JP3619502B2 - 水中音制御装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、たとえば船舶の船底などに設けられる水中音制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
このような水中音制御装置は、潜水調査船と母船との間で音響通信を行うため、および高い測位精度が必要とされる洋上作業に用いられる音響測位装置などにおいて必要になる。この水中音制御装置の性能は、本来必要とする信号の強さと水中雑音の強さの比であるS/N比によって、支配される。
【0003】
水中雑音を低減してS/N比を向上する先行技術は、たとえば特開昭62−217173に開示される。この先行技術では、船体の壁面に凹部を設け、この凹部内に受波器を配設し、水面側に音響透過層を設け、自艦雑音を、音響透過層の材質を適切に選ぶことによって全反射させる。この先行技術では、各種の方向から到来する雑音を遮断して希望する信号だけを受信することはできない。したがってS/N比の向上に限界がある。
【0004】
他の先行技術は特開平7−303296に開示される。この先行技術は、振動子の電気回路を工夫することによって、水中から振動子の受波面に侵入してくる雑音を低減する電気的構成を開示する。したがってこの先行技術は、音波の雑音が振動子の受波面に侵入することを低減するものではなく、一旦受信された振動子からの出力に含まれる雑音を、低減する構成を有する。したがってS/N比の低減が不充分である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、S/N比を向上することができるようにした水中音制御装置を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、(a)気体を充填した気体層を有する壁に、水中音波を伝播する音波伝播部が形成される方向性選択手段と、
(b)音波増幅手段であって、
方向性選択手段の音波伝播部からの音波が入射される増幅用一端部と、
音波を出射する増幅用他端部と、
増幅用一端部と増幅用他端部との間の伝播経路で、増幅用一端部からの音波の有する干渉周波数f1とは異なる共鳴周波数f2で共鳴し、共鳴周波数f2の音波が増幅される音波増幅手段と、
(c)音波増幅手段の増幅用他端部からの音波を電気信号に変換するハイドロホンとを含むことを特徴とする水中音制御装置である。
【0007】
また本発明は、(a)気体を充填した気体層を有する壁に、水中音波を伝播する音波伝播部が形成される方向性選択手段と、
(b)消音手段であって、
方向性選択手段の音波伝播部からの音波が入射される消音用一端部と、
音波を出射する消音用他端部と、
前記消音用一端部から入射した音波を、前記消音用他端部に伝播し、伝播長さが相互に異なり、消音用他端部では、伝播長さに対応する干渉周波数f1の音波が干渉して消音される複数の伝播経路とを有する消音手段と、
(c)音波増幅手段であって、
消音手段の消音用他端部からの音波が入射される増幅用一端部と、
音波を出射する増幅用他端部と、
増幅用一端部と増幅用他端部との間の伝播経路で、増幅用一端部からの音波の有する干渉周波数f1とは異なる共鳴周波数f2で共鳴し、共鳴周波数f2の音波が増幅される音波増幅手段と、
(d)音波増幅手段の増幅用他端部からの音波を電気信号に変換するハイドロホンとを含むことを特徴とする水中音制御装置である。
【0008】
また本発明は、(a)気体を充填した気体層を有する壁に、水中音波を伝播する音波伝播部が形成される方向性選択手段と、
(b)音波増幅手段であって、
方向性選択手段の音波伝播部からの音波が入射される増幅用一端部と、
音波を出射する増幅用他端部と、
増幅用一端部と増幅用他端部との間の伝播経路で、増幅用一端部からの音波の有する共鳴周波数f2で共鳴し、共鳴周波数f2の音波が増幅される音波増幅手段と、
(c)消音手段であって、
音波増幅手段の増幅用他端部からの音波が入射される消音用一端部と、
音波を出射する消音用他端部と、
前記消音用一端部から入射した音波を、前記消音用他端部に伝播し、伝播長さが相互に異なり、消音用他端部では、共鳴周波数f2とは異なる伝播長さに対応する干渉周波数f1の音波が干渉して消音される複数の伝播経路とを有する消音手段と、
(d)消音手段の消音用他端部からの音波を電気信号に変換するハイドロホンとを含むことを特徴とする水中音制御装置である。
【0009】
本発明に従えば、本件水中音制御装置は、たとえば船舶の船底に設けられ、方向性選択手段によって、希望する方向から到来する音波だけを、音波伝播部を介して入射する。この方向性選択手段の壁は、気体が充填された気体層を有し、したがって音波伝播部を通過する音波だけが得られ、その他の方向から到来する音波は、気体層を有する壁によって遮断される。
【0010】
本件発明者によれば、このような気体層を有する壁によって消音効果が優れて達成される理由は、たとえば空気などの気体の体積弾性率は、水の体積弾性率に比べて4桁ほど、小さい。したがって水中から気体層内に音波が伝播した際、気体層の内部の空気音のエネルギが空気の膨張、圧縮の繰返しによって消費され、空気から水に音波が再入射する際、音圧レベルが著しく低減するからであると考察した。こうして音波の到来する方向性が選択されて、希望する方向から到来する音波だけが、受信されることになる。これによって音波伝播部を通過しない音波が遮断され、S/N比が向上されることになる。
【0011】
消音手段は、複数の伝播経路をそれぞれ通る音波を、干渉させ、その干渉周波数を有する音波を消音する。干渉周波数は、雑音の周波数に等しく選ばれ、たとえば5kHzであってもよい。消音手段は、省略されてもよい。
【0012】
音波増幅手段は、音波増幅用伝播経路で希望する信号の共鳴周波数で共鳴し、これによって信号となる音波の振幅を大きく増幅することができる。これによってもまた、S/N比が向上されることになる。共鳴周波数は、たとえば10kHzであってもよい。
【0013】
これらの方向性選択手段、消音手段および音波増幅手段はいずれも、機械的構成によって実現することができ、構成が簡単であり、メンテナンスが容易であるという優れた効果が達成される。
【0014】
ハイドロホンは、水中で、前述の消音手段によって消音され、音波増幅手段で増幅された音波を、電気信号に変換する。したがってハイドロホンから得られる電気信号は、雑音に悪影響されることのないS/N比が向上された電気信号である。
【0015】
また本発明は、音波増幅手段と、ハイドロホンとを収納する内部空間を有するハウジングを、さらに含み、
ハウジングの下部に、方向性選択手段が設けられることを特徴とする。
【0016】
また本発明は、消音手段と、音波増幅手段と、ハイドロホンとを収納する内部空間を有するハウジングを、さらに含み、
ハウジングの下部に、方向性選択手段が設けられることを特徴とする。
【0017】
本発明に従えば、ハウジング内部空間に、消音手段と音波増幅手段とハイドロホンとを収納し、このハウジングの下部に方向性選択手段が設けられるので、たとえば本件水中音制御装置が船舶の船底に設けられた構成では、下方から音波が、方向性選択手段の音波伝播部を通って、消音手段および音波増幅手段をこの順序で経て、または音波増幅手段および消音手段をこの順序で経て、または音波増幅手段を経て、伝わり、ハイドロホンに良好なS/N比の音波が与えられる。消音手段は、省略され得る。
【0018】
また本発明は、方向性選択手段の前記壁の全体の形状は、下方に凸のドーム状であり、ハウジングに角変位自在に設けられることを特徴とする。
【0019】
本発明に従えば、下方に凸のたとえば球の一部分を形成するドーム状の方向性選択手段に、音波伝播部が形成される。これによって方向性選択手段を希望する角度に角変位し、得ようとする信号の方向に、方向性選択手段の音波伝播部を方向付けることが容易に可能である。こうして希望する方向から到来する音波だけを、受信することができるようになる。
【0020】
また本発明は、方向性選択手段の音波伝播部は、開口部であり、
開口部の口径と、消音手段の消音用一端部の口径と、消音用他端部の口径と、音波増幅手段の増幅用一端部の口径と、増幅用他端部の口径とは、ほぼ同一に選ばれることを特徴とする。この口径の大きさは、増幅を狙う共鳴周波数f2の水中音の波長に比して充分に小さくなるように選択する。また、この口径の大きさは消音を狙う干渉周波数f1の水中音の波長に比しても充分に小さくなるように選択することが望ましい。
【0021】
本発明に従えば、受信する音波が通る通路の口径を、ほぼ同一の値とし、これによって受信したい音波を確実に伝播して雑音を低減し、受信すべき音波だけを増幅することができ、受信したい音波のエネルギの損失が抑えられる。
【0022】
また本発明は、消音手段の各伝播経路は、伸縮可能な管によって形成されることを特徴とする。
【0023】
また本発明は、音波増幅手段の伝播経路は、伸縮可能な管によって形成されることを特徴とする。
【0024】
本発明に従えば、消音手段または音波増幅手段の音波が伝播する経路を、伸縮可能な管によって形成し、たとえばその管は円形の軸直角断面を有し、こうして本発明の実現が容易である。
【0025】
また本発明は、ハウジングは、
外壁と、
外壁の内周面との間に気体を充填した気体層を有する第1遮音体と、
第1遮音体の内周面との間に気体を充填したもう1つの気体層を形成し、可撓性を有する材料から成る第2遮音体とを有することを特徴とする。
【0026】
本発明に従えば、ハウジングの外壁の内方に設けられる第1および第2遮音体はいずれも、気体層を有する。したがって優れた消音効果が達成され、内部空間は無響室とすることができる。
【0027】
また本発明は、第2遮音体は、気体が充填され、かつ前記内部空間に突出した複数のひだ状突部を有することを特徴とする。
【0028】
本発明に従えば、第2遮音体には、複数のひだ状突部が形成され、この突部内に気体が充填されているので、前記内部空間からの音波が突部によって吸収され、反射されることが防がれる。第2遮音体は、前述のように可撓性を有する材料から成り、たとえばゴムまたは可撓性合成樹脂などから成ってもよい。
【0029】
気体は、たとえば空気であってもよいが、窒素であってもよく、その他の種類の気体であってもよい。
【0030】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明の実施の一形態の水中音制御装置1の簡略化した断面図である。船舶2の船底3には、仮想線4で示されるように突出し、また船底3とほぼ同一面に連なるように上下に変位可能なハウジング6が設けられるこのハウジング6の下部9には、方向性選択手段7が設けられる。ハウジング6によって形成される内部空間8内には、ハウジング6の下部9に形成された音波通過孔11の図1における上方に、消音手段12と、音波増幅手段13と、ハイドロホン14とがこの順序で配置されて収納される。ハイドロホン14からの電気信号は、フィルタ15によって濾波され、増幅器16によって、その電気信号が増幅される。
【0031】
図2は、船舶2の船底3付近の断面図である。船舶2の船体内には、船底3に連なる筒体17が固定される。この筒体17内には、ハウジング6が設けられる。ハウジング6は、油圧シリンダ18のピストン棒19に連結され、昇降変位可能である。油圧シリンダ18は、筒体17、したがって船体に取付けられる。ハウジング6は、筒体17内の海水20内に浸漬され、前述のようにハウジング6の下部9が船底3とほぼ同一位置にもたらされ、またその船底3よりも下方に突出されることができる。ハウジング6を船底3から下方に突出することによって、希望する方向からの音波を選択的に受信することができる。
【0032】
図3は、ハウジング6の下部9に設けられた方向性選択手段7を示す斜視図である。この方向性選択手段7を構成する壁21は、その全体の形状が下方に凸のドーム状であり、たとえば球の一部分を形成する中心角が180度以上、たとえば200度の球面状であってもよい。この壁21は、ハウジング6の下部9よりも内方にある中心23を通る鉛直軸線まわりに周方向24に±180度角変位自在であり、また中心23を通る水平線まわりの揺動方向25に±α度だけ角変位自在である。αは、たとえば後述の図9に示されるように、たとえば約45度〜60度であってもよく、好ましくは60度であってもよい。
【0033】
図4は、方向性選択手段7が設けられたハウジング6の断面図である。ハウジング6は、外壁26と、その外壁26の内周面に設けられるカバー体27とを含む。外壁26は、外部から到来する雑音を遮断し、カバー体27は、内部空間8の反射音を吸収して無響室を形成する。このハウジング6は、ほぼ円筒状であり、天井部27によって閉じられる。
【0034】
図5は、水中音制御装置1の底面図である。方向性選択手段7のドーム状壁21には、音波伝播部を形成する開口部29が、形成される。この開口部29は、一対の蓋31,32によって図5に示されるように、閉じられ、また仮想線33,34で示されるように図5の左右に離反方向に変位して、開口部29を開くことができる。
【0035】
図6は、方向性選択手段7の図5における切断面線VI―VIから見た簡略化した断面図である。図7は、方向性選択手段7の開口部29を蓋31,32で開いた状態を示す断面図である。蓋31,32は、壁21の内周面に沿って湾曲して形成される。これによって蓋31,32は、前述のように開口部29を密閉し、また全開することができる。
【0036】
図8は、方向性選択手段7の壁21の拡大断面図である。この壁21は、外板36と内板37との間に、隔壁38が介在され、この隔壁38によって、外板36と内板37との間に、厚みtを有する部分的な球殻状の気体層39が形成される。外板36、内板37および隔壁38は、ステンレス鋼またはアルミニウムなどの金属材料から成ってもよいが、その他の材料から成ってもよい。気体層に気体が充填されているので、水圧で外板36および内板37が変形してしまうことは、ない。気体層39の厚みtを大きくすることによって、消音効果が顕著な周波数域を、高い周波数にまで広げることができる。
【0037】
図9は、方向性選択手段7の角変位状態を示す簡略化した図である。ド―ム状の壁21は、中立位置では、参照符A1,A2,A3で示される円弧状の姿勢の状態になっており、右方に中心23を通る水平軸線まわりに60度角変位することによって、参照符B1,B2,B3で示される円弧状の姿勢とすることができ、さらに左方に角変位して参照符C1,C2,C3で示される円弧状の姿勢とすることができる。これによって開口部29は、受信しようとする音波が到来する広い範囲に、方向付けられることができるようになる。
【0038】
図10は消音手段12の斜視図であり、図11は消音手段12の断面図であり、図12は、消音手段の動作を説明するための断面図である。消音手段12は、方向性選択手段7の開口部29を通る音波が入射され、中心23の鉛直上方に軸線を有する消音用一端部42と、その雑音が消音された音波を出射する消音用他端部43と、これらの各端部42,43にわたって音波を伝播する複数(この実施の形態では2)の伝播経路44,45とを有する。伝播経路44は、管46,47を調整管48によって伸縮可能に形成される。もう1つの伝播経路45は、管46,47から分岐した管49,50と調整管51,52と、L字状の管53,54と、調整管55とを含む。管46,47と調整管48とは、ねじ継手によって、前述のように伸縮可能であり、また同様にして調整管51,52,55もねじ継手によって伝播経路45の伸縮を可能にする。伝播経路44の音波が伝播する伝播長さをL2とし、もう1つの伝播経路45の音波が伝播する伝播長さをL1とし、消音すべき雑音の波長をλとするとき、式1,2が成立する。nは自然数である。
L1―L2 = λ/2 …(1)
L1+L2 = n・λ …(2)
【0039】
たとえば雑音の周波数f1が5kHzであるとき、水温15℃で波長λは0.293mである。したがってたとえばn=1では、L1=0.220m、L2=0.073mであり、n=2では、L1=0.366m、L2=0.220mである。伝播経路44,45は、円形の軸直角断面を有し、その内径D1は、消音すべき音波の波長λに比べて充分小さい値とし、波長λの1/10以下に選ぶことが好ましい。すなわち、
D1≦λ/10 …(3)
図13は音波増幅手段13の斜視図であり、図14は音波増幅手段13の断面図である。音波増幅手段13は、消音手段12の消音用他端部43の鉛直上方に設けられ、その消音用他端部43からの音波が入射される増幅用一端部57と、音波を出射する増幅用他端部58と、これらの増幅用の各端部57,58との間の伝播経路59で、増幅用一端部57からの受信すべき信号音波を共鳴周波数f2で共鳴する共鳴部61とを有する。この音波増幅手段13は、断面円形の直管62,63が、たとえば管継手によって接続されて伝播経路が伸縮可能である。共鳴周波数f2は、受波すべき信号の音波の周波数に等しく、たとえば10kHzであってもよい。
【0040】
図15は、音波増幅手段13の動作を説明するための断面図である。伝播経路59における共鳴周波数f2は、式4で示される。
f2 = U/{2(L3+L4)} …(4)
ここでUは、水中音速を示し、L3は伝播経路59の伝播長さであり、L4は、増幅用一端部57と増幅用他端部58における開口端補正値である。
【0041】
L4 = γ・D2 …(5)
開口端補正値L4は、伝播経路59の前記一端部57および他端部58よりも外方において、流体である水も少し動き、したがってその一端部57の図15における下方に、ならびに他端部58の図15における上方に、自由端が存在すると仮定して、音波の伝播長さL3を補正するための値である。式5のγは、補正係数であって、約0.6である。伝播経路59の内径はD2である。たとえば水中音速Uは、15℃で1,430m/secであり、共鳴周波数f2が10kHzであるとき、D2=0.036m、L3=0.05mであり、またはD2=0.072m、L3=0.028mである。
【0042】
図15においてハイドロホン14の受波部は、音波増幅手段13の増幅用他端部58から距離L5があけられており、この距離L5は、開口端補正値L4を2で除算した値超える値に選ばれる。
L4/2<L5 …(6)
【0043】
前述の方向性選択手段7の中心23と、消音手段12の伝播経路44と、音波増幅手段13の伝播経路59と、ハイドロホン82とは、一直線上にある。
【0044】
前述の実施の形態では、方向性選択手段7の上方に消音手段12と音波増幅手段13とが、この順序で配置されて構成されたが、本発明の実施の他の形態では、方向性選択手段7の上方に、音波増幅手段13と消音手段12とがこの順序で配置されるように構成されてもよい。さらに消音手段12は、省略されてもよい。
【0045】
図16はハウジング6の一部の断面図であり、図17はハウジング6の一部を分解して示す断面図である。ハウジング6は、外壁64と、第1および第2遮音体65,66とを含む。外壁64は、直円筒状であって、ステンレス鋼またはアルミニウムなどの材料から成る。この外壁64の内方に、第1遮音体65と、第2遮音体66とが、半径方向外方から内方にこの順序で設けられる。第1遮音体65は、外壁64の内周面との間に空気などの気体を充填した気体層67を形成する。この第1遮音体65は、外板68と、内板69とを含み、これらの外板68と内板69との間に、気体層67が充填される。外板68は、たとえば接着剤によって外壁64の内周面に接着されて固定される。これらの外板68および内板69は、たとえばゴムまたは塩化ビニル樹脂などの合成樹脂などから成り、可撓性であってもよいが、剛性であってもよい。第1遮音体65は、外部から入射する音波を遮断する。
【0046】
第2遮音体66は、第1遮音体65の内周面を形成する内板69のさらに内側に気体層77を形成する。この第2遮音体66は、外板71と内板72とを含み、この内板72には、内部空間8に突出した周方向に延びかつ上下に配置された複数のひだ状突部73が、多数個、存在して形成される。これらの外板71と内板72との間、およびひだ状突部73内の各空間75,76には空気が充填されて気体層77が形成される。第2遮音体66は、内部空間8内の反射音を吸収して遮断する働きを果たす。第1遮音体65の内板69と第2遮音体66の外板71とは、接着剤79によって接着されて固定される。外板71および内板72、さらにひだ状突部73はいずれも、可撓性を有するゴムまたは塩化ビニルなどの合成樹脂などの材料から成ってもよい。
【0047】
図18は、本件発明者の実験による実施例を説明するための図である。方向性選択手段7の気体層39を有する壁21の図18における右方にスピーカ81を配置し、壁21を介してハイドロホン82を距離65mmをあけて配置し、またスピーカ81と壁21に関して同一側に参照用ハイドロホン83を配置し、音圧レベルを測定した。
【0048】
図19は、本件発明者の実験による図18の測定結果を示すグラフである。スピーカ81からは、図19(3)で示される音源側音圧レベルを発生し、ハイドロホン82は、壁21を介して図19(2)で示される受音側音圧レベルが得られ、したがって壁21による音圧減少レベルは、図19(1)に示されるように、良好な消音効果が達成された。
【0049】
図20は、本件発明者の実験による比較例を示す図である。前述の図18における壁21を取外し、スピーカ81に対向して図19と同様に距離65mmをあけてハイドロホン82を配置した。その他の実験の構成は、前述の図18と同様である。
【0050】
図21は、図20の比較例の実験結果を示す図である。スピーカ81から図21(3)に示される音源側音圧レベルを発生し、ハイドロホン82によって図21(2)に示される受音側音圧レベルを得た。これによってスピーカ81とハイドロホン82との距離65mmを隔てることによる音圧減少レベルは、図21(1)に示されるようにほとんど全ての周波数帯域にわたって零である。こうして図18および図19の実施例ならびに図20および図21の比較例に基づき、本発明の気体層39を有する壁21による遮音効果が優れて達成されることが確認された。
【0051】
【発明の効果】
本発明によれば、方向性選択手段によって希望する方向から到来する音波だけを音波伝播部を経て受信し、消音手段によって雑音の周波数f1である干渉周波数で消音し、希望する音波だけを、音波増幅手段の共鳴周波数f2で共鳴して増幅し、こうして雑音が消音され、希望する周波数f2の音波だけを増幅して、または方向性選択手段によって希望する方向から到来する音波だけを音波伝播部を経て受信し、希望する音波だけを音波増幅手段の共鳴周波数f2で共鳴して増幅して、ハイドロホンの受波面に与えることができる。こうしてS/N比が優れた電気信号を、得ることができる。消音手段は、省略され得る。
【0052】
本発明によれば、たとえば本件水中音制御装置が船舶の船底に設けられた構成では、下方から音波が、方向性選択手段の音波伝播部を通って、消音手段および音波増幅手段をこの順序で経て、または音波増幅手段および消音手段をこの順序で経て、伝わり、さらに消音手段が省略されて音波増幅手段だけを経て、伝わり、ハイドロホンに良好なS/N比の音波が与えられる。
【0053】
また本発明によれば、ドーム状の方向性選択手段に、音波伝播部が形成されるので、方向性選択手段を希望する角度に角変位し、得ようとする信号の方向に、方向性選択手段の音波伝播部を方向付けることが容易に可能である。こうして希望する方向から到来する音波だけを、受信することができるようになる。
【0054】
また本発明によれば、ハウジングの外壁の内方に設けられる第1および第2遮音体はいずれも、気体層を有する。したがって優れた消音効果が達成され、内部空間は無響室とすることができる。
【0055】
さらに本発明によれば、可撓性第2遮音体には、複数のひだ状突部が形成され、この突部内に気体が充填されているので、前記内部空間からの音波が突部によって吸収され、反射されることが防がれる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の一形態の水中音制御装置1の簡略化した断面図である。
【図2】船舶2の船底3付近の断面図である。
【図3】ハウジング6の下部9に設けられた方向性選択手段を示す斜視図である。
【図4】方向性選択手段7が下部9に設けられたハウジング6の断面図である。
【図5】水中音制御装置1の底面図である。
【図6】方向性選択手段7の図5における切断面線VI―VIから見た簡略化した断面図である。
【図7】方向性選択手段7の開口部29を蓋31,32で開いた状態を示す断面図である。
【図8】方向性選択手段7の壁21の拡大断面図である。
【図9】方向性選択手段7の角変位状態を示す簡略化した図である。
【図10】消音手段12の斜視図である。
【図11】消音手段12の断面図である。
【図12】消音手段12の動作を説明するための断面図である。
【図13】音波増幅手段13の斜視図である。
【図14】音波増幅手段13の断面図である。
【図15】音波増幅手段13の動作を説明するための断面図である。
【図16】ハウジング6の一部の断面図である。
【図17】ハウジング6の一部を分解して示す断面図である。
【図18】本件発明者の実験装置を説明するための図である。
【図19】本件発明者の実験による図18の測定結果を示すグラフである。
【図20】本件発明者の実験よる比較例を示す図である。
【図21】図20の比較例の実験結果を示す図である。
【符号の説明】
1 水中音制御装置
3 船底
6 ハウジング
7 方向性選択手段
8 内部空間
9 下部
11 音波通過孔
12 消音手段
13 音波増幅手段
14 ハイドロホン
31,32 蓋
39 気体層
42 消音用一端部
43 消音用他端部
44,45 伝播経路
57 増幅用一端部
58 増幅用他端部
59 伝播経路
61 共鳴部
64 外壁
65 第1遮音体
66 第2遮音体
67 気体層
73 ひだ状突部
77 気体層

Claims (11)

  1. (a)気体を充填した気体層を有する壁に、水中音波を伝播する音波伝播部が形成される方向性選択手段と、
    (b)音波増幅手段であって、
    方向性選択手段の音波伝播部からの音波が入射される増幅用一端部と、
    音波を出射する増幅用他端部と、
    増幅用一端部と増幅用他端部との間の伝播経路で、増幅用一端部からの音波の有する干渉周波数f1とは異なる共鳴周波数f2で共鳴し、共鳴周波数f2の音波が増幅される音波増幅手段と、
    (c)音波増幅手段の増幅用他端部からの音波を電気信号に変換するハイドロホンとを含むことを特徴とする水中音制御装置。
  2. 音波増幅手段と、ハイドロホンとを収納する内部空間を有するハウジングを、さらに含み、
    ハウジングの下部に、方向性選択手段が設けられることを特徴とする請求項1記載の水中音制御装置。
  3. (a)気体を充填した気体層を有する壁に、水中音波を伝播する音波伝播部が形成される方向性選択手段と、
    (b)消音手段であって、
    方向性選択手段の音波伝播部からの音波が入射される消音用一端部と、
    音波を出射する消音用他端部と、
    前記消音用一端部から入射した音波を、前記消音用他端部に伝播し、伝播長さが相互に異なり、消音用他端部では、伝播長さに対応する干渉周波数f1の音波が干渉して消音される複数の伝播経路とを有する消音手段と、
    (c)音波増幅手段であって、
    消音手段の消音用他端部からの音波が入射される増幅用一端部と、
    音波を出射する増幅用他端部と、
    増幅用一端部と増幅用他端部との間の伝播経路で、増幅用一端部からの音波の有する干渉周波数f1とは異なる共鳴周波数f2で共鳴し、共鳴周波数f2の音波が増幅される音波増幅手段と、
    (d)音波増幅手段の増幅用他端部からの音波を電気信号に変換するハイドロホンとを含むことを特徴とする水中音制御装置。
  4. (a)気体を充填した気体層を有する壁に、水中音波を伝播する音波伝播部が形成される方向性選択手段と、
    (b)音波増幅手段であって、
    方向性選択手段の音波伝播部からの音波が入射される増幅用一端部と、
    音波を出射する増幅用他端部と、
    増幅用一端部と増幅用他端部との間の伝播経路で、増幅用一端部からの音波の有する共鳴周波数f2で共鳴し、共鳴周波数f2の音波が増幅される音波増幅手段と、
    (c)消音手段であって、
    音波増幅手段の増幅用他端部からの音波が入射される消音用一端部と、
    音波を出射する消音用他端部と、
    前記消音用一端部から入射した音波を、前記消音用他端部に伝播し、伝播長さが相互に異なり、消音用他端部では、共鳴周波数f2とは異なる伝播長さに対応する干渉周波数f1の音波が干渉して消音される複数の伝播経路とを有する消音手段と、
    (d)消音手段の消音用他端部からの音波を電気信号に変換するハイドロホンとを含むことを特徴とする水中音制御装置。
  5. 消音手段と、音波増幅手段と、ハイドロホンとを収納する内部空間を有するハウジングを、さらに含み、
    ハウジングの下部に、方向性選択手段が設けられることを特徴とする請求項3または4記載の水中音制御装置。
  6. 方向性選択手段の音波伝播部は、開口部であり、
    開口部の口径と、消音手段の消音用一端部の口径と、消音用他端部の口径と、音波増幅手段の増幅用一端部の口径と、増幅用他端部の口径とは、ほぼ同一に選ばれることを特徴とする請求項3〜5のうちの1つに記載の水中音制御装置。
  7. 消音手段の各伝播経路は、伸縮可能な管によって形成されることを特徴とする請求項3〜6のうちの1つに記載の水中音制御装置。
  8. 方向性選択手段の前記壁の全体の形状は、下方に凸のドーム状であり、ハウジングに角変位自在に設けられることを特徴とする請求項2または5記載の水中音制御装置。
  9. 音波増幅手段の伝播経路は、伸縮可能な管によって形成されることを特徴とする請求項1〜8のうちの1つに記載の水中音制御装置。
  10. ハウジングは、
    外壁と、
    外壁の内周面との間に気体を充填した気体層を有する第1遮音体と、
    第1遮音体の内周面との間に気体を充填したもう1つの気体層を形成し、可撓性を有する材料から成る第2遮音体とを有することを特徴とする請求項2,5または8記載の水中音制御装置。
  11. 第2遮音体は、気体が充填され、かつ前記内部空間に突出した複数のひだ状突部を有することを特徴とする請求項10記載の水中音制御装置。
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