ここでは、図2に示すように、マスクステージ14を走査することにより、電子光学系の中心軸が、ストライプ24の照射開始位置42aの位置に来るように、マスク22を移動する。
【0047】
次に、加速度+Aでマスクステージ14の加速を開始すると共に、マスク22への電子ビーム4の照射を開始する(ステップS4)。ここでは、まず、電子銃2から電子ビーム4が放出され、陽極6により加速された後、成型絞り8を経て成型され、この電子ビーム4が、照射光学系10に入射する。照明光学系10に入射した電子ビーム4は、照明光学系10により、約1mm角にされて、照明偏向器12により、矢印42とは垂直の矢印38の方向に走査され、マスク22へ照射される。このマスク22への電子ビームの照射の開始と同時に、マスクステージ稼働手段70は、位置制御手段74からの信号を受けて、マスクステージ14の走査を開始する。
【0048】
これによって、電子光学系の中心軸は、図2に示すように、ストライプ22上を、照射開始位置42aから、矢印40の方向に、徐々に速度をあげながら移動する。また、マスクステージ14の走査に同期して、ウェーハステージ稼働手段72は、ウェーハステージ20を+Aの1/5.2倍の加速度で、マスクステージ14と反対の方向に加速する。マスク22を透過した電子ビーム4は、結像光学系16を介して1/4に縮小され、対物偏向器により、矢印62の方向に走査されながら、ウェーハ34に照射する。
【0049】
次に、マスクステージ14の加速を終了する(ステップS6)。ここでは、電子光学系の中心軸が、ストライプ24上の、加速終了位置42bまで来た時に加速を終了する。また、同時に、ウェーハステージ20の加速も終了する。
【0050】
これによって、マスクステージ14及びウェーハステージ20は、等速に走査される(ステップS8)。従って、電子光学系の中心軸は、ストライプ24上を矢印42の方向に等速に移動する。また、この間も、加速中と同様に電子ビームは照射されている。なお、この等速走査の際の速度は、EPL露光装置100における電流密度、照明偏向器12と対物偏向器18による偏向待ち時間及びウェーハに塗布されたレジストの感度等で決定される最高速度である。
【0051】
次に、マスクステージ14の減速を開始する(ステップS10)。ここでは、EPL露光装置100の中心軸が、減速開始位置42cまで来た時に、加速度−Aで、マスクステージの減速を開始する。これによって、電子光学系の中心軸は、42cから、徐々に速度を落としながらストライプ24上を矢印42の方向に移動する。また、このとき同期して、マスクステージ14とは反対の方向に、−Aの1/5.2倍の加速度で、ウェーハステージの減速を行う。また、この間も、加速中と同様に電子ビーム4は照射されている。
【0052】
次に、マスクステージ14の減速を終了し、同時に、電子ビーム4の照射を終了する(ステップS12)。ここでは、照射終了位置42dまで来た時に、マスクステージ14の走査速度が0になり、マスクステージが停止するようになっている。この走査が停止した時点で、マスクステージ14の減速を終了し、電子ビーム4の照射を終了する。
【0053】
この状態において、ストライプ24のパターンの転写は終了し、ウェーハ34上には、パターン36が露光されている。
この状態で、マスク22上の全てのストライプ24〜30の転写が終了したかどうかを確認する(ステップS14)。
【0054】
ここでは、ストライプ26〜30のパターンの転写が終了していないため、矢印42に対して垂直に左の方向に、加速度+Aで、マスクステージ14の加速を開始する(ステップS16)。これにより、電子光学系の中心軸は、マスク22上を、照射終了位置42dから矢印50の方向に徐々に速度を上げながら移動する。
【0055】
次に、マスクステージ14の減速を開始する(ステップS18)。ここでは、中心軸が、ストライプ24の照射終了位置42dとストライプ26の照射開始位置44aとの中間地点50aまで来た時に、加速度−Aでの減速を開始する。これにより、電子光学系の中心軸は、矢印50の方向に、徐々に速度を落としながら移動する。
【0056】
ストライプ26の照射開始位置44aまで来た時、走査速度が0になるので、ここで、減速を終了する。これによって、ストライプ26の照射開始位置44aにマスク22が移動される(ステップS2)。ストライプ24、26の幅はそれぞれ26mmであるから、ストライプ24からストライプ26への移動距離は、26mmである。
【0057】
再び、ストライプ26に対して、ステップS4〜S12を繰り返す。即ち、ストライプ26上を、矢印44の方向に、電子光学系の中心軸が移動するように、マスクステージ14を走査する。この間、マスクステージ14は、ストライプ24のパターン転写の場合と同様に、中心軸が照射開始位置44aから加速終了位置44bにある間は、加速度+Aで加速され、加速終了位置44bから減速開始位置44cにある間は、加速度を0にして、等速で走査される。また、中心軸が減速開始位置44cに来ると、加速度−Aでマスクステージ14の減速を開始し、照射終了位置44dで、走査速度が0となり、減速を終了する。この間、電子ビーム4が常に照射されている。
【0058】
次に、ステップS16、S18を繰り返して、ストライプ28の照射開始位置46aに移動する。
【0059】
このようにして、マスク22上に形成された、4つのストライプ24〜30の全てについて、ウェーハ34へのパターンの転写をおこなう。その後、全てのストライプ24〜30の転写をしたかどうかの確認を行い(ステップS14)、転写が完了している場合には、パターンの転写を終了する。
【0060】
なお、メジャーストラットの幅は10mmであるから、ストライプ26と、ストライプ28との移動距離は36mmである。ストライプ28とストライプ30との移動距離は、26mmである。また、ストライプ30から、ストライプ24に戻る移動距離は、88mmとなる。
【0061】
図4は、この実施の形態において露光を行う場合の、マスクステージ14の加速度と、経過時間との関係を示すグラフであり、図4(a)は、各ストライプ24〜30の長手方向に平行な方向にマスクステージ14を走査している場合を示し、図4(b)は、各ストライプ24〜30の長手方向に対して垂直な方向にマスクステージ14を走査している場合を示す。なお、図4(a)、図4(b)において、縦軸は加速度を示し、横軸は時間を示す。
【0062】
各ストライプ24〜30の照射開始位置42a〜48aに中心軸が来るように、マスクステージ14がセットされた状態において、マスクステージ14の加速度は0である。この状態から、図4(a)において時間aに示すように、加速度+Aで、マスクステージ14の加速が開始される。時間bまで、加速は続けられ、時間bで、加速を終了する。この時点で、中心軸は、マスク22の加速終了位置42b〜48bにある。このまま加速度を0として、時間cまで、等速運動を続ける。時間cの時点で、中心軸は、マスク22の減速開始位置42c〜48cにある。時間cから、加速度−Aでの減速を開始する。時間dまで減速は続けられ、時間dで減速を終了する。この時点で、マスクステージ14の速度は0となっている。また、中心軸はマスク22の減速終了位置42d〜48dにある。
この実施の形態においては、加速開始時間aから、減速終了時間dまでの時間T1の間、電子ビーム4の照射がされている。
【0063】
図4(b)において時間eに示すように、1つのストライプの減速終了位置から、隣のストライプの加速開始位置に移動する場合には、加速度0の状態から、加速度+Aで、マスクステージ14を加速する。加速は、時間fまで続けられる。時間fにおいて、中心軸は、ストライプの減速終了位置と、次に移動するストライプの加速開始位置との中間点50a〜56aにある。時間fにおいて、加速度−Aで減速を開始する。減速は時間gまで続けられる。時間gにおいて、マスクステージ14の走査速度は0となっている。また、中心軸は、マスク22上の加速開始位置42a〜48aにある。
【0064】
以上説明したように、この実施の形態によれば、マスクステージ14の加速、減速中であっても、電子ビーム4を照射して、パターンの転写を行うことができる。従って、加速、減速のための待ち時間を有効に照射時間に利用することができ、スループットの向上を図ることができる。
【0065】
図5は、EPL露光装置100を用いてパターンの転写を行った場合と、従来の露光装置を用いてパターン転写を行った場合とにおいて、それぞれ、加速度と、スループットとの関係を示すグラフである。図5において、□を用いたプロットが、EPL露光装置100の場合であり、〇を用いたプロットが従来の露光装置の場合である。なお、図5において、縦軸は、1時間あたりの処理枚数であり、横軸は加速度である。また、ここで、露光の条件としては、画角のサイズを横20mm、縦25mmとし、ウェーハサイズを300nmφとし、画角の数を1枚のウェーハにつき106個としている。また、電流の密度を0.16A/cmとし、レジストの感度を5μC/cmとしている。
【0066】
図5に示すように、同じ加速度の場合、電子ビーム露光装置100を用いた場合の方が、スループットが、大きいことがわかる。特に、加速度の小さな場合に、両者を比較すると、EPL露光装置100を用いた場合の方が、スループットが大幅に大きい。
従って、この実施の形態によれば、従来の露光方法に比べ、全体の露光処理時間に対する待ち時間の割合を抑えることができ、スループットの向上を図ることができる。
【0067】
また、図5に示すように、同じ枚数を処理するために必要な加速度は、電子ビーム露光装置100を用いた場合の方が小さい。例えば、35枚/時間を処理するためには、従来の方法の場合、5Gの加速度が必要であったのに対して、電子ビーム露光装置100を用いれば、1Gの加速度でよい。
従って、加速度を抑えて露光を行うことができ、急激な加速に伴うマスクの歪みや、装置の振動などを抑えることができる。これによって、微細パターンを正確に転写することができ、また、露光装置に振動対策等の必要がないため装置の簡素化をも図ることができる。
【0068】
また、加速中、あるいは減速中も電子ビームを照射するため、中心軸がマスクに形成されたパターン上にある状態で、マスクステージ14の走査の開始も、走査の終了もすることができる。従って、加速中若しくは減速中の走査距離の分、マスクステージ14を大きくする必要がない。従って、マスクステージ14を小さくすることにより露光装置の小型化を図ることができ、これにより、露光装置を安価に製造することができる。
【0069】
また、この実施の形態において、EPL露光装置100は、電子銃2を備え、電子ビームにより、パターンの転写を行う。これにより、回折効果によりマスクパターンの解像度の劣化を抑え、高解像性能を達成することができる。
【0070】
また、この実施の形態において、EPL露光装置100は、結像光学系16を用いた。これにより、マスクとウェーハとの距離を大きく取ることができ、装置の設計を容易にすることができる。また、結像光学系16として、縮小光学系を用いた。従って、マスク上の最大パターン寸法を大きくすることができ、マスクの製造を容易にすることができる。
【0071】
また、この発明においては、位置制御手段74は、マスクステージ稼働手段70及びウェーハステージ稼働手段72による、各ステージ14、20の走査速度をフィードバック及びフィードフォワードの手法により制御する。また、これらの制御信号に対する各ステージ稼働手段70、72の応答速度は向上されている。従って、加減速中の露光であっても、高精度の露光を行うことができる。
【0072】
なお、この実施の形態においては、EPL露光装置100を用いて説明したが、これに限るものではなく、スキャン方式を採用するスキャナーや、他の露光装置であってもよい。例えば、EPL露光装置100は、高解像性能を達成するため電子ビームを用いてパターン転写を行うものであるが、この発明においては、電子ビームを用いる露光装置に限るものではない。また、EPL露光装置100は、光学系として、縮小光学系である結像光学系16を有する。しかし、このように光学系を有する装置に限るものではない。
【0073】
また、この実施の形態においては、マスク22には、4つのストライプ24〜30に分けて、パターンが形成されている。しかし、ストライプは4つに限るものではなく、また、このようにストライプ状にパターンが形成されているものでなくてもよい。
【0074】
また、この実施の形態においては、中心軸をマスクの加速開始位置に来るようにマスクステージを移動した状態から、加速の開始と同時に、電子ビームの開始をおこなった。しかし、これに限るものではなく、加速を開始してマスクステージがある程度の速度になった状態から電子ビームの照射を開始するものであってもよい。
また、減速の終了と同時に電子ビームの照射を終了した。しかし、これに限るものでもなく、ある程度減速した状態で、電子ビームの照射を終了した後、速度を0にするまで減速を続けるものであってもよい。なお、このような場合には、電子ビームを照射しない間に、中心軸がマスク上を移動する走査距離の分、パターンを形成しない部分を設けておく必要がある。
【0075】
また、ここでは、一定の加速度+Aあるいは−Aで加減速する場合について説明した。しかし、加速度は一定である場合に限らず、時間に応じて加速度が変化するものであってもよい。
【0076】
さらに、ここでは、マスクステージ稼働手段70、ウェーハステージ稼働手段72及び位置制御手段74を備えるEPL露光装置100について説明したが、この発明は、これらの手段を備えるものに限るものではない。
【0077】
なお、この発明において、原版には、例えば、実施の形態のマスク22が該当し、試料にはウェーハが該当する。また、原版載置台には、例えば、実施の形態のマスクステージ14が該当し、試料載置台には、ウェーハステージが該当する。また、この発明において、放射源には、例えば、実施の形態の電子銃2が該当し、投影光学系には、結像光学系16が該当する。
【0078】
【発明の効果】
以上説明したように、この発明によれば、原版載置台の加速中あるいは減速中であっても、荷電粒子ビームまたは電磁波を照射して、パターンの転写を行うことができる。従って、原版載置台の加速あるいは減速のための待ち時間を省くことができ、露光処理時間を短くし、スループットの向上を図ることができる。
【0079】
また、この発明によれば、加速度が小さい場合でもある程度のスループットを出すことができるため、加速度を抑えて露光を行うことができる。従って、急激な加速に伴う原版の歪みや装置の振動などを抑えることができ、より正確なパターンの転写を行うことができる。また、露光装置に振動防止の対策の必要がないため、露光装置を簡素化し、低価格に製造することができる。
【0080】
また、この発明によれば、加速中あるいは減速中も荷電粒子ビームまたは電磁波を原版に照射する。従って、従来のように、加速、減速中の荷電粒子ビーム等を照射しない間の走査距離の分、マスクステージを大きくする必要がない。従って、露光装置を小さくすることができ、露光装置を低価格に製造することができる。
【0081】
また、この発明において、荷電粒子または電磁波を試料上に結像するための光学系を有するものにおいては、原版載置台と試料載置台との距離を大きく取ることができ、装置の設計を容易にすることができる。
【0082】
また、この発明において、光学系を、縮小光学系とするものについては、マスク上のパターンを縮小投影することができる。従って、マスクの最小パターン寸法を大きくすることができ、マスクの製造を容易にすることができる。
【0083】
また、この発明において、荷電粒子ビームとして、電子ビームを用いるものについては、波長の極めて短い電子ビームを用いることにより、回折効果によるマスクパターン像の解像性の劣化を抑えることができる。従って、高解像性能を達成することができ、微細パターンの正確な転写を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の実施の形態における、EPL露光装置を示す概略図である。
【図2】 この発明の実施の形態における、EPL露光装置において用いるマスク22を示す上面概略図である。
【図3】 この発明の実施の形態における露光方法について説明するためのフロー図である。
【図4】 この発明の実施の形態において、露光を行う場合の、マスクステージの加速度と、経過時間との関係を示すグラフである。
【図5】 この発明の実施の形態におけるEPL露光装置を用いてパターンの転写を行った場合と、従来の露光装置を用いてパターン転写を行った場合とにおいて、加速度と、スループットとの関係を示すグラフである。
【図6】 従来のEPL露光装置において、電子光学系の中心軸が、マスク上を移動する相対的な位置を示すための概略図である。
【図7】 従来のEPL露光装置において、マスクの走査速度の加速度と、経過時間との関係を示すグラフである。
【図8】 従来のEPL露光装置において、ウェーハ1枚あたりの露光時間と、加速度との関係を示すグラフである。
【図9】 従来のEPL露光装置において、加速度と、スループットとの関係を示すグラフである。
【符号の説明】
100 電子ビーム露光装置
2 電子銃
4 電子ビーム
6 陽極
8 成型絞り
10 照明光学系
12 照明偏向器
14 マスクステージ
16 結像光学系
18 対物偏向器
20 ウェーハステージ
22 マスク
24〜30 ストライプ
32 メジャーストラット
34 ウェーハ
36 転写パターン
38 電子ビームの偏向方向
40 マスクステージの走査方向
42〜48、50〜56 電子光学系の中心軸の走査方向
42a、44a、46a、48a ストライプの照射開始位置
42b、44b、46b、48b 加速終了位置
42c、44c、46c、48c 減速開始位置
42d、44d、46d、48d ストライプの照射終了位置
60 ウェーハステージの走査方向
62 電子ビームの走査方向
70 マスクステージ稼働手段
72 ウェーハステージ稼働手段
74 位置制御手段

Claims (7)

  1. パターンの形成された原版と前記パターンを転写する基板とを同期して走査させ、荷電粒子ビームまたは電磁波を、前記原版に照射することにより、試料にパターンを転写する露光方法において、
    前記原版及び前記試料を加速して走査を開始する走査開始工程と、
    前記原版及び前記試料を加速した状態で、前記原版の照射開始位置に到達した時に、前記荷電粒子ビームまたは電磁波の照射を開始する照射開始工程と、
    前記荷電粒子ビームまたは電磁波を照射している状態で、前記原版の所定の位置において、前記原版及び前記試料の減速を開始する減速開始工程と、
    前記原版の照射終了位置に到達した時に、前記荷電粒子ビームまたは電磁波の照射を終了する照射終了工程と、
    前記原版の走査速度が0になるまで、前記原版及び前記試料の減速を続ける減速工程と、
    を備え
    前記荷電粒子ビームまたは前記電磁波の照射中に、前記原版及び試料の位置を検出して、前記原版及び試料の目標位置の誤差を算出し、その結果に応じて、前記原版及び前記試料の走査速度を調節することを特徴とする露光方法。
  2. 前記照射開始工程の後、前記減速開始工程前に、前記荷電粒子ビームまたは電磁波の照射している状態で、前記加速を終了して、前記原版及び前記試料を等速に走査する等速工程を備えることを特徴とする請求項1に記載の露光方法。
  3. 前記荷電粒子ビームとして、電子ビームを用いることを特徴とする請求項1または2に記載の露光方法。
  4. 荷電粒子ビームまたは電磁波を放射することができる放射源と、
    パターンの形成された原版を載置して、走査することができる原版載置台と、
    試料を載置することができる試料載置台と、
    前記原版載置台及び前記試料載置台の位置を検出し、この検出結果から、前記原版及び前記試料の目標位置とのズレを算出し、この算出結果に応じて、前記原版載置台及び/または前記試料載置台の走査速度を制御する制御手段と、
    を備え、
    前記放射源は、前記原版載置台及び/または前記試料載置台が走査速度の加速及び/または減速中に、
    前記原版に対して荷電粒子ビームまたは電磁波を照射し、
    前記制御手段は、
    前記原版の照射開始位置に到達して前記放射源による照射が開始される前に、前記原版載置台及び前記試料載置台を加速して走査を開始し、
    前記荷電粒子ビームまたは電磁波を照射している状態で、前記原版の所定の位置において、前記原版載置台及び前記試料載置台の減速を開始し、
    前記原版載置台の走査速度が 0 になるまで、前記原版及び前記試料載置台の減速を続けるよう、前記原版載置台及び前記試料載置台の速度を制御することを特徴とする露光装置。
  5. 前記荷電粒子ビームまたは電磁波を、前記試料上に結像するための光学系を備えることを特徴とする請求項に記載の露光装置。
  6. 前記光学系は、投影光学系であることを特徴とする請求項に記載の露光装置。
  7. 前記荷電粒子ビームは、電子ビームであることを特徴とする請求項からのいずれかに記載の露光装置。
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