JP3617725B2 - 樹脂組成物および樹脂封止型半導体装置 - Google Patents

樹脂組成物および樹脂封止型半導体装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、樹脂組成物、およびこの樹脂組成物の硬化物により半導体素子を封止してなる樹脂封止型半導体装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、半導体素子の高集積化に伴って、素子の各種機能単位の微細化、および素子自体の大型化が急速に進んでいる。かかる半導体素子を封止するための樹脂組成物としては、樹脂主成分としての熱硬化性のエポキシ樹脂と、硬化剤成分としてのフェノール樹脂とを含有したエポキシ樹脂組成物が、従来から広く用いられている。
【0003】
例えば、エポキシ樹脂を封止樹脂として用いて、ASIC(Application Specific IC)と呼ばれるゲートアレイ、およびスタンダードセル方式LSIに代表される表面実装型パッケージ等が製造されており、これら半導体装置を基板に実装する際には、ベーパーフェイズリフロー、赤外線リフロー、およびハンダ浸漬等の熱工程が用いられる。この熱工程では、パッケージは、215〜260℃という高温にさらされるので、封止樹脂を透過してパッケージ内部に侵入した微量の水分が急激に気化し、封止樹脂にクラックが発生することがある。
【0004】
このクラックが封止樹脂の外部まで達すると、樹脂封止型半導体装置の耐湿信頼性が損なわれ、大きな問題となる。さらに、封止樹脂の膨れが生じることによりパッケージが変形するために、パッケージを基板に実装することが困難となるという現象も発生する。
【0005】
また、前述のようなパッケージを基板に実装する際には、樹脂封止された半導体素子の内部においても、クラックの発生等の問題が多く発生する。即ち、アルミニウムなどの金属からなる配線層のためのパッシベーション膜として使用されているPSG(リンケイ酸ガラス)やSiN(窒化ケイ素)にクラックが生じたり、金ボンディングワイヤーの断線が生じることがある。
【0006】
これらの問題を回避するために、特に大型パッケージを製造するための封止樹脂を中心として、以下に列挙するような要求が高まっている。
【0007】
1)封止樹脂が内部封入物に加える応力を小さくし、かつ、封止樹脂と半導体素子上のPSG、SiN、ポリイミド膜等の膜やリードフレームとの密着性を向上させること2)実装温度に対応した高温強度および吸湿高温強度等の耐熱性を封止樹脂に付与し、かつ、封止樹脂の吸湿量を低減させること以上の観点から、半導体封止用樹脂組成物の樹脂主成分として、例えば、PPS(ポリフェニレンスルフィド)樹脂、PPE(ポリフェニレンエーテル)樹脂、および、液晶ポリマー等のエンジニアリングプラスチックと呼ばれる耐熱性の熱可塑性樹脂を使用することが検討されている。しかしながら、これらの樹脂を溶融して成形するためには、200〜300℃と非常に高い温度に加熱しなければならず、さらに、その溶融粘度はエポキシ樹脂よりも高い。このため、これらの樹脂組成物は、エポキシ樹脂を含有する従来の封止用樹脂組成物と比べて、成形が困難であるという問題があった。
【0008】
従来のエポキシ樹脂を用いた半導体封止用樹脂組成物には、組成物の熱膨張率を低減させて耐熱衝撃性を付与するために、通常、約50重量部〜85重量部の無機充填剤が加えられている。しかしながら、前述の高耐熱性熱可塑性樹脂に、同程度の量の無機充填剤を加えて耐熱衝撃性の向上を図ろうとすると、樹脂の溶融粘度がさらに増加するので流動性が不十分となり、そのため、ワイヤー流れおよびベッド移動などが発生してしまう。分子量の低い樹脂を用いれば、溶融粘度が低減するので成形性は改善されるものの、一方で、樹脂の強度や耐熱性が損なわれるおそれがある。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、成形性および耐熱性に優れているとともに、吸水率の低い樹脂組成物を提供することにある。
【0010】
本発明の他の目的は、優れた耐熱性および耐熱衝撃性を有し、かつ、高い耐湿信頼性を有する樹脂封止型半導体装置を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明(請求項1)は、(a)(a)一般式Z −(ポリアリーレンポリエーテル鎖)−Z ′(式中、Z 及びZ ′はそれぞれプロパルギル基である1価の有機基である。)で表されるポリアリーレンポリエーテル、
(b)無機充填剤、および
(c)架橋可能な不飽和炭素結合を有する有機基を1分子中に1つ以上有する分子量5000以下の化合物
を含有し、前記(c)成分の分子量は前記(a)成分の分子量より低く、前記(a)成分中のアルカリ金属の含有量が50ppm以下であり、前記(a)成分中のハロゲンの含有量が500ppm以下であることを特徴とする樹脂組成物を提供する。
本発明(請求項2)は、上記樹脂組成物(請求項1)において、接着付与剤をさらに含有することを特徴とする。
本発明(請求項3)は、半導体素子及び前記半導体素子を封止する樹脂層を具備し、前記樹脂層は上記樹脂組成物(請求項1〜2)の硬化物からなることを特徴とする樹脂封止型半導体装置を提供する。
ポリアリーレンポリエーテルを用いた第1の態様に係る樹脂組成物は、(a)一般式Z−(ポリアリーレンポリエーテル)鎖−Z′(式中、ZおよびZ′はそれぞれ架橋可能な不飽和炭素結合を有する1価の有機基である。)で表わされるポリアリーレンポリエーテル、及び(b)無機充填剤を含有することを特徴とする。
【0012】
(a)成分であるポリアリーレンポリエーテルは、一般式Z−(O−Ar)−OZ′により表わされる。ここで、Arは、2価の芳香族基である。なお、互いにArの異なる複数種の繰り返し部分を有するものであってもよい。具体的には、下記一般式(1)〜(8)で表わされるポリアリーレンポリエーテルが挙げられる。これらの中では、耐燃焼性の観点から、繰り返し部分に脂肪族基を持たない下記一般式(1)、(6)、(7)、(8)により表わされるものが好ましい。
【0013】
【化1】
Figure 0003617725
なお、上記式中、Phはベンゼン環を表わし、nは正の整数である。nは1〜30であることが成形性の観点から好ましい。30を越えると溶融粘度が高くなり、成形性が困難になるおそれがある。
【0014】
(a)成分のポリアリーレンポリエーテルの分子量は、300〜50000が好ましく、500〜30000がより好ましく、1000〜15000が特に好ましい。これは、300未満だと硬化物が脆くなるおそれがあり、50000を越えると、溶融粘度が高くなり、成形性が困難になるおそれがあるからである。
【0015】
また、ポリアリーレンポリエーテル鎖部分は、置換または非置換とすることができ、具体的には、ハロゲン(例えば、塩素、臭素およびフッ素)、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、フェニル基等の不活性置換基を含有してもよい。架橋可能な不飽和結合を有する1価の有機基ZおよびZ′は、好ましくは、それぞれアルケニル基、アルキニル基またはアルキニルアリール基であり、より具体的には、ビニル基、アリル基、アクリル基、メタクリル基、スチリル基およびプロパルギル基等が挙げられる。
【0016】
以下に、(a)成分であるポリアリーレンポリエーテルの具体例を示す。
【0017】
【化2】
Figure 0003617725
一般式Z−(ポリアリーレンポリエーテル)鎖−Z′で表わされるポリアリーレンポリエーテルは、例えば、特公平1−42289号公報に記載されている方法で合成することができる。
【0018】
すなわち、まず、ビスフェノール化合物とアルカリ金属水酸化物等とを反応させて、ビスフェノールのアルカリ金属塩を得る。ビスフェノール化合物は特に限定されないが、好ましくは、ヒドロキノン、ビスフェノールA、4,4′−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4′−ジヒドロキシジフェニルメタン、4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、2,2−ビス(4−ヒドロキシジフェニル)ヘキサフルオロプロパン、4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルホン等が挙げられる。
【0019】
具体的には、これらのビスフェノール化合物を、N−メチルピロリドンや、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシドなどの溶媒と、トルエン、キシレン、ベンゼン、クロロベンゼンなど水と共沸する溶媒との混合物に溶解し、水酸化ナトリウムや、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物を添加し、例えば、約110℃〜約150℃の温度で、水と共沸剤を除去しながら約20〜約240分間加熱することにより、ビスフェノール化合物のアルカリ金属塩を得ることができる。なお、アルカリ金属水酸化物以外に、水素化ナトリウム等のアルカリ金属水素化物、金属ナトリウムなどとの反応により、ビスフェノール化合物のアルカリ金属塩を得ることもできる。
【0020】
次に、ジハロゲン化合物と、過剰量のビスフェノールのアルカリ金属塩とを反応させることによって、アルカリ金属塩末端基を有するポリアリーレンポリエーテルを得る。この際、ビスフェノールのアルカリ金属塩は、ジハロゲン化合物1モル当たり、好ましくは約1.02〜2.00モル、より好ましくは1.02〜1.50モル、更に好ましくは1.02〜1.20モルの化学量論上過剰量で反応させることがよい。ジハロゲン化合物としては、2価の活性化ハロ置換基を有する芳香族化合物を使用することができ、その代表例としては、4,4′−ジクロロジフェニルスルホン、4,4′−ジフルオロジフェニルスルホン、4,4′−ジクロロジフェニルジスルフィド、4,4′−ジブロモジフェニルエーテルなどが挙げられる。
【0021】
この反応を、例えば、約150℃〜170℃の高温で、系中に含まれる水を共沸剤とともに除去しながら約1〜約30時間行なうことによって、アルカリ金属塩末端を有するポリアリーレンポリエーテルが得られる。
【0022】
最後に、アルカリ金属塩となっている分子末端の水酸基に、架橋可能な不飽和炭素結合を有するハロゲン化合物などを反応させて、ポリマーの末端に架橋可能な不飽和炭素結合を導入する。次いで、溶液を濾過して塩を除去し、濾過された溶液を、水、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなどに注いでポリマーを析出させることによって、ポリアリーレンポリエーテルが得られる反応は、例えば室温〜約120℃で行なうことができ、好ましい温度範囲では、通常約1〜20時間で完了する。
【0023】
ここでの不飽和結合を有するハロゲン化合物としては、アリルクロライド、アリルブロミド、プロパルギルクロライド、プロパルギルブロミド、アクリル酸クロリド、メタクリル酸クロリド、クロロメチルジメチルビニルシラン、ビニルベンジルクロリド、および2−クロロエチルビニルエーテル等が挙げられる。
【0024】
あるいはハロゲン化合物の代わりに、末端の水酸基と無水マレイン酸、無水シトラコン酸、無水テトラヒドロフタル酸、メチル−5−ノルボルネン2,3−ジカルボン酸無水物、および5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物等の架橋可能な不飽和炭素結合を有する酸無水物などを反応させることによって、不飽和炭素結合を導入してもよい。
【0025】
第1の態様に係る樹脂組成物において、(a)成分の含有量は、樹脂組成物全体を100重量部とすると、約5重量部〜60重量部とすることが好ましい。5重量部未満では、本発明の効果を十分に発揮できないおそれがあり、一方、60重量部を越えると、硬化物の熱膨脹率が大きくなり、樹脂封止型半導体装置に適用した場合、十分な耐熱衝撃性が得られないおそれがある。
【0026】
第1の態様に係る樹脂組成物における(b)成分である無機充填剤としては、例えば、石英ガラス、結晶性シリカ、溶融シリカ、ジルコン、アルミナ、ケイ酸カルシウム、硫酸バリウム、マグサイト、クレー、カオリン、タルク、マイカ、ガラス繊維、セラミック繊維、炭化ケイ素、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、チタン白、炭酸カルシウム、および石コウ等が挙げられる。これらのうち、石英ガラス、結晶性シリカ、および溶融シリカが、高充填化が容易で、かつ吸水性の低下に有利である点で好ましい。なお、結晶性シリカおよび溶融シリカの形状は、破砕状シリカおよび球状シリカなどがあり、これらを適宜組み合わせて用いることができる。
【0027】
無機充填剤の配合割合は、樹脂組成物全体を100重量部とすると、40重量部〜95重量部であることが望ましい。40重量部未満では、硬化物の熱膨張率が大きくなり、樹脂封止型半導体装置に適用すると、十分な耐熱衝撃性が得られないおそれがあり、一方、95重量部を越えると組成物の流動性が低下し、成形時にワイヤ流れやベッド移動が発生する原因となるおそれがある。
【0028】
第1の態様に係る樹脂組成物においては、上述の成分に加えて、さらにマレイミド樹脂を配合することにより、樹脂の耐熱性、および素子との接着性を向上させることができる。マレイミド樹脂としては、具体的には、N,N′−フェニレンビスマレイミド、N,N′−ヘキサメチレンビスマレイミド、N,N′−ジフェニルメタンビスマレイミド、N,N′−オキシージ−p−フェニレンビスマレイミド、N,N′−4,4′−ベンゾフェノンビスマレイミド、N,N′−p−ジフェニルスルホンビスマレイミド、N,N′−(3,3′−ジメチル)メチレン−ジ−p−フェニレンビスマレイミド、ポリ(フェニルメチレン)ポリマレイミド、2,2−ビス(4−フェノキシフェニル)プロパン−N,N′−ビスマレイミド、ビス(4−フェノキシフェニル)スルホン−N,N′−ビスマレイミド、1,4−ビス(4−フェノキシ)ベンゼン−N,N′−ビスマレイミド、1,3−ビス(4−フェノキシ)ベンゼン−N,N′−ビスマレイミド、および1,3−ビス(3−フェノキシ)ベンゼン−N,N′−ビスマレイミド等が挙げられる。これらのマレイミド樹脂は単独で、または2種類以上を混合して使用することができる。
【0029】
なお、マレイミド樹脂は硬化剤を加えなくても加熱することによって架橋するため、(a)成分とマレイミド樹脂と無機充填剤とから樹脂組成物を調製することも可能である。しかしながら、硬化時間を短縮することができるので、硬化剤を加えることがより好ましい。
【0030】
マレイミド樹脂の硬化剤としては、フェノール樹脂を使用することができ、例えば、ノボラック型フェノール樹脂が挙げられる。さらに、アミノ基、アリル基、ビニル基、およびアクリル基等のマレイミド樹脂に対して反応性のある基を有するフェノール樹脂を使用することもできる。
【0031】
ノボラック型フェノール樹脂としては、1分子中に2個以上のフェノール性水酸基を有するものであれば任意の化合物を使用することができる。例えば、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、t−ブチルフェノールノボラック樹脂、ノニルフェノールノボラック樹脂、フェノールアラルキル樹脂、および、ジシクロペンタジエンフェノールノボラック樹脂などが使用される。以上のフェノール樹脂のうち、成形性および強度等の観点から、フェノールノボラック樹脂が特に好ましい。
【0032】
フェノールノボラック樹脂としては、具体的には、例えば、ショウノールBRG−555(昭和高分子、軟化点68℃、溶融粘度125℃で2.4ps)、ショウノールBRG−556(昭和高分子、軟化点80℃、溶融粘度150℃で1.8ps)、ショウノールBRG−557(昭和高分子、軟化点87℃、溶融粘度150℃で3.0ps)、ショウノールBRG−558(昭和高分子、軟化点97℃、溶融粘度150℃で6.2ps)、バーカムTD−2131(大日本インキ、軟化点80℃、溶融粘度150℃で3.3ps)、およびバーカムTD−2093(大日本インキ、軟化点100℃、溶融粘度150℃で30ps)等が挙げられる。
【0033】
また、特にアリル基を持つフェノール樹脂として、SH−140A(三菱油化)、SH−150A(三菱油化)、およびXPSF−4488(群栄化学)等が挙げられる。
【0034】
これらのフェノール樹脂の配合量は、第1の態様に係る樹脂組成物中に含まれるマレイミド樹脂の配合量を100重量部とした場合、10重量部以上50重量部以下であることが好ましい。この配合量が10重量部未満の場合には、樹脂組成物の硬化時間をそれほど短縮できず、逆に50重量部を越えると、樹脂組成物の硬化特性が不十分となって、かつ最終的に成形される硬化物の耐熱性が低下するおそれがある。
【0035】
また、第1の態様に係る樹脂組成物において、(a)成分と、マレイミド樹脂とフェノール樹脂の総量を100重量部とした場合、マレイミド樹脂とフェノール樹脂との合計量は、80重量部以下が望ましい。この理由は、これらの配合量が多すぎると、樹脂組成物の硬化物が脆くなるおそれがあるからである。
【0036】
さらに、第1の態様に係る樹脂組成物は、ポリアリーレンポリエーテルおよびマレイミド樹脂の硬化反応を促進させるための硬化触媒を含有してもよく、例えば、過酸化物およびアゾ化合物等を使用することができる。
【0037】
過酸化物としては、ジアリルパーオキサイド類、パーオキシエステル類、ジアシルパーオキサイド類、ハイドロパーオキサイド類、ケトンパーオキサイド類、およびパーオキシケタール類などが挙げられる。具体的には、ベンゾイルペルオキシド、パラクロロベンゾイルペルオキシド、2,4−ジクロロジベンゾイルペルオキシド、カプリリルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、アセチルペルオキシド、メチルエチルケトンペルオキシド、シクロヘキサノンペルオキシド、ビス(1−ヒドロキシシクロヘキシルペルオキシド)、ヒドロキシヘプチルペルオキシド、t−ブチルヒドロペルオシド、p−メンタンヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、2,5−ジメチルヘキシル−2,5−ジヒドロペルオキシド、ジ−t−ブチルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチルヘキシル−2,5−ジ(ペルオキシベンゾエート)、t−ブチルパーベンゾエート、t−ブチルパーアセテート、t−ブチルパーオクトエート、t−ブチルペルオキシイソブチレート、およびジ−t−ブチルジペルフタレート等が挙げられる。
【0038】
アゾ化合物としては、アゾビスイソブチロニトリル、2,2′−アゾビスプロパン、m,m′−アゾキソスチレンおよびヒドラゾンなどが挙げられる。
【0039】
また、硬化触媒として、例えば、HX3722(旭化成工業製)およびMY−25(味の素製)等の潜在性触媒等を使用することもできる。
【0040】
さらに、マレイミド樹脂を配合した場合は、塩基性触媒もマレイミド樹脂の硬化反応の促進に有効であり、有機ホスフィン化合物、イミダゾール化合物またはその誘導体、DBU(1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7)またはそのフェノール塩等を使用することもできる。
【0041】
DBUのフェノール塩としては、具体的にはSA−853(サンアプロ)等が挙げられ、有機ホスフィンの具体例としては、トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリ(p−メチルフェニル)ホスフィン、トリ(ノニルフェニル)ホスフィン、メチルジフェニルホスフィン、ジブチルフェニルホスフィン、トリシクロエキシルホスフィン、1,2−ビス(ジフェニルホスフィン)エタン、およびビス(ジフェニルホスフィン)メタン等が挙げられる。
【0042】
イミダゾール化合物の具体例としては、2−メチルイミダゾール、2,4−ジメチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、および2−ヘプタデシルイミダゾール等が挙げられる。
【0043】
前記樹脂組成物においては、上述のような硬化触媒の配合量は、(a)成分とマレイミド樹脂とフェノール樹脂との総量を100重量部とした場合、0.1重量部〜10重量部であることが望ましい。この配合量が、0.1重量部未満の場合には樹脂組成物の硬化が不十分となり、最終的に形成される硬化物、ひいては、樹脂封止型半導体装置等の電気的特性等が低下するおそれがある。一方、10重量部を超えると、最終的に形成される硬化物の耐熱性、耐湿性、および電気的特性が低下するおそれがある。硬化触媒の配合量は、(a)成分とマレイミド樹脂とフェノール樹脂との総量に対して、0.5〜5重量部であることがより好ましい。
【0044】
ポリアリーレンポリエーテルを用いた第2の態様に係る樹脂組成物は、(a)一般式Z−(ポリアリーレンポリエーテル)鎖−Z′(式中、ZおよびZ′はそれぞれエポキシ基を有する一価の有機基である。)で表わされるポリアリーレンポリエーテル、(b)硬化剤、及び(c)無機充填剤を含有することを特徴とする(a)成分であるポリアリーレンポリエーテルは、一般式Z−(O−Ar)−OZ′により表わすことが出来る。ここで、Arは2価の芳香族基である。なお、互いにArの異なる複数種の繰り返し部分を有するものであってもよい。具体的には、下記式(G)〜(L)で表わされるポリアリーレンポリエーテルが挙げられる。
【0045】
【化3】
Figure 0003617725
また、nは正の整数であり、1〜100であることが成形性の観点から好ましい。100を超えると溶融粘度が高くなり、成形が困難になるおそれがあるためである。
【0046】
第2の態様に係る樹脂組成物の(a)成分であるポリアリーレンポリエーテルの分子量は、500以上50000以下が好ましく、800以上30000以下がより好ましく、1000以上15000以下がさらに好ましい。これは、500未満だと硬化物が脆くなるおそれがあり、5000を越えると溶融粘度が高くなり、成形性が困難になるおそれがあるからである。
【0047】
また、ポリアリーレンポリエーテル鎖部分は、置換または非置換とすることができ、具体的には、ハロゲン(例えば、塩素、臭素およびフッ素)、炭素1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、フェニル基等の不活性置換基を含有してもよい。
【0048】
(a)成分であるポリアリーレンポリエーテルは、前述の第1の態様に係る樹脂組成物の(a)成分の合成について示したのと同様の操作によって、アルカリ金属塩末端を有するポリアリーレンポリエーテルを得た後、このポリアリーレンポリエーテルにアルカリ金属塩末端と当量、あるいは過剰のエピクロロヒドリンを加え、室温〜120℃で1時間から20時間撹拌することで、合成することが出来る。
【0049】
第2の態様に係る樹脂組成物において、(a)成分の含有量は、樹脂組成物の5重量%以上90重量%以下とすることが望ましい。5重量%未満では、硬化物が脆くなるおそれがあり、90重量%を超えると、硬化物の熱膨張率が大きくなり、樹脂封止型半導体装置に適用した場合、十分な耐熱衝撃性が得られなくなるおそれがある。また、耐燃焼性の観点から、前記式(G)、(J)、(K)、(L)により表わされるものが好ましい。
【0050】
(b)成分の硬化剤は、エポキシ樹脂の硬化剤として一般的に知られている化合物を用いることができる。例えば、アミン、酸無水物、フェノール類などである。具体的には、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ジエチルアミノプロピルアミン、N−アミノエチルピペラジン、ベンジルジメチルアミン、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、メタフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン、ポリアミド樹脂(アミン価200−350)、ジシアンジアミド、三フッ価ホウ素モノエチルアミン、メンタンジアミン、キシレンジアミン、ビスアミノプロピルテトラオキサスピロウンデカン付加物、エチルメチルイミダゾール等のアミン類、無水フタル酸、無水マレイン酸、無水ドデシルコハク酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水メチルナジック酸、無水ピロメリット酸、無水ベンゾフェノンテトラカルボン酸、無水ジクロロコハク酸、無水クロレンディック酸等の酸無水物、ノボラック型フェノール樹脂などのフェノール樹脂が挙げられる。
【0051】
ノボラック型フェノール樹脂としては、1分子中に2個以上のフェノール性水酸基を有するものであれば任意の化合物を使用することができる。例えば、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、t−ブチルフェノールノボラック樹脂、ノニルフェノールノボラック樹脂、フェノールアラルキル樹脂、およびジシクロペンタジエンフェノールノボラック樹脂などが使用される。以上のフェノール樹脂のうち、成形性および強度の観点から、フェノールノボラック樹脂が特に好ましい。
【0052】
フェノールノボラック樹脂としては、具体的には、例えばショウノールBRG−555(昭和高分子、軟化点68℃、溶融粘度125℃で2.4ps)、ショウノールBRG−556(昭和高分子、軟化点80℃、溶融粘度150℃で1.8ps)、ショウノールBRG−558(昭和高分子、軟化点97℃、溶融粘度150℃で6.2ps)、バーカムTD−2131(大日本インキ、軟化点80℃、溶融粘度150℃で3.3ps)、およびバーカムTD−2093(大日本インキ、軟化点100℃、溶融粘度150℃で30ps)、SH−140A(三菱油化)、SH−150A(三菱油化)、およびXPSF−4488(群栄化学)等が挙げられる。
【0053】
更に、第2の態様に係る樹脂組成物では、後述する一般式Z−(ポリアリーレンポリエーテル鎖−Z′(式中、Z及びZ′はそれぞれ水酸基又はカルボキシル基を有する1価の有機基である。)で表される、両末端に水酸基又はカルボキシル基を有するポリアリーレンポリエーテルが、機械強度、耐熱性、耐燃焼性の観点から、硬化剤として特に好ましい。
【0054】
これらの硬化剤は、(a)成分100重量部に対して、5〜100重量部配合されることが望ましい。5重量部未満では十分な耐熱性が得られない、あるいは、溶融粘度が高くなって成形性が悪くなるおそれがあり、100重量部を超えると吸水率が高くなり、成形品の信頼性が低下するおそれがある。
【0055】
(c)成分の無機充填剤としては、上述の第1の態様において例示したものを用いることが出来る。無機充填剤の配合割合は、樹脂組成物全体の10〜95重量%であることが望ましい。より好ましくは、40〜90重量%である。40重量%未満では、硬化物の熱膨張率が大きくなり、樹脂封止型半導体装置に適用すると、耐熱衝撃性が十分でなくなり、90重量%を越えると組成物の流動性が低下し、成形時にワイヤ流れやベッド移動が発生する原因となる。
【0056】
第2の態様に係る樹脂組成物では、硬化触媒として、塩基性化合物、有機ホスフィン化合物、イミダゾール化合物、またはその誘導体、DBU(1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7)または、その塩等が必要に応じて使用される。これらは、(a)成分と硬化剤との硬化反応を促進させる。塩基性化合物の例としては、ベンジルジメチルアミン、α−メチルベンジルジメチルアミン、ジメチルアミノメチルフェノール、トリスジメチルアミノメチルフェノール等の第3級アミンが挙げられ、これらの塩や錯化合物を使用することもできる。
【0057】
有機ホスフィンの具体例としては、トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリ(p−メチルフェニル)ホスフィン、トリ(ノニルフェニル)ホスフィン、メチルジフェニルホスフィン、ジブチルフェニルホスフィン、トリシクロエキシルホスフィン、1,2−ビス(ジフェニルホスフィン)エタン、ビス(ジフェニルホスフィン)メタン等が挙げられる。
【0058】
イミダゾール化合物の具体例としては、2−メチルイミダゾール、2,4−ジメチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール等が挙げられる。
【0059】
DBUのフェノール塩の具体例としては、SA−853(サンアプロ)等が挙げられる。
【0060】
また、潜在性触媒、例えば、ノバキュアHX−3722(旭化成工業)、MY−25(味の素)などを使用することもできる。
【0061】
第2の態様に係る樹脂組成物において、上述したような硬化触媒の配合量は、(a)成分と硬化剤の総量100重量部に対して、0.1〜10重量部であることが望ましい。この配合量が、0.1重量部未満であれば、樹脂の硬化が不十分となり、最終的に形成される硬化物、ひいては、樹脂封止型半導体装置等の耐熱性等が低下するおそれがある。一方、10重量部を超えると、最終的に形成される硬化物の耐熱性、耐湿性、電気的特性が低下する恐れがある。より好ましい硬化触媒の配合量は、(a)成分と硬化剤の総量100重量部に対して、0.5〜5重量部である。
【0062】
ポリアリーレンポリエーテルを用いた第3の態様に係る樹脂組成物は、(a)分子中に2つ以上のエポキシ基を有する化合物、(b)一般式Z−(ポリアリーレンポリエーテル鎖−Z′(式中、Z及びZ′はそれぞれ水酸基又はカルボキシル基を有する1価の有機基である。)で表されるポリアリーレンポリエーテル、及び(c)無機充填剤を含有することを特徴とする。
【0063】
(a)成分であるエポキシ基を持つ化合物としては、一般に知られているエポキシ化合物を使用することができる。エポキシ化合物としては、分子中に2個以上のエポキシ基を有するものであればいかなるものであってもよいが、具体的には、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ナフトールタイプのノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAのノボラック型エポキシ樹脂、フェノールまたはアルキルフェノール類とヒドロキシベンズアルデヒドとの縮合物をエポキシ化して得られるエポキシ樹脂、トリス(ヒドロキシフェニル)アルカンのエポキシ化物、テトラ(ヒドロキシフェニル)アルカンのエポキシ化物、2,2′,4,4′−テトラヒドロキシベンゾフェノンのテトラグリシジルエーテル、p−アミノフェノールのトリグリシジルエーテル、ポリアリルグリシジルエーテル、1,3,5−トリグリシジルエーテルベンゼン、2,2′,4,4′−テトラグリシドキシビフェニル、4,4′−ビス(2,3−エポキシプロポキシ)3,3′,5,5′−テトラメチルビフェニルのエポキシ化物、各種ハロゲン化エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0064】
(b)成分であるポリアリーレンポリエーテルは、一般式H−(O−Ar)n−OH、又はZ−(O−Ar)−OZ′により表わさせる。ここで、Arは2価の芳香族基である。なお、互いにArの異なる複数種の繰り返し部分を有するものであってもよい。具体的には、下記式(M)〜(R)により表わされる化合物、及びこれらの化合物の水酸基をフタル酸エステル、ドデシルコハク酸エステル、ヘキサヒドロフタル酸エステル、メチルナジック酸エステル、ジクロロコハク酸エステルで置換した化合物が挙げられる。
【0065】
【化4】
Figure 0003617725
nは正の整数であり、1〜100であることが成形性の観点から好ましい。100を超えると溶融粘度が高くなり、成形が困難になるおそれがあるためである。これらのうち、耐燃焼性の観点から、(M)、(P)、(Q)、(R)が特に好適である。
【0066】
第3の態様に係る樹脂組成物の(b)成分である、両末端に水酸基を有するポリアリーレンポリエーテルは、(a)成分であるエポキシ化合物との組合せで一方が樹脂主成分、他方が硬化剤成分として作用する。その分子量は、500以上50000以下が好ましく、800以上30000以下がより好ましく、1000以上15000以下がさらに好ましい。これは、500未満だと硬化物が脆くなるおそれがあり、50000を越えると溶融粘度が高くなり、成形性が困難になるおそれがあるからである。
【0067】
また、ポリアリーレンポリエーテル鎖部分は、置換または非置換とすることができ、具体的には、ハロゲン(例えば、塩素、臭素およびフッ素)、炭素1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、フェニル基等の不活性置換基を含有してもよい。
【0068】
(b)成分である両末端に水酸基を有するポリアリーレンポリエーテルは、前述の第1の態様に係る樹脂組成物の(a)成分の合成について示したのと同様の操作によって、末端にアルカリ金属塩を有するポリアリーレンポリエーテルを得たのち、カルボン酸などのフェノールよりも解離定数の大きな酸を加えてフェノールを再生することにより合成することができる。
【0069】
一方、両末端にカルボキシル基を有するポリアリーレンポリエーテルの場合は、末端にアルカリ金属塩を有するポリアリーレンポリエーテルを得た後、このポリアリーレンポリエーテルにアルカリ金属塩末端と当量あるいは過剰の酸無水物を加え、室温〜120℃で1時間から20時間撹拌することで合成することが出来る。なお、ここでの酸無水物としては、無水フタル酸、無水ドデシルコハク酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水メチルナジック酸、無水ジクロロコハク酸等が例示される。
【0070】
このような(b)成分は、(a)成分100重量部に対して、5〜500重量部が加えられることが望ましい。5重量部未満では十分な耐熱性が得られない、あるいは、溶融粘度が高くなって成形性が悪くなるおそれがあり、500重量部を超えると吸水率が高くなり、成形品の信頼性が低下するおそれがある。
【0071】
(c)成分である無機充填剤としては、上述した第1の態様で挙げた化合物を使用することができる。無機充填剤の配合割合は、樹脂組成物全体の10〜95重量%であることが望ましい。より好ましくは、40〜90重量%である。10重量%未満では、硬化物の熱膨張率が大きくなり、樹脂封止型半導体装置に適用すると、耐熱衝撃性が十分でなくなり、95重量%を越えると組成物の流動性が低下し、成形時にワイヤ流れやベッド移動が発生する原因となる。
【0072】
また、ここでは(a)成分であるエポキシ化合物の硬化剤として、(b)成分に加えて、さらに前述の第2の態様において用いた硬化剤、すなわちアミン、酸無水物、フェノール類などを併用することもできる。
【0073】
本発明であり、第4の態様に係る樹脂組成物は、(a)一般式Z−(ポリアリーレンポリエーテル)鎖−Z(式中、Z 及びZ ′はそれぞれプロパルギル基を有する1価の有機基である。)で表わされるポリアリーレンポリエーテル、(b)無機充填剤、及び(c)架橋可能な不飽和炭素結合を有する有機基を1分子中に1つ以上有する分子量5000以下の化合物を含有し、前記(c)成分の分子量は前記(a)成分の分子量より低く、前記(a)成分中のアルカリ金属の含有量が50ppm以下であり、前記(a)成分中のハロゲンの含有量が500ppm以下であることを特徴とする
【0074】
(a)成分であるポリアリーレンポリエーテルは、式Z−(O−Ar)−Z′により表わされる。ここで、Arは2価の芳香族基である。具体的には、第1の態様で挙げた式(E)により表わされるものが挙げられる。その合成法等は、第1の態様において説明したのと同様である。
【0075】
本発明の第4の態様に係る樹脂組成物における(b)成分である無機充填剤は、第1の態様において説明したものと同様のものを用いることが出来る。無機充填剤の配合割合は、樹脂組成物全体の10〜95重量%であることが望ましい。より好ましくは、40〜90重量%である。10重量%未満では、硬化物の熱膨張率が大きくなり、樹脂封止型半導体装置に適用すると、耐熱衝撃性が十分でなくなり、95重量%を越えると組成物の流動性が低下し、成形時にワイヤ流れやベッド移動が発生する原因となる。
【0076】
本発明の第4の態様に係る樹脂組成物における(c)成分は、架橋可能な不飽和炭素結合を有する有機基を1分子中に1つ以上有する分子量5000以下の化合物であり、その具体例としては、ジエチレングリコールジアリルエーテル、N,N′−メチレンビスアクリルアミド、クロレンド酸ジアリル、ヘキサヒドロフタル酸ジアリル、トリメリット酸トリアリル、4−アリル−2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、ジアリルイソフタレート、ジアリルフタレート、ジビニルベンゼン、スチレン、アリルベンゼン、ジビニルスルホン、アリルベンゼンカルボキシレート、4−ビニルビフェニル、トリアリル−1,3,5−ベンゼントリカルボキシレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、ノニルフェノキシエチルアクリレート、テトラヒドロフルフリルオキシエチルクリレート、テトラヒドロフルフリルオキシヘキサノリドアクリレート、1,3−ジオキサンアルコールのε−カプロラクトン付加物アクリレート、1,3−ジオキソランアクリレート、ヘキサンジオールアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールアジペートのジアクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオベンチルグリコールε−カプロラクトン付加物のジアクリレート、2(2−ヒドロキシ−1,1−ジメチルエチル)−5−ヒドロキシメチル−5−エチル−1,3−ジオキサンジアクリレート、トリシクロデカンジメチロールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールのジグリシジルエーテルのジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、プロピオン酸ジペンタエリスリトールトリアクリレート、プロピオン酸ジペンタエリスリトールのテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、プロピオン酸ジペンタエリスリトールのペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールジヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールジヘキサアクリレートのε−カプロラクトン付加物、さらには第1の態様に係る樹脂組成物における添加成分として例示のマレイミド樹脂などが挙げられる。また、上述の(a)成分のうち、特に分子量5000以下で、好ましくは溶融温度が200℃以下の化合物を用いることもできる。
【0077】
本発明の第4の態様に係る樹脂組成物においては、(a)成分の溶融粘度が高い場合、(a)成分と構造が類似し、(a)成分よりも分子量の低い化合物を添加することで、硬化物の耐熱性をさほど低下させずに成形性を改善することが出来る。
【0078】
なお、(c)成分としては、架橋可能な不飽和炭素結合を分子中に2つ以上持つものの方が、分子中に1つしか持たないものよりも、硬化物における高い耐熱性を維持するうえで有利である。また、(c)成分の溶融温度が高すぎると、樹脂組成物の溶融粘度を低減して成形性を改善することが困難となるため、溶融温度が200℃以下であることが好ましい。
【0079】
(c)成分の配合割合は、(a)成分を100重量部としたときに、2重量部〜100重量部であることが好ましい。2重量部未満では、溶融粘度が高く成形性に劣るおそれがあり、100重量部を越えると硬化物が脆くなるおそれがある。
【0080】
なお、第4の態様に係る樹脂組成物においても、第1の態様で用いたような硬化触媒を用いることが出来る。
【0081】
ポリアリーレンポリエーテルを用いた第5の態様に係る樹脂組成物は、(a)主鎖にシロキサン結合を有し、かつ末端に熱架橋する有機基を有するポリアリーレンポリエーテル、及び(b)無機充填剤を含有することを特徴とする。
【0082】
主鎖にシロキサン結合を導入することにより、ポリマーの溶融粘度を下げることができ、それによって成形性の良好な樹脂組成物を得ることができる。また、シロキサン結合は柔軟性を有し、応力が緩和されるため、耐熱衝撃性も改善される。シロキサン結合を導入することにより、低吸水率、高耐熱といったポリアリーレンポリエーテルの性質を保ったまま、成形性や耐熱衝撃性を向上させることが本態様の目的である。
【0083】
第5の態様に係る樹脂組成物の(a)成分としては、次の一般式(9)〜(11)で表される化合物を用いることができる。
【0084】
−[−O−R−Si(R)(R)−O−Si(R)(R)−R−O−Ar(−O−Ar−O−Ar−O−Ar−O−Z′……(9)
−[−O−Ar−O−R−Si(R)(R)−O−Si(R)(R)−R6](−O−Ar−O−Ar−O−Ar−O−Z′……(10)
−[−O−Ar−(O−Si(R)(R))−O−Ar−O−Ar(−O−Ar−O−Ar−)−O−Ar−O−Z′……(11)
上記式(9)〜(11)において、ZおよびZ′はそれぞれ架橋可能な不飽和炭素結合を有する1価の有機基、Ar〜Arはそれぞれ二価の芳香族基、−R−Si(R)(R)−O−Si(R)(R)−R−、R〜Rは一価の有機基、RおよびRは二価の有機基、mおよびpは正の数、nは0または正の数を表わす。
【0085】
なお、ZおよびZ′としては、具体的にはアルケニル基、アルキニル基、シクロアルケニル基が挙げられ、さらに具体的には、アリル、ビニル、プロペニル、プロパルギル、エチニル、アクリル、メタクリルなどが挙げられる。さらに、グリシジルエーテルなどエポキシ基を持つ一価の有機基も挙げられる。
【0086】
Ar〜Arとしては、具体的には下記式に示す構造等が挙げられる。
【0087】
【化5】
Figure 0003617725
〜Rは、具体的には炭素数1〜10のアルキル基、フェニル基、ナフチル基等を表し、RおよびRは、具体的には炭素数1〜6のアルキル基、フェニレン、ナフチル等を表す。
【0088】
m,pは正の数、nは0または正の数を表すが、m+nは1以上、50以下が成形性の観点から好ましい。
【0089】
第5の態様に係る樹脂組成物の(a)成分である一般式(9)〜(11)で表されるポリアリーレンポリエーテルの分子量は、500以上50000以下が好ましく、800以上30000以下がより好ましく、1000以上15000以下がさらに好ましい。
【0090】
前記一般式(9)で表されるポリアリーレンポリエーテルは、例えば特公平1−42289号公報に記載された方法に準じて合成することができる。まず、ビスフェノール化合物、およびシロキサン結合を有するジアルコール化合物をアルカリ金属水酸化物等と反応させて、ビスフェノール化合物およびジアルコール化合物のアルカリ金属塩を得る。
【0091】
ビスフェノール化合物としては、特に限定されないが、好ましくは、ヒドロキノン、ビスフェノールA、4,4′−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4′−ジヒドロキシジフェニルメタル、4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、2,2−ビス(4−ヒドロキシジフェニル)ヘキサフルオロプロパン、4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルホン等が挙げられる。シロキサン結合を持つジアルコール化合物としては、1,3−ビス(3−ヒドロキシプロピル)1,1,3,3−テトラメチルジシロキサンが挙げられる。
【0092】
これらのビスフェノール化合物およびジアルコール化合物を、N−メチルピロリドンや、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシドなどの溶媒と、トルエン、キシレン、ベンゼン、クロロベンゼンなど水と共沸する溶媒との混合物に溶解し、水酸化ナトリウムや、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物を添加し、例えば、約110℃〜約150℃の温度で、水と共沸剤を除去しながら約20〜240分間加熱することにより、ビスフェノール化合物およびジアルコール化合物のアルカリ金属塩を得ることができる。
【0093】
アルカリ金属水酸化物以外に、水素化ナトリウム等のアルカリ金属水素化物、金属ナトリウムなどとの反応により、ビスフェノール化合物およびジアルコール化合物のアルカリ金属塩を得ることもできる。
【0094】
次に、前記のアルカリ金属塩の反応溶液にジハロゲン化合物を加える。アルカリ金属塩を、ジハロゲン化物よりも化学量論上過剰量で反応させることにより、アルカリ金属末端基を有するポリアリーレンポリエーテルが得られる。この反応を、例えば、約150℃〜約170℃で、系中に含まれる水を前記共沸剤とともに除去しながら、約1〜約30時間行うことで、アルカリ金属塩末端を有し、かつシロキサン結合を主鎖に有するポリアリーレンポリエーテルが得られる。
【0095】
反応させるビスフェノール化合物のアルカリ金属塩とシロキサン結合を有するジアルコールの金属塩との総和は、ジハロゲン化合物1モルあたり、1.02〜2.00モルの割合が好ましい。ジハロゲン化合物としては、2価の活性化ハロ置換基を有する芳香族化合物を使用することができ、たとえば、4,4′−ジクロロジフェニルスルホン、4,4′−ジフルオロジフェニルスルホン、4,4′−ジクロロジフェニルジスルフィド、4,4′−ジクロロベンゾフェノン、4,4′−ジブロモジフェニルエーテルなどが挙げられる。
【0096】
次いで、アルカリ金属塩となっている分子末端の水酸基に、架橋基を有するハロゲン化合物などを反応させて架橋基を導入する。架橋基を有するハロゲン化合物は、アルカリ金属末端基を有するポリアリーレンポリエーテル1モル当たり、2モル反応し得るが、約2〜50モル%の化学量論上過剰量で添加することが好ましい。また反応は、たとえば、室温〜約120℃で行うことができ、好ましい温度範囲では、通常1〜20時間で完了する。
【0097】
架橋基を有するハロゲン化合物としては、アリルクロリド、アリルブロミド、プロパルギルクロリド、プロパルギルブロミド、ビニルベンジルクロリド、アクリル酸クロリド、メタクリル酸クロリド、クロロぎ酸アリル、2−クロロエチルビニルエーテル、エピクロロヒドリンなどが挙げられる。
【0098】
架橋基を有するハロゲン化合物に代えてアルカリ金属塩となっている分子末端の水酸基と無水マレイン酸、無水シトラコン酸、無水テトラフタル酸、3,6−エンドメチレンテトラヒドロフタル酸無水物等の炭素−炭素不飽和基を有する酸無水物などを反応させることによって、分子末端に架橋基を導入することもできる。
【0099】
最後に濾過して塩を除去し、次いで濾液を水、エタノール、メタノール、ヘキサンなどに注ぎ、ポリマーを析出させ、これを濾過によって集め、乾燥させることにより、目的のポリマーが得られる。
【0100】
第5の態様に係る樹脂組成物の(a)成分のうち、一般式(10)で表される化合物も、一般式(9)の化合物と同様の方法で合成することができる。まず、ビスフェノール化合物とアルカリ金属水酸化物等とを反応させて、ビスフェノール化合物のアルカリ金属塩を得る。次に、前記のアルカリ金属塩の反応溶液に2価の活性化ハロ置換基を有する芳香族化合物(ジハロゲン化合物)、およびシロキサン結合を有するジハロゲン化合物を加える。アルカリ金属塩を、ジハロゲン化物よりも化学量論上過剰量で反応させることにより、アルカリ金属末端基を有するポリアリーレンポリエーテルが得られる。
【0101】
ビスフェノール化合物、ジハロゲン化合物は、一般式(9)で表される化合物の合成で用いられる化合物と同じものを使用することでき、溶媒、加熱時間、温度等の反応条件も同様にして合成できる。シロキサン結合を有するジハロゲン化合物としては、1,3−ビス(3−クロロプロピル)1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,3−ビス(クロロメチル)1,1,3,3−テトラメチルジシロキサンなどを使用することができる。ビスフェノール化合物のアルカリ金属塩は、ジハロゲン化合物とシロキサン結合を有するジハロゲン化合物の総和を1モルとした場合、1.02〜2.00モルの割合で反応させることが好ましい。
【0102】
次いで、アルカリ金属塩となっている分子末端の水酸基に、前述の架橋基を有するハロゲン化合物、炭素−炭素不飽和結合を有する酸無水物などを反応させて架橋基を導入し、一般式(10)で表される化合物が得られる。反応時間、温度など、一般式(9)で表される化合物の合成について述べたのと同様の条件で架橋基を導入することができる。
【0103】
一般式(11)で表されるポリマーの合成では、まずビスフェノール化合物とアルカリ金属水酸化物等と反応させて、ビスフェノール化合物のアルカリ金属塩を得る。トルエンなどとの共沸により水を十分に除去した後、ビスフェノール化合物のアルカリ金属塩に該アルカリ金属塩よりも化学量論上小量のジクロロシランを反応させることにより、シロキサン結合を持つビスフェノール化合物の金属塩が得られる。
【0104】
ジクロロシランの例としては、ジメチルジクロロシラン、メチルエチルジクロロシラン、メチルエチルジクロロシラン、メチルプロピルジクロロシラン、ジエチルジクロロシラン、エトキシメチルジクロロシラン、ジエトキシジクロロシラン、ブチルメチルジクロロシラン、メチルペンチルジクロロシラン、メチルフェニルジクロロシラン、シクロヘキシルメチルジクロロシラン、n−ヘキシルメチルジクロロシラン、ヘプチルメチルジクロロシラン、メチルオクチルジクロロシラン、ジフェニルジクロロシラン、ジヘキシルジクロロシラン、ドデシルメチルジクロロシラン、ドコシルメチルジクロロシラン、1,2−ビス(ジメチルジクロロシリル)エタン、ビス(ジメチルジクロロシリル)メタン、1,4−ビス(ジメチルクロロシリル)ベンゼン、l,1,3,3,5,5−ヘキサメチル−1,5−ジクロロトリシロキサン、1,7−ジクロロオクタメチルテトラシロキサンなどのアルキルジクロロシランやフェニルジクロロシランを使用することができる。また、アリルフェニルジクロロシラン、2−(4−クロロヘキセニルエチル)メチルジクロロシラン、ジアリルジクロロシラン、フェニルビニルジクロロシランなどの炭素−炭素不飽和基を持つジクロロシランを使用することも可能である。
【0105】
反応は、たとえば、室温〜約120℃で行うことができ、好ましい温度範囲では、通常1〜20時間で完了する。
【0106】
次に、前記アルカリ金属塩の反応溶液に2価の活性化ハロ置換基を有する芳香族化合物(ジハロゲン化合物)を加える。前述のシロキサン結合を有するビスフェノール化合物のアルカリ金属塩を、ジハロゲン化物よりも化学量論上過剰量で反応させることにより、アルカリ金属末端基をポリアリーレンポリエーテルが得られる。ビスフェノール化合物、ジハロゲン化合物は、一般式(9)で表される化合物の合成で用いられる化合物と同じものを使用することができ、溶媒、加熱時間、温度等の反応条件も同様にして合成できる。
【0107】
ビスフェノール化合物のアルカリ金属塩は、ジハロゲン化合物1モル当たり、1.02〜2.00モルの割合で反応させることが好ましい。1.02モル未満では、末端に架橋基に導入できなくなるおそれがあり、2.00を越えると、ポリマーが脆くなるおそれがある。
【0108】
次いで、アルカリ金属塩となっている分子末端の水酸基に、前述の架橋基を有するハロゲン化合物、炭素−炭素不飽和結合を有する酸無水物などを反応させて架橋基を導入し、一般式(11)で表される化合物が得られる。反応時間、温度など、一般式(1)で表される化合物の合成について述べたのと同様の条件で架橋基を導入することができる。
【0109】
一般式(9)で表されるポリマーの合成では、反応に用いられるシロキサン結合を持つジアルコールのモル数をa、ビスフェノールのモル数bとすると、b/(a+b)が0〜0.99の範囲が好ましく、0.50〜0.95の範囲がより好ましい。0.99を越えると耐熱衝撃性が低下するおそれがある。
【0110】
一般式(10)で表されるポリマーの合成では、反応に用いられるシロキサン結合を持つジハロゲン化合物のモル数をa、2価の活性化ハロ置換基を有する芳香族化合物のモル数bとすると、b/(a+b)が0.50〜0.99の範囲が好ましく、0.50〜0.95の範囲がより好ましい。0.99を越えると耐熱衝撃性が低下するおそれがある。
【0111】
一般式(11)で表されるポリマーの合成では、反応させるジクロロシランのモル数をa、ビスフェノールのモル数bとすると、b/(a+b)が0.50〜0.99の範囲が好ましい。0.50以下では、反応中にゲル化するおそれがあり、0.99を越えると耐熱衝撃性が低下するおそれがある。
【0112】
これらの値を変えることで、樹脂組成物の用途に応じた溶媒粘度や応力を持つポリマーが得られる。
【0113】
前述の反応のうち、ビスフェノールのアルカリ金属塩およびシロキサン結合を有するジアルコールのアルカリ金属塩とジハロゲン化合物との反応、アルカリ金属末端を有するポリアリーレンポリエーテルと架橋基を有するハロゲン化合物の反応等は脱塩反応であり、不純物としてアルカリ金属イオンや、ハロゲンイオンが生成物中に混入するおそれがある。また、未反応のハロゲン化アルキルや、ハロゲン化アリールが残留する可能性がある。これらのうち、塩化アルキルは加水分解により塩素イオンを生成しやすく、アルミ配線を腐食させたり、耐湿信頼性を損なったりする原因となり得る。
【0114】
合成されたポリアリーレンポリエーテル中に不純物として含有されるアルカリ金属の濃度は、50ppm以下であることが好ましく、ハロゲン化合物の濃度は、500ppm以下であることが好ましい。アルカリ金属の濃度、およびハロゲン化合物の濃度は、より好ましくは、それぞれ20ppm以下および300ppm以下であり、さらに好ましくは、それぞれ5ppm以下および100ppm以下である。
【0115】
従って、50ppmを越えるアルカリ金属および500ppmを越えるハロゲン化合物がポリマー中に含有される場合には、以下に説明するような方法によって含有量を減少させることが好ましい。
【0116】
具体的には、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフランなど水溶性の極性溶媒にポリマーを溶解させた後、大量の水、または蓚酸、酢酸等の有機酸の希薄水溶液に滴下し、析出したポリマーを濾過して集める方法が効果的である。また、ジクロロメタンなど水と混合しない有機溶媒に樹脂を溶解し、水または有機酸の希薄水溶液を加えて振とうした後、静置し、有機溶媒と水層が分離した後、有機溶媒層を集める操作によっても不純物が除去される。これらの操作は、アルカリ金属塩やハロゲン不純物の濃度が、許容範囲に低下するまで繰り返される。
【0117】
第5の態様に係る樹脂組成物の(a)成分の具体例を下記に示す。
【0118】
【化6】
Figure 0003617725
【化7】
Figure 0003617725
【化8】
Figure 0003617725
【化9】
Figure 0003617725
本発明の第5の態様に係る樹脂組成物において、(a)成分の含有量は、樹脂組成物全体を100重量部とすると、約5重量部以上60重量部以下とすることが望ましい。5重量部未満では、樹脂が脆くなるおそれがあり、60重量部を超えると、硬化物の熱膨張率が大きくなり、十分な耐熱衝撃性が得られなくなるおそれがある。
【0119】
(b)成分である無機充填剤としては、上述した第1の態様で挙げた化合物を使用することができる。無機充填剤の配合割合は、樹脂組成物全体の40〜95重量%であることが望ましい。40重量%未満では、硬化物の熱膨張率が大きくなり、樹脂封止型半導体装置に適用すると、耐熱衝撃性が十分でなくなり、95重量%を越えると組成物の流動性が低下し、成形時にワイヤ流れやベッド移動が発生する原因となる。
【0120】
第5の態様に係る樹脂組成物においては、上述の成分に加えて、さらにマレイミド樹脂を配合することにより、樹脂の耐熱性、および素子との接着性を向上させることができる。マレイミド樹脂としては、上述した第1の態様で挙げた化合物を使用することができる。
【0121】
また、溶融粘度を下げ、成形性を更に向上させる目的で、上述の第4の態様の(c)成分を反応性希釈剤として添加することも出来る。
【0122】
上述のマレイミド樹脂及び反応性希釈剤の配合割合は、(a)成分100重量部に対し、50重量部以下であることが好ましい。50重量部を越えると、硬化物が脆くなるおそれがある。
【0123】
(a)成分の末端基がエポキシ基である場合、硬化剤が必要である。硬化剤としては、第2の態様で用いているような、エポキシ樹脂の硬化剤として一般に知られている化合物を用いることが出来る。硬化剤は、(a)成分100重量部に対して、1〜50重量部配合されることが望ましい。1重量部未満では硬化が不十分で、耐熱性が低下するおそれがあり、50重量部を超えると吸水率が高くなり、成形品の信頼性が低下するおそれがある。
【0124】
第5の態様に係る(a)成分の末端架橋基が炭素−炭素不飽和結合を有する場合、(a)成分と硬化剤との反応を促進させるための硬化触媒として、第1の態様で用いているような過酸化物及びアゾ化合物、第1及び第2の態様で用いているような塩基性化合物、有機ホスフィン化合物、イミダゾール化合物、またはその誘導体、DBU(1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7)または、その塩等を必要に応じて使用することが出来る。また、潜在性触媒、例えば、ノバキュアHX−3722(旭化成工業)、MY−25(味の素)などを使用することもできる。
【0125】
第5の態様に係る樹脂組成物において、上述したような硬化触媒の配合量は、(a)成分と硬化剤の総量100重量部に対して、0.1〜10重量部であることが望ましい。この配合量が、0.1重量部未満であれば、樹脂の硬化が不十分となり、最終的に形成される硬化物、ひいては、樹脂封止型半導体装置等の耐熱性等が低下するおそれがある。一方、10重量部を超えると、最終的に形成される硬化物の耐湿性、電気的特性が低下する恐れがある。
【0126】
更に、以上説明した第1〜第5の態様に係る樹脂組成物に対し、素子との接着性を向上させる目的で、接着付与剤を使用することができる。接着付与剤として、エポキシ樹脂、アミノ樹脂、ポリウレタン樹脂、不飽和ポリエステルなどの熱硬化性樹脂、イソシアネート化合物、ゴム、シラン化合物、金属キレート化合物などを使用することができる。
【0127】
これらのうち、金属キレート化合物は、素子との接着性を向上させるとともに、樹脂の耐水性を向上させる。この様な、金属キレート化合物としては、Zrキレート、Tiキレート、Alキレート等が挙げられる。Zrキレートの例としては、テトラキスアセチルアセトナトジルコニウム、モノブトキシトリスアセチルアセトナトジルコニウム、ジブトキシビスアセチルアセトナトジルコニウム、トリブトキシアセチルアセトナトジルコニウム、テトラキスエチルアセチルアセテートジルコニウム、ブトキシトリスエチルアセチルアセテートジルコニウム、トリブトキシモノエチルアセチルアセテートジルコニウム、テトラキスエチルラクテートジルコニウム、ジブトキシビスエチルラクテートジルコニウム、ビスアセチルアセトナトビスエチルアセチルアセトナトジルコニウム、モノアセチルアセトナトトリスエチルアセチルアセトナトジルコニウム、モノアセチルアセトナトビスエチルアセチルアセトナトジルコニウム、ビスアセチルアセトナトビスエチルラクトナトジルコニウム等が挙げられる。Tiキレート、Alキレートとしては、β−ジケトン、ヒドロキシカルボン酸、ケトエステル、ケトアルコール、グリコールなど配位子を有する化合物が挙げられる。
【0128】
また、接着付与剤としてのエポキシ樹脂としては、分子中にエポキシ基を有する任意のエポキシ樹脂を使用することができる。具体的には、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ナフトールタイプのノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAのノボラック型エポキシ樹脂、フェノールまたはアルキルフェノール類とヒドロキシベンズアルデヒドとの縮合物をエポキシ化して得られるトリス(ヒドロキシフェニル)アルカンベースのエポキシ化物、テトラ(ヒドロキシフェニル)アルカンベースのエポキシ化物、2,2′,4,4′−テトラグリシドキシベンゾフェノン、p−アミノフェノールのトリグリシジルエーテル、ポリアリルグリシジルエーテル、1,3,4−トリグリシジルエーテルベンゼン、2,2′,4,4′−テトラグリシドキシビフェニル、4,4′−ビス(2,3−エポキシプロポキシ)3,3′,5,5′−テトラメチルビフェニルのエポキシ化物、および各種ハロゲン化エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0129】
本発明の樹脂組成物において、接着付与剤として熱硬化性樹脂やゴムなどを用いる場合、その配合割合は、樹脂組成物中で0.5重量%以上20重量%以下であることが好ましい。0.5重量%未満では、十分な効果が得られないおそれがあり、一方20重量%を越えると吸水率が大きくなったり、耐熱性が低下するおそれがある。また、接着付与剤として金属キレートを用いる場合、その配合割合は、0.01重量%以上5重量%以下であることが好ましい。0.01重量%未満では、十分な効果が得られないおそれがあり、一方、5重量%を越えると、樹脂封止型半導体装置に適用した場合に、イオン性不純物により半導体素子の配線が腐食したり、電気絶縁性が低下するおそれがある。
【0130】
前述の成分に加えて、本発明の樹脂組成物では、三酸化アンチモン、リン化合物、ハロゲン含有化合物などの難燃助剤;天然ワックス類、合成ワックス類、直鎖脂肪酸やその金属塩、酸アミド類、エステル類、パラフィン類等の離型剤;カーボンブラック、二酸化チタン等の顔料;シランカップリング剤等の表面処理剤等を適宜配合することができる。また、低応力付与剤として、シリコーンゴム、シリコーンオイル、各種のプラスチック粉末、エンジニアリングプラスチック粉末、ABS樹脂またはMBS樹脂の粉末等を配合することも可能である。
【0131】
更に、本発明の樹脂組成物においては、上述したようなポリアリ−レンポリエ−テル中のアルカリ金属の含有量を50ppm以下、ハロゲンの含有量を500ppm以下とすることが好ましい。即ち、本発明の第1,第2及び第4の態様の(a)成分及び第3の態様の(b)成分を合成する反応は脱塩反応であり、不純物としてアルカリ金属イオンやハロゲンイオンが含まれる可能性が高い。また、未反応のハロゲン化アルキルやハロゲン化アリールが残留したり、副反応によりハロゲン化合物が生じる可能性もある。
【0132】
これらのうち、例えばエピクロルヒドリンなどの塩化アルキルは加水分解により塩素イオンを生成しやすく、アルミ配線を腐食させたり、耐湿信頼性を損なったりする原因となり得る。このようにアルカリ金属やハロゲン不純物を含む樹脂組成物を用いて半導体素子を封止した場合、素子のアルミ配線が腐食して配線回路が断線したり、耐湿信頼性が低下することが知られている(「エポキシ樹脂ハンドブック」、新保正樹編、日刊工業新聞社、pp 466−469、1987年)。そのため、アルカリ金属やハロゲン不純物を除去する必要がある。
【0133】
これらの不純物を除去するには、樹脂をN−メチルピロリドンやN,N−ジメチルアセトアミド、THFなど水溶性の極性溶媒に溶かし、大量の水、あるいはシュウ酸などの有機酸の稀薄水溶液に滴下し、析出したポリマーを濾過して集める方法が効果的である。また、塩素系の有機溶媒など水と混合しない有機溶媒に樹脂を溶解し、水あるいは有機酸の稀薄水溶液を加えて振盪したのち静置し、有機溶媒層と水層が分離した後、有機溶媒層を集める操作によっても不純物が除去される。これらの操作は、アルカリ金属やハロゲン不純物の濃度が許容範囲まで低下するまで繰り返される。合成した樹脂中に不純物として含まれるアルカリ金属の濃度は、50ppm以下が望ましく、より好ましくは20ppm以下であり、5ppm以下がさらに望ましい。樹脂中に不純物として含まれるハロゲン化合物の濃度は500ppm以下が望ましく、より好ましくは300ppm以下であり、100ppm以下がさらに望ましい。
【0134】
なお、ポリアリーレンポリエーテル中のナトリウムやカリウムなどのアルカリ金属量は、硝酸と過塩素酸で試料を分解した後、原子吸光法によって定量出来る。一方、塩素や臭素などのハロゲンは、試料を水酸化ナトリウムとともに灰化した後、イオン交換樹脂によりナトリウムを除去し、次いでイオンクロマトグラフィによって定量される。また、試料を熱水に浸し、熱水中に抽出されたアルカリ金属やハロゲンをそれぞれ原子吸光法、イオンクロマトグラフィによって定量することも出来る。
【0135】
本発明の樹脂組成物は、以下のようにして調製することができる。すなわち、例えば、ヘンシェルミキサー等によって各成分を十分混合し、さらに熱ロールによる溶融処理、または二軸の押し出し機等を用いて溶融混合処理を施す。その後、室温まで冷却し、ハンマーミル等により粉砕する。
【0136】
本発明の樹脂組成物を用いて半導体素子を封止するに当たっては、最も一般的には、低圧トランスファー成形が用いられるが、これに限定されるものではない。すなわち、圧縮成形、射出成形および注型等の任意の成形方法を使用して、半導体素子を封止することができる。封止後の加熱硬化は、150℃以上の温度で行うことが望ましい。なお、本発明において、樹脂組成物の硬化物によって封止される半導体素子の種類および寸法等は特に限定されず、任意の半導体素子を封止することができる。
【0137】
ここで図1に、本発明の樹脂封止型半導体装置の一例の縦断面図を示す。このような本発明の樹脂封止型半導体装置は、例えばまず半導体素子1をリ−ドフレ−ム4のアイランド2上にマウントし、半導体素子1の表面のボンディングパッド3とリ−ドフレ−ム4のアウタ−リ−ドとをボンディングワイヤ5で電気的に接続した後、半導体素子1を本発明の樹脂組成物の硬化物からなる樹脂層6によって被覆する形で封止することで製造される。
【0138】
以上説明した第1〜第5の態様のいずれの樹脂組成物においても、ポリアリーレンポリエーテルを用いているがこのポリアリーレンポリエーテルは、吸水性が極めて低い。そのため、この化合物を含有する樹脂組成物を用いて半導体素子を封止して得られた半導体装置は、実装工程において高温にさらしても、樹脂中に含有される水分の気化に起因して樹脂層にクラックが発生することがない。従って、半導体装置の耐湿信頼性を著しく向上させることができる。
【0139】
更に、ポリアリーレンポリエーテルは、優れた耐熱性を有するので、この化合物を含有する組成物の硬化物で封止された半導体装置の耐熱性および耐熱衝撃性は非常に良好である。しかも、本発明に係る樹脂組成物は成形性に優れているので、任意の成形方法によって半導体素子を封止することができる。
【0140】
特に、アルカリ金属の含有量を50ppm以下とし、ハロゲンの含有量を500ppm以下と制限したポリアリーレンポリエーテルを含有する樹脂組成物の硬化物で半導体素子を封止することにより、半導体素子のアルミ配線の腐食を効果的に防止することができる。従って、半導体装置の耐湿信頼性をより一層向上させることができる。
【0141】
以上説明した本発明の樹脂組成物は、半導体素子の封止用に限らず、種々の用途、例えばプリント基板形成用に好適に使用可能である。
【0142】
以下に、実施例を示してより詳細に説明する。
参考例1〜8
参考例において使用したポリアリーレンポリエーテルを下記式(S)〜(X)に示す。
【0143】
【化10】
Figure 0003617725
【化11】
Figure 0003617725
以上の化合物のうち、式(T)に示すポリアリーレンポリエーテル(化合物T)を例に挙げて、本参考例において使用したポリアリーレンポリエーテルの合成方法を説明する。
【0144】
3000mlの4つ口フラスコに、攪拌棒、温度計および冷却管をつけた水分定量器を取り付けた。このフラスコに1モル(228.29g)のビスフェノールAを投入し、さらに700mlのN−メチルピロリドンを加えて溶解させた。次いで、80gの水酸化ナトリウムを240mlの水に溶解し、100mlのトルエンと共に前記ビスフェノールAの溶液に加えた。次に、水をトルエンとの共沸により除去しながら、150℃で2時間加熱、攪拌してビスフェノールAのナトリウム塩を得た。
【0145】
この溶液に、100mlのトルエンと、0.9モル(258.45g)の4,4′−ジフェニルジクロロスルホンを300mlのN−メチルピロリドンに溶解した溶液を加えた。この溶液を160℃で加熱、攪拌し、トルエンとの共沸により水を除去しながら10時問反応させた後、トルエンを留去した。その後、室温まで冷却した後、0.22モルのビニルベンジルクロリド(33.58g)を加え、60℃で4時間反応させた。
【0146】
N−メチルピロリドンで反応液を稀釈した後、濾過により塩を除去した。濾液を10リットルの水に滴下し、析出したポリマーを濾過により集めた。ポリマーを1リットルのジクロロメタンに溶解し、1%のシュウ酸水溶液300mlで洗浄した。この操作を2回行なった後、300mlの水で3回洗浄した。
【0147】
その後、この溶液を10リットルのメタノールに注いでポリマーを析出させ、これを濾過により集め、50℃の真空乾燥機で24時間乾燥させて、薄い黄色のポリマー粉末380gを得た。シュウ酸および水で洗浄する前のポリマーのナトリウムイオン濃度は41ppm、塩素イオン濃度(熱水で煮沸することで抽出)は520ppmであったのに対し、洗浄後のポリマーでは、ナトリウムイオンが0.8ppm、塩素イオンが12ppmと濃度が大幅に低下していた。
【0148】
同様に、式(S),(U),(V),(W),(X)に示す化合物(化合物(S),(U),(V),(W),(X))についても合成し、これらの化合物中の不純物含有量および分子量を測定した。なお、化合物(T′),(V′)は、化合物(T),(V)とそれぞれ同一の構造の化合物であるが、含有する不純物量が異なるものである。それらの結果を下記表1にまとめて示す。
【0149】
【表1】
Figure 0003617725
次に、以上のように合成した8種のポリアリーレンポリエーテル、無機充填剤、マレイミド樹脂、フェノ−ル樹脂硬化剤、硬化触媒、接着付与剤、離型剤、顔料、表面処理剤および難燃助剤を、下記表2に示すような配合量で混合して参考例1〜8の樹脂組成物を調製した。更に、ポリアリーレンポリエーテルの代わりにエポキシ樹脂を用いた樹脂組成物(比較例1)、ポリフェニレンスルフィド樹脂を用いた樹脂組成物(比較例3)、及び無機充填剤を含有しない樹脂組成物(比較例2)を、同様に下記表2に示すような配合量で混合して調製した。
【0150】
【表2】
Figure 0003617725
なお、樹脂組成物の調製に当たっては、まず、ヘンシェルミキサー中で表面処理剤を用いて、無機質充填剤に処理を施した。さらに、表2に示した各樹脂成分と硬化触媒、硬化剤、および接着付与剤とを加熱溶融して混合分散させた後、冷却し、粉砕した。次いで、全成分を配合して60〜130℃の加熱ロールで混練し、冷却した後、粉砕することにより樹脂組成物を得た。
【0151】
表2に示す各成分としては、それぞれ以下のものを用いた。
【0152】
マレイミド樹脂:N,N′−ジフェニルメタンビスマレイミド(分子量358)
エポキシ樹脂:o−クレゾールノボラックエポキシ樹脂(ESCN195XL、住友化学、当量197)
ポリフェニレンスルフィド樹脂:(Aldrich試薬、Mn10,000、Tm285℃)
硬化剤:フェノールノボラック樹脂(BRG−557、昭和高分子、当量104)
硬化触媒:ジクミルパ−オキサイド
離型剤:カルナバワックス
顔料:カーボンブラック(CB−30、三菱化成)
難燃助剤:三酸化アンチモン
無機充填剤:溶融シリカ粉(平均粒径20μm)
表面処理剤:γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(A−187、日本ユニカー)
Zrキレ−ト:ジルコニウムアセチルアセテ−ト(同仁化学試薬)
次に、これらの参考例1〜8および比較例1〜3の樹脂組成物について、それぞれ下記のような評価試験を行った。
【0153】
(1)曲げ弾性率、曲げ強度、熱膨張係数、ガラス転移点、吸水率、接着強度各樹脂組成物を用い、175℃、3分の条件でトランスファー成形により(8mm×8mm×4mm)の試験片を作成し、180℃で4時間アフターキュアした。各試験片について、曲げ弾性率、曲げ強度、熱膨張係数、ガラス転移点、および吸水率を測定した。また、フレーム材(42アロイ)に樹脂組成物をモールドして試験片を作成し、引っ張り方向の接着強度を測定した。ただし、比較例3では、320℃に樹脂組成物を加熱し、射出成形により試験片を作製した。
【0154】
得られた測定結果を、下記表3にまとめた。
【0155】
【表3】
Figure 0003617725
上記表3から明らかなように、参考例の樹脂組成物の硬化物は、いずれの特性においても優れているのに対し、比較例の樹脂組成物の硬化物は、すべての特性を満足するものではないことがわかる。即ち、比較例1の樹脂組成物の硬化物は、ポリアリーレンポリエーテルの代わりにエポキシ樹脂を用いているため、参考例に係る樹脂組成物の硬化物に比べて、曲げ強度が低く、吸水率が高い。また、比較例2の樹脂組成物の硬化物は、無機充填剤を含有していないため、参考例に係る樹脂組成物の硬化物に比べて、曲げ弾性率及び曲げ強度が低く、熱膨張係数が高く、吸水率が高い。更に、比較例3の樹脂組成物は、ポリアリーレンポリエーテルの代わりにポリフェニレンスルフィド樹脂を用いているため、溶融粘度が高く、無機充填剤の量を増やすことが出来ず、参考例に係る樹脂組成物の硬化物に比べて、曲げ強度が低く、熱膨張係数が高く、ガラス転移温度が低く、接着強度が低い。
【0156】
(2)耐湿性耐湿性を調べるために、以下のPCT試験を行った。すなわち、各樹脂組成物を用いてTQFPパッケージにより試験用デバイス(8mm×8mm)を封止した後、180℃で4時間アフターキュアして、樹脂封止型半導体装置を得た。各樹脂封止型半導体装置を85℃、相対湿度85%の雰囲気中に72時間放置して吸湿処理を行った。次いで、この半導体装置を、125℃のフロロカーボン蒸気雰囲気中に1分間さらし、まず、この時点でパッケージのクラック発生率を調べた。さらに、この半導体装置を、127℃の飽和水蒸気中に所定時間放置した後の不良(リーク不良、オープン不良)発生率を調べ、耐湿性を評価した。
【0157】
(3)耐熱衝撃性耐熱衝撃性を調べるために、以下のTCT試験を行った。すなわち、各樹脂組成物を用いてTQFPパッケージにより耐熱衝撃性試験用デバイス(8mm×8mm)を封止した後、180℃で4時間アフターキュアして樹脂封止型半導体装置を得た。ただし、比較例3は、アフターキュアは行なわなかった。各樹脂封止型半導体装置に、−65℃(20分)、室温(50分)、150℃(20分)を1サイクルとする冷熱サイクルを50〜400サイクル繰り返し、デバイスの動作特性チェックにより不良発生率を調べた。
【0158】
以上のPCT試験およびTCT試験の結果を、下記表4にまとめて示す。
【0159】
【表4】
Figure 0003617725
上記表4から明らかなように、参考例に係る樹脂封止型半導体装置では、PCT試験においては、飽和水蒸気中に500時間放置した後もほとんど不良が発生しておらず、TCT試験においても、400サイクルの冷熱サイクルを繰り返しても、ほとんど不良が発生していない。
【0160】
これに対し、比較例1に係る樹脂封止型半導体装置では、吸水率が高いため、PCT試験において不良の発生率が高くなっている。また、比較例2に係る樹脂封止型半導体装置では、吸水率が高いため、PCT試験において不良の発生率が高くなっているとともに、熱膨張係数が高いため、TCT試験での不良発生率が高い。更に、比較例3に係る樹脂封止型半導体装置では、熱膨張係数が高いためTCT試験での不良発生率が高くなっていることがわかる。
【0161】
また、難燃助剤を含有しない参考例1および3の樹脂組成物の燃焼テストを行なったところ、UL規格でのV−0を示し、十分な難燃性を有することがわかった。アンチモンやブロモ化合物などの難燃助剤を含有する樹脂は、廃棄の際の処理が難しいため、難燃助剤を含まずに十分な難燃性を有する本発明の樹脂組成物は、廃棄処理の面でも有利である。
【0162】
参考例9〜14
参考例では、第2の態様に係る樹脂組成物の(a)成分であるポリアリーレンポリエーテルとして、前述の式(G)〜(L)により表わされるものを用いた。最初に、式(H)に示すポリアリーレンポリエーテルを例に挙げて、本参考例において使用したポリアリーレンポリエーテルの合成方法を説明する。
【0163】
3000mlの4つ口フラスコに撹拌棒、温度計および冷却管をつけた水分定量器を取り付けた。このフラスコに1モル(228.29g)のビスフェノールAを投入し、さらに700mlのN−メチルピロリドンを加えて溶解させた。80gの水酸化ナトリウムを240mlの水に溶解し、100mlのトルエンとともに前記ビスフェノールAの溶液に加えた。水をトルエンとの共沸により除去しながら、150℃で2時間加熱、撹拌して,ビスフェノールAのナトリウム塩を得た。
【0164】
この溶液に、100mlのトルエンと0.9モル(258.45g)の4,4′−ジフェニルジクロロスルホンを300mlのN−メチルピロリドンに溶解した溶液を加えた。この溶液を160℃で加熱、撹拌し、トルエンとの共沸により水を除去しながら10時間反応させた後、トルエンを留去し、ポリスルホンのナトリウム塩を得た。
【0165】
反応液を室温まで冷却した後、0.40モルのエピクロルヒドリン(37.00g)を加え、60℃で4時間反応させた。N−メチルピロリドンで反応液を希釈した後、濾過により塩を除いた。濾液を10リットルの水に滴下し、析出したポリマーを濾過により集めた。ポリマーを1リットルのジクロロメタンに溶解し、1%のシュウ酸水溶液300mlで洗浄した。この操作を2回行った後、300mlの水で3回洗浄した。
【0166】
次いで、この溶液を10リットルのメタノールに注いでポリマーを析出させ、これを濾過により集め、50℃の真空乾燥機で24時間乾燥させて、薄い黄色のポリマー粉370gを得た。シュウ酸および水で洗浄する前のポリマーのナトリウムイオン濃度は41ppm、塩素イオン濃度(熱水で煮沸することで抽出)は520ppmであったのに対して、洗浄後のポリマーでは、ナトリウムイオンが0.8ppm、塩素イオンが12ppmと濃度が低下していた。
【0167】
同様の操作で、前述の式(G),(I)〜(L)に示す化合物、及び(H),(J)とは同一の構造を有するが、含有する不純物量が異なる化合物(H′),(J′)の計8種の化合物を合成した。なお、G1とG2は、同様の一般式により表わされるが、分子量、繰り返し単位数n、エポキシ当量が異なるポリマーである。これら合成した化合物中の不純物含有量および分子量を下記表5にまとめる。
【0168】
【表5】
Figure 0003617725
次に、第2の態様に係る樹脂組成物の調製について述べる。まず、(a)成分としての化合物(G)、(b)成分である硬化剤、(C)成分である無機充填剤、硬化触媒、離型剤、顔料および表面処理剤を下記表6に示すような配合量で混合して、参考例9の樹脂組成物を調製した。さらに表6に示すように、(a)成分の化合物、およびその他の成分の配合量等を変更して、参考例10〜14の樹脂組成物を調製した。また、表6に示すような配合割合で本発明の範囲外の比較例4〜6の樹脂組成物を得た。
【0169】
【表6】
Figure 0003617725
なお、組成物の調製に当たっては、まず、ヘンシェルミキサー中で表面処理剤を用い、無機充填剤に処理を施した。さらに、表6に示した各樹脂成分と硬化触媒、硬化剤、および接着付与剤とを加熱溶融して混合分散させた後、冷却し、粉砕した。次いで、全成分を配合して60〜160℃の加熱ロールで混練し、冷却した後、粉砕することにより樹脂組成物を得た。
【0170】
表6に示された各成分としては、それぞれ以下のものを用いた。
【0171】
硬化触媒:トリフェニルホスフィン
離型剤:カルバナワックス
顔料:カーボンブラック
難燃助剤:三酸化アンチモン
無機充填剤:溶融シリカ粉(平均粒径20μm)
表面処理剤:γ−グリシドキシプロピルトリメチルシラン(A−187、日本ユニカー)
Zrキレ−ト:ジルコニウムアセチルアセテ−ト(同仁化学試薬)
次に、これらの参考例9〜14および比較例4〜6の樹脂組成物についてそれぞれ下記のような評価試験を行った。
【0172】
(1)参考例1〜8において行ったと同様にして、曲げ弾性率、曲げ強度、熱膨張係数、ガラス転移点、吸水率、及び接着強度の評価実験を行った。それらの結果を下記表7に示す。
【0173】
【表7】
Figure 0003617725
上記表7から明らかなように、参考例の樹脂組成物の硬化物は、いずれの特性においても優れているのに対し、比較例4〜6の樹脂組成物は、すべての特性を満足するものではないことがわかる。即ち、比較例4の樹脂組成物の硬化物は、硬化剤を用いていないため、参考例に係る樹脂組成物の硬化物に比べて、曲げ弾性率及び曲げ強度が低く、かつ接着強度が低い。また、比較例5の樹脂組成物の硬化物は、無機充填剤を含有していないため、参考例に係る樹脂組成物の硬化物に比べて、曲げ弾性率及び曲げ強度が低く、熱膨張係数が高く、吸水率が高い。更に、比較例6の樹脂組成物の硬化物は、ポリアリーレンポリエーテルの代わりに汎用エポキシ樹脂を用いているため、曲げ強度が低く、吸水率が高い。
【0174】
(2)耐湿性耐湿性を調べるために、参考例1〜8について行ったと同様にして、PCT試験を行った。
【0175】
(3)耐熱衝撃性耐熱衝撃性を調べるために、参考例1〜8について行ったと同様にして、TCT試験を行った。
【0176】
以上のPCT試験およびTCT試験の結果を、下記表8にまとめて示す。
【0177】
【表8】
Figure 0003617725
上記表8から明らかなように、参考例に係る樹脂封止型半導体装置では、PCT試験においては、飽和水蒸気中に500時間放置した後もほとんど不良が発生しておらず、TCT試験においても、400サイクルの冷熱サイクルを繰り返しても、ほとんど不良が発生していない。
【0178】
これに対し、比較例4〜6に係る樹脂封止型半導体装置では、PCT試験、TCT試験のいずれにおいても不良の発生率が高くなっている。特に、比較例5に係る樹脂封止型半導体装置では、吸水率が高いため、PCT試験において不良の発生率が高くなっているとともに、熱膨張係数が高いため、TCT試験での不良発生率が高い。
【0179】
また、参考例14の樹脂組成物は、ポリアリーレンポリエーテル中の不純物の含有率が高いことを除いて、参考例10の樹脂組成物と同じ材料を用いて調製したものである。これらを比較すると、不純物の含有率が低い参考例10の樹脂組成物の方が、参考例14の樹脂組成物よりも不良の発生率が低い。
【0180】
さらに、難燃助剤を含有していない参考例9および参考例12の樹脂組成物の燃焼試験を行ったところ、UL規格のV−0を示し、十分な耐熱性を有することが分かった。アンチモンやブロモ化合物などの難燃助剤を含有する樹脂は、廃棄の際の処理が環境保護の観点から問題となっているため、難燃助剤を含まずに十分な難燃性を有する第2の様態に係る樹脂組成物は、廃棄処理の面でも有利である。
【0181】
参考例15〜18
参考例では、第3の態様に係る樹脂組成物の(b)成分である両末端に水酸基を持つポリアリーレンポリエーテルとして、前述の式(P)、(M)、(N)により表わされるものを用いた。最初に、式(N)に示すポリアリーレンポリエーテルを例に挙げて、本参考例において使用したポリアリーレンポリエーテルの合成方法を説明する。
【0182】
すなわち、前述の式(I)により表わされる化合物の合成途中で、ポリスルホンのナトリウム塩を得たが、まず、それと同じ方法、同じ分量でポリスルホンのナトリウム塩の溶液を得た。反応溶液を濾過して、塩を除去した後、1%のシュウ酸水溶液10リットルに溶液を注ぎ、ポリマーを析出させた。ポリマーを濾過して集めた後、ポリマーを1リットルのジクロロメタンに溶解し、1%のシュウ酸水溶液300mlで洗浄した。この操作を2回行った後、300mlの水で3回洗浄した。次いで、この溶液を10リットルのメタノールに注いでポリマーを析出させ、これを濾過により集め、50℃の真空乾燥機で24時間乾燥させて、薄い黄色のポリマー粉400gを得た。シュウ酸および水で洗浄する前のポリマーのナトリウムイオン濃度は60ppm、塩素イオン濃度(熱水で煮沸することで抽出)は520ppmであったのに対して、洗浄後のポリマーでは、ナトリウムイオンが0.7ppm、塩素イオンが10ppmと濃度が低下していた。
【0183】
同様の操作で、前述の式(P),(M)に示す化合物、及び(P)とは同一の構造を有するが、含有する不純物量が異なる化合物(P′)の計3種の化合物を合成した。これら合成した化合物中の不純物含有量および分子量を下記表9にまとめる。
【0184】
【表9】
Figure 0003617725
次に、第3の態様に係る樹脂組成物の調製について述べる。まず、(a)成分としてのビスフェノ−ルAグルシジルエ−テル樹脂、(b)成分である化合物(N)、(c)成分である無機充填剤、硬化触媒、離型剤、顔料、表面処理剤、及び難燃助剤を、下記表10に示すような配合量で混合して、参考例15の樹脂組成物を調製した。さらに表10に示すように、(a)成分であるエポキシ基を有する化合物、およびその他の成分の配合量等を変更して、参考例16〜18の樹脂組成物を調製した。また、表10に示すような配合割合で比較例7の樹脂組成物を得た。
【0185】
【表10】
Figure 0003617725
なお、組成物の調製に当たっては、まず、ヘンシェルミキサー中で表面処理剤を用い、無機充填剤に処理を施した。さらに、表10に示した各樹脂成分と硬化触媒、硬化剤、および接着付与剤とを加熱溶融して混合分散させた後、冷却し、粉砕した。次いで、全成分を配合して60〜160℃の加熱ロールで混練し、冷却した後、粉砕することにより樹脂組成物を得た。
【0186】
表10に示された各成分としては、参考例9〜14で用いたものと同様のものを用いた。
【0187】
次に、これらの参考例15〜18および比較例7の樹脂組成物についてそれぞれ下記のような評価試験を行った。
【0188】
(1)参考例1〜8について行ったと同様にして、曲げ弾性率、曲げ強度、熱膨張係数、ガラス転移点、吸水率、及び接着強度の評価実験を行った。それらの結果を下記表11に示す。
【0189】
【表11】
Figure 0003617725
上記表11から明らかなように、参考例の樹脂組成物の硬化物(参考例15〜18)は、いずれの特性においても優れているのに対し、比較例7の樹脂組成物は、すべての特性を満足するものではないことがわかる。即ち、比較例7の樹脂組成物の硬化物は、エポキシ基を有する化合物を用いていないため、参考例に係る樹脂組成物の硬化物に比べて、曲げ弾性率及び曲げ強度が低く、かつ接着強度が低い。
【0190】
(2)耐湿性耐湿性を調べるために、参考例1〜8について行ったと同様にして、PCT試験を行った。
【0191】
(3)耐熱衝撃性耐熱衝撃性を調べるために、参考例1〜8について行ったと同様にして、TCT試験を行った。
【0192】
以上のPCT試験およびTCT試験の結果を、下記表12にまとめて示す。
【0193】
【表12】
Figure 0003617725
上記表12から明らかなように、参考例に係る樹脂封止型半導体装置では、PCT試験においては、飽和水蒸気中に500時間放置した後もほとんど不良が発生しておらず、TCT試験においても、400サイクルの冷熱サイクルを繰り返しても、ほとんど不良が発生していない。
【0194】
これに対し、比較例7に係る樹脂封止型半導体装置では、PCT試験、TCT試験のいずれにおいても不良の発生率が高くなっている。
【0195】
また、参考例17の樹脂組成物は、ポリアリーレンポリエーテル中の不純物の含有率が高いことを除いて、参考例16の樹脂組成物と同じ材料を用いて調製したものである。これらを比較すると、不純物の含有率が低い参考例16の樹脂組成物の方が、参考例17の樹脂組成物よりも不良の発生率が低い。
【0196】
参考例19〜21
上記表5に示す(a)成分の式(J)により表わされる化合物(エポキシ当量600)181g(25.3重量部)、(b)成分の硬化剤であるベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)24g(3.3重量部)、無機充填剤500g(70.0重量部)、硬化触媒1.4g(0.2重量部)、離型剤3.6g(0.5重量部)、顔料2.9g(0.4重量部)、表面処理剤2.1g(0.3重量部)を用い、参考例9〜18に示す方法により、参考例19の樹脂組成物を得た。
【0197】
また、上記表9に示す式(P)により表わされる化合物(フェノ−ル当量500)135g(18.9重量部)、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)14.3g(2.0重量部)、エポキシ化合物である3,3′,5,5′−テトラメチル−4,4′−ジグリシジルオキシビフェニル樹脂(エポキシ当量600)55g(7.7重量部)、離型剤3.6g(0.5重量部)、顔料2.9g(0.4重量部)を用い、加熱溶融して混合分散させた後、硬化触媒1.4g(0.2重量部)を加え、更に混合分散させた。次いで、冷却し、粉砕した。その後、この粉砕した樹脂と、あらかじめ2.1g(0.3重量部)の表面処理剤で処理した無機充填剤500g(70重量部)を配合し、120℃の加熱ロールで混練し、冷却した後、粉砕することにより、参考例20の樹脂組成物を得た。
【0198】
なお、ここで硬化触媒は、最初から加えると樹脂の硬化がすすまないため、硬化剤やエポキシ化合物を混合分散させた後に加えた。
【0199】
更に、第2の態様に係る樹脂組成物の成分(b)に相当する下記式(Y)で表される化合物(カルボン酸当量500)84.28g(11.8重量部)、上記表5に示す(a)成分の式(J)により表わされる化合物(エポキシ当量600)120g(16.8重量部)、無機充填剤500g(70.0重量部)、硬化触媒1.4g(0.2重量部)、離型剤3.6g(0.5重量部)、顔料2.9g(0.4重量部)、表面処理剤2.1g(0.3重量部)を用い、参考例9〜18に示す方法により、参考例21の樹脂組成物を得た。
【0200】
【化12】
Figure 0003617725
ただし、これらの樹脂組成物において、無機充填剤、硬化触媒、離型剤、顔料、表面処理剤は、参考例9〜18で用いたものと同一のものを用いた。得られた樹脂組成物を、参考例1〜8と同一の方法で評価した。
【0201】
以上の評価結果を下記表13、表14に示す。
【0202】
【表13】
Figure 0003617725
【表14】
Figure 0003617725
上記表13及び14から、参考例の樹脂組成物の硬化物(参考例19〜21)は、いずれの特性においても優れていることがわかる。
【0203】
参考例22〜25、実施例1、参考例27〜30
前述の式(B)により表わされるポリアリーレンポリエーテルを、参考例1と同様の手順により合成した。シュウ酸および水で洗浄する前のポリマーのナトリウムイオン濃度は41ppm、塩素イオン濃度(熱水で煮沸することで抽出)は520ppmであったのに対して、洗浄後のポリマーでは、ナトリウムイオンが0.8ppm、塩素イオンが12ppmと濃度が低下していた。
【0204】
同様の操作で、式(A),(C)〜(F)により表わされるポリアリーレンポリエーテルを合成した。これらの化合物中の不純物含有量および分子量を下記表15にまとめる。なお、化合物(B′),(D′)は、化合物(B),(D)とそれぞれ同一の構造の化合物であるが、含有する不純物量が異なるものであり、またA1、A2は、同様の一般式で表されるが、分子量、繰り返し単位数nが異なるポリマーである。
【0205】
【表15】
Figure 0003617725
次に、本発明の第4の態様に係る樹脂組成物の調製について述べる。まず、(a)成分としての化合物(A)、(b)成分である無機充填剤、(c)成分に相当する分子量5000以下の化合物、硬化触媒、離型剤、顔料、および表面処理剤を、下記表16に示すような配合量で混合し、参考例22の樹脂組成物を調製した。さらに表16に示すように、(a)成分の化合物、およびその他の成分の配合量等を変更して、参考例22〜25、実施例1、参考例27〜30の樹脂組成物を調製した。また、(a)成分をエポキシ樹脂等の本発明の範囲外の化合物に変更して、更に比較例9については無機充填剤を含有しない組成で比較例8〜11の樹脂組成物を得た。
【0206】
【表16】
Figure 0003617725
なお、組成物の調製に当たっては、まず、ヘンシェルミキサー中で表面処理剤を用い、無機充填剤に処理を施した。さらに、表16に示した各樹脂成分と硬化触媒、および接着付与剤とを加熱溶融して混合分散させた後、冷却し、粉砕した。次いで、全成分を配合して60〜130℃の加熱ロールで混練し、冷却した後、粉砕することにより樹脂組成物を得た。ただし、比較例10の組成物のみ、310℃で混練した。
【0207】
表16に示された各成分としては、それぞれ以下のものを用いた。
【0208】
エポキシ樹脂:o−クレゾールノボラックエポキシ樹脂(ESCN195XL、住友化学、当量197)
ただし、比較例ではこのエポキシ樹脂と硬化剤との組み合わせ
硬化剤 フェノールノボラック樹脂(BRG−557、昭和高分子、当量104)
硬化剤/エポキシ樹脂=0.95(水酸基/エポキシ基)
ポリフェニレンスルフィド樹脂:(Aldrich試薬、Mn10,000Tm285℃)
硬化触媒:ジ−tert−ブチルペルオキシド
ただし、比較例8のみトリフェニルホスフィン
離型剤:カルナバワックス顔料:カーボンブラック(CB−30、三菱化成)
難燃助剤:三酸化アンチモン
無機充填剤:溶融シリカ粉(平均粒径20μm)
表面処理剤:γ−グリシドキシプロピルトリメチルシラン(A−187、日本ユニカー)
Zrキレ−ト:ジルコニウムアセチルアセテ−ト(同仁化学試薬)
次に、これらの参考例22〜25、実施例1、参考例27〜30、比較例8〜11の樹脂組成物についてそれぞれ下記のような評価試験を行った。
【0209】
(1)参考例1〜8において行ったと同様にして、曲げ弾性率、曲げ強度、熱膨張係数、ガラス転移点、吸水率、及び接着強度の評価実験を行った。それらの結果を下記表17に示す。
【0210】
【表17】
Figure 0003617725
上記表17から明らかなように、参考例および実施例の樹脂組成物の硬化物(参考例22〜25、実施例1、参考例27〜30)は、いずれの特性においても優れているのに対し、比較例8〜11の樹脂組成物は、すべての特性を満足するものではないことがわかる。即ち、比較例8の樹脂組成物の硬化物は、ポリアリーレンポリエーテルの代わりにエポキシ樹脂を用いているため、曲げ強度が低く、吸水率が高い。比較例9の樹脂組成物の硬化物は、無機充填剤を含有していないため、曲げ弾性率及び曲げ強度が低く、熱膨張係数が高く、吸水率が高い。また、比較例10の樹脂組成物の硬化物は、ポリフェニレンスルフィド樹脂が用いられ、かつ(c)成分を含有していないことに起因して樹脂組成物の溶融粘度が高く、無機充填剤の充填量が抑えられているため、熱膨張率が高く、ガラス転移点が低い。
【0211】
(2)耐湿性耐湿性を調べるために、参考例1〜8について行ったと同様にして、PCT試験を行った。
【0212】
(3)耐熱衝撃性耐熱衝撃性を調べるために、参考例1〜8について行ったと同様にして、TCT試験を行った。
【0213】
以上のPCT試験およびTCT試験の結果を、下記表18にまとめて示す。
【0214】
【表18】
Figure 0003617725
上記表18から明らかなように、実施例、参考例に係る樹脂封止型半導体装置では、PCT試験においては、飽和水蒸気中に500時間放置した後もほとんど不良が発生しておらず、TCT試験においても、400サイクルの冷熱サイクルを繰り返しても、ほとんど不良が発生していない。
【0215】
これに対し、比較例8〜11に係る樹脂封止型半導体装置では、PCT試験、TCT試験のいずれにおいても不良の発生率が高くなっている。特に、比較例9に係る樹脂封止型半導体装置では、吸水率が高いため、PCT試験において不良の発生率が高くなっているとともに、熱膨張係数が高いため、TCT試験での不良発生率が高い。
【0216】
また、比較例10の不良を解析したところ、半導体装置の配線ワイヤーが変形していたり、切断されていることが分かった。これは、樹脂組成物の溶融粘度が高いことによって発生したものである。
【0217】
また、参考例29、参考例30の樹脂組成物は、それぞれポリアリ−レンポリエ−テル中の不純物の含有率が高いことを除いて、参考例23、25の樹脂組成物と同じ材料を用いて調製したものである。これらを比較すると、不純物の含有率が低い参考例23,25の樹脂組成物の方が、参考例29,30の樹脂組成物よりも不良の発生率が低い。
【0218】
さらに、難燃助剤を含有していない参考例22および参考例27の樹脂組成物の燃焼試験を行ったところ、UL規格のV−0を示し、十分な難燃性を有することが分かった。アンチモンやブロモ化合物などの難燃助剤を含有する樹脂は、廃棄の際の処理が環境保護の観点から問題となっているため、難燃助剤を含まずに十分な難燃性を有する本発明の樹脂組成物は、廃棄処理の面でも有利である。
【0219】
参考例31〜40
これらの参考例では、第5の態様に係る樹脂組成物の(a)成分として、上述の式(12)〜(18)に示すポリアリ−レンポリエ−テルを用いた。
【0220】
合成例1
これらの参考例で用いたポリアリ−レンポリエ−テルの合成法を、式(9)により表される化合物の一例として、式(12)により表されるポリアリ−レンポリエ−テルについて説明する。
【0221】
3000mlの4つ口フラスコに攪拌棒、温度計および冷却管をつけた水分定量器を取り付けた。このフラスコに0.90モル(205.46g)のビスフェノールAと1,3−ビス(3−ヒドロキシプロピル)1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン0.10モル(25.05g)を投入し、さらに700mlのN−メチルピロリドンを加えて溶解させた。
【0222】
80gの水酸化ナトリウムを240mlの水に溶解し、100mlのトルエンとともに前記ビスフェノールAと1,3−ビス(3−ヒドロキシプロピル)1,1,3,3−テトラメチルジシロキサンの溶液に加えた。水をトルエンとの共沸により除去しながら、150℃で2時間加熱、攪拌して、ビスフェノールAのナトリウム塩と1,3−ビス(3−ヒドロキシプロピル)1,1,3,3−テトラメチルジシロキサンのナトリウム塩の混合物を得た。
【0223】
この溶液に、100mlのトルエンと0.8モル(229.73g)の4,4′−ジフェニルジクロロスルホンを700mlのN−メチルピロリドンに溶解した溶液を加えた。この溶液を160℃で加熱、攪拌し、トルエンとの共沸により水を除去しながら10時間反応させた後、トルエンを留去し、末端がナトリウム塩のポリスルホンを得た。
【0224】
反応液を室温まで冷却した後、0.60モルのビニルベンジルクロリド(m,p異性体混合物、92.17g)を加え、60℃で5時間反応させた。N−メチルピロリドンで反応液を希釈した後、濾過により塩を除いた。濾液を10リットルの水に滴下し、析出したポリマーを濾過により回収した。得られたポリマーを1リットルのジクロロメタンに溶解し、1%のシュウ酸水溶液300mlで洗浄した。この操作を2回行った後、300mlの水で3回洗浄した。
【0225】
次いで、この溶液を10リットルのメタノールに注いでポリマーを析出させ、これを濾過により回収し、50℃の真空乾燥により24時間乾燥させ、薄い黄色のポリマー粉296gを得た。シュウ酸および水で洗浄する前のポリマーのナトリウムイオン濃度は41ppm、塩素イオン濃度は520ppmであったのに対して、洗浄後のポリマーでは、ナトリウムイオンが0.8ppm、塩素イオンが12ppmと濃度が低下していた。
【0226】
合成例2
これらの参考例で用いたポリアリ−レンポリエ−テルの合成法を、式(10)により表される化合物の一例として、式(13)により表されるポリアリ−レンポリエ−テルについて説明する。
【0227】
3000mlの4つ口フラスコに攪拌棒、温度計および冷却管をつけた水分定量器を取り付けた。このフラスコに1.0モル(228.29g)のビスフェノールAと700mlのN−メチルピロリドンを加えて溶解させた。80gの水酸化ナトリウムを240mlの水に溶解し、100mlのトルエンとともに前記ビスフェノールAの溶液に加えた。水をトルエンとの共沸により除去しながら、150℃で2時間加熱、攪拌し、ビスフェノールAのナトリウム塩を得た。
【0228】
この溶液に、100mlのトルエンと0.65モル(186.65g)の4,4′−ジフェニルジクロロスルホンと0.15モル(43.11g)の1,3−ビス(3−クロロプロピル)1,1,3,3−テトラメチルジシロキサンを700mlのN−メチルピロリドンに溶解して得た溶液を加えた。この溶液を160℃で加熱、攪拌し、トルエンとの共沸により水を除去しながら10時間反応させた後、トルエンを留去し、末端がナトリウム塩のポリスルホンを得た。
【0229】
反応液を室温まで冷却した後、0.60モルのアリルブロミド(72.59g)を加え、60℃で5時間反応させた。N−メチルピロリドンで反応液を希釈した後、濾過により塩を除いた。濾液を10リットルの水に滴下し、析出したポリマーを濾過により回収した。ポリマーを1リットルのジクロロメタンに溶解し、1%のシュウ酸水溶液300mlで洗浄した。この操作を2回行った後、300mlの水で3回洗浄した。
【0230】
次いで、この溶液を10リットルのメタノールに注いでポリマーを析出させ、これを濾過により回収し、50℃の真空乾燥機で24時間乾燥させて、薄い黄色のポリマー粉310gを得た。シュウ酸および水で洗浄する前のポリマーのナトリウムイオン濃度は60ppm、塩素イオン濃度は490ppmであったのに対して、洗浄後のポリマーでは、ナトリウムイオンが0.9ppm、塩素イオンが10ppmと濃度が低下していた。
【0231】
合成例3
これらの参考例で用いたポリアリ−レンポリエ−テルの合成法を、式(11)により表される化合物の一例として、式(18)により表されるポリアリ−レンポリエ−テルについて説明する。
【0232】
3000mlの4つ口フラスコに攪拌棒、温度計および冷却管をつけた水分定量器を取り付けた。このフラスコに0.90モル(205.46g)のビスフェノールAを投入し、700mlのN−メチルピロリドンを加えて溶解させた。80gの水酸化ナトリウムを240mlの水に溶解し、100mlのトルエンとともに前記ビスフェノールAの溶液に加えた。水をトルエンとの共沸により除去しながら、150℃で2時間加熱、攪拌してビスフェノールAのナトリウム塩を得た。
【0233】
この溶液を室温に戻し、0.10モル(24.54g)の1,1,3,3,5,5−ヘキサメチル−1,5−ジクロロトリシロキサンを100mlのN−メチルピロリドンに溶かした溶液を滴下し、1時間攪拌した。この溶液に、100mlのトルエンと0.70モル(201.01g)の4,4′−ジフェニルジクロロスルホンを700mlのN−メチルピロリドンに溶解した溶液を加えた。この溶液を160℃で加熱、攪拌し、トルエンとの共沸により水を除去しながら10時間反応させた後、トルエンを留去し、末端がナトリウム塩のポリスルホンを得た。
【0234】
反応液を室温まで冷却した後、0.60モル(72.59g)のアリルブロミドを加え、60℃で5時間反応させた。N−メチルピロリドンで反応液を希釈した後、濾過により塩を除いた。濾液を10リットルの水に滴下し、析出したポリマーを濾過により回収した。ポリマーを1リットルのジクロロメタンに溶解し、1%のシュウ酸水溶液300mlで洗浄した。この操作を2回行った後、300mlの水で3回洗浄した。次いで、この溶液を10リットルのメタノールに注いでポリマーを析出させ、これを濾過により回収し、50℃の真空乾燥により24時間乾燥させ、薄い黄色のポリマー粉310gを得た。
【0235】
同様の操作で、式(14)〜(17)により表わされるポリアリーレンポリエーテルを合成した。化合物(12′),(13′)は、化合物(12),(13)とそれぞれ同一の構造の化合物であるが、含有する不純物量が異なるものである。これらの化合物中の不純物含有量を下記表19にまとめる。
【0236】
【表19】
Figure 0003617725
次に、第5の態様に係る樹脂組成物の調製について述べる。まず、(a)成分としての化合物(12)、(b)成分である無機充填剤、硬化触媒、離型剤、顔料、表面処理剤、難燃助剤、反応性希釈剤を下記表20に示すような配合量で混合して、参考例31の樹脂組成物を調製した。さらに(a)成分の化合物、およびその他の成分の配合量等を変更して、参考例32〜40の樹脂組成物を調製した。また、表21に示すような配合割合で本発明の範囲外の比較例12〜14の樹脂組成物を得た。
【0237】
【表20】
Figure 0003617725
【表21】
Figure 0003617725
*1:(a)成分を含まない。(a)成分に代えてエポキシ樹脂を用いた。エポキシ当量200。
【0238】
*2:トリフェニルホスフィン。
【0239】
*3:フェノールノボラック樹脂(フェノール当量160)
*4:ジクミルパーオキサイド
*5:(a)成分を含まない。(a)成分に代えてポリフェニレンスルフィド樹脂を用いた。
【0240】
なお、組成物の調製に当たっては、まずヘンシェルミキサー中で表面処理剤を用い、無機充填剤に処理を施した。更に、表20、表21に示した各樹脂成分と硬化触媒、硬化剤、および接着付与剤と加熱溶融して混合して混合分散させた後、冷却し、粉砕した。次いで、全成分を配合して60〜160℃の加熱ロールで混練し、冷却した後、粉砕することにより樹脂組成物を得た。ただし、比較例のみ310℃で混練した。
【0241】
表20、表21に示された各成分としては、それぞれ以下のものを用いた。
【0242】
硬化触媒:トリフェニルホスフィン
離型剤:カルナバワックス
顔料:カーボンブラック
難燃助剤:三酸化アンチモン
表面処理剤:γ−グリシドキシプロピルトリメチルシラン
次に、これらの参考例31〜40および比較例12〜14の樹脂組成物についてそれぞれ下記のような評価試験を行った。
【0243】
(1)参考例1〜8において行ったと同様にして、曲げ弾性率、曲げ強度、熱膨張係数、ガラス転移点、吸水率、及び接着強度の評価実験を行った。それらの結果を下記表22及び表23に示す。
【0244】
【表22】
Figure 0003617725
【表23】
Figure 0003617725
上記表22、23から明らかなように、参考例の樹脂組成物の硬化物(参考例31〜40)は、いずれの特性においても優れているのに対し、比較例12〜14の樹脂組成物は、すべての特性を満足するものではないことがわかる。即ち、比較例12の樹脂組成物の硬化物は、ポリアリーレンポリエーテルの代わりにエポキシ樹脂を用いているため、吸水率が高い。比較例13の樹脂組成物の硬化物は、無機充填剤を含有していないため、参考例の樹脂組成物の硬化物に比べて曲げ弾性率及び曲げ強度が低く、熱膨張係数が高く、吸水率が高い。
【0245】
また、比較例14の樹脂組成物の硬化物は、ポリアリーレンポリエーテルの代わりにポリフェニレンスルフィド樹脂が用いられているので、参考例の樹脂組成物の硬化物に比べて、樹脂組成物の溶融粘度が高く、無機充填剤の充填量が抑えられているため、熱膨張率が高く、ガラス転移点が低い。
【0246】
(2)耐湿性耐湿性を調べるために、参考例1〜8について行ったと同様にして、PCT試験を行った。
【0247】
(3)耐熱衝撃性耐熱衝撃性を調べるために、参考例1〜8について行ったと同様にして、TCT試験を行った。
【0248】
以上のPCT試験およびTCT試験の結果を、下記表24、25にまとめて示す。
【0249】
【表24】
Figure 0003617725
【表25】
Figure 0003617725
上記表24、25から明らかなように、参考例に係る樹脂封止型半導体装置では、PCT試験においては、飽和水蒸気中に500時間放置した後もほとんど不良が発生しておらず、TCT試験においても、400サイクルの冷熱サイクルを繰り返しても、ほとんど不良が発生していない。
【0250】
これに対し、比較例12〜14に係る樹脂封止型半導体装置では、PCT試験、TCT試験のいずれにおいても不良の発生率が高くなっている。特に、比較例13に係る樹脂封止型半導体装置では、吸水率が高いため、PCT試験において不良の発生率が高くなっている。また、比較例12に係る樹脂封止型半導体装置では、熱膨張係数が高いため、TCT試験での不良発生率が高い。
【0251】
また、参考例39、参考例40の樹脂組成物は、それぞれポリアリ−レンポリエ−テル中の不純物の含有率が高いことを除いて、参考例33、35の樹脂組成物と同じ材料を用いて調製したものである。これらを比較すると、不純物の含有率が低い参考例33,35の樹脂組成物の方が、参考例39,40の樹脂組成物よりも不良の発生率が低い。
【0252】
さらに、難燃助剤を含有していない参考例31および参考例32の樹脂組成物の燃焼試験を行ったところ、UL規格のV−0を示し、十分な難燃性を有することが分かった。アンチモンやブロモ化合物などの難燃助剤を含有する樹脂は、廃棄の際の処理が環境保護の観点から問題となっているため、難燃助剤を含まずに十分な難燃性を有する第5の態様に係る樹脂組成物は、廃棄処理の面でも有利である。
【0253】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明によれば、吸水率が低く、かつ優れた成形性と耐熱性とを有する樹脂組成物が提供される。また、本発明の樹脂組成物の硬化物を用いて半導体素子を封止することによって、優れた耐熱性、耐熱衝撃性および耐湿信頼性を有する樹脂封止型半導体装置が得られ、工業的に大きな価値をもたらす。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の樹脂封止型半導体装置の一例を示す縦断面図。
【符号の説明】
1…半導体素子
2…アイランド
3…ボンディングパッド
4…リードフレーム
5…ボンディングワイヤ
6…樹脂層

Claims (3)

  1. (a)一般式Z −(ポリアリーレンポリエーテル鎖)−Z ′(式中、Z 及びZ ′はそれぞれプロパルギル基である1価の有機基である。)で表されるポリアリーレンポリエーテル、
    (b)無機充填剤、および
    (c)架橋可能な不飽和炭素結合を有する有機基を1分子中に1つ以上有する分子量5000以下の化合物
    を含有し、前記(c)成分の分子量は前記(a)成分の分子量より低く、前記(a)成分中のアルカリ金属の含有量が50ppm以下であり、前記(a)成分中のハロゲンの含有量が500ppm以下であることを特徴とする樹脂組成物。
  2. 接着付与剤をさらに含有することを特徴とする請求項1に記載の樹脂組成物。
  3. 半導体素子および前記半導体素子を封止する樹脂層を具備し、前記樹脂層は請求項1〜2のいずれかに記載の樹脂組成物の硬化物からなることを特徴とする樹脂封止型半導体装置。
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