JP3619550B2 - 計測装置を備えた回転軸受のシール部材及び回転軸受 - Google Patents

Description

【０００１】
【産業上の利用分野】
本発明は、計測装置を備えた回転軸受のシール部材及び回転軸受に関し、特に、検出装置がホール素子によって構成されている計測装置を備えた回転軸受のシール部材、及び、同検出装置がシール部材によって保護されている回転軸受に関する。
【０００２】
【従来の技術】
フランス特許公開公報ＦＲ−Ａ−２ ５７４ ５０１には、検出器と給電ピンとが接続されている接続／接点組立てを保持している支持板によって形成されている検出装置を有する回転軸受のシール部材と回転軸受とが記載されている。
【０００３】
フランス特許公開公報ＦＲ−Ａ−２ ６５５ ７３５号には、伝導回路を有する柔軟な円形のフィルムによって構成される検知装置が記載されている。
【０００４】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記従来技術のうち、検知装置がホール素子から成る場合には、高感度ホール素子は小さな寸法を持っているが、その配線と共にケーシングによって保護する必要があり、このために装置が占有する空間が増大する。従って、このようなケーシングは、小さな寸法の回転軸受の上に取り付けることはできないという問題があり、特に、インナーレースの内径が２０ｍｍ以下で、固定レースと回転レースのそれぞれの対応する面の間の半径方向の間隔が不十分の場合には、検知装置の取付けは不可能となるという問題がある。
【０００５】
また、伝導回路を有する柔軟な円形のフィルムによって構成される検知装置の場合には、検知装置は１定の直径の回転軸受の上にしか取り付けられないという問題がある。
【０００６】
更に、検出装置によって供給される信号の分解能は、その伝導回路の構造と、従って、回転軸受の寸法とに依存することが知られている。
【０００７】
本発明の目的は、上記問題点を解決して、検出装置がホール素子によって構成されている回転軸受のシール部材を提供することにある。
【０００８】
本発明の他の一つの目的は、検出装置がシール部材によって保護されている回転軸受を提供することにある。
【０００９】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明の計測装置を備えた回転軸受のシール部材は、固定レース（１）および回転レース（２）が転がり物体（３）に接する転がり軌道を有し、上記回転レース（２）は、内部補強材（８）を持ったシール部材（７）に保持され上記固定レース（１）に取り付けられた検出素子（６）の前を通過するように取り付けられたエンコーダ素子（５）を保持する、計測装置を備えた回転軸受のシール部材（７）において、上記検出素子（６）は裸のホール素子と電子部品からなり、上記補強材（８）の上に連結して取り付けられており、かつ、上記シール部材によって覆われている配線（１２）と上記電子部品とを支持している絶縁フィルム（１１）に接触し、上記配線（１２）の１端は少なくとも１つの上記裸のホール素子に、他端は接続端子（１３）を介して給電線（１４）に接続され、上記給電線（１４）を通すために、上記補強材（８）は上記絶縁フィルム（１１）の近傍に位置する開口部（１７）を有することを特徴とする。
【００１１】
この場合、上記回転軸受のシール部材は、上記補強材（８）の上記開口部（１７）の縁は、上記開口部（１７）の切抜き形状に適合し、上記配線（１２）を支持している上記絶縁フィルム（１１）によって覆われている舌状片（２０）に接していることを特徴とする。
【００１２】
またこの場合、上記回転軸受のシール部材は、上記給電線が横ピン（１８）によって構成されていることを特徴とする。
【００１３】
またこの場合、上記回転軸受のシール部材は、上記給電線（１４）を局部的に包み込んでいることを特徴とする。
【００１４】
またこの場合、上記回転軸受のシール部材は、上記シール部材の１方の面に横連結ボス（２５）を設けたことを特徴とする。
【００１５】
本発明の計測装置を備えた回転軸受は、固定レース（１）および回転レース（２）が転がり物体（３）に接する転がり軌道を有し、上記回転レース（２）は、上記のいずれか１つに記載するシール部材（７）によって保持され上記固定レース（１）に取り付けられた検出素子（６）の前を通過するように取り付けられたエンコーダ素子（５）を保持することを特徴とする。
【００１６】
【作用】
本発明によれば、検出装置のケーシングが大きな占有空間を要することがないので、小さな寸法の回転軸受の上に取り付けることが可能となる。
【００１７】
また、本発明の計測装置を備えた回転軸受のシール部材は、任意の大きさの回転軸受に適合させることが出来るので、１定の直径の回転軸受の上にしか取り付けられないということはない。
【００１８】
更に、本発明においては、検出素子を２以上のホール素子によって構成することが可能であるので、信号の分解能を向上することが可能となる。
【００１９】
更に、本発明においては、検出装置のホール素子及び給電線等の保護と被覆とは、回転軸受のシール部材製造時に実施されるので、ホール素子をシール部材によって有効に保護し、かつ製造工程を簡単にすることが可能となる。
【００２０】
【実施例】
以下添付図面を参照して、本発明の計測装置を備えた回転軸受のシール部材及び回転軸受の実施例を説明しする。
【００２１】
図１に示す計測装置を備えた回転軸受は、転がり物体３と接触する転がり軌道を有する外側固定レース１及び内側回転レース２を含んで構成されている。回転レース２は、例えば、補強材８を持ったシール部材７に保持されている検出素子６の前を通過するように取り付けられた多極環によって構成されるエンコーダ素子５を有している。シール部材７は、固定レース１によって保持され、上記多極環と接触しているシーリングリップ９を持っている。
【００２２】
検出素子６は、補強材８の面に接着または設置された絶縁フィルム１１（図２等参照）と接触している。
【００２３】
図５は、絶縁フィルム１１が上に付けられている補強材８の１部分を示す。絶縁フィルム１１の外側表面には、複数の配線１２が設置されている。配線１２の両端は、それぞれ検出素子６と接続端子１３とに接続されている。検出素子６は、付加ケーシング無しの裸のホール素子と電子部品とによって構成されている。
【００２４】
図７は、補強材８の他の実施例の１つを示す。この例では、信号の分解能を高めるため、あるいは回転方向に関する情報を得るために、検出装置は配線１２によって接続端子１３に個別に接続されている一式の検出素子６、６’によって構成されている。
【００２５】
接続端子１３は給電線１４（図２、４、６参照）と接続するためのものである。このため、補強材８には、絶縁フィルム１１の端に位置する開口部１７（図３〜６参照）が設けられている。給電線１４は、開口部１７を通して補強材８を貫通し、接続端子１３に接続される。
【００２６】
図３は、接続ピン１８が開口部１７を貫通している状態を示す。接続ピン１８は、給電線１４の鞘の端に一まとめにされた接続端を接続するためのものである。
【００２７】
接続ピン１８は裸でもよいし、または図３に破線で示されているように、シール部材７の構成材料からなるスリーブ２８によって局所的に被覆してもよい。溶接で給電線１４に接続してもよい。
【００２８】
シール部材７に図３に示すような接続ピン１８が設けられている場合には、接続ピン１８は、シール部材７の面によって支持され、かつシール部材７を構成している材料からなるスリーブ２８によって完全に保護されているか、あるいはボス２５によって部分的に保護されている。
【００２９】
図４は、給電線１４が開口部１７を貫通し、給電線１４は配線１２に点溶接１６によって接続されていることを示す。補強材８と、絶縁フィルム１１と、検出素子６（図示省略）と、配線１２（図示省略）と、給電線１４と、点溶接１６とによって形成される全体は、次いで、シール部材を構成しているエラストマによってモールドされる。
【００３０】
図５または図７に示された補強材８の例では、開口部１７は絶縁フィルム１１によって覆われている。
【００３１】
図６に示された補強材８の例では、開口部１７は絶縁フィルム１１に対して角度方向にずらされている。
【００３２】
図８および図９は、補強材８の他の実施例を示す。本実施例においては、配線１２は、開口部１７の縁に隣接している舌状片２０へ伸びている。舌状片２０は、開口部の切抜き形状と合致するように形成されており、配線１２を支持している絶縁フィルム１１によって覆われている。このような方法によって、舌状片２０は接続手段の機能を果たしている。
【００３３】
図１０および１１はシール部材の他の実施例を示す。本実施例においては、補強材８は、固定レース１に取り付けられ、回転軸受の内に向かって位置している固定リム２１と、回転レース２に取り付けられ、回転軸受の外に向かって位置している可動リム２２との、２つの部分から成っている。絶縁フィルム１１は、上記補強材８のリム２１および舌状片２０に沿って、または上記補強材のエッジ２３に沿って伸びている。
【００３４】
絶縁フィルム１１は、補強材８の種々の実施態様に従って、シール部材によって覆われているが、給電線１４（図示省略）との接続を可能にするために、該被覆は、外側のエッジ２３や舌状片２０に沿ってまでは伸びていない。
【００３５】
本発明の趣旨から逸脱しない範囲において、信号の分解能を高めるために、検出素子６を２以上のホール素子によって構成することが可能であることは明らかである。このような場合には、抵抗やダイオードのような部品を付加することによって、信号処理を完成することが出来る。
【００３６】
【発明の効果】
本発明によれば、検出装置のケーシングが大きな占有空間を要することがないので、小さな寸法の回転軸受の上に取り付けることが可能となるという効果がある。
【００３７】
また、本発明の計測装置を備えた回転軸受のシール部材は、任意の大きさの回転軸受に適合させることが出来るので、１定の直径の回転軸受の上にしか取り付けられないということはないという効果がある。
【００３８】
更に、本発明においては、検出素子を２以上のホール素子によって構成することが可能であるので、信号の分解能を向上することが可能となるという効果がある。
【００３９】
更に、本発明においては、検出装置のホール素子及び給電線等の保護と被覆とは、回転軸受のシール部材製造時に実施されるので、ホール素子をシール部材によって有効に保護し、かつ製造工程を簡単にすることが可能となるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図１】本発明による計測装置を備えた回転軸受の部分断面図の１例である。
【図２】計測装置の装着状態を示すシール部材の１例の半径方向断面図である。
【図３】配線手段の装着状態を示すシール部材の１例の半径方向断面図である。
【図４】配線手段の装着状態の他の実施例を示すシール部材の半径方向断面図である。
【図５】図３または図４に示すシール部材の補強材の１部拡大斜視図である。
【図６】シール部材の補強材の他の実施例を示す１部拡大斜視図である。
【図７】シール部材の補強材の更に他の実施例を示す１部拡大斜視図である。
【図８】シール部材の補強材の更に他の実施例を示す１部拡大斜視図である。
【図９】図８に示すシール部材の補強材のＩＸにおける断面図である。
【図１０】シール部材の他の実施例を示す部分断面図である。
【図１１】シール部材の更に他の実施例を示す部分断面図である。
【符号の説明】
１…固定レース、２…回転レース、３…転がり物体、５…エンコーダ素子、６、６’…検出素子、７…シール部材、８…補強材、９…シーリングリップ、１１…絶縁フィルム、１２…配線、１３…接続端子、１４…給電線、１６…点溶接、１７…開口部、１８…接続ピン、２０…舌状片、２１…固定リム、２２…可動リム、２３…エッジ、２５…ボス、２８…スリーブ。

Claims (6)

1. 固定レース（１）および回転レース（２）が転がり物体（３）に接する転がり軌道を有し、上記回転レース（２）は、内部補強材（８）を持ったシール部材（７）に保持され上記固定レース（１）に取り付けられた検出素子（６）の前を通過するように取り付けられたエンコーダ素子（５）を保持する、計測装置を備えた回転軸受のシール部材（７）において、上記検出素子（６）は裸のホール素子と電子部品からなり、上記補強材（８）の上に連結して取り付けられ、かつ、上記シール部材によって覆われている配線（１２）と上記電子部品とを支持している絶縁フィルム（１１）に接触し、上記配線（１２）の１端は少なくとも１つの上記裸のホール素子に、他端は接続端子（１３）を介して給電線（１４）に接続され、上記給電線（１４）を通すために、上記補強材（８）は上記絶縁フィルム（１１）の近傍に位置する開口部（１７）を有することを特徴とする計測装置を備えた回転軸受のシール部材。
2. 上記補強材（８）の上記開口部（１７）の縁は、上記開口部（１７）の切抜き形状に適合し、上記配線（１２）を支持している上記絶縁フィルム（１１）によって覆われている舌状片（２０）に接していることを特徴とする、請求項１記載の計測装置を備えた回転軸受のシール部材。
3. 上記給電線（１４）が横ピン（１８）によって構成されていることを特徴とする、請求項１記載の計測装置を備えた回転軸受のシール部材。
4. 上記シール部材は、上記給電線（１４）を局部的に包み込んでいることを特徴とする、請求項１から３までのいずれか一つに記載の計測装置を備えた回転軸受のシール部材。
5. 上記シール部材の１方の面に横連結ボス（２５）を設けたことを特徴とする、請求項４記載の計測装置を備えた回転軸受のシール部材。
6. 固定レース（１）および回転レース（２）が転がり物体（３）に接する転がり軌道を有し、上記回転レース（２）は、請求項１から５までのいずれか１つに記載するシール部材（７）によって保持され上記固定レース（１）に取り付けられた検出素子（６）の前を通過するように取り付けられたエンコーダ素子（５）を保持することを特徴とする計測装置を備えた回転軸受。

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