JP3617142B2 - 音程調整装置および電気楽器 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、音程調整装置および電気楽器に関するものであり、特に、電気楽器の一種であるフレットのない電気弦楽器に好適である。
【0002】
【従来の技術】
電気弦楽器は、弦振動をピックアップマイクで検出し、これによって得た元音を電気的に増幅して出力するが、これにはフレットを有するフレット電気弦楽器と有さないフレットレス電気弦楽器とがある。図6はフレット電気弦楽器の平面図である。同図において、弦1は、糸止2と糸巻3との間において、山状のフレット6に接触しないように張られおり、ブリッジ4とナット5で固定されている。したがって、弦1を指で押さえない状態の弦長は、ブリッジ4とナット5間の距離L1となる。また、弦1を弾くと、その弦振動はピックアップマイク7で検出される。
【0003】
ここで、弦1をX点で押さえた場合の弦長について、電気弦楽器の側面図である図7を用いて説明する。同図において、弦1をX点で押さえると、弦1は、フレット61とフレット62とに接触しそこで固定される。このため、弦長はブッリジ4とフレット61との間の距離L2となる。ところで、フレット61とフレット62の間のいずれの箇所を押弦しても弦1はフレット61で固定され、その弦長は距離L2となる。そして、音程は弦長に応じて定まり、また、フレット6は所定の音程を得られるよう配設されているから、演奏者は、弦1をフレット間で適当に押さえれば、正確な音程で演奏することができる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、電気弦楽器には、図7に示すフレットレス電気弦楽器もある。このフレットレス電気弦楽器にあっては、フレットを有さないので、音程を連続して可変することができ、幅広い表現が可能となる。このため、コンサート等では、楽曲によって、フレット電気弦楽器とフレットレス電気楽器とを使い分けることが行われている。
【0005】
しかし、フレット電気弦楽器とフレットレス電気楽器とを持ち替えるのは手間がかかり、また、それぞれの楽器が必要となる。さらに、フレットレス電気弦楽器を用いて正確な音程で演奏することは難しく、習熟には相当の練習が必要である。
【0006】
本発明は上述した事情に鑑がみてなされたものであり、元音信号の音程を所定の音程に調整する音程調整装置(例えば、フレットレス電気弦楽器からの信号をフレット電気弦楽器の音程を持つ信号に変換する装置)、およびこれを用いた電気楽器を提供することを主目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために請求項1に記載の発明にあっては、楽音の音程を調整する音程調整装置であって、楽音信号の周波数を検出する周波数検出手段と、複数の基準周波数を格納した記憶手段と、前記周波数検出手段が検出した楽音周波数の値に応じて、前記複数の基準周波数の中から該楽音周波数に最も近い基準ピッチデータ、または該楽音周波数に最も近い高音側の基準ピッチデータ、または該楽音周波数に最も近い低音側の基準ピッチデータを選択し、これを選択周波数として出力する周波数選択手段と、前記楽音信号の周波数が連続的に変化しているか否かを判定して判定信号を生成する判定手段と、前記判定信号が連続を示す場合には、前記楽音周波数が連続して変化する直前の時刻における前記選択周波数と前記時刻における前記楽音周波数との差分ピッチを用いて前記楽音信号を調整し、前記判定信号が不連続を示す場合には、前記選択周波数と前記楽音周波数とのリアルタイムの差分ピッチを用いて前記楽音信号を調整することにより、前記楽音信号の周波数を前記選択周波数に一致させる調整手段とを備えたことを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の発明にあっては、弦の振動を電気信号に変換することにより楽音信号を発生する楽音信号発生手段と、弦の押弦位置を検出する押弦位置検出手段と、前記押弦位置を周波数に変換して前記楽音周波数を生成する周波数検出手段と、複数の基準周波数を格納した記憶手段と、前記周波数検出手段が検出した楽音周波数の値に応じて、前記複数の基準周波数の中から該楽音周波数に最も近い基準ピッチデータ、または該楽音周波数に最も近い高音側の基準ピッチデータ、または該楽音周波数に最も近い低音側の基準ピッチデータを選択し、これを選択周波数として出力する周波数選択手段と、前記楽音信号の周波数が連続的に変化しているか否かを判定して判定信号を生成する判定手段と、前記判定信号が連続を示す場合には、前記楽音周波数が連続して変化する直前の時刻における前記選択周波数と前記時刻における前記楽音周波数の差分ピッチを用いて前記楽音信号を調整し、前記判定信号が不連続を示す場合には、前記選択周波数と前記楽音周波数のリアルタイムの差分ピッチを用いて前記楽音信号を調整することにより、前記楽音信号の周波数を前記選択周波数に一致させる調整手段とを備えたことを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の発明にあっては、請求項1に記載する音程調整装置を有する電気楽器であって、楽音信号を発生する楽音信号発生手段と、この楽音信号発生手段からの楽音信号と、前記音程調整装置によって調整された前記楽音信号とを選択出力する選択出力手段とを備えることを特徴とする。
【0011】
【発明の実施の形態】
A.第1実施形態
1.実施形態の構成
以下、図面を参照してこの発明の実施形態の構成について説明する。本実施形態では、フレットレス電気弦楽器の一例としてフレットレス電気ベースを取り上げ説明する。このフレットレス電気ベースの機械的構成は、図7に示すものと同じであるので、この図を共用して説明する。
【0012】
図7に示すピックアップマイク7からは、弦1の振動に対応した元音信号GSが出力され、この元音信号GSは、図1に示す音程調整装置に供給される。そして、アンプ10で増幅された後、A/D変換器11によってデジタル信号に変換され元音信号GSDとなる。12はピッチ検出手段であり、ここで元音信号GSDが周波数解析され、そのピッチ(周波数)を表す元音ピッチデータGPが生成される。13はROM等で構成されるピッチテーブルであり、そこには、電気ベースの各フレットに対応した基準ピッチデータKPが格納されている。
【0013】
各基準ピッチデータKPは、平均律による音程を指示し、例えば、A3音は440Hz、B3音は466.16Hz、C4音は443.883Hz…という値が設定されている。14はピッチ選択手段であり、元音ピッチデータGPとピッチテーブル13に格納されている基準ピッチデータKPとを比較することにより、元音ピッチデータGPに最も近い2つの基準ピッチデータKPのうちの高音側の基準ピッチデータKPを選択し、これを選択ピッチデータSKPとして出力する。
【0014】
15は減算手段であり、選択ピッチデータSKPから元音ピッチデータGPを減算して差分ピッチデータSPを生成する。16はピッチ補正手段であり、周波数変換器によって構成される。このピッチ補正手段16は、差分ピッチデータSPに基づいて、元音信号GSDのピッチを調整し、そのピッチを選択ピッチデータSKPに一致させる。ピッチ補正手段16の出力信号は、調整済信号GSD´としてD/A変換器17に供給され、アナログの調整済信号GS´に変換される。18は選択手段であり、これにより、調整済信号GS´と元音信号GSのいずれか一方が選択され、その出力信号がアンプ19で増幅された後、外部に出力される。なお、この音程調整装置は、フレットレス電気ベースに内蔵されている。
【0015】
2.実施形態の動作
以下、図1,2を参照してこの発明の第1実施形態の動作について説明する。図2において、点線で示すF1〜F7は、フレット電気ベースのフレットに対応する位置を示したものである。フレットレス電気ベースにあっては、フレットを備えていないが、押弦位置の説明の便宜上、仮想的なフレット位置F1〜F7を示す。なお、以下の説明においてはF1〜F7を仮想フレットと呼ぶこととする。
【0016】
また、図2に示す例にあっては、仮想フレットF5,F6,F7からブリッジ4までの弦長をL5,L6,L7とし、これに対応する振動周波数をf5Hz、f6Hz、f7Hzになるものとする。また、この例におけるフレットレス電気ベースは、標準的なチューニングがなされており、この結果、f5Hz、f6Hz、f7Hzは、各々A0音、A0音、B0音に対応する周波数となる。
【0017】
ここで、演奏者が、仮想フレットF6,F7の間に位置する点Yで、第4弦104を押弦して弾いたとすると、弦長LYに対応したピッチ(周波数)を有する元音信号GSがピックアップマイク7から出力される。今、元音信号GSの周波数をf0Hzとするなら、図1に示すピッチ検出手段12によって検出される元音ピッチデータGPはf0Hzを示す値となる。
【0018】
次に、ピッチ選択手段14は、f0Hzに最も近い2つの基準ピッチデータKPのうち高音側の基準ピッチデータKPを選択する。この場合、ピッチテーブル13にはフレット電気ベースの各フレットに対応するピッチデータが格納されているから、f0Hzに最も近い2つの基準ピッチデータKPは、B0音とA0音を示すデータとなる。したがって、高音側のB0音を示す基準ピッチデータKPが選択され、選択ピッチデータSKPはB0音(f7Hz)を示すデータとなる。
【0019】
その後、減算手段15が、選択ピッチデータSKP(f7Hz)から元音ピッチデータGP(f0Hz)を減算して差分ピッチデータSP(f7−f0Hz)を生成すると、ピッチ補正手段16は差分ピッチデータSP(f7−f0Hz)に基づいて元音信号GSを周波数変換し、選択ピッチデータSKP(f7Hz)と同一周波数を有する調整済信号GSD´を生成する。これをD/A変換した調整済信号GS´は、元音信号GSを単に周波数シフトしたものであるから、元音信号GSと同一の音色を有し、また、その音程はB0音の基準ピッチデータKPと一致する。
【0020】
したがって、Y点を押弦して第4弦104を弾いても、仮想フレットF7の位置を正確に押弦して第4弦104を弾いた場合と同じ音程が得られる。このようにして、フレットのいずれの位置を押さえても、その位置に最も近いフレットの音程が得られる。ところで、フレットレス電気弦楽器は音程を連続して可変することができる点に特徴がある。このため、選択手段18にあっては、元音信号GSと調整済信号GS´とを選択出力できるようにしており、元音信号GSが選択されれば、音程を連続的に可変することができる。
【0021】
以上のように、音程調整装置を用いれば、フレット電気ベースで演奏した場合と同様に、フレット中間位置で押弦しても、正確な音程で演奏することができる。また、元音ピッチデータGPより高音の基準ピッチデータKPを選択ピッチデータSPとし、これを基準に元音信号GSのピッチを調整したので、フレット電気弦楽器奏法と同様に演奏することができる。また、チューニングがある程度不正確であっても、元音信号GSのピッチを基準ピッチデータKPに合わせるように調整するので、正確な音程で演奏することができる。
【0022】
なお、第1実施形態は、元音信号GSのピッチを、これに最も近い2つの基準ピッチのうち高音側の基準ピッチに調整するものであるから、フレット電気弦楽器に慣れた演奏者に好適な実施形態である。
【0023】
B.第2実施形態
第2実施形態が第1実施形態と相違するのは、フレットレス電気ベースに用いられる音程調整装置の部分である。ここで、図3は第2実施形態のフレットレス電気ベースに用いられる音程調整装置のブロック図であり、図1と同一の構成部分には同一の符号を付す。
【0024】
第2実施形態の音程調整装置にあっては、第1実施形態のピッチ検手段12を、押弦位置検出手段20とピッチ変換手段21に置換している。この押弦位置検出手段20は、演奏者が押した弦とその押弦位置を検出し、これらを示す押弦位置信号OSを生成する。押弦位置検出手段20は、例えば、以下の部分から構成される。すなわち、ネック部の内部において、ナット5に対応した位置に配設された一方の電極、この電極に接続された端部を有し弦に沿った細長い抵抗体、および抵抗体に対抗するようその下側に設けられた細長い他方の電極を各弦毎に設け、各抵抗体と一方の電極が、開放弦の状態では短絡せず、押弦位置において抵抗体と一方の電極とが短絡するように所定距離だけ隔てて平行に配設する。そして、押弦位置検出手段20においては、電極間の抵抗値を計測し、これにより、ナット5から押弦位置までの距離を検出し、その検出結果に基づいて、何弦・何フレット目を押弦したかを示す押弦位置信号OSを生成する。なお、押弦位置検出手段20の構成は上記構成に限らない。要は押弦位置を連続的に検出できれば良い。
【0025】
また、ピッチ変換手段21は、ROM等で構成され、ここにはフレットとピッチの変換テーブルが各弦に対応して格納されている。また、第1実施形態と同様にピッチテーブル13には、電気ベースの各フレットに対応した各基準ピッチデータKPが格納されている。
【0026】
図2に示すフレットレス電気ベースは、第1実施形態と同様に、標準的なチューニングがなされており、この結果、第4弦104を仮想フレットF5,F6,F7の位置で押弦して弾いた場合、元音信号GSのピッチf5Hz、f6Hz、f7Hzは、各々A0音、A0音、B0音に対応する周波数となる。また、図2に示す点Zは、仮想フレットF5からフレット間隔の2/10だけ仮想フレットF6よりに位置する。このため、点Zを押弦した場合の押弦位置は5.2フレットとなる。ここで、演奏者が、点Zで、第4弦104を押弦して弾いたとすると、弦長LZに対応したピッチ(周波数)を有する元音信号GSがピックアップマイク7から出力される。この例では、元音信号GSのピッチをf0´Hzとする。
【0027】
まず、図3に示す押弦位置検出手段20は、第4弦の5.2フレット目を押弦したことを示す押弦位置信号OSを生成する。そして、この押弦位置信号OSがピッチ変換手段21に供給されると、ピッチ変換手段21は、押弦位置信号OSに基づくアドレスでROMをアクセスして、元音ピッチデータGPを生成する。元音ピッチデータGPの値は、標準的なチューニングがなされているから、元音信号GSのピッチ値と一致し、f0´Hzを示す。
【0028】
次に、ピッチ選択手段14は、f0´Hzに最も近い2つの基準ピッチデータKP(A0音、A0音)のうち高音側の基準ピッチデータKP(A0音)を選択ピッチデータSKPとして出力するから、選択ピッチデータSKPは、A0音に対応したf6Hzとなる。そして、減算手段15が、選択ピッチデータSKP(f6Hz)から元音ピッチデータGP(f0´Hz)を減算して差分ピッチデータSP(f6−f0´Hz)を生成すると、ピッチ補正手段16は差分ピッチデータSP(f6−f0´Hz)に基づいて元音信号GSを周波数変換し、選択ピッチデータSKP(f6Hz)と同一周波数を有する調整済信号GSD´を生成する。調整済信号GS´は、元音信号GSを単に周波数シフトしたものであるから、元音信号GSと同一の音色を有し、また、その音程はA0音となる。したがって、Z点を押弦して第4弦104を弾いても、仮想フレットF6の位置を正確に押弦して第4弦104を弾いた場合と同じ音程が得られる。このようにして、第1実施形態と同様に、フレットのいずれの位置を押さえても、その位置に最も近いフレットの音程が得られる。
【0029】
一般に、弦の振動振動周波数は、押弦位置により定まる弦長と弦密度によって定まり、また、弦密度は、その弦の張力に依存する。このため、フレットレス電気ベースのチューニングでは、上述したように仮想フレットの位置で所定の音程を得られるように弦の張力が調整される。ところで、この実施形態にあって、押弦位置信号OSは、押弦位置から生成され、また、ピッチ変換手段21に格納されているROMは、標準的なチューニングがなされている場合に対応している。このため、ピッチ変換手段21から出力される元音ピッチデータGPの値は、実際の弦のチューニングには依存せず、押弦位置に応じて一意に定まる。
【0030】
例えば、上述した例のように図2に示す点Zを押弦した場合にあっては、差分ピッチデータSPの値は、仮想フレットF6の位置から点Zまでの距離に応じて定まり、弦のチューニングには依存しない。上述した例と同様に、押弦位置Zに対応したピッチをf0Hzとし、仮想フレットF6の位置に対応したピッチをf6Hzとすると、差分ピッチデータSPの値は、(f6−f0)Hzとなる。ここで、弦のチューニングがずれている状態で、点Zを押弦して弾いた場合には、元音信号GSのピッチは、f0Hzと一致しない。チューニングのずれによる変化分をαHzとすると、元音信号GSのピッチは、(f0+α)Hzとなる。そして、調整済信号GS´は、元音信号GSを差分ピッチデータSPに基づいて周波数変換したものであるから、調整済信号GS´のピッチPPは、次式で表される。
PP=(f0+α)+(f6−f0)=(f6+α)Hz
この式から、調整済信号GS´のピッチPPは、αHzだけチューニングのずれの影響を受けることが判る。したがって、第2実施形態におけるピッチ調整は絶対的なものではなく、相対的なものとなる。なお、第2実施形態も第1実施形態と同様にフレット電気弦楽器に慣れた演奏者に好適な実施形態である。
【0031】
C.第3実施形態
1.実施形態の構成
第3実施形態も、第1,第2実施形態と同様に、フレットレス電気ベースに関するものである。以下、図面を参照してこの発明の第3実施形態の構成について説明する。図4は、第3実施形態のフレットレス電気ベースに用いられる音程調整装置のブロック図である。図4が図3と相違するのは、遅延手段22、減算手段23、判定手段24および補正値保持手段25が新たに追加された点である。以下、相違点について説明する。
【0032】
図において、遅延手段22は、所定時間だけ元音ピッチデータGPを遅延する。また、減算手段23は、元音ピッチデータGPから遅延手段22の出力を減算して微分ピッチBPを生成する。この微分ピッチBPは、現在の元音ピッチデータGPから過去の元音ピッチデータGPを減算して生成され、遅延手段22の遅延時間TD当たり、元音ピッチデータGPがどれだけ変化しているかを示す。
【0033】
また、判定手段24は、微分ピッチBPの値を絶対値化し、不要なパルスを除去した後、所定値を越えるか否かを判定し、所定値を越える場合にはハイレベルとなり、一方、所定値を下回る場合にはローレベルとなる制御信号SSを生成する。ここで不要なパルスを除去するのは、元音ピッチデータGPがステップ状に変化する際(例えば、A0音からB0音に変化するタイミング)に生ずるパルスを除去して、誤動作を防止するためである。また、所定値は、元音ピッチデータGPの変化が連続的であるか否かが検出できるように設定する。したがって、制御信号SSがハイレベルの期間は元音ピッチデータGPが連続的に変化する期間を示し、一方、ローレベルの期間は、元音ピッチデータGPが不連続的に変化する期間を示す。
【0034】
また、補正値保持手段25は、制御信号SSがハイレベルの期間中、制御信号SSの立上エッジ発生時の差分ピッチデータSPを保持出力し、制御信号SSがローレベルの期間中、現在の差分ピッチデータSPをそのまま出力する。
【0035】
2.実施形態の動作
以下、図5を参照してこの発明の第3実施形態の動作について説明する。図5はこの実施形態のタイミングチャートである。
【0036】
図5(A)は元音ピッチデータGPの時間変化を示したものである。この図において、0〜T4の期間は元音ピッチデータGPがステップ状に変化しており、通常の演奏法で演奏された期間である。一方、T4〜T6の期間は、チョーキング奏法で演奏された期間である。このチョーキング奏法は、弦を弾いた後、押弦した指をフレットと平行に動かすものであり、この奏法を行うと、弦の張力は連続的に変化する。図に示す例は、時刻T4から時刻T5にかけて押弦したまま弦を平行移動させ、時刻T5から時刻T6にかけて元の位置に戻す奏法を行った場合である。このような奏法を行うと、元音ピッチデータGPの値は、時刻T4より増加し、時刻T5で最大となり、その後、徐々に減少して時刻T6で元の元音ピッチデータGPの値に戻る。このように、通常演奏期間(0〜T4)では、元音ピッチデータGPの変化は不連続となるが、チョーキング演奏期間(T4〜T6)では、元音ピッチデータGPが連続的に変化する。
【0037】
微分ピッチデータBPは、現在の元音ピッチデータGPから過去の元音ピッチデータGPを減算して得られるものであるから、その波形には、図5(B)に示すように、元音ピッチデータGPがスッテプ状に変化する時刻T1,T2,T3において、パルスが見られる。このパルスの幅は、遅延手段22の遅延時間TDと一致する。
【0038】
次に、微分ピッチデータBPが判定手段24に供給されると、まず、微分ピッチデータBPは絶対値化され、同図(C)に示す絶対値信号ZPが生成される。この後、絶対値信号ZPを基準レベルRと比較し、基準レベルRを上回る期間はハイレベルとなり、基準レベルRを下回る期間はローレベルとなる比較信号HPを生成する(同図(D)に図示)。そして、比較信号HPに含まれるパルスの内、パルス幅TAよりも短いパルスを除去して、制御信号SSを生成する。ここでTAはTDより大きく設定する。これにより、比較信号HP中の時刻T1,T2,T3,T5で発生するパルスが除去され、同図(E)に示すように、時刻T4´〜T6´の期間中、ハイレベルとなる制御信号SSが生成される。ここで、時刻T4´と時刻T4、時刻T6と時刻T6´は、ほぼ一致するから、制御信号SSのレベルは、元音ピッチデータGPが連続的に変化しているか否かを示す。
【0039】
次に、制御信号SSが時刻T4´で立ち上ると、図4に示す補正値保持手段25は、時刻T4´から差分ピッチデータSPの保持を開始し、制御信号SSがハイレベルの期間中、保持した差分ピッチデータSPをピッチ補正手段25に供給する。これを受けたピッチ補正手段25は、時刻T4´から時刻T6´の間、時刻T4´における差分ピッチデータSPに基づいて元音信号GSのピッチ調整を行う。この例では、チョーキング期間中は、通常演奏期間の最後の差分ピッチデータSP(時刻T4´における差分ピッチデータ)の値が保持されるから、この期間においては元音信号GSのピッチ変化がそのまま調整済信号GS´のピッチ変化となる。すなわち、チョーキング開始時点における音程は、正確なピッチに調整されるが、その後のチョーキング奏法による連続したピッチ変化は、調整済信号GS´に反映されるのである。
【0040】
一方、時刻0〜T4´の期間にあっては、制御信号SSがローレベルとなり、補正値保持手段25は、差分ピッチデータSPをそのままピッチ補正手段16に供給する。このため、通常演奏期間中にあっては、第1実施形態と同様に、調整済信号GS´は、元音信号GSと同一の音色を有し、押弦位置より高音側で最も近いフレットの音程が得られる。
【0041】
このように、第3実施形態にあっては、元音ピッチデータGPが連続的に変化するか否かを判定し、その判定結果に基づいて生成された差分ピッチを用いて、元音信号GSのピッチ調整を行ったので、元音信号GSのピッチを連続的に変化させる演奏法と通常の演奏法のいずれにも対応することができる。
【0042】
D.変形例
本発明は上述した実施形態に限定されるものでなく、例えば以下のように種々の変形が可能である。
【0043】
▲1▼上記第1,3実施形態において、ピッチ検出手段12は、例えば、元音信号GSのゼロクロス点を求め、ゼロクロス点間のクロック数をカウントすることにより、元音ピッチデータGPを生成すれば良い。
【0044】
▲2▼上記第1〜第3実施形態において、純正律の音程を示す基準ピッチデータKPをピッチテーブル13に格納しても良い。また、平均律の音程を示す基準ピッチデータKPを格納したピッチテーブルと純正律の音程を示す基準ピッチデータKPを格納したピッチテーブルとを別個に用意し、これらをスイッチの操作によって瞬時に切り換えられるように構成しても良い。また、ピッチテーブル13に格納する基準ピッチデータKPを四半音単位とすれば、四半音単位のフレットを有する電気弦楽器を実現することができる。
【0045】
▲3▼上記第1〜第3実施形態において、ピッチ選択手段14で生成する選択ピッチデータSKPを部分的に変更することにより、フレットのある部分での移調が可能となる。具体的には、元音ピッチデータGPが所定の音域内にあるか否かを検出し、所定の音域内にある場合に、元音ピッチデータGPに最も近い基準ピッチデータKPから全音下げた基準ピッチデータKPを選択すれば良い。例えば、電気ベースの第4弦の開放から第4フレットまでは、E0〜G0の音を発音するのが通常であるが、この音域についてのみ上記処理を行うことによって、同図(B)に示すように、D0〜F0の音を発音させることができる。これにより、従来特殊なペグで実現していたローD(極低音D)を電気的に得ることができる。
【0046】
▲4▼上記第1〜第3実施形態において、ピッチ選択手段14は、元音ピッチデータGPに最も近い2つの基準ピッチデータKPのうち、高音側の基準ピッチデータKPを選択ピッチデータSKPとして出力したが、低音側の基準ピッチデータKPを選択ピッチデータSKPとして出力しても良い。また、単に元音ピッチデータGPに最も近い基準ピッチデータKPを選択ピッチデータSKPとして出力しても良い。この例にあっては、ある音程の楽音を発音させる場合、その音程に対応した仮想フレット付近を押弦すれば、押弦位置が当該仮想フレットの高音側であるか低音側であるかに拘らず当該仮想フレットに対応した音程で楽音を発音させることができる。このため、フレットレス電気ベースにある程度慣れた演奏者に好適である。
【0047】
▲5▼上記第3実施形態にあっては、元音ピッチデータGPが連続しているか否かを判定し、この判定結果によって補正処理を変更するために、遅延手段22、減算手段23、判定手段24および補正値保持手段25を第1実施形態に適用した。ところで、第1実施形態と第2実施形態とは、元音ピッチデータGPの生成方法が相違するだけである。したがって、図10に示すように、遅延手段22、減算手段23、判定手段24および補正値保持手段25を第2実施形態に適用しても良い。
【0048】
この例にあって、チョーキング奏法で演奏したとすると、押弦位置はネックに対して横方向にのみ変化するので、元音ピッチデータGPの値は変化しない。このため、チョーキング奏法期間中、差分ピッチデータSPの値は一定となり、これが補正値保持手段25で保持されることなく、そのままピッチ補正手段16に供給される。したがって、この期間中は、元音信号GSのピッチ変化がそのまま調整済信号GS´のピッチ変化となり、第3実施形態と同様の効果が得られる。
【0049】
ただし、チョーキング奏法において、弦を引った状態を保持した場合には、この例による調整済信号GS´のピッチと第3実施形態による調整済信号GS´のピッチは相違する。この点について図11を用いて説明する。ここで、同図(A)は、時刻0からキョーキング奏法を開始し、時刻tで弦を引った状態を保持した場合の元音信号GSのピッチ変化を示したものである。この元音信号GSが第2実施形態に係わる音程調整装置に供給されたとすると、その調整済信号GS´は同図(B)に示すものとなる。この場合には、押弦位置の保持を開始した時刻tからは、通常の音程調整が行なわれるため、調整済信号GS´の音程はCとなる。一方、この例による音程調整装置に同図(A)に示す元音信号GSを供給したとすると、その調整済信号GS´は同図(B)に示すものとなる。この場合には、時刻t以降においても、時刻0〜時刻tまでと同様に音程調整が行なわれるから、時刻tにおいて、調整済信号GS´のピッチにスッテプ状の変化は生じない。
【0050】
▲6▼上記第3実施形態にあっては、元音ピッチデータGPを連続的に変化させる演奏法の一例として、チョーキング奏法を挙げて説明したが、元音ピッチデータGPを変化させる奏法には、音程を振動的に変化させるビブラート奏法や音程を一方向に連続させて変化させるスライド奏法等があり、第3実施形態をこれらの奏法に適用できることは勿論である。
【0051】
▲7▼上記第1〜第3実施形態にあっては、音程調整装置はフレットレス電気ベースの一部分として説明したが、この音程調整装置は独立した装置として用いても良いことは勿論である。この場合には、当該装置に入力される楽音信号の音程を調整することができる。
【0052】
▲8▼上記第1,第3実施形態に記載した電気ベースにあっては、弦振動を検出するピックアップマイクを1個用いるのが通常である。このため、音程調整装置を1つ設けていたが、電気ギター等の電気弦楽器に音程調整装置を適用する場合にあっては、各弦に対応してピックアップマイクと音程調整装置をそれぞれ設ければ良い。
【0053】
▲9▼上記第1〜第3実施形態にあっては、音程調整装置をフレットレス電気ベースに適用したが、この音程調整装置をトロンボーン等の吹奏楽器に適用しても良い。
【0054】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1〜4に記載した発明によれば、楽音周波数を基準周波数に合わせるように調整するので、楽音の音色を損なうことなく、その音程を調整するができる。特に、請求項2に記載した発明によれば、楽音周波数が連続して変化しているか否かによって、調整を変更するから、楽曲の一部がチョーキング奏法等で演奏された楽音信号に対しても調整を施すことができる。
【0055】
また、電気楽器に本発明を適用した場合にあっては、フレットレス電気楽器をフレット電気楽器と同様に取り扱うができる。さらに、調整された楽音信号と調整されていない楽音信号を選択出力できるので(請求項4)、例えばフレットレス電気弦楽器とフレット電気弦楽器を兼用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の第1実施形態に係るフレットレス電気ベースに用いる音程調整装置のブロック図である。
【図2】フレットレス電気ベースの平面図である。
【図3】この発明の第2実施形態に係るフレットレス電気ベースに用いる音程調整装置のブロック図である。
【図4】この発明の第3実施形態に係るフレットレス電気ベースに用いる音程調整装置のブロック図である。
【図5】第3実施形態のタイミングチャートである。
【図6】フレット電気弦楽器の平面図である。
【図7】フレットの動作を説明するための側面図である。
【図8】フレットレス電気弦楽器の平面図である。
【図9】部分的に移調を行う変形例を説明するための説明図である。
【図10】この発明の他の実施形態に係るフレットレス電気ベースに用いる音程調整装置のブロック図である。
【図11】音程調整装置の効果を比較して説明するための説明図である。
【符号の説明】
1 弦
7 ピックアップマイク(楽音信号発生手段)
12 ピッチ検出手段(周波数検出手段)
13 ピッチテーブル(記憶手段)
14 ピッチ選択手段(周波数選択手段)
15 減算手段(差分検出手段)
16 ピッチ補正手段(調整手段)
18 選択手段(出力手段)
19 アンプ(出力手段)
20 押弦位置検出手段(周波数検出手段)
21 ピッチ変換手段(周波数検出手段,変換手段)
22 遅延手段(判定手段)
23 減算手段(判定手段)
24 判定手段
25 補正値保持手段(周波数保持手段)
SP 差分ピッチ(差分周波数)
GP 元音ピッチ(楽音周波数)
SKP 選択ピッチ(選択周波数)
KP 基準ピッチ(基準周波数)
GS 元音信号(楽音信号)
SS 制御信号(判定信号)

Claims (3)

  1. 楽音の音程を調整する音程調整装置であって、
    楽音信号の周波数を検出する周波数検出手段と、
    複数の基準周波数を格納した記憶手段と、
    前記周波数検出手段が検出した楽音周波数の値に応じて、前記複数の基準周波数の中から該楽音周波数に最も近い基準ピッチデータ、または該楽音周波数に最も近い高音側の基準ピッチデータ、または該楽音周波数に最も近い低音側の基準ピッチデータを選択し、これを選択周波数として出力する周波数選択手段と、
    前記楽音信号の周波数が連続的に変化しているか否かを判定して判定信号を生成する判定手段と、
    前記判定信号が連続を示す場合には、前記楽音周波数が連続して変化する直前の時刻における前記選択周波数と前記時刻における前記楽音周波数との差分ピッチを用いて前記楽音信号を調整し、前記判定信号が不連続を示す場合には、前記選択周波数と前記楽音周波数とのリアルタイムの差分ピッチを用いて前記楽音信号を調整することにより、前記楽音信号の周波数を前記選択周波数に一致させる調整手段と
    を備えたことを特徴とする音程調整装置。
  2. 弦の振動を電気信号に変換することにより楽音信号を発生する楽音信号発生手段と、
    前記弦の押弦位置を検出する押弦位置検出手段と、
    前記押弦位置を周波数に変換して楽音周波数を生成する周波数検出手段と、
    複数の基準周波数を格納した記憶手段と、
    前記周波数検出手段が検出した楽音周波数の値に応じて、前記複数の基準周波数の中から該楽音周波数に最も近い基準ピッチデータ、または該楽音周波数に最も近い高音側の基準ピッチデータ、または該楽音周波数に最も近い低音側の基準ピッチデータを選択し、これを選択周波数として出力する周波数選択手段と、
    前記楽音信号の周波数が連続的に変化しているか否かを判定して判定信号を生成する判定手段と、
    前記判定信号が連続を示す場合には、前記楽音周波数が連続して変化する直前の時刻における前記選択周波数と前記時刻における前記楽音周波数の差分ピッチを用いて前記楽音信号を調整し、前記判定信号が不連続を示す場合には、前記選択周波数と前記楽音周波数のリアルタイムの差分ピッチを用いて前記楽音信号を調整することにより、前記楽音信号の周波数を前記選択周波数に一致させる調整手段と
    を備えたことを特徴とする電気楽器。
  3. 請求項1に記載の音程調整装置を有する電気楽器であって、楽音信号を発生する楽音信号発生手段と、この楽音信号発生手段からの楽音信号と、前記音程調整装置によって調整された前記楽音信号とを選択出力する選択出力手段とを備えることを特徴とする電気楽器。
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