JP3628656B2 - シリンダー錠 - Google Patents
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Description
【発明が属する技術分野】
本発明は自動販売機や自動車、建物等に使用されるシリンダー錠に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ピンタンブラ錠機構を使用したシリンダー錠では、固定本体にロータを回転可能に収容し、固定本体の駆動ピン収容孔とロータのタンブラピン収容孔に駆動ピンとタンブラピンを収容し、タンブラピン用バネによって駆動ピンをロータの方向に付勢し、ロータの鍵孔から鍵を抜き取った施錠状態において、駆動ピンの先端部をタンブラピン収容孔に係合させることによって、ロータを固定本体に対して回転不能に拘束している。
【0003】
最近、家屋や自動販売機などではピッキング用具によるシリンダー錠の抉じ開け被害が頻発している。
ピッキング用具は針金状や細い帯板状の部材であり、鍵孔内に突出しているタンブラピンの先端部を押し上げて、駆動ピンの先端部を固定本体の駆動ピン収容孔に押し戻すものであり、ロータに解錠方向への回転テンションをかけながら、鍵孔に沿って前後方向に配列された複数のタンブラピンと駆動ピンのセットに対して前記押し上げ操作を何回も試行する。そして、全部のセットについて、タンブラピンと駆動ピンの接触面が固定本体とロータの接触面に合致したとき、ロータの回転拘束が解除され、ロータは解錠方向に回される。
【0004】
このようなピッキング用具による不正解錠に対して種々の防護策が採用されているが、通常の鍵の断面の外周輪郭のプロフィールは矩形であり、これに対応してロータの鍵孔の内周輪郭のプロフィールも矩形であり、タンブラピンの配列も概して規則的であり、配列形態の多くは既に知られれているか、公知のものから類推することができるため、熟練した盗犯者がピッキング用具の差し込みと引き掻き操作を何度も繰り返すうちに、遅かれ早かれ察知されることになる。その結果、ピッキング用具によってそのまま不正解錠されたり、繰り返し使用のために合鍵を不正に複製されることになる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
したがって本発明の課題は、曲面部を含むプロフィールを有するため鍵の不正複製が困難であり、また、タンブラピンの配列形態を把握することが困難であり、タンブラピンを探り当てて解錠位置に押し戻してもその保持が困難であるため、セキュリティーが大幅に改善されたシリンダー錠を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明の要旨は、タンブラによって固定本体に対して回転不能に拘束されるロータを、軸方向に沿って前ロータと後ロータに分割構成して、前ロータから後ロータへの回転テンションの伝達を遮断し、鍵の横断面の外周輪郭を曲面を含んだプロフィールに形成し、前ロータ及び後ロータの各鍵孔の横断面の内周輪郭を鍵の横断面に符合した曲面を含んだプロフィールに形成し、鍵の前記プロフィールの曲面部にキーコード用凹部を形成し、前ロータ及び後ロータの各鍵孔の前記プロフィールの曲面部にタンブラ収容孔を開口させ、鍵を前ロータの鍵孔と後ロータの鍵孔に一連に挿入して、前ロータと後ロータを一体に回転させるようにしたシリンダー錠において、
前ロータの後端面に断面が略半円形状の突起部を軸方向に形成し、後ロータの前端面に断面が略半円形状の突起部を軸方向に形成し、両突起部を互いに対面当接させることによって、前ロータと後ロータを固定本体に軸方向に移動不能に収納するとともに、前ロータの後端面と後ロータの前端面の間に、ピッキング用具の先端部が入り込む断面略半円形状のダミー空所を形成したことである。
【0007】
【発明の作用】
本発明のシリンダー錠では、正規の鍵を前ロータの鍵孔と後ロータの鍵孔に挿入すると、前ロータと後ロータに収容されたタンブラが所定位置まで移動して、固定本体に対する前ロータと後ロータの回転拘束がいずれも解除される。そこで、鍵によって前ロータと後ロータを所定方向に回すと、後ロータに連結した止め金板が解錠位置に回転させられる。
【0008】
盗犯者がピッキング用具によって前ロータに解錠方向への回転テンションをかけながら、鍵孔に沿って配列された複数のタンブラに対して押し上げ操作を何回も試行し、その結果、全部のタンブラが非作動位置に移動したとき、固定本体に対する前ロータの回転拘束が解除され、ロータは解錠方向に回される。
【0009】
しかしながら、このように前ロータが回転可能となっても、前ロータから後ロータへの回転モーメントの伝達を遮断されているため、後ロータ側にあるタンブラがピッキンング用具によって非作動位置に移動させられたとしても、後ロータは何ら回転することがなく、後ロータは回転拘束された状態に堅持されている。
【0010】
また、前ロータ及び後ロータの各鍵孔の横断面の内周輪郭のプロフィールと、鍵の横断面外周輪郭のプロフィールには曲面部が含まれており、このプロフィールは一般の合鍵複製ショップでは切削加工できないものであるため、合鍵の不正複製による不正解錠に対して強くなる。
そして、鍵の前記プロフィールの曲面部にキーコード用凹部を形成し、これに対応した鍵孔の前記プロフィールの曲面部にタンブラ収容孔を開口させてあるため、うまく探り当ててピッキング用具の先端部によってタンブラを押し込めても、ピッキング用具が前記プロフィールの曲面部に当接して滑ってしまうことになり、通常の矩形断面の鍵孔になれた盗犯者は、ピッキング用具の予期しない動きと感触の違いに当惑することになる。そのため、ピッキングに失敗したり、ピッキングに余分な時間を費やすことになり、盗犯が発見される危険性が高まるため、途中で犯行を中断し、現場を立ち去ることになる。
【0011】
さらにまた、前ロータの後端面の突起部が後ロータの前端面の突起部に対面当接しているため、盗犯者が後ロータにも回転テンションをかけようとしたとき、ピッキング用具の先端部が前記突起部によって形成されたダミー空所に入り込んでしまうため、ピッキング操作を続行することができない。
【0012】
【発明の実施の形態】
図示した実施例では、固定本体1に軸方向に前後に収容された前ロータ2Aと後ロータ2Bにはピンタンブラ錠機構が組み込まれている。固定本体1の駆動ピン収容孔3と前ロータ2A,後ロータ2Bのタンブラピン収容孔4A,4Bには、駆動ピン5A,5Bとタンブラピン6A、6Bが収容され、タンブラピン用バネ7A、7Bによって駆動ピン5A、5Bが前ロータ2Aと後ロータ2Bの方向に付勢されている。前ロータ2Aの鍵孔8Aと後ロータ2Bの鍵孔8Bから鍵9を抜き取った施錠状態において、駆動ピン5A、5Bの先端部がタンブラピン収容孔4A、4Bに係合することによって、前ロータ2Aと後ロータ2Bが固定本体1に対して回転不能に拘束される。
【0013】
前ロータ2Aの後部に形成された環状受溝10と、固定本体1の中間部内面に形成された環状受溝11には、両者にまたがって抜け止め具12が係合しており、前ロータ2Aの前部外周の張り出し鍔部13は、固定本体1の前部内周の環状肩部14に当接している。これらのために前ロータ2Aは固定本体1からの抜脱を阻止されている。
後ロータ2Bの中間部に形成された環状受溝15に嵌められた抜け止め具16は、固定本体1の後部端面に当接している。後ロータ2Bの中間部外周の肩部17は、固定本体1の後部内周の環状鍔部18に当接している。これらのために後ロータ2Bは固定本体1からの抜脱を阻止されている。
【0014】
後ロータ2Bの角軸部19には回転角度規制板20と止め金板21が相対回転不能に嵌められており、ねじ軸部22に嵌めたナット23によって後ロータ2Bに取り付けられている。回転角度規制板20の外周の一部は切り欠きされており、固定本体1の後部端面の規制突起24と係合することによって、後ロータ2Bの回転角度を90度に規制している。
駆動ピン5A、5Bとタンブラピン6A、6Bの付勢用バネ7A、7Bは圧縮コイルバネで構成されている。バネ受板25は、固定本体1の外周部に形成した軸方向の受溝26に挿入固定されている。
【0015】
鍵孔8A、8Bの横断面の内周輪郭と鍵9の横断面の外周輪郭の各プロフィールは、互いに直角をなす二つの直線状面辺を二組と、直線状2辺面を連絡する外向きに凸となった二つの曲面辺とで構成されている。
タンブラピン6A、6Bの先端部が入り込むキーコード用凹部27は、前記曲面辺の部分に3個形成され、前記直線状面辺の部分に1個形成されている。前記曲面辺の部分に形成された3個のうちの2個は、鍵9の横断面の縦方向中心線に対して45度及び135度に傾斜して同一断面内に形成されており、残りの1個は、前記鍵の縦方向中心線に対して90度に傾斜させて、前記2個のある断面から長さ方向に一定距離位置をずらせた別の断面内に形成されている。
これら3個のキーコード用凹部27の中心線の延長は、前記曲面辺の曲率中心にて交わっている。直線状面辺の部分に形成されたキーコード用凹部27の中心線の延長も前記曲率中心に交わっている。
この鍵9は上下反転しても挿入使用できるリバース型の鍵であるため、鍵9の別の側面(曲面辺と直線状面辺)にも同一配列で同じ個数のキーコード用凹部27が形成されている。
【0016】
前ロータ2Aの後端面の突起部28は、断面が半円よりも若干小さい略半円形状に形成され、後ロータ2Bの前端面の突起部29は、断面が半円よりも若干小さい略半円形状に形成され、両突起部28,29は軸方向において互いに対面している。
なお、本発明はディスクタンブラ錠機構を使用したシリンダー錠に対しても有効に適用することができる。
【0017】
【発明の効果】
以上のように本発明では、前ロータの後端面に断面が略半円形状の突起部を軸方向に形成し、後ロータの前端面に断面が略半円形状の突起部を軸方向に形成し、両突起部を互いに対面当接させることによって、前ロータの後端面と後ロータの前端 面の間に、ピッキング用具の先端部が入り込む断面略半円形状のダミー空所を形成してあるため、前ロータが回転したにもかかわらず後ロータに連結した止め金板が解錠位置に移動しないという異変に気づいた盗犯者が、後ロータに回転テンションをかけようとしても、ピッキング用具の先端部が前記ダミー空所に入り込んでしまうため、ピッキング操作を続行することができず、防護機能が一段と向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例に係るピンタンブラ錠機構を内蔵したシリンダー錠の正面図であり、施錠状態を示している。
【図2】図1のシリンダー錠の右側面図である。
【図3】図1のA−A線断面図である。
【図4】図1のB−B線断面図である。
【図5】鍵挿入状態における図2のC−C線断面図である。
【図6】鍵挿入状態における図2のD−D線断面図である。
【図7】鍵挿入状態における図2のE−E線断面図である。
【図8】鍵挿入状態における図2のF−F線断面図である。
【図9】図1のシリンダー錠に使用する鍵の右側面図である。
【図10】図9の鍵の背面図である。
【図11】図9の鍵の平面図である。
【図12】図9の鍵の横断面図である。
【図13】図9の鍵の別の部位における横断面図である。
【図14】図1のシリンダー錠に使用した前ロータの背面図である。
【図15】図1のシリンダー錠に使用した後ロータの正面図である。
【符号の説明】
1 固定本体
2 ロータ
3 駆動ピン収容孔
4 タンブラピン収容孔
5 駆動ピン
6 タンブラピン
7 タンブラピン用バネ
8 鍵孔
9 鍵
27 キーコード部
Claims (1)
- タンブラによって固定本体に対して回転不能に拘束されるロータを、軸方向に沿って前ロータと後ロータに分割構成して、前ロータから後ロータへの回転テンションの伝達を遮断し、鍵の横断面の外周輪郭を曲面を含んだプロフィールに形成し、前ロータ及び後ロータの各鍵孔の横断面の内周輪郭を鍵の横断面に符合した曲面を含んだプロフィールに形成し、鍵の前記プロフィールの曲面部にキーコード用凹部を形成し、前ロータ及び後ロータの各鍵孔の前記プロフィールの曲面部にタンブラ収容孔を開口させ、鍵を前ロータの鍵孔と後ロータの鍵孔に一連に挿入して、前ロータと後ロータを一体に回転させるようにしたシリンダー錠において、
前ロータの後端面に断面が略半円形状の突起部を軸方向に形成し、後ロータの前端面に断面が略半円形状の突起部を軸方向に形成し、両突起部を互いに対面当接させることによって、前ロータと後ロータを固定本体に軸方向に移動不能に収納するとともに、前ロータの後端面と後ロータの前端面の間に、ピッキング用具の先端部が入り込む断面略半円形状のダミー空所を形成したことを特徴とするシリンダー錠。
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