JP3616652B2 - 同軸ケーブル及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、耐熱性、耐火性、耐食性が要求される超高真空や放射線被爆環境でも使用可能な柔軟性に優れる同軸ケーブル、特に高周波用に適した同軸ケーブル及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
これまで一般的に用いられている同軸ケーブル(同軸コード)は、中心導体と金属の編組で形成された外側導体との間にポリエチレン、塩化ビニール、フッ素樹脂等の誘電体(絶縁体)を充填し、その外側を塩化ビニルなどの外被で覆った構造のものである。この同軸ケーブルは、高周波機器、電子計算機等のリード線や内部配線用をはじめ、アンテナ給電線等多くの用途に使われ、外部からの雑音を受けにくい、特性が安定している、可とう性に優れるといった特徴がある。
一方、セミリジットケーブルは高周波機器の内部配線に使用されるものであって、外部導体は継目なしの金属管(通常銅管)で、絶縁体はテフロン(登録商標)、中心導体は銀めっきした銅線等を使用した構造である。このような構造のセミリジットケーブルには、損失が少なく、外部雑音を極度に受けにくく、特性が均一であるなどの特徴がある。
ところが、上記一般的に用いられている同軸ケーブルでは、外被及び誘電体として樹脂を使用しているためガス放出量が大きく、真空中で用いることができず、又、セミリジットケーブルでは外導体に金属管を使用しているため、自在に曲げることができず、可とう性に劣るといった問題がある。つまり、どちらのタイプも絶縁体に樹脂を使用しているため、放射線の被爆で劣化しやすく、又、中心や外部導体に銀や銅等を使用しているため熱伝導率が高く、クライオスタット等と接続すると熱伝導による熱の放散が大きくなる欠点がある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、ガス放出量が少なく、可とう性に富み、真空中でも用いることができ、かつ放射線の被爆で劣化しにくい同軸ケーブルを提供することを目的とする。本発明は、又、該同軸ケーブルの効率的な製造方法を提供する。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明は、中心導体とその外側に設けられた外部導体との間に、樹脂のかわりに特定のガラス繊維を充填すると、可とう性に富み、真空中でも用いることができ、かつ放射線の被爆で劣化しにくく、ガス放出量が少ない優れた同軸ケーブルが得られるとの知見に基づいてなされたのである。
すなわち、本発明は、線状の中心導体とその外側に設けられた外部導体との間に、誘電率が2〜5のガラス繊維及び/又はセラミックス繊維が設置されていることを特徴とする同軸ケーブルを提供する。
本発明は、又、線状の中心導体の外周をガラス繊維及び/又はセラミックス繊維で被覆し、次いでその外周を線状の導体で被覆して同軸ケーブルを形成した後、同軸ケーブルを洗浄することを特徴とする同軸ケーブルの製造方法をも提供する。
【0005】
本発明において、中心導体及び外部導体に使用する導電体としては、銅、銅合金、アルミ、アルミ合金等、通常の金属導電体として用いられる金属に加えて、ステンレス、ニッケル、チタン等の金属を用いることができる。尚、非金属でも導電体である限り用いることができる。しかし、高周波での特性を重要視するならば、銅、銀、スズ、アルミ、金等高周波での導電性に優れる導体を使用するのがよい。さらに、チタン、鉄、ステンレス等の熱伝導率の低い導体をコアとし、表層に銀、銅、スズ、アルミ等の高周波における電導性に優れる導体をめっき法、クラッド法等により形成した導体を用いても良い。高周波での特性を特に重視する同軸ケーブルでこのような導体を使用すると、表皮効果により、導体外面近くを信号が流れやすくなるため、高周波での信号減衰が少なく、誘電体としてもガラス繊維が熱伝導率が低いため、同軸ケーブルとして、熱伝導率が低くしかも高特性な同軸ケーブルとすることができる。
【0006】
表層の厚さは、同軸ケーブルを使用する周波数帯により決定するが、低周波ではより厚く、高周波ではより薄くすることができる。例えば、1GHz以上では5μm以下で良く(好ましくは0.7〜5μm)、1GHz以下、100MHz以上では5〜数10μmとするのがよい。
導体としては、その外側がセラミックス被膜でおおわれてなるセラミックス電線を用いるのが好ましい。
一般的に中心導体としては、直径 0.2〜3mmのものが使用される。中心導体の断面は円形が好ましいが、楕円形、正方形やこれらの変形であってもよい。又、上記導電体の細線をよりあわせた導体を用いてもよい。中心導体径、種類等は同軸ケーブルの用途と転送する高周波電流量により決定するのがよい。
本発明で中心導体と外部導体との間に設置されるガラス繊維を構成するガラスの種類としては、通常のガラス繊維に用いられるEガラス、Cガラス、Dガラス、Tガラス等や高シリカ繊維があげられ、セラミックス繊維としては、アルミナ繊維等のセラミックス繊維があげられる。特に高性能な同軸ケーブルの製造には誘電率が2〜5と低いDガラス、や高シリカガラス繊維を使用するのが好ましい。
【0007】
本発明で用いるガラス繊維やセラミックス繊維としては、任意の太さのものを使用することができるが、単繊維の直径として、3〜9μmの範囲のものが好ましく、中心導体の径とともに、最適径を選択するのがよく、中心導体径が0.5〜1.0mmでは9μm前後、0.5mm以下では7μm以下、1.0mmより太い場合は9μm以上のガラス繊維を用いるのが良い。糸の太さとしては、中心導電体径により選択するが、通常番手として10〜100tex 、(90〜900デニール)の範囲がよい。
本発明では中心導体上にガラス繊維を任意の方法及び形態で設けてもよいが、上記ガラス繊維を中心導体上に編巻きして誘電体を形成するのがよい。このうち、日本古来からの組紐技術により編巻きするのが好ましく、四つ組、三つ組、角八つ組、丸八つ組等により組紐するのが好ましく、通常角八つ組すなわち、角八打とよばれる方法や丸八打、丸16打、丸24打等により行なうのが良い。この際、充分に導電体を被覆、隠蔽する方法を選択し、組み合わせ、特に中心導体が正確に同軸ケーブル断面円の中心に位置するように組編するのがよい。
ガラス繊維で組編する際の外径(D)は下記式(I)により決定し、通常のガラス繊維ではAは0.50〜0.75とするが、Dガラス繊維、高シリカガラス繊維のように誘電率の低い(εr =2〜5)材料による繊維では0.60〜0.70とするのが良い。
【0008】
【化1】
D=A×10b
ただし b=ZO ×√εr ÷138+ Log10d (I)
D=ガラス繊維で組編後の外径(mm)
d=中心導体の実質導体径(mm)
εr =使用する繊維用材料の導電率
ZO =同軸ケーブルの特性インピーダンス(Ω)
【0009】
なお、特性インピーダンスはこの同軸ケーブルを使用する回路のインピーダンスに通常一致させるのがよい。繁用的には50Ωないし75Ωである。
外部導体を構成する導電体としては、その外側がセラミックス被膜でおおわれてなるセラミックス電線を用いるのが特に好ましい。これにより塩化ビニル製などの樹脂製の外被を省略することができる。このようなものとしては、陽極酸化、火花放電法によりセラミックス被覆した電線や、CVD、PVD等のドライプロセスにより被覆を形成した電線やその他、アルコキシドの加水分解等によりセラミックスを被覆した電線があげられる。このようなセラミックス電線によればセラミックス皮膜の性質により、耐食性等も付与できる。セラミックス被膜の厚さとしては、1〜20μmのものが好ましい。セラミックス被膜の形成方法及び組成は、例えば、特公昭58−17278号公報及び特開平3−94077号公報に記載のものを用いることができる。
【0010】
外部導体としては、上記組編したガラス繊維上に、0.05〜0.15径の導電体を3〜7本を単位(組み数3〜7)として、丸八つ打、丸16つ打ち等により組み編みするのが好ましい。外部雑音からの遮断特性を向上させるには、充分に被覆、隠蔽できるように外部導体を組編みする。この組編みを2重とし向上させる方法も有効である。また、外部導体としては30〜100μm厚の電導体となるテープを巻き付けても良い。テープによる巻き付けと上記組み編みを併用しても良い。
又、外部導体を形成した後、先に述べた陽性酸化、火花放電法によりセラミックスをこの外部導体に形成しても良い。
本発明では、外部導体上にさらに外被を設ける必要はないが、最外層として他の導体との接触による導通をさけるため、絶縁体層を形成しても良い。この絶縁体層にガラス繊維を特開平5−041118号公報に記載されたのと同様に組編みするのが好ましい。
本発明の同軸ケーブルは、上記構造を有するかぎり、任意の方法により製造してもよいが、線状の中心導体の外周をガラス繊維及び/又はセラミックス繊維で被覆し、次いでその外周を線状の導体で被覆して同軸ケーブルを形成した後、洗浄を行うのが好ましい。つまり、この洗浄によりガラス繊維や導電体に付着した異物(有機物)を除去するためである。ガラス繊維には、通常、集束剤としてでんぷん、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニルエマルジョン、カチオン活性剤等の有機物が付着しており、その除去を主たる目的とする。通常、水可溶性なデンプンが多く用いられているので、水洗を充分に行なえば良い。しかしながら、集束剤を付着する前のガラス繊維を用いた場合には、洗浄を省略することができる。
【0011】
なお、集束剤としてはエポキシ樹脂等水不溶性の有機物が用いられていた場合には有機溶剤等による洗浄も行なうのがよい。
水洗を行う場合には、水の純度として、イオン交換水以上の水質(導電率0.2ms/cm以下)の純水を用い、不純物による再汚染を防ぐのがよい。この際、攪拌を充分を行うのがよく、加温(50〜90℃)すれば洗浄効率も増加するので好ましい。1段のバッチ水洗より、常に清浄な水で水洗可能な多段による水洗により充分に洗浄するのが好ましい。
洗浄後ベーキングを行うのが好ましく、ベーキングにより残存付着物(水分、有機物等)を蒸発揮散させることができる。通常の乾燥温度(100℃前後)より高温で行なうのが好ましく、200〜300℃で行うのがよい。300℃以上ではガラス繊維の加熱強度低下が著しく、又、低い温度では有機物を充分に揮散させることが困難であるためである。ベーキング時間は短いと充分に残存物が揮散せず、長くなると強度低下の原因となるため、通常1〜6時間とするのが良い。ベーキング雰囲気は、通常大気中とすることができるが、真空中や不活性ガス中で行なうのが好ましい。上記工程に従えば、脱ガス特性に優れ、高絶縁破壊電圧となる、高真空、超高真空中で使用可能な電線を製造することができる。
【0012】
さらに、ベーキング後、無機コーティング剤を含浸させると、電線切断時のほつれや、小さな曲率半径による曲げによる繊維の破断による、手羽立ちや発塵を有効に防止することができる。
ここで用いる無機コーティング剤としては、水溶性の塗料より金属アルコキシドとバインダーにより構成される有機溶剤を用いた無機コーティング剤、例えば、日本合成ゴム(株)商品名、「グラスカ」や、大八化学(株)「スパーセラ」等が好ましい。
無機コーティング剤の含浸量としては、同軸ケーブルの最終仕上り外径の断面を円形とした場合に計算される表面積(以下、見かけの表面積という)あたり3〜20g/m2 、編巻きに使用したガラス繊維重量あたり20〜150mg/gの範囲とするのが良い。含浸後、無機コーティング剤に含まれる有機溶剤などの有機物を除去し、コーティング剤中の無機成分を硬化させるために加熱するのがよい。
硬化温度は導電体の軟化、溶解温度以下とし、より高温が望ましいが、600℃までの範囲とするのがよい。導電体が銅や銅合金では500〜600℃とし、アルミやその合金では200〜300℃とするのがよい。硬化時間は通常、10〜60分の範囲とするのがよい。硬化は真空中や不活性ガス中で行なうのが好ましい。
【0013】
【発明の効果】
本発明によれば、任意の特性インピーダンスにマッチングし、挿入損失が少なく、反射係数が小さい等、高周波特性に優れしかも、超高真空中で使用可能であり、耐熱、耐放射線性、耐火性に優れ、かつ可とう性にも優れる高性能であつかいやすい同軸ケーブルを提供することができる。又、本発明の製造方法によれば、このうような優れた同軸ケーブルを効率的に製造することができる。
従って、本発明の同軸ケーブルは、原子炉周辺や素粒子加速器周辺のように極度に放射線量の多い場所で安定に使用できる。又、半導体製造装置や高度実験装置で超高真空室を用いる装置内部の配線に使用することができる。
次に実施例により本発明を説明する。
【0014】
【実施例】
実施例1
中心導体に0.5mmφ銅線を用いDガラス繊維(誘電率4.2、繊維径9μm、番手80tex )を用い、組み紐の技術である丸八つ打(組)により2回、丸16つ打(組)により2回、計4回、編巻きした。その際の外径は1.8mm(接着剤により固化させて測定)であった。その上にさらに0.12φ銅線を持ち数5本とし、丸16つ打(組)にて2回編巻きし、外部導体を形成した(外径3.0mm)。その後、イオン交換水により、2回、メタノール、アセトンにより各1回洗浄した。その後、金属アルコキシドと無機フィラーとのハイブリッド塗料(商品名、ブラスカM−280、日本合成ゴム(株))に、撹拌しながら1分間浸漬した。塗料より引き上げた電線を遠心脱水機により回転させて、含浸される塗料の量を調整し、硬化後の含浸量が、見かけ表面積(ケーブルの断面を円形とした場合に計算される表面積)あたり、9.8g/m2 となるように処理した。硬化条件は、室温乾燥後、真空中(5×10−3torr)、220℃で30分とした。このように、Dガラス繊維を誘電体として同軸ケーブルを作製した。式(I)の係数Aは0.65となった。
【0015】
実施例2
実施例1と同様に中心導体に0.5mmφ銅線を用い、高シリカ繊維(誘電率3.8、繊維径9μm、番手67tex )を用い、組み紐の技術である丸八つ打(組)により2回、丸16つ打(組)により計3回、編巻きした。その際の外径は実施例1と同様な方法により測定し、1.65mmであった。その上にさらに実施例1と同様な方法により外部導体を形成した(外径2.6mm)。その後、メタノールにより3回、アセトンにより1回洗浄し、高シリカガラス繊維を誘電体とした同軸ケーブルを作製した。式(I)の係数Aは0.65となった。
【0016】
実施例3
陽極火花放電法により、膜厚15μmのSiO2系セラミックス被覆を行なった銅をコアとし、外側にカーボン、その外側にアルミニウムを2層構造となるようにクラッドした導電体(0.5mmφ)を中心導体とし、実施例2と同様な高シリカ繊維を行い、同様の方法で繊維を編巻きし、さらにその上に、0.1mmφアルミニウム線を持ち数6本とし、丸16つ打ち(組)にて、2回編巻し、外部導体を形成した(外径3.0mm)。さらに、実施例1と同様にして洗浄、ベイキングを行なった。その後、この電線を陽極として、ステンレス板を陰極とし、K2O−nSiO2 200g/lの溶液中で外部導体を火花放電させた。30℃、1A/dm2 、10分間の火花放電により、外部導体に18μmのセラミックス被膜が得られた。
【0017】
比較例
実施例1及び2と同様な中心導体、外部導体を形成したEガラス繊維(誘電率6.2、繊維径9μm、番手68tex )を用い、丸八つ組2回、丸16つ打(組)2回の計4回編巻きした同軸ケーブルを作製し、実施例1と同様な方法により洗浄を行なった(外径2.6mm)。この場合、ガラス繊維編巻き物の外径は、実施例1と同様な方法により測定し2.2mmであった。式(I)の係数Aは0.55となった。
実施例1、2、3及び比較例で得られた同軸ケーブルの特性インピーダンス、SWR及び挿入損失を測定した。結果をまとめて表−1に示す。
尚、特性インピーダンス(IP)、SWR、挿入損失は同軸ケーブルの両端にN型コネクタを取り付け、横河ヒューレット・パッカード(株)ネットワークアナライザー、(HP8753A)により測定した。
【0018】
【表1】
表−1
Claims (2)
- 線状の中心導体とその外側に設けられた組編みされた外部導体との間に、誘電率が2〜5のガラス繊維及び/又はセラミックス繊維が設置されていることを特徴とする同軸ケーブル。
- 線状の中心導体の外周をガラス繊維及び/又はセラミックス繊維で被覆し、次いでその外周を線状の導体で被覆して同軸ケーブルを形成した後、同軸ケーブルを洗浄することを特徴とする請求項1記載の同軸ケーブルの製造方法。
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JP31465193A JP3616652B2 (ja) | 1993-12-15 | 1993-12-15 | 同軸ケーブル及びその製造方法 |
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JP31465193A JP3616652B2 (ja) | 1993-12-15 | 1993-12-15 | 同軸ケーブル及びその製造方法 |
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JPH07169341A JPH07169341A (ja) | 1995-07-04 |
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JP31465193A Expired - Fee Related JP3616652B2 (ja) | 1993-12-15 | 1993-12-15 | 同軸ケーブル及びその製造方法 |
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- 1993-12-15 JP JP31465193A patent/JP3616652B2/ja not_active Expired - Fee Related
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