JP3625583B2 - 高圧ガスからの圧力エネルギー回収設備 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ガス供給基地からガス導管にて需要先近傍まで大量に移送される高圧ガスを減圧して低圧ガスとして需要先のガス利用設備に供給する際に、低圧ガスを安定的に供給するとともに高圧ガスの圧力エネルギーを電力として有効に回収することのできるエネルギー回収設備に関する。
【0002】
【従来の技術】
LNG(液化天然ガス)基地で精製される天然ガスや、重質油、石炭などから製造される合成ガスは、ガス導管により需要先であるガス利用設備例えば火力発電所に大量に移送される。その際ガス供給基地から複数の需要先にガスが移送されるが、需要先の中には例えばコンバインドサイクル用ガスタービンといった30kg/cm2 程度もの高圧ガスを必要とする設備が含まれる場合があり、またこのようなボイラが需要先の中に含まれていなくても、末端の圧力低下による例えば発電停止といったトラブルを避けるために予め基地側からのガス供給圧力を高くしている。こうしたことからガス供給基地からガスが例えば25〜100kg/cm2 程度の圧力で需要先(詳しくは需要先近傍)に移送される。
【0003】
そして高圧ガスは、一般に減圧弁設備にて減圧され低圧ガスとして需要先に供給される。この減圧弁設備では、従来単に減圧するのみで高圧ガスの有する圧力エネルギーを捨てているのみでなく、断熱膨脹でガスを減圧する際の温度が設定値以下にならないように高温の熱媒体と熱交換して加温しており、さらにエネルギーを消費しているのが実情であった。
【0004】
そこで本発明者等らは、高圧ガスの圧力エネルギーを有効に回収するために減圧発電設備を開発しつつある。この設備は、高圧ガスを膨脹タービンに導入して減圧に伴う膨脹により当該タービンを駆動し、膨脹タービンに同軸で連結された同期発電機により発電を行い、自家消費用あるいは事業用電力としてエネルギーを回収するものである。
【0005】
図5は、このような減圧発電設備を用いた圧力エネルギー回収設備の検討段階の一例を示し、この例では主配管路1の膨脹タービン10の下流側に設置された圧力検出部11の圧力検出値に応じて、圧力コントローラ12により膨脹タービン10の入口側の圧力調節弁V1を制御し、需要先のガス利用設備のガス使用量に見合ったエネルギーを回収しようとしてる。
【0006】
一方主配管路1に対してバイパス配管路2が設けられている。これは、減圧発電設備の定期補修時あるいは故障時に需要先に支障が起こらないようにするためであり、また減圧発電を行っているときでもガス利用設備のガス使用量の不足分をバイパス配管路2を通じて需要先に供給し、安定した供給ができるようにしている。
【0007】
バイパス配管路2においても圧力調節弁V2及び圧力検出部21を設け、圧力検出部21の圧力検出値に応じて圧力コントローラ22により圧力調節弁V2を制御している。ただし主配管路1及びバイパス配管路2における圧力制御は大まかなものであって、最終的な微調整はガス利用設備側で行われる。なお主配管路1及びバイパス配管路2には、減圧後のガスの温度を所定温度に維持するための熱交換器や加温器が設けられるが図示では省略してある。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
圧力コントローラ12(22)では、圧力設定値と圧力検出部11(21)の圧力検出値との偏差分をPID演算し、その演算出力を圧力調節弁V1(V2)の開度信号としてガスの圧力調節を行う。主配管路1及びバイパス配管路2の夫々の圧力設定値PS1、PS2は需要先のガス使用量などに応じて適宜定めることができる。
【0009】
主配管路1のガス流量をバイパス配管路2のガス流量よりも多くするためにPS1をPS2より高めに設定した場合は、主配管路1を流れるガス圧力がバイパス管路2の設定圧力PS2になるまで主配管路1のみにガスが流れ、PS2以下になってはじめてバイパス配管路2にガスが流れることになり、バイパス配管路2の制御弁作動初期時にガス圧力制御が不安定になる欠点を有するとともに、一方の配管および制御弁のみを利用することが大部分となるため下流へのガスの供給の変動が大きい場合には、制御の応答性が十分でなく、装置全体の均等負荷の観点でも好ましくない。
【0010】
また、PS1とPS2とを同じ設定値とした場合には、各管路1、2の圧力損失の僅かな差により、圧力検出値11、21に差が生じ、圧力検出値の高い方の圧力制御弁が閉の方へ動き、圧力検出値の低い方の圧力制御弁が開の方へ動くこととなり、どちらか一方の圧力制御弁が全閉、他方が全開となって安定してしまい、実質的に一方の制御弁のみで制御することになり、上記と同様に制御の応答性が十分でなく装置全体の負荷を均等に分担するとの観点から好ましくない。
【0011】
このように複数の配管路に各々制御弁を備えて、下流の需要量の変動に応じて安定的にガスを供給する場合には、各々の圧力制御弁を独立したPID制御で実施しても、複数の圧力制御弁を有効に活用することができないこととなる。
【0012】
本発明は、このような事情の下になされたものでありその目的は、高圧ガスを減圧して低圧ガスとしてガス利用設備に供給する際に、高圧ガスの圧力エネルギーを電力として確実に回収すると共に需要先の需要量に応じた低圧ガスを安定的に供給することのできるエネルギー回収設備を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明では、同期発電機に連結された膨脹タ−ビンが介装され、高圧ガスを前記膨脹タ−ビンに導入して低圧ガスに減圧し、その低圧ガスをガス利用設備に供給する主配管路と、この主配管路から分岐され、前記膨脹タ−ビンをバイパスするバイパス配管路と、を設ける。
【0014】
そして前記主配管路には、膨脹タ−ビン入口のガス圧力を調節する第1の圧力調節弁及び膨脹タ−ビン出口のガス圧力を検出する第1の圧力検出部を設けて、第1の圧力制御部により膨脹タ−ビン出口のガス圧力をPID制御すると共に、前記バイパス配管路には、、第2の圧力調節弁及びこの第2の圧力調節弁により減圧されたガス圧力を検出する第2の圧力検出部とを設けて、第2の圧力制御部により低圧側のガス圧力をPID制御する。
【0015】
前記第1の圧力制御部は、調整圧力設定値QS1と第1の圧力検出部にて検出した圧力検出値との偏差をPID演算して第1の圧力調節弁の弁開度制御信号を出力すると共に、この弁開度制御信号に予め設定された圧力調定率を乗算してその乗算値を予め設定された圧力設定値PS1から差し引いた値を調整圧力設定値QS1とするように構成される。また前記第2の圧力制御部についても同様に、調整圧力設定値QS2と第2の圧力検出部にて検出した圧力検出値との偏差をPID演算して第2の圧力調節弁の弁開度制御信号を出力すると共に、この弁開度制御信号に予め設定された圧力調定率を乗算してその乗算値を予め設定された圧力設定値PS2から差し引いた値を調整圧力設定値QS2とするように構成される。
【0016】
前記膨脹タ−ビンは、高圧ガスの圧力、温度、流量及び出口温度などに応じて、単段または複数段のいずれにするかが決定される。複数段とした場合、エネルギ−効率の観点から中間圧力のガスを加温することが好ましい。
【0017】
バイパス配管路の第2の圧力調節弁の上流側には、ガス利用設備のガス温度に見合うように加温部が設けられるが、主配管路の加温部で用いる熱媒とバイパス配管路の加温部で用いる熱媒とは互いに異なるものを使用することが望ましい。これは、仮に共通の熱媒を用いると、その熱媒が使用できなくなったときに低圧ガスの供給が停止してまうので、異なる熱媒を用いることにより、低圧ガスを安定的に供給するためである。
【0018】
また主配管路の加温部の熱媒は、ガス利用設備で用いられる冷媒例えば海水がガス利用設備で熱交換された後の温海水を用いることが、熱エネルギ−の有効利用を図る点から望ましい。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下本発明を一実施の形態に基づいて図面を参照しながら説明する。図中Lは例えばLNG基地から高圧ガスが各需要先例えば火力発電所に供給するためのパイプラインである。このパイプラインLから主配管路1が分岐し、この主配管路1の下流側には需要先の利用設備である発電所のボイラBLが設けられている。
【0020】
主配管路1には減圧発電設備3が介設されており、この減圧発電設備3は、膨脹タービン4と、この膨脹タービン4に同軸で連結された同期発電機Gとを備えている。膨脹タービン4の型式については、タービン入口のガス流量、圧力、温度及びタービン出口の温度によって、単段、多段のいずれかにするか、あるいはガス流を半径流、軸流のいずれかにするかが選定される。
【0021】
高圧ガスが断熱膨脹し、圧力エネルギーが回収されると、ガスの温度が下がるので、エネルギー効率、設備の観点からタービン翼、軸、ケーシングの材料を考慮して、本実施の形態では前段側のタービン(以下高圧タービンという)4A及び後段側のタービン(以下低圧タービンという)4Bよりなる2段式の膨脹タービン4を用い、高圧ガスが高圧タービン4Aで減圧された中間圧力ガスを加温する第1の加温器5Aと、中間圧力のガスが低圧タービン4Bで減圧された低圧ガスを加温する第2の加温器5Bとが設けられている。
【0022】
第1及び第2の加温器5A、5Bの熱媒としては、例えば復水器からの発電所の冷媒である冷却用の海水(温海水)が用いられる。熱媒は常温の海水を用いてもよいが、温海水を用いれば、発電所から取り出した熱エネルギーが減圧されたガスに吸熱されてガスの温度が高まる一方、温海水が冷却されるので、熱エネルギーが有効に利用される。高圧タービン4Aにて減圧された中間圧力ガスを加熱するのは、断熱膨脹により温度が低下したガスを再熱して一旦エンタルピーを高め、低圧タービン4Bにて高い効率で圧力エネルギーを回収するためである。なお中間圧力ガスを再熱すれば、こうした利点に加え、配管その他の機器材料に低温耐性を有する特殊な材料を使用しなくて済むので設備費用の高騰が抑えられるという利点もある。また低圧タービン4Bにて減圧された低圧ガスを加熱するのは、需要先の仕様温度に見合うようにするためである。
【0023】
ここで高圧ガスの圧力は例えば25〜100kg/cm2 G、好ましくは30〜60kg/cm2 Gであり、低圧ガスの圧力は例えば1〜8kg/cm2 G好ましくは2〜8kg/cm2 Gである。各部のガス圧力及びガス温度の一例を挙げると、高圧タービン4Aの入口の高圧ガス温度は例えば22℃であり、高圧ガスガービン4Aの出口では、ガス圧力(中間圧力)が例えば17〜26kg/cm2 G、ガス温度が例えば−23℃となる。中間圧力ガスは、第1の加温器5Aにて例えば25℃に加温され、低圧タービン4Bの出口側では圧力が例えば4.7〜7.1kg/cm2 G、温度が例えば−30℃となり、第2の加温器5Bにて例えば10℃に加温される。
【0024】
前記主配管路1には、膨脹タービン4の上流側に第1の圧力調節弁V1が介設されると共に、第2の加温器5Bの下流側に第1の圧力検出部11が設けられている。第1の圧力検出部11の検出信号(圧力検出値AP1)は第1の圧力制御部である第1の圧力コントローラ6に入力され、この圧力コントローラ6は圧力検出値AP1に基づいて第1の圧力調節弁V1の弁開度を制御するように構成されている。
【0025】
前記主配管路1における第1の圧力調節弁V1の上流側と第1の圧力検出部11の下流側との間には、膨脹タービン4をバイパスするバイパス配管路2が接続されている。このバイパス配管路2には、加温器20、第2の圧力調節弁V2及び第2の圧力検出部21が上流側からこの順に介設されている。
【0026】
前記加温器20は、第2の圧力調節弁V2で減圧したときの低圧ガスが需要先の仕様温度例えば10℃程度となるように、高圧ガスを温水により90℃程度まで加熱する。なお加温器20は、圧力調節弁V2の上流側に設けることにより、下流側に設けた場合に比べて処理量を少なくできるので設備の規模を小さくできる利点がある。また加温器20の熱媒としては、減圧発電設備3の加温器5A、5Bと同様に温海水を利用してもよいが、このようにすると温海水が使用できない状況が発生した場合、低圧ガスをガス利用設備に供給できなくなるので、低圧ガスの安定的供給という観点から主配管路の温海水とは別途の温水を用いることが好ましい。
【0027】
ここで前記第1の圧力コントローラ6に関して図2を参照しながら述べると、この第1の圧力コントローラ6は、前段比較部61、後段比較部62、PID(比例要素、積分要素、微分要素)調節部63及び圧力調定率調整部64を備えている。PID調節部63から出力される弁開度制御信号VCは圧力調定率調整部64にて調整率(α%)例えば4%の圧力調定率が乗算され、その演算値VC×(α%)が前段比較部61に入力される。
【0028】
前段比較部61では予め定めた圧力設定値PS1から前記演算値VC×(α%)を差し引き、調整圧力設定値QS1として後段比較部62に入力される。後段比較部62では調整圧力設定値QS1=[PS1−VC×(α%)]から圧力検出信号AP1を差し引き、その偏差分を動作信号としてPID調節部63に入力する。PID調節部63は、前記動作信号(偏差分)に基づきPID演算を行い、その演算結果を前記圧力調定率調整部64を介してフィードバックすると共に、弁開度制御信号VCとして出力する。この弁開度信号は図示しない弁駆動部に与えられ、この結果第1の圧力調節弁V1の弁開度が調節され、減圧発電設備3の下流側のガス圧力がPID制御される。
【0029】
またバイパス配管路2側においても第2の圧力コントローラ7が設けられ、既述の圧力設定値PS1、弁開度制御信号VC及び圧力検出信号AP1が夫々バイパス配管路2の圧力設定値PS2、第2の圧力調節弁V2の弁開度制御信号及び第2の圧力検出部21の圧力検出信号AP2と置き代わる以外は同様の構成であり、圧力設定値PS2から、弁開度制御信号に圧力調定率(β%)例えば4%を乗算した値が差し引かれた調整圧力設定値QS2が同様に設定信号として用いられる。第1、第2の圧力コントローラ6、7の圧力調定率α、β%は同じであってもよいし異なっていてもよいが、1〜10%が好ましく、3〜6%であればより好ましい。
【0030】
次に上述実施の形態の作用について述べる。例えば火力発電設備であるガス利用設備UにてパイプラインLのガスを使用する場合、パイプラインLの例えば60kg/cm2 Gの高圧ガスが主配管路1に抜出され、第1の圧力調節弁V1を介して減圧発電設備3に導入されると共に、一部の高圧ガスはバイパス配管路2を流れる。
【0031】
減圧発電設備3において高圧ガスは先ず膨脹タービン4のうちの高圧タービン4Aにて膨脹し、当該タービン4Aを回して減圧エネルギーが回収され、次いで既述のように再熱された後低圧タービン4Bにて膨脹し、当該タービン4Bを回して減圧エネルギーが回収される。この結果同期発電機Gの回転子が回転し、所定の回転数になったところでこの発電機Gを系統に接続する。その後同期発電機の回転子は一定の回転数で回転し、膨脹タービン4の駆動トルクつまり高圧ガスの流量に対応した発電出力が系統に供給される。こうして高圧ガスから低圧ガスに減圧されるときの減圧エネルギーが電力として回収される。
【0032】
膨脹タービン4にて減圧された低圧ガスは、バイパス配管路を通って第2の圧力調節弁Vにて減圧された低圧ガスと合流してガス利用設備Uに送られ、ここで図示しない圧力調整バルブ及び流量調整バルブにより夫々圧力、流量が所定の値に調整されてボイラBLに送られる。
【0033】
そして主配管路1及びバイパス配管路2では、低圧側の圧力検出値が圧力設定値になるように圧力調節弁V1(V2)の弁開度が制御されるが、本発明におけるこの調整圧力設定値は、既述のように予め設定した圧力設定値PS1(PS2)から弁開度制御信号に圧力調定率(α%)を乗算した分だけ小さい調整された値となる。従ってガス利用設備Uでのガス使用量が減少すると、圧力検出値が大きくなるので、圧力コントローラ6(7)の制御ループは、弁開度制御信号を徐々に小さくして圧力調節弁V1(V2)を閉じる方向に働く。
【0034】
このため弁開度制御信号×圧力調定率の値が小さくなるので、PID制御に直接係わる調整圧力設定値が徐々に大きくなり、低圧側の圧力が徐々に上昇する。そして圧力調節弁V1(V2)が閉まり過ぎて圧力検出値が低下し始め、今度は制御ループは圧力調節弁V1(V2)を開く方向に働き、このような振れが繰り返されて圧力値及び弁開度が収束する。
【0035】
第1の圧力調節弁V1の弁開度制御信号及び第2の圧力調節弁V2の弁開度制御信号は、第1の圧力調節弁V1及び第2の圧力調節弁V2の各弁開度におけるガス送気流量の合計がガス利用設備Uのガス使用量に見合うところで、バランスする。
【0036】
また逆にガス利用設備Uでのガス使用量が増加すると、圧力検出値が小さくなるので、上述とは反対に調整圧力設定値が徐々に小さくなり、圧力値及び弁開度が高低を操り返しながら収束する。こうして第1の圧力調節弁V1及び第2の圧力調節弁V2が、互に干渉することなく制御されるので、全開/全閉の間で不安定にならずに主配管路1及びバイパス配管路2が送気負荷を分担することができる。
【0037】
また圧力調節弁V1、V2の弁開度が小さくなると調整圧力設定値が大きくなるので弁の絞る勢いが弱められ、逆に弁開度が大きくなると調整圧力設定値が小さくなるので弁を開く勢いが弱められ、この結果弁開度が収束するまでの振れが緩やかでありかつ短時間で収束するため、ガス圧力の制御ひいてはガス流量の制御の安定化を図ることができる。
【0038】
図3は利用設備のガス使用量(負荷)が低下したときの膨脹タービン4B出口側圧力、圧力設定値(調整圧力設定値)及び圧力調節弁V1の弁開度の変化の様子をシミュレーションした定性的な特性図であり、出口側圧力及び弁開度の振れが少なく、迅速に収束することが理解される。
【0039】
以上のことから、減圧発電設備3において高圧ガスの圧力エネルギーを予定としている量だけ電力として確実に回収することができ、またガス利用設備における需要に見合ったガス流量を確保し、供給ガス圧力を安定化させることができる。しかも複雑な制御機器及びプログラムが不要であるから、制御系を低価格で製作できる。
【0040】
本発明ではバイパス配管路2の数は1本に限定されるものではなく、図4に示すように2本のバイパス配管路2A、2Bを設けてもよい。この場合バイパス配管路2Bにおいて加温器20’、第3の圧力調節弁V3、第3の圧力検出部21’、第3の圧力コントローラ7’を設け、各配管路の間で互に独立して上述実施の形態と同様に低圧側の圧力制御を行うことによって、各配管路の圧力調節弁が互に干渉することなく、主配管路1、バイパス配管路2A、2Bが送気負荷を分担する。図4中AP3は、圧力検出部21’の圧力検出信号である。
【0041】
更にまた本発明では主配管路1を2本以上設け、その各々に減圧発電設備を介設し、同様の圧力制御を行うようにしてもよい。なお、上述の実施の形態においては圧力エネルギーを電力エネルギーとして回収したが、機械エネルギー等の他のエネルギーとして有効利用することができるのは当然である。
【0042】
【実施例】
2段の膨脹タービンが介設された主配管路を1本、バイパス配管路を備えたエネルギー回収設備を用い、減圧発電設備の発電機として、定格容量/電圧が10200kVA/6900V、定格回転数が1500rpmの同期発電機を用い、膨脹タービン4に187t/hrの流量でガスを供給し、発電出力を調べた。膨脹タービンの入口の高圧ガスの圧力及び温度が夫々51kg/cm2 G及び22℃、中間圧力ガスの圧力及び温度が夫々22kg/cm2 G及び−23℃、中間圧力ガスの加温後の温度が25℃、膨脹タービンの出口の低圧ガスの圧力及び加温後の温度が夫々6kg/cm2 G及び10℃であり、主配管路及びバイパス配管路の低圧ガスの圧力設定値を夫々6.2kg/cm2 G及び6kg/cm2 Gとし、主配管路及びバイパス配管路における圧力調定率をいずれも4%とした。同期発電機から得られた発電出力は8550kwであった。従ってこの設備を1000Mwの火力発電所に適用すれば、約1%の補助発電を行うことができる。
【0043】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、高圧ガスを減圧してガス利用設備に供給する場合に、減圧弁で圧力損失として捨てられていた圧力エネルギーを、タービンを回して仕事をさせることにより電力として回収することができ、しかも系全体を安定して制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態を示す構成図である。
【図2】本発明の一実施の形態にて用いられる圧力コントローラを示すブロック図である。
【図3】本発明の一実施の形態において、ガス利用設備の使用量を変化させたときのガス圧力及び弁開度の変化の様子を示す特性図である。
【図4】本発明の他の実施の形態を示す構成図である。
【図5】エネルギー回収設備の比較例を示す構成図である。
【符号の説明】
1 主配管路
V1 第1の圧力調節弁
11 第1の圧力検出部
2 バイパス配管路
V2 第2の圧力調節弁
21 第2の圧力検出部
3 減圧発電設備
4 膨脹タービン
4A 高圧タービン
4B 低圧タービン
5A 第1の加温器
5B 第2の加温器
6 第1の圧力コントローラ
7 第2の圧力コントローラ
61 第1の比較部
62 第2の比較部
63 PID調節部
64 圧力調定率調整部
【発明の属する技術分野】
本発明は、ガス供給基地からガス導管にて需要先近傍まで大量に移送される高圧ガスを減圧して低圧ガスとして需要先のガス利用設備に供給する際に、低圧ガスを安定的に供給するとともに高圧ガスの圧力エネルギーを電力として有効に回収することのできるエネルギー回収設備に関する。
【0002】
【従来の技術】
LNG(液化天然ガス)基地で精製される天然ガスや、重質油、石炭などから製造される合成ガスは、ガス導管により需要先であるガス利用設備例えば火力発電所に大量に移送される。その際ガス供給基地から複数の需要先にガスが移送されるが、需要先の中には例えばコンバインドサイクル用ガスタービンといった30kg/cm2 程度もの高圧ガスを必要とする設備が含まれる場合があり、またこのようなボイラが需要先の中に含まれていなくても、末端の圧力低下による例えば発電停止といったトラブルを避けるために予め基地側からのガス供給圧力を高くしている。こうしたことからガス供給基地からガスが例えば25〜100kg/cm2 程度の圧力で需要先(詳しくは需要先近傍)に移送される。
【0003】
そして高圧ガスは、一般に減圧弁設備にて減圧され低圧ガスとして需要先に供給される。この減圧弁設備では、従来単に減圧するのみで高圧ガスの有する圧力エネルギーを捨てているのみでなく、断熱膨脹でガスを減圧する際の温度が設定値以下にならないように高温の熱媒体と熱交換して加温しており、さらにエネルギーを消費しているのが実情であった。
【0004】
そこで本発明者等らは、高圧ガスの圧力エネルギーを有効に回収するために減圧発電設備を開発しつつある。この設備は、高圧ガスを膨脹タービンに導入して減圧に伴う膨脹により当該タービンを駆動し、膨脹タービンに同軸で連結された同期発電機により発電を行い、自家消費用あるいは事業用電力としてエネルギーを回収するものである。
【0005】
図5は、このような減圧発電設備を用いた圧力エネルギー回収設備の検討段階の一例を示し、この例では主配管路1の膨脹タービン10の下流側に設置された圧力検出部11の圧力検出値に応じて、圧力コントローラ12により膨脹タービン10の入口側の圧力調節弁V1を制御し、需要先のガス利用設備のガス使用量に見合ったエネルギーを回収しようとしてる。
【0006】
一方主配管路1に対してバイパス配管路2が設けられている。これは、減圧発電設備の定期補修時あるいは故障時に需要先に支障が起こらないようにするためであり、また減圧発電を行っているときでもガス利用設備のガス使用量の不足分をバイパス配管路2を通じて需要先に供給し、安定した供給ができるようにしている。
【0007】
バイパス配管路2においても圧力調節弁V2及び圧力検出部21を設け、圧力検出部21の圧力検出値に応じて圧力コントローラ22により圧力調節弁V2を制御している。ただし主配管路1及びバイパス配管路2における圧力制御は大まかなものであって、最終的な微調整はガス利用設備側で行われる。なお主配管路1及びバイパス配管路2には、減圧後のガスの温度を所定温度に維持するための熱交換器や加温器が設けられるが図示では省略してある。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
圧力コントローラ12(22)では、圧力設定値と圧力検出部11(21)の圧力検出値との偏差分をPID演算し、その演算出力を圧力調節弁V1(V2)の開度信号としてガスの圧力調節を行う。主配管路1及びバイパス配管路2の夫々の圧力設定値PS1、PS2は需要先のガス使用量などに応じて適宜定めることができる。
【0009】
主配管路1のガス流量をバイパス配管路2のガス流量よりも多くするためにPS1をPS2より高めに設定した場合は、主配管路1を流れるガス圧力がバイパス管路2の設定圧力PS2になるまで主配管路1のみにガスが流れ、PS2以下になってはじめてバイパス配管路2にガスが流れることになり、バイパス配管路2の制御弁作動初期時にガス圧力制御が不安定になる欠点を有するとともに、一方の配管および制御弁のみを利用することが大部分となるため下流へのガスの供給の変動が大きい場合には、制御の応答性が十分でなく、装置全体の均等負荷の観点でも好ましくない。
【0010】
また、PS1とPS2とを同じ設定値とした場合には、各管路1、2の圧力損失の僅かな差により、圧力検出値11、21に差が生じ、圧力検出値の高い方の圧力制御弁が閉の方へ動き、圧力検出値の低い方の圧力制御弁が開の方へ動くこととなり、どちらか一方の圧力制御弁が全閉、他方が全開となって安定してしまい、実質的に一方の制御弁のみで制御することになり、上記と同様に制御の応答性が十分でなく装置全体の負荷を均等に分担するとの観点から好ましくない。
【0011】
このように複数の配管路に各々制御弁を備えて、下流の需要量の変動に応じて安定的にガスを供給する場合には、各々の圧力制御弁を独立したPID制御で実施しても、複数の圧力制御弁を有効に活用することができないこととなる。
【0012】
本発明は、このような事情の下になされたものでありその目的は、高圧ガスを減圧して低圧ガスとしてガス利用設備に供給する際に、高圧ガスの圧力エネルギーを電力として確実に回収すると共に需要先の需要量に応じた低圧ガスを安定的に供給することのできるエネルギー回収設備を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明では、同期発電機に連結された膨脹タ−ビンが介装され、高圧ガスを前記膨脹タ−ビンに導入して低圧ガスに減圧し、その低圧ガスをガス利用設備に供給する主配管路と、この主配管路から分岐され、前記膨脹タ−ビンをバイパスするバイパス配管路と、を設ける。
【0014】
そして前記主配管路には、膨脹タ−ビン入口のガス圧力を調節する第1の圧力調節弁及び膨脹タ−ビン出口のガス圧力を検出する第1の圧力検出部を設けて、第1の圧力制御部により膨脹タ−ビン出口のガス圧力をPID制御すると共に、前記バイパス配管路には、、第2の圧力調節弁及びこの第2の圧力調節弁により減圧されたガス圧力を検出する第2の圧力検出部とを設けて、第2の圧力制御部により低圧側のガス圧力をPID制御する。
【0015】
前記第1の圧力制御部は、調整圧力設定値QS1と第1の圧力検出部にて検出した圧力検出値との偏差をPID演算して第1の圧力調節弁の弁開度制御信号を出力すると共に、この弁開度制御信号に予め設定された圧力調定率を乗算してその乗算値を予め設定された圧力設定値PS1から差し引いた値を調整圧力設定値QS1とするように構成される。また前記第2の圧力制御部についても同様に、調整圧力設定値QS2と第2の圧力検出部にて検出した圧力検出値との偏差をPID演算して第2の圧力調節弁の弁開度制御信号を出力すると共に、この弁開度制御信号に予め設定された圧力調定率を乗算してその乗算値を予め設定された圧力設定値PS2から差し引いた値を調整圧力設定値QS2とするように構成される。
【0016】
前記膨脹タ−ビンは、高圧ガスの圧力、温度、流量及び出口温度などに応じて、単段または複数段のいずれにするかが決定される。複数段とした場合、エネルギ−効率の観点から中間圧力のガスを加温することが好ましい。
【0017】
バイパス配管路の第2の圧力調節弁の上流側には、ガス利用設備のガス温度に見合うように加温部が設けられるが、主配管路の加温部で用いる熱媒とバイパス配管路の加温部で用いる熱媒とは互いに異なるものを使用することが望ましい。これは、仮に共通の熱媒を用いると、その熱媒が使用できなくなったときに低圧ガスの供給が停止してまうので、異なる熱媒を用いることにより、低圧ガスを安定的に供給するためである。
【0018】
また主配管路の加温部の熱媒は、ガス利用設備で用いられる冷媒例えば海水がガス利用設備で熱交換された後の温海水を用いることが、熱エネルギ−の有効利用を図る点から望ましい。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下本発明を一実施の形態に基づいて図面を参照しながら説明する。図中Lは例えばLNG基地から高圧ガスが各需要先例えば火力発電所に供給するためのパイプラインである。このパイプラインLから主配管路1が分岐し、この主配管路1の下流側には需要先の利用設備である発電所のボイラBLが設けられている。
【0020】
主配管路1には減圧発電設備3が介設されており、この減圧発電設備3は、膨脹タービン4と、この膨脹タービン4に同軸で連結された同期発電機Gとを備えている。膨脹タービン4の型式については、タービン入口のガス流量、圧力、温度及びタービン出口の温度によって、単段、多段のいずれかにするか、あるいはガス流を半径流、軸流のいずれかにするかが選定される。
【0021】
高圧ガスが断熱膨脹し、圧力エネルギーが回収されると、ガスの温度が下がるので、エネルギー効率、設備の観点からタービン翼、軸、ケーシングの材料を考慮して、本実施の形態では前段側のタービン(以下高圧タービンという)4A及び後段側のタービン(以下低圧タービンという)4Bよりなる2段式の膨脹タービン4を用い、高圧ガスが高圧タービン4Aで減圧された中間圧力ガスを加温する第1の加温器5Aと、中間圧力のガスが低圧タービン4Bで減圧された低圧ガスを加温する第2の加温器5Bとが設けられている。
【0022】
第1及び第2の加温器5A、5Bの熱媒としては、例えば復水器からの発電所の冷媒である冷却用の海水(温海水)が用いられる。熱媒は常温の海水を用いてもよいが、温海水を用いれば、発電所から取り出した熱エネルギーが減圧されたガスに吸熱されてガスの温度が高まる一方、温海水が冷却されるので、熱エネルギーが有効に利用される。高圧タービン4Aにて減圧された中間圧力ガスを加熱するのは、断熱膨脹により温度が低下したガスを再熱して一旦エンタルピーを高め、低圧タービン4Bにて高い効率で圧力エネルギーを回収するためである。なお中間圧力ガスを再熱すれば、こうした利点に加え、配管その他の機器材料に低温耐性を有する特殊な材料を使用しなくて済むので設備費用の高騰が抑えられるという利点もある。また低圧タービン4Bにて減圧された低圧ガスを加熱するのは、需要先の仕様温度に見合うようにするためである。
【0023】
ここで高圧ガスの圧力は例えば25〜100kg/cm2 G、好ましくは30〜60kg/cm2 Gであり、低圧ガスの圧力は例えば1〜8kg/cm2 G好ましくは2〜8kg/cm2 Gである。各部のガス圧力及びガス温度の一例を挙げると、高圧タービン4Aの入口の高圧ガス温度は例えば22℃であり、高圧ガスガービン4Aの出口では、ガス圧力(中間圧力)が例えば17〜26kg/cm2 G、ガス温度が例えば−23℃となる。中間圧力ガスは、第1の加温器5Aにて例えば25℃に加温され、低圧タービン4Bの出口側では圧力が例えば4.7〜7.1kg/cm2 G、温度が例えば−30℃となり、第2の加温器5Bにて例えば10℃に加温される。
【0024】
前記主配管路1には、膨脹タービン4の上流側に第1の圧力調節弁V1が介設されると共に、第2の加温器5Bの下流側に第1の圧力検出部11が設けられている。第1の圧力検出部11の検出信号(圧力検出値AP1)は第1の圧力制御部である第1の圧力コントローラ6に入力され、この圧力コントローラ6は圧力検出値AP1に基づいて第1の圧力調節弁V1の弁開度を制御するように構成されている。
【0025】
前記主配管路1における第1の圧力調節弁V1の上流側と第1の圧力検出部11の下流側との間には、膨脹タービン4をバイパスするバイパス配管路2が接続されている。このバイパス配管路2には、加温器20、第2の圧力調節弁V2及び第2の圧力検出部21が上流側からこの順に介設されている。
【0026】
前記加温器20は、第2の圧力調節弁V2で減圧したときの低圧ガスが需要先の仕様温度例えば10℃程度となるように、高圧ガスを温水により90℃程度まで加熱する。なお加温器20は、圧力調節弁V2の上流側に設けることにより、下流側に設けた場合に比べて処理量を少なくできるので設備の規模を小さくできる利点がある。また加温器20の熱媒としては、減圧発電設備3の加温器5A、5Bと同様に温海水を利用してもよいが、このようにすると温海水が使用できない状況が発生した場合、低圧ガスをガス利用設備に供給できなくなるので、低圧ガスの安定的供給という観点から主配管路の温海水とは別途の温水を用いることが好ましい。
【0027】
ここで前記第1の圧力コントローラ6に関して図2を参照しながら述べると、この第1の圧力コントローラ6は、前段比較部61、後段比較部62、PID(比例要素、積分要素、微分要素)調節部63及び圧力調定率調整部64を備えている。PID調節部63から出力される弁開度制御信号VCは圧力調定率調整部64にて調整率(α%)例えば4%の圧力調定率が乗算され、その演算値VC×(α%)が前段比較部61に入力される。
【0028】
前段比較部61では予め定めた圧力設定値PS1から前記演算値VC×(α%)を差し引き、調整圧力設定値QS1として後段比較部62に入力される。後段比較部62では調整圧力設定値QS1=[PS1−VC×(α%)]から圧力検出信号AP1を差し引き、その偏差分を動作信号としてPID調節部63に入力する。PID調節部63は、前記動作信号(偏差分)に基づきPID演算を行い、その演算結果を前記圧力調定率調整部64を介してフィードバックすると共に、弁開度制御信号VCとして出力する。この弁開度信号は図示しない弁駆動部に与えられ、この結果第1の圧力調節弁V1の弁開度が調節され、減圧発電設備3の下流側のガス圧力がPID制御される。
【0029】
またバイパス配管路2側においても第2の圧力コントローラ7が設けられ、既述の圧力設定値PS1、弁開度制御信号VC及び圧力検出信号AP1が夫々バイパス配管路2の圧力設定値PS2、第2の圧力調節弁V2の弁開度制御信号及び第2の圧力検出部21の圧力検出信号AP2と置き代わる以外は同様の構成であり、圧力設定値PS2から、弁開度制御信号に圧力調定率(β%)例えば4%を乗算した値が差し引かれた調整圧力設定値QS2が同様に設定信号として用いられる。第1、第2の圧力コントローラ6、7の圧力調定率α、β%は同じであってもよいし異なっていてもよいが、1〜10%が好ましく、3〜6%であればより好ましい。
【0030】
次に上述実施の形態の作用について述べる。例えば火力発電設備であるガス利用設備UにてパイプラインLのガスを使用する場合、パイプラインLの例えば60kg/cm2 Gの高圧ガスが主配管路1に抜出され、第1の圧力調節弁V1を介して減圧発電設備3に導入されると共に、一部の高圧ガスはバイパス配管路2を流れる。
【0031】
減圧発電設備3において高圧ガスは先ず膨脹タービン4のうちの高圧タービン4Aにて膨脹し、当該タービン4Aを回して減圧エネルギーが回収され、次いで既述のように再熱された後低圧タービン4Bにて膨脹し、当該タービン4Bを回して減圧エネルギーが回収される。この結果同期発電機Gの回転子が回転し、所定の回転数になったところでこの発電機Gを系統に接続する。その後同期発電機の回転子は一定の回転数で回転し、膨脹タービン4の駆動トルクつまり高圧ガスの流量に対応した発電出力が系統に供給される。こうして高圧ガスから低圧ガスに減圧されるときの減圧エネルギーが電力として回収される。
【0032】
膨脹タービン4にて減圧された低圧ガスは、バイパス配管路を通って第2の圧力調節弁Vにて減圧された低圧ガスと合流してガス利用設備Uに送られ、ここで図示しない圧力調整バルブ及び流量調整バルブにより夫々圧力、流量が所定の値に調整されてボイラBLに送られる。
【0033】
そして主配管路1及びバイパス配管路2では、低圧側の圧力検出値が圧力設定値になるように圧力調節弁V1(V2)の弁開度が制御されるが、本発明におけるこの調整圧力設定値は、既述のように予め設定した圧力設定値PS1(PS2)から弁開度制御信号に圧力調定率(α%)を乗算した分だけ小さい調整された値となる。従ってガス利用設備Uでのガス使用量が減少すると、圧力検出値が大きくなるので、圧力コントローラ6(7)の制御ループは、弁開度制御信号を徐々に小さくして圧力調節弁V1(V2)を閉じる方向に働く。
【0034】
このため弁開度制御信号×圧力調定率の値が小さくなるので、PID制御に直接係わる調整圧力設定値が徐々に大きくなり、低圧側の圧力が徐々に上昇する。そして圧力調節弁V1(V2)が閉まり過ぎて圧力検出値が低下し始め、今度は制御ループは圧力調節弁V1(V2)を開く方向に働き、このような振れが繰り返されて圧力値及び弁開度が収束する。
【0035】
第1の圧力調節弁V1の弁開度制御信号及び第2の圧力調節弁V2の弁開度制御信号は、第1の圧力調節弁V1及び第2の圧力調節弁V2の各弁開度におけるガス送気流量の合計がガス利用設備Uのガス使用量に見合うところで、バランスする。
【0036】
また逆にガス利用設備Uでのガス使用量が増加すると、圧力検出値が小さくなるので、上述とは反対に調整圧力設定値が徐々に小さくなり、圧力値及び弁開度が高低を操り返しながら収束する。こうして第1の圧力調節弁V1及び第2の圧力調節弁V2が、互に干渉することなく制御されるので、全開/全閉の間で不安定にならずに主配管路1及びバイパス配管路2が送気負荷を分担することができる。
【0037】
また圧力調節弁V1、V2の弁開度が小さくなると調整圧力設定値が大きくなるので弁の絞る勢いが弱められ、逆に弁開度が大きくなると調整圧力設定値が小さくなるので弁を開く勢いが弱められ、この結果弁開度が収束するまでの振れが緩やかでありかつ短時間で収束するため、ガス圧力の制御ひいてはガス流量の制御の安定化を図ることができる。
【0038】
図3は利用設備のガス使用量(負荷)が低下したときの膨脹タービン4B出口側圧力、圧力設定値(調整圧力設定値)及び圧力調節弁V1の弁開度の変化の様子をシミュレーションした定性的な特性図であり、出口側圧力及び弁開度の振れが少なく、迅速に収束することが理解される。
【0039】
以上のことから、減圧発電設備3において高圧ガスの圧力エネルギーを予定としている量だけ電力として確実に回収することができ、またガス利用設備における需要に見合ったガス流量を確保し、供給ガス圧力を安定化させることができる。しかも複雑な制御機器及びプログラムが不要であるから、制御系を低価格で製作できる。
【0040】
本発明ではバイパス配管路2の数は1本に限定されるものではなく、図4に示すように2本のバイパス配管路2A、2Bを設けてもよい。この場合バイパス配管路2Bにおいて加温器20’、第3の圧力調節弁V3、第3の圧力検出部21’、第3の圧力コントローラ7’を設け、各配管路の間で互に独立して上述実施の形態と同様に低圧側の圧力制御を行うことによって、各配管路の圧力調節弁が互に干渉することなく、主配管路1、バイパス配管路2A、2Bが送気負荷を分担する。図4中AP3は、圧力検出部21’の圧力検出信号である。
【0041】
更にまた本発明では主配管路1を2本以上設け、その各々に減圧発電設備を介設し、同様の圧力制御を行うようにしてもよい。なお、上述の実施の形態においては圧力エネルギーを電力エネルギーとして回収したが、機械エネルギー等の他のエネルギーとして有効利用することができるのは当然である。
【0042】
【実施例】
2段の膨脹タービンが介設された主配管路を1本、バイパス配管路を備えたエネルギー回収設備を用い、減圧発電設備の発電機として、定格容量/電圧が10200kVA/6900V、定格回転数が1500rpmの同期発電機を用い、膨脹タービン4に187t/hrの流量でガスを供給し、発電出力を調べた。膨脹タービンの入口の高圧ガスの圧力及び温度が夫々51kg/cm2 G及び22℃、中間圧力ガスの圧力及び温度が夫々22kg/cm2 G及び−23℃、中間圧力ガスの加温後の温度が25℃、膨脹タービンの出口の低圧ガスの圧力及び加温後の温度が夫々6kg/cm2 G及び10℃であり、主配管路及びバイパス配管路の低圧ガスの圧力設定値を夫々6.2kg/cm2 G及び6kg/cm2 Gとし、主配管路及びバイパス配管路における圧力調定率をいずれも4%とした。同期発電機から得られた発電出力は8550kwであった。従ってこの設備を1000Mwの火力発電所に適用すれば、約1%の補助発電を行うことができる。
【0043】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、高圧ガスを減圧してガス利用設備に供給する場合に、減圧弁で圧力損失として捨てられていた圧力エネルギーを、タービンを回して仕事をさせることにより電力として回収することができ、しかも系全体を安定して制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態を示す構成図である。
【図2】本発明の一実施の形態にて用いられる圧力コントローラを示すブロック図である。
【図3】本発明の一実施の形態において、ガス利用設備の使用量を変化させたときのガス圧力及び弁開度の変化の様子を示す特性図である。
【図4】本発明の他の実施の形態を示す構成図である。
【図5】エネルギー回収設備の比較例を示す構成図である。
【符号の説明】
1 主配管路
V1 第1の圧力調節弁
11 第1の圧力検出部
2 バイパス配管路
V2 第2の圧力調節弁
21 第2の圧力検出部
3 減圧発電設備
4 膨脹タービン
4A 高圧タービン
4B 低圧タービン
5A 第1の加温器
5B 第2の加温器
6 第1の圧力コントローラ
7 第2の圧力コントローラ
61 第1の比較部
62 第2の比較部
63 PID調節部
64 圧力調定率調整部
Claims (6)
- 高圧ガスを低圧ガスに減圧し、その低圧ガスをガス利用設備に供給すると共に、減圧の際に高圧ガスの圧力エネルギ−を他のエネルギーとして回収する設備において、
同期発電機に連結された膨脹タ−ビンが介装され、高圧ガスを前記膨脹タ−ビンに導入して低圧ガスに減圧し、その低圧ガスをガス利用設備に供給する主配管路と、
この主配管路から分岐され、前記膨脹タ−ビンをバイパスするバイパス配管路と、
前記主配管路に設けられた、膨脹タ−ビン入口のガス圧力を調節する第1の圧力調節弁及び膨脹タ−ビン出口のガス圧力を検出する第1の圧力検出部と、
調整圧力設定値QS1と第1の圧力検出部にて検出した圧力検出値との偏差をPID演算して第1の圧力調節弁の弁開度制御信号を出力すると共に、調整圧力設定値QS1は、この弁開度制御信号に予め設定された圧力調定率を乗算してその乗算値を予め設定された圧力設定値PS1から差し引いた値である第1の圧力制御部と、
前記バイパス配管路に設けられた、第2の圧力調節弁及びこの第2の圧力調節弁により減圧されたガス圧力を検出する第2の圧力検出部と、
調整圧力設定値QS2と第2の圧力検出部にて検出した圧力検出値との偏差をPID演算して第2の圧力調節弁の弁開度制御信号を出力すると共に、調整圧力設定値QS2は、この弁開度制御信号に予め設定された圧力調定率を乗算してその乗算値を予め設定された圧力設定値PS2から差し引いた値である第2の圧力制御部と、
を備えたことを特徴とする高圧ガスからの圧力エネルギ−回収設備。 - 主配管路には、膨脹タ−ビンで減圧されたガスを加温するための加温部が設けられると共に、バイパス配管路の第2の圧力調節弁の上流側には高圧ガスを加温するための加温部が設けられることを特徴とする請求項1記載の高圧ガスからの圧力エネルギ−回収設備。
- 膨脹タ−ビンは、ガスが各段のタ−ビンにて順次に減圧されるように複数段のタ−ビンにより構成され、各段のタ−ビンの出口側には、減圧されたガスを加温するための加温部が設けられることを特徴とする請求項1または2記載の高圧ガスからの圧力エネルギ−回収設備。
- 主配管路の加温部で用いる熱媒とバイパス配管路の加温部で用いる熱媒とは互いに異なるものが使用されることを特徴とする請求項1、2または3記載の高圧ガスからの圧力エネルギ−回収設備。
- 主配管路の加温部の熱媒は、ガス利用設備で熱交換により加温された冷媒が用いられることを特徴とする請求項2、3または4記載の高圧ガスからの圧力エネルギ−回収設備。
- ガス利用設備で用いられる冷媒は海水であり、この海水がガス利用設備で熱交換された後の温海水が主配管路の加温部の熱媒として用いられることを特徴とする請求項5記載の高圧ガスからの圧力エネルギ−回収設備。
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