JP3622532B2 - 酵素免疫分析用試薬及びそれを用いた分析方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、酵素免疫測定法に用いられる標識酵素存在下で、発色物質とその基質である過酸化水素で構成された発色液により発色する酵素免疫分析用試薬及びをれを用いた分析方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、ある特定のタンパクの定量方法として、定量したいタンパクを抗原とし、その抗原と特異的に結合する抗体を用いた抗原抗体反応により生化学的に定量する方法が行われてきた。この免疫分析法は標識として用いられる抗体に標識される物質により異なる。ラジオアイソトープで標識した抗体と生体より採取した試料中の抗原との抗原抗体反応を利用して試料中の特定抗原を定量分析するラジオイムノアッセイ法(RIA)、蛍光物質を標識した抗体と生体より採取した試料中の抗原との抗原抗体反応を利用して試料中の特定抗原を定量分析する蛍光免疫分析法(FIA)、酵素を標識した抗体と生体より採取した試料中の抗原との抗原抗体反応を利用して試料中の特定抗原を定量分析する酵素免疫分析法(EIA)の3つの方法がある。これらの方法にはそれぞれ特徴があるが、簡便で、広く一般的に使用されている方法として酵素免疫分析法がある。
【0003】
なお以上は抗原について説明したが、抗体を抗原、抗原を抗体に置き換えても全く同様であり、以下修飾したタンパクが抗原の場合を説明するが、抗体を定量する場合も同様であり、詳細については省略する。
【0004】
これら代表的な酵素免疫分析法の一つであるサンドイッチELISA(EnzymeLinked Immuno Solvent Assay)法を例に挙げ酵素免疫分析法について説明する。
【0005】
まず抗原を捕まえる為の抗体を免疫測定に用いられるポリプロピレンのプレートに非特異的吸着により固定して固相化する。これに測定したいタンパクを含むサンプル溶液を注入して抗原と抗体の特異的な結合により測定したいタンパクを捕捉する。さらにペルオキシダーゼ(POD)で標識した抗体を抗原と反応させることにより、抗原量に応じた標識抗体が結合する。ここにあらかじめ溶液化した発色剤にペルオキシダーゼ(POD)の基質物である過酸化水素を加えた発色試薬を作成しておき、標識抗体結合後プレートに添加する。一定時間反応後、反応を停止させ測定を行う。使用した発色剤の最大吸収波長で吸光度の測定を行い測定対象のタンパクの定量を行うものである。
【0006】
【発明は解決しようとする課題】
上記従来の酵素免疫分析用試薬及び分析方法では、発色溶液を作成するにあたり、発色物質の他に過酸化水素を標識酵素の基質物として別途加える必要がある。しかし過酸化水素は溶液の形態でしか存在せず、安定性にも欠け、また微量の添加をするためには専用の器具が必要となり、作業工程を増やす要因になっているため、熟練した者が操作を行わなくてはならないが、利便性と分析の正確性を欠けるという課題を有していた。
【0007】
本発明は上記従来の課題を解決するもので、酵素免疫分析を正確に安全で簡単に進めることができ、試薬をすべて1つの錠剤で扱うことにより一元的に管理することができ、さらには作業工程を減らすことで素人にも簡単にできる酵素免疫分析用試薬を提供、及び簡単で安全性、安定性と利便性に優れ、正確且つ測定感度が高い酵素免疫分析方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
この目的を達成するために本発明の酵素免疫分析用試薬及び分析方法は次の構成からなる。
【0009】
本発明の酵素免疫分析用試薬は、過酸化水素を発生できる酵素を含有する酵素層と、前記酵素層の酵素に特異的に反応する基質物を含有する基質層と、前記酵素層の酵素と前記基質層の基質物との反応によって発生する過酸化水素を用いて発色する発色物質を含有する発色層と、を備えた酵素免疫分析用試薬であって、
前記発色層が、前記酵素層と前記基質層の間に積層されている構成を有している。
【0010】
この構成により、酵素免疫分析を正確に安全で簡単に進めることができ、試薬をすべて1つの錠剤で扱うことにより一元的に管理することができ、さらには作業工程を減らすことで素人にも簡単にできる酵素免疫分析用試薬を提供することができる。
【0011】
また、本発明の酵素免疫分析方法は、請求項1乃至4の内いずれか1項に記載の酵素免疫分析用試薬を、発色度を決定する標識物質を修飾した抗体と抗原が混入された被検液に投入し、次いで発色物質の吸光度を測定し、吸光値による抗原濃度を測定した構成を有している。
【0012】
この構成により、抗原濃度分析を正確に安全で簡単に進めることができ、試薬をすべて1つの錠剤で扱うことにより、作業工程を減らすことができるとともに、発色物質の吸光度を測定するだけで、抗原濃度を測定することができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明の請求項1に記載の発明は、過酸化水素を発生できる酵素を含有する酵素層と、前記酵素層の酵素に特異的に反応する基質物を含有する基質層と、前記酵素層の酵素と前記基質層の基質物との反応によって発生する過酸化水素を用いて発色する発色物質を含有する発色層と、を備えた酵素免疫分析用試薬であって、前記発色層が、前記酵素層と前記基質層の間に積層されている構成を有している。
【0014】
これにより、過酸化水素を発生できる酵素や酵素に特異的に反応する基質物及び発色物質を1つの錠剤にまとめてしまうことにより、溶液中に1つにまとめた錠剤を添加することで、いつでも一定試薬の添加が可能となり、誰でも正確に安全でかつ簡単に発色溶液の作成ができ、酵素層と基質層と発色層が積層構造で形成されることにより、酵素免疫分析用試薬が吸湿による試薬の変質反応を防ぐことができるという作用を有する。
【0015】
ここで、過酸化水素を発生できる酵素としては、グルコースオキシダーゼ、ガラクトースオキシダーゼ、スクロースオキシダーゼ、アスクコルビン酸オキシダーゼ、コレスラロ−ルオキシダーゼが用いられる。
【0016】
酵素に特異的に反応する基質物としては、グルコース、ガラクトース、スクロース、アスクコルビン酸、コレスラロールが用いられる。
【0017】
酵素層としては、酵素を安定するため、タンパク質が媒体として用いられる。タンパク質としては、アルブミン、ゼラチン、カゼインが用いられる。過酸化水素を発生できる酵素の量をaとし、タンパク質の量をbとすると、a:bは1:7〜11、好ましくは1:8〜10の割合で好適に用いられる。aとbが所定割合で混合して熱が発生しないように圧力をかけて固めたものが用いられる。a:bは1:8より小さくなるにつれ保存安定性が低くなるという傾向が認められ、また1:10よりも大きくなるにつれ、バックグラウンドが高くなるという傾向が認められるので、いずれも好ましくない。
【0018】
発色層としては、発色物質の固めたものが用いられる。
基質層としては、酵素に特異的に反応する基質物を安定するため、糖類が媒体として用いられる。糖類としては、ラクトース、マルトース、トレハロース、フルクトースが用いられる。基質物の量をcとし、糖類の量をdとすると、c:dは1:85〜110、好ましくは1:90〜100の割合で好適に用いられる。cとdを混合して圧力をかけて圧着されたものが用いられる。c:dは1:90より小さくなるにつれ保存安定性が低くなるという傾向が認められ、また1:100よりも大きくなるにつれ、バックグラウンドが高くなるという傾向が認められるので、いずれも好ましくない。
【0019】
酵素層が試薬全量に対して1wt%〜25wt%、好ましくは4wt%〜18wt%に形成される。酵素層が4wt%より少なくなるにつれ吸光度の低下という傾向が認められ、また18wt%よりも多くなるにつれ、同じく吸光度の低下という傾向が認められるので、いずれも好ましくない。
【0020】
発色層が試薬全量に対して0.5wt%〜5wt%、好ましくは2wt%〜3wt%に形成される。発色層が2wt%より少なくなるにつれ吸光度の低下という傾向が認められ、また3wt%よりも多くなるにつれ、バックグラウンドの上昇という傾向が認められるので、いずれも好ましくない。
【0021】
基質層が試薬全量に対して60wt%〜98wt%、好ましくは75wt%〜95wt%に形成される。基質層が75wt%より少なくなるにつれ吸光度の低下という傾向が認められ、また95wt%よりも多くなるにつれ、バックグラウンドの上昇という傾向が認められるので、いずれも好ましくない。
【0024】
ここで、酵素免疫分析用試薬が酵素層、発色層、基質層の順にそれぞれの割合で加圧によって積層し、積層したペレットが得られ、すなわち錠剤の形にしたものが用いられる。
【0025】
本発明の請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、酵素がグルコースオキシダーゼ(GOD)であり、及び/又は前記酵素に特異的に反応する基質物がグルコースであった構成を有している。
【0026】
これにより、請求項1により得られる作用の他、過酸化水素を発生できる酵素が長期で保存でき、安定性に優れるという作用を有する。
【0027】
本発明の請求項3に記載の発明は、請求項1又は2の内いずれか1項に記載の発明において、発色物質がオルトフェニレンジアミン(OPD)、2,2’−アジノジ(3−エチルベンゾチアゾリン−6−スルフォン酸)、3,3’,5,5’−テトラメチルベンゼン(TMB)、5−アミノサリチルサン(ASA)の少なくとも1種であった構成を有している。
【0028】
これにより、請求項1又は2により得られる作用の他、各発色物質特有の発色を有することができるという作用を有する。
【0029】
ここで、発色物質としては、オルトフェニレンジアミン(OPD)、2,2’−アジノジ(3−エチルベンゾチアゾリン−6−スルフォン酸)(ABTS)、3,3’,5,5’−テトラメチルベンゼン(TMB)、5−アミノサリチルサン(ASA)が用いられるが、他の発色できるものでもよい。
【0030】
吸光度を測定する波長としては、OPDとASA発色物質に対して490nm、TMB発色物質に対して450nm、ABTS発色物質に対して405nmが用いられる。
【0031】
本発明の請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3の内いずれか1項に記載の発明において、前記酵素層と前記発色層と前記基質層の間に少なくとも1層のでんぷん層が配設された構成を有している。
【0032】
これにより、請求項1乃至3により得られる作用の他、吸湿による試薬の劣化を防ぐこ
とができるという作用を有する。
【0033】
ここで、でんぷん層としては、酵素層と発色層と基質層の間に0.5mm〜2mm、好ましくは1mm〜1.5mmのでんぷん層に形成されている。
【0034】
でんぷん層の量が発色層の半分で好適に用いられるが、酵素層と発色層と基質層を接着できる量でもよい。
【0035】
本発明の請求項5に記載の発明は、請求項1乃至4の内いずれか1項に記載の酵素免疫分析用試薬を、発色度を決定する標識物質を修飾した抗体と抗原が混入された被検液に投入し、次いで発色物質の吸光度を測定し、吸光値による抗原濃度を測定した構成を有している。
【0036】
これにより、抗原濃度分析を正確に安全で簡単に進めることができ、試薬をすべて1つの錠剤で扱うことにより、作業工程を減らすことができるとともに、発色物質の吸光度を測定するだけで、吸光値より容易に抗原濃度を測定することができる。
【0037】
本発明の請求項6に記載の発明は、請求項1乃至4の内いずれか1項に記載の酵素免疫分析用試薬を、発色度を決定する標識物質を修飾した抗原と抗体が混入された被検液に投入し、次いで発色物質の吸光度を測定し、吸光値による抗体濃度を測定した構成を有している。
【0038】
これにより、抗体濃度分析を正確に安全で簡単に進めることができ、試薬をすべて1つの錠剤で扱うことにより、作業工程を減らすことができるとともに、発色物質の吸光度を測定するだけで、吸光値より容易に抗体濃度を測定することができる。
【0039】
本発明の請求項7に記載の発明は、請求項5又は6の内いずれか1項に記載の発明において、標識物質がペルオキシダーゼ(POD)であった構成を有している。
【0040】
これにより、請求項5又は6により得られる作用の他、発色反応の触媒活性を向上できるという作用を有する。
【0041】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1の酵素免疫分析用試薬の斜視図である。
【0042】
図1において、1は実施の形態1の酵素免疫分析用試薬、2は過酸化水素を発生できる酵素と酵素を安定するタンパク質は所定の割合で混合して熱が発生しないように圧力をかけて固めた酵素層、3は発色物質をそのまま固めたもので最終的に酵素層2に隣接して圧着された発色層、4は過酸化水素を発生できる酵素に特異的に反応する基質物と糖類は所定の割合で混合して圧力をかけて最終的に発色層3に隣接して圧着された基質層である。
【0043】
実施の形態1の酵素免疫分析用試薬1が酵素層2、発色層3、基質層4の順にそれぞれの試薬割合で加圧によって積層し、積層したペレットが得られ、すなわち錠剤の形にしたものである。
【0044】
次に実施の形態1の酵素免疫分析用試薬1を用いて免疫分析について説明する。
【0045】
ここでは最も一般的なサンドイッチELISA法を用いて説明する。まず測定対象である抗原に特異的な抗体をプレートの上に非特異的吸着により固定化を行い、十分洗浄して吸着していない抗体をpH7.0、0.1Mのリン酸緩衝液で液洗い流す。次に抗原などの非特異的な吸着を防ぐため、未吸着部分に非特異的吸着のブロッキング剤としてアルブミンを吸着させる。ここでも十分に洗浄を行い未吸着のアルブミンをpH7.0、0.1Mのリン酸緩衝液(Tween20を0.05%含む、Tween20、関東化学株式会社製、商品名)で洗い流す。次に検量線を作成するために既知濃度の抗原を3倍希釈を繰り返して10系列標準サンプルを作成する。同様に未知濃度の測定溶液についても3倍希釈で10系列測定試料を作成する。作成した10系列の標準サンプル及び測定試料をアルブミンを洗い流したプレートに注入して抗原抗体反応を行わせる。一定時間後、十分にプレート上の未結合の抗原をpH7.0、0.1Mのリン酸緩衝液(Tween20を0.05%含む)で洗い流す。洗浄後、ペルオキシダーゼ(POD)を標識した抗体を注入して抗原抗体反応行わせる。洗浄を行い未反応の標識抗体をpH7.0、0.1Mのリン酸緩衝液(Tween20を0.05%含む)で洗い流す。ここまで終了した時点で抗原が2つの抗体に挟まれた形でプレートに固定化されている。
【0046】
次に発色反応をさせるために、酵素層2のグルコースオキシダーゼ、基質層4のグルコース、発色層3のオルトフェニレンジアミンを含有した本実施の形態1の酵素免疫分析用試薬1をpH5.0のクエン酸緩衝液に溶かして30分間放置する。このとき溶液中では以下の反応(1)が起こり過酸化水素が発生する。
【0047】
グルコース+グルコースオキシダーゼ+H2O→H2O2+グルコノラクトン (1)
30分後、洗浄を行ったプレートに酵素免疫分析用試薬を溶液したものを定量注入を行い15分間反応を起こさせる。ここでプレートに固定化されたペルオキシダーゼ(POD)を触媒として以下の反応(2)が起こる。
【0048】
H2O2+オルトフェニレンジアミン→H2O+オルトニトロアニリン(発色) (2)
15分後、硫酸を注入して酵素を失活させて反応を停止させる。反応停止後490nmの吸収光の測定をおこなう。得られた検量線のデータから線形的に変化している濃度範囲を抜き出して抗原濃度と吸光度の関係から検量線を作成する。測定試料で吸光度が検量線の範囲に入っているものを選んで、検量線の式から逆算して抗原濃度を算出することができる。
【0049】
尚、以上の手順で未知濃度の試料の抗原濃度の測定を行う。同様に未知濃度の抗体に関しては抗原と抗体を入れ替えて同様の手順で測定することができる。
【0050】
(実施の形態2)
図2は本発明の実施の形態2の酵素免疫分析試薬の斜視図である。
【0051】
図2において、5は実施の形態2の酵素免疫分析試薬、6は実施の形態1で形成した3層の試薬の境界に形成されたでんぷん層である。尚、実施の形態1と同様のものには同一の符号を付して説明を省略する。
【0052】
実施の形態2の酵素免疫分析試薬5が酵素層2と発色層3及び発色層3と基質層4の間に0.5mm〜2mm、好ましくは1mm〜1.5mmのでんぷん層に設けられたものである。
【0053】
酵素層2と発色層3又は発色層3と基質層4の間にでんぷん層を挟むことにより、ある程度の吸湿に対する緩衝作用を持ち、吸湿した場合に起こる過酸化水素発生酵素とこの酵素に特異的に反応する基質物の反応を押さえることができる。
【0054】
実施の形態2の酵素免疫分析試薬5の使用方法は実施の形態1と同様であるので説明を省略する。
【0055】
なお、以上の説明では、酵素層2と発色層3又は発色層3と基質層4の間に0.5mm〜2mmのでんぷん層が設けられた例で説明したが、実施の形態1の酵素免疫分析試薬1の表面にでんぷんのスラリーを塗りかけて膜を形成したものについても同様に実施可能である。
【0056】
また、以上の説明では、円柱状の酵素免疫分析試薬を用いて説明したが、他の多角柱状、板状、球状のものについても同様に実施可能である。
【0057】
以上のように本実施の形態によれば、酵素免疫分析を正確に安全で簡単に進めることができ、試薬をすべて1つの錠剤で扱うことにより一元的に管理することができ、さらには作業工程を減らすことで素人にも簡単にできる酵素免疫分析用試薬を提供できると共に、抗原濃度又は抗体濃度分析を正確に安全で簡単に進めることができ、発色物質の吸光度を測定するだけで、抗原濃度又は抗体濃度を測定することができる。
【0058】
【実施例】
次に、本発明の具体例を説明する。
【0059】
(実施例1)
実施の形態1の酵素免疫分析用試薬1を用いて酵素免疫分析の確認実験を行った。
【0060】
測定に使用する緩衝液は、クエン酸一水和物を21gとクエン酸三ナトリウム二水和物29.4g秤量し、800ml程度の蒸留水を加えて溶解した。その後、1Mの水酸化ナトリウム溶液を加えてpH5.0になるように調製した。調整後、蒸留水をさらに加えて1lにした。
【0061】
作成したクエン酸緩衝液10mlに対してオルトフェニレンジアミンを4mgを添加し、グルコースを1g添加して発色溶液(黄色)の調製を行った。なお他の発色溶液の色は次のようになるASA(淡黄色)、TMB(深緑色)、ABTS(青色)。
【0062】
作成したクエン酸緩衝液1mlに対して5000μgの麹かび由来のグルコースオキシダーゼを添加する。作成したグルコースオキシダーゼ溶液を300μl分注し、同様のクエン酸緩衝液を600μl加えて3倍に希釈する。同様の操作を行い10種類の希釈グルコースオキシダーゼ溶液を作成する。
【0063】
0.1Mのリン酸緩衝塩(PBS)に界面活性剤であるTween20を0.05%加えたPBS−T1mlに対して、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)を0.005μg加えた酵素溶液をセルに50μlずつ分注する。調製した発色溶液を100μl添加する。さらに作成した希釈グルコースオキシダーゼ溶液をそれぞれセルに50μlずつ添加する。添加後2分間反応を行い、2Nの硫酸50μl添加して反応を停止させ、490nm(OPD)の吸光度の測定を行った。なお、他の発色液を使用する場合は490nm(ASA)、450nm(TMB)、405nm(ABTS)の波長で測定を行う。同様の操作を行い反応時間10,15,20,30分間について測定を行った。その結果を図3に示す。
【0064】
図3はグルコースオキシダーゼ濃度と、酵素反応により発生した過酸化水素によるオルトフェニレンジアミンの発色の関係を示す図である。
【0065】
図3において、曲線Aは反応時間30分間、曲線Bは反応時間20分間、曲線Cは反応時間10分間、曲線Dは反応時間5分間の吸光曲線を示している。
【0066】
図3から明らかなように、グルコースオキシダーゼ量はすべての反応時間において10μg/ml〜100μg/mlの範囲で、高いシグナルを示し、50μg/mlでこの時高感度の測定を可能とすることが分かった。
【0067】
次に酵素量に対する最適なグルコース量を決定する。まず4gのグルコースを蒸留水に溶かして最終的にグルコース溶液を10ml作成する。作成したグルコース溶液を1ml分注し、2mlの蒸留水を加えて3倍に希釈する。同様の操作を行い10種類の希釈グルコース溶液を作成する。
【0068】
測定は、0.1Mのリン酸緩衝塩(PBS)に界面活性剤であるTween20を0.05%加えたPBS−T1mlに対して、ペルオキシダーゼ(POD)を0.005μg/ml加えた酵素溶液をセルに50μlずつ分注する。前記クエン酸緩衝液10mlに対してグルコースオキシダーゼを400μg添加し、オルトフェニレンジアミンを4mg添加して作成した発色液をセルに100μlずつ添加する。さらにそれぞれの濃度のグルコース溶液をセルに50μlずつ添加して15分間反応させる。反応終了後2Nの硫酸を加えて反応を停止させる。反応停止後490nmの吸光度の測定を行った。その結果を図4に示す。
【0069】
図4はグルコース濃度と吸光度の関係を表すグラフである。
図4から明らかなように、グルコース量は1μg/ml以上が望ましく、この時高感度の測定を可能とすることが分かった。
【0070】
次にグルコースオキシダーゼとグルコースの反応により発生する過酸化水素の適量に達する時間の決定を行った。
【0071】
0.1Mのリン酸緩衝塩(PBS)に界面活性剤であるTween20を0.05%加えたPBS−T1mlに対して、ペルオキシダーゼ(POD)を0.005μg加えた酵素溶液をセルに50μlずつ分注する。実施の形態2で作成した発色液を100μl加えて2,5,10,15,20,30,80,170分間のそれぞれの時間反応させて、反応終了後2Nの硫酸を50μl加えて停止させる。反応停止後490nmの吸光度の測定を行った。その結果を図5に示す。
【0072】
図5はオルトフェニレンジアミンの発色時間と吸光度の関係を表すグラフである。
【0073】
図5から明らかなように、過酸化水素発生時間は30分間が望ましく、この時高感度の測定を可能にすることが分かった。
【0074】
(実施例2)
実施の形態1の酵素免疫分析用試薬1を用いて酵素免疫分析の検量線実験を行った。
【0075】
ペレットの形成はオルトフェニレンジアミン4mg、グルコース30mg、グルコースオキシダーゼ300μgのそれぞれの物質について圧縮してペレット状に形成する。そして各ペレットをさらに圧着して1つのペレットに形成したものである。
【0076】
1mlのPBS−Tに0.005μgのペルオキシダーゼ(POD)を添加して、作成したペルオキシダーゼ(POD)溶液から300μl分注し、600μlのPBS−Tを加えて3倍に希釈する。同様の操作を行い10種類の希釈ペルオキシダーゼ(POD)溶液を作成する。各濃度のペルオキシダーゼ(POD)溶液をセルにそれぞれ50μl分注する。これにクエン酸緩衝液10mlに酵素免疫分析用発色試薬1を1錠添加して作成した発色液を100μl添加して、15分間反応させる。反応終了後、2Nの硫酸を50μl添加して反応を停止させる。反応停止後490nmの吸光度を測定を行った。その結果を図6に示す。
【0077】
図6は酵素免疫分析用試薬での検量線作成結果を表すグラフである。
図6から明らかなように、0.001μg/ml〜0.04μg/mlの範囲で線形的な変化を示し、この範囲で測定できることが分かった。
【0078】
(実施例3)
実施の形態1の酵素免疫分析用試薬を用いて酵素免疫分析試薬の安定性実験を行った。
【0079】
グルコースとグルコースオキシダーゼが隣り合った酵素免疫分析用試薬と実施の形態1で作成したと酵素免疫分析用試薬1を湿度100%の容器内で1時間保持して、1週間3℃の冷蔵庫で保管した後に測定に使用した。
【0080】
1mlのPBS−Tに0.005μgのペルオキシダーゼ(POD)を添加して、作成したペルオキシダーゼ(POD)溶液から300μl分注し、600μlのPBS−Tを加えて3倍に希釈する。同様の操作を行い10種類の希釈ペルオキシダーゼ(POD)溶液を作成する。各濃度のペルオキシダーゼ(POD)溶液をセルにそれぞれ50μl分注する。これにクエン酸緩衝液10mlに酵素免疫分析用発色試薬を1錠添加して作成した発色液を100μl添加して、15分間反応させる。反応終了後、2Nの硫酸を50μl添加して反応を停止させる。反応停止後490nmの吸光度を測定を行った。その結果を図7に示す。
【0081】
図7は酵素免疫分析用試薬の安定性を比較した結果を表したグラフである。
図7において、曲線Aはグルコースオキシダーゼとグルコースの間に発色物質がある場合、曲線Bはグルコースオキシダーゼとグルコースが隣り合っている場合の吸光曲線である。
【0082】
図7から明らかなように、グルコースオキシダーゼとグルコースの間に発色物質を挟むことにより吸湿による劣化を防ぐことができる。また測定範囲も0.001μg/ml〜0.04μg/mlまで使用できることが分かった。
【0083】
(実施例4)
実施の形態2の酵素免疫分析用試薬を用いて酵素免疫分析試薬の保存安定性実験を行った。
【0084】
図2に示すように、グルコースオキシダーゼ、グルコース、発色剤の層の間にでんぷん層を挟んだ構造のペレットを形成したものである。グルコースオキシダーゼ、グルコース、発色剤の割合は実施の形態2に示した数値と同様であり、間に挟んだでんぷん層の割合は各層の接着及び吸湿ができればどのような割合でもよい。ここで形成した発色溶液作成試薬を使用して発色溶液を調合し、この発色溶液を用いて測定を行った。なお比較を行うために作成した発色溶液作成試薬を湿度100%の容器内で1時間保持して、十分に水分を吸収させたものと、そうでないものを1週間3℃の冷蔵庫で保存した後に使用した。
【0085】
マイクロプレートに1μg/mgのDerfII抗体を50μl注入し、2時間プレートに固定化する。その後洗浄を行い、2%のアルブミンを含むPBS(PBS−B)を200μl注入して30分間反応させる。その後、界面活性剤を含んだPBS−Tで洗浄を行い、PBS−Tに溶かしたDerfII抗原を注入し2時間反応させ、さらに洗浄、そして0.5μg/mlのペルオキシダーゼ(POD)標識DerfII抗体を50μl添加して反応させる。洗浄後、作成した各発色溶液を100μl添加して15分間反応させ、2Nの硫酸を50μl添加して反応を止めて490nmの吸光度の測定を行った。その結果を図8に示す。
【0086】
図8は本発明の実施の形態2の酵素免疫分析試薬5の保存安定性を比較するグラフである。
【0087】
図8において、曲線Aは発色溶液作成試薬を湿度100%の容器内で1時間保持して、十分に水分を吸収させたもの、曲線Bは全く水を吸湿させてないものを表している。
【0088】
図8から明らかなように、でんぷんを各層の間に挟むことにより吸湿による劣化を抑えることができ、測定範囲も0.001μg/ml〜0.04μg/mlまで使用できることが分かった。
【0089】
【発明の効果】
以上のように本発明においては、以下の優れた効果を実現できる。
【0090】
本発明の請求項1に記載の発明によれば、
(1)過酸化水素発生酵素、過酸化水素発生酵素に特異的に反応する基質物、発色物質を1つの錠剤にまとめてしまうことにより、溶液中に1つにまとめた錠剤を添加することで、いつでも一定試薬の添加が可能となり、誰でも正確に安全でかつ簡単に抗原濃度又は抗体濃度を測定することができ、酵素免疫分析用試薬が長期で保存でき、吸湿による試薬の変質を抑制することができる。
【0092】
本発明の請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載の効果に加えて、
(2)酵素免疫分析用試薬が長期で保存でき、危険な過酸化水素を使用せず安定性に優れ、低原価で量産できる。
【0093】
本発明の請求項3に記載の発明によれば、請求項1又は2の内いずれか1項に記載の効果に加えて、
(3)酵素免疫分析用試薬が各発色物質特有の発色を有することにより、酵素免疫分析の正確性を向上する事ができる。
【0094】
本発明の請求項4に記載の発明によれば、請求項1乃至3の内いずれか1項に記載の効果に加えて、
(4)酵素免疫分析用試薬が吸湿による試薬の劣化を防ぐことができる。
【0095】
本発明の請求項5に記載の発明によれば、
(5)抗原濃度分析を正確に安全で簡単に進めることができ、試薬をすべて1つの錠剤で扱うことにより、作業工程を減らすことができるとともに、発色物質の吸光度を測定するだけで、吸光値より容易に抗原濃度を測定することができるとともに、簡単で安全性、安定性と利便性に優れ、正確且つ測定感度が高い分析方法を提供できる。
【0096】
本発明の請求項6に記載の発明によれば、
(6)抗体濃度分析を正確に安全で簡単に進めることができ、試薬をすべて1つの錠剤
で扱うことにより、作業工程を減らすことができるとともに、発色物質の生成物の吸光度を測定するだけで、吸光値より容易に抗体濃度を測定することができるとともに、簡単で安全性、安定性と利便性に優れ、正確且つ測定感度が高い分析方法を提供できる。
【0097】
本発明の請求項7に記載の発明によれば、請求項5又は6の内いずれか1項に記載の効果に加えて、
(7)酵素免疫分析用試薬が発色反応の触媒活性を有することができ、酵素免疫分析の感度を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態1の酵素免疫分析用試薬の斜視図
【図2】本発明の実施の形態2の酵素免疫分析用試薬の斜視図
【図3】グルコースオキシダーゼ濃度と、酵素反応により発生した過酸化水素によるオルトフェニレンジアミンの発色の関係を示す図
【図4】グルコース濃度と吸光度の関係を表すグラフ
【図5】オルトフェニレンジアミンの発色時間と吸光度の関係を表すグラフ
【図6】酵素免疫分析用試薬での検量線作成結果を表すグラフ
【図7】酵素免疫分析用試薬の安定性を比較した結果を表すグラフ
【図8】実施の形態2の酵素免疫分析試薬の保存安定性を比較するグラフ
【符号の説明】
1 実施の形態1の酵素免疫分析用試薬
2 酵素層
3 発色層
4 基質層
5 実施の形態2の酵素免疫分析用試薬
6 でんぷん層
Claims (7)
- 過酸化水素を発生できる酵素を含有する酵素層と、前記酵素層の酵素に特異的に反応する基質物を含有する基質層と、前記酵素層の酵素と前記基質層の基質物との反応によって発生する過酸化水素を用いて発色する発色物質を含有する発色層と、を備えた酵素免疫分析用試薬であって、
前記発色層が、前記酵素層と前記基質層の間に積層されていることを特徴とする酵素免疫分析用試薬。 - 前記酵素がグルコースオキシダーゼ(GOD)であり、及び/又は前記酵素に特異的に反応する基質物がグルコースであることを特徴とする請求項1に記載の酵素免疫分析用試薬。
- 前記発色物質が、オルトフェニレンジアミン(OPD)、2,2’−アジノジ(3−エチルベンゾチアゾリン−6−スルフォン酸)、3,3’,5,5’−テトラメチルベンゼン(TMB)、5−アミノサリチルサン(ASA)の少なくとも1種であることを特徴とする請求項1又は2の内いずれか1項に記載の酵素免疫分析用試薬。
- 前記酵素層と前記発色層と前記基質層の間に少なくとも1層のでんぷん層が配設されていることを特徴とする請求項1乃至3の内いずれか1項に記載の酵素免疫分析用試薬。
- 請求項1乃至4の内いずれか1項に記載の酵素免疫分析用試薬を、発色度を決定する標識物質を修飾した抗体と抗原が混入された被検液に投入し、次いで発色物質の吸光度を測定し、吸光値による抗原濃度を測定することを特徴とする酵素免疫分析方法。
- 請求項1乃至4の内いずれか1項に記載の酵素免疫分析用試薬を、発色度を決定する標識物質を修飾した抗原と抗体が混入された被検液に投入し、次いで発色物質の吸光度を測定し、吸光値による抗体濃度を測定することを特徴とする酵素免疫分析方法。
- 前記標識物質がペルオキシダーゼ(POD)であることを特徴とする請求項5又は6に記載の酵素免疫分析方法。
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