JP3625760B2 - 変調誤差比測定装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、デジタル放送信号の変調誤差比(MER)を測定する変調誤差比測定装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、テレビジョン放送における地上波放送、衛星放送、ケーブル放送の各放送信号をデジタル化して、1つのチャネルに画像、音声のみならず、多数の付加情報を組込んで送信して、TVの視聴者に付加情報を選択させる計画が実験、及び一部実用化されている。
【0003】
このようなISDB―T(Integrated Services Digital Broadcasting −Terrestrial 総合デジタル地上波放送)システムで採用されるデジタル放送信号の信号品質を評価することは、視聴者に対して常時良好な画像を提供するために重要なことである。
【0004】
放送信号の信号品質を定量的に表す手法として、CN(デジタル)が一般的に採用されている。アナログ放送信号の各チャネルの周波数分布は、図9(a)に示すように、画像信号のスペクトル1と音声信号のスペクトル2とが互いに離間している。この場合、このチャネルの周波数帯域内における雑音レベル(N)は簡単に測定できる。また、画像信号のスペクトル1の信号レベル(C)も簡単に測定できる。よって、このアナログ放送信号のCNが簡単に求まる。
【0005】
しかしながら、日本国におけるISDB―Tシステムで採用されているBST―OFDM(Band Segmented Transmission−Orthogonal Frequency Division Multiplexing 帯域セグメント化伝送―直交周波数分割多重)変調方式で変調されたデジタル放送信号においては、図9(b)に示すように、このチャネルの周波数帯域内に映像、音声、付加情報等の多数のスペクトルが平均的に分散するので、周波数帯域内一杯の台形スペクトル3となる。その結果、この周波数帯域内の雑音は台形スペクトル3内に埋没するので、この雑音レベル(N)を直接測定できない。
【0006】
このような不都合を解消するために、図10(a)に示すように、アンテナ4から受信したデジタル放送信号に対して、雑音発生器(AWGN)6から出力される既知レベルの雑音(白色雑音)を信号加算器5で印加して、この雑音が印加されたデジタル放送信号を受信機7で受信して元のデジタルデータに復調し、この復調されたデジタルデータの誤り率(ビット・エラー・レート BER)を誤り率測定器8で測定する手法が実用化されている。
【0007】
一般に、デジタル信号における搬送波(キャリア)と雑音(ノイズ)との比で示されるCNと、誤り率(BER)との関係は、図10(b)に示すように、誤り率―CN特性9で示される。したがって、誤り率(BER)が測定できれば、このデジタル信号のCNは一義的に求まる筈である。
【0008】
しかし、誤り率―CN特性9における誤り率が小さい領域においては、正確なCNが求まらないので、誤り率測定器8の測定値が2×10−4(誤り率―CN特性9から対応するCNはCN1)に一致するまで雑音発生器(AWGN)6から出力される既知レベルの雑音を増加して、その時点に印加している雑音に対応するCN2を得る。したがって、求めるデジタル放送信号のCNは(CN1―CN2)となる。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、図10(a)に示すCN測定装置においてもまだ改良すべき次のような課題があった。
【0010】
すなわち、このCN測定装置においては、信号加算器5及び受信機7において全く雑音は発生せずに、この信号加算器5及び受信機7の存在が最終に測定されたCNに影響を与えないと見なしている。しかし、この信号加算器5及び受信機7においても雑音が発生し、この雑音に起因するビット誤りが発生する。したがって、高い精度でCNを測定できなかった。
【0011】
さらに、図10(b)に示した誤り率―CN特性9は、厳密に検証すると、図11に示すように、測定対象のデジタル信号の変調方式毎にその特性値が異なる。この図11の特性でも示すように、同一雑音レベル(同一CN値)であっても、多値変調方式ほど、誤り発生率(BER)は高いことを示す。
【0012】
したがって、ISDB―Tシステムで採用されるデジタル放送信号においては、例えば、映像プログラム、付加情報毎に異なる変調方式が採用されることが想定されるので、運用時にこれらの方法を用いることはできない。
【0013】
また、前述したように、ISDB―Tシステムで採用されるデジタル放送信号においては、1つのチャネルに映像プログラム、付加情報の変調された各信号がOFDM変調されているので、測定されたデジタル放送信号全体のCNが不良の場合、このCNの悪化原因が、映像プログラム、付加情報のうちのどの部分に起因するのか不明であり、CNを向上させるために有効な対策を短時間で講ずることができなかった。
【0014】
また、欧州で採用されているデジタル放送規格(DVB Digital Video Broadcasting)においては、デジタル放送信号の信号品質を、このデジタル放送信号の変調誤差比(MER Modulation Error Ratio )を測定することによって確認している。
【0015】
この変調誤差比(MER)とCNとは、システムや変調方式が定まればほぼ1対1で対応している。この変調誤差比(MER)は、受信したデジタル放送信号を復調して得られる図12に示すI、Q座標上のコンスタレーション・シンボルP’(I’、Q’)と論理的なコンスタレーション・シンボルP(I、Q)と間の距離で示される誤差分(ΔI、ΔQ)のRMS電力比を(1)式に示すように統計的に集計したものである。
【0016】
【数1】
【0017】
(1)式において、分子は搬送波(キャリア)の電力であり、分母は雑音の電力となる。
【0018】
しかしながら、欧州で採用されているデジタル放送信号においては、映像プログラム、付加情報の各位相変調された各信号を多重化する手法として、BST―OFDM変調方式ではなくて、C―OFDM(Coded―OFDM 符号化OFDM)変調方式を採用しているので、デジタル放送信号を映像、音声、付加情報の各階層別に分離して解析する必要はない。
【0019】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、ISDB―Tシステムで採用されるBST―OFDM変調方式で変調されたデジタル放送信号の全体の変調誤差比(MER)及び各階層毎の変調誤差比(MER)を簡単に測定でき、ISDB―Tシステムにおけるデジタル放送信号の信号品質をより高い精度で評価できる変調誤差比測定装置を提供することを目的とする。
【0020】
【課題を解決するための手段】
本発明は、1つのチャネルの周波数帯域に変調方式が異なる複数のデジタル情報の階層を配置しこれらの階層をBST―OFDM変調したデジタル放送信号の変調誤差比を測定する変調誤差比測定装置に適用される。
【0021】
そして、上記課題を解消するために、本発明の変調誤差比測定装置においては、 入力されたデジタル放送信号の周波数を中間周波数に変換して中間周波数信号として出力する周波数変換部と、この周波数変換部から出力された中間周波数信号をデジタルの中間周波数信号にA/D変換するA/D変換器と、このA/D変換器から出力されたデジタルの中間周波数信号をベースバンド信号に直交復調する直交復調手段と、この直交復調されたベースバンド信号からOFDM変調のシンボルタイミングを抽出するシンボルタイミング抽出手段と、この抽出されたシンボルタイミングを用いてベースバンド信号に対して、高速フーリエ変換処理することにより、デジタル放送信号の1つのチャネルを構成する全てのサブキャリアを抽出するOFDM復調手段と、このOFDM復調手段で抽出された全てのサブキャリアを、その使用周波数領域に基づいて変調方式が異なる複数のデジタル情報の各階層に区分ける区分け手段と、この変調方式が異なる複数のデジタル情報の各階層に区分けされた各階層毎のサブキャリアの全てを該当階層の位相変調方式に対応する復調方式で復調して、各階層毎のサブキャリアの全てに対するデータシンボル点を示す測定コンスタレーションを得る復調手段と、この復調された各階層毎のサブキャリアの全てに対するデータシンボル点を示す測定コンスタレーションから各階層毎のサブキャリアの全てに対する理論的シンボル点を示す理論的コンスタレーションを推定する推定手段と、復調された各階層毎のサブキャリアに対するデータシンボル点を示す測定コンスタレーションと推定された各階層毎のサブキャリアに対する理論的シンボル点を示す理論的コンスタレーションとの誤差分を各階層毎のサブキャリアの全てに対して算出する誤差算出手段と、この算出された各階層のサブキャリアの全てに対する誤差分の総和と該当階層のサブキャリアの全てに対する理論的シンボル点を示す理論的コンスタレーションの総和との電力比を各階層毎に変調誤差比として算出する変調誤差比算出手段と、この算出された各階層毎の変調誤差比を表示する表示手段とを備えている。
【0022】
このように構成された変調誤差比測定装置において、変調誤差比(MER)の測定対象のデジタル放送信号は、1つのチャネルの周波数帯域に変調方式が異なる複数のデジタル情報の階層を配置しこれらの階層をBST―OFDM変調したものである。
【0023】
このようなデジタル放送信号においては、例えば6MHzの1つのチャネルの周波数帯域内に周波数分割されて、映像プログラム、付加情報等を含む複数の階層が配置されている。したがって、これらの階層をBST―OFDM変調したデジタル放送信号をOFDM復調して得られる各サブキャリアを各階層に区分可能である。その結果、各階層毎のサブキャリアが特定されるので、各階層毎のサブキャリアを復調すれば、各階層毎の測定コンスタレーションが得られる。よって、各階層毎の変調誤差比(MER)が得られる。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施形態を図面を用いて説明する。
図1は実施形態に係る変調誤差比測定装置の概略構成を示すブロック図である。
【0025】
外部から入力されたBST―OFDM変調されたデジタル放送信号aは周波数変換部11へ入力される。このBST―OFDM変調されたデジタル放送信号aは例えば図2に示す周波数特性を有する。なお、図2は、TV用のデジタル放送信号aにおける1つのチャネルの例えば6MHzの周波数帯域のみを示す。
【0026】
図示するように、この6MHzの周波数帯域内に、変調方式が異なるB階層12、A階層13、C階層14及び特別サブキャリア15が周波数が小さい順に配置されている。各階層12〜14内には送信すべきデジタル情報で変調された複数のサブキャリアが含まれる。
【0027】
この実施形態においては、B階層12はデータ通信の階層であり、このB階層12の変調方式はQPSKである。また、A階層13は移動体受信の階層であり、このA階層13の変調方式はDQPSKである。C階層14はTVの映像・音声送信の階層であり、このC階層14の変調方式は大容量の情報が送信可能な64QAMである。さらに、特別サブキャリア15は、A階層13、B階層12、C階層14の各サブキャリアの上述した変調方式及び使用周波数帯域の情報を有し、この特別サブキャリア(TMCC、AC)15の変調方式は最も高い雑音耐性を有するDBPSKである。さらに、この特別サブキャリア(TMCC、AC)15の信号レベルは他のA階層13、B階層12、C階層14の信号レベルより2.5dB高く設定されている。
【0028】
この1つのチャネルの6MHzの周波数帯域内における特別サブキャリア15の変調方式及び使用周波数帯域は固定であるが、その他の各階層12〜14の設置数、各使用周波数帯域、採用変調方式は、各階層で伝送しようとする情報に応じて任意に設定変更可能である。
【0029】
図1に示す変調誤差比測定装置において、入出力操作部(ヒューマン・インターフェース)16は、操作部17と表示部18とで構成されている。操作部17内には、信号周波数設定部19と階層合成構造設定部20とが含まれる。信号周波数設定部19は、TV放送の各チャネルの搬送波周波数を記憶し、入力したデジタル放送信号aのうちの操作者が指定したチャネルの信号を中間周波数信号bに変換するための局部発振(ローカル)信号dを発振して、周波数変換部11へ送出する。
【0030】
階層合成構造設定部20は、操作者が例えばキーボード等を用いて設定した試験対象の図2に示す中間周波数信号に周波数変換された状態のデジタル放送信号における各階層の使用周波数帯域を区分け部21へ送出すると共に、各階層12〜14の変調方式を復調部22へ送出する。
【0031】
例えば液晶表示器と表示制御回路で構成された表示部18には、この変調誤差比測定装置で測定された搬送波(キャリア)周波数の周波数誤差23、各階層12〜14の変調誤差比(MER)24、各階層12〜14の測定コンスタレーション25を表示する。
【0032】
周波数変換部11は、信号周波数設定部19から印加されている局部発振(ローカル)信号dを用いて入力されたデジタル放送信号aの周波数を中間周波数に変換して中間周波数信号bとして次のA/D変換器26へ送出する。A/D変換器26は入力された中間周波数信号bをデジタルの中間周波数信号b1に変換して直交復調部27へ送出する。
【0033】
直交復調部27は、入力されたデジタルの中間周波数信号b1を同相成分Iと直交成分Qとからなるベースバンド信号I、Qに直交復調して、第1の周波数誤差測定部28及び周波数誤差補正部29へ送出する。第1の周波数誤差測定部28は、ベースバンド信号I、Qに含まれる不要な周波数成分、すなわち周波数誤差Δf1を検出して、この周波数誤差Δf1を周波数誤差補正部29及び表示部18へ送出する。
【0034】
周波数誤差補正部29は、第1の周波数誤差測定部28からの周波数誤差Δf1及び第2の周波数誤差測定部31からの周波数誤差Δf2を用いて、直交復調部27から入力されたベースバンド信号I、Qに含まれる周波数誤差を粗く補正して、周波数補正後のベースバンド信号I’、Q’をシンボルタイミング抽出部30及びOFDM復調部32へ送出する。
【0035】
シンボルタイミング抽出部30は、入力された周波数補正後のベースバンド信号I’、Q’からガードインターバル関数を用いて、OFDMシンボルタイミングを抽出してOFDM復調部32へ印加する。
【0036】
OFDM復調部32は、シンボルタイミング抽出部30からのOFDMシンボルタイミングを用いて、入力された周波数補正後のベースバンド信号I’、Q’に対して高速フーリエ変換処理(FFT)を実施することによって、デジタル放送信号aの指定された1つのチャネルに含まれる全てのサブキャリアを抽出して、伝送路イコライザ33、第2の周波数誤差測定部31及び伝送路特性算出部34へ送出する。
【0037】
第2の周波数誤差測定部31は、入力されたサブキャリアのSP(スカッタード・パイロット)、CP(コンティニュアル・パイロット)を用いて周波数補正後のベースバンド信号I’、Q’の周波数におけるさらに詳細な周波数誤差Δf2を測定して前述した周波数誤差補正部29へ送出する。したがって、周波数誤差補正部29は、先に周波数補正したベースバンド信号I’、Q’を再度周波数補正することになるので、ベースバンド信号I’、Q’の周波数精度がさらに向上する。また、第2の周波数誤差測定部31は測定した詳細な周波数誤差Δf2を表示部18へ送信する。
【0038】
伝送路特性算出部34は、入力されたサブキャリアのSP(スカッタード・パイロット)より、伝送路の周波数特性を推定し、この伝送路の周波数特性が各サブキャリア毎の該当伝送路を伝送される場合の位相、振幅に与える影響度(変化度)を算出して伝送路イコライザ33へ送出する。
【0039】
伝送路イコライザ33は、OFDM復調部32で復調された各サブキャリアに対して伝送路特性算出部34から入力された各サブキャリア毎の影響度(変化度)の逆数を乗算して、各サブキャリアが伝送路を通過することに起因する特性変化を補償する。伝送路イコライザ33で特性変化が補償された各サブキャリアは、次の区分け部21へ入力される。
【0040】
区分け部21は、階層合成構造設定部20から設定された各階層12、13、14及び特別サブキャリア15の使用周波数領域に基づいて、入力された1つのチャネルに含まれる各サブキャリアを、各階層12、13、14及び特別サブキャリア15の各サブキャリアに区分けして、復調部22へ送出する。
【0041】
復調部22は、階層合成構造設定部20から設定された各階層12、13、14及び特別サブキャリア15の変調方式に基づいて、各階層12、13、14及び特別サブキャリア15の各サブキャリアを、それぞれ対応する復調方式で復調して、図3に示すように、I、Q座標上における位置Pm(Im、Qm)を示す測定コンスタレーション[Im、Qm]を求めて推定部35及び誤差算出部36へ送出する。
【0042】
推定部35は、各階層12、13、14及び特別サブキャリア15毎に、測定コンスタレーション[Im、Qm]から、該当サブキャリアに対応する変調方式のI、Q座標上における理論的位置PS(IS、QS)を示す理論的コンスタレーション[IS、QS]を推定して、誤差算出部36及びMER(変調誤差比)算出部37へ送出する。
【0043】
誤差算出部36は、測定コンスタレーション[Im、Qm]と理論的コンスタレーション[IS、QS]との誤差分ΔI、ΔQを算出して、MER(変調誤差比)算出部37へ送出する。
【0044】
ΔI=Im―IS ΔQ=Qm―QS
MER(変調誤差比率)算出部37は、各階層12、13、14及び特別サブキャリア15毎に、誤差分ΔI、ΔQと、理論的コンスタレーションの各値IS、QSとのRMS電力比で示される変調誤差比(MER)を(2)式で算出する。
【0045】
【数2】
【0046】
(2)式において、分子は搬送波(キャリア)の電力であり、分母は雑音の電力となる。
【0047】
MER(変調誤差比)算出部37は、各階層12、13、14及び特別サブキャリア15毎の変調誤差比(MER)を算出すると共に、各階層12、13、14及び特別サブキャリア15の平均の変調誤差比(MER)を算出する。MER(変調誤差比)算出部37は、算出した各階層12、13、14及び特別サブキャリア15毎の変調誤差比(MER)、及び平均の変調誤差比(MER)、各階層12、13、14の測定コンスタレーション[Im、Qm]を入力操作部16の表示部18へ送出する。
【0048】
入力操作部16の表示部18の表示制御回路は、各周波数誤差測定部28、31から入力された各周波数誤差Δf1、Δf2、各階層12、13、14及び特別サブキャリア15毎の変調誤差比(MER)、及び平均の変調誤差比(MER)、各階層12、13、14の測定コンスタレーション[Im、Qm]を編集して、表示画面に図4〜図7に示すフォーマットで表示する。
【0049】
図4は、測定コンスタレーション[Im、Qm]を除く全体の測定結果を示す図である。
この全体の測定結果を示す表示画面38には、測定された搬送周波数39、基準周波数40、各周波数誤差Δf1、Δf2から求めた平均の周波数誤差23、平均の変調誤差比(MER)24aと各階層12、13、14及び特別サブキャリア15毎の変調誤差比(MER)24bとからなる変調誤差比(MER)24が表示される。
【0050】
図5は、図4に示す全体の表示画面38からA階層の測定結果を抽出して表示した表示画面38aを示す図である。この表示画面38aには、A階層で採用されている、例えば64QAMの変調方式における測定コンスタレーション[Im、Qm]25aが表示されている。
【0051】
図6は、図4に示す全体の表示画面38からB階層の測定結果を抽出して表示した表示画面38bを示す図である。この表示画面38bには、B階層で採用されている、例えばQPSKの変調方式における測定コンスタレーション[Im、Qm]25bが表示されている。
【0052】
図7は、図4に示す全体の表示画面38からC階層の測定結果を抽出して表示した表示画面38cを示す図である。この表示画面38cには、C階層で採用されている、例えばDQPSKの変調方式における測定コンスタレーション[Im、Qm]25cが表示されている。
【0053】
この図4〜図7に示す変調誤差比(MER)の測定結果によると、たとえ同一のデジタル放送信号aであったとしても、このデジタル放送信号aに含まれる各階層毎に、変調誤差比(MER)が異なる。この実施形態においては、DBPSK変調され、信号レベルが2.5dB高く設定された特別サブキャリア15が最も高い変調誤差比(MER)を有する。
【0054】
このように構成された変調誤差比測定装置においては、変調誤差比(MER)の測定対象のデジタル放送信号aは、図2に示すように、1つのチャネルの例えば、6MHの周波数帯域に周波数分割されて、音声、画像、付加情報等を含む変調方式(DQPSK、QPSK、64QAM)が異なる複数の階層12、13、14と特別サブチャネル15(DBPSK)を配置しこれらの階層をBST―OFDM変調した信号である。
【0055】
したがって、これらの階層12、13、14と特別サブチャネル15とをBST―OFDM変調したデジタル放送信号aを、OFDM復調部32でOFDM復調して得られる各サブキャリアを元の各階層12、13、4と特別サブチャネル15に区分可能である。その結果、区分け部21において各階層12、13、14と特別サブチャネル15毎のサブキャリアが特定される。
【0056】
そこで、復調部22で各階層毎のサブキャリアを各階層に指定された変調方式(復調方式)で復調すれば、各階層毎の測定コンスタレーション[Im、Qm]25a、25b、25cが得られる。よって、MER(変調誤差比)算出部37において、各階層12、13、14毎の変調誤差比(MER)24bが得られる。
【0057】
このように、BST―OFDM変調されたデジタル放送信号aの各チャネルを構成する各階層12、13、14及び特別サブキャリア15毎に、変調誤差比(MER)24bを測定可能であるので、例えば、平均の変調誤差比(MER)24aが低下した場合、どの階層12、13、14の変調誤差比(MER)24bが劣化したのかを正確に判断できる。すなわち、図2の例では、データ通信が異常か、移動体受信が異常か、画像・音声が異常であるかを直ちに把握できるので、異常対策を即座に実施できる。
【0058】
また、この実施形態装置においては、搬送波(キャリア)の周波数の周波数誤差23も測定して表示している。
このように、BST―OFDM変調されたデジタル放送信号aの信号品質をより高い精度で測定できる。
【0059】
なお、本発明は上述した実施形態の変調誤差比測定装置に限定されるものではない。
この実施形態装置においては、BST―OFDM変調されたデジタル放送信号の変調誤差比(MER)を測定して表示部に表示するようにした。しかし、さらに、この変調誤差比(MER)をCNに換算して、変調誤差比(MER)とCNとを同時に表示することも可能である。この場合、図8に示す変調誤差比(MER)―CN特性を用いて換算する。
【0060】
この図8に示す特性は、同一のデジタル放送信号に対して雑音成分(N)を順次変化させて行った場合における、実施形態装置で測定された変調誤差比(MER)と、図10で示したCN測定装置で測定されたCNとの対比を示す実験結果である。40dB以下においては、変調誤差比(MER)はCNに対してほぼ1対1で対応していることが理解できる。さらに、40dBを超える変調誤差比(MER)も正確にCNに変換できる。
このように、図8の特性を用いて変調誤差比(MER)を簡単にCNに換算できる。
【0061】
さらに、変調誤差比(MER)をCNに換算できると、送信機や中継機等の各種放送機器自体が有する雑音成分である残留CNを測定することができる。そして、残量CNが測定できれば、デジタル放送信号が送信機、中継機、TTL等を通過することに起因する信号品質の劣化を事前に算出して把握することが可能である。
【0062】
なお、変調誤差比(MER)等の信号品質の劣化を直接測定するためには、劣化測定対象の放送機器に印加するデジタル放送信号は十分に良好な変調誤差比(MER)を有する必要があるので、高品質のデジタル放送信号を発生できる信号発生装置を用いる必要がある。
【0063】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の変調誤差比測定装置においては、ISDB―Tシステムで採用されるBST―OFDM変調方式で変調されたデジタル放送信号における全体の変調誤差比(MER)及び各階層毎の変調誤差比(MER)を簡単に測定でき、ISDB―Tシステムにおけるデジタル放送信号の信号品質をより高い精度で評価できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係る変調誤差比測定装置の概略構成を示すブロック図
【図2】測定対象のデジタル放送信号の周波数特性図
【図3】コンスタレーションの誤差分の求め方を示す図
【図4】表示部に表示された測定結果を示す図
【図5】同じく表示部に表示された測定結果を示す図
【図6】同じく表示部に表示された測定結果を示す図
【図7】同じく表示部に表示された測定結果を示す図
【図8】変調誤差比(MER)とCNとの関係を示す図
【図9】一般的なアナログ放送信号及びアナログ放送信号の周波数特性図
【図10】従来のCN測定装置及び誤り率―CN特性を示す図
【図11】各変調方式毎の誤り率―CN特性を示す図
【図12】一般的なMERの求め方を示す図
【符号の説明】
11…周波数変換部
12、13、14…階層
15…特別サブキャリア
16…入出力操作部
17…操作部
18…表示部
19…信号周波数設定部
20…階層合成構造設定部
21…区分け部
22…復調部
26…A/D変換器
27…直交復調部
28…第1の周波数誤差測定部
29…周波数誤差補正部
30…シンボルタイミング抽出部
31…第2の周波数誤差測定部
32…OFDM復調部
33…伝送路イコライザ
34…伝送路特性算出部
35…推定部
36…誤差算出部
37…MER(変調誤差比)算出部
Claims (1)
- 1つのチャネルの周波数帯域に変調方式が異なる複数のデジタル情報の階層(12、13、14)を配置しこれらの階層をBST―OFDM変調したデジタル放送信号(a)の変調誤差比(MER)を測定する変調誤差比測定装置において、
入力された前記デジタル放送信号の周波数を中間周波数に変換して中間周波数信号として出力する周波数変換部(11)と、
この周波数変換部から出力された中間周波数信号をデジタルの中間周波数信号にA/D変換するA/D変換器(26)と、
このA/D変換器から出力されたデジタルの中間周波数信号をベースバンド信号に直交復調する直交復調手段(27)と、
この直交復調されたベースバンド信号からOFDM変調のシンボルタイミングを抽出するシンボルタイミング抽出手段(30)と、
この抽出されたシンボルタイミングを用いて前記ベースバンド信号に対して、高速フーリエ変換処理することにより、前記デジタル放送信号の1つのチャネルを構成する全てのサブキャリアを抽出するOFDM復調手段(32)と、
このOFDM復調手段で抽出された全てのサブキャリアを、その使用周波数領域に基づいて前記変調方式が異なる複数のデジタル情報の各階層に区分ける区分け手段(21)と、
この変調方式が異なる複数のデジタル情報の各階層に区分けされた各階層毎のサブキャリアの全てを該当階層の位相変調方式に対応する復調方式で復調して、各階層毎のサブキャリアの全てに対するデータシンボル点を示す測定コンスタレーションを得る復調手段(22)と、
この復調された各階層毎のサブキャリアの全てに対するデータシンボル点を示す測定コンスタレーションから各階層毎のサブキャリアの全てに対する理論的シンボル点を示す理論的コンスタレーションを推定する推定手段(35)と、
前記復調された各階層毎のサブキャリアに対するデータシンボル点を示す測定コンスタレーションと前記推定された各階層毎のサブキャリアに対する理論的シンボル点を示す理論的コンスタレーションとの誤差分を各階層毎のサブキャリアの全てに対して算出する誤差算出手段(36)と、
この算出された各階層のサブキャリアの全てに対する誤差分の総和と該当階層のサブキャリアの全てに対する理論的シンボル点を示す理論的コンスタレーションの総和との電力比を各階層毎に変調誤差比として算出する変調誤差比算出手段(37)と、
この算出された各階層毎の変調誤差比を表示する表示手段(18)と
を備えた変調誤差比測定装置。
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