JP3623518B2 - 結露防止材の製造方法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、結露防止材の製造方法に関するものである。詳しくは、本発明は、耐水性が優れると共に、通気性,透湿性の優れた建築用の結露防止材の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
建築物のなかで、特に住宅は、密閉性が高くなると、壁に結露が生じ、カビが生えて不衛生になったり、建物の耐用年数を短かくするなどしている。そして、時には、特に押入れなどの壁面に結露が生ずると、その結露によって収納物に思いがけない損傷を引き起こすなどしている。
この結露を防止するために、通気性の優れた各種結露防止材が提案されている。例えば特開昭59−88998号公報には、壁紙用基材の片面に、懸濁重合法によって得られた微粒子状塩化ビニルをコーティングした後、加熱して微粒子状塩化ビニル系樹脂を溶着した結露防止性壁紙が開示されている。しかしながら、ここに開示されている技術では、微粒子状塩化ビニル系樹脂を水,可塑剤等に分散させてコーティングするので、気泡が混入したり、加熱時にクラックが発生するなどして微孔径が不均一になり易い欠点を有する。また、特開昭58−134739号公報には、発泡塩化ビニル樹脂層を設けた不織布シートを積層した、結露防止を目的とした壁装材料が開示されている。しかしながら、この開示技術には、発泡剤を混合するので、発泡時に発泡セルが凝集して大きなセルが発生し易いという欠点を有する。
【0003】
【課題を解決するための手段】
そこで、本発明者らは、上記の状況に鑑み、従来法の問題点を解消し、耐水性が優れるとともに、通気性、透湿性の優れた結露防止材の製造方法を開発すべく鋭意研究を重ねた。
その結果、ポリエチレン合成パルプと合成繊維を紙料原料として併用し、且つネット状物を積層することによって、目的とする性能を有する結露防止材を得ることができることを見出した。本発明はかかる知見に基づいて完成したものである。
すなわち、本発明は、(A)ポリエチレン合成パルプと(B)合成繊維とからなり、(A)ポリエチレン合成パルプが60重量%以上である紙料を調成し、抄紙後、ネット状物を積層し、温度110〜150℃にて熱処理して、ポリエチレン合成パルプ同士を熱溶融させて融着固定化し、あるいはポリエチレン合成パルプと合成繊維を共に熱溶融させて融着固定化し、又はポリエチレン合成パルプを熱溶融させて合成繊維に融着固定化すること を特徴とする結露防止材の製造方法、及び、(A)ポリエチレン合成パルプと(B)合成繊維とからなり、(A)ポリエチレン合成パルプが60重量%以上である紙料を調成し、抄紙後、温度110〜150℃にて熱処理して、ポリエチレン合成パルプ同士を熱溶融させて融着固定化し、あるいはポリエチレン合成パルプと合成繊維を共に熱溶融させて融着固定化し、又はポリエチレン合成パルプを熱溶融させて合成繊維に融着固定化した後、ネット状物を積層し加熱圧着することを特徴とする結露防止材の製造方法、を提供するものである。
【0004】
先ず、本発明において、結露防止材の製造には、熱処理温度が150℃以下であること、及び市場への供給性、均質性あるいは入手価格等の点から、(A)ポリエチレン合成パルプが使用される。
このポリエチレン合成パルプは、熱処理によって、溶融し、ポリエチレン合成パルプ同士を融着固定化し、あるいはポリエチレン合成パルプと合成繊維とを融着固定化して紙状シートを得ることができるものである。
(A)ポリエチレン合成パルプとしては、多くの合成樹脂メーカーによって開発された種々の方法でもって製造されたものを用いることができる。
例えば、現在、一般に市販されていて、容易に入手することができる典型的なものとしては、ポリエチレン合成パルプ“SWP”〔三井石油化学(株)製〕が挙げられる。
【0005】
次に、本発明において、(B)の合成繊維としては、化学繊維紙の製造に一般的に供されているものを用いることができる。
すなわち、合成繊維の原料樹脂を湿式,乾式,溶融などのいずれかの方法で紡糸されたものを、適宜長さの短繊維に切断したものである。具体的には、例えば、ポリプロピレン繊維,ポリエチレン繊維,アクリル繊維,ナイロン繊維,ビニロン繊維などで、この外、コアーがポリエステルで、シースがポリオレフィンの芯鞘構造を有する複合繊維などが挙げられる。
これらのなかで、例えば、ポリプロピレン繊維は、プロピレンをチーグラー型触媒で重合して得られるアイソタクチックポリマーから、溶融紡糸された繊維を所望長さに切断したものである。このようにして得られるポリプロピレン繊維は、比重が0.9〜0.92、融点164〜170℃であって、その軟化点は約150℃である。
これらの繊維長は、通常0.5〜30mmで、一般的には3〜6mmのものが最も多く用いられる。
【0006】
本発明においては、前記(A)のポリエチレン合成パルプ及び(B)の合成繊維は、通常の木材パルプを用いて抄紙するのと同様に抄紙すればよい。
先ず、(A)のポリエチレン合成パルプ60重量%以上、好ましくは65重量%以上に、(B)の合成繊維を配合し、水に分散して、(A)のポリエチレン合成パルプと(B)の合成繊維とからなる紙料を調成する。この紙料の調成にあたっては、(A)のポリエチレン合成パルプおよび(B)の合成繊維ともに、水に分散するのにぬれの問題があり、適宜ぬれ調節剤を用いて分散する。ここで、ぬれ調節剤としては、例えば、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル,ジオクチルスルホコハク酸ナトリウムなどが挙げられる。
そして、紙料調成にあたっては、本発明の目的を阻害しない範囲で必要に応じて、各種添加成分を配合することができる。例えば、強度を向上させるために熱接着性樹脂例えば、アクリルエマルジョン,エチレン−酢酸ビニル共重合体エマルジョン,スチレン−ブタジエンラテックスなどを用いたり、あるいは耐光性を向上させるために紫外線吸収剤を添加したり、さらには着色剤、その他の助剤を用いて紙料を調成することができる。
上記のようにして調成された紙料は、通常の抄紙方法によって抄紙し、乾燥してベース紙を製造する。ここで、ベース紙は、坪量10〜60g/m2 で抄紙される。なお、抄紙には、ヤンキー式抄紙機、長網式抄紙機などで抄紙する。
次いで、ベース紙は、ネット状物を積層して温度110〜150℃に設定された熱加工機で熱処理することによって、または温度110〜150℃に設定された熱加工機で熱処理した後に、ネット状物を積層し加熱圧着することによって、本発明の結露防止材を得ることができる。熱加工機としては、加熱ロールと加圧ロールを備えたものであれば、如何なる形態のものでも適用することができる。 そして、抄紙後の熱処理は、乾燥と同時であっても、あるいは、一旦抄紙、乾燥してから、巻取りベース紙を熱処理するなどいずれであってもよい。
このように熱処理することによって、(A)のポリエチレン合成パルプ同士を熱溶融させて融着固定化し、あるいは(A)のポリエチレン合成パルプと(B)の合成繊維を共に熱溶融させて融着固定化し、又は(A)のポリエチレン合成パルプを熱溶融させて(B)の合成繊維に融着固定化した紙状シート(以下、「特殊シート」ということがある。)が得られる。
【0007】
本発明の製造方法で得られる結露防止材(以下、「本発明の結露防止材」ということがある。)は、特殊シートの紙料原料として、ポリエチレン合成パルプおよび合成繊維を用いているので、耐水強度は勿論のこと、ポリエチレン合成パルプと合成繊維との融着固定化あるいはポリエチレン合成パルプ同士の融着固定化によるネット化によって通気性が得られる。そして、ポリエチレン合成パルプおよび合成繊維の原料樹脂のぬれ特性と通気性とから、透湿性も得られるものと推定される。
【0008】
本発明の結露防止材は、上記のポリエチレン合成パルプおよび合成繊維からなる特殊シートにネット状物を積層してなるものである。
ここで、本発明の結露防止材を構成するネット状物としては、網状構造を有するもので、特に熱接着性を有するものが効果的である。
すなわち、本発明において、ネット状物としては、各種のものがあり、網状構造を有するものであれば、その種類については問わない。具体的には例えば、寒冷紗などがその代表例として挙げられる。ネット状物として、寒冷紗を用いる場合には、予め接着性樹脂で処理すれば、何等支障なく用いることができる。
そして、より効果的なネット状物としては、例えば、割繊維不織布がある。この割繊維不織布は、先ず、フィルム形成性を有する熱可塑性樹脂を用いて高倍率に延伸された広幅の一軸延伸フィルムを作成する。次いで、得られた一軸延伸フィルムを縦方向に割繊(引裂く)することによって割繊維を作り、これを所定幅に拡幅し、経緯直交積層し、熱融着して得られる網目状の不織布である。この割繊維不織布は、そのまま1層で割繊維不織布として機能するが、必要に応じて2層以上を積層したものも用いることができる。
この割繊維不織布に用いられるフィルム形成性を有する熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン,ポリプロピレン,ポリ塩化ビニル,ポリ塩化ビニリデン,ポリアクリロニトリル,ポリビニルアルコール,ポリアマイド,ポリエステル及びこれらの共重合体などがあげられる。これらの中では、軟化点が比較的低いポリエチレン,ポリプロピレンが好ましく用いられる。これらの割繊維不織布は、熱接着性のものはそのままで、あるいは熱接着性樹脂で処理してから用いれば何等支障なく用いることができる。
その他、ネット状物としては、網状構造を有するものであれば、いずれをも用いることができる。
【0009】
本発明の結露防止材は、前記特殊シートおよび前記ネット状物を積層し、次いで、加熱圧着することにより得られる。
ここで、前記特殊シートおよび前記ネット状物を積層するにあたって、ネット状物が、例えば、原料樹脂として、軟化点が比較的低いポリエチレンを用いた割繊維不織布では、特殊シートに積層し、次いで、熱加工機で加熱圧着するだけで容易に結露防止材を得ることができる。熱加工機としては、加熱ロールと加圧ロールを備えたものであれば、如何なる形態のものでも適用することができる。
また、例えば、ポリエステルを用いたようなネット状物のように、加熱圧着するだけでは、特殊シートとの層間強度が得られない場合には、予めネット状物を接着性樹脂で処理してから積層し、次いで、加熱圧着すれば所望の結露防止材を得ることができる。勿論、加熱圧着するだけで結露防止材を得ることができるポリエチレン割繊維不織布のような場合でも、予め接着性樹脂で処理してから使用すれば、より層間強度の優れた結露防止材を得ることができる。
このような接着性樹脂としては、例えば、アクリル系エマルジョン,エチレン−酢酸ビニル共重合体エマルジョン,合成ゴム系エマルジョン,ポリエステル樹脂などが挙げられる。
そして、特殊シートをネット状物に積層する場合、ポリエチレン合成パルプと合成繊維の紙料から抄紙されたベース紙を用い、ネット状物に積層後、加熱圧着するようにしてもよい。この場合には、ベース紙の熱処理工程を省くことができ、結露防止材を効果的に得ることができる。
【0010】
【実施例】
更に、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
【0011】
実施例1
紙料配合
ポリエチレン合成パルプ 85重量部
〔三井石油化学(株)製,SWP〕
ポリエチレンとポリプロピレンの複合繊維 15重量部
〔大和紡績(株)製,NBF〕
分散剤 VS−87E〔明成化学(株)製〕 1重量部
離型剤 ペルトールN856 2重量部
〔近代化学(株)製〕
上記紙料配合からなる紙料を混合分散、調成し、ヤンキー式抄紙機で抄紙し、坪量40gr/m2 のベース紙を得た。
得られたベース紙と日石ワリフ〔日本石油化学(株)製,坪量35g/m 2 のポリエチレン割繊維不織布〕とを積層し、130℃の温度に設定された熱加工機で熱処理し、本発明の結露防止材を得た。
【0012】
実施例2
紙料配合
ポリエチレン合成パルプ 75重量部
〔三井石油化学(株)製,SWP〕
ポリエチレンとポリプロピレンの複合繊維 25重量部
〔大和紡績(株)製,NBF〕
紙料配合を上記に変えた以外は、実施例1と同様に実施し、本発明の結露防止材を得た。
【0013】
実施例3
紙料配合
ポリエチレン合成パルプ 65重量部
〔三井石油化学(株)製,SWP〕
ポリエチレンとポリプロピレンの複合繊維 35重量部
〔大和紡績(株)製,NBF〕
紙料配合を上記に変えた以外は、実施例1と同様に実施し、本発明の結露防止材を得た。
【0014】
実施例1〜3で得られた結露防止材について、その品質評価として、各種強度を測定した。その測定結果を第1表に示す。
なお、各強度の測定は、次にしたがった。
引張強度 JIS−P−8113
耐水度 JIS−L−1092
透湿度 JIS−Z−0208
透気度 JIS−P−8117
【0015】
【表1】
【0016】
【発明の効果】
本発明によると、ポリエチレン合成パルプおよび合繊繊維を紙料原料として併用し、且つネット状物を積層することによって、耐水性が優れるとともに、通気性,透湿性の優れた結露防止材を得ることができる。
したがって、本発明で得られた結露防止材は、上記特性から、建築での使用に充分に耐えうるもので、該分野での使用が期待される。
Claims (2)
- (A)ポリエチレン合成パルプと(B)合成繊維とからなり、(A)ポリエチレン合成パルプが60重量%以上である紙料を調成し、抄紙後、ネット状物を積層し、温度110〜150℃にて熱処理して、ポリエチレン合成パルプ同士を熱溶融させて融着固定化し、あるいはポリエチレン合成パルプと合成繊維を共に熱溶融させて融着固定化し、又はポリエチレン合成パルプを熱溶融させて合成繊維に融着固定化することを特徴とする結露防止材の製造方法。
- (A)ポリエチレン合成パルプと(B)合成繊維とからなり、(A)ポリエチレン合成パルプが60重量%以上である紙料を調成し、抄紙後、温度110〜150℃にて熱処理して、ポリエチレン合成パルプ同士を熱溶融させて融着固定化し、あるいはポリエチレン合成パルプと合成繊維を共に熱溶融させて融着固定化し、又はポリエチレン合成パルプを熱溶融させて合成繊維に融着固定化した後、ネット状物を積層し加熱圧着することを特徴とする結露防止材の製造方法。
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JP28724192A JP3623518B2 (ja) | 1992-10-26 | 1992-10-26 | 結露防止材の製造方法 |
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JPH06136686A JPH06136686A (ja) | 1994-05-17 |
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1992
- 1992-10-26 JP JP28724192A patent/JP3623518B2/ja not_active Expired - Lifetime
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