JP3617008B2 - 通線管支持具 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、樹脂製下水管内に敷設する通線管又は通信線をこの下水管内面に沿って支持する通線管支持具に関する。
【0002】
本発明に言う「通線管」とは通信線を挿通する保護管を意味し、「通線管支持具」とは通線管又は通信線いずれかを支持するものとして通線管の語をもって代表している。そして、この通線管支持具によって支持された通線管又は通信線が、下水管内面に「通信線路」を構成する。
【0003】
【従来の技術】
下水管内に通線管又は通信線を敷設するには、通線管又は通信線を支持する通線管支持具を下水管内に取り付ける必要がある。この通線管支持具としては様々なものがあり、新設の下水管では、下水管自体に通線管支持具を予め取り付ける、又は通線管支持具を一体に形成するものもある。しかし、むしろ既設の下水管に対して通線管支持具を取り付けることができる方が好ましい。こうした既設の下水管に対して取り付ける通線管支持具としては、例えば特許文献1を挙げることができる。
【0004】
具体的には、下水管内面の略上半周に圧接して固定される取付具(通線管支持具)であって、下水管内面の上半周より少し長い略半環状のバネ板の中央に、光ファイバーケーブル支持用の凹曲部が形成されており、この凹曲部の両側の湾曲板部は、その下端間の間隔が管の内径より大きくなるように両外側へ拡開されていると共に、この湾曲板部の曲率半径が実質的に管の内径の1/2に設定した構成である。このほか、通線管支持具としての取付安定性を確保するために、前記湾曲板部から安定翼片を前後に突設したり、湾曲板部の外面に下水管内面へ食い込む尖った突起を形成している。
【0005】
【特許文献1】
特開2000‐104325号公報(該当頁、該当図)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上記先行技術は、下水管内面に沿った湾曲板部を圧接して通線管支持具の下水管に対する位置固定を図る。前記湾曲板部は、下水管内面に密着させ、更に各湾曲板部は側縁に傾斜面を形成して、水流への抵抗を低減しているが、やはり圧接のみの位置固定は不安定で、湾曲板部を下水管内面に接着することが好ましいと述べている。また、通線管支持具の平行移動防止用に下水管内面へ食い込む突起を湾曲板部外面に設けたり、通線管支持具の傾倒防止用に湾曲板部から前後方向(湾曲板部の延在直交方向)へ安定翼片を突設している。これら突起及び安定翼片は、やはり湾曲板部による下水管内面への圧接だけでは位置固定が不十分で、通線管支持具が動いてしまう可能性を示唆している。このような通線管支持具は、水流のある下水管内での通線管又は通信線の支持手段としては不安定であり、永続的な通信線路の構築が難しい問題がある。
【0007】
通線管支持具は、一方で、永続的な通信線路の構築が可能な程度に安定して通線管又は通信線路を支持できる必要があるが、他方で、施工の手間及び労力を低減するために取付手順が簡易かつ容易であることが好ましい。この点、上記先行技術は、一対の湾曲板部に両外から負荷をかけて狭めた状態で下水管内へ持ち込み、前記負荷を取り除くことで設置が完了する簡易かつ容易な取付手順で済む利点があった。そこで、上記先行技術相当の簡易かつ容易な取付手順でありながら、位置固定の安定性を確保できる通線管支持具を開発するため、検討した。
【0008】
【課題を解決するための手段】
検討の結果開発したものが、樹脂製下水管内に敷設する通線管又は通信線を支持部に載置又は支持部から吊下して支持する通線管支持具において、支持部から斜め下方向に突出してこの支持部に片持ちで弾支される一対の弾性節部それぞれから下水管内面に向けて掛止爪を突出してなり、弾性節部が無負荷な初期状態で、支持部又は弾性節部の最頂部と両掛止爪の各先端とを結ぶ接円弧半径が下水管内面半径より大きく、かつ両掛止爪端の間隔が下水管内面直径より小さくなるように、各掛止爪は弾性節部から突出した通線管支持具である。
【0009】
本発明の通線管支持具は、支持部及び弾性節部の境を弾支軸とし、通線管支持具全体として、支持部に対して各弾性節部が弾性を発揮するバネ部材になっており、板材又は棒材いずれからでも構成できる。また、通線管支持具全体として、構成要素である支持部、弾性節部及び掛止爪を別体に作成し、相互に連結又は接続して構成できる。すなわち、支持部は弾性節部と一体の部材で、この支持部との境を折り曲げて弾性節部を形成する構成や、支持部は弾性節部と別体の部材で、この支持部との境に弾性節部を接続する構成である。しかし、生産性を考慮した場合、一枚の金属板から打抜きして通線管支持具全体を一体に形成するとよい(前者の構成)。
【0010】
具体的には、前記打抜いた金属板を平面直交方向に折り曲げて支持部及び弾性節部を形成し、掛止爪は弾性節部から型抜き、引き起こして形成し、弾性節部端部を所定形状に切除、加工して形成する。この場合、支持部及び弾性節部の境である折曲部位が弾支軸となる。掛止爪は、下水管内面に食い込む突起状部位で、最低各弾性節部の対称位置に1つずつ設ければよいが、好ましくは下水管の延在方向に並べて複数設けるとよい。これら各部は、弾性を発揮する樹脂板材から全体構成で一度に一体成形することもできる。以下では、こうした一体成形で全体構成を作る構成に基づいて説明する。
【0011】
本発明の通線管支持具は、掛止爪を下水管内面に食い込ませて位置固定を図る。これは、下水管内面に対する掛止爪の物理的係合による位置固定のため、下水管内の水流によっても通線管支持具が移動、傾倒しない。このように、本発明は下水管内面に対する掛止爪の食い込みを利用することから、主たる適用対象は掛止爪が食い込み可能な樹脂製下水管となる。しかし、鋳鉄製又は鋼製下水管の場合には内面に粘着材層を形成して掛止爪を食い込ませたり、FRP製下水管の場合には内面をTG付近で加熱した後に掛止爪を食い込ませれば、本発明の通線管支持具を利用しうる。
【0012】
上記本発明の主要作用である下水管内面に対する掛止爪の食い込みは、弾性節部による弾性力を利用して、下水管内面に掛止爪を確実に当接させる作用と、前記下水管内面に対する掛止爪の当接状態から、支持部を介した左右一対の弾性節部がトグル機構として働き、掛止爪を下水管内面に押し込む作用とから実現する。前者の作用は取付手順を簡易かつ容易にし、後者の作用は位置固定の安定性をもたらす。
【0013】
弾性節部は、支持部から斜め下方向に突出して片持ちで弾支しているため、弾支軸を中心に弾性変形して左右一対の弾性節部の間隔を狭める(閉じる)ことができる。弾性節部の間隔を狭めるには、下水管内面半径方向外側から負荷をかけるだけでよく、閉じた弾性節部は負荷に相当する弾性力を内在的に発生させることになる。
【0014】
これから、当然に前記負荷を取り除けば、弾性節部は内在させた弾性力によって負荷のない状態=初期状態へと復元する。掛止爪は、こうした弾性節部から下水管内面に向けて突出して設けているため、弾性節部を閉じた状態で通線管支持具を下水管内面に宛てがえば、確実に掛止爪を下水管内面に当接させることができる。弾性節部による弾性力で掛止爪を下水管内面に当接させる前記状態は、掛止爪を下水管内面に食い込ませて位置固定を図る準備状態と見ることができる。
【0015】
掛止爪を下水管内面に確実に当接させるには、弾性節部が弾性力を発生させている間、すなわち完全に復元するに至らない過程で、掛止爪が下水管内面に到達しなければならない。よって、本発明では、弾性節部が無負荷な初期状態で、要件(1):支持部又は弾性節部の最頂部と両掛止爪の各先端とを結ぶ接円弧半径が下水管内面半径より大きく、かつ要件(2):両掛止爪端の間隔が下水管内面直径より小さくなるように、各掛止爪が弾性節部から突出するようにした。
【0016】
ここで、支持部又は弾性節部の最頂部とは、支持部から下方へ向けて突出した弾性節部に対して逆に上方へ突な部位の先端を意味し、通常支持部及び弾性節部の境(弾支軸)が相当する。例えば、弾性節部に凹凸を設けなければ、支持部上縁が最頂部となり、支持部が弾支部より下方に突な構造であれば、支持部上縁にあたる部位が最頂部となる。
【0017】
要件(1)により、支持部又は弾性節部の最頂部を下水管内面に押し当てると、必然的に掛止爪端部が下水管内面に押され、この掛止爪を突出する弾性節部に下水管内面半径方向外側から負荷が加わって、弾性節部が閉じて弾性力を発生させることができる。また、要件(2)により、通線管支持具全体を下水管に搬入し、前記支持部又は弾性節部の最頂部を下水管内面に当接させる作業を実施できる。これから、本発明の通線管支持具は、下水管内に搬入し、下水管内面の取付対象部位(通常頂上部)に支持部又は弾性節部の最頂部を押し当て、この押し当ての負荷を除去すると、弾性節部が無負荷状態に向けて復元する過程で掛止爪が下水管内面に必ず当接する。
【0018】
下水管に対して掛止爪を当接させた状態から、支持部を挟んで左右斜め下方に突出する弾性節部はトグル機構を構成し、掛止爪を下水管内面に向けて押し込むことになる。この場合、前記トグル機構の働きを重視すれば、掛止爪は、弾性節部が無負荷な初期状態で、両掛止爪の突出方向が同一直線上に並ぶように弾性節部から突出させればよい。また、弾性接部の復元力方向に掛止爪を押し込む力をよりよく発揮させるならば、掛止爪は、弾性節部が無負荷な初期状態で、両掛止爪の突出方向が各弾性節部の接線方向に一致するように、弾性節部から突出させればよい。
【0019】
掛止爪を下水管内面に向けて押し込む力、すなわち弾性節部を押し広げる力は、支持部自身の重みのほか、支持部が支持する通線管又は通信線の重みによる。すなわち、本発明の通線管支持具は、支持部に通線管又は通信線を載置又は吊下すると、掛止爪をより深く下水管内面に食い込ませることができ、こうした通線管又は通信線の設置態様自体が通線管支持具の位置固定の安定性を確保する。
【0020】
掛止爪を下水管内面に食い込ませることで実現する位置固定の安定性は、弾性節部によるトグル機構の働きを妨げない方向(下水管延在方向)や強める方向(支持部を押し下げる方向)の外力には影響を受けないが、掛止爪に捻りを与える傾倒によって影響を受ける可能性がある。これから、通線管支持具の傾倒防止作用を高めるため、通線管支持具の重心を弾支軸より下方にするとよい。この場合、通線管又は通信線を吊下する支持部は、通常弾支部より下方に通線管又は通信線を支持することになり、重心は弾支部より下方に来るので特に考慮しなくてよいが、通線管又は通信線を載置する支持部では、下水管内面に対して凹断面樋状で、通線管又は通信線を載置する構造にすることで、重心を弾支部より下方へ持ってくることができる。
【0021】
また、掛止爪を下水管内面に食い込ませることで実現する位置固定の安定性は、通線管支持具が正しい位置関係、具体的には支持部、弾性節部及び掛止爪を含むトグル機構としての開き方向が下水管の延在直交方向に向き、特に各弾性節部毎に設けた複数の掛止爪が等しく下水管内面に食い込んだ場合に確保される。しかし、実際の取付作業では、支持部、弾性節部及び掛止爪の並びが下水管の延在直交方向に必ずしも向くとは限らない。特に各弾性節部毎に設けた複数の掛止爪の食い込み角度や食い込み程度が異なることが考えられるので、こうした掛止爪の食い込み状態が異なる場合でも、通線管支持具としての位置固定の安定性を図る必要がある。そこで、本発明の通線管支持具における弾性節部に、下水管内面に向けて下水管内面半径方向に支持部又は弾性節部を弾支する弾性安定部を設けることとした。
【0022】
本発明の通線管支持具は、上記弾性安定部を設けない場合、下水管内面に食い込ませる掛止爪だけで取り付けた状態にあり、いわば下水管内面に架橋した恰好になっている。上記弾性安定部は、前記掛止爪に加えた下水管内面への接触部位を提供するもので、下水管内面に対して支持部又は弾性節部を弾支することで、支持部又は弾性節部と下水管内面との隙間の程度を問わずに両者の間に介在して、通線管支持具に緊張状態を与え、特に取付後の通線管支持具における傾倒に対して姿勢安定を図る。
【0023】
この弾性安定部は、下水管内面に対して弾性節部を弾支すればよいので、例えば弾性を有する樹脂又は発泡樹脂やコイルスプリングを別途弾性節部に取り付けるだけでよいが、好ましくは支持部、弾性節部及び掛止爪を一体に金属板から打抜いて形成する際に併せて型抜きし、支持部又は弾性節部から跳ね上げる板バネとして構成するとよい。この弾性安定部による弾性力は、支持部を押し下げる方向へ付勢する力であり、トグル機構としての弾性節部の押し開きを強くし、掛止爪の下水管内面への食い込みを深くする働きも有する。
【0024】
ここで、弾性安定部は、先端を折り曲げて下水管内面に対する当接端部を形成すれば、前記折曲部位の縁部又は当接端部の縁部を補助爪として、下水管内面に対して前記補助爪を食い込ませることができ、通線管支持具の安定性を高めることができる。この場合、弾性安定部を弾性節部に向けて捻るように折り曲げることで、折曲部位の縁部又は当接端部の縁部を局部的に下水管内面に当接するようになる。また、弾性安定部の姿勢変化が下水管内面に対して傾斜するため、補助爪となる折曲部位の縁部又は当接端部の縁部は下水管内面に食い込みやすい。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態について図を参照しながら説明する。図1は本発明に基づく通線管支持具1の一例を示す斜視図、図2は同通線管支持具1の正面図、図3は同通線管支持具1の平面図、図4は同通線管支持具1の側面図であり、図5は同通線管支持具1と樹脂製下水管2との関係を表す下水管延在直交方向断面図である。
【0026】
本例の通線管支持具1は、図1〜図4に見られるように、1枚の金属板から型抜きし、各部の形成に従った折曲加工を施すことにより、支持部3、弾性節部4,4、掛止爪5,5,5,5及び弾性安定部6,6,6,6の各構成要素を一体成形した板バネ部材である。金属板としては、耐酸性及び弾性を備えた素材が好ましく、例えばチタン又はチタン合金を例示することができる。
【0027】
支持部3は、下水管内面7(図5以下参照)に対して凹断面樋状で、通線管又は通信線8(図7以下参照)を載置する水平板9とこの水平板9両側から下水管半径方向に立ち上がる側面板10,10とからなる。弾性節部4は、前記支持部3の側面板10,10上縁から連続して折り曲げて下水管内面7に倣う断面湾曲状に形成し、支持部3と反対かつ斜め下方向に突出して片持ちで弾支している。弾支軸11は、支持部3及び弾性節部4,4の境となる折曲部位であり、本例における支持部3の最頂部である。
【0028】
弾性節部4は、図5に見られるように、下水管内面半径Rtに略等しい曲率半径Raの断面円弧状とし、取付後、弾性節部4,4と下水管内面7との隙間を極力小さくしている。これは、支持部3に載置する通線管又は通信線8を下水管内面の高い位置に敷設する意味も有する。本例では、支持部3が下水管内面7に対する凹断面であるから、通線管支持具1全体を下水管内面7に添わせて取り付けることができるようになり、例えば異物侵入の虞れがある隙間を狭くできる。
【0029】
各弾性節部4は、端部から前後方向に張り出す補助部12,12を設けている。掛止爪5は、前記補助部12,12両端に一対(2個)、それぞれ各弾性節部4の延在方向外向きで(図1又は図3参照)、支持部3を挟んで左右対称位置にある掛止爪5,5の突出方向が同一直線上に並ぶように(図2参照)、補助部12から折り曲げて略水平に突出している。補助部12を利用して間隔を開けた一対の掛止爪5,5を設けることで、一方の掛止爪5を中心とした通線管支持具1の傾倒(回転運動)を他方の掛止爪5が防止し、位置固定の安定性を高めることができる。
【0030】
また、支持部3を挟んで左右対称位置にある掛止爪5,5の突出方向を同一直線上にすることで、弾性節部4,4を開くことに伴うトグル機構の力を最も効率よく利用して、確実に掛止爪5,5を下水管内面7に食い込ませることができる。更に、本例の掛止爪5,5は、下水管内面7へ食い込みやすくなるように、平面視略直角三角状に形成し、斜辺は一対の掛止爪5,5の対向側(内側)に配している。
【0031】
弾性安定部6は、前記補助部12,12両端に一対(2個)、それぞれ各弾性節部4の延在方向内向きで(図1又は図3参照)、各弾性節部4の接線方向より上向きに(図2参照)、補助部12から折り曲げて斜め上方に突出し、先端を折り曲げて下水管内面7に対する当接端部13としている。本例の弾性安定部6は、当接端部13を下水管内面7に当接し、補助部12に対して下方に向けた弾性力を発揮する。
【0032】
この弾性安定部6の弾性力は、弾性節部4,4が開くトグル機構の力を高めて掛止爪5,5を下水管内面7へ押し付ける働きを有する。しかし、前記弾性力が過剰に発揮されると、かえって掛止爪5が下水管内面7を削いで剥離することにもなりかねないので、本例の弾性安定部6は当接端部13に向けて先細りの平面視略台形状とし、先端に向かって湾曲することで発生する弾性力を抑制している。
【0033】
各部の大きさ(長さ)には特に限定はないが、各部の大きさ(長さ)より決まる本発明の通線管支持具1全体が、次のような条件を要求する。すなわち、要件(1):支持部3の最頂部(弾支軸11)と左右一対の両掛止爪5,5の各先端とを結ぶ接円弧半径Roが下水管内面半径Rtより大きく、かつ要件(2):前記両掛止爪5,5端の間隔Loが下水管内面直径Dt=2Rtより小さくなるように、各掛止爪5,5を弾性節部4端の補助部12,12両端から下水管内面に向けて突出することである。
【0034】
このほか、掛止爪5の下水管内面7への食い込みをよりよくするには、取付状態における通線管支持具1が下水管内面7に占める割合が85〜135度、好ましくは90〜120度の範囲に収まることが望ましい。また、弾性安定部6は、各弾性節部4の接線方向に対して、5〜35度、好ましくは10〜30度の仰角をもって斜め上方に突出するとよい。
【0035】
本発明の通線管支持具1の下水管内面7への取付は、簡易かつ容易である。これから使用する取付装置は、(a)下水管に侵入可能な搬送部と、(b)本発明の通線管支持具を多数収納する積載部と、(c)前記積載部から1個毎に下水管支持具を取り出し、下水管内面の取付希望部位(通常下水管内面の頂部)に押し当てる昇降部とを兼ね備えた構成であればよい。
【0036】
これからわかるように、本発明の通線管支持具1は、従来同様の支持具と異なり、取付に際して弾性節部4,4を閉じた状態で保持しておく必要がない。支持部3又は弾性節部4,4の最頂部を下水管内面7の取付希望部位に押し当てれば弾性節部4,4が自ら閉じ、弾性力を内在させ、下水管内面7への押し付けを解除すれば自律的に弾性節部4,4を拡開して掛止爪5,5,5,5を下水管内面7へ当接させ、取り付け状態を保持する程度に食い込ませる(引っ掛かる程度にする)ことができるからである。
【0037】
以下では、上記例示の通線管支持具1を下水管内面7の頂部に対して取り付ける場合を例に上げ、取付過程を図示(取付装置除く)により詳述する。図6は通線管支持具1を下水管内面7の頂部に押し付ける過程を示した樹脂製下水管2の下水管延在直交方向断面図、図7は通線管支持具1を下水管内面7の頂部に押し付けを解除して取付完了の過程を示した樹脂製下水管2の図6相当下水管延在直交方向断面図、図8は図7中A−A断面図、図9は図7中B−B断面図である。
【0038】
本発明の通線管支持具1は、下水管内面7であれば周方向のいずれに対しても取り付けることができる。例えば、図示は省略するが、下水管内面7の側部へ垂直向きに通線管支持具1を取り付けることができる。この場合、支持部3における通線管又は通信線8の安定した載置又は吊下は、別途支持部3の構成を変更することで対応する。
【0039】
弾性節部4,4に負荷を掛けない初期状態で通線管支持具1を下水管内面7の頂部に向けて持ち上げ、最頂部となる弾支軸11,11を前記下水管内面7の頂部に押し付けると、図6に見られるように、弾性安定部6,6が湾曲して弾性節部4,4と略同一に湾曲及び傾倒すると同時に、補助部12,12から略水平方向に突出した掛止爪5,5が下水管内面7に当接して押され、弾性節部4,4自体が内向きに少し閉じる。
【0040】
この段階では、弾性節部4に内在的な弾性力が発生しており、この弾性力がなくなるまでは掛止爪5を下水管内面7に当接させておくことができる。取付装置は、前記弾性安定部6及び弾性節部4の変化を妨げないように、例えば支持部3の水平板9を下方から支持して持ち上げ、下水管内面7の頂部に押し付けるとよい。
【0041】
下水管内面7の頂部に弾支軸11,11を押し付けた状態から通線管支持具1の持ち上げを徐々に解除していくと弾性節部4,4が開いていき、図7、図8及び図9に見られるように、掛止爪5,5は下水管内面7に対して引っ掛かり、やがて開く弾性節部4,4をトグル機構として略水平方向に押し開く力を受けるようになる。この状態では、掛止爪5を下水管内面7に食い込ませる力は、下水管内面7に対する弾性安定部6の弾性力と、弾性節部4に内在していた弾性力しかないので、通線管支持具1は自身を下水管内面7の頂部に位置保持する程度にしか掛止爪5を下水管内面7に食い込ませることはない。
【0042】
しかし、支持部3に通線管又は通信線8を載置することで弾性節部4,4を押し開く力が加わると、掛止爪5は深く下水管内面7に食い込んでいく。こうして、本例の通線管支持具1は、両端にそれぞれ設けた計4基の掛止爪5,5,5,5と、全弾性安定部6,6,6,6先端に形成した計4基の当接端部13,13,13,13との合計8点で下水管内面7に掛止又は圧接し、安定な姿勢を確保すると共に、掛止爪5を深く下水管内面7に食い込ませることで位置固定の安定性を実現する。
【0043】
仮に、下水管内面7に取り付けた通線管支持具1を取り外す場合には、上記手順とは逆に支持部3を持ち上げて弾支軸11,11を下水管内面7の頂部に押し付け、弾性節部4,4を閉じた状態のまま通線管支持具1全体を降ろすか、通線管支持具1を傾倒させて掛止爪5の下水管内面7に対する食い込みを解除すれば、容易に取り外すことができる。
【0044】
このように、本発明の通線管支持具1は、取付及び取外しがいずれも簡易かつ容易であるが、下水管内面7に取り付けた状態では掛止爪5が下水管内面7に食い込むという物理的な係合によって位置固定が確保されることから、水流によっても脱落しない強固な通線管支持具1とすることができる。
【0045】
図10は、別例の通線管支持具14を示す斜視図である。本例の通線管支持具14は、金属板から弾性節部15,15、掛止爪16,16,16,16及び弾性安定部17,17,17,17の各構成要素を一体成形し、別体の樹脂成形体である支持部18に前記各弾性節部15,15を接続している。本例の支持部18は、下水管内面7(図15以下参照)に対して断面環状で、通線管又は通信線8(図17以下参照)を挿通し、吊り下げる格好で支持する。弾性節部15、掛止爪16及び弾性安定部17の構成は上記例示と同じであるため、説明は省略する。このように、本発明の通線管支持具は、別体の組み合わせでも構成できる。
【0046】
次に、弾性安定部23に補助爪29を形成した例について説明する。図11は更に別例の通線管支持具19を示す斜視図、図12は同通線管支持具19の正面図、図13は同通線管支持具19の平面図、図14は同通線管支持具19の側面図で、図15は同通線管支持具19と樹脂製下水管2との関係を表す下水管延在直交方向断面図である。
【0047】
本例の通線管支持具19は、図11〜図14に見られるように、1枚の金属板(チタン板又はチタン合金板)から型抜きして、支持部20、弾性節部21,21、掛止爪22,22,22,22及び弾性安定部23,23,23,23の各構成要素を一体成形した板バネ部材である。支持部20は、水平板24と側面板25,25とからなる凹断面樋状である。弾性節部21は、前記支持部20の側面板25,25上縁から連続して折り曲げて直線状に形成している。弾支軸26は、支持部20及び弾性節部21,21の境となる折曲部位で、支持部20の最頂部である。掛止爪22は、弾性節部21の接線方向に一致するように弾性節部21から補助部27を介して突出している。
【0048】
ここで、弾性節部21が直線状であっても、図15に見られるように、要件(1):支持部20の最頂部(弾支軸26)と左右一対の両掛止爪22,22の各先端とを結ぶ接円弧半径Roが下水管内面半径Rtより大きく、かつ要件(2):前記両掛止爪22,22端の間隔Loが下水管内面直径Dt=2Rtより小さくなれば、本発明の作用及び効果を得ることができる。
【0049】
上記例に対するの相違点は、各弾性節部21の端部から前後方向に張り出す補助部27,27を設け、この補助部27から突出する弾性安定部23及び掛止爪22を組とし、図14に見られるように、前記補助部27からそれぞれ上向きに少し折り曲げ、弾性安定部23の先端の折り曲げ部位の縁部又は当接端部28の縁部を補助爪29として用いる点にある。前記折り曲げは、弾性節部21に対して0〜30度(0度含まず)、好ましくは5〜25度の範囲がよい。
【0050】
補助爪29は、弾性安定部23の先端の折り曲げ部位の縁部又は当接端部28の縁部から構成するので、掛止爪はそのままとして、弾性安定部23のみを捻ってもよい。更に、弾性安定部23のみを水平面内で外向きに押し広げてもよい。この場合、弾性安定部23の拡開角度は、0〜45度(0度含まず)が好ましい。
【0051】
図16は通線管支持具19を下水管内面7の頂部に押し付ける過程を示した樹脂製下水管2の下水管延在直交方向断面図、図17は通線管支持具19を下水管内面7の頂部に押し付けを解除して取付完了の過程を示した樹脂製下水管2の図16相当下水管延在直交方向断面図、図18は図17中C−C断面図、図19は図17中D−D断面図である。
【0052】
弾性節部21,21に負荷を掛けない初期状態で、通線管支持具19を下水管内面7の頂部に向けて持ち上げ、支持部20の最頂部(弾支軸26)を前記下水管内面7の頂部に押し付けると、図16に見られるように、弾性安定部23,23が湾曲して弾性節部21,21と略同一に湾曲及び傾倒すると同時に、補助部27,27から略水平方向に突出した掛止爪22,22が下水管内面7に当接して押され、弾性節部21,21自体が内向きに少し閉じる。
【0053】
この段階では、弾性節部21に内在的な弾性力が発生しており、この弾性力がなくなるまでは掛止爪22を下水管内面7に当接させておくことができる。取付装置は、前記弾性安定部23及び弾性節部21の変化を妨げないように、例えば支持部20の水平板24を下方から支持して持ち上げ、下水管内面7の頂部に押し付けるとよい。
【0054】
下水管内面7の頂部に支持部最頂部(弾支軸26)を押し付けた状態から通線管支持具19の持ち上げを徐々に解除していくと弾性節部21,21が開いていき、図17、図18及び図19に見られるように、掛止爪22,22は下水管内面7に対して引っ掛かり、やがて開く弾性節部21,21をトグル機構として略水平方向に押し開く力を受ける。併せて、上方に向けて復帰する弾性安定部23が補助爪29を下水管内面7に押圧し、食い込ませる。
【0055】
掛止爪22を下水管内面7に食い込ませる力は、下水管内面7に対する弾性安定部23の弾性力と、弾性節部21に内在していた弾性力しかないので、通線管支持具19は自身を下水管内面7の頂部に位置保持する程度にしか掛止爪22を下水管内面7に食い込ませることはない。しかし、支持部20に通線管又は通信線8を載置することで弾性節部21,21を押し開く力が加わると、掛止爪22は深く下水管内面7に食い込んでいく。
【0056】
こうして、本例の通線管支持具19は、両端にそれぞれ設けた計4基の掛止爪22,22,22,22と、全弾性安定部23,23,23,23先端に形成した計4基の当接端部28,28,28,28の縁部である補助爪29との合計8点で下水管内面7に掛止し、安定な姿勢を確保すると共に、掛止爪22を深く下水管内面7に食い込ませることで位置固定の安定性を実現する。
【0057】
【発明の効果】
本発明により、簡易かつ容易な取付手順でありながら、水流にも耐えうる位置固定の安定性に優れた通線管支持具を提供できる。取付手順の簡易性又は容易性は、通線管支持具の取り付けを自動化する際の取付装置の簡素化をもたらす。
【0058】
また、実際の取付作業をも簡略化することができるようになるので、通信経路の構築時間の短縮化、コスト低減をもたらすことにもなる。前記コスト低減については、本発明の通線管支持具が低廉なコストで製造できる点からも寄与できる。これは、上記例示からも分かるように、本発明の通線管支持具の構成は簡単であり、とりわけ板材等から打ち抜きで一体成形したり、樹脂による一体成型品として製造できるからである。
【0059】
本発明の通線管支持具は、従来同様な先行技術のものに比べ、取付後の位置固定の安定性に優れており、これによって永続的に安定した通信経路の構築を可能にする効果を有する。この位置固定の安定性は、支持部の下降に伴う弾性節部を押し開くトグル機構としての押し付けにより、掛止爪を下水管内面に食い込ませる物理的係合を利用することにより得られる。
【0060】
また、掛止爪の食い込みを阻害する通線管支持具の傾倒は、下水管内面に対して支持部又は弾性節部を弾支する弾性安定部により防止される。こうして、掛止爪の下水管内面に対する物理的係合は恒久的に保たれ、本発明の通線管支持具による永続的な通線経路の構築を可能にする。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に基づく通線管支持具の一例を示す斜視図である。
【図2】同通線管支持具の正面図である。
【図3】同通線管支持具の平面図である。
【図4】同通線管支持具の側面図である。
【図5】同通線管支持具と下水管との関係を表す下水管延在直交方向断面図である。
【図6】通線管支持具を下水管内面の頂部に押し付ける過程を示した下水管内の下水管延在直交方向断面図である。
【図7】通線管支持具を下水管内面の頂部に押し付けを解除して取付完了の過程を示した下水管内の図6相当下水管延在直交方向断面図である。
【図8】図7中A−A断面図である。
【図9】図7中B−B断面図である。
【図10】別例の通線管支持具を示す斜視図である。
【図11】本発明に基づく通線管支持具の一例を示す斜視図である。
【図12】同通線管支持具の正面図である。
【図13】同通線管支持具の平面図である。
【図14】同通線管支持具の側面図である。
【図15】同通線管支持具と下水管との関係を表す下水管延在直交方向断面図である。
【図16】通線管支持具を下水管内面の頂部に押し付ける過程を示した下水管内の下水管延在直交方向断面図である。
【図17】通線管支持具を下水管内面の頂部に押し付けを解除して取付完了の過程を示した下水管内の図16相当下水管延在直交方向断面図である。
【図18】図17中C−C断面図である。
【図19】図17中D−D断面図である。
【符号の説明】
1 通線管支持具
3 支持部
4 弾性節部
5 掛止爪
6 弾性安定部
19 通線管支持具
20 支持部
21 弾性節部
22 掛止爪
23 弾性安定部
29 補助爪

Claims (7)

  1. 樹脂製下水管内に敷設する通線管又は通信線を支持部に載置又は支持部から吊下して支持する通線管支持具において、支持部から斜め下方向に突出して該支持部に片持ちで弾支される一対の弾性節部それぞれから下水管内面に向けて掛止爪を突出してなり、弾性節部が無負荷な初期状態で、支持部又は弾性節部の最頂部と両掛止爪の各先端とを結ぶ接円弧半径が下水管内面半径より大きく、かつ両掛止爪端の間隔が下水管内面直径より小さくなるように、各掛止爪は弾性節部から突出したことを特徴とする通線管支持具。
  2. 弾性節部は、支持部と一体の部材で、該支持部との境を折り曲げて形成する請求項1記載の通線管支持具。
  3. 弾性節部は、支持部と別体の部材で、該支持部との境に接続する請求項1記載の通線管支持具。
  4. 掛止爪は、弾性節部が無負荷な初期状態で、両掛止爪の突出方向が同一直線上に並ぶように弾性節部から突出した請求項1記載の通線管支持具。
  5. 掛止爪は、弾性節部が無負荷な初期状態で、両掛止爪の突出方向が各弾性節部の接線方向に一致するように弾性節部から突出した請求項1記載の通線管支持具。
  6. 弾性節部は、下水管内面に向けて該下水管内面半径方向に該弾性節部を弾支する弾性安定部を設けた請求項1記載の通線管支持具。
  7. 弾性安定部は、先端を折り曲げて下水管内面に対する当接端部を形成し、前記折曲部位の縁部又は当接端部の縁部を補助爪とする請求項6記載の通線管支持具。
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