JP3632902B2 - タッチセンサ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、人体の接近又は接触を検出するタッチセンサに関し、特にパチンコ機等の球を発射するに際して、遊戯者が発射ハンドルに設けられた電極に触れないと球の発射ができないようにし、遊戯者が複数のパチンコ機を使用することを防止するのに好適なタッチセンサに関する。
【0002】
【従来の技術】
タッチセンサには、人体の大地間容量を利用し、人体が電極に接触したか否かで発振回路の発振条件が変化することにより人体の接触を検出するもの〔特願平10−154037号:「タッチセンサ」〕や、CMOSゲートを用い、非安定マルチバイブレータ回路を利用して発振させ、人体が電極に触れることにより人体の容量で位相が遅れることを検出するもの〔特願2000−75061号:「静電容量式センサ回路用電源回路」〕等がある。
【0003】
前者のタッチセンサの回路構成例を図5に示す。図5の回路において、電源Vccは定電圧回路1で一定電圧となり、発振回路2、検波平滑回路3、比較回路4に電力が供給される。発振回路2には、直流カット用コンデンサC4 を介して電極6が接続されている。また、電極6には、サージ保護用のバリスタVAやツェナダイオードZD等の一端が接続され、それらの他端がGNDに接続されている。
【0004】
発振回路2の出力側には、検波平滑回路3が接続され、発振出力が検波及び平滑される。検波平滑回路3は比較回路4に接続されており、検波及び平滑された出力信号が比較回路4で比較電圧(一定値)と比較され、それに応じた出力が出力回路5に入力される。出力回路5では、比較回路4の入力に応じて、人体が電極6に接触したか否かの出力信号を出力する。
【0005】
大地間容量C0 を持った人体が電極6に接触すると、発振回路2の発振条件が変化し、発振出力が変化する。この発振出力が検波平滑回路3で検波平滑され、比較回路4に入力される。比較回路4では、比較電圧以下の入力レベルになると、出力はLレベルからHレベルとなり、出力回路5に入力される。そして、出力回路5からは、人体の接触検出信号が出力される。また、電極6から静電気等のサージがあると、サージ保護用のバリスタVAやツェナダイオードZD等によって回路が保護される。
【0006】
一方、後者のタッチセンサの回路構成例を図6に示す。図6の回路において、非安定マルチバイブレータ回路32で発振回路を構成し、その信号の片方はNOR回路を用いたR−Sフリップフロップ回路33のSに入力され、もう片方はR0 を介して電極36に接続されると共にRに入力される。その時のA点,B点,C点の波形を図7に示す。図7の(a)は、人Mが電極36に接触していない状態の波形であり、同図(b)は、人Mが電極36に接触した状態の波形である。人Mが電極36に触れることにより、人体の静電容量C0 と抵抗R0 によりB点の位相は遅れる。従って、C点の出力を検波平滑回路34により検波・平滑することにより、出力トランジスタを有する出力回路35への入力レベルは大きくなり、トランジスタはONし、人体の電極36への接触を出力する。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
タッチセンサにおいては、表面直出しの電極部に人体が接触する。ところが、人体は化繊や毛織物の衣服を着用したり、絨毯上を歩行する等により、常に静電気を帯びている。特に冬はこの静電気は数万Vにも達し、電極に対して高電圧の静電気放電が常に繰り返されている。
【0008】
以上のことから、従来のタッチセンサでは、次のような問題点▲1▼〜▲4▼がある。
▲1▼静電気により、回路部品が破壊される。
▲2▼高エネルギー耐量(数万Vの静電気に耐える)のサージ保護用素子は大きいため、通常はサージ保護用素子を除いた回路部をHIC化し、サージ保護用素子は外部接続されており、タッチセンサ全体の小型化(HIC等)ができない。
▲3▼マイクロギャップを応用したサージ保護用素子を用いたものでは、放電による金属磨耗でマイクロギャップが大きくなり、放電電圧が上昇してしまうため、寿命が短い。
▲4▼バリスタやツェナダイオード等の半導体のサージ保護用素子を用いると、検出容量Cd (100pF程度に設定される)より、はるかに大きなサージ保護用素子の静電容量(バリスタ:数百〜数千pF、ツェナダイオード:数十〜数百pF)が検出容量の一部として接続されたことになり、発振回路の発振ゲインと電極に係る静電容量との関係は、検出容量付近においては、図4の従来例の特性に示すように、緩やかな傾斜を持つ近似直線になる。この場合、少しの検出容量の変化で検出出力がON/OFFされてしまう。従って、サージ保護用素子の静電容量のバラツキや温度変化等の環境変化により動作が不安定になる。
【0009】
本発明は、上記問題点に着目してなされたもので、次の項目a〜fを達成するタッチセンサを提供することを目的とする。
a)静電気による回路部品の破壊を防止する。
b)小型なHIC化を可能とする。
c)長寿命・高信頼性を得る。
d)大変高価なバリスタやツェナダイオード等のサージ保護用素子を不要にし、大幅なコストダウンを図る。
e)サージ保護用素子を不要にすることにより、大幅な温度特性の改善を図る。
f)動作感度のバラツキの少ない商品を得る。
【0010】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するために、本発明のタッチセンサは、発振コイルを有する発振回路と、この発振回路に抵抗を介して接続した電極とからなり、前記電極への人体の接近又は接触で前記発振回路の発振条件が変化することにより人体を検出するものにおいて、前記抵抗の発振回路側と電源グランドとの間に前記発振回路の発振コイルを設け、前記電極の発振回路側と電源グランドとの間に静電気放電用ギャップを設け、このギャップは、発振回路を含む回路が設けられた同一の基板上に少なくとも1箇所パターン形成されていることを特徴とする。
【0011】
このタッチセンサでは、静電気が印加されても、発振コイルの作用により回路部品に対する静電気の影響を防ぐことができる。
【0012】
なお、発振コイルは、その抵抗が0.1〜90Ωの低抵抗のものを用いる。一般市販のローコストタイプの発振コイルは、抵抗が0.2〜60Ω程度のものであるが、本発明では、0.1Ωから下記の実施形態で記載した理由から90Ω程度のものが望ましい。
【0013】
また、この発明において、発振コイルにコンデンサを並列接続することで、特に静電圧が高い場合に発振コイルに生じる起電力の影響も防ぐことができる。
【0014】
この発明では更に、電極の発振回路側と電源グランドとの間に静電気放電用ギャップを設け、このギャップは、発振回路を含む回路が設けられた同一の基板上に少なくとも1箇所パターン形成されていることで、低コストで小型のHIC化が可能となる。
【0015】
そして、静電気放電用ギャップが防護被膜で覆われていることにより、ゴミや封止部材等の付着による放電機能の喪失を防ぐことができ、信頼性が向上する。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を実施の形態に基づいて説明する。
【0017】
その一実施形態に係るタッチセンサの回路構成を図1及び図2に示す。図1の回路はコルピッツ回路であり、図2の回路はハートレー回路である。
【0018】
まず、図1の回路について説明する。Vccに印加された電源電圧は、抵抗R3 を介してトランジスタTR1 にバイアス電流を流し、発振コイルLとコンデンサC2 ,C3 の定数により定まる一定の周波数F≒1/{2π(LC)1/2 }で、発振回路10が発振する。この発振強度は、トランジスタTR1 のエミッタに接続される抵抗R2 の値によって制御される。ここに、トランジスタTR2 は、トランジスタTR1 のパラメータが温度等により変化するのを補正するため、ベース−エミッタ間を利用する補正トランジスタである。
【0019】
発振回路10が発振すると、発振回路10の見掛け上のインピーダンスは極めて小さくなり、トランジスタTR1 に流れる高周波発振電流は大きくなる。この高周波発振電流はコンデンサC4 により平滑されるため、電流Isは大きな直流電流となる。この電流Isの値をレベル弁別回路11で弁別し、その結果で出力回路12を駆動するように構成されている。
【0020】
発振回路10には、抵抗R1 を介して電極15が接続されている。その電極15の発振回路10側と電源グランドGNDとの間には、数十〜数百μmの静電気放電用ギャップGが設けられ、ギャップGは発振回路10を含む回路等が設けられた同一のプリント基板上に少なくとも1箇所パターン形成されている。
【0021】
発振回路10が発振し、大きな電流Isが流れているとき、人が電極15に接触すると、人体容量C0 が発生する。すると、今まで浮いていた抵抗R1 が人体容量C0 と直列になり、人体容量C0 が発振コイルLの両端に接続されるため、発振回路10の選択度Qは大きく低下し、その結果、発振は停止する。
【0022】
発振が停止すると、発振回路10のインピーダンスは大きくなり、電流Isは極めて小さくなる。この小さくなった電流Isがレベル弁別回路11で弁別され、出力回路12が駆動される。つまり、電流Isが一定値以上である場合を人体の非検出時、電流Isが一定値よりも小さい場合を人体の検出時として、出力回路12より出力信号が出力される。
【0023】
この場合、レベル弁別回路11に波形整形回路(シュミット回路)等を用いると、立ち上がり・立ち下がりの鋭い出力を得ることができるのは勿論である。また、抵抗R2 により検出感度を高くしておけば、人体の電極15への接触だけでなく、人体の電極15への接近も検出することが可能となる。
【0024】
次に、このタッチセンサの実使用について説明する。パチンコ台においては、球は長いプラスチック製の通路を通過する。このとき、球と球或いは球とプラスチックは摩擦を繰り返しながら運ばれるため、球は数万Vの静電気を帯びる。この静電気を帯びた球に触れた人が電極15に接触するのであるから、タッチセンサには当然人体を介して数万Vの静電気が印加され、静電気は瞬時にグランドGNDに流れ、急激に減少して消滅する。また、最近の化学繊維の着用や絨毯上での移動機会の多い今日、特に冬場は人体には数万Vの静電気が発生する。タッチセンサを他の用途に使用した場合でも、同様にその静電気がタッチセンサに印加され、前記のように消滅を繰り返す。
【0025】
この数万Vの静電気がタッチセンサに印加されると、発振回路10、定電圧回路、レベル弁別回路11を構成する半導体は瞬間に破壊される。従って、これらの保護がタッチセンサの基本条件であることはいうまでもない。
【0026】
この実施形態のタッチセンサにおいて、電極15に印加された静電気について説明する。まず、数千Vと比較的低い電圧の静電気が印加された場合、発振回路10に印加される静電圧は、入力部と電源グランドGND、即ち発振コイルLの両端の電圧となる。一般的に、発振コイルLの抵抗RL は数Ωの低抵抗であり、また電極15を介する抵抗R1 としては数〜数十kΩの抵抗値のものを用いる。静電圧をVS とし、VS =2000Vが抵抗R1 =5.1kΩ、RL =5.1Ωに印加された場合、発振コイルLに印加される静電圧をVL とすると、
となり、約2Vの電圧しか発振コイルLに印加されない。印加される静電気の極性は(+)時や(−)時があるが、いずれの場合でも、静電圧VL は回路部品、特に半導体を破壊することはない。
【0027】
次に、静電圧が極めて高い場合について説明する。静電圧VS =3万Vとすると、電極15と電源グランドGNDとの間には極めて狭いギャップGが設けられているため、約2000V以上になると、ギャップG間で放電が開始し、印加電圧は瞬時に2000Vから0Vになり、2000V以上の電圧が発振コイルLに印加されることはない。
【0028】
しかし、この放電の瞬間は、静電圧の変化率が極めて大きく、発振コイルLに流れていた電流が急に無くなるため、エネルギー量は極めて小さいが大変大きな電圧の高周波パルス状起電力が発振コイルLから発生する。この起電力は他の半導体を破壊するのに十分な電圧であるが、発振コイルLと並列に設けられているコンデンサC2 ,C3 によりバイパスされるため、高圧の起電力が発振トランジスタTR1 ,TR2 やその他の電子部品に印加されることはなく、電子部品の破損を防止できる。
【0029】
また、帯電している人の手が電極15に接触した瞬間も、急激な電圧の変化が印加される。コンデンサC2 ,C3 の合計容量をCX とすると、
CX =(C2 ×C3 )/(C2 +C3 )
となり、この合計容量CX と抵抗R1 は積分回路を形成する。発振コイルLは数μHと非常に小さな誘導分しかないが、高周波時は高いインピーダンスとなるため、前記積分回路で高周波分は消されることになる結果、低抵抗分のみが機能することとなり、発振コイルLに印加される電圧は高くならない。
【0030】
一方、ギャップGは、発振回路10を含む回路等が設けられた同一プリント基板上にプリントパターンで数十〜数百μmのギャップで少なくとも1箇所、しかも先端が鋭利に形成されているため、極めて小さなスペースであり、コストが掛からず、低コストでHICとしての小型化の目的も達成できる。
【0031】
また、図面には示されていないが、ギャップGは、防護被膜(シール、剥離性被膜等)で覆われているため、ゴミ等の付着により放電機能が停止したり、或いは樹脂による回路基板のモールディング等によって起こる封止部材等の高絶縁体の付着により放電機能が失われたりすることがなく、安定した信頼性や品質が確保される。
【0032】
勿論、図1の回路について説明した上記論理は、図2の回路においても全く同様に当て嵌まる。
【0033】
なお、図1及び図2の回路によると、僅かではあるが、直流電圧が常時印加されているため、電極15には電触作用が働いている。このため、図3の(a)〔図1に対応〕,(b)〔図2に対応〕に示すように、直流分をカットするため検出容量やコンデンサC2 ,C3 より十分大きな容量のコンデンサC1 を抵抗R1 と直列接続し、前記電触作用を防止することもできる。
【0034】
図1や図2のような回路構成を有するタッチセンサによれば、図4において、発振回路10の発振ゲインと電極15に係る静電容量C0 との関係は、検出容量付近では急な傾斜の直線(実施形態の特性)になり、静電容量のバラツキや温度変化等の環境変化に対して動作が安定する。
【0035】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明のタッチセンサによれば、次の効果が得られる。(1)サージ保護用素子が不要であるにもかかわず静電気による半導体等の破壊を防止できる。
(2)サージ保護用素子であるバリスタ、ツェナダイオード、クリッピングダイオード等の高価な電子部品が不要であるため、大幅なコストの低下が図れる。
(3)サージ保護用素子が不要であるため、サージ保護用素子の回路への影響も無くなり、特に温度特性が飛躍的に改善されると共に、製品の動作感度のバラツキも少なくすることができる。
(4)サージ保護用素子が不要となるため、サージ保護用素子そのものの破損も無くなり、高寿命、高信頼性が確保される。
(5)小型で信頼性の高いHIC化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】一実施形態に係るタッチセンサの回路(コルピッツ回路)構成を示すブロック図である。
【図2】別実施形態に係るタッチセンサの回路(ハートレー回路)構成を示すブロック図である。
【図3】図1の回路における電極側の変更例を示す部分回路図(a)、及び図2の回路における電極側の変更例を示す部分回路図(b)である。
【図4】電極に係る静電容量(人体容量)C0 と発振回路の発振ゲインとの関係を示すグラフである。
【図5】従来例に係るタッチセンサの回路構成を示すブロック図である。
【図6】別の従来例に係るタッチセンサの回路構成を示すブロック図である。
【図7】図6の回路の動作を説明するための波形図である。
【符号の説明】
10 発振回路
11 レベル弁別回路
12 出力回路
15 電極
C0 人体容量
L 発振コイル
C1 コンデンサ
C2 ,C3 コンデンサ
G 静電気放電用ギャップ
TR1 ,TR2 トランジスタ
Claims (4)
- 発振コイルを有する発振回路と、この発振回路に抵抗を介して接続した電極とからなり、前記電極への人体の接近又は接触で前記発振回路の発振条件が変化することにより人体を検出するタッチセンサにおいて、
前記抵抗の発振回路側と電源グランドとの間に前記発振回路の発振コイルを設け、前記電極の発振回路側と電源グランドとの間に静電気放電用ギャップを設け、このギャップは、発振回路を含む回路が設けられた同一の基板上に少なくとも1箇所パターン形成されていることを特徴とするタッチセンサ。 - 前記発振コイルは、抵抗が0.1〜90Ωであることを特徴とする請求項1記載のタッチセンサ。
- 前記発振コイルにコンデンサを並列接続したことを特徴とする請求項1又は請求項2記載のタッチセンサ。
- 前記静電気放電用ギャップは、防護被膜で覆われていることを特徴とする請求項4記載のタッチセンサ。
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