JP3621769B2 - 金属ハニカム体の巻取方法 - Google Patents
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Description
【発明が属する技術分野】
本発明は、金属平箔と金属波箔を重ねてハニカム状に巻き取り、金属平箔と金属波箔間を接合して金属ハニカム体を製造する際に、接合部品質を安定させるための金属ハニカム体の巻取方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
例えば、近年、自動車等内燃機関の排気通路に浄化触媒を配し、排気中のHC,CO,NOx等の有害成分を浄化する触媒装置が知られている。この種の触媒装置においては、触媒担体として金属ハニカム体が用いられている。
この金属ハニカム体は、例えば図6に示すように、金属箔の平箔1と波箔2を重ねて渦巻状に巻き取って、図7に示すように円筒状に形成され、その軸方向に無数の貫通孔4oが形成されたものであり、一般には、ケーシング3に挿入されて用いられる。
【0003】
この金属ハニカム体4を製造する場合に用いられる巻取設備は、概ね図8に示すように構成されている。
図8において、1fは金属平箔1のペイオフリールで、このペイオフリールから巻き戻された金属平箔1は、搬送ローラー5a、5b、5cにより搬送され、巻取装置6に供給される。この間、張力付与装置7f、テンション検出ローラー7tと巻取装置6により張力制御され、この巻取装置で巻き取られる。2wは金属波箔2のペイオフリールで、このペイオフリールから巻き戻された金属波箔2は、搬送ローラー5d、5eにより搬送され、巻取装置6に供給される。
この金属波箔2は、巻取装置6で金属平箔1と重ねられた状態で、金属平箔1とともに巻き取られるため、ライン抵抗張力状態で供給され独立では張力制御を行うことは不可欠ではない。このように金属平箔1と金属波箔2が重ねられた状態で巻取装置に供給され、ここで巻取られて金属ハニカム体4が製造されるように構成されている。
【0004】
ここで用いられる巻取装置6としては、例えば特開平4−371234号公報に記載されたものがある。この巻取装置は、駆動装置により回転する巻取軸8と、この巻取軸に装着され間隔調整可能な一対のサイドクランプを備えており、この一対のサイドクランプ間で巻取軸8に巻き取られる金属平箔1と金属波箔2の側端面を加圧支持しながら巻き取ることができるようになっている。
この巻取装置6の巻取軸8は、図9に示すように、金属平箔1と金属波箔2の先端を挿通・係止するスリット溝8oを有しており、この巻取軸8の外方には3本の圧着ロールRa、Rb、Rcが巻取軸8と平行状態で駆動装置により巻取軸に対して進退自在に配置されており、巻芯部を形成する際に、巻取軸の剛性を補助し巻取形状を整えることができるようになっている。
【0005】
この巻取装置6においては、供給される金属平箔1と金属波箔2の先端部を巻取軸8のスリット溝8oに挿通・係止し、巻取軸8の回転に3本の圧着ロールを協同させて巻取りを始め、2〜3巻して巻芯部を形成した後、3本の圧着ロールを退避させて、一対のサイドクランプの中心部の加圧支持面で金属平箔1と金属波箔2の端面を加圧支持して整端し、引き続き、一対のサイドクランプの中心部の加圧支持面で加圧支持しながら巻き取って、金属のハニカム体4を製造するようになっている。
従来、この金属ハニカム体の巻取に際しては、巻取開始から巻取径が20〜30mmの小径領域では低張力(0.1〜0.5kgf/mm2)で巻取って側端面をプレスし、その後の本巻取りでは一定の高張力(0.6〜5kgf/mm2)で巻き取って金属ハニカム体を製造する方法が採用されている。
【0006】
このような方法で巻き取って得られた金属ハニカム体を触媒担体として製品化する際には、この金属ハニカム体を形成している金属平箔と金属波箔を接合する必要があり、最近、その接合方法として拡散接合方法および液相接合方法の適用が試みられている。この拡散接合方法は、原子の拡散現象を利用して材料を溶融することなく、固相で接合する方法である。
この拡散接合方法を金属平箔と金属波箔の接合に適用する場合には、その接合特性を十分に確保するために、金属ハニカム体を製造する際、金属平箔と金属波箔の接合部において接合長を一定以上にする必要がある。
しかし、本巻取で巻取張力を一定の張力にする、前記従来の巻取方法による場合には、巻取径の変化による巻取張力の変化に起因して生じる、金属平箔と金属波箔の各接触部における接触長の変化により、接合長が不安定になりやすく、安定した接合部品質を得ることが難しいという問題があり、なお改善すべき点が残されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、金属平箔と金属波箔を重ねてハニカム状に巻き取り、金属平箔と金属波箔間を拡散接合して金属ハニカム体を製造する際に、接合部品質を安定させるための金属ハニカム体の巻取方法を提供するものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、金属平箔と金属波箔を重ねてハニカム状に巻き取り、金属平箔と金属波箔間を拡散接合して金属ハニカム体を製造する場合の金属ハニカム体の巻取方法において、少なくとも巻芯部(2〜3巻分)形成後の本巻取り巻取過程では、巻取径の増加に応じて、金属平箔と金属波箔の各接触部の接触長を一定にするように巻取張力を制御することを特徴とする金属ハニカム体の巻取方法である。
なお、本発明において、接触部および接触長とは、金属平箔と金属波箔とが接合前に接触している部分とその長さをいい、接合部および接合長とは金属平箔と金属波箔とが接合処理により実際に一体に接合した部分とその長さを意味している。
本発明においては、金属ハニカム体の巻取過程で巻取径の増加に応じて巻取張力を増加させることにより、金属平箔と金属波箔間の接触長を安定確保することができ、金属平箔と金属波箔を拡散接合して製品化する場合、接合部品質を安定確保し、品質の安定な金属ハニカム体を製造することができる。
【0009】
本発明者等は、金属平箔と金属波箔の本巻取り過程における巻取張力を一定にする前記従来例において、金属平箔と金属波箔を接合した場合に接合部が安定しない理由について種々検討の結果、接合部が安定しないのは、本巻取過程の巻取張力を一定にしていることに起因しているということを知見した。
【0010】
図1は、金属波箔2の波ピッチ角度θと、巻取径半径rと、金属平箔1と金属平箔の接触点Aでの接線Saと、この接触点Aとこれと隣接する接触点Aoを結ぶ線Sbの挟角β、接触点Aと接触点Aoを結ぶ線Sbと、この接触点と金属ハニカム体4の中心を結ぶ線Scの挟角αとの関係を示す説明図である。
巻取径半径rxがrに変化すると、金属波箔2の中心からの波ピッチ角度θxがθに変化する。例えば、金属波箔2の波ピッチを2.5mmとし、巻取径半径rxが15mmの場合の角度θxは、
2πrx×θx/360°=2.5mm
θx=360°×2.5mm/2πrx
ラジアン表示では
θx=2.5/2:ラジアン
θx=360°×2.5mm/2π×15mm=9.554°
となる。
しかし、ここで、巻取径半径rが50mmになった場合の角度θは、
θ=360°×2.5mm/2π×50mm=2.866°
と大幅に小さくなる。
【0011】
一方、A点で張力Tを付与された金属平箔1が金属波箔2に作用する力、作用力Pは図3に示すように、P=2Tsin(θ/2)となり、角度θが小さくなれば作用力Pは小さくなる。その結果、巻取径半径rが大きくなると角度θが小さくなり、金属平箔1と金属波箔2の接触部における作用力が小さくなり、金属平箔1の板厚が一定であれば、接触長L(図2)が短くなり、接合長が短くなる。このような変化は、上記角度θを考慮し、金属平箔1と金属波箔2での作用力Pを一定に維持することにより抑えることが可能である。
【0012】
すなわち、この関係は、
P=2Tsin(θ/2)、
ラジアン表示では、P=2Tsin(2.5/2r)[ラジアン]
で表され、P=一定になるように、巻取半径rの変化に応じて巻取張力Tを変化させることにより、接触作用力Pおよび接触長Lを一定に保ち、安定した巻取が可能であるということを知見した。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下に本発明を、本発明を実施する巻取設備例とともに概要説明する。
図4は、本発明を実施する巻取設備例を示しており、この巻取設備においては、金属平箔を巻き取ったペイオフリール1fから巻き戻された金属平箔1を巻取装置6に供給する搬送ローラー5a、5b、5cによる供給路に、張力付与装置7fとテンション検出ローラー7tを配設するとともに、巻取張力を測定する張力計10と巻取径測定計11を配設して、巻取張力と巻取径を測定し、この測定信号を演算器12に入力して、巻取装置6によって巻き取られる金属ハニカム体4の巻取径に応じた巻取張力制御条件を演算して張力付与装置7fへ入力し、金属平箔1の巻取張力を制御できるようになっている。
図中、2wは金属波箔2のペイオフリールで、このペイオフリールから巻き戻された金属波箔2は、搬送ローラー5d、5eによりライン抵抗張力状態で搬送され、巻取装置6に供給され、張力制御されている金属平箔1と重ねられた状態で金属平箔1とともに巻き取られるようになっている。
【0014】
本発明では、このような巻取設備を用いて製造された金属ハニカム体について、金属平箔と金属波箔間を接合して金属ハニカム体として製品化する際に、金属平箔1と金属波箔を安定的に接合することを前提としており、この場合に、例えば、前記図2に示すように、金属平箔1と金属波箔2の接触部における接触作用力Pを一定にして、接合長が一定になるように、少なくとも巻芯部(2〜3巻分)形成後の本巻取り過程において、巻取径の増加に応じて金属平箔の巻取張力を増加させることを特徴とするものである。
この巻取張力の増加のパターンは、図5に示すような直線型、階段型のいずれを採用してもよく、巻取張力の増加は、巻芯部(2〜3巻分)形成の過程から開始してもよいが、巻き芯部形成後の本巻取り開始点から開始した方が実効が顕著である。
【0015】
このようにして、金属平箔と金属波箔を重ねて巻き取って金属ハニカム体を製造する過程において、金属平箔と金属波箔の接合長を一定に維持することができ、例えば拡散または液相接合に際して、その接合長を一定にすることができ、金属平箔と金属波箔の拡散接合による接合部品質を安定確保し、金属ハニカム体の品質を安定確保することができる。
【0016】
【実施例】
図4に示したような巻取設備において、厚さ30μmのステンレス(SUS304)箔による平箔と波箔を重ねて巻取り、径が100mmの金属ハニカム体を製造した後、金属ハニカム体を形成する金属平箔と金属波箔を拡散接合した。その結果を従来例による場合の結果とともに説明する。
「実施条件」
平箔
幅:100mm
波箔
幅:100mm、波高さ:1.25mm、波ピッチ:2.5mm
巻取張力(T)
(1)巻芯部形成(巻取径30mmまで):1.8kgf
(2)本巻取り(巻取径30mm以降):
T=0.8/(2sin2.5/2r):kgf
r=15mm時 T=5kgf
r=50mm時 T=16.6kgf
(なお、巻取張力の増加パターンは、図5に示す直線型を採用した)
【0017】
この金属ハニカム体について、拡散接合を実施し、接合部の状況を調査したところ、極めて良好な接合結果を得た。また、端部での箔座屈、端部不揃い、各層での波箔の波高さ、ピッチの変化の偏在、箔破断等の品質を損なうような不都合現象の発生も認められなかった。
これに対して、巻取張力を一定にした前記従来例による場合で、巻取径30mmまで1.8kgfで一定、巻取径30〜100mmまで5.1kgfで一定にした場合では、拡散接合長の不足(面圧不足)による接合不良が発生し、満足できる結果は得られなかった。
また、前記従来例による場合で、巻取径30mmまで1.8kgfで一定、巻取径30〜100mmまで16.6kgfで一定にした場合では、巻取径30mm〜60mm付近で金属波箔の変形、ピッチの変化等の品質を損なうような不都合現象の発生が認められた。
【0018】
【発明の効果】
本発明においては、巻取径の増加に応じて巻取張力を増加させることにより、金属平箔と金属波箔の接合長を安定確保することができ、金属ハニカム体を触媒担体として製品化するための金属平箔と金属波箔の接合に際して、接合部品質を安定確保することができ、品質の安定な金属ハニカム体を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】巻取径の変化と金属平箔と金属波箔の接触部を支配する角度θ、β、αの変化の関係を示す説明図。
【図2】金属平箔と金属波箔の接触部における接触長を示す部分正面概要説明図。
【図3】金属平箔と金属波箔の接触点における角度βと巻取張力Tと張力付与のための押付力Pとの関係を示す説明図。
【図4】本発明を実施する金属ハニカム体の巻取設備例を示す側面概要説明図。
【図5】本発明における巻取径と巻取張力の関係を示す説明図。
【図6】従来の金属ハニカム体の巻取方法例を示す立体概要説明図。
【図7】従来の金属ハニカム体例を示す正面(端面)概要説明図。
【図8】従来の金属ハニカム体の巻取設備例を示す側面概要説明図。
【図9】従来の金属ハニカム体の巻取装置例における巻芯部形成構造例を示す正面概要説明図。
【符号の説明】
1 金属平箔
1f ペイオフリール
2 金属波箔
2w ペイオフリール
3 ケーシング
4 金属ハニカム体
5a、5b、5c、5d、5e 搬送ローラー
6 巻取装置
7f 張力付与装置
7t テンション検出ローラー
8 巻取軸
9a サイドクランプ
Claims (1)
- 金属平箔と金属波箔を重ねてハニカム状に巻き取り、金属平箔と金属波箔間を拡散接合して金属ハニカム体を製造する場合の金属ハニカム体の巻取方法において、少なくとも巻芯部形成後の本巻取り過程では、巻取径の増加に応じて、金属平箔と金属波箔の各接触部の接触長を一定にするように巻取張力を制御することを特徴とする金属ハニカム体の巻取方法。
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