JP3624689B2 - 内燃機関の排気ガス浄化装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、内燃機関の排気ガス浄化装置に関し、特に排気系にNOx(窒素酸化物)吸収剤を備え、該NOx吸収剤の劣化を判定する機能を有する排気ガス浄化装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
内燃機関に供給する混合気の空燃比を理論空燃比よりリーン側に設定するリーン運転を実行すると、NOxの排出量が増加する傾向があるため、機関の排気通路内にNOxを吸収するNOx吸収剤を配置し、排気ガスの浄化を行う技術が従来より知られている。このNOx吸収剤は、空燃比が理論空燃比よりリーン側に設定され、排気ガス中の酸素濃度が比較的高い(NOxが多い)状態(以下「排気ガスリーン状態」という)においては、NOxを吸収する一方、逆に空燃比が理論空燃比よりリッチ側に設定され、排気ガス中の酸素濃度が低く、HC、CO成分が多い状態(以下「排気ガスリッチ状態」という)においては、吸収したNOxを放出する特性を有する。このNOx吸収剤を内蔵する排気ガス浄化装置は、排気ガスリッチ状態においては、NOx吸収剤から放出されるNOxはHC、COにより還元されて、窒素ガスとして排出され、またHC、COは酸化されて水蒸気及び二酸化炭素として排出されるように構成されている。
【0003】
上記NOx吸収剤が、吸収できるNOx量には当然限界があり、この限界値は、NOx吸収剤が劣化すると小さくなる傾向を示す。そのため、NOx吸収剤の下流側に空燃比センサを配置し、NOx吸収剤に吸収されたNOxを放出させるための空燃比リッチ化(以下「還元リッチ化」という)を実行し、該還元リッチ化開始時点から、前記空燃比センサの出力がリッチ空燃比を示す値に変化する時点までの時間により、NOx吸収剤の劣化度合を判定する手法が、従来より知られている(特開平8−232644号公報)。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、機関の排気通路内にNOx吸収剤とともにその上流側に三元触媒も配置する場合には、上記還元リッチ化を開始しても、三元触媒により排気ガス中のHC、COが酸化されるため、NOx吸収剤にHC,CO成分の多い排気ガスが実際に流入するまでに遅れが生じる。そのため、上記従来の手法をそのまま適用したのでは、NOx吸収剤の劣化判定を正確に行うことができなかった。
【0005】
本発明はこの点に着目してなされたものであり、NOx吸収剤の上流側に三元触媒を配置した場合にも、NOx吸収剤の劣化を正確に判定できるようにした排気ガス浄化装置を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため本発明は、内燃機関の排気系に設けられ、排気ガスリーン状態において排気ガス中のNOxを吸収するNOx吸収剤を内蔵し、排気ガスリッチ状態において吸収したNOxを還元するNOx浄化手段と、該NOx浄化手段の上流側に設けられ、酸素貯蔵能力を有する三元触媒と、前記NOx浄化手段の下流側に設けられ、排気ガス中の特定成分の濃度を検出する排気濃度センサとを備えた内燃機関の排気ガス浄化装置において、前記機関に供給する混合気の空燃比を理論空燃比よりリッチ側からリーン側へ若しくはその逆に切り換えたときの前記排気濃度センサ出力の反転時間を検出する第1の検出手段と、前記混合気の空燃比を所定時間に亘って理論空燃比よりリーン側に維持した後にリッチ側に変化させたときの前記排気濃度センサ出力が理論空燃比付近に停滞する時間を検出する第2の検出手段と、前記第1及び第2の検出手段による検出結果に基づいて前記NOx吸収剤の劣化を判定する劣化判定手段とを有することを特徴とする。
【0007】
ここで「所定時間」は、NOx吸収剤が、そのNOx吸収能力の限界までNOxを吸収するのに要する時間、若しくはそれより若干短い時間であり、例えばエンジン運転状態に応じて算出される単位時間当たりの推定NOx排出量を積算し、その積算値が所定許容値に達するまでの時間とする。
【0008】
この構成によれば、機関に供給する混合気の空燃比を理論空燃比よりリッチ側からリーン側へ若しくはその逆に切り換えたときの排気濃度センサ出力の反転時間により三元触媒の浄化能力が検出され、混合気の空燃比を所定時間に亘って理論空燃比よりリーン側に維持した後にリッチ側に変化させたときの排気濃度センサの出力が理論空燃比付近に停滞する時間により三元触媒とNOx吸収剤とをあわせた浄化能力が検出され、2つの検出結果に基づいて、NOx吸収剤の劣化が判定される。したがって、三元触媒の影響を除いてNOx吸収剤の劣化を正確に判定することができる。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
【0010】
図1は、本発明の実施の一形態に係る排気ガス浄化装置を含む、内燃機関(以下「エンジン」という)の制御装置の全体構成図であり、例えば4気筒のエンジン1の吸気管2の途中にはスロットル弁3が配されている。スロットル弁3にはスロットル弁開度(θTH)センサ4が連結されており、当該スロットル弁3の開度に応じた電気信号を出力してエンジン制御用電子コントロールユニット(以下「ECU」という)5に供給する。
【0011】
燃料噴射弁6はエンジン1とスロットル弁3との間かつ吸気管2の図示しない吸気弁の少し上流側に各気筒毎に設けられており、各噴射弁は図示しない燃料ポンプに接続されていると共にECU5に電気的に接続されて当該ECU5からの信号により燃料噴射弁6の開弁時間が制御される。
【0012】
一方、スロットル弁3の直ぐ下流には吸気管内絶対圧(PBA)センサ7が設けられており、この絶対圧センサ7により電気信号に変換された絶対圧信号は前記ECU5に供給される。また、その下流には吸気温(TA)センサ8が取付けられており、吸気温TAを検出して対応する電気信号を出力してECU5に供給する。
【0013】
エンジン1の本体に装着されたエンジン水温(TW)センサ9はサーミスタ等から成り、エンジン水温(冷却水温)TWを検出して対応する温度信号を出力してECU5に供給する。
【0014】
エンジン1の図示しないカム軸周囲又はクランク軸周囲には、エンジン回転数(NE)センサ10及び気筒判別(CYL)センサ11が取り付けられている。エンジン回転数センサ10は、エンジン1の各気筒の吸入行程開始時の上死点(TDC)に関し所定クランク角度前のクランク角度位置で(4気筒エンジンではクランク角180゜毎に)TDC信号パルスを出力し、気筒判別センサ11は、特定の気筒の所定クランク角度位置で気筒判別信号パルスを出力するものであり、これらの各信号パルスはECU5に供給される。
【0015】
排気管12には排気ガス浄化装置を構成する三元触媒16及びNOx浄化手段17が設けられている。NOx浄化手段17は、三元触媒16の下流側に配置されている。
【0016】
三元触媒16は、酸素蓄積能力を有し、エンジン1に供給される混合気の空燃比が理論空燃比よりリーン側に設定され、排気ガス中の酸素濃度が比較的高い排気ガスリーン状態では、排気ガス中の酸素を蓄積し、逆にエンジン1に供給される混合気の空燃比が理論空燃比よりリッチ側に設定され、排気ガス中の酸素濃度が低く、HC、CO成分が多い排気ガスリッチ状態では、蓄積した酸素により排気ガス中のHC,COを酸化する機能を有する。
【0017】
NOx浄化手段17は、NOxを吸収するNOx吸収剤及び酸化、還元を促進するための触媒を内蔵する。NOx吸収剤としては、エンジン1に供給される混合気の空燃比が理論空燃比よりリーン側に設定され、排気ガス中の酸素濃度が比較的高い(NOxが多い)状態(排気ガスリーン状態)においては、NOxを吸蔵する一方、逆にエンジン1に供給される空燃比が理論空燃比よりリッチ側に設定され、排気ガス中の酸素濃度が低く、HC、CO成分が多い状態(排気ガスリッチ状態)においては、吸蔵したNOxを放出する特性を有する吸蔵式のもの、あるいは排気ガスリーン状態においてNOxを吸着し、排気ガスリッチ状態においてNOxを還元する吸着式のものを使用する。NOx浄化手段17は、排気ガスリーン状態においては、NOx吸収剤にNOxを吸収させる一方、排気ガスリッチ状態においては、NOx吸収剤に吸収されたNOxがHC、COにより還元されて、窒素ガスとして排出され、またHC、COは酸化されて水蒸気及び二酸化炭素として排出されるように構成されている。吸蔵式のNOx吸収剤としては、例えば酸化バリウム(Ba0)が使用され、吸着式のNOx吸収剤としては、例えばナトリウム(Na)とチタン(Ti)またはストロンチウム(Sr)とチタン(Ti)が使用され、触媒としては吸蔵式及び吸着式のいずれにおいても例えば白金(Pt)が使用される。このNOx吸収剤は、一般にその温度が高くなるほど、吸収したNOxを放出しやすくなる特性を有する。
【0018】
NOx吸収剤のNOx吸収能力の限界、すなわち最大NOx吸収量まで、NOxを吸収すると、それ以上NOxを吸収できなくなるので、適時NOxを放出させて還元するために空燃比のリッチ化、すなわちNOx還元リッチ化を実行する。
【0019】
三元触媒16の上流位置には、比例型空燃比センサ14(以下「LAFセンサ14」という)が装着されており、このLAFセンサ14は排気ガス中の酸素濃度(空燃比)にほぼ比例した電気信号を出力し、ECU5に供給する。NOx浄化手段17の下流位置には、二値型酸素濃度センサ15(以下「O2センサ15」という)が装着されており、その検出信号はECU5に供給される。このO2センサ15は、その出力VO2が理論空燃比の前後において急激に変化する特性を有し、その出力VO2は理論空燃比よりリッチ側で高レベルとなり、リーン側で低レベルとなる。
【0020】
エンジン1は、吸気弁及び排気弁のバルブタイミングを、エンジンの高速回転領域に適した高速バルブタイミングと、低速回転領域に適した低速バルブタイミングとの2段階に切換可能なバルブタイミング切換機構30を有する。このバルブタイミングの切換は、弁リフト量の切換も含み、さらに低速バルブタイミング選択時は2つに吸気弁のうちの一方を休止させて、空燃比を理論空燃比よりリーン化する場合においても安定した燃焼を確保するようにしている。
【0021】
バルブタイミング切換機構30は、バルブタイミングの切換を油圧を介して行うものであり、この油圧切換を行う電磁弁及び油圧センサがECU5接続されている。油圧センサの検出信号はECU5に供給され、ECU5は電磁弁を制御してエンジン1の運転状態に応じたバルブタイミングの切換制御を行う。
【0022】
ECU5は、各種センサからの入力信号波形を整形し、電圧レベルを所定レベルに修正し、アナログ信号値をデジタル信号値に変換する等の機能を有する入力回路5a、中央演算処理回路(以下「CPU」という)5b、CPU5bで実行される各種演算プログラム及び演算結果等を記憶する記憶手段5c、前記燃料噴射弁6に駆動信号を供給する出力回路5d等から構成される。
【0023】
CPU5bは、上述の各種エンジンパラメータ信号に基づいて、種々のエンジン運転状態を判別するとともに、該判別されたエンジン運転状態に応じて、次式(1)に基づき、前記TDC信号パルスに同期する燃料噴射弁6の燃料噴射時間TOUTを演算する。
【0024】
TOUT=TI×KCMD×KLAF×K1+K2…(1)
ここに、TIは燃料噴射弁6の基本燃料噴射時間であり、エンジン回転数NE及び吸気管内絶対圧PBAに応じて設定されたTIマップを検索して決定される。TIマップは、エンジン回転数NE及び吸気管内絶対圧PBAに対応する運転状態において、エンジンに供給する混合気の空燃比がほぼ理論空燃比になるように設定されている。すなわち、基本燃料噴射時間TIは、エンジンの吸入空気量(重量流量)にほぼ比例する値を有する。したがって、この基本燃料噴射時間TIをある期間TSUMに亘って積算することにより、その期間内に排出される排気ガス流量の積算値に対応するパラメータを得ることができる。
【0025】
KCMDは目標空燃比係数であり、エンジン回転数NE、吸気管内絶対圧PBA、エンジン水温TW等のエンジン運転パラメータに応じて設定される。目標空燃比係数KCMDは、空燃比A/Fの逆数、すなわち燃空比F/Aに比例し、理論空燃比のとき値1.0をとる。
【0026】
KLAFは、LAFセンサ14の検出値から算出される検出当量比KACTが目標当量比KCMDに一致するようにPID制御により算出される空燃比補正係数である。空燃比補正係数KLAFは、三元触媒16の酸素蓄積能力の判定を行うときは、後述するようにO2センサ15の出力の応じたフィードバック制御により設定される。
【0027】
K1及びK2は夫々各種エンジンパラメータ信号に応じて演算される他の補正係数および補正変数であり、エンジン運転状態に応じた燃費特性、エンジン加速特性等の諸特性の最適化が図れるような所定値に決定される。
【0028】
CPU5bは上述のようにして求めた燃料噴射時間TOUTに基づいて燃料噴射弁6を開弁させる駆動信号を出力回路5dを介して燃料噴射弁6に供給する。
【0029】
図2は燃料噴射時間TOUTを算出し、エンジン1の燃料供給制御を行う処理のフローチャートであり、本処理は一定時間ごとに実行される。
【0030】
ステップS11では、リーン運転中か否か、すなわちNOx還元リッチ化を実行しない通常制御時に後述するステップS19で記憶された、目標空燃比係数KCMDの記憶値KCMDBが「1.0」より小さいか否かを判別し、KCMDB≧1.0であってリーン運転中でないときは、直ちにステップS18に進み、エンジン運転状態に応じた目標空燃比係数KCMD等の設定を行い、上記式(1)を用いた通常の燃料供給制御を行う。次いで、目標空燃比係数KCMDを記憶値KCMDBとして記憶し(ステップS19)、本処理を終了する。
【0031】
ステップS11でKCMDB<1.0であってリーン運転中であるときは、エンジン回転数NE及び吸気管内絶対圧PBAに応じて、次のステップS13で使用する増分値ADDNOxを決定する(ステップS12)。増分値ADDNOxは、リーン運転中に単位時間当たりに排出されるNOx量に対応するパラメータであり、エンジン回転数NEが増加するほど、また吸気管内絶対圧PBAが増加するほど、増加するように設定されている。
【0032】
ステップS13では、下記式にステップS12で決定した増分値ADDNOxを適用し、NOx量カウンタCNOxをインクリメントする。これによりNOx排出量に相当するカウント値が得られる。
【0033】
CNOx=CNOx+ADDNOx
続くステップS14では、NOx量カウンタCNOxの値が、許容値CNOxREFを越えたか否かを判別する。この答が否定(NO)であるときは、前記ステップS18に進み、通常の燃料供給制御を行う。許容値CNOxは、NOx吸収剤の最大NOx吸収量より若干小さいNOx量に対応する値に設定される。
【0034】
ステップS14で、CNOx>CNOxREFとなると、目標空燃比係数KCMDを空燃比14.0相当程度の値に設定するNOx還元リッチ化を実行する(ステップS15)。このNOx還元リッチ化は、比較的短時間、例えば1,2秒間程度実行する。ステップS16では、NOx還元リッチ化が終了したか否かを判別し、NOx還元リッチ化が終了していないときは直ちに本処理を終了し、NOx還元リッチ化が終了するとNOx量カウンタCNOxのカウント値を「0」にリセットする(ステップS17)。したがって、NOx還元リッチ化が終了するまでは、ステップS14からS15、S16の処理が繰り返し実行され、終了するとステップS14からS18に進む。
【0035】
図2の処理によれば、リーン運転中は、NOx量カウンタCNOxの値が許容値CNOxREFに達するごとにNOx還元リッチ化が実行され、NOx吸収剤に吸収されたNOxの放出が行われる。
【0036】
図3は、NOx吸収剤の劣化判定を行う処理のフローチャートであり、本処理は、一定時間毎にCPU5bで実行される。なお、この劣化判定処理は、エンジン回転数NE、吸気管内絶対圧PBA、エンジン水温TW、吸気温TA等が、所定の範囲内にあり、比較的安定したエンジン運転状態にあるときに、実行される。
【0037】
ステップS20では、劣化判定が終了したことを「1」で示す終了フラグFDONEが「1」か否かを判別し、FDONE=1であるときは、直ちに本処理を終了する。FDONE=0であるときは、目標空燃比係数KCMDを「1.0」に設定するストイキ運転中か否かを判別し(ステップS21)、ストイキ運転中であるときは、TCHK計測処理を実行する(ステップS22)。TCHK計測処理では、O2センサ15の出力SVO2に応じて空燃比の比例積分制御を行い、センサ出力SVO2が所定の基準電圧SVREFに対してリーン側からリッチ側へ反転し、空燃比補正係数KLAFを比例項PLによりリーン方向へ変化させた時点から出力SVO2が逆方向に反転する時点までの反転時間TL、及び出力SVO2が基準電圧SVREFに対してリッチ側からリーン側へ反転し、空燃比補正係数KLAFを比例項PRによりリッチ方向へ変化させた時点から出力SVO2が逆方向に反転する時点までの反転時間TRが計測され、これらの反転時間TL,TRの平均値として判定時間TCHKが算出される。すなわち、図4に示すようにO2センサ出力SVO2が所定の基準電圧SVREFに対してリーン側からリッチ側へ反転した時点(t1,t3)において、空燃比補正係数KLAFを比例項PLによりステップ状に減少させ、その後O2センサ出力SVO2が基準電圧SVREFより高い間は、徐々に空燃比補正係数KLAFを減少させ、O2センサ出力SVO2が基準電圧SVREFに対してリッチ側からリーン側へ反転した時点(t2,t4)において、空燃比補正係数KLAFを比例項PRによりステップ状に増加させ、その後O2センサ出力SVO2が基準電圧SVREFより低い高い間は、徐々に空燃比補正係数KLAFを増加させる制御を実行し、そのときの反転時間TL,TRを計測し、これらの反転時間TL,TRの平均値として判定時間TCHKを算出する。判定時間TCHKの計測は複数回行われ、計測する毎にそれまでに得られた計測値とともに平均化される。判定時間TCHKは、三元触媒16の酸素蓄積能力が低下するほど短くなるので、これにより三元触媒16の蓄積能力を表すパラメータを得ることができる。
【0038】
判定時間TCHKは、三元触媒16の酸素蓄積能力だけでなく排気ガス流量によっても変化するので、ステップS23では、判定時間TCHKを下記式(2)に適用して三元触媒判定パラメータOSCIDXを算出することにより、排気ガス流量の影響を補正する。
【0039】
OSCIDX=TCHK×GAIRSUM (2)
ここで、GAIRSUMは、排気ガス流量を代表するパラメータの、TCHK計測処理実行期間TMSR中の積算値(以下「流量積算値」という)であり、より具体的には基本燃料噴射時間TIの積算値である。基本燃料噴射時間TIは、前述したようにエンジンの吸入空気量(重量流量)にほぼ比例する値を有するので、この基本燃料噴射時間TIを計測処理実行期間TMSRに亘って積算することにより、その期間内に排出される排気ガス流量の積算値に対応するパラメータを得ることができる。
【0040】
上記式(2)を用いて算出される三元触媒判定パラメータOSCIDXを用いて三元触媒の酸素蓄積能力を判定することより、エンジン運転状態の影響を受け難くなり、エンジン運転状態の広い範囲に亘って正確な判定を行うことが可能となる。
【0041】
一方ステップS21でストイキ運転中でないときは、リーン運転中(KCMDB<1.0)か否かを判別し(ステップS24)、リーン運転中であるときは、TNOx計測処理を実行する。
【0042】
TNOx計測処理は、NOx吸収剤にNOxが吸収された状態で還元リッチ化を実行し、そのときのO2センサ出力SVO2が理論空燃比に対応する値の付近に停滞する時間TNOxを計測する処理である。より具体的には、リーン運転中においてNOx還元リッチを実行するときに、図5に示すように、目標空燃比係数KCMDを1.0より大きい値に変更した時点t11の後、O2センサ出力SVO2が所定電圧SV1を越えた時点t13から、O2センサ出力SVO2が基準電圧SVREFに達する時点t12までのリッチ移行時間TNOxを計測する。この計測は複数回行われ、計測する毎にそれまでに得られた計測値とともに平均化される。所定電圧SV1は、理論空燃比相当の基準電圧SVREF(例えば0.5V)より若干小さい値(例えば0.4V程度)に設定される。
【0043】
リッチ移行時間TNOxは、NOx吸収剤の吸収能力が大きいほど長くなるので、これによりNOx吸収剤のNOx吸収能力を判定するパラメータを得ることができる。ただし、リッチ移行時間TNOxも上記判定時間TCHKと同様に排気ガス流量が大きいほど短くなるので、この影響を補正するために、ステップS25の処理で計測されたリッチ移行時間TNOxを下記式(3)に適用してNOx吸収剤判定パラメータNSCIDXを算出する(ステップS26)。
【0044】
NSCIDX=TNOx×GAIRSUM (3)
次いで、判定時間TCHKの計測回数nTCHK及びリッチ移行時間TNOxの計測回数nTNOxがともに所定回数n0(例えば5回)に達したか否かを判別し(ステップS27)、nTCHK<n0またはnTNOx<n0であるときは、本処理を終了し、nTCK≧n0かつnTNOx≧n0となったとき、NOx吸収剤判定パラメータNSCIDXから三元触媒判定パラメータOCSIDXを減算した値が基準値IDXREFより小さいか否かを判別する(ステップS28)。そして、NSCIDX−OSCIDX≧IDXREFであるときは、NOx吸収剤は正常と判定し(ステップS30)、NSCIDX−OSCIDX<IDXREFとなると、NOx吸収剤は劣化したと判定する(ステップS29)。ステップS29またはS30実行後に、終了フラグFDONEを「1」に設定し(ステップS31)、本処理を終了する。ここで、基準値IDXREFは、例えばNOx吸収剤のNOx吸収能力が新品の50%程度となったもの対応する値に設定する。
【0045】
リッチ移行時間TNOxは、上述したようにNOx吸収剤のNOx吸収能力及び排気ガス流量によって変化するが、さらに上流側に三元触媒16が設けられている場合には、三元触媒16の酸素蓄積能力によっても変化する。すなわち、エンジン1に供給する混合気の空燃比を理論空燃比よりリッチ側に変更しても、排気ガス(フィードガス)中のHC、COは、三元触媒16で酸化され、NOx吸収剤に達するHC,COの量が減少するため、三元触媒16の酸素蓄積能力が大きいほど、リッチ移行時間TNOxは長くなる傾向を示す。そこで、本実施形態では、NOx吸収剤判定パラメータNSCIDXから三元触媒判定パラメータOSCIDXを減算することにより、三元触媒16の酸素蓄積能力の影響を排除して、NOx吸収剤の劣化を判定するようにしている。これより、NOx吸収剤の劣化を正確に判定することが可能となる。
【0046】
本実施形態では、O2センサ15が排気濃度センサに相当し、図3のステップS22におけるTCHK計測処理が第1の検出手段に相当し、同図のステップS25におけるTNOx計測処理が第2の検出手段に相当し、同図のステップS23,S26〜S30が劣化判定手段に相当する。
【0047】
なお、本発明は上述した実施形態に限るものではなく、種々の変形が可能である。例えば、燃料噴射弁6は吸気管2ではなく、エンジン1の燃焼室に直接燃料を噴射するように各気筒に設けるようにしてもよい。
【0048】
また排気濃度センサとしては、酸素濃度センサに限るものでは、排気ガス中のNOx濃度を検出するNOx濃度センサを用いてもよい。
【0049】
【発明の効果】
以上詳述したように本発明によれば、機関に供給する混合気の空燃比を理論空燃比よりリッチ側からリーン側へ若しくはその逆に切り換えたときの排気濃度センサ出力の反転時間により三元触媒の浄化能力が検出され、混合気の空燃比を所定時間に亘って理論空燃比よりリーン側に維持した後にリッチ側に変化させたときの排気濃度センサ出力が理論空燃比付近に停滞する時間により三元触媒とNOx吸収剤とをあわせた浄化能力が検出され、2つの検出結果に基づいて、NOx吸収剤の劣化が判定される。したがって、三元触媒の影響を除いてNOx吸収剤の劣化を正確に判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の一形態にかかる排気ガス浄化装置を含む、内燃機関とその制御装置の構成を示す図である。
【図2】燃料供給制御を行う処理のフローチャートである。
【図3】NOx吸収剤の劣化判定を行う処理のフローチャートである。
【図4】三元触媒の酸素蓄積能力を判定するためのパラメータ計測処理を説明するための図である。
【図5】NOx吸収剤のNOx吸収能力を判定するためのパラメータ計測処理を説明するため図である。
【符号の説明】
1 内燃機関
5 電子コントロールユニット(第1の検出手段、第2の検出手段、劣化判定手段)
12 排気管
15 酸素濃度センサ(排気濃度センサ)
16 三元触媒
17 NOx浄化手段
Claims (1)
- 内燃機関の排気系に設けられ、排気ガスリーン状態において排気ガス中のNOxを吸収するNOx吸収剤を内蔵し、排気ガスリッチ状態において吸収したNOxを還元するNOx浄化手段と、該NOx浄化手段の上流側に設けられ、酸素貯蔵能力を有する三元触媒と、前記NOx浄化手段の下流側に設けられ、排気ガス中の特定成分の濃度を検出する排気濃度センサとを備えた内燃機関の排気ガス浄化装置において、
前記機関に供給する混合気の空燃比を理論空燃比よりリッチ側からリーン側へ若しくはその逆に切り換えたときの前記排気濃度センサ出力の反転時間を検出する第1の検出手段と、前記混合気の空燃比を所定時間に亘って理論空燃比よりリーン側に維持した後にリッチ側に変化させたときの前記排気濃度センサ出力が理論空燃比付近に停滞する時間を検出する第2の検出手段と、前記第1及び第2の検出手段による検出結果に基づいて前記NOx吸収剤の劣化を判定する劣化判定手段とを有することを特徴とする内燃機関の排気ガス浄化装置。
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JP12808198A JP3624689B2 (ja) | 1998-04-23 | 1998-04-23 | 内燃機関の排気ガス浄化装置 |
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