JP3634167B2 - 内燃機関の排気浄化装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は内燃機関の排気浄化装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、リーンバーン機関など空燃比のリーン化が進みつつあり、そのような機関にあっては、排気ガスがリーン雰囲気にあるときに排気ガス中の窒素酸化物を吸収し、排気ガスが理論空燃比以下のリッチ雰囲気にあるときに吸収した窒素酸化物を還元(浄化)するNOx吸収材(NOx吸収触媒。窒素酸化物浄化手段)などを用いてリーン雰囲気でのNOx(窒素酸化物)成分の浄化を図っている。
【0003】
ところで、燃料には硫黄Sが含まれているが、その硫黄が触媒表面あるいはミクロポアにSOx(硫黄酸化物)として付着(吸収)すると、触媒の浄化効率が低下する。特に、上記したNOx吸収材にあっては、硫黄を吸収し易く、いわゆる硫黄被毒を生じてNOx吸収効率が低下する。
【0004】
NOx吸収材の吸収(吸着)あるいは還元(脱離)に適した温度は250℃から550℃であるが、硫黄被毒再生に適する温度はそれよりも高く、リッチ雰囲気であれば600℃程度であり、さらに700℃程度まで昇温されると、一層効果的に硫黄被毒から再生することができる。
【0005】
そこで、特開平8−100639号公報において、走行距離などから硫黄による被毒状態にあるか否か推定し、被毒状態にあるときは中高負荷域において点火時期を遅角して排気温度を上昇させ、付着した硫黄を燃焼除去すると共に、機関回転数および負荷からマップを検索して得た値だけ吸入空気量を増量補正し、点火時期遅角によって低下した機関出力を回復させている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記した従来技術においては、機関回転数と負荷から予め設定された特性(マップ)を検索して増加吸入空気量を求めて行うのみで、実際に機関出力の変動を検出して吸入空気量の増量補正を行うものではなかった。
【0007】
さらに、上記した従来技術においては、機関出力が安定した運転フィーリングが悪化しない中負荷域から高負荷域において点火時期遅角補正および吸入空気量増加補正を行っているが、特にクルーズ運転状態のような低負荷域にあっては、遅角補正による機関出力変化が大きくなり、ドライバビリティの低下を招く。
【0008】
従って、この発明の目的は上記した不都合を解消することにあり、クルーズ運転状態にあるとき、クランク角速度の変化から機関出力の変動を監視し、クランク角速度の変化が所定値未満のとき、点火時期を遅角させて排気温度を昇温させると共に、クランク角速度の変化が所定値以上のとき、吸入空気量を増量補正し、よってクルーズ運転状態における機関出力の変動を抑制してドライバビリティを向上させるようにした内燃機関の排気浄化装置を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、請求項1項にあっては、内燃機関の排気系に設けられ、排気ガスの空燃比がリーンのときに排気ガス中の窒素酸化物を吸収し、排気ガスの空燃比が理論空燃比あるいはリッチのときに吸収した窒素酸化物を還元する窒素酸化物浄化手段を有する内燃機関の排気浄化装置において、前記内燃機関がクルーズ運転状態にあるか否か検出するクルーズ運転状態検出手段、前記内燃機関がクルーズ運転状態にあることが検出されたとき、前記内燃機関のクランク角速度の変化を検出して所定値と比較する比較手段、前記検出されたクランク角速度の変化が所定値未満のとき、前記窒素酸化物浄化手段が硫黄による被毒状態にある場合、前記内燃機関に供給する点火時期を遅角させて排気温度を上昇させる排気温度上昇手段、および前記検出されたクランク角速度の変化が所定値以上のとき、前記内燃機関に供給する吸入空気量を増量する吸入空気量増量手段を備える如く構成した。
【0010】
これにより、遅角補正によるエンジン出力(トルク)が比較的大きいと判断されるときは吸入空気量を増量、より詳しくは所定量だけ増量補正するので、点火時期遅角補正によって低下したエンジン出力(トルク)を増加(回復)することができ、エンジン出力の変動を抑制することができ、よってドライバビリティ、特にクルーズ運転状態におけるドライバビリティを向上させることができる。
【0011】
さらに、吸入空気量の増加補正は、遅角補正によるエンジン出力(トルク)の変動が比較的大きいと判断されるときに行われることから、吸入空気量を不要に増加させることがなく、よって燃料噴射量を不要に増加させることがない。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面に即してこの発明に係る内燃機関の排気浄化装置の実施の形態を説明する。
【0013】
図1は、その排気浄化装置を概略的に示す全体図である。
【0014】
図において、符号10は4気筒などの多気筒内燃機関(以下「エンジン」という)を示し、10aはその本体を示す。
【0015】
吸気管12の先端に配置されたエアクリーナ(図示せず)から導入された吸気は、スロットルボディ14に収容されたスロットルバルブ16でその流量を調節されつつサージタンクおよび吸気マニホルド(共に図示せず)を経て、各気筒へ流入される。
【0016】
各気筒の吸気バルブ(図示せず)の付近にはインジェクタ(燃料噴射弁)18が設けられて燃料を噴射する。噴射されて吸気と一体となった混合気は、各気筒内で図示しない点火プラグで点火されて燃焼してピストン(図示せず)を駆動する。
【0017】
燃焼後の排気ガスは、排気バルブ(図示せず)および排気マニホルド(図示せず)を介して排気管22に送られる。排気管22には三元触媒機能を備えたNOx吸収材(NOx吸収触媒あるいは窒素酸化物浄化手段)24が配置される。
【0018】
NOx吸収材24は、特開平6−66129号公報あるいは特開平7−217474号公報に記載されるNOx吸収剤と同種の触媒であって、排気ガスの空燃比がリーンのときに排気ガス中の窒素酸化物を吸収し、排気ガスの空燃比が理論空燃比あるいはリッチのとき、換言すれば排気ガス中の酸素濃度が低下すると、吸収したNOxを排気ガス中の未燃HC,COと反応させて還元浄化する。
【0019】
吸気管12において、インジェクタ18とスロットルボディ14の間には、吸気管12を大気に連通するバイパスエア通路26が接続される。バイパスエア通路26の大気開口端にはエアクリーナ28が取り付けられると共に、その途中にはバイパスエア制御バルブ(EACV)30が配置される。
【0020】
バイパスエア制御バルブ30は常閉型であり、バイパスエア通路26の開度(開口面積)を連続的に変化させるバルブ本体30aと、そのバルブ本体30aを閉塞方向に付勢するスプリング30bと、通電時にバルブ本体30aをスプリング力に抗して開放方向に移動させる電磁ソレノイド30cからなる。
【0021】
図1においてエンジン本体10のカム軸またはクランク軸(共に図示せず)の付近にクランク角センサ(図で「NE」と示す)34が設けられ、特定気筒の特定クランク角度ごとに気筒判別信号を、TDC(上死点)あるいはその近傍ごとにTDC信号を、所定クランク角度ごとにCRK信号を出力する。
【0022】
スロットルバルブ16にはスロットル開度センサ(図で「TH」と示す)36が接続され、スロットル開度THに比例した信号を出力する。その下流の分岐路38の末端には絶対圧センサ(図で「PBA」と示す)40が設けられ、吸気管内絶対圧PBAに応じた信号を出力する。
【0023】
シリンダブロックなどの適宜位置には水温センサ(図で「TW」と示す)42が設けられてエンジン冷却水温TWに応じた信号を出力すると共に、排気管22においてNOx吸収材24の上流にはO2 センサ(図で「O2 」と示す)46が設けられ、排気ガス中の酸素濃度に比例した信号を出力する。
【0024】
さらに、NOx吸収材24の下流にはNOx吸収材24に近接して温度センサ(図で「TCAT」と示す)48が設けられ、NOx吸収材24の温度(あるいは排気温度)TCATに応じた信号を出力する。
【0025】
さらに、エンジン10が搭載された車両(図示せず)のドライブシャフト(図示せず)の付近には車速センサ50が設けられ、ドライブシャフト所定回転当たり、即ち、車速Vに応じた信号を出力する。
【0026】
これらセンサ群の出力は、電子制御ユニット(以下「ECU」と言う)60に送られる。
【0027】
ECU60は、入力回路60a、CPU60b、記憶手段60c、および出力回路60dよりなる。入力回路60aは、各種センサからの入力信号波形を整形する、信号レベルを所定レベルに変換する、アナログ信号値をデジタル信号値に変換する、などの処理を行う。記憶手段60cは、CPU60bが実行する各種演算プログラムおよび演算結果などを記憶する。
【0028】
CPU60bは前記したCRK信号をカウントしてエンジン回転数NEを検出し、エンジン回転数NEと吸気管内絶対圧PBAとから基本燃料噴射量(インジェクタ開弁時間)を演算し、目標空燃比などで補正すると共に、エンジン回転数NEと吸気管内絶対圧PBAとから基本点火時期を演算し、水温などで補正する。
【0029】
さらに、CPU60bは、続いて述べる如く、点火時期を遅角補正させて排気温度を上昇させると共に、吸入空気量を増量補正する。
【0030】
次いで、図2フロー・チャートを参照して出願に係る装置の上記した動作を説明する。図示のプログラムは、例えばTDCごとに実行される。
【0031】
以下説明すると、先ずS10においてリーン運転中か否か判断し、否定されるときは以降の処理をスキップする。ここで、リーン運転中とは、目標空燃比が22:1付近のリーン空燃比に制御される運転状態にあることを意味する。
【0032】
S10で肯定されるときはS12に進み、NOx吸収材24にSOx(硫黄酸化物)が所定量以上付着した、即ち、S(硫黄)、より詳しくはSOx(硫黄酸化物)による被毒状態にあるか否か判断する。
【0033】
この判断は前記した従来技術と同様に走行距離から推定して行っても良く、あるいは特開平6−66129号公報で提案されるように、NOx吸収量などから推定して行っても良く、あるいは特開平6−174692号公報または特開平9−189678号公報で提案されるSOxセンサを用いて排気ガス中のSOx濃度を検出して行っても良い。
【0034】
S12で否定されるときは以降の処理をスキップすると共に、肯定されるときはS14に進み、車両がクルーズ運転状態にあるか否か判断する。これは、前記した車速センサ50の出力から、車速Vの変化が少ない運転状態にあるか否か判断することで行う。
【0035】
S14で否定されるときは以降の処理をスキップすると共に、肯定されるときはS16に進み、クランク角速度変化量(クランク角速度の変化)ΔMEが所定値SM以上か否か判断する。クランク角速度変化量は、前記したクランク角センサ34が出力するTDC信号あるいはCRK信号の周期の1階差分値(あるいは微分値)を算出することで求める。
【0036】
S16の処理は、具体的には、エンジン10の回転変動、より具体的にはエンジン出力(トルク)の変動が比較的大きいか否か判断する作業であり、その意図から所定値SMは適宜な値を選んで設定する。
【0037】
S16で否定され、クランク角速度変化量ΔMEが所定値SM未満、換言すればエンジン10の出力(トルク)の変動が比較的小さいと判断されるときはS18に進み、点火時期を所定量遅角補正する。
【0038】
点火時期制御は図示しない別ルーチンで行われ、前記した如く、エンジン回転数NEおよび吸気管内絶対圧PBAから得た吸気管内絶対圧PBAから予め設定された特性(マップ)を検索して基本点火時期が算出され、水温などで補正されて出力点火時期が決定される。
【0039】
S18においてはエンジン回転数NEおよび吸気管内絶対圧PBAから予め設定された第2の特性(マップ。特性図示省略)を検索して点火時期遅角量を算出し、その量だけ出力点火時期を遅角補正する。
【0040】
それによって燃焼時期が遅延されて排気温度が経時的に上昇させられ、NOx吸収材24に付着したSOxが燃焼除去される。それによって、NOx吸収材24を硫黄被毒から再生することができる。
【0041】
尚、排気温度が前記した再生温度以上に上昇した時点で理論空燃比以下のリッチ空燃比、例えば12:1を供給すると、付着したSOxが排気ガス中の未燃HC、未燃COなどの還元剤により還元させられてNOx吸収材24から脱離することから、NOx吸収材24をより効果的に硫黄被毒から再生することができる。
【0042】
他方、S16で肯定され、クランク角速度変化量ΔMEが所定値SM以上、換言すれば遅角補正によるエンジン出力(トルク)の変動が比較的大きいと判断されるときはS20に進み、吸入空気量を所定量だけ増量補正する。
【0043】
より具体的には、エンジン回転数NEおよび吸気管内絶対圧PBAから予め設定された第3の特性(マップ)を検索して吸入空気量の増加補正量を算出する。そして、図示しないEACV制御ルーチンにおいて算出された量に相当する量だけ前記したEACVバルブが開弁され、結果的に、算出された増加補正量に相当する空気量がバイパスエア通路26を通って吸気管12に流入される。
【0044】
燃料噴射も図示しない別ルーチンで行われ、前記の如く、エンジン回転数NEおよび吸気管内絶対圧PBAから予め設定された第4の特性(マップ)を検索して基本燃料噴射量が算出され、O2 センサ46の出力などから適宜補正されて出力燃料噴射量が前記したインジェクタ18の開弁時間で算出される。
【0045】
上記した処理を、NOx吸収材温度TCATが前記した再生温度に達するまで繰り返す。
【0046】
この実施の形態にあっては、以上の如く、内燃機関(エンジン10)の排気系(排気管22)に設けられ、排気ガスの空燃比がリーンのときに排気ガス中の窒素酸化物NOxを吸収し、排気ガスの空燃比が理論空燃比あるいはリッチのときに吸収した窒素酸化物を還元する窒素酸化物浄化手段(NOx吸収材24)を有する内燃機関の排気浄化装置において、前記内燃機関がクルーズ運転状態にあるか否か検出するクルーズ運転状態検出手段(ECU60,S14)、前記内燃機関がクルーズ運転状態にあることが検出されたとき、前記内燃機関のクランク角速度の変化(クランク角速度変化量)ΔMEを検出して所定値SMと比較する比較手段(ECU60,S16)、前記検出されたクランク角速度の変化が所定値未満のとき、前記窒素酸化物浄化手段が硫黄による被毒状態にある場合、前記内燃機関に供給する点火時期を遅角させて排気温度を上昇させる排気温度上昇手段(ECU60,S12,S18)、および前記検出されたクランク角速度の変化が所定値以上のとき、前記内燃機関に供給する吸入空気量を増量する吸入空気量増量手段(ECU60,S20)を備える如く構成した。
【0047】
尚、上記において、NOx吸収材温度をセンサから検出したが、適宜な論理を用いて推定しても良い。
【0048】
また、三元触媒機能を備えたNOx吸収材を使用したが、三元触媒を独立に設けても良い。
【0049】
【発明の効果】
請求項1項にあっては、遅角補正によるエンジン出力(トルク)が比較的大きいと判断されるときは吸入空気量を増量、より詳しくは所定量だけ増量補正するので、点火時期遅角補正によって低下したエンジン出力(トルク)を増加(回復)することができ、エンジン出力の変動を抑制することができ、よってドライバビリティ、特にクルーズ運転状態におけるドライバビリティを向上させることができる。
【0050】
さらに、吸入空気量の増加補正は、遅角補正によるエンジン出力(トルク)の変動が比較的大きいと判断されるときに行われることから、吸入空気量を不要に増加させることがなく、よって燃料噴射量を不要に増加させることがない。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明に係る内燃機関の排気浄化装置を含む内燃機関の制御装置を全体的に示す概略図である。
【図2】この発明に係る内燃機関の排気浄化装置の動作を示すフロー・チャートである。
【符号の説明】
10 内燃機関(エンジン)
12 吸気管
16 スロットルバルブ
18 インジェクタ
22 排気管
24 NOx吸収材(NOx吸収触媒。窒素酸化物浄化手段)
30 EACV(バイパスエア制御バルブ)
34 クランク角センサ
40 絶対圧センサ
48 温度センサ
60 ECU(電子制御ユニット)
Claims (1)
- 内燃機関の排気系に設けられ、排気ガスの空燃比がリーンのときに排気ガス中の窒素酸化物を吸収し、排気ガスの空燃比が理論空燃比あるいはリッチのときに吸収した窒素酸化物を還元する窒素酸化物浄化手段を有する内燃機関の排気浄化装置において、
a.前記内燃機関がクルーズ運転状態にあるか否か検出するクルーズ運転状態検出手段、
b.前記内燃機関がクルーズ運転状態にあることが検出されたとき、前記内燃機関のクランク角速度の変化を検出して所定値と比較する比較手段、
c.前記検出されたクランク角速度の変化が所定値未満のとき、前記窒素酸化物浄化手段が硫黄による被毒状態にある場合、前記内燃機関に供給する点火時期を遅角させて排気温度を上昇させる排気温度上昇手段、
および
d.前記検出されたクランク角速度の変化が所定値以上のとき、前記内燃機関に供給する吸入空気量を増量する吸入空気量増量手段、
を備えたことを特徴とする内燃機関の排気浄化装置。
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- 1998-10-19 JP JP31547498A patent/JP3634167B2/ja not_active Expired - Fee Related
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