JP3631648B2 - 色光を利用した緑色栄養大豆もやし及びその栽培方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、緑色栄養大豆もやし(以下単に「緑色大豆もやし」ということがある。)及びその栽培方法に関するもので、特に、太陽光を遮断して栽培する従来の大豆もやし(以下単に「黄色大豆もやし」ということがある。)の栽培方法とは異なり、色光(特定波長幅の可視光)を照射して生長させることによって、農薬や化学肥料を全く使わずに、栄養価が高く、促成栽培できる緑色大豆もやし及びその栽培方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、大豆もやしは、大豆を、発芽前に2〜8時間程度水に沈漬して水分を供給した後、排水が容易な容器に積層して光線を断った暗所で、1日に6〜8回ぐらい給水しながら発芽、生育させる。発芽後、適当な温度で7日程度栽培された大豆もやしは、子葉が割れて初生葉が出る前に、必要に応じて根切りを行なってから、軽く水で洗浄して出荷する。
【0003】
また、大豆もやしを栽培する一部の工場では、大豆もやしの腐疫病等を防止すると共に、大豆もやしを清潔に生産するために、人体に有害な農薬及び成長促進剤を使用して大豆もやしを生産する場合がある。
【0004】
通常の大豆もやしは、成長しながら二葉になる大豆の肉質部分と根が生える下胚軸を軟らかく育てて食品として利用している。大豆もやしの茎は光線を受けていないため白色になり、大豆の肉質部分は大豆もやしが成長して本葉が出るまでの栄養分を供給する母体として黄色になる。大豆もやしの種子である大豆は、茎が成長するまでの栄養分を供給した後、大豆自体の栄養分がほとんどなくなってしまい、かつ光線が照射されなかったので、新しい栄養素を生産することができない状態で、食品として利用されている。そのため、大豆は、畑でとれる肉と呼ばれるほどの栄養素を含有しているにもかかわらず、大豆もやしから摂取できる栄養素はほとんどないのが実状である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
従って、従来の問題点を解決するための本発明の目的は、農薬及び化学肥料を全く使わずに、栄養価が高くて促成栽培が可能な美味しい大豆もやしを提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
陸上植物の成長に必要な環境要因として、光の量、温度、二酸化炭素及び水の供給量、無機物の含量等があるが、本発明者は、特に光の質に着目し、これを調節することによって、植物の成長能力と品質を向上できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、下記の(1)〜(5)の手段により、本発明の課題は解決される。
(1) 栽培容器に大豆を入れて水を供給しながら発芽させる発芽段階(a)と、発芽した大豆に水を供給しながら成長させる生育段階(b)と、生育した大豆もやしに水を供給して光合成作用と共にさらに成長させる発育段階(c)を含んでおり、前記各成長段階(a、b、c)別に、所定時間、赤色、緑色、黄色の中から選択された一つの色光を照射することを特徴とする色光を利用した緑色栄養大豆もやしの栽培方法。
(2)前記所定時間が、発芽段階(a)では18〜22時間赤色光を照射し、生育段階(b)では44〜52時間緑色光を照射し、発育段階(c)では44〜52時間赤色または黄色光を照射することを特徴とする上記(1)に記載の色光を利用した緑色栄養大豆もやしの栽培方法。
(3)発育段階(c)の最後の10〜14時間の間には、それ以前よりも給水量を減らして大豆もやしの根の成長を促進させることを特徴とする(1)または(2)のいずれか1つに記載の色光を利用した緑色栄養大豆もやしの栽培方法。
(4)前記発芽段階(a)の前に、大豆を、4〜5時間、20〜25℃の水に沈漬することを特徴とする上記(1)、(2)および(3)のいずれか1つに記載の色光を利用した緑色栄養大豆もやしの栽培方法。
(5)栽培容器に大豆を入れて水を供給しながら赤色光を照射して発芽させる発芽段階(a)と、発芽した大豆に水を供給しながら緑色光を照射して葉緑素の生成、蓄積を促進しつつ生育する生育段階(b)と、生育した大豆もやしに赤色または黄色光を照射しつつ水を供給して光合成作用と共にさらに生長させる発育段階(c)を含む方法で栽培された緑色栄養大豆もやし。
【0007】
【作用】
太陽光線のうち、光として人の目で感知できる可視光線の波長の範囲は、3800―4000オングストローム〜7600―8000オングストローム程度である。可視光線はさらにその波長によって異なる色感を与えることができ、光の三原色である赤色光、緑色光、青色光の合成比率によって多様な色合いができる。また、これの単色光は植物の生長においてそれぞれ異なる影響を及ぼすことが知られている。
【0008】
すなわち、緑色光は、葉緑素(chlorophyll)を生産する赤色光の機能を促進する働きがあり、赤色光は、葉緑素で起こる光合成反応を促進する。
光エネルギーを利用した葉緑素による光合成反応によって、NADPが還元されて NADPH2を生成すると共に、ADPと無機燐酸から高エネルギー物質のATPを生成する。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明は、各々の特定波長の光が植物の成長に及ぼす影響が異なる点に着目して、植物の成長の各段階別に必要とする色光を照射して大豆もやしを生育しようとするものである。即ち、緑色光、赤色光又は黄色光を順々に一定期間照射することによって栄養分の豊かな大豆もやしを生育させるだけでなく、大豆もやしの生長速度をも速める栽培方法を提供するものである。
【0010】
本発明の緑色大豆もやしの栽培方法は、栽培容器に大豆を入れて水を供給しながら発芽させる発芽段階(a)と、発芽した大豆に水を供給しながら緑色光を照射して、葉緑素の生成、蓄積を促進する生育段階(b)と、生育した大豆もやしに赤色または黄色光を照射しつつ水を供給して光合成作用と共に、さらに成長させる発育段階(c)とを含む。
上記の各成長段階(a、b、c)別に、所定時間、赤色、緑色および黄色の中から選択された一つの色光が照射される。当該色光は、発芽段階においては赤色光が好ましく、例えばレッドハウス内で照射される。また、生育段階(b)では緑色光が好ましく、例えばグリーンハウス内で照射される。また、発育段階(c)では赤色光または黄色光が好ましく、例えばレッドハウス又はイエローはハウス内で照射される。また、この生育段階(b)は、通常44〜52時間続けられ、そして、上記の発育段階(c)は、通常44〜52時間続けられる。
【0011】
この時、レッドハウスで大豆を発芽させる前に、大豆を3〜4時間水に沈漬すると、発芽が速くなる。また、前記レッド又はイエローハウスで発育させる発育段階で最後の10〜14時間は、給水量を減らして大豆もやしの根を発育させることが好ましい。
【0012】
このようにすることで、根毛が1〜2mm程度になり、この状態で大豆もや しを取り出して5〜10℃で貯蔵すると、成長が止まったまま長く保存する ことができる。
【0013】
また、給水量の減少による大豆もやしの根の成長によって、二日酔いの解消 に効果があることで知られ、大豆もやし特有の成分であるアスパラギン酸の 大豆もやしの根の中の含有量が、十分な給水量の場合と比較して、3〜4倍 程度高くなることが分かった。
【0014】
さらに、有効な抗癌剤として知られているイソフラボン(Isoflavo nes)の緑色栄養大豆もやし中の含有量は、一般の黄色大豆もやしと比べ て遙かに多いことも分かった。このイソフラボンは、癌細胞の増殖、特に、 乳癌、子宮頸部癌、前立腺癌の細胞増殖を効率的に抑制する効果が認められ ている。
【0015】
しかし、給水量が不足すると、根毛が必要以上にたくさん生えてしまい、視 覚的に不良となり、商品価値を損なう虞がある。
【0016】
前記の、グリーン、レッド又はイエローハウスとは、塩化ビニール系或いはアクリル系のフィルムを使用して、太陽光の下で、必要とする色光のみを透過させるためのものである。ここで、グリーンハウスは緑色光を、レッドハウスは赤色光を主に透過させるものであり、イエローハウスは緑色光と赤色光を同時に透過させるものであるが、他の色光も一部透過させることができる。
【0017】
本発明の栽培方法によれば、太陽光のうち、特定波長の色光を、大豆もやしの成長段階別に照射して生育を速めることができ、かつ大豆もやしに生成した葉緑素の光合成反応によって栄養価の高い大豆もやしを生産することができる。
【0018】
生育を速めることにより栽培期間が短縮できるのは、植物の成長を促進させる色光のみを透過させるハウスによって、植物の生長を抑制する紫外線と下胚軸の成長を抑制する藍色光とを遮断した結果である。また、促成栽培が可能になるので、同一期間であれば、収穫量を増加させることが出来る。
【0019】
また、本発明の栽培方法を利用して、レッドハウス、グリーンハウス、レッドハウス(又はイエローハウス)を設置した後、各栽培段階に応じたハウス間の移動に、コンベヤーベルト等の移動手段を用い、色光の透過量及び透過時間を適当に調節すると、自動化及び大量生産が可能になり、より効果的に栽培することができる。
【0020】
さらに、本発明の栽培方法によって大豆もやしを栽培するとき、コンベヤーベルトのかわりに、同じ場所で植物の発芽、生育または発育の各段階に合わせてカラーハウスの色を変えるようにして、各栽培段階に応じた色光を照射することもできる
【0021】
【実施例】
以下、本発明の実施例について説明する。
実施例1
大豆もやしの種子である大豆を、4時間、25℃の水に沈漬した後、太陽光の下のレッドハウス内に置かれた栽培容器に移して、水分が乾かないように25℃の水を持続的に給水しながら一日間発芽させた。20時間が過ぎたところで大豆から発芽した。その後、発芽した大豆を、同じく太陽光の下のグリーンハウスに移して持続的に給水しながら、大豆もやしに葉緑素が多く生成されるようにするために2日間成長させた。
この時、緑色光と共に不可避的に一部透過した赤色光及び青色光の作用により、光合成に必要な葉緑素が十分に生成した。ついで、この大豆もやしを太陽光の下のレッドハウスに移してさらに成長させた。その結果、赤色光によって、大豆もやしに蓄積された葉緑素による光合成反応が活発になり、各種の栄養素が大豆もやしに蓄積された。レッドハウスでは、2日間大豆もやしを成長させたが、最後の12時間は、給水量をそれまでの20%に減らして根の発育を促進させた(すなわち、この段階までは、持続的に給水していたが、最後の12時間は2.4時間断続的に給水した)。
【0022】
本発明の緑色大豆もやしと、市販の黄色大豆もやしを分析した結果を下記の表1、2に示した。市販の黄色大豆もやしは、韓国のソウル市にあるノンヒョンドン、フェキドン、サダンドン及び京畿道にあるブンダンで販売されている大豆もやしを、3次にわたって無作為に選定して分析した結果を平均したものである。
【0023】
この分析結果は、韓国食品研究所、韓国科学技術研究院(KAIST)、韓国食品開発研究院及び韓国の建国大学農科大学生命工学研究室で得られたものである。
【0024】
【表1】
【0025】
表1に示したように、市販の黄色大豆もやしに比べて本発明の緑色大豆もやしは、蛋白質が2.1倍以上、脂肪や灰分は1.1倍、イソロイシンは1.3倍、ビタミンB1は38倍、ビタミンB2は29倍、ビタミンCは22倍、アスパラギン酸は約3.6倍の増加を示しており、全般的に栄養価が増加したことが分かった。
【0026】
また、本発明の緑色大豆もやしと暗所で生育した従来の黄色大豆もやしのカロリーを分析した。その結果、従来の大豆もやしは大豆もやし100g当たり30カロリーであったが、本発明の大豆もやしはその2倍の60カロリーであった。 さらに、本発明の緑色大豆もやしは、大豆もやし100g当たりの繊維質が、従来の大豆もやしの0.6mgから0.83mgに増加したにもかかわらず、食用に適当な軟らかさを維持しており、その食感を失わなかった。
【0027】
また、表2は、緑色大豆もやしと黄色大豆もやしに含まれているイソフラボンの含量を比較した結果である。
【表2】
【0028】
表2から分かるように、イソフラボンの含量は、21倍以上高くなっていた。その他にも本発明の緑色大豆もやしには、黄色大豆もやしに比べ、ビタミンE、蛋白質、脂肪、燐、カルシューム等、多様な栄養素がたくさん含有されていることが分かった。
このように、緑色大豆もやしに含有された各種の栄養素の含量が高い原因は、緑色大豆もやしに生成された葉緑素が太陽エネルギーを受けて有機物を生産するためであると言える。
また、表1と表2に示した数値の差を視覚的に示すため、添付の図1、図2、図3にグラフで示した。
【0029】
実施例2
有色の透明アクリル箱を作製して、太陽光のうち、特定波長幅の色光を、栽培の各段階別に透過させる本発明の栽培方法によって得られた本発明の緑色大豆もやしの生長速度と、暗室で生育した従来の黄色大豆もやしの生長速度を、大豆もやしの長さがほぼ15cmになるのに要する時間を指標として比較した。通常、成長に要する期間は気温によって影響を受けるが、本実施例の気温は、20〜25℃であった。その結果、従来の方法における生産期間は7日であったが、本発明の栽培方法では僅か5日に短縮できた。
【0030】
実施例3
レッドハウスの栽培容器に大豆を入れる前に、大豆をそれぞれ2時間、4時間、6時間、8時間、25℃の水に沈漬した。この中で、4時間水に沈漬して栽培器に移した大豆が一番早く発芽した。
【0031】
【発明の効果】
本発明によって、生育の各段階で、太陽光を色光別に選択して照射することにより、各々の波長の光が植物の成長に及ぼす影響が極大化し、従来の大豆もやしに比べて新規なものであるといえる程の大豆もやしを生産することができた。
【0032】
本発明の緑色大豆もやしは、農薬や化学肥料を使用することなく栽培でき、ビタミン及びカロリーが豊かで、人々の健康の向上を図ることができる。さらに、アスパラギン酸とイソフラボンの含有量が高いので医学的な価値も非常に高い。
【0033】
また、従来の黄色大豆もやしは、暗室で栽培されるので、柔らかすぎて、冷蔵庫で低温貯蔵しても一週間以内に変質してしまうが、本発明の緑色大豆もやしは、太陽エネルギーを受けて生育するので、細胞組織が充実して20日以上保管しても変質せず、貯蔵性が改善できる。
更に、本発明の緑色栄養大豆もやしは、繊維質が豊富な割には固くなく軟らかいので食感がよく、甘い食味を有している。
【0034】
本発明の色光を利用した緑色栄養大豆もやしの栽培方法は、単に大豆もやしに限らず、緑豆、大根の子、神仙草、せり等色々な植物と各種の園芸作物や薬草の栽培に広く適用できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】黄色大豆もやしと緑色大豆もやしに含有された各種栄養素含量を比較したグラフである。
【図2】黄色大豆もやしと緑色大豆もやしに含有された各種微量栄養素含量を比較したグラフである。
【図3】黄色大豆もやしと緑色大豆もやしに含有されたイソフラボンの含量を比較したグラフである。
Claims (4)
- 大豆を発芽、成長させて大豆もやしを栽培する方法において、18〜22時間赤色光を照射して大豆を発芽させ、次に、44〜52時間緑色光を照射し、その後に、44〜52時間赤色または黄色光を照射して前記発芽した大豆もやしを成長させることを特徴とする色光を利用した緑色栄養大豆もやしの栽培方法。
- 前記赤色又は黄色光を照射する期間の最後の10〜14時間の間には給水量を減らして大豆もやしの根の成長を促進させることを特徴とする請求項1に記載の色光を利用した緑色栄養大豆もやしの栽培方法。
- 前記光を照射して大豆を発芽させる段階の前に、大豆を20〜25℃の水に4〜5時間沈積することを特徴とする請求項1又は2の何れか1つに記載の色光を利用した緑色栄養大豆もやしの栽培方法。
- 請求項1から3までのいずれか1つに記載の方法によって栽培されたことを特徴とする緑色栄養大豆もやし。
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