JP3626353B2 - パターン検査装置およびパターン検査方法 - Google Patents

パターン検査装置およびパターン検査方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、表面にパターンが形成された対象物(たとえばプリント基板および半導体ウエハなど)の画像を読み取って、パターンの欠陥の有無の判定を行う技術の改良に関する。
【0002】
【発明の背景】
この種のパターン検査方法の代表的方式のひとつとして比較検査がある。これは、良品の画像(参照画像)と検査対象を撮像した画像(被検査画像)の対応する同一位置の画素同士の画素値を比較する方法である。
【0003】
【従来の技術】
このような比較検査の従来例では、被検査画像と参照画像とをそれぞれ2値化して画素ごとに比較し、被検査画像と参照画像とのいずれもが「0」となる画素や、被検査画像と参照画像とのいずれもが「1」となる画素を「一致画素」とし、他の画素を「不一致画素」として比較判定を行っている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような画素値同士を比較する場合において、撮像時のサンプリング位置の誤差や量子化誤差などに起因する誤検出が問題となっていた。たとえば、パターンのエッジ部に量子化誤差等に起因して画素単位の「ガタツキ」を生じることが多く、このような単純な2値化画素値同士の比較では、参照画像および被検査画像の対応する画素の画素値が一致しないことが多かった。この場合に、実際には欠陥でない部分であるにもかかわらず、その部分を欠陥として誤検出してしまうことがあった。
【0005】
図12は、多段階に量子化された各画素値を2値化して得られた参照画像および被検査画像に基づいて各画素同士を比較する場合を例示する。
【0006】
図12(a)は参照パターンA’を示し、図12(b)は被検査パターンB’を示す。図12(b)に示すように、被検査パターンB’は、部分D1’,D2’に欠陥を有し、パターン検査によりこれらの欠陥部分D1’,D2’を検出することが目的である。また、図12(c)は、参照パターンA’を撮像した後に量子化処理および2値化処理を施して得られた参照画像AP’を示し、図12(d)は、被検査パターンB’を撮像してA/D変換(量子化処理)をした後に2値化処理を施して得られた被検査画像BP’を示す。なお、図12(c),(d)においては、実線で囲まれた閉領域内部の画素の画素値が「1」であり、閉領域外部の画素の画素値は「0」であるものとする。そして、これらの参照画像AP’と被検査画像BP’の対応する画素値同士を比較することによって、パターン検査を行う。なお、図12(e)は、両者の比較結果を示しており、画素値が不一致となる画素を含む部分が部分C1〜C4,E1,E2として示されている。
【0007】
ここで、被検査画像BP’には、図12(d)の部分C1,C2のような、量子化誤差などに起因する画素単位の「ガタツキ」が生じている。たとえば、部分C2において、被検査パターンB’を考慮すると、本来その画素値は「0」となるべきであるにもかかわらず、被検査画像の画素値は「1」となっている。また、同様に、参照画像AP’にも、図12(c)の部分C3,C4のような、量子化誤差などに起因する画素単位の「ガタツキ」が生じ得る。
【0008】
このような参照画像AP’および被検査画像BP’の対応する画素値同士を比較した場合、これらの部分C1〜C4において誤検出が生じる。たとえば、部分C2〜C4においては、実際には欠陥ではないにもかかわらず、欠陥であると判定され、部分C1においては、実際には欠陥であるにもかかわらず、欠陥でないと判定される。なお、以下においては、このような誤検出が生じる部分C1〜C4を「疑似欠陥部分」と称する。
【0009】
このような誤検出を防ぐためには、欠陥部分が一定の大きさ以上の場合のみ欠陥であると検出する方法もある。たとえば、図12(e)において、2画素以上の欠陥画素が集まっている部分E1のみを欠陥部分として検出し、画素単位の大きさのパターンの不一致(部分C1〜C4,E2)を無視して、誤検出を防止することができる。しかしながら、この場合には、その大きさが画素単位の欠陥部分である部分E2は、本来の欠陥部分D2’に対応するにもかかわらず欠陥として検出されない。言い換えれば、画素単位での欠陥の検出を行うことが困難であった。
【0010】
また、このような問題は、多段階の階調値を有する多値画像においても同様に生じるものであり、単純な画素値同士の比較によるパターン検査性能の限界を示すものである。
【0011】
そこで、本発明は前記問題点に鑑み、疑似欠陥による誤検出の問題を回避して、画素単位の欠陥の検出を行うことが可能なパターン検査装置およびパターン検査方法を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載のパターン検査装置は、表面にパターンが形成された対象物の画像を読取ってパターンの検査を行う装置であって、前記対象物の画像としての被検査画像と、前記被検査画像の比較基準となる参照画像とをそれぞれ多値画像として得る画像取得手段と、前記被検査画像と前記参照画像との画素値の一致性判断における許容誤差範囲を何れか一方の画像の画素ごとに、付近の画素値との補間によって算出し、設定する範囲設定手段と、前記許容誤差範囲内で前記被検査画像と前記参照画像とが一致するか否かを画素ごとに判定する判定手段と、を備えることを特徴とする。
【0013】
請求項2に記載のパターン検査装置は、請求項1に記載のパターン検査装置において、前記範囲設定手段は、前記許容誤差範囲として、前記参照画像の各画素の画素値に対して幅を持たせた画素値範囲を設定する手段であり、前記判定手段は、前記被検査画像の画素値が前記参照画像の画素値範囲内に含まれるか否かを画素ごとに判定する手段であることを特徴とする。
【0014】
請求項3に記載のパターン検査装置は、請求項2に記載のパターン検査装置において、前記参照画像の各画素に対する前記画素値範囲は、当該各画素付近における画素値に基づいて、範囲の上限値および下限値として算出されることを特徴とする。
【0015】
請求項に記載のパターン検査装置は、表面にパターンが形成された対象物の画像を読取ってパターンの検査を行う装置であって、前記対象物の画像としての被検査画像と、前記被検査画像の比較基準となる参照画像とをそれぞれ多値画像として得る画像取得手段と、前記被検査画像と前記参照画像との画素値の一致性判断における許容誤差範囲を、何れか一方の画像の画素ごとに、画素値の空間的微分値に応じて、設定する範囲設定手段と、前記許容誤差範囲内で前記被検査画像と前記参照画像とが一致するか否かを画素ごとに判定する判定手段と、を備えることを特徴とする。
【0016】
請求項〜請求項および請求項の方法は、それぞれ請求項1〜請求項および請求項の装置の動作を方法プロセスとして一般化した構成をとる。
【0017】
【発明の実施の形態】
<A.装置>
<概略構成>
図1は、本発明の実施形態に係るパターン検査装置1の概略構成を示す図である。パターン検査装置1は、表面にパターンが形成された対象物2(たとえば導電性パターンが表面に形成されたプリント基板や半導体ウエハ)の画像を取得する画像取得部10と、参照画像および被検査画像に基づいてパターンの欠陥を検出する欠陥検出部30と、欠陥の有無などの結果を表示する表示部50とを有している。
【0018】
画像取得部10は、対象物2を載置するステージ11と、ステージ11をそれぞれX軸方向およびY軸方向に駆動する駆動用モータ12,13と、CCDカメラ15と、A/D(アナログ/デジタル)変換部16と、画像メモリ18とを有する。
【0019】
CCDカメラ15は、2次元に配列された受光素子により画像信号を生成する。生成された(アナログの)画像信号は、A/D変換部16で多値のデジタル信号に変換された後、画像メモリ18にデジタル画像として記憶される。このようにして対象物2の画像を撮像することができる。
【0020】
なお、ステージ11のX軸方向およびY軸方向の移動に伴い、ステージ上に載置された対象物2と、所定の位置に固定されているCCDカメラ15との間に相対的な移動が生じるので、CCDカメラ15は対象物2上の任意の所定位置の画像を撮像することができる。
【0021】
後述するように、この画像取得部10は、検査対象である被検査物の画像(「被検査画像」)を撮像するが、それに先だって、良品である基準試料の画像(「参照画像」)をあらかじめ撮像しておく。そして、この参照画像および被検査画像に基づいて、後述するようなパターン検査が行われる。
【0022】
<欠陥検出部30の詳細>
図2は、欠陥検出部30の構成を示す概略図である。
【0023】
欠陥検出部30は、画素値範囲調整部31、画素値範囲算出部32、画素値範囲記憶メモリ34を有する。画素値範囲算出部32は、参照画像AP内の各画素に対する有効値の範囲を画素値範囲(後述)として算出し、画素値範囲記憶メモリ34はその算出された画素値範囲を記憶する。各画素に対する画素値範囲は、それぞれ、上限値と下限値とを有しており、画素値範囲調整部31は、画素値範囲を算出する際に、オペレータの指令入力に応答してその範囲の幅(上限値と下限値との差:「判定許容幅」)を調節する。この判定許容幅は、被検査画像と参照画像との一致性判断における許容誤差範囲に応じて定められるものである。なお、この調整のための指令入力は、キーボード、マウスなどの入力部(図示せず)を介して、オペレータとの対話により行われ得る。
【0024】
また、欠陥検出部30は、被検査領域算出部37および被検査領域抽出部38をさらに有する。被検査領域算出部37は被検査画像BP内のどの位置の領域を被検査領域BR(図4参照)として抽出するかを算出し、その算出結果に基づいて被検査領域抽出部38は被検査画像BPから被検査領域BRに含まれる各画素のデータを抽出する。
【0025】
欠陥検出部30は、対応領域算出部35および対応領域抽出部36をさらに有する。対応領域算出部35は、参照画像AP内のどの位置の領域が、被検査領域BRに対応する対応参照領域AR(図4参照)であるかを算出し、その算出結果に基づいて対応領域抽出部36は、対応参照領域AR自体を特定するとともに、対応参照領域ARに含まれる各画素の画素値範囲のデータを画素値範囲記憶メモリ34に記憶された画素値範囲データから抽出する。
【0026】
また、欠陥検出部30は、比較判定部42、結果記憶部44、欠陥有無判定部46をさらに有する。後述するように、比較判定部42は、被検査領域抽出部38によって抽出された被検査領域BR内の各画素の画素値を、参照画像AP内の対応する画素の画素値範囲の上限値および下限値と比較して、画素値範囲内の有効な値であるか否かを判定する。結果記憶部44には、各画素についての判定結果が記憶される。そして、欠陥有無判定部46は、被検査領域BR内の全画素の判定結果に基づいて、被検査領域BRにおけるパターンの欠陥の有無を判定する。
【0027】
このようにして、被検査領域BR内におけるパターンの欠陥の有無が判定され、パターン検査の結果が得られる。なお、その結果は、表示部50に表示される。
【0028】
なお、上記の欠陥検出部30は、この実施の形態ではコンピュータ・システムを利用して構成されており、画素値範囲算出部32、対応領域抽出部36、被検査領域抽出部38、比較判定部42、欠陥有無判定部46などは、プログラムを実行することにより機能を実現する形態となっている。これらの構成は全てソフトウェア的に構築されていてもよく、全てハードウェア的に構築されていてもよい。さらには、部分的にのみソフトウェア的に構築されていてもよい。
【0029】
<B.動作>
<概略>
つぎに、パターン検査装置1において、表面にパターンが形成された対象物の被検査画像および参照画像に基づいて、パターンの欠陥の有無を検査する動作について説明する。
【0030】
図3は、パターン検査装置1におけるパターン検査の処理手順を表すフローチャートである。
【0031】
まず、ステップSP10において、参照画像APを取得する。参照画像APは、良品である基準試料の画像を画像取得部10によってあらかじめ撮像しておくことによって得ることができる。
【0032】
つぎに、ステップSP20において、画素値範囲算出部32(図2)は、参照画像AP内の各画素に対する有効値の範囲を画素値範囲として算出する。算出された画素値範囲は、画素値範囲記憶メモリ34に記憶される。ここで、画素値範囲は、各画素の有効値の範囲を上限値と下限値とによって示すものであるが、この画素値範囲の求め方については後述する。また、有効値とは、参照画像APの画素値に対して被参照画像BPの画素値が一致性を有すると判定できる値のことである。
【0033】
そして、ステップSP30において、被検査画像を取得する。この被検査画像BPは、検査対象である被検査物の画像を画像取得部10によって撮像することによって得ることができる。
【0034】
ここで、図4は、参照画像AP(a)および被検査画像BP(b)を示す概念図である。なお、図中における斜線部はパターンを表している。なお、この画像は、多値画像として得られており、特にエッジ部(パターンの境界部)において濃淡の階調値の急激な変化を有している。
【0035】
図4(b)に示すように、被検査画像BPは複数(図では5×5=25)の領域(ブロック)である被検査領域BRに分割され、分割された各被検査領域BR毎にパターン検査が行われる。各被検査領域BR内に欠陥Dが存在しないかどうかを、参照画像APによって得られる画素値範囲に関する情報に基づいて検査する。
【0036】
そのため、ステップSP40において、被検査画像BPから被検査領域BRを抽出する。また、後述するステップSP50以降において、被検査領域BRに対応する対応参照領域ARを抽出して、抽出された対応参照領域ARの各画素に対する画素値範囲と被検査領域BRの各画素値の画素値とを比較する。
【0037】
ここで、ステップSP50以降を説明する前に、基本的な考え方について説明する。上述した疑似欠陥部分に関する問題は、特に濃度変化(階調値変化)の大きいエッジ部分で顕著であるので、ここでは、エッジ部分を例にして説明を行う。
【0038】
図5は、被検査領域BR内の一部のX軸方向の画素列BLを取り出したものであり、X軸方向に急激な濃度変化が現れている場合を想定する。位置P(x,y)における画素E(x,y)の画素値V(x,y)は、各位置P(x,y)の値を量子化することによって得ることができる。なお、以下においては、まず、X軸方向の変化にのみ着目して説明を進めていく。この場合において、位置P(x)、画素E(x)、画素値V(x)などのようにyを省略して示すものとする。なお、表記の簡単化のため、さらに(x)を略記する場合もある。
【0039】
ここで、図5に示す濃度曲線V=f(X)は、仮想的な濃度変化をアナログ的に表しており、各画素Eのサンプリング位置であるX=...,x−1,x,x+1,...のそれぞれにおける曲線f(X)の値が、各画素値の値...,V(x−1),V(x),V(x+1),...となっている。
【0040】
図6は、図5と同様の図を表しており、図6(a)は参照画像AP内のX軸方向の画素値変化を表したものであり、図6(b)は被検査画像BP内のX軸方向の画素値変化を表したものである。なお、破線と破線との間のX方向の間隔は、1画素の幅を表しているものとする。
【0041】
図6(b)は、被検査領域BRの画素列BLの一例を表している。ここでは、図6(a)の濃度変化を表す曲線fa(X)に対してX軸方向の負の向きに0.3画素分ずれたものとなっている曲線fb(X)が、画素列BLの濃度変化を表す場合を想定している。このような場合において、両者を量子化することによってデジタル画像を得ると、各位置において大きな誤差を生ずることになる。この場合には、単なる量子化誤差のみならず、位置ズレに起因する誤差をも含むため、一般的に大きな誤差が発生することになる。したがって、そのまま各位置の画素値同士を比較した場合には、被検査画像内の画素の画素値と、参照画素の対応する画素の画素値との間には、大きな差が生じる。たとえば、被検査画像BP内の注目画素EB(x)における画素値VB(x)と、参照画像AP内の対応画素EA(x)における画素値VA(x)と、の間には、大きな差VDが生じることになる。したがって、画素値同士を比較した場合には、欠陥でないにもかかわらず、欠陥であるとして判定してしまうおそれ、すなわち、「疑似欠陥」を誤検出するおそれがある。
【0042】
そこで、本実施形態では、参照画像APおよび被検査画像BPの各画素の画素値同士を比較するのではなく、画素値範囲を考慮する。具体的には、被検査領域BR内の注目画素EBの画素値VBが、対応画素EAの画素値範囲の上限値VUと下限値VLとの間に存在するか否かについて検討することとする。
【0043】
図7は、画素値範囲について説明するための図であり、図7(a)および図7(b)は、それぞれ、図6(a)および図6(b)に対応している。図7(a)は、画素EA(x)の画素値VAに対する画素値範囲RVを示している。この画素値範囲RVは、上限値VUと下限値VLとによって表現される。
【0044】
図8は、図7(a)の一部を拡大した図である。図8を参照して、画素値範囲の算出方法について説明する。
【0045】
<画素値範囲の求め方1>
図8に示されるように、画素値範囲RVの上限値VUおよび下限値VLは、X方向の変化を表す曲線近似関数fa(X)を用いて次の数1および数2のように表される。
【0046】
【数1】
VU=fa(x+1/2)
【0047】
【数2】
VL=fa(x−1/2)
なお、曲線近似関数fa(X)は、所定の方向における複数の周辺画素の値を用いて求める。たとえば、シグモイド関数を用い、さらにX=x−2,x−1,x,x+1,x+2の5つの画素値を用いて曲線近似関数を得ることが可能である。なお、fa(x)=VAである。
【0048】
そして、図7(b)に示すように、被検査領域BR内の注目画素EB(x)の画素値VB(x)が、対応画素EA(x)の画素値範囲の上限値VUと下限値VLとの間に存在するか否かについて判定する。この場合には、画素値VB(x)が、対応画素EA(x)の画素値範囲の上限値VUと下限値VLとの間に存在するので、画素値VB(x)は有効な値である、すなわち、その画素EB(x)は欠陥ではないと判定される。
【0049】
また、上記の例においては、X軸方向の変化のみについて考慮していたが、これを2次元に拡張することが可能である。たとえば、参照画像APの画素値に関する曲面近似関数V=f(X,Y)に対して、画素EA(x,y)の境界領域面との交線上の点における値のうち、最大値を上限値VU、最小値を下限値VLとすることができる。あるいは、より簡略化して、上記関数f(X,Y)に対して、隣接画素との境界点における値、すなわち、合計8個の(X,Y)の組合せ(X=x−1/2,x,x+1/2、Y=y−1/2,y,y+1/2)(ただし、(x,y)の組合せを除く)を代入して得られた関数f(X,Y)の値のうち、最大値をVU、最小値をVLとすることができる。
【0050】
このような値VU,VLと画素値VB(x,y)とをそれぞれ比較する。そして、画素値VB(x,y)が、対応画素EA(x,y)の画素値範囲の上限値VUと下限値VLとの間に存在する場合には、画素値VB(x,y)は有効な値である、すなわち、その画素EB(x,y)は欠陥ではないと判定される。また、画素値VB(x,y)が、対応画素EA(x,y)の画素値範囲の上限値VUと下限値VLとの間に存在しない場合には、画素値VB(x,y)は有効な値ではない、すなわち、その画素EB(x,y)は欠陥であると判定される。
【0051】
このように、画素値範囲内に存在するか否かによって、画素の有効性を判定するので、画素値同士を比較する場合に比べて許容範囲が大きい。したがって、所定程度の画素値のばらつきはこの許容範囲内に吸収されるので、誤検出を回避することができる。つまり、疑似欠陥による誤検出を回避することができる。さらに、この許容範囲内にあるか否かによって、1画素ずつその値の有効性をチェックすることができるので、高い精度で画素単位の欠陥を検出することができる。このように欠陥Dを精度良く検出することができる。
【0052】
なお、上記においては、曲線近似関数や曲面近似関数を求め、その関数に基づいて画素間に存在すべき画素の画素値を求めており、これは一種の補間であると理解できる。
【0053】
<画素値範囲の求め方2>
また、上記の例においては、所定の方向における画素相互間の中間地点の画素値を求めるにあたって、所定の方向における複数の周辺画素の値を用いて近似関数fにより算出する方法を用いていたが、さらに簡単な方法としては、隣接する画素の値を用いた直線補間による補間方法が考えられる。
【0054】
図9は、このような場合の例を説明するための概念図である。図9は、画素EA(x,y)に対応する画素値範囲RVを定めるにあたって、隣接する画素との中点における仮想的な画素値(補間値)を最小値VLあるいは最大値VUの候補として求めるものである。そして、これらの候補の中から最小値および最大値を選択する。
【0055】
図9(a)においては、中央の画素EA(x,y)およびその周辺画素(隣接画素)の画素値が例示されている。
【0056】
この場合、たとえば、画素EA(x,y)は24、隣接する画素EA(x+1,y)の画素値は42であるので、両者の中点位置、すなわち、画素EAにおける境界位置(x+1/2,y)における両者の中間値は、(24+42)/2=33となる。この「33」を図9(b)においては、画素EA(x,y)の右隣に示している。
【0057】
図9(b)には、同様にして求めた、画素EAに隣接する合計8個の画素との中点位置における中間値(補間値)が、画素EA(x,y)の周囲に示されている。このうちの最大値が上限値VUであり、最小値が下限値VLとなる。図の場合においては、丸印で囲まれて示されている2つの値が上限値VUおよび下限値VLであり、画素値範囲RVは、その上限値VUを35、下限値VLを12として求めることができる。
【0058】
したがって、上記と同様に、被検査領域BR内の注目画素EBの画素値VBが、対応画素EAの求めた画素値範囲の上限値VU(35)と下限値VL(12)との間に存在する有効な値であるか否かについて判定することができる。
【0059】
<画素値範囲の調整>
上記画素値範囲について、さらに感度調整を行うことが可能である。これは、画素値範囲調整部31によって、つぎのようにして行うことができる。
【0060】
まず、上記数1および数2においては、所定の方向において隣接画素との境界点(X=x−1/2,x+1/2)の補間関数値を求めていたが、この代わりに、たとえば、X=x−1/4,x+1/4などの点における補間関数値を求めることもできる。このようにして求めた複数の方向における補間関数値の中から上記と同様に、最大値および最小値を画素値範囲の上限値および下限値とすることによっても求めることができる。なお、この場合には、上限値VUと下限値VLとの差が小さくなるので、注目画素EBの画素値VBが画素値範囲内に存在するか否かを感度をあげて判定することができる。一般的には、補間関数値f(x−α),f(x+α)のαの値を調整して同様の動作を行うことにより、感度を調整することが可能である。
【0061】
また、上記のようにして求めた画素値範囲に対して、一定値の調整幅を加算することも可能である。たとえば、上記の上限値VUに一定値WDを加えた値(VU+WD)を新たな上限値VUとし、上記の下限値VLに一定値WDを減算した値(VL−WD)を新たな下限値VLとすることが可能である。このようにして画素値範囲の幅(判定許容幅)を調整することができる。なお、このとき、値WDを正とすると感度を下げ、値WDを負とすると感度を上げて画素値の判定を行うことができる。
【0062】
さらには、一定値の調整幅を所定の条件を満たす場合にのみ加算することも可能である。たとえば、最小幅WDminを設定し、判定許容幅がこの最小幅WDminの値よりも小さくなったときには、判定許容幅として最小幅WDminが確保されるように画素値範囲を設定することも可能である。
【0063】
あるいは、参照画像内の各画素に対する画素値範囲としては、空間的分布状況に依存させずに、あらかじめ一定の許容値dを定めておき、画素値VA±dの範囲を有効な値の範囲として算出することも可能である。
【0064】
但し、上記の許容値dを採用する場合は、値の異なる複数の許容値d1,d2,...dnを準備しておき、画素値の空間的微分値(厳密には近隣画素間の差分値)に応じて画素値範囲を設定することが好ましい。パターンのエッジ部分などのように画素値が急峻に変化する領域では元の画素値の誤差も大きくなりがちであり、画素値範囲を広げておくことによってそのような大きな誤差を吸収できる一方、画素値が平坦に分布している領域では元の画素値の誤差も小さいため、画素値範囲を比較的狭くして精密な比較ができるためである。
【0065】
<ステップSP50以降について>
ここで、パターン検査装置1における処理動作の説明に戻る。前述のステップSP20においては、画素値範囲算出部32は、このような画素値範囲の上限値VUおよび下限値VLを参照画像APの各画素について算出し、画素値範囲記憶メモリ34に記憶する。
【0066】
その後、ステップSP30、SP40で被検査領域BRを抽出した後、これらの比較動作を行うため、ステップSP50において、被検査領域BRに対応する対応参照領域ARの各画素の画素値範囲のデータを抽出する。さらにその対応参照領域ARの中から、注目画素EB(x,y)に対応する画素EAを選択して、画素値範囲RVを特定する。
【0067】
つぎに、ステップSP60において、その画素値VB(x,y)が画素値範囲RVの上限値VUと下限値VLとの間に存在するか否かを判定する。そして、これらの比較動作を被検査領域BRの全画素について繰り返す。
【0068】
ここで、ステップSP70において、被検査領域BRについての欠陥有無の判定を行う。
【0069】
上記の画素単位の判定の結果、被検査領域BRの全画素の画素値の全てについて画素値範囲内であると判定されれば、その被検査領域BRは欠陥が無い領域であると判断される(ステップSP80)。
【0070】
また、被検査領域BRのいずれかの画素の画素値について、画素値範囲内に存在しないと判定された場合には、欠陥があるとして判断することができる(ステップSP100)。ただし、このような判定は、被検査領域BRと対応参照領域ARとの位置関係が1画素未満の精度で対応していることが必要である。
【0071】
<画素単位の位置ずれ補償動作>
ここで、位置関係が1画素未満の精度で対応していることが保証されていない場合には、画素単位のずれが存在する場合を想定して、つぎのような画素単位のずれを補償する動作を追加することも可能である。図10は、そのように変形した場合のパターン検査方法のフローチャートである。ステップSP70までの上記と同様の動作を行った後、被検査領域BRのいずれかの画素の画素値について、画素値範囲内に存在しないと判定された場合には、直ぐに欠陥があるとして判断することはせずに、ステップSP110へと移る(ステップSP90については後述)。
【0072】
ステップSP110では、1画素単位でずれた対応参照領域ARを更新する。図11に示すように、たとえば、上記の対応参照領域ARを、X方向に+1画素、−1画素、+2画素、−2画素ずらした領域のそれぞれを新たな対応参照領域AR(AR’)として設定することができる。あるいは、Y方向に+1画素、−1画素、+2画素、−2画素ずらした領域のそれぞれを新たな対応参照領域ARとして設定することができる。さらには、これらのずらし量をX方向およびY方向に組み合わせてずらした領域のそれぞれを新たな対応参照領域ARとして設定することも可能である。
【0073】
そして、これらの新たな対応参照領域ARについて、ステップSP50およびステップSP60の動作を行った後、上記と同様の欠陥有無判定動作を行う。
【0074】
そして、いずれかの対応参照領域ARについて、欠陥無しと判定された場合には、その被検査領域BRは、欠陥が無いとして判定することができる。これらの動作を所定のずらし量のそれぞれについてに全て終了したか否かをステップSP90において判定し、所定のずらし量の全てについての対応参照領域ARについて、欠陥が有るとして判定された場合には、被検査領域BRは欠陥が有るものとして判定することができる(ステップSP100)。
【0075】
このような欠陥有無判定により、被検査領域BRが欠陥領域であるか否かを判定することができる。
【0076】
<C.その他>
上記実施形態においては、被検査領域BRの注目画素EBと参照画像AP画像中の画素との対応関係を明確にするため、被検査領域BRに対する対応参照領域ARを抽出する動作を行った。しかしながら、この抽出動作は、必ずしも必要なものではなく、たとえば、被検査領域BR内の注目画素EBに対応する画素を参照画像APの中から直接対応づけることも可能である。
【0077】
上記実施形態においては、被検査領域BRを被検査画像BP内の所定の領域であるとしたが、その大きさは被検査画像BPに対して任意に設定することができる。たとえば、被検査領域BRを被検査画像BPの全体としてもよいし、被検査領域BRを1画素単位としてもよい。なお、後者の場合には、特に、1画素単位での欠陥位置の特定が可能になる。
【0078】
上記実施形態においては、被検査画像および参照画像はともに、画像取得部10における撮像によって取得されていたが、これに限定されない。たとえば、参照画像については、設計データ(CADデータ)などを利用して得ることができる。この場合、パターンの有無の境界部であるエッジ部分において、設計データが多値の階調値変化を有していないときでも、エッジ部分の立ち上がりを若干なまらせたモデルに基づいて多値の階調値変化を理論的に作り出すことが可能である。したがって、このようなモデル化により参照画像を生成することができる。そして、そのようにして得られた参照画像に基づいて、上記画素値範囲を作成すればよい。
【0079】
さらに、参照画像ではなく被検査画像の画素値に幅を持たせることも原理的には可能であるが、そのようにすると新たな対象物の画像を読込むごとに画素値範囲を計算しなければならず、そのための演算時間が長くなる。この点においても、上記実施形態のように参照画像側で画素値範囲を規定することにより、そのような演算時間の増大を防止できる。
【0080】
【発明の効果】
以上のように、各請求項に記載の発明によれば、被検査画像と参照画像との比較において、画素値の一致性判断における許容誤差範囲が画素ごとに設定されている。したがって、画素値同士を比較する場合などにおいて生じていた疑似欠陥の誤検出を回避することができ、画素単位の欠陥を精度良く検出することが可能である。また、許容誤差範囲を、各画素付近における画素値との補間によって算出するので、画素ごとに最適な許容誤差範囲を得ることができる。
【0081】
また、請求項2および請求項に記載の発明によれば、参照画像の画素値にあらかじめ範囲を持たせておいて画素値範囲としておき、その範囲に被検査画像の画素値が含まれるか否か判定していることにより、共通の参照画像を使用して同種の多数の対象物についてのパターン検査を行うに際してトータルの演算時間の短縮を図ることができる。
【0082】
特に、請求項3および請求項に記載の発明によれば、参照画像の各画素に対する画素値範囲は、各画素付近における画素値に基づいて、範囲の上限値および下限値として算出される。したがって、簡単な比較演算によって、参照画像の各画素に対して適した厳しさで判定が可能であり、より高精度のパターン検査を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態に係るパターン検査装置1の概略構成を示す図である。
【図2】欠陥検出部30の構成を示す概略図である。
【図3】パターン検査装置1における処理手順を表すフローチャートである。
【図4】参照画像APおよび被検査画像BPを示す概念図である。
【図5】被検査領域BR内のエッジ部分のX軸方向の画素列を表す図である。
【図6】参照画像APおよび被検査画像BPのX軸方向の画素値変化を表した図である。
【図7】画素値範囲を説明するための図である。
【図8】図7の一部を拡大した図である。
【図9】隣接する画素の値を用いた直線補間による補間方法を説明するための概念図である。
【図10】変形例に係るパターン検査方法の処理手順を表すフローチャートである。
【図11】位置ずれ補償を行うための対応参照領域ARの抽出方法を説明するための図である。
【図12】従来例のパターン検査について説明するための図である。
【符号の説明】
1 パターン検査装置
10 画像取得部
AP 参照画像
AR 対応参照領域
BP 被検査画像
BR 被検査領域
EB 注目画素
RV 画素値範囲
VU 上限値
VL 下限値

Claims (8)

  1. 表面にパターンが形成された対象物の画像を読取ってパターンの検査を行う装置であって、
    前記対象物の画像としての被検査画像と、前記被検査画像の比較基準となる参照画像とをそれぞれ多値画像として得る画像取得手段と、
    前記被検査画像と前記参照画像との画素値の一致性判断における許容誤差範囲を何れか一方の画像の画素ごとに、付近の画素値との補間によって算出し、設定する範囲設定手段と、
    前記許容誤差範囲内で前記被検査画像と前記参照画像とが一致するか否かを画素ごとに判定する判定手段と、
    を備えることを特徴とするパターン検査装置。
  2. 請求項1に記載のパターン検査装置において、
    前記範囲設定手段は、前記許容誤差範囲として、前記参照画像の各画素の画素値に対して幅を持たせた画素値範囲を設定する手段であり、
    前記判定手段は、前記被検査画像の画素値が前記参照画像の画素値範囲内に含まれるか否かを画素ごとに判定する手段であることを特徴とするパターン検査装置。
  3. 請求項2に記載のパターン検査装置において、
    前記参照画像の各画素に対する前記画素値範囲は、当該各画素付近における画素値に基づいて、範囲の上限値および下限値として算出されることを特徴とするパターン検査装置。
  4. 表面にパターンが形成された対象物の画像を読取ってパターンの検査を行う方法であって、
    前記対象物の画像としての被検査画像と、前記被検査画像の比較基準となる参照画像とをそれぞれ多値画像として得る工程と、
    前記被検査画像と前記参照画像との画素値の一致性判断における許容誤差範囲を何れか一方の画像の画素ごとに、付近の画素値との補間によって算出し、設定する範囲設定工程と、
    前記許容誤差範囲内で前記被検査画像と前記参照画像とが一致するか否かを画素ごとに判定する判定工程と、
    を備えることを特徴とするパターン検査方法。
  5. 請求項4に記載のパターン検査方法において、
    前記範囲設定工程は、前記許容誤差範囲として、前記参照画像の各画素の画素値に対して幅を持たせた画素値範囲を設定する工程であり、
    前記判定工程は、前記被検査画像の画素値が前記参照画像の画素値範囲内に含まれるか否かを画素ごとに判定する工程であることを特徴とするパターン検査方法。
  6. 請求項5に記載のパターン検査方法において、
    前記参照画像の各画素に対する前記画素値範囲は、当該各画素付近における画素値に基づいて、範囲の上限値および下限値として算出されることを特徴とするパターン検査方法。
  7. 表面にパターンが形成された対象物の画像を読取ってパターンの検査を行う装置であって、
    前記対象物の画像としての被検査画像と、前記被検査画像の比較基準となる参照画像とをそれぞれ多値画像として得る画像取得手段と、
    前記被検査画像と前記参照画像との画素値の一致性判断における許容誤差範囲を、何れか一方の画像の画素ごとに、画素値の空間的微分値に応じて、設定する範囲設定手段と、
    前記許容誤差範囲内で前記被検査画像と前記参照画像とが一致するか否かを画素ごとに判定する判定手段と、
    を備えることを特徴とするパターン検査装置。
  8. 表面にパターンが形成された対象物の画像を読取ってパターンの検査を行う方法であって、
    前記対象物の画像としての被検査画像と、前記被検査画像の比較基準となる参照画像とをそれぞれ多値画像として得る工程と、
    前記被検査画像と前記参照画像との画素値の一致性判断における許容誤差範囲を、何れか一方の画像の画素ごとに、画素値の空間的微分値に応じて、設定する範囲設定工程と、
    前記許容誤差範囲内で前記被検査画像と前記参照画像とが一致するか否かを画素ごとに判定する判定工程と、
    を備えることを特徴とするパターン検査方法。
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