JP3628089B2 - シャトルコック - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、バトミントンなどで使用するシャトルコックに関する。さらに詳しくは、スカート部を強化し、耐久性を向上させたシャトルコックに関する。
【0002】
【従来の技術】
バトミントンに使用するシャトルコックのスカート部は、打撃後の飛行性の点から水鳥、陸鳥等の天然の羽根が用いられている。すなわち、図2に示す通り、シャトルコック20の先端部11の内部は直径25〜28mmの半円球のコルク台で形成され、表面は皮革で覆われている。12は皮革の端部円周部を巻き付けている樹脂テープであり、先端部11とともにシャトル部13を形成している。前記コルクの台の上に14〜16枚の例えば鵞鳥の羽根16が円形に植設されている。羽根16は軸部14と羽根部15とから形成されている。また軸部14には2周のくくり糸17が結び付けられ、その周囲に接着剤樹脂が付与されている。羽根16とくくり糸17でスカート部18が形成されている。
【0003】
この天然の羽根はラケットによる打撃によって壊れやすく、壊れると飛行性が変わるので、バトミントン競技では長時間使用できないという問題があった。
【0004】
従来、この問題を解決するため、スカート部の羽根の裾をカットして軸部を長くし、長くなった軸部の部分にくくり糸を結び付ける提案がある(実開昭59−26676号公報)。また、ブチラール樹脂やナイロン樹脂などの熱可塑性ポリマーをくくり糸とその周囲に付与する提案もある(特開昭63−21078号公報、特開平7−299174号公報)。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記実開昭59−26676号公報で提案されているシャトルコックは、羽根の長さを短くしているので、打撃後の飛行性が良すぎてバトミントン公式競技に使用できないという問題がある。また、特開昭63−21078号公報及び特開平7−299174号公報で提案されているシャトルコックも、強度が十分でなく、とくに軸部の破損が大きく、さらに耐久性を高くすることが要請されていた。
【0006】
本発明は、前記従来の問題を解決するため、特定のくくり糸と接着剤を用い、かつくくり糸の連結回数を多くすることにより、スカート部を強化し、耐久性を向上させたシャトルコックを提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するため、本発明のシャトルコックは、先端の台上に複数本の羽根が円形に植設されてスカート部が形成されたシャトルコックにおいて、前記スカート部の羽根の軸部の台上からの距離が26mmまでの間に少なくとも3周ポリビニルアルコール系繊維の紡績糸からなるくくり糸を結び付け、前記くくり糸の表面及びスカート部の羽根の軸部にニトロセルロース系樹脂を主成分として含む接着剤を付与して固定し、かつシャトルコック全体の重量を4.73〜5.50gの範囲にしたことを特徴とする。前記構成としたことにより、スカート部を強化し、耐久性を向上することができる。すなわち、くくり糸で3周以上羽根の軸部を結び付けているので、強度が高く、壊れにくいものとすることができる。とくに軸部の破損を防ぐことが可能になる。これは、羽根の比較的低い位置に3周以上のくくり糸が連結され、しかも接着剤によって固められているので、コック部分に激しい打撃による衝撃を受けても、羽根の軸部は歪まず、その結果損傷もなく、また羽根の先端部分への破損も波及しにくくなる。
【0008】
また、ポリビニルアルコール系繊維の紡績糸を用いているので、軽量で強力を高くすることができる。また、紡績糸は短繊維を用いているので、適当な嵩高性と引っ掛け性があり、羽根の軸部を縛りやすく、固定一体化しやすい。また、ニトロセルロース系樹脂を主成分として含む接着剤を用いているので、接着一体化に優れる。すなわち、ニトロセルロース系樹脂を主成分として含む接着剤は、ポリビニルアルコール系繊維の紡績糸と親和性がよく、接着性が良好となる上、ニトロセルロース系樹脂を主成分として含む接着剤は、天然の羽根とも親和性がよく、接着性が良好である。この結果、ニトロセルロース系樹脂を主成分として含む接着剤を用いると、さらに強度が高く耐久性のあるシャトルコックを得ることができる。
【0009】
また、スカート部の羽根の軸部の台上からの距離が26mmまでの部分にくくり糸を結び付けるようにしたのは、従来の公式シャトルコックの長さに合わせ、飛行性を従来のものと変わらないものとするためである。
【0010】
そして、接着剤がスカート部の羽根の軸部にも付与されていることにより、さらに耐久性を上げることができる。
【0011】
また前記構成においては、くくり糸が台上からの距離11〜26mmまでの間に実質的に等間隔に結び付けられていることが好ましい。このようにすると、飛行性などを変えることなく耐久性を上げることができる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下図面を用いて本発明の一実施の形態を説明する。図1は本発明の一実施形態である。図1において、1はシャトルコック10の先端部で、内部は直径25〜28mmの半円球のコルク台で形成され、表面は皮革で覆われている。2は皮革の端部円周部を巻き付けている樹脂テープであり、先端部1とともにシャトル部3を形成している。前記コルクの台の上に14〜16枚の例えば鵞鳥の羽根6が円形に植設されている。羽根6は軸部4と羽根部5とから形成されている。また軸部4には3周以上のくくり糸7が結び付けられ、その周囲に接着剤樹脂が付与されている。くくり糸は、コルクの台上からの距離(L1)が11mm以上、同(L2)が26mm以下の距離の範囲に実質的に等間隔に結び付けられていることが好ましい。羽根6とくくり糸7でスカート部8が形成されている。羽根部5の上から見た最大直径は58〜68mmの範囲であり、横方向から見たスカート部8の長さは64mm〜70mmの範囲である。前記において、スカート部8の羽根の軸部4の台上からの距離が26mmまでの間に少なくとも3周ポリビニルアルコール系繊維の紡績糸からなるくくり糸を結び付け、前記くくり糸の表面にニトロセルロース系樹脂を主成分として含む接着剤を付与して固定し、かつシャトルコック全体の重量を4.73〜5.50gの範囲にしたのである。この重量は公認球に合わせたものである。
【0013】
前記においては、くくり糸は例えばポリビニルアルコール短繊維からなる紡績糸を用いる。平均繊維長は例えば38mm(短紡)、76mm(長紡)である。紡績糸はS撚20メートル番手の単糸の3子撚糸(20s/1 ×3)、同番手の単糸の4子撚糸(20s/1 ×4)などである。
【0014】
強化用の樹脂としては、窒素含有量11.7〜12.2重量%、数平均重合度が40〜450のニトロセルロースを主成分とし、これに次の副成分を配合したものを使用するのが好ましい。すなわち、加工樹脂としてロジンエステル、マレイン酸変性ロジンエステルなど、合成樹脂としてアルキッド樹脂、アミノ樹脂、アクリル樹脂、ビニル樹脂など、可塑剤としてフタル酸ジブチル、フタル酸ジオクチルなど、主溶剤として酢酸エステル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、グリコールケトンなど、助溶剤としてエチルアルコール、ブチルアルコールなど、希釈剤としてトルエン、キシレンなどを使用する。
【0015】
【実施例】
以下実施例を用いて本発明をさらに具体的に説明する。
【0016】
(実施例1,比較例1)
半円玉部が合成皮革で接着、被覆されている天然コルクの台上に、16本の鵞鳥の羽根が円形を植設した。このものの重量は4.707gであった。次いで、ポリビニルアルコール短繊維を用いた紡績糸の4子撚糸(20s/1 ×4)で、図1に示す通り、コルクの台上からの距離が各々11mm、17.5mm及び24mmの位置の3か所の羽根軸部をくくり糸で連結して固定した。このものの重量は4.877gであった。羽根軸部並びにくくり糸周辺部をスプレー及び刷毛でニトロセルロース接着剤をコーティングし、乾燥してスカート部を形成した。ニトロセルロース接着剤は、窒素含有量11.7〜12.2重量%、数平均重合度が200のニトロセルロースを30重量%と、これに加工樹脂としてロジンエステルを3重量%、合成樹脂としてアルキッド樹脂を5重量%、可塑剤としてフタル酸ジブチルを7重量%、主溶剤として酢酸エステルを25重量%、助溶剤としてエチルアルコールを5重量%、希釈剤としてトルエン25重量%を混合した均一組成物を使用した。最後に合成皮革の端部周囲を緑色の樹脂テープで巻き付けて製品を得た。樹脂組成物の付与量(乾燥重量)は0.258g、樹脂テープの重量は0.032gであった。得られたシャトルコック製品の総重量は5.167gであった。
【0017】
また比較例として、従来の市販品を用いた。この市販品は、台上からの距離が各々11mm及び22mmの位置の2か所の羽根軸部をくくり糸で連結して固定し、接着剤で固定されているものである。このくくり糸はナイロン紡績糸で構成され、接着剤もナイロン樹脂であった。
【0018】
得られた本発明品と市販品を用いて耐久性試験を行った。耐久性試験は、上級のバトミントンプレーヤー2名に実際に試合形式で打ち合って貰い、どの程度のセット数で破損するかを、市販品とともに比較試験を行った。その結果、従来品は2〜3セットで軸部や羽根部が破損して使用できなくなった。これに対して本発明品は、すべて10セット以上のセット数でも使用に耐える状態であった。しかも、軸部の破損で使用不能にものは皆無であった。
【0019】
また、本発明品はくくり糸の部分を手に持って横方向(直径方向)から力を加えてもほとんど変形しなかったが、市販品は同様に同じ力を加えると歪んだ。このことからも本発明品は力学的強度が高いことが確認できた。
【0020】
【発明の効果】
以上説明した通り、本発明によれば、スカート部の羽根の軸部の台上からの距離が26mmまでの間に少なくとも3周ポリビニルアルコール系繊維の紡績糸からなるくくり糸を結び付け、前記くくり糸の表面にニトロセルロース系樹脂を主成分として含む接着剤を付与して固定し、かつシャトルコック全体の重量を4.73〜5.50gの範囲にしたことにより、スカート部を強化し、打撃による衝撃に強く、耐久性を向上することができる。すなわち、くくり糸で3周以上羽根の軸部を結び付けているので、強度が高く、壊れにくいものとすることができる。とくに軸部の破損を防ぐことが可能になる。また、ポリビニルアルコール系繊維の紡績糸を用いているので、軽量で強力を高くすることができる。また、紡績糸は短繊維を用いているので、適当な嵩高性と引っ掛け性があり、羽根の軸部を縛りやすく、固定一体化しやすい。また、ニトロセルロース系樹脂を主成分として含む接着剤を用いているので、接着一体化に優れる。
【0021】
また、接着剤がスカート部の羽根の軸部にも付与されていることにより、さらに耐久性を上げることができる。
【0022】
また、くくり糸が台上からの距離11〜26mmまでの間に実質的に等間隔に結び付けられているという好ましい構成によれば、飛行性などを変えることなく耐久性を上げることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態のシャトルコックの正面図。
【図2】従来のシャトルコックの正面図。
【符号の説明】
1,11 先端部
2,12 樹脂テープ
3,13 シャトル部
4,14 羽根の羽根部
5,15 羽根の軸部
6,16 羽根
7,17 くくり糸
8,18 スカート部
10,20 シャトルコック
Claims (2)
- 先端の台上に複数本の羽根が円形に植設されてスカート部が形成されたシャトルコックにおいて、前記スカート部の羽根の軸部の台上からの距離が26mmまでの間に少なくとも3周ポリビニルアルコール系繊維の紡績糸からなるくくり糸を結び付け、前記くくり糸の表面及びスカート部の羽根の軸部にニトロセルロース系樹脂を主成分として含む接着剤を付与して固定し、かつシャトルコック全体の重量を4.73〜5.50gの範囲にしたことを特徴とするシャトルコック。
- くくり糸が台上からの距離11〜26mmまでの間に実質的に等間隔に結び付けられている請求項1に記載のシャトルコック。
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