JP3630628B2 - 車両用変速制御装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両周辺或いは車両前方の状況に関連した情報を自動変速機の変速に反映させる協調変速制御を行う車両用変速制御装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
変速線図から車速およびアクセル開度に基づいて決定される変速段となるように自動変速機の変速段を制御するよく知られた通常の自動変速制御に加えて、車両周辺或いは車両前方の状況に適した変速段とするために、ナビゲーション装置、道路に設けられた発信装置などから送信されるその車両周辺或いは車両前方の状況を表す情報に基づき上記自動変速機を上記自動変速制御による変速段とは異なる変速段に制御する協調変速制御を行う車両用変速制御装置が知られている。この協調変速制御は、たとえば、進路前方にカーブがある場合には、その存在を検知し、カーブ領域に進入する前に適切なカーブ進入速度とするためにダウン変速或いはアップ変速禁止を行って十分なエンジンブレーキ力により減速してカーブを安定的に通過できるようにし、車両がカーブの特定位置たとえばカーブのピーク位置や2/3位置を通過するまでそのダウン変速或いはアップ変速禁止を維持し、通過後は車速が通常の自動変速制御によるアップ変速点車速よりも高くなるとアップ変速たとえば通常の自動変速制御への復帰を許可することにより、車両周辺或いは車両前方の状況に協調した変速を行うようにする。たとえば、特開平10−184892号公報に記載された協調変速制御装置がそれである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記のような従来の車両用変速制御装置では、シフトレバーが前進走行中に自動変速機のギヤ段のうちの全てのギヤ段を自動変速範囲とするD(ドライブ)レンジへ操作されているとき以外に協調変速制御を実行するレンジが設けられていない。このため、複数のレンジ、すなわち上記Dレンジと、上記自動変速機のギヤ段のうちの高速側ギヤ段を除いたギヤ段を自動変速範囲とするレンジにおいても協調変速制御を実行させるような場合において、自動変速機のギヤ段を運転者の意思により上記シフトレバーが操作して切り換えようとしても、協調変速制御の実行中にはその手動変速が行われず、運転者の意思を反映した変速が得られないおそれがあった。
【0004】
本発明は以上の事情を背景として為されたもので、その目的とするところは、カーブ前においてダウン変速或いはアップ変速禁止を行う協調変速制御中において手動変速操作により運転者の意思が反映された変速を得られるようにする車両用変速制御装置を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
かかる目的を達成するために、本発明の要旨とするところは、車両周辺或いは車両前方の状況に関連した情報に基づいて自動変速機の協調変速制御を行う車両用自動変速装置、すなわち車両周辺或いは車両前方の状況に関連した情報を自動変速機の変速に反映する協調変速制御を行う車両用自動変速装置において、手動変速操作部材がD位置から4位置へ切り換えられたときは変速段を維持し、4位置からD位置へ切り換えられたときはアップ変速を実行させ、Dまたは4位置から3、2またはL位置へ切り換えられたときは協調制御を終了させることにある。
【0006】
【発明の効果】
このようにすれば、協調変速制御中において、手動変速操作部材の操作による変速制御が前記協調変速制御よりも優先して実行されるので、手動変速操作部材の操作により運転者の意思が反映された変速が得られる。
【0007】
【発明の他の態様】
ここで、好適には、前記手動変速操作部材の操作により変速制御が実行されてから所定時間後に前記協調変速制御を復帰させるものである。このようにすれば、手動変速操作後において、協調変速制御の変速がすぐに生じるというようなビジーシフトが好適に防止される。ここで、上記所定時間とは、手動変速操作後に協調変速制御の変速がすぐに生じ運転者にビジー感を与えることのない時間に設定される。
【0008】
また、好適には、前記手動変速操作部材の操作によるアップ変速後における前記協調変速制御によるダウン変速は、アクセルペダルの踏み戻し操作或いはブレーキペダル操作が行われたことを条件として実行される。このようにすれば、運転者に与えるダウン変速の違和感を好適に緩和することができる。
【0009】
また、好適には、前記手動変速操作部材の操作による変速制御を前記協調変速制御よりも優先して実行させる制御は、前記自動変速機のギヤ段のうちの高速側ギヤ段への変速を指令するためにその手動変速操作部材の操作が行われた場合、たとえば最高速ギヤ段へのアップ変速のためにドライブレンジへ操作された場合に行われるものである。このようにすれば、運転者の意思に従った最高速ギヤ段へのアップ変速が前記協調変速制御に優先して実行される。
【0010】
また、好適には、前記車両周辺或いは車両前方の状況に関連した情報は、車両に搭載されたナビゲーション装置から供給されるものである。このようにすれば、山間道路の走行時において協調変速制御によるダウン変速或いはアップ変速が好適に行われる。
【0011】
また、好適には、前記車両用自動変速装置は、適切なカーブ進入速度で道路のカーブを走行するために、車両周辺および車両前方の道路状況に関連した情報と車両の走行状態に基づいて自動変速機の推奨変速比を決定し、その推奨変速比と運転者の要求駆動力と車速とに基づいて決定される目標変速比とを比較して最適な変速比となるように自動変速機の協調変速制御を行うものである。また、好適には、前記協調制御は車両周辺或いは車両前方の状況に関連した情報に基づいて自動変速機の推奨変速比を決定し、該推奨変速比に応じて該自動変速機の変速制御を行うものである。
【0012】
【発明の好適な実施の形態】
以下、本発明の実施例を図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0013】
図1は、本発明の車両用変速制御装置が適用された車両の動力伝達装置およびその制御装置の構成を簡単に説明する図である。図1において、原動機10は、内燃機関(エンジン)、電動機、或いはそれらの組み合わせなどから構成されるものであるが、以下においてはエンジンとして説明する。原動機10の出力は、トルクコンバータ12を介して自動変速機14へ入力され、図示しない差動歯車装置および車軸を介して駆動輪へ伝達されるようになっている。図2は、そのトルクコンバータ12および自動変速機14の構成を示す骨子図である。
【0014】
図2において、上記トルクコンバータ12は、エンジン10のクランク軸16に連結されたポンプ翼車18と、自動変速機14の入力軸20に連結されたタービン翼車22と、それらポンプ翼車18およびタービン翼車22の間を直結するための直結クラッチすなわちロックアップクラッチ24と、一方向クラッチ26によって一方向の回転が阻止されているステータ28とを備えている。
【0015】
図2において、上記自動変速機14は、ハイおよびローの2段の切り換えを行う第1変速機30と、後進ギヤ段および前進4段の切り換えが可能な第2変速機32を備えている。第1変速機30は、サンギヤS0、リングギヤR0、およびキャリヤK0に回転可能に支持されてそれらサンギヤS0およびリングギヤR0に噛み合わされている遊星ギヤP0から成るHL遊星歯車装置34と、サンギヤS0とキャリヤK0との間に設けられたクラッチC0および一方向クラッチF0と、サンギヤS0およびハウジング41間に設けられたブレーキB0とを備えている。
【0016】
上記第2変速機32は、サンギヤS1、リングギヤR1、およびキャリヤK1に回転可能に支持されてそれらサンギヤS1およびリングギヤR1に噛み合わされている遊星ギヤP1から成る第1遊星歯車装置36と、サンギヤS2、リングギヤR2、およびキャリヤK2に回転可能に支持されてそれらサンギヤS2およびリングギヤR2に噛み合わされている遊星ギヤP2から成る第2遊星歯車装置38と、サンギヤS3、リングギヤR3、およびキャリヤK3に回転可能に支持されてそれらサンギヤS3およびリングギヤR3に噛み合わされている遊星ギヤP3から成る第3遊星歯車装置40とを備えている。
【0017】
上記サンギヤS1とサンギヤS2は互いに一体的に連結され、リングギヤR1とキャリヤK2とキャリヤK3とが一体的に連結され、そのキャリヤK3は出力軸42に連結されている。また、リングギヤR2がサンギヤS3に一体的に連結されている。そして、リングギヤR2およびサンギヤS3と中間軸44との間にクラッチC1が設けられ、サンギヤS1およびサンギヤS2と中間軸44との間にクラッチC2が設けられている。また、サンギヤS1およびサンギヤS2の回転を止めるためのバンド形式のブレーキB1がハウジング41に設けられている。また、サンギヤS1およびサンギヤS2とハウジング41との間には、一方向クラッチF1およびブレーキB2が直列に設けられている。この一方向クラッチF1は、サンギヤS1およびサンギヤS2が入力軸20と反対の方向へ逆回転しようとする際に係合させられるように構成されている。
【0018】
キャリヤK1とハウジング41との間にはブレーキB3が設けられており、リングギヤR3とハウジング41との間には、ブレーキB4と一方向クラッチF2とが並列に設けられている。この一方向クラッチF2は、リングギヤR3が逆回転しようとする際に係合させられるように構成されている。
【0019】
このような自動変速機14は、例えば図3に示す作動表に従って後進1段および変速比が順次異なる前進5段のギヤ段のいずれかに切り換えられる。図3において○印は係合状態を示し、空欄は解放状態を示し、●はエンジンブレーキを発生させるときの係合状態を示している。たとえば、シフトレバー72(図1参照)が「D」レンジである場合において、たとえば第5速ギヤ段で走行中に道路のカーブに先立ってダウン変速する場合には、クラッチC0が係合され且つブレーキB0が開放されることにより5→4ダウン変速が実行され、さらにクラッチC2が開放されることにより4→3ダウン変速が実行される。反対に、第3速ギヤ段からアップ変速する場合には、クラッチC2が係合されることにより3→4アップ変速が実行され、さらにクラッチC0が開放され且つブレーキB0が係合されることにより4→5アップ変速が実行される。
【0020】
上記図1は車両に設けられた制御装置も示している。アクセルペダル50の操作量であるアクセル開度θ(%)がアクセルセンサ51により検出されるようになっている。アクセルペダル50は、運転者の要求出力に応じて大きく踏み込み操作されるもので、加速操作部材に相当する。エンジン10の吸気配管52には、スロットルアクチュエータ54によって基本的にはアクセル開度θに応じた開き角(開度)θTH(%)とされるスロットル弁56が設けられている。エンジン10の回転速度N(r.p.m )を検出するためのエンジン回転速度センサ58、上記スロットル弁56の全閉状態およびその開度θTHを検出するための図示しないアイドルスイッチ付スロットルセンサ、出力軸42の回転速度NOUT (r.p.m )すなわち車速Vを検出するための車速センサ66、ブレーキペダル68の作動を検出するためのブレーキスイッチ70、シフトレバー72の操作位置PSHを検出するための操作位置センサ74、入力軸20の回転速度NINすなわちクラッチC0の回転速度NC0(=タービン回転速度NT )を検出するための入力軸回転センサ73などが設けられており、それらのセンサから、エンジン回転速度N、アクセル開度θ、スロットル弁開度θTH、車速V、ブレーキの作動状態BK、シフトレバー72の操作位置PSH、入力軸回転速度NC0、作動油温度TOIL を表す信号がエンジン用電子制御装置76或いは変速用電子制御装置78に供給されるようになっている。上記シフトレバー72は、P位置(パーキングレンジ)、R位置(リバースレンジ)、N位置(ニュートラルレンジ)、D位置(ドライブレンジ)、4位置(4レンジ)、3位置(3レンジ)、2位置(2レンジ)、L位置(ローレンジ)へ操作されるように構成されている。
【0021】
図1のエンジン用電子制御装置76および変速用電子制御装置78は、相互に通信可能に接続されており、一方に必要な信号が他方から適宜送信されるようになっている。それらエンジン用電子制御装置76および変速用電子制御装置78は、CPU、RAM、ROM、入出力インターフェースを備えた所謂マイクロコンピュータであって、CPUはRAMの一時記憶機能を利用しつつ予めROMに記憶されたプログラムに従って入力信号を処理し、種々の制御を実行する。
【0022】
例えば、エンジン用電子制御装置76は、燃料噴射量制御のために燃料噴射弁79を制御し、点火時期制御のためにイグナイタ80を制御し、トラクション制御のためにスロットルアクチュエータ54によりスロットル弁56を制御する。また、エンジン用電子制御装置76は、スロットル弁56の制御において、図示しない関係から実際のアクセルペダル操作量ACCに基づいてスロットルアクチュエータ54を駆動し、基本的にはアクセルペダル操作量ACCが増加するに伴ってスロットル弁開度θTHを増加させる。また、上記エンジン用電子制御装置76は、変速中トルク低減制御を実行し、変速ショックを緩和するために自動変速機14の変速期間内においてエンジン10の出力を一時的に低減させる。
【0023】
また、変速用電子制御装置78は、例えば図4に示す予め記憶された変速線図から実際のエンジン負荷に対応するアクセル開度θおよび車速Vに基づいて自動変速機14のギヤ段を決定し、この決定されたギヤ段を成立させるように自動変速機14に設けられた油圧制御回路の電磁弁を制御する自動変速制御を実行する。図4の実線はアップシフト線で、破線はダウンシフト線である。また、上記変速用電子制御装置78は、その自動変速制御に加えて、人工衛星からの電波を受けるアンテナ82を有して車両に設けられたナビゲーション装置84からの信号およびABS・VSC電子制御装置86からの旋回信号などに基づいて(ナビ)協調変速制御のための変速を実行する。
【0024】
上記ナビゲーション装置84は、GPS(グローバルポジショニングシステム)を利用して人工衛星からの電波(GPS信号)をアンテナ82を介して受信して現在位置を逐次算出しつつ、予め記憶した地図内の道路上に車両の現在位置を逐次表示させるとともに、車両の周辺道路たとえば車両の進行方向の道路のコーナの曲率半径Rや旋回角θを判定し、道路形状に即した制御信号を出力する。例えば、道路は複数のノード点により記憶されており、ある1つのノードと、その前後にあるノード、合計3点のノードから、そのコーナの曲率半径Rを算出し、曲率半径Rから車両がそのコーナを安定して走行できる適正車速を決定する。また各ノードを滑らかに結んだ曲線の接線から、そのノードの旋回角θを判断し、旋回角θの大きさに応じて、例えば、緩コーナ(20°≦θ<40°)、中コーナ(40°≦θ<95°)、ヘアピンコーナ(95°≦θ)領域と決定し、そのノードの所定距離手前の位置から、そのノードまで、又はそのノードに基づいて設定される位置までをコーナ領域とする。ここで、ノードの所定距離手前の位置、又はノードに基づいて設定される位置をそれぞれのコーナの種類のよって適宜変更してもよい。
【0025】
上記協調変速制御は、たとえば減速走行時に、エンジンブレーキ力を高めて適正なカーブ進入車速により道路のカーブを安定して走行するために、図4の変速線図から決定されたギヤ段とする前記自動変速制御に反してすなわち優先して実行される変速制御であって、たとえば、車両の前方に位置するカーブ領域の曲率半径Rが算出され、安全に走行させるために予め求められた関係からその曲率半径Rに基づいて適正車速が算出される。この関係は曲率半径Rが小さくなるほど適正車速が低くなるように決定されている。次いで、適正車速とカーブ領域(特定ノード点)までの距離とから減速曲線(領域)が決定される。この減速曲線とは、カーブ上の特定ノード点を適正車速で走行するためにその手前の各地点において適正車速で違和感なく減速できる車速を表すものである。そして、現車速が減速曲線と比較されて現車速が減速曲線に対してどの位置にあるかによって推奨変速段が決定され、この推奨車速に応じて現変速段の維持(アップ変速禁止)或いはダウン変速が判断され、そのアップ変速禁止或いはダウン変速がカーブ領域に入る所定距離手前においてアクセル踏み戻し操作或いはブレーキ操作があったときに指令され、カーブ領域走行中において変速段が維持される。
【0026】
図5は、変速用電子制御装置78の制御機能の要部を説明する機能ブロック線図である。図5において、自動変速制御手段90は、例えばよく知られた図4に示す予め記憶された変速線図から、エンジン10の実際の負荷に対応するアクセル開度θと車速Vとに基づいて自動変速機14のギヤ段を決定し、この決定されたギヤ段を成立させるように自動変速機14に設けられた図示しない油圧制御回路の電磁弁を制御する。シフトレバー72がD位置に操作されている場合は自動変速機14のすべてのギヤ段(第1速ギヤ段乃至第5速ギヤ段)を自動変速範囲とするが、4位置に操作されている場合は最高速ギヤ段を除くすべてのギヤ段(第1速ギヤ段乃至第4速ギヤ段)を自動変速範囲とし、3位置に操作されている場合は最高速ギヤ段およびその下位のギヤ段を除くすべてのギヤ段(第1速ギヤ段乃至第3速ギヤ段)を自動変速範囲とし、2位置に操作されている場合は第1速ギヤ段乃至第2速ギヤ段を自動変速範囲とし、L位置に操作されている場合は第1速ギヤ段に固定する。
【0027】
協調変速制御手段92は、シフトレバー72がD位置へ操作されている場合だけでなく3位置などへ操作されている場合においても、十分なエンジンブレーキ力による適切なカーブ進入速度で道路のカーブを安定して走行するために、ナビゲーション装置84からの信号に従って、車両がカーブ領域よりも所定距離前となったと判定されると、アクセルペダル50の開放或いはアクセル開度θの減少およびブレーキペダル68の操作を条件として、図4の変速線図から決定されたギヤ段とする前記自動変速制御に反してすなわち優先してダウン変速或いはアップ変速禁止させる。また、上記カーブ領域の出口すなわち特定ノード点或いはそれに基づいて決定された位置を抜けて直線走行となった時点でアップ変速を実行させ、上記協調変速制御を終了させて図4の変速線図を用いる通常の自動変速制御に復帰させる。
【0028】
また、上記協調変速制御手段92は、シフトレバー72の操作による手動変速制御を上記協調変速制御よりも優先して実行させる。たとえば、カーブ領域内であることによって第4速以下のギヤ段へダウン変速されている期間にシフトレバー72が3位置からD位置へ操作されたことにより第5速ギヤ段へのアップ変速操作が行われた場合には、そのアップ変速を優先させて第5速ギヤ段を達成させる。
【0029】
上記協調変速制御手段92は、シフトレバー72の操作によるマニアル変速操作の種類を判定するためのマニアル変速操作判定手段94と、そのマニアル変速操作判定手段94によりシフトレバー72がD位置から3位置、2位置、或いはL位置へ操作されたこと、或いは4位置から3位置、2位置、或いはL位置へ操作されたことが判定された場合にナビ協調制御の終了を指令するナビ協調制御終了指令手段96と、上記マニアル変速操作判定手段94によりシフトレバー72がD位置から4位置へ操作されたことが判定された場合にギヤ段の維持(保持)を指令するギヤ段維持指令手段98と、上記マニアル変速操作判定手段94によりシフトレバー72が4位置からD位置へ操作されたことが判定された場合にアップ変速を指令するアップ変速指令手段100とを備え、後述のダウン変速指令手段110によるカーブに起因するダウン変速指令すなわちダウン変速制御に優先して、上記手動操作に起因するナビ協調制御の終了、ギヤ段維持指令、アップ変速指令を実行させる。
【0030】
また、上記協調変速制御手段92は、ナビゲーション装置84からの信号に従って適切なカーブ進入速度で道路のカーブを安定して走行させるために、車両がカーブ領域から所定距離前に到達したと判定されるとナビ協調のダウン変速を判定するダウン変速条件成立判定手段102と、前記シフトレバー72による手動(マニアル)変速後の経過時間が所定値に到達したか否かを判定するマニアル変速後の経過時間判定手段104と、アクセルペダル50の踏込操作に続く戻し操作を判定するアクセル戻し操作判定手段106と、ブレーキペダル68によるブレーキ操作が行われたか否かを判定するブレーキ操作判定手段108と、上記ダウン変速条件成立判定手段102によりダウン変速が条件が成立したと判定されたとき、経過時間判定手段104により手動変速後の経過時間が所定値に到達したと判定されるか、アクセル戻し操作判定手段106によりアクセル戻し操作が判定されるか、或いはブレーキ操作判定手段108によりブレーキ操作があったと判定された場合にダウン変速を指令するダウン変速指令手段110とを備えている。
【0031】
図6は、上記変速用電子制御装置78の制御作動の要部を説明するフローチャートである。図6において、ステップ(以下、ステップを省略する)SB1では、ダウン変速指令手段110によるカーブに起因するダウン変速指令或いはアップ変速禁止指令によってダウン変速或いはアップ変速禁止が行われている状態であるか否か、すなわち協調変速制御の実施中であるか否かが判断される。このSB1の判断が否定される場合は本ルーチンが終了させられるが、肯定される場合は、前記マニアル操作判定手段94に対応するSB2乃至SB4においてシフトレバー72の操作によるマニアル変速操作の種類が判定される。すなわち、SB2においてはシフトレバー72の操作開始時の位置がD位置であるか或いは4位置であるかが判断され、D位置と判断される場合はSB3においてシフトレバー72の操作先すなわち操作後の位置が位置であるか、或いは位置、2位置、またはL位置であるかが判断される。また、上記SB2において4位置であると判断される場合はSB4においてシフトレバー72の操作先すなわち操作後の位置が自動変速範囲が最大の位置であるか、或いは位置、2位置、またはL位置であるかが判断される。
【0032】
上記SB2、SB3においてシフトレバー72がD位置から3位置、2位置、またはL位置へ操作されたと判断された場合は、前記ナビ協調制御終了指定手段96に対応するSB5においてナビ協調変速制御が終了させられ、自動変速機14のギヤ段のうちの第3速ギヤ段乃至第1速ギヤ段を使用した走行が優先される。また、上記SB2、SB4においてシフトレバー72が4位置から3位置、2位置、またはL位置へ操作されたと判断された場合は、前記ナビ協調制御終了指令手段96に対応するSB6においてSB5と同様にナビ協調変速制御が終了させられて第3速ギヤ段乃至第1速ギヤ段を使用した走行が優先される。
【0033】
また、上記SB2、SB3においてシフトレバー72がD位置から4位置へ操作されたと判断された場合は、前記ギヤ段維持指令手段98に対応するSB7において自動変速機14のギヤ段が維持される。すなわち、コーナ領域内で第3速ギヤ段にダウン変速して走行している状態でシフトレバー72がD位置から4位置へ操作されるときにそれに逆行してたとえば3→4アップ変速させるのは違和感があるので、そのダウン変速状態の第3速ギヤ段が維持される。また、上記SB2、SB4においてシフトレバー72が4位置からD位置へ操作されたと判断された場合は、前記アップ変速指令手段100に対応するSB8において、前記ナビ協調変速制御によるダウン変速に優先する第5速ギヤ段へのアップ変速が指令される。
【0034】
次いで、前記ダウン変速条件成立判定手段102に対応するSB9において、コーナ領域に入ったことなどを基本要件とするダウン変速条件が成立したか否かが判断される。このSB9の判断が否定される場合は本ルーチンが終了させられるが、肯定される場合は前記マニアル変速後の経過時間判定手段104に対応するSB10において、シフトレバー72の4→D操作によるマニアル変速後からの経過時間がたとえば数秒程度の所定時間となったか否かが判断される。このSB10の判断が否定されるうちは待機させられるが、肯定されると、前記アクセル踏み戻し操作判定手段106に対応するSB11において、アクセルペダル50の踏み戻し操作があったか否かが判断される。また、このSB11の判断が否定される場合は、前記ブレーキ操作判定手段108に対応するSB12において、ブレーキペダル68による制動操作があったか否かが判断される。
【0035】
上記SB11およびSB12の判断がいずれも否定される場合は本ルーチンが終了させられるが、いずれかの判断が肯定される場合は、前記ダウン変速指令手段110に対応するSB13において、ナビ協調変速制御によるダウン変速が指令される。すなわち、手動操作によるナビ協調変速制御に優先したアップ変速後には、上記所定時間による時間的ヒステリシスが介在させられること、アクセルペダル50の踏み戻し操作またはブレーキペダル68による制動操作があることを条件として、ナビ協調変速制御によるダウン変速が再度実行される。
【0036】
上述のように、本実施例によれば、車両周辺或いは車両前方の状況に関連した情報に基づいて自動変速機14のナビ協調変速制御を行う場合に、そのナビ協調変速制御によってダウン変速された状態でシフトレバー72(手動変速操作部材)の操作による手動変速制御が前記ナビ協調変速制御による変速に優先して実行されることから、ナビ協調制御によりダウン変速されたコーナ領域内の走行においてもそのシフトレバー72の操作によって運転者の意思が反映された変速が得られる。
【0037】
また、本実施例によれば、前記シフトレバー72の操作により手動変速制御が実行されてから所定時間後にナビ協調変速制御を復帰させるものであるので、シフトレバー72による手動変速操作後において、ナビ協調変速制御の変速がすぐに生じるというようなビジーシフトが好適に防止される。
【0038】
また、本実施例によれば、前記シフトレバー72の操作による手動アップ変速後におけるナビ協調変速制御によるダウン変速は、アクセルペダルの踏み戻し操作或いはブレーキペダル操作が行われたことを条件として実行されるので、運転者に与えるダウン変速の違和感を好適に緩和することができる。
【0039】
また、本実施例によれば、前記シフトレバー72の操作による手動変速制御をナビ協調変速制御よりも優先して実行させる制御は、自動変速機14のギヤ段のうちの高速側ギヤ段への変速を指令するためにそのシフトレバー72の操作(4→D操作)が行われた場合、たとえば最高速ギヤ段(第5速ギヤ段)へのアップ変速のためにシフトレバー72が操作された場合に行われるものであるので、運転者の意思に従った最高速ギヤ段へのアップ変速がナビ協調変速制御に優先して実行される。
【0040】
また、本実施例によれば、前記車両周辺或いは車両前方の状況に関連した情報は、車両に搭載されたナビゲーション装置84から供給されるものであるので、山間道路の走行時において協調変速制御によるダウン変速或いはアップ変速禁止が好適に行われる。
【0041】
以上、本発明の一実施例を図面に基づいて説明したが、本発明は他の態様においても適用される。
【0042】
たとえば、前述の実施例の車両では、車両に設けられたナビゲーション装置84からの信号に従って車両前方のコーナなどが判定されていたが、道路に設けられた道路情報発信装置からの信号に従って車両前方のコーナなどが判定されても差し支えない。
【0043】
また、前述の実施例では、有段式の自動変速機14が設けられていたが、たとえば有効径が可変の1対の可変プーリに伝動ベルトが巻き掛けられた形式の無段変速機が設けられた車両であってもよい。このような無段変速機であっても予め設定された複数種類の速度比が段階的に切り換えられる場合などに本発明が適用され得る。
【0044】
また、前述の実施例の車両には、互いに通信回線を介して接続されたエンジン用電子制御装置76および変速用電子制御装置78が設けられていたが、共通に設けられた演算制御装置により前述の制御が実行されてもよいし、ナビゲーション装置84に設けられた電子制御装置により実行されてもよい。
【0045】
また、前述の実施例では、自動変速機14のギヤ段のうちの自動変速範囲を選択するシフトレバー72の操作に基づく手動変速が説明されていたが、手動変速モードが選択されているときに有効化される変速釦等の操作に基づきギヤ段を選択する手動変速などであってもよい。
【0046】
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、これはあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更,改良を加えた態様で実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例である変速制御装置を含む車両の制御装置を説明するブロック線図である。
【図2】図1の自動変速機の構成を説明する骨子図である。
【図3】図1の自動変速機の摩擦係合装置の組み合わせとそれにより得られるギヤ段との関係を説明する図表である。
【図4】図1の車両において、自動変速制御に用いられる予め記憶された変速線図を示す図である。
【図5】図1の変速用電子制御装置におけるナビ協調変速制御機能の要部を説明する機能ブロック線図である。
【図6】図3の変速用電子制御装置におけるナビ協調変速制御作動の要部を説明するフローチャートである。
【符号の説明】
10:原動機(エンジン)
78:変速用電子制御装置(車両用変速制御装置)

Claims (1)

  1. 車両周辺或いは車両前方の状況に関連した情報を自動変速機の変速に反映させる協調変速制御を行う車両用自動変速装置において、
    手動変速操作部材がD位置から4位置へ切り換えられたときは変速段を維持し、4位置からD位置へ切り換えられたときはアップ変速を実行させ、Dまたは4位置から3、2またはL位置へ切り換えられたときは協調制御を終了させることを特徴とする車両用変速制御装置。
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