JP3616720B2 - 信号伝送用シールド電線 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、信号伝送用シールド電線に関し、特に、差動伝送方式に使用して好適な信号伝送用シールド電線に関する。
【0002】
【従来の技術】
ディジタル信号を伝送する伝送方式として、たとえば、特開平7−57563号公報に示されるような差動伝送方式があり、これに使用される信号伝送用シールド電線としては、たとえば、同公報、あるいは特表平9−501796号に開示されたようなシールド電線が知られている。
【0003】
図3は、これらに示された信号伝送用シールド電線の1例を示したもので、導体1の周囲に主として発泡材から成る絶縁層3を断面円形に形成し、このような構成の線心2、2を隣接して平行に並べ、この上にシールド層5と外部被覆層10を順次形成することによって構成されている。
【0004】
この伝送用シールド電線においては、差動伝送方式が高速での信号伝送であることから、線心2、2における信号伝搬遅延時間差を小さくし、伝搬遅延スキューを小さくすることが重要な要素となる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、従来の信号伝送用シールド電線によると、発泡絶縁層3、3間での発泡度のラツキのため、線心2、2間の静電容量、特性インピーダンス等の差は不可避的であり、たとえば、仮に、同じ発泡ロットの1つの線心を二分して線心2のそれぞれを構成したとしても、発泡度を全長に亘って均一にすることは不可能である。
【0006】
また、従来の信号伝送用シールド電線によれば、線心2におけるシールド層5との接触面積が線心2の外周の約1/2であることから、シールド層5および外部被覆層10による線心保持力が小さく、このため、電線に曲げ力あるいは張力等が作用したときに、シールド層5内部において線心2が長手方向に移動しやすい欠点がある。
【0007】
移動した線心2は、電線端末において突出することになり、その結果、長さの違いを原因として線心2、2における静電容量、特性インピーダンス等の特性が相互にバラツクようになり、さらには、シールド電線をプリント基板あるいはコネクタ等に接続するとき、突出長さの違いが位置関係を乱して接続作業性を低下させるようになる。
【0008】
前者の線心間における静電容量、特性インピーダンス等のバラツキは、各線心の信号伝搬特性のバラツキを意味し、従って、これを原因とした伝搬遅延時間差が発生することになり、遅延スキューを招くことになる。
ディジタル信号を差動伝送する場合、遅延スキューは、信号波形に歪みを発生させるように作用することから、電線の使用条長および伝送周波数によっては、受信側において、信号の識別すら行えないようになる。
【0009】
また、従来の信号伝送用シールド電線においては、線心2、2間に必ず存在する空間部8、8へのシールド層5の落ち込み現象も発生しやすい。
並列された線心2、2に対するシールド層5からの締付力は、各線心2の上下方向に比べ、並列方向において大きく劣ることから、外部被覆層10を押し出し形成するときなどにシールド層5が空間部8の部分で矢印方向に弛んで落ち込んだり、あるいはシワ等を発生させやすく、極端な場合には、弛み、シワ等が空間部8の殆どを占領してしまうことがある。
【0010】
各線心2の誘電特性は、本質的に誘電率の小さな空間部8との合成の誘電率に基づいて評価されるものであり、従って、空間部8のスペースの確保は、良好なシールド電線を得るための重要な要因となる。
【0011】
また、シールド層5の空間部8への落ち込みは、常に同じではないことから、これを原因とした静電容量等の差が線心2、2間に発生することがあり、シールド層5の落ち込みは、この意味からも好ましくない。発泡絶縁層3の発泡度が高くなると、シールド層5、外部被覆層10を形成するときに外力が作用して発泡絶縁層3が変形し、導体1とシールド層5間の寸法が各導体間の寸法の1/2の理論値より小さくなる。これと導体1の平行配置のための張力のバラツキ、変動等によって導体1が水平に維持されなくなる。その結果、導体1とシールド層5、各導体1間等の静電容量、特性インピーダンスの値が変動する。
【0012】
従って、本発明の目的は、線心間の絶縁層の発泡度を均一なものとし、発泡度の差を原因とした静電容量、特性インピーダンス等のバラツキと、それによる遅延スキューの発生を抑止した信号伝送用シールド電線を提供することにある。
【0013】
また、本発明の他の目的は、シールド層内部における線心の移動を原因とした遅延スキューあるいは電線端末における接続作業性の低下を招くことのない信号伝送用シールド電線を提供することにある。
【0014】
さらに、本発明の他の目的は、並列させた線心とシールド間の空隙部を確実に確保することにより、安定した伝送特性を備え、更に、導体とシールド層間の寸法を理論値に維持して特性の安定を図った信号伝送用シールド電線を提供することにある。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記の目的を達成するため、互いに間隔を置いて平行に配列され、周上に発泡絶縁層を形成された複数の導体と、前記発泡絶縁層の周囲に形成されたテープ状の発泡体と、前記テープ状の発泡体の周囲に形成されたシールド層と、前記シールド層の外周に設けられた外部被覆層とから構成され、前記発泡絶縁層は、前記複数の導体を一括して被覆し、前記複数の導体の相互間の上下において前記テープ状の発泡体との間に空間部を形成する溝部を有することを特徴とする信号伝送用シールド電線を提供するものである。
【0016】
また、本発明は、上記の目的を達成するため、導体上に発泡絶縁層を形成した線心と、互いに平行に隣接して並べられた前記線心の周囲に形成され、前記線心との間に所定の空間部を形成したシールド層と、前記シールド層の外周に形成された外部被覆層とから構成され、前記線心と前記シールド層の間には、前記線心へ巻き付けられたテープ状の発泡体が介在させられたことを特徴とする信号伝送用シールド電線を提供するものである。
【0017】
外部被覆層としては、90以上のショア硬度を有するポリ塩化ビニル、塩化ビニル共重合体等の塩化ビニル系樹脂の使用が望ましい。
塩化ビニル系樹脂の使用は、電線に難燃性を与える効果があり、また、90以上のショア硬度は、線心に対する外部被覆層からの保持力を確保し、シールド層内における線心の移動を抑止するうえにおいて有効である。
【0018】
外部被覆層の表面に、線心あるいは導体の識別のための標識、たとえば、凸部、凹部、着色標線等を形成することは、プリント基板、コネクタ等へ接続するときに便利であり、実際的である。
【0019】
発泡絶縁層のベース材としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・プロピレン共重合体等のオレフィン系樹脂、あるいはポリ四弗化エチレン、四弗化エチレン・プロピレン共重合体等のフッ素系樹脂などが使用され、テープ状発泡体のベース材にもこれらの材料が適用される。
【0020】
シールド層は、たとえば、銅線等の金属線による編組、金属線の巻き付け、銅箔等の金属箔の巻き付け、同縦添え、金属箔とプラスティックフィルムのラミネート物の巻き付け、同縦添え、あるいはこれらの組み合わせ等により形成される。
【0021】
複数の導体を発泡絶縁層によって一括被覆する本発明のシールド電線において、導体相互間の上下に空間部を形成することは、全体の誘電率を下げることになるので好ましい。
【0022】
その場合の空間部としては、押出機から出た発泡絶縁層が発泡を完了する前の段階で、絶縁層を所定の形状を有する成型ダイスを通過させ、これにより発泡絶縁層に設けられた溝部によって形成することが望ましい。
【0023】
成型ダイスの通過は、絶縁層の発泡が完了する直前に行うべきであり、また、その際の成型ダイスとしては、発泡絶縁層構成材の軟化点と近似した温度、あるいはそれ以上に加熱されていることが望ましい。
【0024】
【発明の実施の形態】
次に、本発明による信号伝送用シールド電線の実施の形態について説明する。図1において、1は、AWG26〜30の中から選定されたAWG28により構成された導体、2は、互いに間隔を置いて平行に配列された導体1、1の周囲に発泡ポリエチレン絶縁層3を一括被覆した線心を示し、絶縁層3は72%の発泡度と1.28の誘電率を有している。
【0025】
本実施形態の場合、導体1、1が一括して絶縁被覆されていることから、絶縁層3の、導体1、1の周囲の部分3a、3bは、その発泡度が同じとなり、静電容量、特性インピーダンス等に差が生じなくなる。
【0026】
即ち、発泡絶縁層を形成する場合、製造時の条件の変動等が原因して長さ方向の発泡度は一様とはならないが、絶縁層3を一括して形成する本実施形態の場合には、この長さ方向における発泡度の変動は特性の差となって現れない。
3a、3bの発泡度の対比において、長さ方向のどの部分も均一であり、従って、3a、3bの静電容量、および特性インピーダンス等は常に同じとなる。
【0027】
4は、線心2の周囲に、ラップしないように衝合巻きされた厚さ0.05mm、幅4mm、発泡度75%のテープ状の四弗化エチレン発泡体を示し、その弾性に基づいて線心2を緊縛するように巻き付けられている。
5は四弗化エチレン発泡体4の周囲に設けられたシールド層を示し、複数の金属線の巻付層6と金属箔の巻付層7の二重構造から成る。
【0028】
8は、シールド層5の内部に低い誘電率を確保することを目的として導体1、1の相互間の上下に形成された空間部であり、この空間部8は絶縁層3の形成過程において設けられた溝部9の形状に基づいて形成されている。
【0029】
溝部9は、絶縁層3を押出して発泡させる中で、絶縁層3の発泡が完了する直前に所定の形状を有した加熱成型ダイスを通過させることによって形成されたもので、シールド層5の内側全体の要求誘電率からくる、様々な形状に対応して形成することが可能である。
【0030】
この溝部9と四弗化エチレン発泡体4によって形成される空間部8は、四弗化エチレン発泡体4の存在によって、シールド層5の落ち込みから守られている。また、このようにシールド層5の落ち込み防止のために発泡体4を使用していることは、発泡体ゆえの低い誘電率を確保できることにつながり、従って、シールド層5内部の誘電率を所定のレベルに維持するうえにおいて意味がある。
【0031】
本実施形態の場合、空間部8がシールド層5内に占める断面積比率は15%であり、この空間部8が存在しないとき、シールド層5内の誘電率は約0.02増加し、信号伝搬遅延速度は0.1ns/m遅延するようになる。
従って、空間部8は、信号伝送用シールド電線としての所定の特性を確保するうえにおいて重要である。
【0032】
10はシールド層5の上に形成されたショア硬度90以上のポリ塩化ビニルから成る外部被覆層、11は外部被覆層10の断面片側の全長に亘って形成された識別用突起を示し、この突起11の有無によって導体1、1間が外部から識別される。
【0033】
本実施形態における線心2とシールド層5間の静電容量と特性インピーダンスは、それぞれ85PF/mと50Ωであり、さらに、この電線における信号伝搬遅延速度は3.7ns/mであった。
【0034】
本実施形態においては、導体1、1が絶縁層3によって一括被覆されている結果、仮に、線心1が曲げ力、張力等の外力作用のために長手方向に移動したとしても、3a側と3b側が別個に移動することはあり得ず、従って、3a側と3b側間において、静電容量、特性インピーダンス等の特性は常に同じに保たれることになる。
また、従来発生していた電線端末での線心の突出長さの違いによるプリント基板、コネクタ等への接続作業性への悪影響も、当然なくなる。
【0035】
図2は、本発明の信号伝送用シールド電線における他の実施の形態を示したものである。
それぞれ導体1の周囲に断面円形の発泡四弗化エチレン絶縁層3を形成した2本の線心2、2を隣接させて平行に並べ、この上にテープ状のポリエチレン発泡体4を巻き付け、さらに、その上に、金属箔の巻付層7と複数の金属線の巻付層6の順で形成したシールド層5と、外部被覆層10を順次形成することによって構成されている。
【0036】
図1との対比において、絶縁層3を、導体1、1ごとにそれぞれ別個に形成している点を除けば、導体1の種類、発泡ポリエチレン絶縁層3の発泡度と誘電率、四弗化エチレン発泡体4の寸法と発泡度、空間部8の断面占有率、および外部被覆層10の構成材等は、いずれも同じである。
従って、これにより、図1に近い水準の静電容量と特性インピーダンス、および信号伝搬遅延速度等の諸特性が得られることになる。
【0037】
そして、線心2、2の周囲には、テープ状の四弗化エチレン発泡体4が巻き付けられていることから、曲げ力、張力作用等を原因とした線心1、1の長手方向への移動は防止されるとともに、シールド層5の空間部8への落ち込みも防止されることになり、さらに、線心1、1の移動防止によって、電線端末におけるプリント基板、コネクタ等への接続性が保障されることになる。
【0038】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、複数の導体の発泡絶縁層を一括形成する構造を採用することによって、線心間の発泡絶縁層の発泡度を均一化させるとともに、長手方向における線心の移動差発生を防止し、さらに、線心上にテープ状発泡体を巻き付けることによって、空間部へのシールド層の落ち込みを防止し、そして、複数の線心を隣接させて平行配列させる構造にあっては、並列された線心の周囲にテープ状の発泡体を巻き付けることによって、線心の長手方向への移動と空間部へのシールド層の落ち込みを防止するものであり、従って、導体とシールド層間の寸法が理論値に維持され、線心間において信号伝搬特性のバラツキがなく、伝搬遅延時間差を原因とした遅延スキューのない、優れた特性の信号伝送用シールド電線を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による信号伝送用シールド電線の実施の形態を示す説明図。
【図2】本発明による信号伝送用シールド電線の他の実施の形態を示す説明図。
【図3】従来の信号伝送用シールド電線の説明図。
【符号の説明】
1 導体
2 線心
3 発泡ポリエチレン絶縁層
4 テープ状四弗化エチレン発泡体
5 シールド層
6 金属線の巻付層
7 金属箔の巻付層
8 空間部
9 溝部
10 外部被覆層
11 識別用突起

Claims (8)

  1. 互いに間隔を置いて平行に配列され、周上に発泡絶縁層を形成された複数の導体と、前記発泡絶縁層の周囲に形成されたテープ状の発泡体と、前記テープ状の発泡体の周囲に形成されたシールド層と、前記シールド層の外周に設けられた外部被覆層とから構成され、
    前記発泡絶縁層は、前記複数の導体を一括して被覆し、前記複数の導体の相互間の上下において前記テープ状の発泡体との間に空間部を形成する溝部を有することを特徴とする信号伝送用シールド電線。
  2. 前記各導体と前記シールド層との間の寸法は、前記導体間の寸法の1/2より大としたことを特徴とする請求項第1項記載の信号伝送用シールド電線。
  3. 前記外部被覆層は、ショア硬度90以上の塩化ビニル系樹脂から構成されたことを特徴とする請求項第1項に記載の信号伝送用シールド電線。
  4. 前記外部被覆層は、その表面に前記導体を識別するための標識を有することを特徴とする請求項第1項あるいは第3項のいずれかに記載の信号伝送用シールド電線。
  5. 導体上に発泡絶縁層を形成した線心と、互いに隣接して平行に並べられた前記線心の周囲に形成され、前記線心との間に所定の空間部を形成したシールド層と、前記シールド層の外周に形成された外部被覆層とから構成され、
    前記線心と前記シールド層の間には、前記線心へ巻き付けられたテープ状の発泡体が介在させられたことを特徴とする信号伝送用シールド電線。
  6. 前記各導体と前記シールド層との間の寸法は、前記各導体間の寸法の1/2より大とし、前記各導体は前記シールド層内で水平位置に配置されてなることを特徴とする請求項5記載の信号伝送用シールド電線。
  7. 前記外部被覆層は、ショア硬度90以上の塩化ビニル系樹脂から構成されたことを特徴とする請求項第5項記載の信号伝送用シールド電線。
  8. 前記外部被覆層は、その表面に前記線心を識別するための標識を有することを特徴とする請求項第5項あるいは第7項記載の信号伝送用シールド電線。
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