JP3615856B2 - 光電面及びそれを用いた光電変換管 - Google Patents

光電面及びそれを用いた光電変換管 Download PDF

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  • Common Detailed Techniques For Electron Tubes Or Discharge Tubes (AREA)

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はIII−V族化合物半導体からなる光電面及びそれを用いた光電変換管に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
極微弱光を検出する光電変換管に用いる光電面として、GaAsのようなIII−V族化合物半導体を用いた以下のものが知られている。まず、特開昭51−73379号公報で開示された光電面は、AlGaAsによって形成されて検出対象となる被検出光より短波長以下の光を遮断する窓層と、GaAsによって形成されて光励起により光電子を発生させる活性層とを備え、AlGaAs窓層に反射防止膜を介してガラス面板を熱圧着して支持されている。USPAT3769536号公報に開示された光電面では、ガラス面板に支持された光電面が、(Al,Ga,In)及び(P,As,Sb)の各物質群から少なくとも1つの物質を選択することによって活性層によって構成されている。さらに、C.Piaget et al.,ACTA ELECTRONICA,20,4,1977,333に開示された光電面は、活性層がInGa1−xAs(x=0.2)により構成されており、GaAsからなる活性層の場合と比べて、活性層内で被検出光よりも長波長の光が遮断されるときの閾値波長(以下「長波長限界」という)が大きくなっている。また、特開昭49−114689号公報に開示された光電面では、Ga1−yAlAsからなる化合物半導体基板上にInGa1−xAsにからなる活性層が形成されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記のような活性層と窓層との組合わせの光電面では、両者の界面に格子不整が全て存在するので界面に結晶欠陥が生じ、それが活性層中へ伝搬することによって活性層の品質が大幅に低下する。活性層内で被検出光を吸収して発生した光電子は結晶欠陥部で再結合してその拡散長が短くなるので、その結果、光電面の感度は低下する。実際、上記のような光電面が組込まれた光電子増倍管の感度は、結晶欠陥が存在しない場合と比べて大幅に低下する。特に、活性層に結晶欠陥が存在する光電面を備えた画像増強管では、クロスハッチパターンような画像が信号出力に現れ、その画像特性の低下は著しい。
【0004】
ところで、特開平5−266857号公報に開示された光電面は、Al1−yInAsからなる窓層とInGa1−xAs(x≦0.2)からなる活性層とから構成されており、Al1−yInAs窓層の原子組成比yを所定の値に正確に固定させることによって、Al1−yInAs窓層とInGa1−xAs活性層とが格子整合している。しかしながら、InGa1−xAs活性層の原子組成比xとAl1−yInAs窓層の原子組成比yとは互いに独立して変化できないので、一方の原子組成比が決まると他方の原子組成比が一義的に決まってしまう。よって、窓層内で被検出光よりも短波長の光が遮断されるときの閾値波長(以下「短波長限界」という)も一義的に決まってしまう。
【0005】
そこで本発明者は、窓層と活性層との間に格子不整がほとんど存在しない材料構成について種々の組合わせを検討した結果、特開平4−324227号公報に単に開示されただけのAlGaInAsからなる窓層とInGa1−xAsからなる活性層を用いることによって、上記問題点を本質的に解決できることを見出した。本発明は、係る知見に基づき完成されたもので、AlGaInAsからなる窓層がInGa1−xAsからなる活性層と格子整合したまま、窓層の原子組成比に応じて短波超限界が変わる高感度な光電面、及びそれを用いた光電変換管を提供するものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る光電面は、ガラス面板上に、検出対象である被検出光の反射防止膜を介して密着するように設けられた光電面において、反射防止膜上にInx’(AlGa1−y1−x’Asによって形成され、検出対象となる被検出光よりも短波長の光を遮断する窓層と、窓層よりもバンドギャップエネルギが小さいInGa1−xAsによって窓層上に形成され、被検出光を吸収して光電子を発生させる活性層とを少なくとも備えた光電面であって、活性層の原子組成比xが0<x<0.18の範囲で窓層の原子組成比x’とほぼ等しく、窓層の原子組成比yの範囲が0<y<1であることを特徴とする。これによって、短波超限界を決める窓層の原子組成比が変化しても、それとほぼ格子整合した活性層内の結晶欠陥は抑制されている。
【0007】
本発明の光電変換管は、光電面と、光電面を内部に収容するように、ガラス面板を側壁端部に支持して内部が真空状態に保たれた真空管と、真空管内部に設置され、光電面に対して正の電圧を保持する陽極とを備える。これによって、光の信号を光電子の信号に変換できる。
【0008】
また、光電面と陽極との間には光電面から放出された光電子を2次電子増倍する増倍手段が備えられていることを特徴とする。これによって、放出された光電子の信号を増倍させることができる。
【0009】
また、陽極は被検出光の2次元光学像に対応した2次元電子像を受容することによって発光する蛍光膜であることを特徴とする。これによって、被検出光の2次元光学像を直接観測することができる。
【0010】
また、陽極は光電面に入射した被検出光の2次元光学像に対応した2次元電子像を受容することによって2次元光学像に対応した電気信号を出力する固体撮像デバイスであることを特徴とする。これによって、2次元光学像を電気信号に変換することができる。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
【0012】
図1は、本発明の光電面の斜視図を一部断面にて示したものである。ガラス面板10上にSiOとSiとが順次積層した反射防止膜20が、検出対象である被検出光の波長に応じた膜厚でもって密着して形成されている。反射防止膜上にはp型Inx’(AlGa1−y1−x’Asからなる厚さ0.03μm以上の窓層31が、エピタキシャル層として形成されている。図1の矢印で示すように、被検出光(hν)がガラス面板10から入射すると、ガラス面板10と反射防止膜20とを減衰することなく透過し、窓層31内で被検出光より短波長の光を遮断している。なお、窓層31のp型のキャリア濃度については厳密ではない。
【0013】
そして窓層31上には、窓層31よりもバンドギャップエネルギが小さいp型InGa1−xAsからなる厚さ1〜3μmの活性層32が、InGa1−xAs活性層32の原子組成比xがInx’(AlGa1−y1−x’As窓層31の原子組成比x’と等しいエピタキシャル層として形成されており、窓層31からの被検出光を吸収して光電子を発生させている。なお、活性層32内のp型のキャリア濃度は1×1018cm−3〜10×1018cm−3である。
【0014】
ここで、本発明者はInGa1−xAs活性層xの値を変えて活性層の分光感度を測定した。図2はxを0から0.16と変化させたとき、GaAs基板上にあるInGa1−xAs活性層の分光感度を求めた実験結果である。図2に示す結果から、xの値を0.08,0.12,0.16の場合における分光感度の長波長限界が約0.94μm、約0.97μm、約1μmと変化するだけでなく、長波長側の放射感度が著しく低下することが明らかとなった。これは、xが大きくなるにつれてInGa1−xAs活性層の伝導帯の底にある光電子のポテンシャルエネルギが真空準位程度まで低下し、もしx≧0.18にすると真空準位より低くなって、電子親和力が正となり、その場合の放射感度測定が測定系の雑音によって阻害されるからである。
【0015】
また、本発明者はInx’(AlGa1−y1−x’As窓層31及びInGa1−xAs活性層32の原子組成比x,x’,yに関し、x,x’をx=x’=0.18に固定してyをy=0.25,0.5,0.75に変化させたとき、光電面の分光感度特性を測定した。図3は各場合におけるその分光感度特性の測定結果を示したものである。その結果から、上述したようにInGa1−xAs活性層32の原子組成比xによって決まる長波長限界は約0.94μmと一定であるのに対し、短波長限界はInx’(AlGa1−y1−x’As窓層31のyの値に応じて変化し、それぞれ0.9μm,0.78μm,0.65μmとなったことを見出した。
【0016】
さらに、各場合において感度の低下がみられないのは、Inx’(AlGa1−y1−x’As窓層31のx’をInGa1−xAs活性層32のxと等しくした結果、両者が格子整合するからである。格子整合した窓層31と活性層32との界面では、それに起因した結晶欠陥も抑制される。よって、光電子の拡散長が大きな値になって活性層32内の光電子の再結合等による消滅が少なくなり、上記のように感度の低下はみられなくなる。ただし、両者の原子組成比x’,xが完全に一致しなくとも両者の間の格子不整の度合いが小さければ、活性層21を構成する格子の内部に存在する歪応力が格子の変形によって緩和されるので、結晶欠陥が導入されない。
【0017】
以上から、InGa1−xAs活性層32のxが、0<x<0.18の範囲でInx’(AlGa1−y1−x’As窓層31のx’とほぼ一致して、Inx’(AlGa1−y1−x’As窓層31のyがそれと独立に変化できることを見出したことにより、短波超限界が任意に変化できる高感度な光電面の材料組成制御が先行技術の場合と比較すると非常に容易となった。
【0018】
活性層32上面中央部には、CsOからなる表面層33が均一に極薄く形成され、活性層32上面の仕事関数を十分低下させるので、多くの光電子が消滅することなく表面層33近傍に到達したときに容易に外部に放出される。ただし、表面層33はCsOのようなアルカリ金属の酸化物に限るものではなく、アルカリ金属又はそのフッ化物でもよい。また、活性層32上面周縁部にCrからなる電極50が蒸着して形成され、活性層32と電気的な接続ができるようにしている。
【0019】
次に、本発明の光電面を製造方法でもって説明する。図4(a)〜(e)は図1のA−A線断面図を工程順に示している。
【0020】
まず、GaAsからなる半導体基板60を用意する。つぎに、この上にエピタキシャル成長装置(図示せず)を用いてInGa1−xAsからなる厚さ約4μmのバッファ層61、In(Al0.5Ga0.51−xAsからなる厚さ約1μmのエッチストップ層62、そしてp型の不純物が所望量だけ導入された、InGa1−xAsからなる厚さ約2μmの活性層32及びInx’(AlGa1−y1−x’Asからなる約4μmの窓層12をの順次エピタキシャル成長させ、図4(a)に示すように、ヘテロ構造を有した半導体多層膜を作製する。
【0021】
上記工程においてバッファ層61を設けるのは、その上のエッチストップ層62の結晶欠陥を減少させるためだけでなく、GaAs半導体基板60中の不純物をバッファ層61より上の層へ拡散させないためである。なお、バッファ層61は上述した(i)一定の組成からなる層にする以外に、例えば、(ii)厚さ2μmのInGa1−xAs層及びGaAs層を交互に積層した多層構造にしたり、又は(iii)GaAs半導体基板60からなだらかに組成をInGa1−xAsまで傾斜させたいわゆるグレーデッド層等にしたりしても同様な作用・効果が生ずる。エッチストップ層62は、後述するエッチング処理において、エッチストップ層62より上の層を保護するために設けられる。また本発明では、InGa1−xAs活性層32及びInx’(AlGa1−y1−x’As窓層31をエピタキシャル成長させる際、上述したように両者のインジウム組成比x,x’をほぼ等しくすることにより、両者の格子定数をほぼ一致させ、活性層32内の結晶欠陥を抑えるようにしている。
【0022】
その後、図4(b)に示すように、Inx’(AlGa1−y1−x’As窓層31の上にCVD法を用いて、Si及びSiOが被検出光の波長に応じた膜厚でもって順次積層した反射防止膜20を形成させる。
【0023】
そして、活性層32の熱膨張係数に比較的近いコーニング社の7056ガラス(熱膨張係数:5×10−7/℃)からなるガラス面板10を、真空中又は不活性ガス中で約550℃に加熱して反射防止膜20と熱圧着させ、反射防止膜20を介して多層膜をガラス面板10に配置させる。なお、ガラス面板10は活性層32の熱膨張係数に近いものであれば特にコーニング7056ガラスに限られるものではない。その後、ガラス面板10を室温まで冷却すると、図4(c)に示すように、反射防止膜20はガラス面板10と密着する。
【0024】
つぎに、この状態でもって、アンモニア及び過酸化水素溶液を用いてGaAs半導体基板60をエッチング除去すると、エッチング除去はIn(Al0.5Ga0.51−xAsエッチストップ層61が露出して自動的に停止する。引続き、フッ酸又は塩酸溶液を用いてIn(Al0.5Ga0.51−xAsエッチストップ層61をエッチング除去すると、図4(d)に示すように、エッチング除去はInGa1−xAs活性層32が露出して自動的に停止する。
【0025】
その後、所定のマスクを用いることによってInGa1−xAs活性層32露出面周縁部等にCrからなる電極50を蒸着装置(図示せず)内で蒸着させ、光電面30を電気的に接続できるようにする。最後に、InGa1−xAs活性層32露出面を約580℃に加熱して清浄化した後、Cs及びOを導入してInGa1−xAs活性層32露出面に表面層33を蒸着させることによって、InGa1−xAs活性層32露出面の仕事関数を低下させ、図4(e)に示す光電面が得られる。
【0026】
つぎに、本発明に係る光電変換管を各実施形態毎に説明する。
【0027】
光電変換管の第1実施形態
図5はいわゆるラインフォーカス型光電子増倍管の側断面図を示したものである。図5において、内面に光電面30が反射防止膜を介して密着するようにして設けられたガラス面板10が真空管11の本体を構成する筒体の一方の端部に支持されており、被検出光(hν)が矢印に示すように入射される。真空管11を構成する筒体の他方の端部もガラスを用いて気密に封止され、真空管11内部を真空状態に保持している。
【0028】
真空管11内の他方の端部には陽極40が設置されており、光電面30と陽極40との間のうち、光電面30寄りに光電子を収束する一対の収束電極70が設置され、かつ、陽極40寄りにこの光電面30から放出された光電子を順次増倍するための複数段のダイノード71a〜71hからなるダイノード部71(増倍手段)が曲面状の電極を多段繰り返して設置されている。図示しないが、光電面30、収束電極70、ダイノード部71、そして陽極40には、ブリーダ回路及び電気リードを介して、光電面30に対して正のブリーダ電圧が陽極40に近づくにつれて段毎に増加するように分配して印加されている。
【0029】
よって被検出光が光電子増倍管に入射すると、上記光電面30から光電子(e)が従来と同程度の数を保持したまま、従来より短時間で放出される。放出された光電子は収束電極70によって加速して収束され、第1ダイノード71aに入射される。入射した光電子数に対して数倍の数の2次電子が放出され、引続き第2ダイノード71bに加速して入射する。第2ダイノード71bにおいても第1ダイノード71aと同様に入射した電子数に対して数倍の2次電子が放出される。これを8回繰り返すことによって、光電面30から放出された光電子は約100万倍程度に最終的に2次電子増倍され、第8ダイノードhから増倍して放出された2次電子が陽極40で集められ出力信号電流として取り出される。
【0030】
本実施形態では、短波超限界を決める窓層31の原子組成比yが変化しても感度の高い光電面30を用いていることから、陽極40から最終的に出力される信号電流も大きくなって、従来のラインフォーカス型光電子増倍管と比較してより微弱な被検出光を検出することができる。
【0031】
光電変換管の第2実施形態
図6はいわゆる近接型光電子増倍管の側断面図を示したものである。反射防止膜20と光電面30とが光電面の実施形態と同様にされたガラス面板10が、Inシール部13及びIn溜め14からなる封止部材を用いて真空管11の本体を構成する筒体の上端部に封止して支持されており、被検出光(hν)が矢印に示すように入射される。
【0032】
また、真空管11の本体を構成する筒体の下端部には、底板部12が支持され、真空管11を気密に封止して真空管11内部を真空状態に保持させている。底板部12上面では光電面30と対向して、光電子が打ち込まれたとき増倍作用を有しているフォトダイオード41が設置されている。このフォトダイオード41に接続されたステムピン52の一端が底板部12を貫通して延びており、それを介してこのフォトダイオード41には逆バイアス電圧が印加されており、また同様にステムピン52と電極50に接続された電気リード(図示せず)とを介して、光電面30とフォトダイオード41との間に数kVの電圧が印加されている。
【0033】
上記光電子増倍管に被検出光が入射すると、光電変換管の第1実施形態に述べたように光電子(e)が真空管11の内部空間へ多く放出された後、フォトダイオード41に加速して打ち込まれることにより、光電子1つに対し数1000倍に増倍された2次電子が生成される。そして、フォトダイオード41内で生成された2次電子がステムピン52を介して出力信号として取り出される。
【0034】
したがって、本実施形態では短波超限界を変化させても、光電面から光電子が従来より多く放出されるので、従来の電子打ち込み型光電子増倍管に比べて微弱光を検出できる。また、ダイノード部を必要とせず、しかも、後述する静電収束型光電子増倍管と比較して収束電極を要しないことから、小型化が可能である。
【0035】
光電変換管の第3実施形態
図7はいわゆる静電収束型光電子増倍管の側断面図を示したものである。この光電子増倍管で第2実施形態と異なる点は、光電面30とフォトダイオード41との間に、一対の収束電極70が設置されていることである。そして、一対の収束電極70と接続された各電気リード51a,bの一端が真空管30側壁を貫通して延びており、電気リード51a,bを介して一対の収束電極70に所定の電圧を印加できるようにしている。
【0036】
本実施形態によれば、収束電極70を用いて光電子が収束されているので、光電面の有効面積に対して小さいフォトダイオード41を用いることができるので、高速応答が可能となる。
【0037】
光電変換管の第4実施形態
図8はいわゆる画像増強管の側断面図を示したものである。本実施形態は第2乃至第3実施形態と異なり、真空管11の本体を構成する筒体の中央には、2次元電子を2次電子増倍できるように直径10μm程度のガラス孔を多数束ねて構成されるマイクロチャンネルプレート(以下「MCP」という)(増倍手段)72が設置されていることである。そして、光電面30及びMCP72に接続される各電気リード(図示せず)を介して、光電面30とMCP72との間には+数100Vの電圧が印加されている。また、MCP72と接続された各電気リード53a,bの一端が真空管11の側壁を貫通して延び、それらを介して、MCP72の上面側(以下「入力側」という)とMCP72の下面側(以下「出力側」という)との間には増倍用の電圧が印加されている。
【0038】
また本実施形態では、真空管11の本体を構成する筒体の下端部にはファイバープレート42が支持され、その内面上に蛍光体43(蛍光膜)が配置されている点において前述の実施形態とは異なる。そして、蛍光体43に接続された電気リード53cとMCP72に接続された上記と別の電気リード(図示せず)を介して、MCP72に対して+数kV程度の電圧が蛍光体43に印加されるようにしている。なお、第1電極50及び第2電極51と接続された電気リードは図示を省略している。
【0039】
したがって、画像増強管に被検出光が図8のように入射すると、2次元光学像に対応する2次元光電子像(e)が光電面30から真空管11の内部空間へ放出され、MCP72入力側に加速して入射される。MCP72によって2次元光電子像は約100万倍に2次電子増倍され、MCP72の出力側から入射位置に対応した2次元電子像が放出され、蛍光体43に加速して入射される。蛍光体43上では2次元電子像に対応した2次元画像が増強して発光表示される。2次元画像は蛍光体43を支持しているファイバープレート42を通して外部に取り出され、観測される。
【0040】
本実施形態は短波超限界が変化しても結晶欠陥が抑制された上記光電面30を用いていることから、従来よりも多くの2次元光電子像が放出されるので、蛍光体43は増倍された2次元電子によって従来より強く発光される。よって、従来の画像増強管に比較しより微弱な2次元光学像が感度よく、かつ、結晶欠陥に起因するクロスハッチパターンが現れることなく直接観察され得る。
【0041】
光電変換管の第5実施形態
図9はいわゆる近接型撮像管の側断面図を示したものである。この撮像管では、第2実施形態におけるフォトダイオード41に代えて、撮像デバイスである電荷蓄積素子(以下「CCD」という)44が用いられている。図示しないが、光電面30とCCD44との間には放出された光電子を増倍するための電圧が印加され、これにより加速された光電子がCCD44に入射することにより光電子像が増倍される。CCD44の各画素に蓄積される電荷は、ステムピン54を介して時系列に外部に出力される。
【0042】
本実施形態においても、短波長限界が変化できる高感度な光電面30から2次元光電子が従来よりも多く放出されることから、CCD44の各画素に蓄積された増倍電子が時系列に外部に従来よりも多く出力され得る。よって、従来より2次元の微弱光現象を電気的に検出して観測することが可能となる。また、本実施形態は、第4実施形態に述べたように、結晶欠陥に起因するクロスハッチパターンを出力せずに高品質な画像特性を得ることができる。
【0043】
なお、本発明に係る光電変換管の第1乃至第3実施形態において、増倍手段としてダイノード又はフォトダイオードを用いたものを説明したが、増倍手段は上記のものに必ずしも限らず、マイクロチャンネルプレート等その他の増倍手段を用いてもよい。また、光電変換管の第5実施形態において近接型撮像管を説明したが、静電収束型撮像管などでも構わない。さらに、撮像管の実施形態において撮像デバイスとしてCCDを用いた場合を説明したが、これに限定されるべきものではなく位置検出機能を有する固体検出器、例えば位置検出型のフォトダイオード等でも構わないことはもちろんである。最後に、本発明の光電変換管として光電子増倍管、画像増強管及び撮像管を説明したが、これらを備えるストリーク管等のその他光検出装置にも適用可能であることは言うまでもない。
【0044】
【発明の効果】
本発明の光電面によれば、窓層と活性層とが格子整合しながら窓層の組成を変えることができるので、短波長限界が変化できる高感度な光電面が得られる。
【0045】
さらに、本発明の上記光電面を用いた光電変換管によれば、短波超限界を決める窓層の原子組成比を変えても、従来よりも微弱な光を検出できる。特に、画像増強管や撮像管では光電面の結晶欠陥に起因したクロスハッチパターンを発生することなく高品質な画像が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態に係る光電面の斜視図を一部断面にて示した図である。
【図2】GaAs基板上にあるInGa1−xAsからなる活性層の組成xを変化させたときの分光感度特性を示した図である。
【図3】Inx’(AlGa1−y1−x’Asからなる窓層の組成yを変化させたとき、本発明に係る光電面の分光感度特性を示した図である。
【図4】図1のA−A線断面図について製造工程を示した図である。
【図5】図1の光電面を備えた光電変換管の第1実施形態の側断面図である。
【図6】図1の光電面を備えた光電変換管の第2実施形態の側断面図である。
【図7】図1の光電面を備えた光電変換管の第3実施形態の側断面図である。
【図8】図1の光電面を備えた光電変換管の第4実施形態の側断面図である。
【図9】図1の光電面を備えた光電変換管の第5実施形態の側断面図である。
【符号の説明】
10・・・ガラス面板、11・・・真空管、12・・・底板部、13・・・Inシール部、14・・・In溜め、20・・・反射防止膜、30・・・光電面、31・・・窓層、32・・・活性層、33・・・表面層、40・・・陽極、41・・・フォトダイオード、42・・・ファイバープレート、43・・・蛍光体、44・・・電荷蓄積素子、50・・・電極、51a,b,c・・・電気リード、52、・・・ステムピン、60・・・半導体基板、61・・・バッファ層、62・・・エッチストップ層、70・・・収束電極、71・・・ダイノード部、71a・・・第1ダイノード、71b・・・第2ダイノード、71c・・・第3ダイノード、71d・・・第4ダイノード、71e・・・第5ダイノード、71f・・・第6ダイノード、71g・・・第7ダイノード、71h・・・第8ダイノード、72・・・マイクロチャンネルプレート。
代理人弁理士 長谷川芳樹

Claims (5)

  1. ガラス面板上に、検出対象である被検出光の反射防止膜を介して密着するように設けられた光電面において、
    反射防止膜上にInx’(AlGa1−y1−x’Asによって形成され、検出対象となる被検出光よりも短波長の光を遮断する窓層と、
    前記窓層よりもバンドギャップエネルギが小さいInGa1−xAsによって前記窓層上に形成され、前記被検出光を吸収して前記光電子を発生させる活性層と、
    を少なくとも備えた光電面であって、前記活性層の原子組成比xが0<x<0.18の範囲で前記窓層の原子組成比x’とほぼ等しく、前記窓層の原子組成比yの範囲が0<y<1であることを特徴とする光電面。
  2. 請求項1記載の光電面と、
    前記光電面を内部に収容するように、前記ガラス面板を側壁端部に支持して内部が真空状態に保たれた真空管と、
    前記真空管内部に設置され、前記光電面に対して正の電圧を保持する陽極と、を備えた光電変換管。
  3. 前記光電面と前記陽極との間には前記光電面から放出された光電子を2次電子増倍する増倍手段が備えられていることを特徴とする請求項2に記載の光電変換管。
  4. 前記陽極は前記被検出光の2次元光学像に対応した2次元電子像を受容することによって発光する蛍光膜であることを特徴とする請求項2又は3に記載の光電変換管。
  5. 前記陽極は前記光電面に入射した被検出光の2次元光学像に対応した2次元電子像を受容することによって前記2次元光学像に対応した電気信号を出力する固体撮像デバイスであることを特徴とする請求項2又は3に記載の光電変換管。
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