JP3629762B2 - 帯電防止膜形成用組成物、帯電防止膜、帯電防止膜を有する支持体、及び用途 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、表面抵抗値を半導体領域の特定の範囲に制御できる帯電防止膜形成用組成物、帯電防止膜、帯電防止膜を有する支持体、及び用途に関するものであり、さらに詳しくは複写機、ファクシミリ、プリンター等の静電的作用を利用した画像形成装置に用いられる部品に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、複写機、ファクシミリ、プリンター等の画像形成装置の定着部材については、トナーが静電的に付着するオフセット現象を防止するため帯電防止処理が必要とされており、それに対して様々な方法の提案がなされている。例えば、特開昭63−8677号公報では、加圧ローラーのシリコンゴムにカーボンブラックを添加して導電性を改善し、さらに芯金を通じて接地することにより帯電防止をしている。特開昭63−55579号公報では、定着ローラーを導電性にし、接地して帯電防止をすることが提案されている。また、特開平6−314047号公報では、特定量のカーボンブラックをシリコンゴムに添加することにより抵抗値を制御した定着部加圧ローラーが提案されている。特開平7−77859号公報では、体積抵抗率を106〜109 Ω・cmに制御したイオン導電性成分を添加したゴムを基層として用いた導電性ローラーが提案されている。また、特開平2−49055号、特開平2−49056号、特開平6−73286号公報ではπ電子共役系導電性高分子を利用し、抵抗値を制御した電子写真複写機の導電性ローラー用材料が提案されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特開昭63−8677号および特開昭63−55579号公報に記載されている手法では導電性が良すぎるため紙自体も除電されてしまい、いわゆる転写ヌケが発生する問題がある。また、この現象は特に湿度の高い環境で発生し、湿度依存性の問題も存在する。つまり、この種の材料には導電性が必要とされる範囲内に制御され、しかも使用環境に依存しないことが要求される。
【0004】
特開平6−314047号公報の手法では材料全体の導電性は適正値に制御されているが、カーボンブラック等導電材の添加によりゴム材料の導電性を制御しようとする場合、ミクロレベルでは必ずしも均一な分散とはならないため精密な画像形成の要求には応えられない。また特開平7−77859号公報の導電性ローラーは、イオン導電系弾性体からなる基層の上に、電極層、抵抗調整層、保護層を作製しており、構成が複雑である。
カーボンブラック、金属粉等の電子伝導性成分あるいはアンモニウム塩等のイオン導電性成分を添加することにより導電性を持たせたゴム材料の場合、微妙な添加量の変動により抵抗値が変化し易く、所望の半導体領域の抵抗値に制御するのに困難を伴うことがある。
【0005】
特開平2−49055号、特開平2−49056号、特開平6−73286号公報では上述の課題を解決すべくπ電子共役系導電性高分子をマトリックス樹脂と混合した材料を提案しているが、これらの手法では定着装置の設計が変更されるたびに、ゴム材料自体の組成および物性設計が必要となるため効率的かつ経済的でなく、既存材料の表面改質のみで対応できる技術が望まれている。
【0006】
【課題を解決するための手段】
前記従来技術の問題点を解決するため鋭意研究を重ねた結果、導電性成分としてπ電子共役系導電性高分子及び樹脂成分を含む組成物で表面をコーティングした支持体が所望の特性を発現することを見い出し、本発明をなすに至った。π電子共役系導電性高分子は、電子伝導性であるため導電性の湿度依存性が小さいという特徴を持ち、本用途には好適である。また、有機溶媒および/または水に可溶なπ電子共役系導電性高分子を選択して用いれば種々のコーティング用樹脂とミクロレベルで均一に混合することが可能である。
【0007】
即ち本発明は以下の手段に関する。
(1)π電子共役系導電性高分子、樹脂成分及び有機溶剤を含む帯電防止膜形成用組成物であって、有機溶剤を除去した場合のπ電子共役系導電性高分子及び樹脂成分含有膜の表面抵抗値が1×109〜1×1013Ω/□であり、π電子共役系導電性高分子が一般式(II)、
【化7】
および一般式(III)
【化8】
(式中、XはS,O,Se,TeまたはNR5 である。R1 、R2 、R3およびR4 はそれぞれ独立にH、炭素数1〜20の直鎖状または分岐状の飽和もしくは不飽和のアルキル基、アルコキシ基、アルキルカルボン酸基、またはハロゲン、ニトロ基、アミノ基、トリハロメチル基、カルボキシル基を表す。R5はHまたは炭素数1〜10の直鎖状もしくは分岐状の飽和もしくは不飽和のアルキル基、アルキルカルボン酸基、または炭素数6〜10の置換もしくは非置換のアリール基を表す。R1、R2 、R3 およびR4 のアルキル基は互いに任意の位置で結合して環状鎖構造を形成してもよい。R1、R2 、R3 、R4 およびR5 のアルキル基、アルコキシ基、アルキルカルボン酸基にはカルボニル、エーテル、エステル、チオエーテル、スルホン酸エステル、アミド、スルホンアミド、スルホン結合を任意に含んでもよい。)で表される化学構造のうちの少なくとも一種を繰り返し単位として含む重合体である帯電防止膜形成用組成物。
【0008】
(2)π電子共役系導電性高分子、樹脂成分及び溶剤を含む帯電防止膜形成用組成物であって、π電子共役系導電性高分子が一般式(II)、
【化9】
および一般式(III)
【化10】
(式中、XはS,O,Se,TeまたはNR5 である。R1 、R2 、R3およびR4 はそれぞれ独立にH、炭素数1〜20の直鎖状または分岐状の飽和もしくは不飽和のアルキル基、アルコキシ基、アルキルカルボン酸基、またはハロゲン、ニトロ基、アミノ基、トリハロメチル基、カルボキシル基を表す。R5はHまたは炭素数1〜10の直鎖状もしくは分岐状の飽和もしくは不飽和のアルキル基、アルキルカルボン酸基、または炭素数6〜10の置換もしくは非置換のアリール基を表す。R1、R2 、R3 およびR4 のアルキル基は互いに任意の位置で結合して環状鎖構造を形成してもよい。R1、R2 、R3 、R4 およびR5 のアルキル基、アルコキシ基、アルキルカルボン酸基にはカルボニル、エーテル、エステル、チオエーテル、スルホン酸エステル、アミド、スルホンアミド、スルホン結合を任意に含んでもよい。)で表される化学構造のうちの少なくとも一種を繰り返し単位として含む重合体であることを特徴とする帯電防止膜形成用組成物。
【0009】
(3)樹脂成分がポリウレタン、ポリエステル、アクリル樹脂、ポリアミド、エポキシ樹脂、アルキド樹脂、フェノール樹脂、及びポリシロキサンのうちの少なくとも一種である前項(1)又は(2)に記載の帯電防止膜形成用組成物。
【0010】
(4)π電子共役系導電性高分子及び樹脂成分を含有する膜であって、π電子共役系導電性高分子が一般式(II)、
【化11】
および一般式(III)
【化12】
(式中、XはS,O,Se,TeまたはNR5 である。R1 、R2 、R3およびR4 はそれぞれ独立にH、炭素数1〜20の直鎖状または分岐状の飽和もしくは不飽和のアルキル基、アルコキシ基、アルキルカルボン酸基、またはハロゲン、ニトロ基、アミノ基、トリハロメチル基、カルボキシル基を表す。R5はHまたは炭素数1〜10の直鎖状もしくは分岐状の飽和もしくは不飽和のアルキル基、アルキルカルボン酸基、または炭素数6〜10の置換もしくは非置換のアリール基を表す。R1、R2 、R3 およびR4 のアルキル基は互いに任意の位置で結合して環状鎖構造を形成してもよい。R1、R2 、R3 、R4 およびR5 のアルキル基、アルコキシ基、アルキルカルボン酸基にはカルボニル、エーテル、エステル、チオエーテル、スルホン酸エステル、アミド、スルホンアミド、スルホン結合を任意に含んでもよい。)で表される化学構造のうちの少なくとも一種を繰り返し単位として含む重合体であり、表面抵抗値が1×109〜1×1013Ω/□であることを特徴とする帯電防止膜。
【0011】
(5)樹脂成分がポリウレタン、ポリエステル、アクリル樹脂、ポリアミド、エポキシ樹脂、アルキド樹脂、フェノール樹脂、及びポリシロキサンのうちの少なくとも一種である前項(4)に記載の帯電防止膜。
【0012】
(6)前項(4)又は(5)に記載の帯電防止膜を有することを特徴とする支持体。
【0013】
(7)帯電防止膜を有しない場合と比較して表面抵抗値が小さいことを特徴とする前項 (6)に記載の帯電防止膜を有する支持体。
【0014】
(8)支持体が高分子成型体である前項(6)又は(7)に記載の帯電防止膜を有する支持体。
【0015】
(9)支持体が熱可塑性高分子成型体、熱硬化性高分子成型体またはゴム弾性を有する成型体である前項(6)又は(7)に記載の帯電防止膜を有する支持体。
【0016】
(10)前項(4)又は(5)に記載の帯電防止膜を有することを特徴とするローラー。
(11)前項(4)又は(5)に記載の帯電防止膜を有することを特徴とする画像形成装置用定着ローラー。
【0017】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明において前記一般式(II)又は一般式(III)と共重合体を形成する繰り返し単位としては、例えば、下記一般式(I)、
【化13】
(式中、XはS,O,Se,TeまたはNR 5 である。R 1 、R 2 、R 3 およびR 4 はそれぞれ独立にH、炭素数1〜20の直鎖状または分岐状の飽和もしくは不飽和のアルキル基、アルコキシ基、アルキルカルボン酸基、もしくはアルキルスルホン酸基、またはハロゲン、ニトロ基、アミノ基、トリハロメチル基、カルボキシル基、もしくはスルホン酸基を表す。R 5 はHまたは炭素数1〜10の直鎖状もしくは分岐状の飽和もしくは不飽和のアルキル基、アルキルカルボン酸基、もしくはアルキルスルホン酸基、または炭素数6〜10の置換もしくは非置換のアリール基を表す。R 1 、R 2 、R 3 およびR 4 のアルキル基は互いに任意の位置で結合して環状鎖構造を形成してもよい。R 1 、R 2 、R 3 、R 4 およびR 5 のアルキル基、アルコキシ基、アルキルカルボン酸基、もしくはアルキルスルホン酸基にはカルボニル、エーテル、エステル、チオエーテル、スルホン酸エステル、アミド、スルホンアミド、スルホン結合を任意に含んでもよい。)で表される化学構造の繰り返し単位を挙げることができる。
前記一般式(I)、(II)および(III)で表される化学構造からなる繰り返し単位を含むπ電子共役系導電性高分子化合物において、R1、R2 、R3 およびR4 の置換基は、それぞれ独立にH、アルキル基、アルコキシ基、アルキルカルボン酸基、もしくはアルキルスルホン酸基、またはハロゲン、ニトロ基、アミノ基、トリハロメチル基、カルボキシル基、もしくはスルホン酸基であるが、アルキル基、アルコキシ基、アルキルカルボン酸基及びアルキルスルホン酸基は炭素数が1〜20であり、直鎖状であっても分岐状であってもよく、また飽和であっても不飽和であっても良い。さらに詳しく例示すれば、アルキル基としてはメチル、エチル、プロピル、アリル、イソプロピル、ブチル、tert−ブチル、1−ブテニル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル等、アルコキシ基としてはメトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、tert−ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ、ヘプチルオキシ、オクチルオキシ、ノニルオキシ、デシルオキシ、ウンデシルオキシ、ドデシルオキシ、メトキシエトキシ、2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ等、ハロゲン基としてはフルオロ、クロロ、ブロモ等、アルキルカルボン酸基としてはメチルカルボン酸、2−エチルカルボン酸、3−プロピルカルボン酸、4−ブチルカルボン酸、5−ペンチルカルボン酸、6−ヘキシルカルボン酸、7−ヘプチルカルボン酸、8−オクチルカルボン酸、9−ノニルカルボン酸、10−デシルカルボン酸、11−ウンデシルカルボン酸、12−ドデシルカルボン酸、2−エテニルカルボン酸、3−(1−プロペニル)カルボン酸、3−(2−プロペニル)カルボン酸、4−(3−ブテニル)カルボン酸、5−(4−プロペニル)カルボン酸、6−(5−ヘキセニル)カルボン酸、7−(6−ヘプテニル)カルボン酸、8−(7−オクテニル)カルボン酸、ジメチルメチルカルボン酸、2−(1−メチル)エチルカルボン酸、2−(2−メチル)エチルカルボン酸、2−(1,1−ジメチル)エチルカルボン酸、2−(2,2−ジメチル)エチルカルボン酸、3−(1−メチル)プロピルカルボン酸、3−(2−メチル)プロピルカルボン酸、3−(3−メチル)プロピルカルボン酸、3−(1,1−ジメチル)プロピルカルボン酸、3−(2,2−ジメチル)プロピルカルボン酸、3−(3,3−ジメチル)プロピルカルボン酸等、アルキルスルホン酸基としてはメチルスルホン酸、2−エチルスルホン酸、3−プロピルスルホン酸、4−ブチルスルホン酸、5−ペンチルスルホン酸、6−ヘキシルスルホン酸、7−ヘプチルスルホン酸、8−オクチルスルホン酸、9−ノニルスルホン酸、10−デシルスルホン酸、11−ウンデシルスルホン酸、12−ドデシルスルホン酸、2−エテニルスルホン酸、3−(1−プロペニル)スルホン酸、3−(2−プロペニル)スルホン酸、4−(3−ブテニル)スルホン酸、5−(4−プロペニル)スルホン酸、6−(5−ヘキセニル)スルホン酸、7−(6−ヘプテニル)スルホン酸、8−(7−オクテニル)スルホン酸、ジメチルメチルスルホン酸、2−(1−メチル)エチルスルホン酸、2−(2−メチル)エチルスルホン酸、2−(1,1−ジメチル)エチルスルホン酸、2−(2,2−ジメチル)エチルスルホン酸、3−(1−メチル)プロピルスルホン酸、3−(2−メチル)プロピルスルホン酸、3−(3−メチル)プロピルスルホン酸、3−(1,1−ジメチル)プロピルスルホン酸、3−(2,2−ジメチル)プロピルスルホン酸、3−(3,3−ジメチル)プロピルスルホン酸等が挙げられる。
【0018】
前記一般式(I)および(II)においてXはS、O、Se、Teの如きヘテロ原子、またはNR5
で表されるR5 を有する窒素原子である。前記R5はH、アルキル基、アルキルカルボン酸基、アルキルスルホン酸基、またはアリール基を表すが、アルキル基、アルキルカルボン酸基及びアルキルスルホン酸基は炭素数が1〜10であり、直鎖状であっても分岐状であってもよく、飽和であっても不飽和であっても良い。また、アリール基は炭素数が6〜10であり、置換型であっても非置換型であっても良い。更にH以外のR5はカルボニル、エーテル、エステル、チオエーテル、スルホン酸エステル、アミド、スルホン結合を任意に含んでもよい。置換アリール基の置換基の例としては、メチル、エチル等のアルキル基、メトキシ、エトキシ等のアルコキシ基、フルオロ、クロロ、ブロモ等のハロゲン原子、トリフルオロメチル、シアノ基等が挙げられる。さらに詳しくR5を例示すればH、メチル、エチル、プロピル、アリル、イソプロピル、ブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシル、メトキシエチル、エトキシエチル、メチルカルボン酸、エチルカルボン酸、3−プロピルカルボン酸、4−ブチルカルボン酸、5−ペンチルカルボン酸、6−ヘキシルカルボン酸、メチルスルホン酸、エチルスルホン酸、3−プロピルスルホン酸、4−ブチルスルホン酸、5−ペンチルスルホン酸、6−ヘキシルスルホン酸、アセトニル、アセチル、フェニル、トリル、キシリル等の基が挙げられる。
【0019】
一般式(I)で表される化学構造としてはチエニレン、フリレン、セレニレン、テルリレン、ピロリレン、N−置換ピロリレン骨格が挙げられる。また、一般式(II)で表される化学構造としてはイソチアナフテニレン、イソベンゾフリレン、イソベンゾセレニレン、イソベンゾテルリレン、イソインドリレン、N−置換イソインドリレン骨格が挙げられる。一般式(III)で表される化学構造は1,4−イミノフェニレンおよびN−置換−1,4−イミノフェニレン骨格である。
【0020】
なお本発明において、R1 〜R5及びXの記号で表される原子団は互いに完全に独立である。すなわち、異なる一般式において重複して用いられている場合も独立である。
例えば一般式(I)の繰り返し単位と一般式(II)の繰り返し単位を含む共重合体の場合、一般式(I)におけるR1 がメチル基であっても、一般式(II)におけるR1 はメチル基であっても、他の基であっても良い。
【0021】
通常、π電子共役系導電性高分子は、π電子共役構造の一部を酸化または還元するドーピングと呼ばれる操作をすることにより導電性を発現する。本発明において用いるπ電子共役系導電性高分子も、構造によりその固有の導電性が異なるため一概には規定できないが、ドーピング操作を行なって使用することが好ましい。ドーピングの方法としては通常の化学的ドーピング、電気化学的ドーピングのいずれを用いてもかまわない(「導電性高分子の基礎と応用−合成・物性・評価・応用技術−」(株)アイピーシー参照)。また、ドーピング操作を行なうことによりπ電子共役系導電性高分子化合物にはドーパントと呼ばれるイオン種が包含される。ドーパントの種類としては、よう素、臭素、塩素等のハロゲン元素イオン、PF6 -、SbF6 -、AsF6 -、SbCl6 -等の15族元素ハロゲン化物イオン、BF4 -等の13族元素ハロゲン化物イオン、硫酸、フルオロ硫酸、クロロ硫酸、トリフルオロ酢酸、トリフルオロメタンスルホン酸、硝酸、過塩素酸等のプロトン酸のアニオン、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリスチレンスルホン酸、ポリビニルスルホン酸、ポリりん酸等の高分子電解質のアニオンが挙げられる。また、これらイオン種の他に、キノン類等の電子受容体もドーパントとして使用される。
【0022】
本発明において用いられるπ電子共役系導電性高分子のうち置換基としてカルボン酸基、アルキルカルボン酸基、スルホン酸基、アルキルスルホン酸基を有するものは、いわゆる自己ドープ型ポリマーと呼ばれドーパントを添加することなく導電性を発現する化合物である。これらのπ電子共役系導電性高分子はドーピング操作を必要としないため、簡便に用いることができる点において有用である。
本発明において用いられるπ電子共役系導電性高分子は、有機溶媒および/または水に対して可溶であっても不溶であってもよいが、ミクロレベルで均一に混合するためには可溶であることが好ましい。
【0023】
本発明において用いられるπ電子共役系導電性高分子と混合する樹脂は支持体との密着性の良いものが選ばれる。支持体がゴム材料の場合、基材のゴム材料との密着性がよく、ゴム材料に追従する柔軟性を有し、かつ定着ローラーとして用いた場合に必要とされる離型性を損なわないものであり、さらに200℃までの耐熱性を有するものであれば何であってもよい。例えば、ポリウレタン、ポリエステル、アクリル樹脂、ポリアミド、エポキシ樹脂、アルキド樹脂、フェノール樹脂、ポリシロキサン等が挙げられる。さらにはこれらの樹脂以外にも、支持体の種類及び形状によってはポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン類を用いることも可能である。
【0024】
本発明の帯電防止膜形成用組成物はπ電子共役系導電性高分子及び樹脂成分が溶解または分散した液状物であり、導電性高分子と樹脂成分の溶剤への溶解または分散の方法や溶解または分散の順序は如何なる方法や順序であっても該液状物が形成されれば良い。とりわけπ電子共役系導電性高分子を樹脂成分を含む溶液に溶解または分散させる方法、あるいはπ電子共役系導電性高分子を溶剤に溶解または分散させた後、樹脂成分を含有する溶液と混合する方法が好ましい。
【0025】
樹脂成分を溶解する溶剤としては、常温もしくは適度の加温により樹脂成分を所望の濃度で溶解できる溶剤であり、π電子共役系導電性高分子を溶解または分散させる溶剤と同一もしくは均一混合可能な溶剤であればよく、特に制限されないが、例えば、水、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、アセトン、2−ブタノン、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、アセトニトリル、プロピレンカーボネート、テトラヒドロフラン、ベンゼン、トルエン、キシレン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素等が挙げられる。これらの溶剤は、単独または2種以上を混合して用いられる。樹脂成分の濃度は樹脂成分の種類、溶剤の種類、所望する帯電防止膜の膜厚によって異なり、一概には決められないが、通常0.1〜80重量%、好ましくは、1〜50重量パーセントである。樹脂成分を溶剤に溶解する際の温度は、溶剤の種類によって異なるが、通常室温〜100℃の範囲が好ましい。
【0026】
上記の樹脂成分を溶剤に溶解したものが、塗料用樹脂として市販されており、これらを用いても良い。具体例として、ポリウレタン塗料、ポリエステル塗料、アクリル塗料、アクリルシリコン塗料、アクリルエポキシ塗料、ポリアミド塗料、エポキシ塗料、アルキド樹脂塗料、フェノール樹脂塗料、シリコン塗料等が挙げられ、好適に用いることができる。好ましくは、日本ポリウレタン工業(株)製「ニッポラン」シリーズ、大日本インキ化学(株)製「ベッコゾール」シリーズ、「アクリディック」シリーズ、「バーノック」シリーズ、「スペンライト」シリーズ、「フルオネート」シリーズ、「プライオーフェン」シリーズ、「ラッカマイド」シリーズ、「エピクロン」シリーズ、鐘淵化学(株)製「カネカゼムラック」シリーズ、第一工業製薬(株)「ポリフレックス」シリーズ、日本ペイント(株)製「ニッペシリコントップ」シリーズ、日本油脂(株)製「ベルタイト」シリーズが挙げられ、さらに具体的に示せば日本ポリウレタン工業(株)製「ニッポラン5109」、「同5110」、「同5111」、「同5115」、「同5124」、「同5128」、「同5120」、「同5135」、「同5137」、「同5138」、「同5189」、「同5232」、「同5236」、「同5199」、「同5230」、「同5233」、「同5195」、大日本インキ化学(株)製「ベッコゾールA−7600」、「同M−7612−53」、「同47−623」、「同M−7605−55」、「同M−7605−55MV」、「同M−7605−55HV」、「同M−7608−55」、「同M−7611−55」、「同M−7615−60」、「同M−7630−80」、「同M−7631−80」、「同M−7652−55」、「アクリディックA−405」、「同A−409」、「同46−544」、「同A−433」、「同A−418」、「同52−101」、「同54−172−60」、「同A−430−60」、「同A−412−70S」、「同A−413−70S」、「同A−606−50S」、「同A−801」、「同A−801−P」、「同56−719」、「同AU−1042」、「同A−832」、「同48−261」、「同A−807」、「同A−817」、「同55−129」、「同BU−955」、「同A−826」、「同A−825−HV」、「同DU−589」、「同A−808」、「同A−809」、「同56−898」、「同A−823」、「同FU−409」、「同A−814」、「同A−810−45」、「同A−834」、「同52−666」、「同52−668」、「同44−127」、「同A−811」、「同52−614」、「同A−911」、「同A−914」、「同A−915」、「フルオネートK−700」、「同K−702」、「同K−703」、「同K−704」、「プライオーフェン5010」、「同5030−40K」、「同TD−447」、「ラッカマイドN−153−IM−65」、「同TD−966」、「同TD−966−H」、「同TD−973」、「同B−201」、「同TD−961」、「同TD−971」、「同15−202」、「バーノックDM−651」、「同DM−652」、「同DM−653」、「同9−434−2」、「同DM−691−IM」、「同DM−675」、「同DM−677」、「同12−406」、「同16−416」、「同16−411」、「同DF−407」、「同18−472」、鐘淵化学(株)製「カネカゼムラック」、第一工業製薬(株)製「ポリフレックスMT」、「同SL−13」、「同MH」、「同UF」、「同WP−1」、「同WP−2」、「同WP−4」、「同WP−5」、「同WP−7」、「同WP−8」、「同WP−9」、「同90H」、「同FL−83」、「同FL−87」、「同NS」、「同NR」、「同NW」、「同PR」、「同PR−42」、「同NY−35」、「同NY−40U」、「同NY−20」、「同M−50」、「同BD−1」、「同BD−2」、「同N−100」、「同N−120」が挙げられる。
本発明のπ電子共役系導電性高分子を樹脂成分を含む溶液に溶解または分散する場合、π電子共役系導電性高分子の混合割合は、π電子共役系導電性高分子の種類や樹脂の種類、所望する膜の帯電防止性能によって異なり、一概には決められないが、通常樹脂成分に対して1〜20重量%である。
【0027】
また、π電子共役系導電性高分子を溶剤に溶解または分散させた後、樹脂成分を含む溶液と混合する場合に用いられる、π電子共役系導電性高分子を溶解または分散させる溶剤としては、常温もしくは適度の加温によりπ電子共役系導電性高分子を所望の濃度で溶解または分散できる溶剤であり、樹脂成分を溶解する溶剤と同一もしくは均一混合可能な溶剤であればよく、特に制限されないが、例えば、水、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、アセトン、2−ブタノン、メタノール、エタノール、イソプロパノール、エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、アセトニトリル、プロピレンカーボネート、テトラヒドロフラン、ベンゼン、トルエン、キシレン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素等が挙げられる。これらの溶剤は、単独または2種以上を混合して用いられる。π電子共役系導電性高分子の濃度はπ電子共役系導電性高分子の種類、溶剤の種類によって異なり、一概には決められないが、通常0.1〜80重量%、好ましくは、5〜50重量パーセントである。π電子共役系導電性高分子を溶剤に溶解する際の温度は、溶剤の種類によって異なるが、通常室温〜150℃の範囲が好ましい。
【0028】
本発明の帯電防止膜形成用組成物の製造において、樹脂成分の溶剤への溶解、π電子共役系導電性高分子の樹脂成分を含む溶液への溶解または分散、π電子共役系導電性高分子の溶剤への溶解または分散、π電子共役系導電性高分子の溶液または分散液と樹脂成分を含む溶液との混合の方法は、均一な液状物が得られるならば如何なる方法であってもよいが、例えば、機械的撹拌装置、マグネチックスターラー、ボールミル、ペイントシェーカー、乳鉢等の通常の混合装置を用いる方法が挙げられる。
【0029】
上述のようにして製造した帯電防止膜形成用組成物を用いて帯電防止膜を形成し、帯電防止膜を有する支持体を製造するには、支持体に該組成物を塗布もしくは吹き付けを行うかまたは該組成物中に支持体を浸漬した後に、溶剤を除去すれば良い。
支持体がゴムの場合を例に取ると、帯電防止膜形成用組成物のゴム材料表面への塗布方法としては、対象とするゴム材料の形態および目的とする膜厚に応じて通常のディップコート、バーコート、アプリケーターによるコーティング、回転塗布、刷毛塗り、吹き付け等を用いることができる。また、塗膜の乾燥および硬化方法は、用いる樹脂組成物・塗料の種類により異なるが、短時間で乾燥・硬化を行なうには60〜150℃の加熱を行なうのがよい。また、物性に対して著しい悪影響を与えなければ、必要に応じて適当な硬化剤を添加してもよい。
【0030】
本発明の帯電防止膜の形成方法は、上述の溶剤を含む帯電防止膜形成用組成物を用いる塗布もしくは吹き付けあるいは浸漬による方法のみでなく、π電子共役系導電性高分子と樹脂成分とを含む帯電防止膜形成用組成物を帯電防止を施す支持体表面に加熱圧着する方法であっても良い。例えばかかる導電性高分子と樹脂成分とを溶解もしくは溶融混合し、膜状に形成した帯電防止膜形成用組成物を支持体表面に加熱圧着する方法が挙げられる。
【0031】
本発明の帯電防止膜の膜厚は、目的とする表面抵抗値および基材となる支持体の材質すなわち機械的・電気的特性により異なるので一概に限定できないが、好ましくは0.1〜500μmであり、さらに好ましくは1〜100μmである。膜厚が0.1μmより小さい場合、基材の物性に左右され易く特性の制御が困難となる。また、膜厚が500μmより大きい場合、均一な膜厚の皮膜を形成することが困難となり易い。
【0032】
本発明の帯電防止膜の表面抵抗値は好ましくは1×109 〜1×1013Ω/□である。支持体が定着ローラーや転写ローラーの場合、表面抵抗値が1×109Ω/□未満であると紙の静電気を逃がし、トナーがのらない。また、1×1013Ω/□より大きいとトナーの電荷と反発してトナーがローラーに移らない、あるいははじかれるということがある。
【0033】
本発明において用いられる支持体としては制限はないが、熱可塑性高分子成型体や熱硬化性高分子成型体などの高分子成型体や、ゴム弾性を有する成型体などが挙げられる。その形状はローラー、ベルト、リング、チューブ、球体、平板等の他、個々の用途に応じたどの様な形状であっても良い。
定着用ローラーとして用いるゴム材料を例にとると、その材質は、定着用ローラーとして使用される場合に要求される硬度、ニップ性等の機械的特性およびトナーの加熱定着に必要な200℃までの耐熱性を満足するものであれば特に制限はなく、例えばブチルゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、SBR、NBR、EPR、シリコンゴム、弗素ゴム、ウレタンゴム等のゴム材料が挙げられる。これらのゴム材料には、機械的特性、電気的特性等の諸特性を制御するため添加剤を含んでいてもかまわない。なお、表面抵抗値を安定して所望の109 〜1012Ω/□とするには、基材となるゴム材料の固有の表面抵抗値が、1×109Ω/□以上であることが好ましい。 本発明の支持体として用いることの出来るローラーとしては、定着用ローラーの他、転写ローラー、クリーニングローラー、帯電ローラーなどの画像形成装置用ローラーや、コピー紙の搬送ローラーなどが挙げられる。
【0034】
本発明のπ電子共役系導電性高分子を含む樹脂組成物でコーティングしたゴム材料は、電子伝導性のπ電子共役系導電性高分子を用いることにより湿度による表面抵抗値の変動が小さいという特徴を有する。その変動は湿度5%〜80%の範囲において1桁以内である。
【0035】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明する。しかし、本発明の技術的範囲はこれらの実施例によって限定されるものではない。
[実施例1]
ポリウレタン塗料「ニッポラン5137」(日本ポリウレタン工業(株)製)100gと、予め水12.0gを添加・混合しておいたポリ(1,3−イソチアナフテニレン−5−スルホン酸)3.0gとをボールミルを用いて混合した(80rpm,1時間)。
上記の方法により得られた塗料組成物を表面抵抗値が3×1015Ω/□の絶縁性のブチルゴム板(10×10cm)上に、膜厚が10μmになるようバーコーターを用いて塗布した。塗膜の表面抵抗値は高湿度下(85%)において1×1011Ω/□、低湿度下(10%)において6×1011Ω/□であった(表面抵抗はシシド静電気社製メガレスタ:HRプローブにて測定)。
【0036】
[実施例2]
ポリ(1,3−イソチアナフテニレン−5−スルホン酸)の添加量を1.5gおよび水の量を7.5gとした以外、調製方法、塗布方法は実施例1と同じ。表面抵抗値は高湿度下において3×1012Ω/□、低湿度下において8×1012Ω/□であった。
【0037】
[参考例1]
π電子共役系導電性高分子としてポリ[2,5−チエニレン−3−(3−プロパンスルホン酸)]を用いた以外、添加量、調製方法、塗布方法は実施例1と同じ。表面抵抗値は高湿度下において1×1012Ω/□、低湿度下において7×1012Ω/□であった。
【0038】
[実施例3]
π電子共役系導電性高分子としてHClでドーピングしたポリ(1,4−イミノフェニレン)を用い、実施例1における水をN−メチル−2−ピロリドンとした以外、添加量、調製方法、塗布方法は実施例1と同じ。表面抵抗値は高湿度下において2×1010Ω/□、低湿度下において9×1010Ω/□であった。
【0039】
[参考例2]
π電子共役系導電性高分子としてよう素をドーパントとして含むポリ(3−オクチル−2,5−チエニレン)を用い、実施例1における水を酢酸エチルとした以外、添加量、調製方法、塗布方法は実施例1と同じ。表面抵抗値は高湿度下において8×1011Ω/□、低湿度下において3×1012Ω/□であった。
【0040】
[参考例3]
π電子共役系導電性高分子として過塩素酸アニオンをドーパントとして含むポリ(N−オクチル−2,5−ピロリレン)を用い、実施例1における水をN−メチル−2−ピロリドンとした以外、添加量、調製方法、塗布方法は実施例1と同じ。表面抵抗値は高湿度下において6×1010Ω/□、低湿度下において3×1011Ω/□であった。
【0041】
[実施例4]
ポリウレタン塗料として「ニッポラン5120」を用い、膜厚を20μmとした以外、添加量、調製方法、塗布方法は実施例1と同じ。表面抵抗値は高湿度下において8×1010Ω/□、低湿度下において4×1011Ω/□であった。
【0042】
[実施例5]
アクリル樹脂塗料として「アクリディックA−606−50S」(大日本インキ化学(株)製)100g、π電子共役系導電性高分子としてポリ(1,3−イソチアナフテニレン−5−スルホン酸)2.50g(実施例1と同様に予め水7.50gを添加しておく)を用いた以外、調製方法、塗布方法は実施例1と同じ。表面抵抗値は高湿度下において1.5×1011Ω/□、低湿度下において4×1011Ω/□であった。
【0043】
[実施例6]
アクリルシリコーン樹脂として「カネカゼムラック」(鐘淵化学(株)製)100gを用いた以外、添加量、調製方法、塗布方法は実施例1と同じ。表面抵抗値は高湿度下において2×1012Ω/□、低湿度下において6.5×1012Ω/□であった。
【0044】
[実施例7]
ポリアミド樹脂として「ラッカマイドTD−966−H」(大日本インキ化学(株)製)100gを用い、π電子共役系導電性高分子としてポリスチレンスルホン酸をドーパントとするポリ(1,4−イミノフェニレン)6.00g(実施例1と同様に予め水15.00gを添加しておく)を用いた以外、調製方法、塗布方法は実施例1と同じ。表面抵抗値は高湿度下において7×109Ω/□、低湿度下において2×1010Ω/□であった。
【0045】
[実施例8]
実施例1において作製した組成物を用いて、複写機「PC−10」(キヤノン(株)製)の定着器ローラーに膜厚約20μmの帯電防止膜を形成した。2000枚の通紙印刷テストを行った結果、未処理時に生じたオフセット現象は見られなかった。また紙の巻き付き等の問題も生じなかった。
【0046】
[実施例9]
樹脂成分としてアクリルシリコーン塗料「カネカゼムラック」(鐘淵化学(株)製)100g、π電子共役系導電性高分子としてポリ(1,3−イソチアナフテニレン−5−スルホン酸)2.50g(予め水7.50gを添加し混合しておく)を用い、両者をボールミルを用いて混合した(80rpm、1時間)。支持体として熱可塑性樹脂であるポリアセタール製の板(10×10cm、表面抵抗値:2×1014Ω/□)を用い、得られた組成物を支持体上に膜厚が20μmとなるようアプリケーターを用いて塗布した。塗膜を100℃で1時間加熱乾燥した後、表面抵抗値を測定したところ高湿度下において4×1010Ω/□、低湿度下において9×1010Ω/□であった。
【0047】
[実施例10]
ポリウレタン樹脂として「ニッポラン5111」を用いた以外、添加量、調製方法は実施例1と同じ。支持体として熱硬化性樹脂であるメラミン樹脂製板(10×10cm、表面抵抗値:8×1015Ω/□)を用い、得られた組成物を支持体上に膜厚が10μmとなるようアプリケーターを用いて塗布した。塗膜を120℃で2時間加熱乾燥した後、表面抵抗値を測定したところ高湿度下において8×1010Ω/□、低湿度下において3×1011Ω/□であった。
【0048】
[実施例11]
ポリウレタン樹脂「Tuftane」(Goodrich Chemical社製)にポリ(1,3−イソチアナフテニレン−5−スルホン酸)を3wt%を添加し溶融混練した後、押出法により膜厚50μmのフィルムに成形した。得られたフィルムでウレタンゴム板(10×10cm、厚さ0.3cm、表面抵抗値:1×1015Ω/□)を覆い、加熱プレス装置を用いてフィルムを圧着した。表面抵抗値を測定したところ高湿度下において7.5×1011Ω/□、低湿度下において1×1012Ω/□であった。
【0049】
[実施例12]
樹脂成分としてポリアミド:ナイロン12(フィルムグレード)を用い、ポリ(1,3−イソチアナフテニレン−5−スルホン酸)を5wt%を添加し、実施例11と同様に厚さ50μmのフィルムを作製した。得られたフィルムを実施例11と同様の方法によりウレタンゴム板表面に加熱圧着した。表面抵抗値は高湿度下において3×1011Ω/□、低湿度下において1×1012Ω/□であった。
【0050】
[実施例13]
樹脂成分としてポリプロピレン(フィルムグレード)を用い、ポリ(1,3−イソチアナフテニレン−5−スルホン酸)を5wt%添加し、実施例11と同様に厚さ50μmのフィルムを作製した。得られたフィルムを実施例11と同様の方法によりウレタンゴム板表面に加熱圧着した。表面抵抗値は高湿度下において2.5×1012Ω/□、低湿度下において6×1012Ω/□であった。
【0051】
【発明の効果】
本発明による帯電防止処理を施した支持体を画像形成装置の定着部材として用いることにより、オフセット現象を回避することができ、しかも湿度依存性が小さいため使用環境に左右されることがなくなる。また、定着部材表面の帯電防止処理層が均一であることから、きわめて精密な画像の形成が可能となる。さらには、既存の定着部材用支持体表面に被膜を形成するのみで帯電防止効果が得られるので、新たな材料設計の必要がなく効率的かつ経済的である。
Claims (11)
- π電子共役系導電性高分子、樹脂成分及び有機溶剤を含む帯電防止膜形成用組成物であって、有機溶剤を除去した場合のπ電子共役系導電性高分子及び樹脂成分含有膜の表面抵抗値が1×109〜1×1013Ω/□であり、π電子共役系導電性高分子が一般式(II)、
- π電子共役系導電性高分子、樹脂成分及び溶剤を含む帯電防止膜形成用組成物であって、π電子共役系導電性高分子が一般式(II)、
- 樹脂成分がポリウレタン、ポリエステル、アクリル樹脂、ポリアミド、エポキシ樹脂、アルキド樹脂、フェノール樹脂、及びポリシロキサンのうちの少なくとも一種である請求項1又は2に記載の帯電防止膜形成用組成物。
- π電子共役系導電性高分子及び樹脂成分を含有する膜であって、π電子共役系導電性高分子が一般式(II)、
- 樹脂成分がポリウレタン、ポリエステル、アクリル樹脂、ポリアミド、エポキシ樹脂、アルキド樹脂、フェノール樹脂、及びポリシロキサンのうちの少なくとも一種である請求項4に記載の帯電防止膜。
- 請求項4又は5に記載の帯電防止膜を有することを特徴とする支持体。
- 帯電防止膜を有しない場合と比較して表面抵抗値が小さいことを特徴とする請求項6に記載の帯電防止膜を有する支持体。
- 支持体が高分子成型体である請求項6又は7に記載の帯電防止膜を有する支持体。
- 支持体が熱可塑性高分子成型体、熱硬化性高分子成型体またはゴム弾性を有する成型体である請求項6又は7に記載の帯電防止膜を有する支持体。
- 請求項4又は5に記載の帯電防止膜を有することを特徴とするローラー。
- 請求項4又は5に記載の帯電防止膜を有することを特徴とする画像形成装置用定着ローラー。
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