JP3636741B2 - 動脈内膜肥厚の予防および治療剤 - Google Patents

動脈内膜肥厚の予防および治療剤 Download PDF

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は動脈内膜肥厚の予防および治療剤、さらに詳しくは3−フェニルチオメチルスチレン誘導体またはその造塩可能なものの塩、とくにα−シアノ−4−ヒドロキシ桂皮酸アミド誘導体またはその造塩可能なものの塩、とりわけα−シアノ−3−エトキシ−4−ヒドロキシ−5−フェニルチオメチル桂皮酸アミドを有効成分とする動脈内膜肥厚の予防および治療剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、生活習慣の欧米化に伴い、我が国でも、虚血性心疾患(狭心症、心筋梗塞)が急速に増加しつつある。虚血性心疾患は、主として、心表面を走行する太い冠動脈の動脈硬化症を基盤に、これに冠動脈血栓や冠攣縮が加わり惹起される。経皮的冠動脈形成術(percutaneous transuluminal coronary angioplasty 、以下PTCAと略す)は、この冠動脈硬化病変を軽減させる確実な方法として、その臨床的有用性は確立されている。しかしながら、PTCAにより冠狭窄病変の開大に成功した例の約30〜40%に再狭窄が生じる。この再狭窄は、再びPTCAを要することから、その予防法および治療法の確立は社会的にも世界的な緊急課題である。
【0003】
これまでにも、世界中で、実にさまざまな試みが行われてきた。PTCA後の再狭窄における血小板活性化の役割を重視する立場から抗血小板薬(アスピリン、ジピリミダモール、ヘパリン、抗トロンビン製剤、魚油など)、血管平滑筋の増殖を重視する立場から増殖抑制薬(低分子ヘパリン、アンギオテンシン変換酵素阻害薬など)、炎症性変化を重視する立場から抗炎症薬(ステロイドなど)、カルシウムイオンの役割を重視する立場からカルシウム拮抗薬、脂質の役割を重視する立場から脂質改善薬(ロバスタチン、魚油など)などが再狭窄の予防、治療薬として検討された。しかし、いずれの試みも、臨床において、充分再狭窄を予防、治療できなかったり、毒性の問題が明らかとなり、臨床応用にいたっていないのが現状である。
【0004】
本発明者らは、抗アレルギー作用、抗腫瘍作用およびチロシンキナーゼ阻害作用を有することで知られる前記3−フェニルチオメチルスチレン誘導体が、驚くべきことに動脈内膜肥厚の予防および治療効果を有し、冠動脈硬化、とくにPTCA後における冠動脈再狭窄の予防および治療に有用であることを見いだした。なお、本発明で用いる前記3−フェニルチオメチルスチレン誘導体は、それぞれ特開昭62-111962 およびケミカル・ファマシュティカル・ブルテン(Chem.Pharm. Bull. )36, 974-981, 1988 に開示されており、その詳細な製造法のほか、これらの化合物が抗アレルギー剤、抗腫瘍剤およびチロシンキナーゼ阻害剤として有用であることが記載されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、安全かつ有効な、新規な動脈内膜肥厚予防および治療剤を提供しようとするものである。さらに詳しくは、とくにPTCA後における冠動脈再狭窄の予防および治療に有用な、動脈内膜肥厚予防および治療剤を提供しようとするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、従来より冠動脈硬化の発症、ならびに予防および治療法の開発について研究を重ねてきたが、その研究の課程において、前記3−フェニルチオメチルスチレン誘導体が、ブタを用いたインターロイキン1(IL−1)誘導による冠動脈の肥厚を顕著に抑制することを見いだした。その結果に基づき、さらに検討を重ね本発明を完成するにいたった。
【0007】
すなわち本発明は、一般式(I):
【0008】
【化5】
Figure 0003636741
【0009】
{式中、Xは水素原子、R5 O(R5 はC1 〜C3 のアルキル基を示す)で表されるアルコキシ基、C1 〜C5 のアルキル基、ニトロ基、アミノ基、水酸基、ハロゲン原子またはCOOR6 (R6 はC1 〜C3 のアルキル基を示す)で表されるアルコキシカルボニル基を表し、R1 は水素原子、C1 〜C3 のアルキル基またはR7 CO(R7 はフェニル基またはC1 〜C3 のアルキル基を示す)で表されるアシル基を表し、R2 は水素原子またはC1 〜C5 のアルキル基を表し、R3 はCOOR8 (R8 は水素原子またはC1 〜C4 のアルキル基を示す)で表される基またはアミドを表し、R4 はシアノ基またはR9 SO2 (R9 はC1 〜C4 のアルキル基を示す)で示されるアルキルスルフォニル基を表し、あるいはR3 とR4 は互いに結合して
【0010】
【化6】
Figure 0003636741
【0011】
(R10は水素原子またはC1 〜C4 のアルキル基、Yは酸素原子またはNHを示す)または
【0012】
【化7】
Figure 0003636741
【0013】
を形成し、nはXがハロゲンのとき1〜5の整数を表し、Xがその他の基のときは1を表し、mは0〜3の整数を表す}で示される3−フェニルチオメチルスチレン誘導体またはその造塩可能なものの塩、好ましくは、一般式(II):
【0014】
【化8】
Figure 0003636741
【0015】
(式中、X、R2 、nおよびmは前記と同じ)で示されるα−シアノ−4−ヒドロキシ桂皮酸アミド誘導体またはその造塩可能なものの塩、さらに好ましくは、α−シアノ−3−エトキシ−4−ヒドロキシ−5−フェニルチオメチル桂皮酸アミド(以下、ST638と略称する)の少なくとも1種類を有効成分として含有する動脈内膜肥厚の予防および治療剤に関する。
【0016】
【実施例】
本発明は、一般式(I):
【0017】
【化9】
Figure 0003636741
【0018】
{式中、Xは水素原子、R5 O(R5 はC1 〜C3 のアルキル基を示す)で表されるアルコキシ基、C1 〜C5 のアルキル基、ニトロ基、アミノ基、水酸基、ハロゲン原子またはCOOR6 (R6 はC1 〜C3 のアルキル基を示す)で表されるアルコキシカルボニル基を表し、R1 は水素原子、C1 〜C3 のアルキル基またはR7 CO(R7 はフェニル基またはC1 〜C3 のアルキル基を示す)で表されるアシル基を表し、R2 は水素原子またはC1 〜C5 のアルキル基を表し、R3 はCOOR8 (R8 は水素原子またはC1 〜C4 のアルキル基を示す)で表される基またはアミドを表し、R4 はシアノ基またはR9 SO2 (R9 はC1 〜C4 のアルキル基を示す)で示されるアルキルスルフォニル基を表し、あるいはR3 とR4 は互いに結合して
【0019】
【化10】
Figure 0003636741
【0020】
(R10は水素原子またはC1 〜C4 のアルキル基、Yは酸素原子またはNHを示す)または
【0021】
【化11】
Figure 0003636741
【0022】
を形成し、nはXがハロゲンのとき1〜5の整数を表し、Xがその他の基のときは1を表し、mは0〜3の整数を表す}で示される3−フェニルチオメチルスチレン誘導体またはその造塩可能なものの塩、好ましくは、一般式(II):
【0023】
【化12】
Figure 0003636741
【0024】
(式中、X、R2 、nおよびmは前記と同じ)で示されるα−シアノ−4−ヒドロキシ桂皮酸アミド誘導体またはその造塩可能なものの塩、さらに好ましくは、α−シアノ−3−エトキシ−4−ヒドロキシ−5−フェニルチオメチル桂皮酸アミドの少なくとも1種類を有効成分として含有する動脈内膜肥厚の予防および治療剤を提供する。
【0025】
一般式(I)、(II)で示される化合物としては、それぞれ特開昭62-111962 およびケミカル・ファマシュテイカル・ブルテン(Chem.Pharm. Bull. )36, 974-981, 1988 に記載されている表1に示される化合物群があげられる。
【0026】
【表1】
Figure 0003636741
【0027】
【表2】
Figure 0003636741
【0028】
【表3】
Figure 0003636741
【0029】
【表4】
Figure 0003636741
【0030】
本発明の一般式(I)で表わされる化合物を合成する方法には次の様なものがあげられる。たとえば、
(1) 一般式(I)で表わされる化合物のうち、一般式(III ):
【0031】
【化13】
Figure 0003636741
【0032】
{式中X、R1 、R2 、n、mは前記に同じ、R11はCOOR8 (R8 は前記に同じ)で表わされる基またはアミドを表わし、R12はシアノ基またはR9 SO2 (R9 は前記に同じ)で示されるアルキルスルホニル基を表わし、またR11とR12は互いに結合して
【0033】
【化14】
Figure 0003636741
【0034】
を示す}
で表わされる化合物は、一般式(IV):
【0035】
【化15】
Figure 0003636741
【0036】
(X、n、m、R1 、R2 は前記に同じ)で表わされるベンズアルデヒドと一般式(V):
11 − CH2 −R12 (V)
(R11およびR12は前記に同じ)で表わされる化合物とを塩基触媒を用いて反応させることにより合成される。
【0037】
この反応は、いわゆるクネーフェナーゲル反応として知られている反応を用いるものであり、触媒として用いることができる塩基としては、アンモニア、一級または二級アミンまたはそれらの塩がある。用いることができる塩基およびその塩の具体例をあげれば、ピペリジン、ピロリジン、酢酸アンモニウム、酢酸ピペリジニウムなどがある。Xがアミノ基である一般式(I)の化合物については、Xがニトロ基であるアルデヒドを反応させたのち、通常の方法により還元してうることもできる。
【0038】
(2) 一般式(I):
【0039】
【化16】
Figure 0003636741
【0040】
(X、R1 、R2 、R3 、R4 、n、mは前記に同じ)で表わされる化合物は、エイチ・チンマー(H. Zimmer )らの方法(ジャーナル・オブ・オルガニック・ケミストリー(J. Org. Chem.) 、24、23(1959);ジャーナル・オブ・ヘテロサイクリック・ケミストリー(J. Het. Chem.) 、、171 (1965))などに従って、一般式(VI):
【0041】
【化17】
Figure 0003636741
【0042】
{ここでR2 、mは前記に同じ、X′はR14O(R14はC1 〜C3 のアルキル基、ベンジル基、R15CO(R15は水素原子またはC1 〜C3 のアルキル基を示す)で表わされるアシル基、またはトリアルキルシリル基、メトキシメチル基、メトキシエトキシメチル基、メチルチオメチル基を表わす)で表わされる基、C1 〜C5 のアルキル基、ニトロ基、アミノ基、ハロゲン原子またはCOOR6 (R6 は前記に同じ)で表わされるアルコキシカルボニル基を表わし、n′はX′がハロゲンのとき1〜5の整数を表わし、X′がその他の基のときには1を表わし、R13はC1 〜C5 のアルキル基、ベンジル基、R7 CO(R7 は前記に同じ)で表わされるアシル基、トリアルキルシリル基、メトキシメチル基、メトキシエトキシメチル基、メチルチオメチル基を表わす}で表わされるベンズアルデヒド類と、式(VII ):
16 − CH2 − R17 (VII )
{ここでR16はCOOR8 (R8 は前記に同じ)で表わされる基またはアミドを表わし、R17はシアノ基またはR9 SO2 (R9 は前記に同じ)で示されるアルキルスルホニル基を表わし、またR16とR17とは互いに結合して
【0043】
【化18】
Figure 0003636741
【0044】
(R10は水素原子またはC1 〜C4 のアルキル基を示す)あるいは
【0045】
【化19】
Figure 0003636741
【0046】
(R10は前記に同じ、R18は水素原子または低級アルキル基を示す)あるいは
【0047】
【化20】
Figure 0003636741
【0048】
を示す}で表わされる化合物とを無触媒下に、あるいは酸または塩基を触媒として縮合することにより合成することができる。
【0049】
触媒として用いる酸としては硫酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸などのプロトン酸、三フッ化ホウ素などのルイス酸をあげることができる。触媒として用いることができる塩基としては、モノエタノールアミン、モルホリン、ピリジン、1,3−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデカ−7−エンなどの有機塩基;酢酸ナトリウム、酢酸カリウムなどの有機酸アルカリ金属塩;水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物;リチウムジイソプロピルアミドなどのアルカリ金属アミド;ナトリウムメチラート、ナトリウムエチラートなどのアルカリ金属アルコラート;水素化ナトリウム、水素化カリウムなどのアルカリ金属水素化物があげられる。
【0050】
目的の一般式(I)で表わされる化合物のうち、Xが水酸基で表わされる化合物を合成するばあい、一般式(VI)で表わされるアルデヒドのうちX′がR14O(R14は前記に同じ)で表わされるアルデヒドを用い、縮合の後、R14を水素原子に置き換えてえることができる。無触媒下、あるいは使用した触媒によりR14のアルキル基、ベンジル基、アシル基、トリアルキルシリル基、メトキシメチル基、メトキシエトキシメチル基、メチルチオメチル基が反応生成物内に残っているばあいには、これらR14を脱離することにより目的物をうることができる。同様に目的の一般式(I)で表わされる化合物のうち、R1 が水素原子で表わされる化合物を合成するばあい、縮合の後、R13を水素原子に置き換えてうることができる。無触媒下、あるいは使用した触媒によりR13のアルキル基、ベンジル基、アシル基、トリアルキルシリル基、メトキシメチル基、メトキシエトキシメチル基、メチルチオメチル基が反応生成物内に残っているばあいには、これらR13を脱離することにより目的物をうることができる。
【0051】
13およびR14の脱離法としては、R13あるいはR14がアルキル基、メトキシメチル基、メトキシエトキシメチル基、メチルチオメチル基であるばあいには、塩化アルミニウムなどのハロゲン化アルミニウム、三臭化ホウ素、臭化水素などのハロゲン化水素、トリフロロ酢酸などの有機酸などの酸を用いる開裂法あるいはその他のエーテル開裂法がある。またR13、R14がベンジル基であるばあいには、前述のエーテル開裂法に加えてパラジウム炭素などの貴金属触媒を用いる接触還元法などにより脱離することができる。R13、R14がアシル基であるばあいには、水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属水酸化物あるいは水酸化バリウムなどのアルカリ土類金属水酸化物などの塩基を用いて加水分解することにより脱離することができる。R13、R14がトリアルキルシリル基であるばあいには、水、メタノール、酸またはフッ素イオンなどにより脱離することができる。またN−アシルラクタムを使用して反応させたばあい、そのアシル基が生成物内に残っているときは、水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属水酸化物などの塩基を用いて加水分解することにより脱離させ、目的物をうることができる。また、一般式(I)の化合物のうち、Xがアミノ基の化合物は、一般式(VI)のX′がニトロ基のアルデヒドを反応させた後、通常の方法により還元してえることもできる。
【0052】
(3) 前述の一般式(I)で表わされる化合物は、オー・イスター(O. Ister)らの方法{ヘルベティカ・キミカ・アクタ(Helv. Chim. Acta)、40、1242(1957)}、ジー・エー・ホウィ(G. A. Howie )らの方法(ジャーナル・オブ・メディシナル・ケミストリー(J. Med. Chem.) 、17、840 (1974))、エイチ・ワム・ホッフ(H. Wam Hoff )らの方法{シンセシス(Synthesis )、 331 (1976)}などに従って、一般式(IV):
【0053】
【化21】
Figure 0003636741
【0054】
(X、n、m、R1 、R2 は前記に同じ)で表わされるベンズアルデヒドと一般式(VIII):
【0055】
【化22】
Figure 0003636741
【0056】
{ここでArはアリール基、R19はCOOR8 (R8 は前記に同じ)で表わされる基またはアミドを表わし、R20はシアノ基またはR9 SO2 (R9 は前記に同じ)で示されるアルキルスルホニル基を表わし、またはR19とR20とは互いに結合して
【0057】
【化23】
Figure 0003636741
【0058】
(R10は前記に同じ)あるいは
【0059】
【化24】
Figure 0003636741
【0060】
(R10は前記に同じ、R21は水素原子またはR22CO(R22は水素原子、C1 〜C3 のアルキル基またはアリール基を示す)で示されるアシル基を表わす)
あるいは
【0061】
【化25】
Figure 0003636741
【0062】
(R23は水素原子またはR24CO(R24は水素原子、C1 〜C3 のアルキル基またはアリール基を示す)で示されるアシル基を表わす)を示す}で表わされるイリドとを反応させ、R21およびR23がアシル基のばあい、水酸化カリウム、水酸化ナトリウムなどの塩基を用いて加水分解して脱離することにより合成することができる。
【0063】
本合成法は、いわゆるウィッティヒ反応を用いるものであるが、上記一般式(IV)と反応させるイリドとしては、上記の一般式(VIII)で表わされる化合物以外にトリアルキルホスフィン、トリアリールアルシンから誘導させるイリドも同様用いることができる。また、一般式(I)の化合物のうち、Xがアミノ基の化合物については、一般式(IV)のXがニトロ基であるアルデヒドと反応させた後、通常の方法により還元してえることができる。
【0064】
(4) 一般式(I)で表わされる化合物のうち、一般式(IX)または(X)
【0065】
【化26】
Figure 0003636741
【0066】
(X、R1 、R2 、n、m、R10およびYは前記に同じ)で表わされる化合物は、前述の一般式(IV)で表わされるベンズアルデヒド類と、一般式(XI)または(XII )
【0067】
【化27】
Figure 0003636741
【0068】
(R10およびYは前記に同じ)
で表わされる化合物にマグネシウム・メチル・カーボネートを作用させたものとを反応させて合成することができる。ここで用いるマグネシウム・メチル・カーボネートはH. Finkbeiner らの方法(ジャーナル・オブ・アメリカン・ケミカル・ソサイエティー(J. Am. Chem Soc.)、85、616 (1963))に従って合成することができる。また、一般式(IX)、(X)で表わされる化合物のうち、Xがアミノ基の化合物については、一般式(IV)で表わされるXがニトロ基のアルデヒドを反応させた後、通常の方法で還元することによりえることもできる。
【0069】
本発明に使用する前記有効成分は、治療を必要とする患者(動物またはヒト)に対し、毒性を示さない用量であれば任意の用量を投与しうるが、1〜1000mg/kg、好ましくは10〜500 mg/kgの用量範囲で、一般に数回に分けて、すなわち一日当り20〜4000mg/kgの全日用量で投与することができる。用量は、病気の重さ、患者の体重および当業者が認める他の因子によって変化させることができる。
【0070】
本発明の動脈内膜肥厚の予防および治療剤は、固体製剤または液体製剤として調製され、経口または非経口で投与される。経口投与用固体製剤は、粉末剤、顆粒剤、錠剤、丸剤、カプセル剤など、非経口または経口投与用液体製剤は、エリキシル剤、懸濁剤、乳剤、シロップ剤、アルコール溶液剤、油性溶液剤などの形態で使用することができる。
【0071】
医薬用固体担体としては、乳糖、澱粉、シュークロース、マンニット、ソルビット、デキストリン、セルロース、炭酸カルシウムなどがあり、必要に応じて適当な滑沢剤、結合剤などの補助剤を添加することができる。医薬用液体担体としては、水、エタノール、グリセリン、プロピレングリコール、植物油、油状エステルなどの常用溶媒があり、必要に応じて適当な湿潤剤、懸濁剤、乳化剤、甘味料、香料、保存剤などの補助剤を添加することができる。
【0072】
本発明の動脈内膜肥厚予防および治療剤はIL−1誘導冠動脈内膜肥厚モデルのブタにおいて、高い動脈内膜肥厚抑制を示す一方、低毒性であることが判明しており、動脈内膜肥厚の予防および治療剤として極めて有用であることがわかった。
【0073】
また、本発明の動脈内膜肥厚の予防および治療剤は既存の動脈内膜肥厚の予防および治療剤などと併用して用いることもできる。
【0074】
以下に具体的な実施例を示し、本発明の動脈内膜肥厚予防および治療剤の製造および薬理試験に関して本発明をさらに具体的に説明するが、本説明は以下の実施例にのみ限定されるものではない。
【0075】
実施例1 化合物1の合成
3−エトキシ−4−ヒドロキシ−5−フェニルチオメチルベンズアルデヒド 2.90gとα−シアノアセトアミド840 mgをベンゼン60mlに溶解し、ピペリジン 0.3 mlと酢酸1.9 mlを加え、ディーン スターク装置を用いて、生成する水を除去しながら5時間加熱還流した。冷却後、析出した結晶を濾別し、ベンゼンで洗浄し、化合物1を2.98gえた。
【0076】
実施例2 化合物6の合成
5−(フェニルプロピルチオメチル)エチルバニリン(1.37g、4.15mmol)、α−シアノ桂皮酸アミド(0.35g、4.16mmol)および触媒量のピペリジン(2〜3滴)をベンゼン(80ml)−酢酸(1ml)の混合溶媒中に加え、ディーン スターク型水分離装置を使用して4時間加熱還流した。冷後、反応溶液にクロロホルム(100 ml)を加え希釈し、水(100 ml)で有機層を水洗した。有機層を分離後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧下触媒を留去した。残渣をベンゼンから再結晶すると淡黄色の針状晶として化合物6(1.38g、83.9%)がえられた。m.p.96.5〜99℃。
【0077】
実施例3 化合物13の合成
3−エトキシ−4−メトキシ−5−(フェニルチオメチル)ベンズアルデヒド(0.65g、2.15mmol)、α−シアノ桂皮酸アミド(0.18g、2.15mmol)および触媒量のピペリジン(2〜3滴)をベンゼン(70ml)−酢酸(0.5 ml)の混合溶媒中に加え、ディーン スターク型水分離装置を使用して4時間加熱還流した。冷後、反応溶液にクロロホルム(100 ml)を加え希釈し、水(50ml)で有機層を水洗した。有機層を分離後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧下溶媒を留去した。残渣をベンゼンから再結晶すると無色の針状晶として化合物13(0.49g、61.9%)がえられた。m.p.143 〜144 ℃。
【0078】
実施例4 化合物14の合成
5−(p−クロロフェニルチオメチル)エチルバニリン(0.97g、3mmol)、α−シアノ桂皮酸アミド(0.25g、3mmol)および触媒量のピペリジン(2〜3滴)をベンゼン(80ml)−酢酸(1ml)の混合溶媒中に加え、ディーン スターク型水分離装置を使用して4時間加熱還流した。冷後、反応溶液にクロロホルム(100 ml)を加え希釈し、水(100 ml)で有機層を水洗した。有機層を分離後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧下溶媒を留去した。残渣をベンゼン−アセトン混合溶媒から再結晶すると淡黄色の針状晶として化合物14(0.99g、84.9%)がえられた。m.p.166 〜167 ℃。
【0079】
実施例5 化合物16の合成
化合物1(0.71g、2mmol)および塩化ベンゾイル(0.3 g、2.15mmol)をピリジン(10ml)中に加え、室温下1時間撹拌した。反応溶液を氷水中にあけ、析出結晶を濾取し、エタノールから再結晶すると無色の板状晶として化合物16( 0.86g、93.8%)がえられた。m.p.159 〜161 ℃。
【0080】
実施例6 化合物17の合成
化合物1(0.71g、2mmol)および無水酢酸(0.22g、2.16mmol)をピリジン(10ml)中に加え、室温下2時間撹拌した。反応溶液を氷水中にあけ、析出結晶を濾取し、エタノール−アセトン混合溶媒から再結晶すると無色の針状晶として化合物17(0.7 g、88.3%)がえられた。m.p.178 〜179 ℃。
【0081】
実施例7 化合物19の合成
5−(フェニルチオメチル)プロトカテキュアルデヒド(0.39g、1.5 mmol)、α−シアノ桂皮酸アミド(0.18g、1.5 mmol)および触媒量のピペリジン(1〜2滴)をベンゼン(50ml)−酢酸(0.5 ml)の混合溶媒中に加え、ディーン スターク型水分離装置を使用して4時間加熱還流した。冷後、析出結晶を濾取し、ベンゼン−アセトン混合溶媒からから再結晶すると黄色の針状晶として化合物19(0.42g、85.9%)がえられた。m.p.185 ℃(分解)。
【0082】
実施例8 化合物20の合成
5−(p−ヒドロキシフェニルチオメチル)エチルバニリン(0.48g、1.6 mmol)、α−シアノ桂皮酸アミド(0.14g、1.7 mmol)および触媒量のピペリジン(2〜3滴)をベンゼン(50ml)−酢酸(0.5 ml)の混合溶媒中に加え、ディーン スターク型水分離装置を使用して6時間加熱還流した。冷後、減圧濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマト(溶出溶媒;クロロホルム:メタノール=10:1)により分離精製した。目的化合物を含む溶出液を減圧濃縮し、残渣をベンゼン−アセトン混合溶媒から再結晶すると黄色の針状晶として化合物20(0.3 g、51.4%)がえられた。m.p.170 〜171 ℃。
【0083】
実施例9 化合物22の合成
3−エトキシ−4−ヒドロキシ−5−フェニルチオメチルベンズアルデヒド 4.35gとメタンスルホニル酢酸エチルエステル2.49gをベンゼン60mlに溶解し、ピペリジン0.3 ml、酢酸0.9 mlを加え、ディーン スターク装置を用い、生成する水を除去しながら8時間加熱還流した。冷却後、クロロホルムを加え水洗したのち有機層の溶媒を留去し、残渣をシリカゲルを担体とするカラムクロマトグラフィーにかけ、酢酸エチルとn−ヘキサンの混合溶媒(2:5、v/v)で溶出し、化合物22を1.40gえた。
【0084】
実施例10 化合物24の合成
3−エトキシ−4−ヒドロキシ−5−フェニルチオメチルベンズアルデヒド 5.76gとα−ホスホラニリデン−γ−ブチロラクトン7.96gをアセトニトリル30mlに入れ、8時間加熱還流した。溶媒を除去した後、エタノールから晶析した。えられた結晶をエタノールから再結晶することにより化合物24を4.0 gえた。
【0085】
実施例11 化合物25の合成
5−(3,4−ジクロロフェニルチオメチル)エチルバニリン(1.79g、5 mmol)および3−(トリフェニルホスホラニリデン)−γ−ブチロラクトン( 2.08g、6mmol)をアセトニトリル(70ml)中に加え、80℃で一晩加熱撹拌した。冷後、減圧下溶媒を留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマト(溶出溶媒;クロロホルム)により分離精製した。目的化合物を含む溶出液を減圧濃縮し、残渣をエタノールから再結晶すると淡黄色の針状晶として化合物25(1.47g、69.0%)がえられた。m.p.123.5 〜124.5 ℃。
【0086】
実施例12 化合物27の合成
水素化ナトリウム1.20gをベンゼン20mlに懸濁し、窒素雰囲気下で、4−ターシャリーブチルジメチルシリルオキシ−3−エトキシ−5−フェニルチオメチルベンズアルデヒド4.04gとN−アセチルピロリドン1.27gをベンゼン30mlに溶解した溶液を5℃で加えた。60℃に加熱し、2時間撹拌した。冷却後、メタノールを加えて過剰量の水素化ナトリウムを分解し、さらに水を加えた後、6N硫酸で中和した。クロロホルム−エタノール混合溶媒で抽出し、抽出液の溶媒を留去後、残渣をシリカゲルを担体とするカラムクロマトグラフィーにかけ、酢酸エチル−n−ヘキサン(1:1、v/v)および酢酸エチルにてグラジエント溶出した。目的物を含む画分を濃縮し、白色結晶をえた。
【0087】
えられた白色結晶をテトラヒドロフラン30mlに溶解し、フッ化テトラn−ブチルアンモニウムのテトラヒドロフラン1M溶液5mlを加え、室温で1時間撹拌した。クロロホルムを加え水洗後、有機層の溶媒を留去し、残渣を酢酸エチル−クロロホルム混合溶媒から晶析し、化合物27を980 mgえた。
【0088】
実施例13 化合物31の合成
3−エトキシ−4−ヒドロキシ−5−フェニルチオメチルベンズアルデヒド 1.74gと1−フェニル−3,5−ピラゾリジンジオン1.06gをエタノール60mlに溶解し、ピペリジン5滴を加え、3時間加熱還流した。冷却後、クロロホルムを加え水洗した後、有機層の溶媒を留去し、残渣をエタノールより晶析し、化合物31を1.8 gえた。
【0089】
実施例14 化合物33の合成
5−(p−ブロモフェニルチオメチル)エチルバニリン(0.74g、2mmol)、1−フェニル−3,5−ピラゾリジンジオン(0.35g、2mmol)および触媒量のピリジン(2〜3滴)をエタノール(50ml)中に加え、ディーン スターク型水分離装置を使用して6時間加熱還流した。冷後、析出結晶を濾取し、エタノールから再結晶すると橙色の針状晶として化合物33(0.88g、83.2%)をえた。m.p.187 〜189 ℃。
【0090】
実施例15 化合物35の合成
3−ブトキシ−4−ヒドロキシ−5−(フェニルチオメチル)ベンズアルデヒド(0.63g、2mmol)、1−フェニル−3,5−ピラゾリジンジオン(0.35g、2mmol)および触媒量のピリジン(2〜3滴)をエタノール(50ml)中に加え、ディーン スターク型水分離装置を使用して6時間加熱還流した。冷後、析出結晶を濾取し、エタノールから再結晶すると橙色の針状晶として化合物35(0.66g、69.0%)がえられた。m.p.141 〜143 ℃。
【0091】
実施例16
実施例1により調製した化合物1(ST638)200 gを乳糖89gおよびステアリン酸マグネシウム1gと混合し、この混合物を単発式打錠機にて打錠し、直径20mm、重量2.3 gのスラッグ錠を作った。このスラッグ錠をオッシレーターで粉砕し、整粒後篩別し、粒径20〜50メッシュの細粒剤をえた。
【0092】
実施例17
実施例1により調製した化合物1(ST638)200 gを微結晶セルロース20gおよびステアリン酸マグネシウム5gと混合し、この混合物を単発式打錠機にて打錠し、直径7mm、重量225 mgの錠剤をえた。
【0093】
実施例18
実施例1により調製した化合物1(ST638)100 gを乳鉢で粉砕後、えられた微粉末を500 mgずつ硬カプセルに充填し、カプセル剤を調製した。
【0094】
実施例19
実施例1により調製した化合物1(ST638)100 gおよび乳糖8.6 kgを混合し、品川式混合機(品川工業所製)に入れ、これに白糖1.2 kgを水に溶かして加え、約15分間練合した。練合物を45℃で約1時間乾燥後粉砕した。ついで、30号の局方篩で篩にかけ、篩を通過した物を、45℃にて24時間乾燥し、二酸化ケイ素を加えて混合することにより散剤をえた。
【0095】
実施例20
実施例1により調製した化合物1(ST638)10gを注射用蒸留水100 mlに懸濁後、撹拌しながら0.1 N苛性ソーダ10mlを添加しST638を溶解し、ついでこの溶液を滴々と0.1 規定塩酸溶液10ml中に滴下することにより微細結晶を生成させ、その後濾別洗浄することにより5gの結晶をえた。ついで結晶をオリーブ油50gと混合後、ホモミキサーを用いて混合撹拌することにより懸濁液を生成し、硬カプセルに1mlずつ分注することにより懸濁剤を調製した。
【0096】
試験例1 動脈内膜肥厚に対する抑制効果
試験方法
生後2〜4カ月の家畜ブタ(体重25kg〜30kg)にケタミン塩酸塩(ketamine hydrochloride)を12.5mg/kgの投与量で筋注後、ペントバルビタールナトリウム塩(Sodium pentobarubital )を25mg/kgの投与量で静注することにより麻酔を施したのち、人工呼吸下において無菌的に左側胸を開胸した。ついで、心外膜を切開し、左冠動脈(前下降枝、回旋枝)の近位部2〜3カ所を血管を痛めないように細心の注意を払いながら幅約6〜7mmにわたって剥離し、その1カ所にIL−1β2.5 μgを結合させたマイクロビーズ(ファルマシア社製CNBr−活性化セファローズ(sepharose) 4B(直径45〜165 μm)1mlにIL−1β50μgを結合させることによって調製した)懸濁液0.05mlをしみ込ませた綿つきメッシュ(幅約6〜7mm)を全周性に巻き付けた(A部位)。また、別の部位にIL−1β2.5 μg結合マイクロビーズに加えて、ST638 2.5 mgまたは12.5mgをブタ血清中に懸濁状態で添加した綿つきメッシュを同様に巻き付けた(それぞれB部位、C部位)。なお、何も処理しなかった部位を無処置部位と称する。この手技の後、心外膜を閉じて閉胸を行った。術後、感染を防御する目的で、3日間にわたり抗生物質(セファゾリン)2gを1日に2回筋注投与した。
【0097】
上記手術終了後、2週間後に、前記と同様にケタミン塩酸塩12.5mg/kgの筋注とペントバルビタールナトリウム塩25mg/kgの静注により麻酔を施し、頸動脈または大腿動脈より冠動脈造影用のカテーテルを挿入し、冠動脈入口部に留置した。このカテーテルより、セロトニン(1μg/kg、3μg/kgまたは10μg/kg)の冠動脈内投与を行い、ついで2分後に冠動脈造影を行った。同様にしてヒスタミン(1μg/kg、3μg/kgまたは10μg/kg)を冠動脈内投与した後1分後に、またプロスタグランジンF2 α(PGF2 α)(5μg/kgまたは50μg/kg)を冠動脈内投与した後5分後に冠動脈造影を行った。冠動脈の反応は、各刺激物質を投与する前の血管内径の短縮(収縮)、増加(拡張)にて示した。
【0098】
上記実験終了後、組織学的検査を行なうために、ブタを屠殺し、心臓を摘出し、左冠動脈を灌流圧110 mmHgで灌流固定した。その後、冠動脈を切り出し、ヘマトキシリン・エオジン染色、エラスチン・ファン・ギーソン(Elastin van Gieson)染色を施した後、光学顕微鏡で観察した。
【0099】
試験結果
(1)冠動脈狭窄度に対する抑制効果:
刺激物質の冠動脈内投与前に冠動脈造影を行ない、冠狭窄の度合を比較した。A部位の冠動脈は、無処置部位に比較すると約40%前後の冠狭窄病変が惹起された。これに対し、C部位の冠動脈狭窄は、有意に抑制された。結果(n=6)を図1に示す。
【0100】
(2)セロトニンに対する冠動脈の収縮反応に対する効果:
セロトニンの冠動脈内投与後に冠動脈造影を行ない、冠動脈の収縮反応に対する効果を評価した。A部位の冠動脈は、セロトニン投与により冠動脈内径が約70〜80%短縮し、内膜肥厚部位に特徴的な冠動脈攣縮が生じた。これに対し、BおよびC部位では、セロトニン投与による冠動脈内径の短縮は有意に抑制された。抑制の程度は、C部位の方が顕著であった。B部位およびC部位における結果を、いずれもA部位および無処置部位と比較しながら図2(n=5)および図3(n=6)に示す。
【0101】
(3)ヒスタミンに対する冠動脈の収縮反応:
ヒスタミンの冠動脈内投与後に冠動脈造影を行ない、冠動脈の収縮反応に対する効果を評価した。A部位の冠動脈は、ヒスタミン投与により冠動脈内径が約60%短縮し、内膜肥厚部位に特徴的な冠動脈攣縮が生じた。これに対し、BおよびC部位では、ヒスタミン投与による冠動脈内径の短縮が有意に抑制された。抑制の程度は、C部位の方が顕著であった。B部位およびC部位における結果を、いずれもA部位および無処置部位と比較しながら図4(n=5)および図5(n=6)に示す。
【0102】
(4)PGF2 αに対する冠動脈の収縮反応:
PGF2 αの冠動脈内投与後に冠動脈造影を行ない、冠動脈の収縮反応を評価した。A部位の冠動脈は、無処置部位に対しPGF2 α投与により過収縮は生じなかった。また、BおよびC部位でも、PGF2 α投与による収縮は全く影響を受けなかった。B部位およびC部位における結果を、いずれもA部位および無処置部位と比較しながら図6(n=5)および図7(n=6)に示す。
(5)組織学的所見:
組織学的検査結果の典型的な写真のスケッチ図を図8〜図10に示した。
【0103】
A部位の冠動脈には、組織学的に顕著な内膜肥厚が認められたが、C部位の冠動脈の内膜肥厚は微弱で、組織学的な改善が認められた。
【0104】
また、冠動脈の組織学的な改善度を定量的に解折するため、組織学的検査の写真より、冠動脈の内膜および中膜の面積と、内膜および中膜の最大厚みを測定した。また内弾性板面積を求め、その結果と先に求めた内膜面積の結果より、冠動脈肥厚の程度の一指標として内膜面積対内弾性板面積比を求めた。それぞれ独立して行なった4回の実験結果の平均値を表2および表3に示した。ST638は、IL−1βによって引き起こされた冠動脈の内膜の厚さおよび面積の増加、さらには内膜面積対内弾性板面積比の増加を有意に抑制した。
【0105】
【表5】
Figure 0003636741
【0106】
【表6】
Figure 0003636741
【0107】
以上の結果は、ST638が冠動脈の増殖性変化および冠スパズムの予防および治療に有用であることを示している。
【0108】
試験例2 急性毒性試験
ST638をエスエルシー・ディディワイ(Slc-ddY )雄性マウス(10週齢)に1000mg/kg経口または腹腔内投与した。その後、2週間観察を行なったが、いずれの投与においても何等特別な変化は認められなかった。すなわち、ST638の経口または腹腔内投与時におけるLD50はいずれも1000mg/kg以上であり、毒性はきわめて弱かった。
【0109】
【発明の効果】
本発明の3−フェニルチオメチルスチレン誘導体またはその造塩可能なものの塩、とくにα−シアノ−4−ヒドロキシ桂皮酸アミド誘導体またはその造塩可能なものの塩、とりわけα−シアノ−3−エトキシ−4−ヒドロキシ−5−フェニルチオメチル桂皮酸アミドを有効成分として含有する動脈内膜肥厚の予防および治療剤は、副作用が少なく、従来の治療では充分な効果がえられなかった動脈硬化、PTCA後の再狭窄の予防、治療、ステント留置に伴う血管内膜の肥厚の予防、治療などに有効である。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1において、IL−1βを単独で、またはIL−1βとST638( 12.5mg)を併用して局所投与したばあいの、冠動脈の狭窄度を示すグラフである。
【図2】実施例1において、セロトニンを冠動脈内投与した後2分後における、IL−1βを単独で、またはIL−1βとST638(2.5 mg)を併用して局所投与した冠動脈部位の収縮度を示すグラフである。
【図3】実施例1において、セロトニンを冠動脈内投与した後2分後における、IL−1βを単独で、またはIL−1βとST638(12.5mg)を併用して局所投与した冠動脈部位の収縮度を示すグラフである。
【図4】実施例1において、ヒスタミンを冠動脈内投与した後1分後における、IL−1βを単独で、またはIL−1βとST638(2.5 mg)を併用して局所投与した冠動脈部位の収縮度を示すグラフである。
【図5】実施例1において、ヒスタミンを冠動脈内投与した後1分後における、IL−1βを単独で、またはIL−1βとST638(12.5mg)を併用して局所投与した冠動脈部位の収縮度を示すグラフである。
【図6】実施例1において、PGF2 αを冠動脈内投与した後5分後における、IL−1βを単独で、またはIL−1βとST638(2.5 mg)を併用して局所投与した冠動脈部位の収縮度を示すグラフである。
【図7】実施例1において、PGF2 αを冠動脈内投与した後5分後における、IL−1βを単独で、またはIL−1βとST638(12.5mg)を併用して局所投与した冠動脈部位の収縮度を示すグラフである。
【図8】実施例1において、IL−1βを単独で局所投与した冠動脈部位を輪切りにしたばあいの病理組織の顕微鏡写真(写真拡大倍率×40)のスケッチ図である。
【図9】実施例1において、IL−1βとST638(12.5mg)を併用して局所投与した冠動脈部位を輪切りにしたばあいの病理組織の顕微鏡写真(写真拡大倍率×40)のスケッチ図である。
【図10】実施例1において、無処置の冠動脈部位を輪切りにしたばあいの病理組織の顕微鏡写真(写真拡大倍率×40)のスケッチ図である。
【符号の説明】
1 中膜
2 内膜
3 血管腔
4 内膜肥厚部

Claims (4)

  1. 一般式(I):
    Figure 0003636741
    {式中、Xは水素原子、R5 O(R5 はC1 〜C3 のアルキル基を示す)で表されるアルコキシ基、C1 〜C5 のアルキル基、ニトロ基、アミノ基、水酸基、ハロゲン原子またはCOOR6 (R6 はC1 〜C3 のアルキル基を示す)で表されるアルコキシカルボニル基を表し、R1 は水素原子、C1 〜C3 のアルキル基またはR7 CO(R7 はフェニル基またはC1 〜C3 のアルキル基を示す)で表されるアシル基を表し、R2 は水素原子またはC1 〜C5 のアルキル基を表し、R3 はCOOR8 (R8 は水素原子またはC1 〜C4 のアルキル基を示す)で表される基またはアミドを表し、R4 はシアノ基またはR9 SO2 (R9 はC1 〜C4 のアルキル基を示す)で示されるアルキルスルフォニル基を表し、あるいはR3 とR4 は互いに結合して
    Figure 0003636741
    (R10は水素原子またはC1 〜C4 のアルキル基、Yは酸素原子またはNHを示す)または
    Figure 0003636741
    を形成し、nはXがハロゲンのとき1〜5の整数を表し、Xがその他の基のときは1を表し、mは0〜3の整数を表す}で示される3−フェニルチオメチルスチレン誘導体またはその造塩可能なものの塩を有効成分として含有する動脈内膜肥厚の予防および治療剤。
  2. 有効成分が一般式(II):
    Figure 0003636741
    (式中、X、R2 、nおよびmは前記と同じ)で示されるα−シアノ−4−ヒドロキシ桂皮酸アミド誘導体またはその造塩可能なものの塩である請求項1記載の動脈内膜肥厚の予防および治療剤。
  3. 有効成分が、α−シアノ−3−エトキシ−4−ヒドロキシ−5−フェニルチオメチル桂皮酸アミドである請求項1記載の動脈内膜肥厚の予防および治療剤。
  4. 動脈内膜肥厚が経皮的冠状動脈形成術後に認められる冠動脈再狭窄である請求項1、2または3記載の動脈内膜肥厚の予防および治療剤。
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