JP3618667B2 - フィルター付シガレット - Google Patents

Description

技術分野
本発明はフィルター付シガレットに関し、より具体的にはフィルターからの空気流入割合（フィルターベンチレーション割合；以下、「Ｖｆ］という。）のばらつきの少ないシガレットを提供するためのプラグ巻取紙の改良に関する。
背景技術
通常のフィルター付シガレットは、たばこロッドとフィルターとをいわゆるチップペーパーで接続して構成されている。そしてシガレットフィルターは、セルロースジアセテート繊維等の繊維状フィルター材が巻取紙により円筒状に巻装されて形成されている。近年では、フィルター吸口端から流出する煙成分量を低減するために、通気性のあるフィルタープラグ巻取紙と、静電気、レーザ等で開孔したチップペーパーとを組合わせることにより、フィルター側面から空気を流入させる手段が多用されている。このような開孔フィルターでは、吸口端においてフィルター周辺部から希釈流入空気が、そして中央部からたばこ煙が喫煙者の口腔内に導入されるので、全体として口腔内に導入される煙成分量が低減する。
上記従来のシガレットでは、フィルタープラグ巻取紙およびチップペーパーを同一の材料で形成しても、製品のＶｆ値に大きなばらつきが生じることが確認されている。Ｖｆ値は煙成分量と大きく相関するため、そのばらつきは望ましいものではない。
従って、本発明は、Ｖｆ値のばらつきを抑制して、低減した煙成分量を安定に送給し得るフィルタ付シガレットを提供することを目的とする。
発明の開示
本出願人は、特開平６−９０７２８号（米国特許第５，４６４，０２８号に対応）において、たばこロッドとフィルターとが通気用開孔（ベンチレーション孔）を有するチップペーパーにより接続されたフィルター付シガレットにおいて、Ｖｆのばらつきが、フィルター部材を巻装する巻紙等の材料の通気性とは直接関係のない、巻取紙とチップペーパーとの密着性に関係するところ、これを改善するために、フィルター部材を巻装する巻取紙にエンボスを施すことによって、上記密着性を緩和し、Ｖｆのばらつきを抑制し得ることを開示している。
本発明者らは、この知見に基づき、さらにＶｆ値を安定化させるべく鋭意検討した結果、エンボスを施したフィルター巻取紙とチップペーパーとをエンボスの凸部のみにおいて接着することにより、Ｖｆ値がより一層安定化し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明によれば、たばこ充填材および該たばこ充填材の周囲を巻装する巻紙とからなるたばこロッドと、フィルター部材および該フィルター部材の周囲を一体的に巻装する巻取紙からなるフィルターと、周方向に沿って配列された複数の開孔を有し、かつ該たばこロッドと該フィルターとを接続するチップペーパーとを備え、該巻取紙は、ほぼその全面にエンボスが施され、該巻取紙とチップペーパーとは、該巻取紙のエンボスの凸部において選択的に該チップペーパーと接着されている、フィルター付シガレットが提供される。
本発明において、巻取紙とチップペーパーとは、複数の開孔の形成領域を除いて接着され得る。また、本発明において、エンボスの深さは、１０ないし１００μｍであることが好ましく、エンボスのピッチは、１００ないし３０００μｍであることが好ましい。
【図面の簡単な説明】
図１は、本発明の第１の態様に係るフィルター付シガレットを示す分解部分斜視図であり、
図２は、本発明の第２の態様に係るフィルター付シガレットを示す分解部分斜視図であり、
図３Ａは、本発明に用いられる巻取紙を展開して部分的に示す拡大平面図であり、
図３Ｂは、図３Ａの線IIIＢ−IIIＢに沿った断面図であり、
図４は、本発明に用いられる巻取紙の別の例を展開して示す概略平面図であり、
図５は、本発明に用いられるチップペーパーへの糊の適用を説明するための概略平面図であり、および
図６は、本発明のフィルター付シガレットのフィルター部分をチップペーパーとともに示す拡大概略断面図である。
発明を実施するための最良の形態
以下、本発明を図面を参照して詳しく説明する。全図において、同一もしくは類似の要素は同一符号で示されている。
図１は、本発明の第１の態様に係るフィルター付シガレットを示す分解部分斜視図である。図１に示すフィルター付シガレット１０は、たばこロッド１１とフィルター１２とを備え、通常のフィルター付シガレットと同様、全体として円柱形状を有する。たばこロッド１１とフィルター１２とは、チップペーパー１５により接続されている。
たばこロッドは１１は、通常のシガレットと同様、たばこ充填材１１１とその周囲を巻装する巻取紙１１２からなり、例えば、５〜１０ｍｍの直径および４０〜８０ｍｍの長さを有することができる。
フィルター１２は、たばこロッドの一端に配置され、フィルター部材１２１とその周囲を巻装する巻取紙１２２からなる。図１に示すフィルター部材１２１は、単一のいわゆるプレーンフィルター構造を有し、通常のフィルター付シガレットと同様、セルロースアセテート繊維等の繊維状フィルター材により構成される。フィルター１２は、たばこロッド１１とほぼ同じ直径を有し、長さは、通常のフィルターと同様、例えば１５〜４０ｍｍであり得る。
フィルター部材１２１の周囲を一体に巻装する巻取紙１２２は、コレスタ通気度１０００以上の通気性の高いものを使用することが好ましく、その厚さは、１０〜１００μｍであり得る。この巻取紙１２２には、そのほぼ全面に、以後詳述するエンボス１３が施されている。
また、チップペーパー１５は、巻取紙１２２の全体と巻紙１１２の一部とを覆っている。チップペーパー１５は、例えば、２０〜５０ｍｍのたばこ軸方向の長さ（幅）を有し得、その厚さは１０〜１００μｍであり得る。このチップペーパー１５には、通気用の小開孔（ベンチレーション孔）１６がシガレットの円周方向に沿って一列、複数列若しくは不規則（図１では、２列）に多数穿設される。チップペーパー１５の開孔１６は、静電気、レーザ等の公知の手段により形成することができる。ベンチレーション孔１６は、チップペーパー１５を巻取紙１２２と糊付けする前または後に形成することができる。
図２は、本発明の第２の態様に係るフィルター付シガレットを示す分解部分斜視図である。図２中、図１の要素に対応する要素には同一符号を付して説明を省略する。
図２のフィルター付シガレットは、フィルター部材１２１が、それぞれセルロースアセテート繊維等の繊維状フィルター材料からなる第１のフィルターセクション１２１ａと第２のフィルターセクション１２１ｂとから構成されるいわゆるデュアルフィルター構造を有する。第１のフィルターセクション１２１ａおよび第２のフィルターセクション１２１ｂは、それぞれ、例えば５〜２０ｍｍの長さを有することができ、それらの合計の長さは、例えば１５〜４０ｍｍであり得る。このデュアルフィルター構造のフィルター部材１２１において、第１のフィルターセクション１２１ａは、活性炭を分散させていわゆるチャーコールフィルターとすることができる。
これら第１および第２のフィルターセクション１２１ａおよび１２１ｂは、それぞれ、別体の第１の個別巻取紙１２３ａおよび第２の個別巻取紙１２３ｂにより個別に過不足なく各周囲を巻装されている（以下、これら個別巻取紙を一括して１２３と表示することがある。）。これら個別巻取紙１２３は、それぞれ、１０００コレスタ単位以上の通気度を有することが好ましく、その厚さは１０〜１００μｍであり得る。個別巻取紙１２３ａおよび１２３ｂにより巻装された第１および第２のフィルターセクション１２１ａおよび１２１ｂは、その全体が一体的に、図１に示すシガレットと同様の、エンボス１３を施された巻取紙１２２により巻装されている。
さて、図１および図２に示すフィルター付シガレットのいずれにおいても、フィルター部材１２１を一体的に巻装する巻取紙１２２には、好ましくは格子状の凹部（溝）のパターンを有するエンボス１３が施されている。
図３Ａおよび図３Ｂは、エンボス１３が施された巻取紙１２２の一例を部分的に示す図である。図３Ａは、平面図であり、図３Ｂは、図３Ａの線IIIＢ−IIIＢに沿った断面図であり、いずれも拡大して示されている。
図３Ａおよび図３Ｂに示す巻取紙１２２に施されたエンボス１３は、矩形格子（正方格子、または長方格子）状の溝パターンのエンボスであり、巻取紙１２２の全体にわたって形成されている。エンボス１３は、ローレット状部材等の手段により型付けされて形成される。図３Ａおよび図３Ｂにおいては、これら図の左右方向（以下、「横」方向ともいい、例えば、チップペーパー１５のベンチレーション孔１６の配列方向と実質的に直交する方向とすることができる。）に互いに平行に延びる溝１３１−ａ１〜１３１−ａ５と、これら溝と直交する方向（以下、「縦」方向ともいう。）互いに平行に延びる溝１３１−ｂ１〜１３１−ｂ４が現れている。これら溝１３１−ａ１〜１３１−ａ５、１３１−ｂ１〜１３１−ｂ４によって規定される各平面矩形の領域は、上から見て四角錐台形状に突出する凸部１３２を構成している。
次に、このようなエンボス１３の好適な大きさを巻取紙１２２の厚さを含めて説明する。図３Ａおよび図３Ｂにおいて、凸部１３２の実質的に平坦な頂面の縦方向の長さをＡ、横方向の長さをＡ’とし、凸部１３２のすそから頂面の端縁までの縦方向の長さをＢ、横方向の長さをＢ’とし、横方向に延びる溝の幅をＣ、縦方向に延びる溝の幅をＣ’とし、縦方向のエンボスピッチ（Ａ＋２Ｂ＋Ｃ）をＤとし、横方向のエンボスピッチ（Ａ’＋２Ｂ’＋Ｃ’）をＤ’とし、各溝の深さ（エンボス深さでもある）をＥとし、巻取紙１２２の厚さ（エンボスを施す前として）をＦとすると、これらの好適な寸法は、それぞれ以下の範囲内にある。
ＡおよびＡ’：それぞれ、 ３０〜１０００μｍ
ＢおよびＢ’：それぞれ、 ３０〜１０００μｍ
ＣおよびＣ’：それぞれ、 ３０〜１０００μｍ
ＤおよびＤ’：それぞれ、１００〜３０００μｍ
Ｅ ： １０〜 １００μｍ
Ｆ ： １０〜 １００μｍ。
本発明においては、特に、エンボス深さは、浅すぎると所期の効果が得られず、また深すぎると、たばこ巻上げ機による巻上げ不良（巻取紙１２２とチップペーパーの糊付け不良）をもたらすおそれがある。本発明において、エンボス深さは、上に示したように、１０〜１００μｍ（０．０１〜０．１ｍｍ）であることが好ましく、３０〜６０μｍ（０．０３〜０．０６ｍｍ）であることがより好ましい。なお、エンボス深さは、触針式三次元粗さ測定器（例えば、小坂研究所製ＳＥ−３ＡＫ）を用いて測定することができる。
また、本発明において、エンボスピッチは、大きすぎると溝が糊で塞がれて、所期の効果が得られない。エンボスピッチは、上に示したように、１００〜３０００μｍ（０．１〜３ｍｍ）であることが好ましく、３００〜１０００μｍ（０．３ｍｍ〜１ｍｍ）であることがより好ましい。
図４は、斜方格子状の溝パターンを有するエンボス１３を施した巻取紙１２２の平面図である。図４に示すエンボスにおいても溝１３１ａ、および溝１３１ａと斜めに交差する溝１３１ｂの幅、深さ（エンボス深さ）、エンボスピッチは、図３Ａおよび図３Ｂに関して説明したものが適用される。なお、図４に明瞭に示されるように、本発明において、エンボス１３は、巻取紙１２２同士の糊付け部４１には形成しなくともよい。
さて、本発明において、巻取紙とチップペーパーとは、チップペーパーのベンチレーション孔形成領域を実質的に除いて糊付けされ得る。この場合、例えば図５に示すように、糊５１は、チップペーパー１５のベンチレーション孔１６が形成された領域５２を除いてチップペーパー１５の裏面に付されることとなる。すなわち、この場合には、より詳しく述べると、巻取紙とチップペーパーとは、チップペーパーのベンチレーション孔の形成領域を実質的に除いた部分において、巻取紙のエンボスの凸部において選択的に（すなわち、凸部においてのみ）糊付けされる。すなわち、図６に誇張して示すように、フィルター部材１２１を巻装する個別巻取紙１２３を一体的に覆う、エンボス１３を施した巻取紙１２２とベンチレーション孔１６を穿設したチップペーパーとは、ベンチレーション孔１６の形成領域５２を除く領域において、エンボスの凸部１３２の頂面においてのみ糊層５１により接着（点接着）され得る。すなわち、糊５１は、図５に関して説明したように、ベンチレーション孔１６形成領域５２を除いた領域に対してほぼ全面に設けられ得るが、巻取紙１２２に対してはそのエンボス１３の凸部とのみ接触（点接触）している。なお、ベンチレーション孔の形成方法によっては、ベンチレーション孔形成領域にもわたって糊付けすることもできる。
巻取紙１２２とチップペーパー１５とを接着する糊５１は、通常使用されているポリ酢酸ビニルまたはエチレン／酢酸ビニル共重合体を主体とするものであり得る。その適用時の粘度は５００ｃＰ以上、好ましくは５００〜５０００ｃＰ、特に好ましくは５００〜３０００ｃＰ（いずれも、ＢＬ型回転粘度計でローターＮｏ．３を使用して３０ｒｐｍ、３０℃で測定）であることが、上記点接着を達成する上で好適である。
上記の構成により、本発明に係るフィルター付シガレットにあっては、エンボス１３により巻取紙１２２とチップペーパー１５との密着性が緩和され、ベンチレーション孔１６から巻取紙１２２への通気性が向上する。またこれに加え、巻取紙１２２とチップペーパー１５とは、点接着により接着されているので、ベンチレーション孔１６の形成領域（ベンチレーション領域）５２からフィルター１２の吸口端に至る気体流路がエンボス１３の凹部（溝）により構成されることとなる。チップペーパー１５のベンチレーション孔１６から流入した希釈空気は、一部は上記ベンチレーション領域５２から上記気体流路を通って流れ、一部はベンチレーション領域５２から巻取紙１２２を通過してフィルター部材１２１中を流れる。他方、たばこ主流煙は、その一部はフィルター部材１２１の先端（吸口端と反対の端）から上記気体流路を通過するが、チップペーパー１５のベンチレーション孔１６部位を境にして、ベンチレーション領域５２から流入する上記一部の希釈空気によりおしだされて巻取紙１２２を通過し、はじめからフィルター部材１２１を通って流れてきた残りの主流煙と合流する。かくして、本発明のフィルター付シガレットにおいては、Ｖｆ値を大きくしかもそのばらつきを低く設定することができる。
実施例１
正方格子状の溝のパターンからなるエンボス１３（図３Ａおよび図３Ｂ参照）を糊しろ以外の全面に設けた巻取紙１２２を使用し、以下の仕様で、図２に示すデュアル構造の各種フィルター付シガレット（全長８４ｍｍ、巻周２５ｍｍ）を作製した。なお、巻取紙とチップペーパーとは、酢酸ビニル系接着剤（粘度：１０００ｃＰ）を用いて接着した。
［シガレットの仕様］
＜たばこロッド１１＞
通気抵抗：８０ｍｍＨ_２Ｏ
＜フィルター１２＞
通常のデュアルフィルター
長さ：２５ｍｍ
個別巻取紙１２３
通気度：１００００コレスタ単位
巻取紙１２２
通気度：２０００コレスタ単位
正方格子状溝パターンのエンボス加工
エンボス深さ：４０μｍ
エンボスピッチ：表１記載
＜チップペーパー１５＞
レーザー開孔（ベンチレーション孔１６）２列
通気度：１０００
上記各シガレットについてそれぞれ１００個の試料を準備し、これらをベンチレーションメーターに取付け、それらのフィルターベンチレーション割合を測定した。なお、エンボスを施した巻取紙１２２を用いた本発明のシガレットにおいては、巻取紙１２２とチップペーパーとの接着は、点接着であることが確認されたが、エンボス加工を施していない巻取紙を用いた比較の試料においては、両者の接着は全面接着であった。
結果を表１に併記する。同表中、Ａｖｅは、フィルターベンチレーション割合の平均値、ＳＤはその標準偏差、ＣＶは下記の式：
ＣＶ＝（ＳＤ／Ａｖｅ）×１００（％）
で表されるその変動係数である（以下、同じ。）。

表１に示すように、エンボスの形成されていない比較試料に比べ、本発明に係る試料は、ベンチレーション割合が向上し、また該フィルターベンチレーションのばらつきが小さいことが確認された。特に、エンボスピッチが小さくなるほどＶｆ値のばらつきが小さくなることがわかる。
実施例２
エンボスピッチを２．１ｍｍまたは０．６４ｍｍに設定し、エンボス深さを変化させた以外は、実施例１と同様にして、下記表２〜４に示すフィルター付シガレットを作製し、そのＶｆ値を測定した。エンボスを施した巻取紙１２２を用いた本発明のシガレットにおいては、巻取紙１２２とチップペーパーとの接着は、点接着であることが確認されたが、エンボス加工を施していない巻取紙を用いた比較の試料においては、両者の接着は全面接着であった。
結果を表２〜４に表記する。

表２〜表４に示すように、エンボスの形成されていない比較試料に比べ、本発明に係る試料は、Ｖｆが向上し、そのばらつきが小さいことが確認された。
以上述べたように、本発明によれば、フィルター付シガレットのＶｆを向上させるだけなく、Ｖｆ値のばらつきを減少させることができる。即ち、シガレットのフィルターベンチレーションを確実に制御でき、これにより所望の煙成分量を安定に提供することが可能となる。

Claims (8)

1. たばこ充填材および該たばこ充填材の周囲を巻装する巻紙からなるたばこロッドと、
   フィルター部材および該フィルター部材の周囲を一体的に巻装する巻取紙からなるフィルターと、
   周方向に沿って配列された複数の開孔を有し、かつ該たばこロッドと該フィルターとを接続するチップペーパーと
   を備え、
   該巻取紙は、ほぼその全面にエンボスが施され、
   該巻取紙とチップペーパーとは、該巻取紙のエンボスの凸部において選択的に該チップペーパーと接着されている
   フィルター付シガレット。
2. 巻取紙とチップペーパーとが、複数の開孔の形成領域を除いて接着されている請求項１に記載のフィルター付シガレット。
3. エンボスの深さが、１０ないし１００μｍである請求項１に記載のフィルター付シガレット。
4. エンボスの深さが、１０ないし１００μｍである請求項２に記載のフィルター付シガレット。
5. エンボスのピッチが、１００ないし３０００μｍである請求項１に記載のフィルター付シガレット。
6. エンボスのピッチが、１００ないし３０００μｍである請求項２に記載のフィルター付シガレット。
7. エンボスのピッチが、１００ないし３０００μｍであることを特徴とする請求項３に記載のフィルター付シガレット。
8. エンボスのピッチが、１００ないし３０００μｍである請求項４に記載のフィルター付シガレット。

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