JP3623984B2 - 加圧成形体製造装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
この発明は加圧成形体製造装置に関する。
【0002】
【従来の技術と発明が解決しようとする課題】
従来の積層体の一例として積層コンデンサが知られている。この積層コンデンサはセラミックユニットの内部に複数層の内部電極が形成され、その両端部に内部電極と電気的に接続された外部電極とを形成してなる。
【0003】
このような積層コンデンサを製造する方法として、従来では、セラミック製のグリーンシート上に所定形状、たとえば長方形の電極を複数形成しておき、このような複数の電極が形成されたグリーンシートを複数枚積層してなる積層シートを剛体プレスで圧着する方法が知られている。剛体プレスによる圧着工程では、金型における下型内へ積層した積層体成形用試料を入れ、上型で積層シートを加圧することにより、内部電極を有するグリーンシート同士あるいは内部電極を有しないグリーンシートと内部電極を有するグリーンシートとを圧着し、これを一体化する。圧着一体化後は、得られたセラミックス積層体を所定の形状たとえば直方体に切断してチップにし、これを焼成した後に両側に外部電極を形成している。
【0004】
しかしながら、内部電極の形成された部分と形成されていない部分とでシートの厚みに差が生じるので、剛体プレスを用いて圧着する方法では、内部電極の形成されていない部分の成形密度が上がらず、この部分で層剥れが生じ易いという問題がある。
【0005】
特に、グリーンシートの積層枚数が増える程、圧着時における密度差が顕著となるので、その影響が大きい。このために、多層の積層コンデンサなどの積層体を製造する場合は、圧着不良による不良品が生じ易く、歩留りが悪くなるという問題がある。
【0006】
また、剛体プレスによる圧着方法は、加圧した時に金型に歪みを生じるので、上型と下型との作用位置によって力の加わり方が異なり、加圧力の不均一を生じ易くなり、これまた層剥れの原因になっている。
【0007】
さらに、剛体プレスで圧着すると、焼成後のチップがほぼ完全な直方体になるので、これに外部電極を形成すると外部電極の厚み分だけ直方体から突出するようになるから、基板への実装性が低下するという問題もある。
【0008】
この発明者は、このような問題点を解消する加圧成形体製造装置として、凹陥部を有する圧力容器本体と、前記凹陥部に密嵌される突出部を備えた蓋部材と、前記凹陥部に張設され、突出部側に形成されたところの、積層シートを収容する積層シート収容空間と圧力媒体収容空間とに区画する弾性部材と、加圧成形時に突出部が凹陥部から飛び出ることがないように蓋部材を規制する固定部材とを備えてなる加圧成形体製造装置について検討し、その改良についても検討している。
【0009】
この加圧成形体製造装置においては、前記積層シート収容空間内に複数のグリーンシートからなる積層シートを収容し、前記圧力媒体収容空間内に圧力媒体を圧入することにより、前記弾性部材と突出部の前記弾性部材に対面する面とで前記積層シートが加圧され、所定時間の加圧の後に積層体が形成される。
【0010】
このような加圧成形体製造装置で製造される積層体の厚みは、その一例を挙げると、1〜5mmであり、積層体の一辺の長さは50〜300mmである。したがって、このような大きさの積層体を製造するための前記凹陥部の直径は、装置規模により変化するものの、多くの場合、7〜50cmである。またその凹陥部の深さは1〜7cmである。このような規模の凹陥部に密嵌される突出部を備えた蓋部材の外径は通常10〜70cmである。この蓋部材は、片持ち状態で支持され、しかもこの蓋部材は支持部材を中心にして前記圧力容器本体の開口部上方からそれより退避した位置へと、またその逆方向に回動することができるようになっている。
【0011】
蓋部材が片持ち状態で支持されているから、蓋部材はごくわずかに傾斜した状態になることが多い。片持ち状態で支持されることによりごくわずかに傾斜した状態となっている蓋部材を下降させて、突出部を凹陥部内に挿入しようとすると、突出部が円滑に凹陥部内に挿入されず、突出部の縁が凹陥部の内周面にぶつかることが多々あった。突出部の縁が凹陥部の内周面にぶつかったまま無理に突出部を凹陥部内に挿入すると凹陥部の内周面に傷がついて、凹陥部に突出部を装着したときの密嵌性が損なわれると言う問題を生じる。
【0012】
また、凹陥部内に突出部を装着する場合、凹陥部内の空気の逃げ場がないので、凹陥部内の空気が突出部の挿入により圧縮されることになる。この圧縮空気の抵抗が大きくて、突出部を凹陥部内に完全に挿入するのに相当の力を要し、その分装置の大型化を余儀なくされる。凹陥部内に突出部を完全に挿入し終えたとしても、次に凹陥部から突出部を引き抜くときに、突出部の引き抜きにより凹陥部内が減圧になるから、突出部の引き抜きが非常に困難になる。
【0013】
凹陥部内に圧力媒体収容空間と積層シート収容空間とを形成するために凹陥部内に弾性部材が張設されている場合に、凹陥部内から突出部を引き抜くときに、積層シート収容空間内が減圧になることと、圧力媒体収容空間内に収容されている圧力媒体に残圧があることとによって、弾性部材が積層シート収容空間側に膨れ上がり、この膨れ上がりによって弾性部材がしばしば亀裂してしまうことがある。この凹陥部内から突出部を引き抜く毎に弾性部材が亀裂を生じると、引き続いて積層体を製造するために、破損した弾性部材を凹陥部内から取りはずし、新たな弾性部材を凹陥部内に張設し直さねばならない。したがって、弾性部材の亀裂は、次々と積層体を製造しようとする場合には、作業の大幅な遅延の原因になる。
【0014】
上述のように、厚みに比べて直径の大きな突出部を有する蓋部材を、圧力容器本体の凹陥部内に装着する場合、突出部を有する蓋部材を圧力容器本体の凹陥部内に装着し、また脱着する場合、弾性部材を張設した凹陥部内に突出部を有する蓋部材を脱着する場合等においては、数多くのトラブルを生じることが判明した。
【0015】
この発明は前記事情に基づいて完成された。
【0016】
すなわち、この発明の目的は、前記問題点を解決することにある。
【0017】
この発明の目的は、装置トラブルを生じることなく積層体の製造を迅速に、しかも繰り返して行うことのできる加圧成形体製造装置を提供することにある。
【0018】
この発明の目的は、圧力容器本体における凹陥部に蓋部材の突出部を装着し、あるいは脱着する際にトラブルを生じることがなく、前記開口部への蓋部材の装着および脱着を容易かつ円滑に行うことのできる加圧成形体製造装置を提供することにある。
【0019】
この発明の目的は、圧力容器本体における凹陥部に蓋部材を装着し、あるいは脱着する際にトラブルなどを生じることがなく、前記凹陥部への蓋部材の装着および脱着を容易かつ円滑に行うことができ、しかも加圧成形時に発生するガスを除去することができ、これによってボイドや亀裂などの傷のない積層体を歩留り良く製造することのできる加圧成形体製造装置を提供することにある。
【0020】
この発明の目的は、凹陥部内に張設された弾性部材と凹陥部の内面とで形成される圧力媒体収容空間内に圧力媒体を圧入することにより、前記弾性部材と凹陥部の内面と凹陥部に密嵌された蓋部材における突出部(なお、この突出部は前記凹陥部内に挿入されるので挿入部とも称することがある。)挿入部とで形成される素材収容空間内に収容された積層シートを加圧して積層体を製造するに当たり、装置トラブルとして、圧力容器本体における凹陥部に蓋部材を装着し、あるいは脱着する際のトラブル、および蓋部材を装着および脱着することにより弾性部材が歪みを受けて破損するというトラブルを生じることがなく、しかもボイドや亀裂などの傷のない積層体の製造を迅速、かつ繰り返して行うことのできる加圧成形体製造装置を提供することにある。
【0021】
この発明の目的は、圧力媒体収容空間を液密に構成することにより、積層体を効率良く加圧成形することのできる加圧成形体製造装置を提供することにある。
【0022】
この発明の他の目的は、構造が簡単で容易に製造することのできる加圧成形体製造装置を提供することにある。
【0023】
【前記課題を解決するための手段】
前記課題を解決するための請求項1に記載の発明は、素材収容空間と圧力媒体収容空間とを隔絶するように張設された弾性部材を備えた凹陥部を有する圧力容器本体と、前記凹陥部に挿入する突出部を有する蓋部材と、前記素材収容空間内に収容された成形素材を加圧成形する際の加圧力に対して蓋部材および圧力容器本体を規制する固定手段とを備え、
前記蓋部材は、素材収容空間内に気体を導入し、また素材収容空間内から気体を排出する気体導入排出手段を備え、
前記圧力容器本体は、内面円筒の第1本体と、この第1本体と積み重ね可能に形成され、かつ凹部を備えてなる第2本体と、前記第1本体と第2本体との積み重ね部分に、弾性部材を挟み込む弾性部材挟み込み部と前記挟み込み部の外側であって、断面くさび型のバックアップリングを装着する断面くさび型のバックアップリング装着部と、前記圧力媒体収容空間内に向けて開口する第2開口部を備えたところの、圧力媒体収容空間内に圧力媒体を導入し、また圧力媒体収容空間から圧力媒体を排出する圧力媒体導入排出手段と備えてなることを特徴とする加圧成形体製造装置であり、
請求項2に記載の発明は、前記凹陥部が上方に開口してなる前記請求項1に記載の加圧成形体製造装置であり、
請求項3に記載の発明は、前記凹陥部が下方に開口してなる前記請求項に記載の加圧成形体製造装置であり、
請求項4に記載の発明は、前記圧力媒体供給排出手段が、圧力媒体を吸引吐出するポンプと、前記ポンプにより圧力媒体貯留槽から圧力媒体収容空間に圧力媒体を圧送する供給配管系と前記ポンプにより圧力媒体収容空間から圧力媒体貯留槽に圧力媒体を排出する排出配管系とに配管系を切り替える切り替え手段とを備えてなる前記請求項1〜3のいずれか一項に記載の加圧成形体製造装置である。
【0024】
【作用】
請求項1に記載の発明においては、凹陥部内に突出部を挿入する際に、気体導入排出手段により凹陥部内を排気すると、突出部が大気圧に押されて迅速に凹陥部内に挿入され、圧力容器本体への蓋部材の装着が短時間の内に完了する。加圧操作の終了後には、気体導入排出手段により凹陥部内に気体を導入して凹陥部内の圧力を大気圧よりも大きくすると、突出部は凹陥部内の気体の圧力により凹陥部から押し出され、短時間の内に蓋部材の脱着が完了する。
【0025】
なお、凹陥部内への突出部の装着または脱着は、圧力容器本体を固定しておいて、蓋部材を移動するようにしても良いし、蓋部材を固定しておいて圧力容器本体を移動するようにしても良い。
【0026】
請求項1に記載の発明においては、素材収容空間内に積層シートを配置してから、蓋部材を圧力容器本体における凹陥部に装着する。凹陥部内に突出部を挿入する際に、気体導入排出手段により凹陥部内を排気すると、突出部が大気圧に押されて迅速に凹陥部内に挿入され、圧力容器本体への蓋部材の装着が短時間の内に完了する。
【0027】
その後、素材収容空間内の気体を気体導入排出手段により排気しつつ、圧力媒体導入排出手段により圧力媒体収容空間内に圧力媒体を圧入する。圧力媒体の圧入により弾性部材および積層シートを介して蓋部材が凹陥部から押し出されようとするが、固定部材が凹陥部から突出部が抜け出ないように蓋部材および圧力容器本体を規制しているので、結局、素材収容空間内の積層シートは弾性部材および突出部の弾性部材に向かう面とで加圧される。この加圧中に、気体導入排出手段により、素材収容空間内の気体を排気しているので、加圧中に積層シートから発生するガスも排気される。したがって、積層シートの加圧中に発生するガスに起因する積層体中のボイドや亀裂が防止される。
【0028】
加圧成形の終了後に、圧力媒体導入排出手段により、圧力媒体収容空間内に圧入されている圧力媒体を排出する。圧力媒体収容空間内の圧力媒体が排出されるのと同時にあるいは排出された後に、素材収容空間内に、気体導入排出手段により、気体を圧入する。この気体を圧入し、素材収容空間内の圧力が大気圧よりも大きくなると、突出部が気体圧力に押されて凹陥部から押し出され、蓋部材が圧力容器本体から容易に脱着する。この蓋部材の脱着の際、素材収容空間内に圧入された気体が弾性部材を押圧するので、弾性部材が突出部に引っ張られることがなく、したがって弾性部材が亀裂することもない。
【0029】
また、加圧成形中においては、弾性部材は圧力媒体に押圧されて素材収容空間側に向かって膨らみ、変形している。この変形は、圧力媒体導入排出手段による圧力媒体の排出の後においても残留しているのであるが、加圧成形の終了後に気体導入排出手段により素材収容空間内に気体を圧入することにより、弾性部材の素材収容空間側への膨らみが強制的に圧力媒体収容空間側に押され、変形した弾性部材がもとの形状に復帰する。
【0030】
弾性部材に着目すると、弾性部材には凹陥部から抜け出る突出部に引っ張られることによる亀裂を生じることがなく、圧力媒体の圧入により発生する弾性部材の変形が気体の圧入によってもとの形状に戻る。したがって、加圧形成された積層体を凹陥部内から取り出した後、次の積層シートを素材収容空間内に直ちに収容して、次の積層体製造の操作に移行することができる。
【0031】
なお、この請求項1の加圧成形体製造装置においては、凹陥部内への突出部の装着または脱着は、圧力容器本体を固定しておいて、蓋部材を移動するようにしても良いし、蓋部材を固定しておいて圧力容器本体を移動するようにしても良い。
また、請求項1に記載の発明においては、圧力容器本体が内面円筒の第1本体と、前記第1本体と積み重ね可能に形成され、かつ凹部を備えてなる第2本体とを備え、前記第1本体と第2本体との積み重ね部分に、弾性部材を挟み込む弾性部材挟み込み部と前記挟み込み部の外側であって、断面くさび型のバックアップリングを装着する断面くさび型のバックアップリング装着部を備えてなる。
したがって、加圧成形時に、圧力媒体収容空間に圧力媒体を圧入すると、圧力媒体の圧力が第1本体と第2本体との重ね合わせ部分に印加される。重ね合わせ部分には、くさび型のバックアップリングが装着されているので、第1本体と第2本体の重ね合わせ部分に形成された断面くさび型のバックアップリング装着部にくさび型のバックアップリングが押しつけられ、楔が打ち込まれるようにくさび型のバックアップリングが断面くさび型のバックアップリング装着部に食い込み、第1本体と第2本体との重ね合わせ部分の液密性が向上する。したがって、圧力媒体収容空間に圧入される圧力媒体の圧力が、損失なく、弾性部材を介して積層シートに印加されることになる。
【0032】
請求項2に記載の発明においては、圧力容器本体の凹陥部は上方に開口している。したがって、上方に開口する凹陥部に蓋部材の突出部が上方から挿入される。
【0033】
この請求項2に記載の加圧成形体製造装置においては、弾性部材上に積層シートが配置される。
【0034】
この請求項2に記載の加圧成形体製造装置は、上記の外に、請求項1に記載の発明と同様の作用を有する。
【0035】
なお、この請求項2の加圧成形体製造装置においては、凹陥部内への突出部の装着または脱着は、圧力容器本体を固定しておいて、蓋部材を移動するようにしても良いし、蓋部材を固定しておいて圧力容器本体を移動するようにしても良い。
【0036】
請求項3に記載の発明においては、圧力容器本体の凹陥部は下方に開口している。したがって、下方に開口する凹陥部に蓋部材の突出部が上方に向かって挿入される。もっとも、突出部が上向きになるように蓋部材を固定しておくと、突出部の凹陥部への装着あるいは脱着は、蓋部材に向かって圧力容器本体を下降させ、あるいは上昇させることにより行われる。
【0037】
この請求項3に記載の発明においては、蓋部材における突出部の上面に、素材である積層シートを配置することになる。そして、この突出部が凹陥部内に挿入されるように、圧力容器本体を蓋部材に向かって下降させる。突出部を凹陥部内に挿入する際、気体導入排出手段により凹陥部内を排気すると、圧力容器本体が大気圧に押されて迅速に下降するので、突出部が迅速に凹陥部内に挿入され、蓋部材への圧力容器本体の装着が短時間の内に完了する。
【0038】
また、加圧操作の終了後には、気体導入排出手段により凹陥部内に気体を導入して凹陥部内の圧力を大気圧よりも大きくすると、圧力容器本体は凹陥部内の気体の圧力により上昇し、凹陥部から突出部が押し出され、短時間の内に蓋部材から圧力容器本体の脱着が完了する。
【0039】
請求項3に記載の発明においては、突出部の上面に積層シートを配置してから、蓋部材を圧力容器本体における凹陥部に装着する。凹陥部内に突出部を挿入する際に、気体導入排出手段により凹陥部内を排気すると、圧力容器を固定しておくと突出部が大気圧に押されて迅速に凹陥部内に挿入され、蓋部材を固定しておくと圧力容器本体が大気圧に押されて迅速に突出部が凹陥部内に挿入され、圧力容器本体への蓋部材の装着が短時間の内に完了する。
【0040】
その後、素材収容空間内の気体を気体導入排出手段により排気しつつ、圧力媒体導入排出手段により圧力媒体収容空間内に圧力媒体を圧入する。圧力媒体の圧入により弾性部材および積層シートを介して蓋部材が凹陥部から押し出されようし、あるいは凹陥部が突出部より抜け出ようとするが、固定部材が蓋部材および圧力容器本体を規制しているので、結局、素材収容空間内の積層シートは弾性部材および突出部の弾性部材に向かう面とで加圧される。この加圧中に、気体導入排出手段により、素材収容空間内の気体を排気しているので、加圧中に積層シートから発生するガスも排気される。したがって、積層シートの加圧中に発生するガスに起因する積層体中のボイドや亀裂が防止される。
【0041】
加圧成形の終了後に、圧力媒体導入排出手段により、圧力媒体収容空間内に圧入されている圧力媒体を排出する。圧力媒体収容空間内の圧力媒体が排出されると、素材収容空間内に、気体導入排出手段により、気体を圧入する。この気体を圧入し、素材収容空間内の圧力が大気圧よりも大きくなると、突出部が気体圧力に押されて凹陥部から押し出され、蓋部材が圧力容器本体から容易に脱着する。この蓋部材の脱着の際、素材収容空間内に圧入された気体が弾性部材を押圧するので、弾性部材が突出部に引っ張られることがなく、したがって弾性部材が亀裂することもない。
【0042】
また、加圧成形中においては、弾性部材は圧力媒体に押圧されて素材収容空間側に向かって膨らみ、変形している。この変形は、圧力媒体導入排出手段による圧力媒体の排出の後においても残留しているのであるが、加圧成形の終了後に気体導入排出手段により素材収容空間内に気体を圧入することにより、弾性部材の素材収容空間側への膨らみが強制的に圧力媒体収容空間側に押され、変形した弾性部材がもとの形状に復帰する。
【0043】
弾性部材に着目すると、弾性部材には凹陥部から抜け出る突出部に引っ張られることによる亀裂を生じることがなく、圧力媒体の圧入により発生する弾性部材の変形が気体の圧入によりもとの形状に戻る。したがって、加圧形成された積層体を凹陥部内から取り出した後、次の積層シートを素材収容空間内に直ちに収容して、次の積層体製造の操作に移行することができる。
【0044】
なお、この請求項3の加圧成形体製造装置においては、凹陥部内への突出部の装着または脱着は、圧力容器本体を固定しておいて、蓋部材を移動するようにしても良いし、蓋部材を固定しておいて圧力容器本体を移動するようにしても良い。
【0048】
請求項4に記載の発明に係る加圧成形体製造装置においては、前記圧力媒体供給排出手段を利用して、圧力媒体に押圧されて素材収容空間側に向かって膨らみ、変形した弾性部材を元の状態に戻すことができる。つまり、素材を加圧成形するときに、圧力媒体の圧力により素材収容空間に向かって弾性部材が膨らみ、変形しているが、加圧成形の後に、圧力媒体供給排出手段により、圧力媒体収容空間内に充填されている圧力媒体を圧力媒体収容空間から急速排出する。圧力媒体収容空間から圧力媒体が急速に減少することにより、素材収容空間側に膨らんでいた弾性部材が圧力媒体収容空間側に引き戻されて、元の状態に戻る。
【0049】
【実施例】
以下にこの発明の一実施例を図面を用いて説明する。この発明は以下の実施例に限定されず。この発明の要旨の範囲内で適宜に設計変更をすることができることは言うまでもない。
【0050】
(実施例1)
図1に示すように、加圧成形体製造装置は、圧力容器本体1と、蓋部材2と、弾性部材3と、スペーサ4と、固定部材であるヨーク5とを有する。
【0051】
圧力容器本体1の外径は、その高さに比してはるかに大きく、全体として円盤状である。もっとも、この圧力容器本体1は円盤状である必要は特になく、設計上四角盤状であっても良い。
【0052】
圧力容器本体1は、第1本体6を第2本体7の上に重ね合わせて構成され、内部に凹陥部を有する。
【0053】
図2に示すように、第1本体6は内部に円盤状空間8を備え、上端および下端に開口部を有する。
【0054】
図2に示すように、第2本体7は、第1本体6を積み重ねることができるように形成され、しかも前記第1本体6の円盤状空間8と同じ直径を有する開口部を備えた凹部9を有する。換言すると、第1本体6は、蓋部材が挿入される開口部およびその開口部に相対向して開口する対向開口部を備えてなる筒状体である。
【0055】
この第2本体7に第1本体6を積み重ねたときに第1本体6の下端面に接触する第2本体7の上端面には、図2に示すように、凹部9側に向かって傾斜し、凹部9を囲繞するように環状に形成された環状テーパ面10と、その環状テーパ面10の下端から水平に前記凹部9に連続するように環状に形成された環状水平面11とが設けられている。この第2本体7の上端に第1本体6の下端を乗せるように第2本体7に第1本体6を積み重ねると、図2に示すように、その縦断面において、第1本体6の下端面とその下端面に対して平行になっている環状水平面11、および環状テーパ面10とで間隙が形成される。第1本体6の下端面と第2本体7の上端に形成された前記環状テーパ面10とで、縦断面がくさび型になったバックアップリング装着部12が形成され、第1本体6の下端面と第2本体7の上端に形成された前記環状水平面11とで弾性部材装着部13が形成される。
【0056】
前記バックアップリング装着部12には断面くさび型のバックアップリング14が装着される。このくさび型のバックアップリング14は、加圧成形時に塑性変形可能な、あるいは弾性変形可能な材質で形成されていれば特にその材質に制限があるわけではない。断面くさび型のバックアップリング14の材質として、各種の熱可塑性樹脂、各種の金属、各種のゴムなどを挙げることができ、加圧力に応じてその材質が適宜に選択される。この実施例においては、金属製のバックアップリングが使用される。
【0057】
前記弾性部材装着部13には弾性部材15の周縁部が装着される。弾性部材15としては、弾性を有し、耐圧性を有するのであればその材質に特に制限がないのであるが、通常はゴム製である。
【0058】
この弾性部材15は、その平面形状が円形であり、その周縁部が裏側に折り返されてなる。そしてその弾性部材15の折り返し部分に、円盤状の支持部材16の縁が装着されることにより、弾性部材15と支持部材16とが一体になっている。この支持部材16は、多数の開口部17を有する。この支持部材16は、弾性部材15を圧力容器本体1内の凹陥部に張設したときにその中央部が下方に垂れ下がり、あるいは下方に湾曲するのを防止し、圧力媒体収容空間18に圧入された圧力媒体19の圧力を前記開口部17を介して弾性部材15に伝達するために設けられる。
【0059】
支持部材16を一体に有するこの弾性部材15はその周縁部を前記弾性部材装着部13に装着することにより、圧力容器本体1内に張設される。弾性部材15を張設することにより、第1本体6と第2本体7とで形成される圧力容器本体1における凹陥部が二分され、第2本体7の凹部9と弾性部材15とで圧力媒体収容空間18が形成され、第1本体6の円盤状空間8と弾性部材15とで素材収容空間20が形成される。
【0060】
上述したことからも理解されるように、多数の開口部17を備えた支持部材16と前記弾性部材15とは、素材収容空間20と圧力媒体収容空間18とを仕切る隔壁としての機能を有し、一方、この圧力媒体収容空間18内に圧入された圧力媒体19による圧力を素材に伝達する圧力伝達機能をも有する。
【0061】
図1に示すように、この圧力容器本体1には前記圧力媒体収容空間18に向かって開口する圧力媒体導入排出路21が設けられる。
【0062】
更に詳述すると、図1および図2に示すように、圧力容器本体1を構成する第2本体7には、その底面に開口する第1開口部22と第2本体7の外周面に開口する第2開口部23とを連絡する圧力媒体導入排出路21と、図3に示すように、圧力容器本体1の外部に設置された、たとえば圧力媒体貯留槽21Aと、圧力媒体貯留槽21Aから第2開口部23へ圧力媒体を導入する配管P、およびこの配管Pの途中に設けられ、圧力媒体19を前記圧力媒体導入排出路21に圧送し、および強制排出する第1ポンプ21Bと、前記配管Pの途中で分岐し、前記圧力媒体貯留槽21Aに連絡する第2配管P と、この第2配管P の途中に設けられたバルブVと第2ポンプ21Cとを備えた圧力媒体供給手段21Eにより、圧力媒体収容空間18内に圧力媒体19が圧入されるようになっている。
【0063】
第1本体6と弾性部材15とで形成される素材収容空間20には、スペーサ4が配置される。このスペーサ4は、素材収容空間20内に配置させる積層シート24の横方向へのズレやガタつきを防止し、また、加圧成形時における弾性部材15の過度のふくれ上りを防止して弾性部材15を保護する機能を有する。したがって、このスペーサ4の材質としては、耐圧性を有し、しかも前記機能を発揮することのできる限り特に制限がない。とはいえ、加工性や製造が容易であるかなどの実際的な見地よりすると、このスペーサ4は鋼、ステンレスなどの金属で形成される。
【0064】
このスペーサ4は、図4に示すように、平面形状が円盤状であり、その中央部に積層シート24を嵌め込むための例えば方形の開口部(以下において方形開口部25と称する。)が設けられる。また、このスペーサ4の上面には、環状に形成された溝(以下において、環状溝26と称する。)およびその環状溝26から前記方形開口部25へと連続する4本の直線状の溝(以下において、直線溝27と称する。)が形成されている。
【0065】
この、スペーサ4の厚みは、弾性部材15上にスペーサ4を配置し、圧力容器本体1の凹陥部内に蓋部材2における突出部28を装着した場合に、突出部28の下面がスペーサ4の上面に接触することができるように、設計される。またスペーサ4の直径は、第1本体6の円盤状空間8内にガタつきなく装着することができるように設計される。スペーサ4に設けられている方形開口部25の寸法は、積層シート24の形状に合わせて、積層シート24がガタつくことなく装着することができるように、設計される。
【0066】
なお、この実施例においては、スペーサ4には1個の方形開口部25が設けられているが、一度に複数の積層体を製造することを目的とするのであれば、図5に示すように複数個例えば4個の方形開口部25を有するスペーサ4を使用しても良い。なお、図5に示されるスペーサ4には環状溝26および直線溝27が設けられてはいない。後述するように、気体導入排出路の開口部がスペーサ4の方形開口部25内に開口するように設計されるのであれば、特に環状溝26および直線溝27はその必要性がないのである。
【0067】
蓋部材2は、図1および図6に示すように、蓋部材本体29と突出部28とを有する。
【0068】
蓋部材本体29は、平面が円盤状である。蓋部材本体29の上面における所定周縁部で、蓋部材本体29は支持体30に結合される。この支持体30は、更に垂直に立設する支持棒体31に、ベアリング32を介して回動可能に保持される。この支持棒体31は、これを支持する基礎部材33に立設する。この基礎部材33は、シリンダー34に装着されたプランジャー35に結合され、プランジャー35の垂直昇降により上下動可能になっている。また、この基礎部材33は、垂直に立設するレール(以下において垂直レール36と称する。)に跨座するガイド37を有する。
【0069】
このような構造により、前記プランジャー35が上昇あるいは下降すると、ガイド37に案内されて基礎部材33が昇降し、基礎部材33の昇降により蓋部材本体29が昇降するようになっている。蓋部材本体29は、手動操作により、水平面内で支持棒体31を中心にして回動することができるようにもなっている。なお、この蓋部材本体29は手動により水平面内で回動することができるのであるが、モータなどの駆動手段を設けることにより、自動的かつ電動的に回動させることができるようにしても良い。
【0070】
蓋部材本体29の上面は平らに形成されている。蓋部材本体29の上面が平らであると、後述するヨーク5で蓋部材2を固定するのに都合が良い。
【0071】
突出部28は、蓋部材本体29の下面に設けられ、円盤上をなす。突出部28の直径、厚み等の寸法は、突出部28を圧力容器本体1の凹陥部に挿入したときに、突出部28の下面、凹陥部の内周面および弾性部材15により形成される素材収容空間20が気密構造になるように、しかも、突出部28の下面が、弾性部材15上に配置された積層シート24の上面に接するように、他の部材の寸法等を考慮して、適宜に設計される。
【0072】
この実施例においては、突出部28の外周面にOリング38が装着されていて、突出部28を圧力容器本体1の凹陥部に挿入したときにおける、突出部28の下面、凹陥部の内周面および弾性部材15により形成される素材収容空間20の気密性が確保されている。
【0073】
突出部28には、前記素材収容空間20に向けて開口する第3開口部39と蓋部材本体29の外周面に開口する第4開口部40とを連絡する気体導入排出路41が設けられ、この気体導入排出路41には、前記第4開口部40に接続された配管P、その配管Pの一端に接続されたところの、気体を送り出し、また気体を排出することのできる気体ポンプ(図示せず。)を備えた気体供給排出装置(図示せず。)が結合されている。この実施例では、気体導入排出手段が気体導入排出路41をもって形成される。
【0074】
前記第3開口部39は、突出部28が素材収容空間20内に挿入されたときに、素材収容空間20内に装着したスペーサ4における環状溝26に臨むように開設される。
【0075】
図1および図7に示すように、前記ヨーク5は、垂直に立設された一対の垂直部42と、その垂直部42の上部および下部で水平に架け渡すように平行に設けられた上部水平部43および下部水平部44とを有し、これら一対の垂直部42、上部水平部43および下部水平部44は一体になっている。この上部水平部43および下部水平部44と一対の垂直部42で形成される開口部(以下においてこの開口部を作用開口部45と称する。)は、蓋部材2を装着した圧力容器本体1を収容するに必要な大きさを有する。換言すると、蓋部材2を装着した圧力容器本体1をこの作用開口部45内に収容した場合に、上部水平部43の下面が蓋部材2の上面よりわずかのクリアランスをもって高い位置にあり、下部水平部44の上面が圧力容器本体1の下面に位置し、一対の垂直部42の相互の間隔が前記圧力容器本体1の直径よりも十分に大きな長さになるように設計される。なお、圧力容器本体1は、適宜の手段例えばフレーム(図示せず。)などによって支持される。
【0076】
このヨーク5は、図7に示すように、たとえば水平に配置された一対のレール(以下において水平レール46と称する。)上を跨座して摺動するガイド47を備えることなどによって水平移動自在に構成される。そして、圧力容器本体1の素材収容空間20内に積層シート24を配置するときには、圧力容器本体1から蓋部材2を取り外す必要から、この圧力容器本体1から退避した位置にヨーク5が待機し、加圧成形をするときにはこのヨーク5の作用開口部45に、蓋部材2を装着した圧力容器本体1を収容するようにヨーク5が移動する。このヨーク5の駆動源としては、特に制限がないのであるが、この実施例においては、シリンダー48が使用される。このヨーク5の駆動源として、電動モータを使用しても差し支えない。
【0077】
このヨーク5には、加熱手段が設けられる。加熱手段としては、圧力容器本体1内に収容された積層シート24を加圧操作中にこの積層シート24を加熱することができるように構成される限りその構造には特に制限がない。この実施例においては、ヨーク5における一対の垂直部42、上部水平部43および下部水平部44に電熱ヒータ(図示せず。)を設けることにより加熱手段が構成される。
【0078】
なお、図7において、49は装置全体を支持し、固定するための基礎フレームであり、50は装置全体の動作を制御し、また動作制御を支持するため操作ボックスである。
【0079】
以上構成の加圧成形体製造装置を用いた積層体の製造について以下に説明する。
【0080】
まず、初期状態としてヨーク5は圧力容器本体1から退避した位置に待機している。
【0081】
図7に示すように、圧力容器本体1の上面から蓋部材2を取り外しておくことにより、圧力容器本体1の凹陥部を開口し、露出させておく。次いで、圧力容器本体1の素材収容空間20内にスペーサ4を安置する。具体的には、素材収容空間20における弾性部材15上にスペーサ4を載置する。このとき、弾性部材15は、円盤状の支持部材16と一体になっているので、弾性部材15上にスペーサ4を安置しても弾性部材15が下方に下がることもなく、確固として弾性部材15上に安置される。次いで、スペーサ4の開口部内に積層シート24を挿入する。
【0082】
ここで、積層シート24は、表面に導電性層を設けたセラミック製のグリーンシートを所定枚数重ねてなり、多くの場合、複数枚のグリーンシートを圧着するなどして、各グリーンシートが分離しないように処理されている。もっとも、複数のグリーンシートを分離しないように仮圧着をせずに、それぞれ分離して存在するグリーンシートを一枚一枚スペーサ4の開口部内に収容しても良い。
【0083】
このグリーンシートは、通常セラミックスとバインダーとを有する坏土を所定の厚みに成形してから所定の大きさに切り出すなどして得られた所定形状の(多くの場合は、方形あるいは長方形である。)セラミックスシートの表面に、導電性塗料などで導電性層を形成してなる。
【0084】
また別の態様としての積層シート24として、セラミックス製の薄いシートを積み重ね、必要に応じて軽く押圧することによりシート相互を接着させてなり、あるいは必要に応じて軽く焼成することによりシート相互を結着させてなり、あるいはシートの形成に使用されたバインダーによってシート相互が軽く接着されてなる積層物を挙げることができる。
【0085】
スペーサ4の開口部25内に積層シート24を収容した後に、蓋部材2を回動して蓋部材2を圧力容器本体1の上方に位置させる。
【0086】
シリンダーを駆動することによりプランジャー35を下降させ、これによって蓋部材2を下降させる。このとき、気体供給排出手段を駆動することにより、気体導入排出路41を通じて、気体を吸引排気する。突出部28材の下端部が圧力容器本体1の凹陥部に嵌め込まれると、突出部28の下端面、第1本体6の内周面および弾性部材15で形成される素材収容空間20内の気体が、気体導入排出路41を通じて排気される。素材収容空間20内の気体が排気されると、素材収容空間20内が減圧になるので、蓋部材2が大気圧に押圧されて、直ちに突出部28が圧力容器本体1の凹陥部内に引き込まれ、突出部28の凹陥部内への装着が直ちに完了する。
【0087】
突出部28の凹陥部内への装着が完了した後においても、気体導入排出路41を通じて素材収容空間20内の気体を排気し続ける。
【0088】
ヨーク5を移動させて、ヨーク5の作用開口部45に、蓋部材2を装着した圧力容器本体1を配置する。この配置状態では、ヨーク5における上部水平部43の下面が蓋部材2の上面に殆ど接する位に近接した状態にあり、またヨーク5の下部水平部44の上面は圧力容器本体1の下面に殆ど接する位に近接した状態にある。
【0089】
この状態で次のようにして、積層シート24の加圧成形を行う。
【0090】
圧力媒体供給手段により圧力媒体導入排出路21を介して圧力媒体収容空間18内に圧力媒体19を圧入する。圧力媒体収容空間18内の圧力が所定圧力に到達すると、圧力媒体供給手段による圧力媒体収容空間18内への圧力媒体19の圧入を停止する。圧力媒体19の所定圧力は、支持部材16における開口部17を通して弾性部材15に印加される。圧力媒体19の所定圧力は、弾性部材15及び積層シート24を介して蓋部材2を押し上げるように作用するが、蓋部材2は、ヨーク5に規制されているので上昇することができない。したがって、圧力媒体19の所定圧力により、積層シート24は、弾性部材15と蓋部材2、特に突出部28の下端面とで加圧されることになる。この加圧中において、前述したように、加熱されたヨーク5の熱が、蓋部材2及び圧力容器本体1に伝導し、これによって積層シート24が加熱される。積層シート24の加熱により、積層シート24中からガスが発生することがある。前述したように、気体供給排出装置により素材収容空間20内の気体を排気しているので、発生したガスは、直線溝27、環状溝26、および気体導入排出路41を通じて系外に排出される。したがって、加熱加圧中に積層シート24内で発生するガスが残留することによりボイドや亀裂などを有する積層体の不良品発生が防止される。
【0091】
このような加圧加熱処理をすることにより、積層シート24が一体に圧着して積層体が形成される。
【0092】
所定時間の加圧加熱処理が終了すると、シリンダー48を再び駆動することにより、ヨーク5を退避させる。ヨーク5の退避により蓋部材2の上面の規制がなくなる。
【0093】
次いで、圧力媒体供給装置を駆動することにより、圧力媒体導入排出路21を通じて圧力媒体収容空間18内に圧入されている圧力媒体19を、圧力媒体収容空間18内の圧力が常圧に戻るまで、排出する。この圧力媒体19の排出と共に、あるいは圧力媒体収容空間18内の圧力が常圧に戻ってから、気体供給排出装置を駆動することにより、素材収容空間20内に気体を圧入する。詳述すると、気体供給排出装置により供給される気体が、気体導入排出路41、環状溝26および直線溝27を通じて、積層体の収容されているスペーサ4の開口部25内に導入される。
【0094】
この気体の導入により、素材収容空間20側に浮き上がっていた弾性部材15が押し戻され、もとの平坦な上平面を有するように、元に戻る。
【0095】
また、シリンダー34を駆動することにより蓋部材2を上方に持ち上げるようにすると、素材収容空間20内が気体により加圧状態になっているので、極めて簡単に突出部28が凹陥部内から抜け出て、蓋部材2の脱着が短時間の内に完了する。この突出部28が凹陥部内から抜け出る際に、凹陥部内には気体が圧入されているので、突出部28が抜け出るときに弾性部材15が凹陥部側に引っ張られることもないので、弾性部材15の亀裂を生じることもない。
【0096】
蓋部材2を取り外すと、スペーサ4および積層体が露出するので、これらを取り出す。
【0097】
スペーサ4および積層体を凹陥部内から取り出した状態においては、弾性部材15の凹陥部側平面が膨れ上がっていず、平らな平面状態になっており、また亀裂等の損傷もないので、直ちに次の積層体の製造工程が開始される。
【0098】
以上に説明したように、この積層体の製造装置には、(1) 蓋部材を圧力容器本体に装着するのが容易であり、短時間の内に(瞬時と言っても良い。)突出部を凹陥部内に挿入することができ、(2) 突出部を凹陥部内に挿入する際、片持ちの蓋部材によりわずかに蓋部材が傾斜していても、凹陥部の内周面を傷つけることがなく、(3) 加圧成形の際に加熱により発生するガスが除去されるので、ボイドや気泡のない積層体を製造することができ、(4) 加圧操作の後に蓋部材を容易に脱着することができ、(5) 蓋部材における突出部を凹陥部から引き抜くときに、弾性部材を引っ張ることにより弾性部材を破損すると言う不都合がなく、(6) 加圧操作の終了後には、弾性部材の加圧操作による膨れが解消しているので、弾性部材を交換することなく次の積層シートの加圧成形操作を開始することができ、したがって、多数の積層シートを次々に加圧処理をして多数の積層体を迅速に製造することができるなどの数々の優れたメリットがある。
【0099】
(実施例2)
この実施例に係る加圧成形体製造装置は、前記実施例1に係る装置とは異なり、蓋部材が下方に、圧力容器本体が上方に位置する態様を有する。
【0100】
図8に示すように、加圧成形体製造装置は、圧力容器本体1と、蓋部材2と、弾性部材3と、固定部材であるヨーク5とを有する。
【0101】
圧力容器本体1の形状は前記実施例1に係る加圧成形体製造装置における圧力容器本体1と同様である。ただし、この実施例においては、圧力容器本体における凹陥部の開口部は下方に向かって開口していることが前記実施例1におけるのと大きく異なる。この圧力容器本体1は、前記実施例1におけるのと同様の第1本体6に第2本体7が積み重ねられた構成となっている。
【0102】
第1本体6および第2本体7の構成は、前記実施例1におけるのと同様である。また、第2本体7に設けられた環状テーパ面および環状水平面、ならびにバックアップリング装着部および弾性部材装着部についても前記実施例1におけるのと同様である。前記バックアップリング装着部に設けられる断面くさび型のバックアップリングについても前記実施例1におけるのと同様である。
【0103】
ただし、この実施例2における弾性部材においては、弾性部材3には支持部材が一体に設けられていず、薄い単板の弾性部材3の周縁部が弾性部材装着部に装着されることが、前記実施例1における弾性部材と相違する。この実施例において支持部材を必要としないのは、積層シートが蓋部材における突出部の上面に載置されるのであって、前記実施例1におけるように弾性部材上に積層シートを載置しないから、積層シートの載置可能に特に弾性部材を支持する必要がなくなるからである。もっとも、場合によっては、この実施例2における弾性部材につき、前記実施例1におけるのと同様に支持部材が一体に設けられていても良い。圧力媒体収容空間に収容される圧力媒体の自重に前記弾性部材が耐えることのできない場合には、支持部材と弾性部材とを一体にしておくのが好ましい。
【0104】
前記弾性部材の材質等に関しては、前記実施例1におけるのと同様である。
【0105】
この弾性部材が圧力容器本体内の凹陥部内に張設されることにより、第1本体6と第2本体7とで形成される圧力容器本体1における凹陥部が二分され、第2本体7の凹部9と弾性部材15とで圧力媒体収容空間18が形成され、第1本体6の円盤状空間8と弾性部材15とで素材収容空間20が形成される。
【0106】
蓋部材2は、図8および図9に示すように、蓋部材本体29と突出部28とを有し、蓋部材本体29の上面に突出部28が突出形成されていることが、前記実施例1における蓋部材と相違する。
【0107】
その余の点に関し、この蓋部材2は前記実施例1におけるのと同様である。
【0108】
この実施例における加圧成形体製造装置において、前記実施例1におけるのと相違するところは、スペーサが使用されないことである。
【0109】
ヨーク5は、前記実施例1におけるのと同様の構成を有する。
【0110】
簡単かつ大まかに言うと、この実施例に係る加圧成形体製造装置は、蓋部材が、蓋部材本体とその上面に突出形成された突出部とを備え、圧力容器本体が、その凹陥部の開口部が下に向けて開口するように設置固定されてなり、また、素材収容空間内にはスペーサが装着されていないことである。
【0111】
図8、9および10において、前記実施例1における各部と同様の部材については前記実施例1におけるのと同じ番号を付してある。
【0112】
以上構成の加圧成形体製造装置の作用を以下に説明する。
【0113】
まず、初期状態としてヨーク5は圧力容器本体1から退避した位置に待機している。
【0114】
圧力容器本体1の下面から蓋部材2を取り外しておき、蓋部材2を圧力容器本体1の下方から退避した位置に回動しておくことにより、圧力容器本体1の凹陥部を開口し、露出させておく。次いで、突出部28の上面に積層シート24を安置する。この突出部28の上面に積層シート24を安置する操作は、前記実施例1における積層シート24の安置操作に比べて非常に容易である。
【0115】
突出部28を水平に回動して、圧力容器本体1の真下に位置させる。
【0116】
シリンダーを駆動することによりプランジャー35を上昇させ、これによって蓋部材2を上昇させる。このとき、気体供給排出手段を駆動することにより、気体導入排出路41を通じて、気体を吸引排気する。突出部28の下端部が圧力容器本体1の凹陥部に嵌め込まれると、突出部28の下端面、第1本体6の内周面および弾性部材15で形成される素材収容空間20内の気体が、気体導入排出路41を通じて排気される。素材収容空間20内の気体が排気されると、素材収容空間20内が減圧になるので、蓋部材2が大気圧に押圧されて、直ちに突出部28が圧力容器本体1の凹陥部内に引き込まれ、突出部28の凹陥部内への装着が直ちに完了する。
【0117】
突出部28の凹陥部内への装着が完了した後においても、気体導入排出路41を通じて素材収容空間20内の気体を排気し続ける。
【0118】
ヨーク5を移動させて、ヨーク5の作用開口部45に、蓋部材2を装着した圧力容器本体1を配置する。この配置状態では、ヨーク5における下部水平部44の上面が蓋部材2の下面に殆ど接する位に近接した状態にあり、またヨーク5の上部水平部43の下面は圧力容器本体1の上面に殆ど接する位に近接した状態にある。
【0119】
この状態で次のようにして、積層シート24の加圧成形を行う。
【0120】
圧力媒体供給手段により圧力媒体導入排出路21を介して圧力媒体収容空間18内に圧力媒体19を圧入する。圧力媒体収容空間18内の圧力が所定圧力に到達すると、圧力媒体供給手段による圧力媒体収容空間18内への圧力媒体19の圧入を停止する。圧力媒体19の所定圧力は、弾性部材15に印加される。弾性部材15は、図10に示すように、スペーサの存在しない部位では、弾性部材15は圧力媒体19により突出部28に向かって膨張し、突出部28と密着する。圧力媒体19の所定圧力は、弾性部材15及び積層シート24を介して蓋部材2を押し下げるように作用するが、蓋部材2は、ヨーク5に規制されているので下降することができない。したがって、圧力媒体19の所定圧力により、積層シート24は、弾性部材15と蓋部材2、特に突出部28の上面とで加圧されることになる。この加圧中において、前述したように、加熱されたヨーク5の熱が、蓋部材2及び圧力容器本体1に伝導し、これによって積層シート24が加熱される。積層シート24の加熱により、積層シート24中からガスが発生することがある。前述したように、気体供給排出装置により素材収容空間20内の気体を排気しているので、発生したガスは、直線溝27、環状溝26、および気体導入排出路41を通じて系外に排出される。したがって、加熱加圧中に積層シート24内で発生するガスが残留することによりボイドや亀裂などを有する積層体の不良品発生が防止される。
【0121】
このような加圧加熱処理をすることにより、積層シート24が一体に圧着して積層体が形成される。
【0122】
所定時間の加圧加熱処理が終了すると、シリンダー48を再び駆動することにより、ヨーク5を退避させる。ヨーク5の退避により蓋部材2の上面の規制がなくなる。
【0123】
次いで、圧力媒体供給装置を駆動することにより、圧力媒体導入排出路21を通じて圧力媒体収容空間18内に圧入されている圧力媒体19を、圧力媒体収容空間18内の圧力が常圧に戻るまで、排出する。この圧力媒体19の排出と共に、あるいは圧力媒体収容空間18内の圧力が常圧に戻ってから、気体供給排出装置を駆動することにより、素材収容空間20内に気体を圧入する。詳述すると、気体供給排出装置により供給される気体が、気体導入排出路41、環状溝26および直線溝27を通じて、積層体の収容されているスペーサ4の開口部25内に導入される。
【0124】
この気体の導入により、弾性部材15における突出部28の上面に密着していた部分が押し戻され、もとの平坦な状態になり、元に戻る。
【0125】
また、シリンダー34を駆動することにより蓋部材2を下方に下げるようにすると、素材収容空間20内が気体により加圧状態になっているので、極めて簡単に突出部28が凹陥部内から抜け出て、蓋部材2の脱着が短時間の内に完了する。この突出部28が凹陥部内から抜け出る際に、凹陥部内には気体が圧入されているので、突出部28が抜け出るときに弾性部材15が素材収容空間20側に引っ張られることもないので、弾性部材15の亀裂を生じることもない。
【0126】
蓋部材2を下降させて圧力容器本体1から取り外すと、積層体が露出するので、これらを取り出す。
【0127】
積層体を凹陥部内から取り出した状態においては、弾性部材15の凹陥部側平面が膨れ上がっていず、平らな平面状態になっており、また亀裂等の損傷もないので、直ちに次の積層体の製造工程が開始される。
【0128】
以上に説明したように、この加圧成形体製造装置には、(1) 蓋部材を圧力容器本体に装着するのが容易であり、短時間の内に(瞬時と言っても良い。)突出部を凹陥部内に挿入することができ、(2) 突出部を凹陥部内に挿入する際、片持ちの蓋部材によりわずかに蓋部材が傾斜していても、凹陥部の内周面を傷つけることがなく、(3) 加圧成形の際に加熱により発生するガスが除去されるので、ボイドや気泡のない積層体を製造することができ、(4) 加圧操作の後に蓋部材を容易に脱着することができ、(5) 蓋部材における突出部を凹陥部から引き抜くときに、弾性部材を引っ張ることにより弾性部材を破損すると言う不都合がなく、(6) 加圧操作の終了後には、弾性部材の加圧操作による膨れが解消しているので、弾性部材を交換することなく次の積層シートの加圧成形操作を開始することができ、したがって、多数の積層シートを次々に加圧処理をして多数の積層体を迅速に製造することができ、(7) 蓋部材における突出部の上面に、被加圧処理物である積層シートを載置する方式を採用しているので、前記実施例1におけるような凹陥部内に積層シートを嵌め込む方式に比べて、操作が容易であり、例えば自動搬送装置により搬送されてきた積層シートを、自動ハンドリング装置により把持して突出部の上面に載置し、積層シートの加圧成形処理により得られた積層体を、突出部の上面から自動ハンドリング装置により他の搬送装置に移送するようにすると、全自動の積層体製造装置を組み上げることができる。つまり、突出部の上面に積層シートを載置して加圧成形処理をするこの実施例装置は、全自動化を容易に達成することができる。
【0129】
(実施例3)
この実施例は、加圧成形体製造装置における気体導入排出手段に関する。前記実施例1および2においては、気体導入排出手段における第3開口部39は、蓋部材における突出部の素材収容空間に向かう面に置いて開口していた。
【0130】
しかしながら、この第3開口部は、要するに素材収容空間内の気体を排気する開口部としての機能を有する限り、その開口位置について制限がない。
【0131】
とはいっても、気体導入排出手段における第3開口部の開口位置は、例えば、弾性部材と蓋部材における突出部とで挟まれる空間に、どのような材質のスペーサを配置するか、あるいはスペーサを配置しないのかなどの要素により、慎重に決定することが望ましい。例えば、弾性部材と蓋部材における突出部とで挟まれる空間に、素材を囲繞するスペーサを配置しない場合、素材を囲繞するスペーサであって非金属材料例えば硬質ゴム(弾性部材程の大きな弾性を有してはいないが、圧力媒体による高圧に対しては弾性を示す。)製のものを配置する場合等においては、気体導入排出手段における第3開口部、すなわち、素材収容空間内の気体を排気し、あるいは素材収容空間内に気体を導入する開口部としての機能を有する第3開口部は、蓋部材における突出部の周側面に開口するようにその開口位置を決定するのが望ましい。蓋部材における突出部を圧力容器本体に装着した場合に、圧力容器本体の内周面と突出部の外周面とは嵌合状態にはなっているが、実際にはごくわずかのクリアランスが圧力容器本体の内周面と突出部の外周面との間に存在する。したがって、突出部の外周面に第3開口部を設けても、弾性部材と突出部と圧力容器本体の内周面とで形成される素材収容空間内の気体を、有効に、支障なく排気することができる。しかも、素材収容空間内を減圧にすることにより弾性部材が膨満して突出部の表面に接着することがあったとしても、膨満する弾性部材により第3開口部が閉塞されることもない。
【0132】
(実施例4)
この実施例4係る加圧成形体製造装置が前記実施例1における加圧成形体製造装置と異なるところは、実施例1における加圧成形体製造装置における圧力媒体供給手段21Eが2基のポンプ21B,21Cを使用するに対し、この実施例7に係る加圧成形体製造装置における圧力媒体供給手段21Fは1基のポンプを使用するという点である。
【0133】
図11に示すようにこの実施例に係る加圧成形体製造装置における圧力媒体供給手段21Fは、第2開口部23に接続されて圧力媒体貯留槽21Aに至る配管Pの途中に第1ポンプ21Bを介装し、その第1ポンプ21Bと前記第2開口部23との間の配管Pに第1バルブV を介装し、その第1ポンプ21Bと圧力媒体貯留槽21Aとの間の配管に第2バルブV を介装し、第1バルブV と第2開口部23との間の配管Pに、第3バルブV を介装する迂回管P の一端を接続し、その迂回管P の他端は、第1ポンプ21Bと第2バルブV との間の配管Pに接続し、第1ポンプ21Bと第1バルブV との間の配管Pには、先端を圧力媒体貯留槽21Aに引き込み、かつ途中に第4バルブV を介装する支管P を結合してなる。
【0134】
このような圧力媒体供給手段21Aにおいては、圧力媒体収容空間18内に圧力媒体19を圧入するときには、第1バルブV および第2バルブV を開放状態にし、その余のバルブV ,V を閉鎖状態にする。そして、第1ポンプ21Bを駆動すると、配管Pを介して圧力媒体収容空間18内に圧力媒体19が圧入される。圧力媒体収容空間18内に圧入されている圧力媒体19を排出するには、第1バルブV および第2バルブV を閉鎖状態にし、その余のバルブV およびV を開放状態にする。そうすると、圧力媒体19は迂回管P 、第1ポンプ21Bおよび支管P を通って圧力媒体貯留槽21Aに排出される。
【0135】
この実施例に示されるような圧力媒体供給手段を採用すると、ポンプの数を1基にすることができるので、装置構成の簡単化および装置の小型化を達成することができる。
【0136】
なお、以上の実施例においては、素材として積層シートを取り上げて説明したが、この発明の加圧成形体製造装置は、粉体の成形にも適する。
【0137】
【発明の効果】
この発明に係る加圧成形体製造装置によると、蓋部材が、突出部の凹陥部内に向けて開口する第1開口部を備えたところの、凹陥部内の気体を導入し、また凹陥部内から気体を排出する気体導入排出手段を備えているので、(1) 蓋部材を圧力容器本体に装着するのが容易であり、短時間の内に(瞬時と言っても良い。)突出部を凹陥部内に挿入することができ、(2) 突出部を凹陥部内に挿入する際、わずかに蓋部材が傾斜していても、凹陥部の内周面を傷つけることがなく、蓋部材の突出部を圧力容器本体の凹陥部内に挿入させることができ、(3) 加圧成形の際に発生するガスが除去されるので、ボイドや気泡のない積層体を製造することができる。
【0138】
この発明に係る加圧成形体製造装置によると、(1) 蓋部材を圧力容器本体に装着するのが容易であり、短時間の内に(瞬時と言っても良い。)突出部を凹陥部内に挿入することができ、(2) 突出部を凹陥部内に挿入する際、わずかに蓋部材が傾斜していても、凹陥部の内周面を傷つけることがなく、蓋部材の突出部を圧力容器本体の凹陥部内に挿入させることができ、(3) 加圧成形の際に発生するガスが除去されるので、ボイドや気泡のない積層体を製造することができ、(4) 加圧操作中に圧力媒体の加圧力を受けた弾性部材が破損することがなく、(5) 加圧操作の後に蓋部材を容易に脱着することができ、(6) 蓋部材における突出部を凹陥部から引き抜くときに、凹陥部内の負圧により弾性部材が強制的に引っ張られることにより弾性部材が破損されることがなく、(6) 加圧操作の終了後には、弾性部材の加圧操作による膨れが解消される。したがって、弾性部材を交換することなく次の積層シートの加圧成形操作を迅速に開始することができ、多数の積層シートを次々に加圧処理して多数の積層体を迅速に製造することができる。
【0139】
この発明に係る加圧成形体製造装置は、圧力容器本体の凹陥部が上方に開口するように配置されていると、固定された圧力容器本体に上方から蓋部材を装着する態様になるので、操作性が良好になる。
【0140】
この発明に係る加圧成形体製造装置は、圧力容器本体の凹陥部が下方に開口するように配置されていると、蓋部材の突出部は上方に向かって存在することになり、突出部に積層シートを配置する態様で積層体を製造することになる。突出部の上面に積層シートを配置する作業は、搬送されてきた積層シートをハンドリングロボットなどにより搬送面から突出部の上面へと移送する作業に連動させることができるので、積層シートの製造、積層シートの搬送、積層シートから積層体を製造することおよび製造された積層シートを突出部の上面から他の搬送部に移送することなどの一連の工程を自動化するのに好都合である。換言すると、圧力容器本体の凹陥部の開口部を下方に開口する加圧成形体製造装置は、積層体の製造を全自動化するのに好都合である。
【0141】
この発明に係る加圧成形体製造装置は、圧力容器本体を構成する第1本体と第2本体との重ね合わせ部分あるいは積み重ね部分に弾性部材挟み込み部ないし弾性部材装着部および断面くさび形のバックアップリング装着部を備えているので、前記した種々の技術的効果の外に、圧力媒体収容空間内の液密性を確保することができ、圧力損失のない効率的な加圧成形加工を行うことができる。
【0142】
この発明のその他の技術的効果については、この明細書の記述全体から明らかに理解できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1はこの発明の一実施例である加圧成形体製造装置を示す概略断面説明図である。
【図2】図2はこの発明の一実施例である加圧成形体製造装置における第1本体と第2本体との重ね合わせ部分を示す部分断面説明図である。
【図3】図3はこの発明の一実施例である加圧成形体製造装置における圧力媒体供給排出装置の一例を示す説明図である。
【図4】図4はこの発明の一実施例である加圧成形体製造装置におけるスペーサを示す平面説明図である。
【図5】図5はこの発明の一実施例である加圧成形体製造装置における他のスペーサを示す平面説明図である。
【図6】図6はこの発明の一実施例である加圧成形体製造装置における蓋部材とこの蓋部材を支持し、上下動を可能にする機構とを合わせ示す概略正面図である。
【図7】図7はこの発明の一実施例である加圧成形体製造装置を示す概略平面図である。
【図8】図8はこの発明の他の実施例である加圧成形体製造装置を示す概略断面説明図である。
【図9】図9はこの発明の他の実施例である加圧成形体製造装置における蓋部材とこの蓋部材を支持し、上下動を可能にする機構とを合わせ示す概略正面図である。
【図10】図10はこの発明の他の実施例である加圧成形体製造装置の作用を示す概略断面説明図である。
【図11】図11はこの発明の一実施例である加圧成形体製造装置における圧力媒体供給排出装置の他の例を示す説明図である。
【符号の説明】
1・・・圧力容器本体、2・・・蓋部材、3・・・弾性部材、4・・・スペーサ、5・・・ヨーク、6・・・第1本体、7・・・第2本体、8・・・円盤状空間、9・・・凹部、10・・・環状テーパ面、11・・・環状水平面、12・・・リング状装着部、13・・・弾性部材装着部、14・・・くさび形のリング、15・・・弾性部材、16・・・支持部材、17・・・開口部、18・・・圧力媒体収容空間、19・・・圧力媒体、20・・・素材収容空間、21・・・圧力媒体導入排出路、22・・・第1開口部、23・・・第2開口部、P・・・配管、24・・・積層シート、25・・・方形開口部、26・・・環状溝、27・・・直線状溝、28・・・突出部、29・・・蓋部材本体、30・・・支持体、31・・・支持棒体、 32・・・ベアリング、33・・・基礎部材、34・・・シリンダー、35・・・プランジャー、36・・・垂直レール、37・・・ガイド、38・・・Oリング、39・・・第3開口部、40・・・第4開口部、41・・・気体導入排出路、42・・・垂直部、43・・・上部水平部、44・・・下部水平部、45・・・作用開口部、46・・・レール、47・・・ガイド、48・・・シリンダー。

Claims (4)

  1. 素材収容空間と圧力媒体収容空間とを隔絶するように張設された弾性部材を備えた凹陥部を有する圧力容器本体と、前記凹陥部に挿入する突出部を有する蓋部材と、前記素材収容空間内に収容された成形素材を加圧成形する際の加圧力に対して蓋部材および圧力容器本体を規制する固定手段とを備え、
    前記蓋部材は、素材収容空間内に気体を導入し、また素材収容空間内から気体を排出する気体導入排出手段を備え、
    前記圧力容器本体は、内面円筒の第1本体と、この第1本体と積み重ね可能に形成され、かつ凹部を備えてなる第2本体と、前記第1本体と第2本体との積み重ね部分に、弾性部材を挟み込む弾性部材挟み込み部と前記挟み込み部の外側であって、断面くさび型のバックアップリングを装着する断面くさび型のバックアップリング装着部と、前記圧力媒体収容空間内に向けて開口する第2開口部を備えたところの、圧力媒体収容空間内に圧力媒体を導入し、また圧力媒体収容空間から圧力媒体を排出する圧力媒体導入排出手段と備えてなることを特徴とする加圧成形体製造装置。
  2. 前記凹陥部が上方に開口してなる前記請求項1に記載の加圧成形体製造装置。
  3. 前記凹陥部が下方に開口してなる前記請求項に記載の加圧成形体製造装置。
  4. 前記圧力媒体供給排出手段が、圧力媒体を吸引吐出するポンプと、前記ポンプにより圧力媒体貯留槽から圧力媒体収容空間に圧力媒体を圧送する供給配管系と前記ポンプにより圧力媒体収容空間から圧力媒体貯留槽に圧力媒体を排出する排出配管系とに配管系を切り替える切り替え手段とを備えてなる前記請求項1〜3のいずれか一項に記載の加圧成形体製造装置。
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