JP3626805B2 - 歯車研削装置における自動歯合せ装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ねじ状砥石を用いた歯車研削装置において、研削に先立つねじ状砥石と歯車の間の歯合せを自動的に行う自動歯合せ装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
この種の歯車研削装置では、研削に先立ちねじ状砥石と歯車の間の歯合せを高精度で行う必要があり、この精度が不充分であると、一部の歯面が未研削あるいは不完全研削となる研削むらを生じ、また砥石の負荷が過大となって砥石の寿命が短くなるという問題がある。このような問題を解決するための自動歯合せ装置としては、例えば特公昭62−38089号公報に開示された技術がある。これはクランプ治具を介して歯車を把持した主軸を回転する回転駆動経路に設けた電磁クラッチを解除した状態で手動により歯車とねじ状砥石を噛合させ、次いでねじ状砥石を低速回転させて歯車の歯部を検出するワークセンサからの出力と砥石軸に設けたパルス発生器からのパルスに基づいて初期位相合わせを行ってから砥石台を一旦後退させ、前記電磁クラッチを係合させて歯車とねじ状砥石を回転駆動し、初期位相合わせで得られたデータに基づき歯車とねじ状砥石の間の位相ずれを修正し、砥石台を前進させて研削を行うようにしたものである。
【0003】
また、主軸と共に回転する歯車の各歯部の位置をラジアル方向またはアキシャル方向に配置した近接センサにより検出して、主軸の回転状態において歯車とねじ状砥石の間の歯合せを行う技術もある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特公昭62−38089号公報の技術では初期位相合わせの状態でねじ状砥石のねじ山部が歯車の歯部の両側の歯面に同じように確実に接触することが保証されないので、研削に先立つねじ状砥石と歯車の間の歯合せを常に充分な精度で行うことはできない。また各歯部の位置を近接センサにより検出する技術でも、その検出誤差は歯面において例えば数十ミクロン程度であり、やはり充分な歯合せ精度は得られない。
本発明はこのような各問題を解決して、研削に先立つねじ状砥石と歯車の間の歯合せを高精度で自動的に行うことができるようにすることを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、歯車を連結してこれと一体的に回転する主軸を回転駆動する歯車側サーボ駆動装置と、ねじ状砥石を設けた砥石軸を回転駆動する砥石側サーボ駆動装置と、この両サーボ駆動装置に指令を与えてねじ状砥石のねじ山部の傾斜した研削面が歯車の歯部の歯面を研削するように主軸と砥石軸の回転方向における位置を制御する制御装置を備えた歯車研削装置に関するものであり、両サーボ駆動装置の少なくとも何れか一方のサーボ系の位置ループゲインを研削に適した高い値とそれよりも大幅に低い値に選択的に切り換えるゲイン調整手段を備えている。この位置ループゲイン調整装置により位置ループゲインが低い値に切り換えられかつ切込み手段によってねじ山部が歯部の間に入るがこの両者が互いに接触しない程度の切込みが与えられた状態において位置オフセット指令手段は両サーボ駆動装置の少なくとも何れか一方にねじ山部の研削面と歯部の歯面の間の距離が次第に減少するような正逆両回転方向における位置オフセット指令を与える。位置ループゲインが低い値に切り換えられているので、ねじ山部の研削面と歯部の歯面が接触しても前者による後者の研削は行われず、サーボ誤差検出手段は位置ループゲインが低い値に切り換えられたサーボ駆動装置に対応する主軸または砥石軸の位置の前記位置オフセット指令手段により与えられた位置オフセットの指令値と実際の位置である検出値との差であるサーボ誤差を正逆両回転方向において検出する。このようにして検出された正逆両方向の各サーボ誤差はねじ山部の研削面と歯部の歯面が接触すれば設定値より大となり、噛合位置算出手段はこのサーボ誤差が設定値より大きいと判別されたときの各サーボ誤差に基づいて最適な噛合い位置を算出し、この最適な噛合い位置に基づいて噛合位置補正手段は噛合い位置の補正を行う。
【0006】
本発明のゲイン調整手段は、歯車側サーボ駆動装置のサーボ系の位置ループゲインを、研削に適した高い値とそれよりも大幅に低い値に選択的に切り換えるものとするのがよい。
【0007】
本発明は、ねじ状砥石と歯車が後者の軸線方向とほゞ平行なトラバース方向で食い違って互いに噛合しない状態において、位置オフセット指令手段により位置オフセット指令を与えてから、ねじ状砥石を歯車に対しトラバース方向に移動してサーボ誤差検出手段によりサーボ誤差を検出するようにするのがよい。
【0008】
また本発明は、歯車の歯部を近接センサにより検出してねじ状砥石のねじ山部が歯車の歯部の中間位置とほゞ一致する初期歯合せ位置を演算する初期歯合せ手段を更に備え、切込み手段はこの初期歯合せ位置において切込みを与えるようにするのがよい。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下に図1〜図8に示す実施の形態により本発明の説明をする。
図1に示すように、歯車研削装置のベッド10上に水平なX方向(紙面と直角方向)に移動可能に案内支持されたX軸スライドテーブル11は第1駆動用モータ13によりX方向送りが与えられ、このX軸スライドテーブル11上にX方向と直交する水平なZ方向に移動可能に案内支持されたZ軸スライドテーブル12は第2駆動用モータ14によりZ方向送りが与えられている。Z軸スライドテーブル12上には、主軸16を軸承する主軸台15と心押台17がZ方向に対向して同軸的に設けられ、両側に軸部を形成した歯車Wは、一端が図略のチャックを介して主軸16に同軸的に把持され、他端は心押台17により回転自在に支持されている。主軸16は主軸台15に設けた主軸回転駆動用モータ18により回転駆動され、歯車Wは主軸16と共に一体的に回転駆動される。各モータ13,14,18はそれぞれ駆動するテーブルまたは軸の位置を検出するためのエンコーダ13a,14a,18aを備えている。
【0010】
またベッド10から一体的に立ち上がるコラム20に主軸16の回転軸線と直交するX方向軸線Aを中心として回動可能に支持された旋回台21には、軸線Aと直交するY方向に移動可能にY軸スライドテーブル22が案内支持されて第3駆動用モータ23により送りが与えられている。Y軸スライドテーブル22上に固定した砥石台25には、Y方向と平行な回転軸線を有し先端にねじ状砥石Gを同軸的に固定した砥石軸26が軸承されて、砥石台25に設けた砥石軸回転駆動用モータ28により回転駆動される。ねじ状砥石Gに形成したラック状断面形状のねじ山部Gaは、歯車Wの歯部Waの歯面Wb,Wcを研削する傾斜した研削面Gb,Gc(図5及び図8参照)を有している。旋回台21は図略の駆動用モータにより軸線A回りに回転駆動され、これによりらせん状のねじ山部Gaの歯部Waと接する部分の接線方向が歯車Wの歯すじ方向と一致するような向きにして停止されロックされている。各モータ23,28はそれぞれ駆動するテーブルまたは軸の位置を検出するためのエンコーダ23a,28aを備えている。
【0011】
数値制御装置30は、図1に示すように、歯車研削装置全体を制御し管理する中央処理装置(CPU)31、メモリ32及び外部とのデータの授受を行うインターフェイスI/Fを備えている。CPU31は、インターフェイスI/Fを介して第1及び第2駆動回路35,36に送り位置指令を与えて第1及び第2駆動用モータ13,14を駆動し、これによりX軸及びZ軸スライドテーブル11,12に送りを与え、エンコーダ13a及び14aは各駆動用モータ13,14の回転角度を介して各スライドテーブル11,12の送り位置を検出し、各検出値はインターフェイスを介してCPU31に入力される。
【0012】
またCPU31は、インターフェイスI/Fを介して主軸及び砥石軸駆動回路37,38に回転角度位置指令を与えて主軸及び砥石軸回転駆動用モータ18,28を駆動し、これにより主軸16及び砥石軸26を回転駆動し、エンコーダ18a及び28aは各駆動用モータ18,28の回転角度を介して各主軸16及び砥石軸26の回転角度位置を検出し、各検出値はインターフェイスを介してCPU31に入力される。図示は省略したが、第3駆動用モータ23は同様に駆動回路を介してCPU31により駆動されてY軸スライドテーブル22に送りを与え、エンコーダ23aにより検出された送り位置の検出値はCPU31に入力される。
【0013】
CPU31には、インターフェイスI/Fを介して入出力装置33が接続され、また図示は省略したが、回転する歯車Wの歯部Waに対しラジアル方向に配置した例えば渦電流タイプ等のリニア近接センサS(図5参照)がインターフェイスを介して接続されている。CPU31は、入出力装置33及び近接センサSや各エンコーダのような検出器からの入力に基づいて各構成部材を制御して後述する一連の作動を行うもので、メモリ32にはこのような制御を行うための制御プログラム、歯車Wの研削加工プログラム、及び各種のデータ等が格納されている。
【0014】
主軸駆動回路37は、図2に示すように、パルス発生回路40、演算回路41、サーボコントローラ42、ゲインコントローラ43及びサーボアンプ44より構成されている。パルス発生回路40は数値制御装置30から時々刻々入力される回転角度位置指令値に応じたパルスを発生する。演算回路41は2相型PLL(Phase Locked Loop)を用いたもので、パルス発生回路40からのパルスに応じたアナログ電圧を、サーボ誤差(主軸16の回転角度位置に関し数値制御装置30から入力される指令値とエンコーダ18aから入力される検出値の差を演算することにより検出)が零になるように補正し、また数値制御装置30から入力される主軸16の回転角度位置のオフセット指令に応じて補正して出力するものである。この位置オフセット指令は、歯車Wを正または逆回転方向に所定の微小量(位置オフセット量)ずつオフセットさせるものである。なお演算回路41は上記では2相型PPLを用いたが、パルスカウンタ等の一般的なサーボ誤差演算回路を用いてもよい。
【0015】
演算回路41からの出力電圧はサーボコントローラ42、ゲインコントローラ43を介してサーボアンプ44により電流に変換され、この電流が主軸回転駆動用モータ18に与えられて主軸16を回転駆動する。サーボントローラ42は演算回路41からの出力電圧に対して例えば、比例、微分、積分演算を行う演算回路であり、また、ゲインコントローラ43はサーボコントローラ42からの出力電圧を増減させる増幅回路で、そのゲインは数値制御装置30からのゲイン指令により、歯車Wの歯面Wb,Wcの研削に適した高い値(サーボ剛性大に対応)とそれよりも大幅に低い値(サーボ剛性小に対応)の2段に選択的に切り換えられる。また、上記ゲインは任意の値に設定できるようになっている。なお演算回路41で検出されたサーボ誤差は数値制御装置30にも入力される。
【0016】
砥石軸駆動回路38の構成は、主軸駆動回路37と類似しているが、ゲインコントローラ43がなく、数値制御装置30からの位置オフセット指令及びゲイン指令がない点が相違している。第1及び第2駆動回路35,36は、実質的に砥石軸駆動回路38と同様の構成である。
【0017】
本実施例と各請求項との関係において、主軸駆動回路37、主軸回転駆動用モータ18及びエンコーダ18aが歯車側サーボ駆動装置を、砥石軸駆動回路38、砥石軸回転駆動用モータ28及びエンコーダ28aが砥石側サーボ駆動装置を、ゲインコントローラ43及び数値制御装置30の一部がゲイン調整手段を、第1駆動回路35、第1駆動用モータ13及び数値制御装置30の一部が切込み手段を、数値制御装置30の一部が位置オフセット指令手段を、エンコーダ18a及び演算回路41の一部がサーボ誤差検出手段を、数値制御装置30の一部が噛合位置算出手段を、主軸駆動回路37、主軸回転駆動用モータ18、エンコーダ18a及び数値制御装置30の一部が噛合位置補正手段を、近接センサS、主軸駆動回路37、主軸回転駆動用モータ18、エンコーダ18a及び数値制御装置30の一部が初期歯合せ手段をそれぞれ構成する。
【0018】
次に、上記のように構成されたこの実施の形態の動作を、図3及び図7に示すフローチャート並びに図4〜図6及び図8に示す説明図により説明する。なお数値例は、モジュール5mm、歯数18の平歯車の場合の値である。
【0019】
先ず図3のステップ101に示すように歯車Wを主軸16に取り付けて、入出力装置33の運転ボタンを押せば、CPU31は主軸回転駆動用モータ18及び砥石軸回転駆動用モータ28を同期して作動させて、主軸16及び砥石軸26を、ねじ状砥石Gの研削面Gbが歯車Wの歯面Wb,Wcを研削できるような所定の回転数比で回転駆動し、先ずステップ102の初期歯合せを行い、次いで本発明の主要部であるステップ103の最終歯合せを行った後、ステップ104でねじ状砥石Gにより歯車Wの研削を行う。ステップ102〜ステップ104の動作は、主軸16及び砥石軸26が前述のように連動して回転駆動された状態で連続して自動的に行われる。第2駆動用モータ14により往復駆動されるZ軸スライドテーブル12上に支持された歯車Wは、図4に示すように、その回転軸線と平行なトラバース方向(Z方向)に移動可能であり、このトラバース方向でねじ状砥石Gと食い違った実線で示す位置において、ステップ102の初期歯合せは行われる。
【0020】
この初期歯合せは、図5に示すように、歯車Wの歯部Waに対しラジアル方向に配置した例えば渦電流タイプ等のリニア近接センサSを用いて行う。主軸回転駆動用モータ18により回転駆動される歯車Wの歯部Waは近接センサSの前を交互に通過し、近接センサSは歯底を中心とする約1歯の範囲内において、主軸回転角度位置に対し図6に示すような中央部が山形に盛り上がった出力信号電圧を発生する。CPU31はこの出力信号電圧が、左右の傾斜部の中央付近となる所定のしきい値電圧Vaと交差する2点a1,a2の主軸回転角度位置を検出し、その中点を歯底中心位置θbとして検出する。CPU31はこのようにして検出した歯車Wの歯底中心位置θbと、予め知られている砥石軸回転角度位置とねじ状砥石Gのねじ山部Gaの位置関係に基づいて、ねじ状砥石Gのねじ山部Gaが検出された歯車Wの歯底中心位置θbと一致する(ねじ山部Gaが歯部Waの中間位置とほゞ一致する)ような、ねじ状砥石Gに対する歯車Wの初期歯合せ位置を演算し、砥石軸26と連動して回転駆動される主軸16を、その回転角度位置がこの初期歯合せ位置となるように所定の回転方向にオフセットして初期歯合せを行う。これは従来技術で述べた、主軸と共に回転する歯車の各歯部の位置を近接センサにより検出して歯車とねじ状砥石の間の歯合せを行う技術と同じであり、このようにして行われた初期歯合せ位置の誤差は、歯面において数十ミクロン程度である。なお近接センサSは歯車Wの歯部Waに対しアキシャル方向に配置してもよい。
【0021】
この初期歯合せを行ってから、図7のフローチャートに示す最終歯合せが行われる。歯車Wが図4に示すようにトラバース方向でねじ状砥石Gと食い違った実線で示す位置に位置し、主軸16及び砥石軸26が連動して駆動された状態で、先ず数値制御装置30のCPU31は、ステップ201でゲインコントローラ43に指令して、歯車側サーボ駆動装置のサーボ系の位置ループゲインを歯車Wの歯面Wb,Wcの研削に適した通常の高い値(例えば8000s−1)からそれよりも大幅に低い値(例えば通常の1/128の値)に下げる。次いでCPU31はステップ202で第1駆動用モータ13を作動させて主軸16を、その回転軸線が砥石軸26の回転軸線と接近する切込み方向に前進させる。この時、ねじ状砥石Gのねじ山部Gaが歯車Wの歯部Waの間に入るが、初期歯合せ位置の誤差の範囲ではねじ山部Gaの両側の傾斜した研削面Gb,Gcが歯部Waの何れの歯面Wb,Wcとも接触することがないような所定の位置とする。この状態をトラバース方向から見た図が図8の(a) 及び(b) の実線で示されている。図8の(a) は、ステップ203〜ステップ206に示す正方向の位置オフセット指令を与えて正方向のサーボ誤差を検出する場合の説明図であり、ステップ202終了直後の状態では、ねじ山部Gaの一方の研削面Gbとこれに対向する歯部Waの歯面Wbとの間の歯車Wのピッチ線WLに沿った隙間角はΔθp1である。なおGLはねじ状砥石Gのピッチ線を示す。
【0022】
CPU31はステップ203で正方向の位置オフセット指令を与え、これにより歯車Wは正回転方向(図8において時計回転方向)に所定の微小量(位置オフセット量)オフセットされ、ピッチ線WLに沿った隙間角Δθp1は所定の位置オフセット量(例えば10ミクロン程度)減少する。引き続きCPU31は、ステップ204で第2駆動用モータ14を作動させて、歯車Wを図4の実線に示す位置から二点鎖線WBの位置まで(または二点鎖線WBの位置から実線の位置までまで)トラバースさせ、その途中の一点鎖線WAの位置でステップ205のサーボ誤差(主軸16の回転角度位置に関し数値制御装置30から主軸駆動回路37に入力される指令値とエンコーダ18aから入力される検出値の差)を検出し、ステップ206でこのサーボ誤差と予め定められた設定値と比較する。サーボ誤差が設定値より小さいと判断された場合、CPU31は制御動作をステップ203に戻し、ステップ203〜ステップ206を繰り返す。すなわちサーボ誤差が設定値より大きいと判別されるまで、トラバース端である位置W,WBで順次所定の位置オフセット指令が与えられ、位置Wと位置WBとの間でサーボ誤差検出のためのトラバース動作を繰り返す。
【0023】
この繰り返しにより位置オフセット量の累積値が増大してその値Δθc1が当初の隙間角Δθp1より大となれば、歯面Wbの指令位置は図8(a) の二点鎖線Wb2で示す位置となるが、歯車側サーボ駆動装置のサーボ系の位置ループゲインは低い値に下げられているので、一点鎖線WAの位置においては、研削面Gbと接触する一点鎖線Wb1の位置より二点鎖線Wb2側に進んで歯面Wbが研削されることはなく、歯車Wはこの接触状態でねじ状砥石Gに連れ回りされる。この状態でステップ205において検出されるサーボ誤差は、図8(a) の二点鎖線Wb2で示す指令位置と一点鎖線Wb1で示す実際の位置との間のピッチ線WLに沿った距離の角度換算値Δθe1であり、このサーボ誤差Δθe1が設定値より大きいとステップ206で判別されれば、CPU31は制御動作をステップ207に進めて正方向におけるこのサーボ誤差Δθe1をメモリ32内の所定領域に記憶する。ステップ205のサーボ誤差の検出は、歯車W及びねじ状砥石Gが研削の場合と同様に回転している状態で行われるので、偏心誤差、ピッチ誤差、歯形誤差等があれば各歯部Wa毎に異なった値となる。従ってステップ205のサーボ誤差は、それらの平均値を使用する。
【0024】
続いてCPU31は歯車Wとねじ状砥石Gの位置関係をステップ202終了直後の状態に一旦戻してから、ステップ208〜ステップ212により負方向のサーボ誤差Δθe2を検出してメモリ32内の所定領域に記憶する。その詳細はステップ207において負方向の位置オフセット指令を与える点を除きステップ203〜ステップ207と同じであるので、詳細な説明は省略する。なお、図8は模式的な説明図であり、ステップ202終了直後の状態、すなわち最終歯合せが実質的に開始されていない状態における歯面Wb,Wcと研削面Gb,Gcの隙間角Δθp1,Δθp2は、検出されるサーボ誤差Δθe1,Δθe2よりも相当大きい値である。
【0025】
続くステップ213で、CPU31はステップ202終了直後における歯面Wb,Wcと研削面Gb,Gcの間の隙間角Δθp1,Δθp2を、次の数1により演算する。
【0026】
【数1】
Δθp1=Δθc1−Δθe1
Δθp2=Δθc2−Δθe2
次いでCPU31はステップ214で、ステップ202終了直後の初期歯合せ位置から、ねじ山部Gaの両側における研削面Gb,Gcと歯面Wb,Wcの隙間が同一となる最適な噛み合い位置までの位置オフセット量Δθmを、次の数2により演算する。
【0027】
【数2】
Δθm=(Δθp1−Δθp2)/2
但し、Δθmの符号は前述した位置オフセット指令の向きと同じである。
【0028】
次いでCPU31はステップ215で、この位置オフセット量Δθmに相当する位置オフセット指令を歯車側サーボ駆動装置に与え、歯車Wを回転方向にオフセットして、図8(c) の破線Wbmに示すように、歯車Wの両歯面Wb,Wcとねじ状砥石G両側の研削面Gb,Gcの隙間が同一となるようにする。そしてステップ216で歯車側サーボ駆動装置のサーボ系の位置ループゲインを歯車Wの歯面Wb,Wcの研削に適した通常の高い値に上げて、図7のフローチャートに示す最終歯合せを終了する。この最終歯合せの場合の歯車Wの回転方向位置検出の分解能は、各歯面Wb,Wcにおいてそれぞれ0.25ミクロン程度であるので、最終歯合せにおける歯合わせの誤差は初期歯合せの場合よりもはるかに小さくなる。
【0029】
ステップ4のフローチャートに示す最終歯合せが終了した後、CPU31は図3のフローチャートのステップ104で、第1及び第2駆動用モータ13,14を作動させて歯車Wを図3の実線に示す位置から二点鎖線WBの位置まで繰り返して往復トラバースさせ、また歯車Wを所定のシーケンスで所定の位置まで切込んでねじ状砥石Gによる歯車Wの研削を行うことにより、両歯面Wb,Wcは常に均等に研削される。
【0030】
【発明の効果】
上述した本発明によれば、位置ループゲインが低い値に切り換えた状態において正逆両方向の位置オフセット指令を与えてサーボ誤差を検出しているので、ねじ山部の研削面と歯部の歯面が接触された状態では歯部の両歯面を研削することなくその位置をそれぞれ正確に検出することができる。そしてこのように正確に検出された両歯面の位置に基づいて最適な噛合い位置を算出し、噛合い位置の補正を行っているので、ねじ状砥石と歯車の最適な噛み合い状態を高精度で実現できる。
【0031】
研削に適した位置ループゲインは、歯車側サーボ駆動装置のサーボ系のほうが高いので、これを低い値に切り換える方が本発明の実施は容易になる。また、ねじ状砥石と歯車がトラバース方向で食い違って互いに噛合しない状態において、位置ループゲインを低い値に切り換えて位置オフセット指令を与えてトラバースによりサーボ誤差を検出するようにすれば、切込みを与える際の誤操作によって噛合時に歯車及び/またはねじ状砥石に損傷を与えるおそれは減少する。
【0032】
また、回転する歯車の歯部を近接センサにより検出してねじ状砥石と歯車の間の初期歯合せ位置を決定し、この初期歯合せ位置において切込みを与えてサーボ誤差を検出するようにすれば、初期歯合せとその後のサーボ誤差による噛み合い位置の補正を連続して行うことができるので、全体として加工時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による歯車研削装置における自動歯合せ装置の一実施形態の全体構成を示す図である。
【図2】図1に示す実施形態の歯車側サーボ駆動装置の構成を示す図である。
【図3】図1に示す実施形態の全体的作動のフローチャートである。
【図4】図1に示す実施形態のトラバース状態を示す図である。
【図5】図1に示す実施形態の初期歯合せに使用する近接センサと歯車の関係を示す図である。
【図6】図5の近接センサの出力信号の一例を示す図である。
【図7】図1に示す実施形態の最終歯合せのフローチャートである。
【図8】図1に示す実施形態の最終歯合せの説明図である。
【符号の説明】
16…主軸、26…砥石軸、30…制御装置(数値制御装置)、G…ねじ状砥石、Ga…ねじ山部、Ga,Gb…研削面、S…近接センサ、W…歯車、Wa…歯部、Wb,Wc…歯面。
Claims (4)
- 歯車を連結してこれと一体的に回転する主軸を回転駆動する歯車側サーボ駆動装置と、ねじ状砥石を設けた砥石軸を回転駆動する砥石側サーボ駆動装置と、前記両サーボ駆動装置に指令を与えて前記ねじ状砥石のねじ山部の傾斜した研削面が前記歯車の歯部の歯面を研削するように前記主軸と砥石軸の回転方向における位置を制御する制御装置を備えてなる歯車研削装置において、前記両サーボ駆動装置の少なくとも何れか一方のサーボ系の位置ループゲインを研削に適した高い値とそれよりも大幅に低い値に選択的に切り換えるゲイン調整手段と、前記ねじ山部が前記歯部の間に入るがこの両者が互いに接触しない程度の切込みを与える切込み手段と、前記位置ループゲインが前記低い値に切り換えられかつ前記切込みが与えられた状態において前記両サーボ駆動装置の少なくとも何れか一方に前記ねじ山部の研削面と前記歯部の歯面の間の距離が次第に減少するような正逆両回転方向における位置オフセット指令を与える位置オフセット指令手段と、位置ループゲインが前記低い値に切り換えられた前記サーボ駆動装置に対応する前記主軸または砥石軸の位置の前記位置オフセット指令手段により与えられる位置オフセット指令の指令値と実際の位置である検出値との差であるサーボ誤差を検出するサーボ誤差検出手段と、このサーボ誤差検出手段により検出された正逆両方向の各サーボ誤差が設定値より大きいと判別されるまで前記オフセット指令手段を繰り返し作動させ前記判別がなされたときに検出された各サーボ誤差に基づいて最適な噛合い位置を算出する噛合位置算出手段と、この噛合位置算出手段により算出された最適な噛合い位置に基づいて噛合い位置の補正を行う噛合位置補正手段を備えたことを特徴とする歯車研削装置における自動歯合せ装置。
- 前記ゲイン調整手段は、前記歯車側サーボ駆動装置のサーボ系の位置ループゲインを、研削に適した高い値とそれよりも大幅に低い値に選択的に切り換えるものである請求項1に記載の歯車研削装置における自動歯合せ装置。
- 前記ねじ状砥石と歯車が後者の軸線方向とほゞ平行なトラバース方向で食い違って互いに噛合しない状態において、前記位置オフセット指令手段により前記位置オフセット指令を与えてから、前記歯車をねじ状砥石に対しトラバース方向に移動して前記サーボ誤差検出手段により前記サーボ誤差を検出することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の歯車研削装置における自動歯合せ装置。
- 前記歯車の歯部を近接センサにより検出して前記ねじ状砥石のねじ山部が前記歯車の歯部の中間位置とほゞ一致する初期歯合せ位置を演算する初期歯合せ手段を更に備え、前記切込み手段はこの初期歯合せ位置において前記切込みを与えることを特徴とする請求項1、請求項2または請求項3に記載の歯車研削装置における自動歯合せ装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP34121395A JP3626805B2 (ja) | 1995-12-27 | 1995-12-27 | 歯車研削装置における自動歯合せ装置 |
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