JP3615813B2 - 作業ロールクロス圧延機のロール間潤滑油供給システム - Google Patents
作業ロールクロス圧延機のロール間潤滑油供給システム Download PDFInfo
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は圧延材の板クラウン制御能力に優れた作業ロールクロス圧延機に係わり、特に作業ロールクロス圧延機の補強ロールと作業ロール間を潤滑する作業ロールクロス圧延機のロール間潤滑油供給システムに関する。
【0002】
【従来の技術】
板材の圧延における最も重要な品質の一つに板幅方向の板厚分布いわゆる板クラウンがある。この板クラウンは、圧延荷重によるロールの撓み、ロールのサーマルクラウン、あるいはロールの摩耗によって変わる。従来、板クラウンに及ぼす上記影響を補正し、所要のものを得るため種々の方策が考えられているが、その一つにロールをクロスさせることにより作業ロール間あるいは作業ロールと補強ロールの間の垂直方向ギャッププロフィールを変える方法がある。
【0003】
ロールクロスの方法として理論的には下記3方法が存在する。
【0004】
(1)作業ロールのみをクロスさせる。(文献:M.D.Stone :Iron & Steel Engineering, Aug. 1965)
(2)補強ロール(作業ロールを支持しているロールで6段圧延機の場合中間ロールでも可)をクロスさせる。(文献:M.D.Stone :Iron & Steel Engineering, Aug. 1965)
(3)作業ロールと補強ロールをペアーにてクロスさせる。(特許公報:特公昭58−23161号公報)
このうち(1)については河野他(昭和56年度 塑性加工春季講演会1981年5月)、(2)についてはA.R.E.Singer他(Journal of the Iron & Steel Institute Dec. 1962 )が実験、検討を試みたが、作業ロールと補強ロール間のクロスにより発生するスラスト力が圧延荷重に対し前者では8−13%、後者では6.5%と高く実用化できずに終わっている。
【0005】
このような結果を踏まえ、作業ロールと補強ロールの間にスラスト力を発生させず、作業ロール間プロフィールを変えうるロールクロス方法として考案されたのが(3)項に示す作業ロールと補強ロールをペアーにてクロスさせる方法である。この場合、作業ロールに加わるスラスト力は板材との間に発生するもの故、圧下率が40%以上と高いところでも高々6%程度であることより、上下相手の作業ロールと補強ロールにより制約されるスペースの中での軸受構造でも支持可能な力となり実用化が可能となった。
【0006】
しかしながら、この作業ロールと補強ロールをペアーで動かす、通称ペアークロスミルでは、重量の大きい補強ロールを動かさねばならないこと、また、圧延荷重を支える圧下スクリュウーとの水平面内相対位置が変わるため、補強ロールチョックにモーメントが加わり、チョックが傾いたり、またチョックとハウジングが片当りする。これを緩和するため補強ロールチヨックと圧下スクリュウーあるいはハウジングの間にクロスビームが設けられているが、構造が大変複雑になる。さらに作業ロール及び補強ロールを圧延中動かすにはクロスビームと圧下スクリューあるいは相当するハウジングの部分との間に摺動抵抗を減らすための装置、たとえば平面軸受等を設けねばならず、益々複雑となる。
【0007】
上記問題点を解決し、シンプルで大きなクラウン制御能力を得ることのできる圧延機が特開平5−50110号公報に示されるものである。これは上記(1)項に示す作業ロールクロスミルであるが、作業ロールと補強ロールがクロスして接触することにより発生するスラスト力を鉱油あるいは牛脂をベースにし油分を0−10%含んだ水との混合液(エマルジョン)の潤滑効果により、スラスト力を圧延荷重の4−10%に低減したミルである。
【0008】
なお、注意すべきはこのスラスト力は補強ロールにかかるスラスト力であることである。即ち、作業ロールに加わるスラスト力は作業ロールと板との間で発生し作業ロールにかかるスラスト力が上記補強ロールから作業ロールに加わるスラスト力の方向と全く逆向きであることである。従って、これらは互いに相殺するため作業ロールには0−4%、高々5%のスラスト力しか負荷されない。よって先に述べた相手の作業ロールと補強ロールに挟まれた狭いスペースでも、作業ロールに負荷されるスラスト力を充分支持できる軸受等の構造が可能となるものである。
【0009】
潤滑油の供給方法については、特開平6−190409号公報にて潤滑油循環使用が提案されている。また特開平5−169108にてクロス角あるいはロールに負荷されるスラスト荷重に応じて潤滑剤供給量を増減する供給方法が提案されている。更に、特開平6−31315号公報にて圧延荷重の検出結果に基づき潤滑液の供給量を増減し停止する供給方法が提案されている。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
上述したように、特開平5−50110号公報に記載の従来技術により作業ロールと補強ロールの間が適正に潤滑される条件を作ることにより、不可能とされていた作業ロールクロス圧延機が可能となった。しかしながら、本クロスミルがその性能を十分発揮し安定操業を得るためには作業ロールと補強ロールの間の潤滑を確実なものにする必要がある。
【0011】
特開平6−190409号公報では、ロールにシール付の潤滑ヘッダーを設け必要な量だけの潤滑油がロール表面に付着するようにすると共に、余分な潤滑油は再びタンクに戻るような潤滑油循環供給方式となっている。これにより一定の濃度と潤滑油性能を維持しながら長期間安定して潤滑油を供給できるとしている。
【0012】
ところが、実操業では例えば当初0.8μRa以下であったロール表面は、圧延の進行にともない摩耗し、例えば0.2〜0.3μRaとスムーズな面になる場合と、逆に荒らされ焼き付きを発生し5μRa以上となる場合もある。このため同じ潤滑油を用いて補強ロールと作業ロール間を潤滑していても、ロール間の摩耗係数、従ってこれに等価なスラスト係数が変化し、スラスト力も増減する。従って、スラスト力を適切な範囲に保つためにはロール間の潤滑状態を考え、所定のスラスト係数が得られるようにすることが望まれる。
【0013】
特開平5−169108では作業ロールと補強ロールのクロス角あるいはロールに負荷されるスラスト力に応じて潤滑油の供給量を調整することを提案している。しかし、本願発明者等の検討によれば、まず、ロールクロスにより発生するスラスト力を圧延荷重にて除したスラスト係数(摩擦係数)はほぼ0°から0.5°の範囲のみで変わり、しかもこの変化はロール間のすべり摩擦係数が変わることによるのではなく、ロール間での接触変位が弾性的かあるいはスベリによっているのかと言うことに影響されているものであり、その間でいわゆるすべり摩擦係数が変化しているものではない。加えて0°から0.5°の範囲のスラスト係数は0.5°以上のクロス角でのスラスト係数より小さい。従ってクロス角によって潤滑条件を変えることは大きな意味を持たない。
【0014】
一方、ロールに負荷されるスラスト力を測定し、これに応じて潤滑油量を変えることはスラスト力を制御するための1つの方法である。しかし、潤滑油の性能はスラスト力そのものを変えるのではなく、スラスト力を接触荷重にて除した値、いわゆる摩擦係数と密接に繋がっているものであり、スラスト力に応じて潤滑油量を変えても摩擦係数(スラスト係数)を制御することはできない。
【0015】
特開平6−31315号公報では、圧延荷重の検出結果に基づき潤滑液の供給量を増減し停止する供給方法を提案しているが、この方法でも上記従来技術と同様に、圧延荷重に応じて潤滑油量を変えても摩擦係数(スラスト係数)を制御することはできない。
【0016】
しかも、上記従来技術ではいずれもスラスト力を制御するのに潤滑油の供給量を増減している。しかし、本願発明者等の検討によれば、ニートオイルを用いずエマルジョンタイプの潤滑油を使用する場合、潤滑状態は基本的にエマルジョンのプレートアウト性によって決まり、同じスプレー圧力のもとで潤滑性を変えるために供給流量を増やす方法を採ると、流量が増すとき互いにプレートアウトを邪魔するため流量を増した割に効果が少ない。
【0017】
ここで、ロール間の潤滑はスラスト力だけでなく他の圧延条件、例えば振動、スリップの発生等についての物理現象も合わせて考慮する必要がある。すなわち、潤滑状態は単にスラスト力を決めるだけでなく、例えば2面間のすべりの状態を決定するのであるから、スティックスリップの発生、更に振動、そしてミルとの共振等を左右する。また、ロール間の潤滑が良すぎると、ロールの円周方向の摩擦係数の低下になり、加減速時にロール間スリップを発生する。この場合必要なものは摩擦係数(スラスト係数)である。
【0018】
上記従来技術ではスラスト力などを検出して潤滑油量を増減しているが、いずれも摩擦係数(スラスト係数)を制御していない。従って、スラスト力以外の圧延条件をも考慮した適切な潤滑性能を得ることはできず、振動、スリップの発生等を生じる恐れがある。
【0019】
以上、同じ潤滑油にて圧延条件の変化に対応する上での問題点について述べたが、スプレー圧力や濃度の調整にて変え得る摩擦係数の大きさは高々0.04%程度である。しかしロール材質をたとえばハイクロムからハイスに変えた場合、スラスト係数は0.04%以上の差が発生する。この変化に対応するためには潤滑油種あるいは組成を変えた潤滑油を用いなければならず、上記スプレー圧力や濃度のコントロールだけでは対応不可となる。
【0020】
また、実際の圧延では冷却水のロールへの噴射状況などが上下ロールにて異なるため上作業ロールと補強ロールの間および下作業ロールと補強ロールの間の潤滑条件が必ずしも同一ではない。このためには上下ロールにて別々の独立した潤滑系統が必要になる場合がある。
【0021】
さらに、例えば当初0.8μRa以下であったロール表面は、圧延の進行にともない摩耗し荒らされ、5μRa以上となる場合もあると述べたが、特開平6−190409号公報に記載の潤滑油循環供給方式でこのようにロール表面が荒れると、潤滑ヘッダーのシール面がぴったりとロール表面に接触せず、隙間ができ潤滑油の流出量が増えたり、ロールの冷却水がシールより侵入するため、潤滑油の濃度が変化する。
【0022】
また、シール部分からのロール冷却水の侵入量は上下ロールを合わせると1800mm面長のミルでは300cc/minから800cc/minとなる。従って、1000リットル程度のタンクであれば、約4−5hr位でタンク上面位置に潤滑油レベルが到達し、タンクがオーバーフローして潤滑油の供給を停止せざるを得ない状況を招き、クロス圧延を不可とする。同時に潤滑油濃度は3%から2%程度に低下する。
【0023】
さらに近年の熱間圧延では、熱間圧延油を使用し、ロールの寿命延長あるいは動力削減を図っている。このため上記潤滑油が熱間圧延油の塗布と2重になり、必要以上の油を塗布する可能性を有する。これは油の原単位を大きくし無駄を重ねることになるため、熱間圧延油と本潤滑油の相互利用が望まれる。
【0024】
本発明の第1の目的は、作業ロールクロス圧延機の補強ロールと作業ロール間の潤滑に際しスラスト係数(摩擦係数)を制御し、振動やスリップの発生を考慮して適切な潤滑性能を得ることのできる作業ロールクロス圧延機のロール間潤滑油供給システムを提供することである。
【0025】
本発明の第2の目的は、作業ロールクロス圧延機の補強ロールと作業ロール間の潤滑に際しロール材質が変わってもスラスト係数を適正な範囲に制御できる作業ロールクロス圧延機のロール間潤滑油供給システムを提供することである。
【0026】
本発明の第3の目的は、作業ロールクロス圧延機の補強ロールと作業ロール間の潤滑に際し上作業ロールと補強ロールの間および下作業ロールと補強ロールの間をそれぞれの潤滑条件に応じて別々に独立して潤滑することのできる作業ロールクロス圧延機のロール間潤滑油供給システムを提供することである。
【0027】
本発明の第4の目的は、作業ロールクロス圧延機の補強ロールと作業ロール間の潤滑に際し、ロール間を潤滑した余分な潤滑油をタンクに戻し循環供給する方式を採用しかつ潤滑油濃度を目標値に保てる作業ロールクロス圧延機のロール間潤滑油供給システムを提供することである。
【0028】
本発明の第5の目的は、作業ロールクロス圧延機の補強ロールと作業ロール間の潤滑に際し、ロール間を潤滑した余分な潤滑油をタンクに戻し循環供給する方式を採用しかつ冷却水の侵入があってもタンクがオーバーフローせず潤滑油の供給を連続的に行うことのできる作業ロールクロス圧延機のロール間潤滑油供給システムを提供することである。
【0029】
本発明の第6の目的は、作業ロールクロス圧延機の補強ロールと作業ロール間の潤滑に際し熱間圧延油と潤滑油の相互利用により油の原単位を下げることができる作業ロールクロス圧延機のロール間潤滑油供給システムを提供することである。
【0030】
【課題を解決するための手段】
上記第1の目的を達成するために、本発明によれば、一対の作業ロールと、これら作業ロールをそれぞれ支持する一対の補強ロールとを備え、前記補強ロールは、そのロール軸線が特定角度以外の角度に水平面内で自在に傾斜しないように構成され、前記作業ロールは水平面内でそのロールの軸線が補強ロール軸線に対して交差しかつ相互に交差するように自在に傾斜し得るように構成され、前記作業ロールと補強ロール間を潤滑油により潤滑しロールクロスにより発生するスラスト力を低減する作業ロールクロス圧延機のロール間潤滑油供給システムにおいて、(a)前記補強ロール及び作業ロールの少なくとも一方のロール面に潤滑油をスプレーし作業ロールと補強ロール間を潤滑する潤滑油塗布手段と;(b)前記補強ロール及び作業ロールのうち少なくとも補強ロールに負荷されるスラスト力を圧延荷重で除したスラスト係数を求めるスラスト係数演算手段と;(c)前記スラスト係数が所定の値となるように前記潤滑油塗布手段によりロール面に塗布される潤滑油のスプレー圧力及び潤滑油濃度の少なくとも一方を制御し、スラスト係数を制御する潤滑制御手段と;を備える構成にする。
【0031】
この場合、好ましくは、前記潤滑制御手段は、潤滑油のスプレー圧力が所定の範囲内にあるときにはまずスプレー圧力を制御することによりスラスト係数を制御し、潤滑油のスプレー圧力が前記所定の範囲の限界値にあるときには潤滑油濃度を制御する。
【0032】
また、好ましくは、前記潤滑制御手段は、前記スプレー圧力及び潤滑油濃度に加えてスプレータイミングを制御することでスラスト係数を制御し、この場合、好ましくは、前記潤滑制御手段は、潤滑油のスプレー圧力が所定の範囲内にあるときにはまずスプレー圧力を制御することによりスラスト係数を制御し、潤滑油のスプレー圧力が前記所定の範囲の限界値にあるときには潤滑油濃度を制御することによりスラスト係数を制御し、潤滑油の濃度が所定の範囲の下限の限界値にあるときには前記スプレータイミングを制御することによりスラスト係数を制御する。
【0033】
また、上記第2の目的を達成するために、本発明は、上記ロール間潤滑油供給システムにおいて、前記潤滑制御手段は、前記スプレー圧力及び潤滑油濃度に加えて潤滑油種の切換えを制御することでスラスト係数を制御する構成とする。
【0034】
この場合、好ましくは、前記潤滑制御手段は、潤滑油のスプレー圧力が所定の範囲内にあるときにはまずスプレー圧力を制御することによりスラスト係数を制御し、潤滑油のスプレー圧力が前記所定の範囲の限界値にあるときには潤滑油濃度を制御することによりスラスト係数を制御し、潤滑油の濃度が所定の範囲の上限の限界値にあるときには前記潤滑油種の切換えを制御することによりスラスト係数を制御する。
【0035】
また、上記第2の目的を達成するために、本発明は、上記ロール間潤滑油供給システムにおいて、前記潤滑制御手段は、前記スプレー圧力及び潤滑油濃度に加えてスプレータイミング及び潤滑油種の切換えを制御する構成とする。
【0036】
この場合、好ましくは、前記潤滑制御手段は、潤滑油のスプレー圧力が所定の範囲内にあるときにはまずスプレー圧力を制御することによりスラスト係数を制御し、潤滑油のスプレー圧力が前記所定の範囲の限界値にあるときには潤滑油濃度を制御することによりスラスト係数を制御し、潤滑油の濃度が所定の範囲の下限の限界値にあるときには前記スプレータイミングを制御することによりスラスト係数を制御し、潤滑油の濃度が所定の範囲の上限の限界値にあるときには前記潤滑油種の切換えを制御することによりスラスト係数を制御する。
【0037】
更に、上記第3の目的を達成するために、本発明は、上記ロール間潤滑油供給システムにおいて、前記潤滑制御手段は、上補強ロール及び作業ロールと下補強ロール及び作業ロールのそれぞれで独立してスラスト係数を制御できるように2系統設けられている構成とする。
【0038】
以上のロール間潤滑油供給システムにおいて、好ましくは、前記スラスト係数演算手段は、前記補強ロール及び作業ロールのうち少なくとも補強ロールに負荷されるスラスト力を検出する第1の検出手段と、圧延荷重を検出する第2の検出手段と、前記第1及び第2の検出手段で検出されたスラスト力と圧延荷重とからスラスト係数を計算する手段とを有する。
【0039】
また、上記第4の目的を達成するために、本発明は、上記ロール間潤滑油供給システムにおいて、潤滑油供給タンクと、前記潤滑油供給タンクから潤滑油を前記潤滑油塗布手段に供給する潤滑油供給回路と、前記潤滑油塗布手段からの潤滑油を前記潤滑油供給タンクに戻す潤滑油戻り回路とを更に備え、前記潤滑制御手段は、前記潤滑油供給タンク内の潤滑油の濃度を検出する濃度計と、前記濃度計の検出信号に基づき潤滑油ニートオイル及び希釈用水の追加量を制御し、潤滑油の濃度を目標値に保つ濃度制御手段とを有する構成とする。
【0040】
更に、上記第5の目的を達成するために、本発明は、上記ロール間潤滑油供給システムにおいて、前記潤滑油供給タンク内の潤滑油の油面レベルを検出するレベル計と、前記レベル計の検出信号に基づき前記潤滑油供給タンク内の潤滑油の油面レベルが目標値より高いときには潤滑油を排出し油面レベルを目標値に保つ油面レベル制御手段を更に備える構成とする。
【0041】
またこの場合、好ましくは、上記ロール間潤滑油供給システムは前記油面レベル制御手段により排出された潤滑油を油分濃度の高い潤滑油と油分濃度の低い潤滑油とに分離し、油分濃度の高い潤滑油は前記潤滑油供給タンクに戻し、油分濃度の低い潤滑油のみを外部に排出する余剰潤滑油処理手段を更に備える構成とする。
【0042】
この場合、好ましくは、前記余剰潤滑油処理手段は、仕切板により分けられた少なくとも2つのチャンバを有しその一方のチャンバに前記油面レベル制御手段により排出された潤滑油を一時的に貯蔵し、前記仕切板をオーバーフローした油分濃度の高い潤滑油を他方のチャンバに移す潤滑油一時貯蔵タンクと、前記他方のチャンバ内の油分濃度の高い潤滑油を前記潤滑油供給タンクに戻す潤滑油移送手段と、前記一方のチャンバ内にオーバーフローせずに残った油分濃度の低い潤滑油をタンク底部に近い位置より外部に排出する手段とを有する構成とする。
【0043】
前記余剰潤滑油処理手段は、前記油面レベル制御手段により排出された潤滑油の油分と水分とを分離するフィルター手段と、前記フィルター手段で分離された油分を一時的に貯蔵する潤滑油一時貯蔵タンクと、前記潤滑油一時貯蔵タンク内の油分を潤滑油として前記潤滑油供給タンクに戻す潤滑油移送手段と、前記フィルター手段で分離された水分を外部に排出する手段とを有する構成であっても良い。
【0044】
また、上記第6の目的を達成するために、本発明は、一対の作業ロールと、これら作業ロールをそれぞれ支持する一対の補強ロールとを備え、前記補強ロールは、そのロール軸線が特定角度以外の角度に水平面内で自在に傾斜しないように構成され、前記作業ロールは水平面内でそのロールの軸線が補強ロール軸線に対して交差しかつ相互に交差するように自在に傾斜し得るように構成され、前記作業ロールと補強ロール間を潤滑油により潤滑しロールクロスにより発生するスラスト力を低減するとともに、熱間圧延油を使用して圧延を行う作業ロールクロス圧延機のロール間潤滑油供給システムにおいて、(a)前記補強ロール及び作業ロールの少なくとも一方のロール面に潤滑油をスプレーし作業ロールと補強ロール間を潤滑する潤滑油塗布手段と;(b)前記補強ロール及び作業ロールの少なくとも一方のロール面に熱間圧延油を塗布する熱間圧延油塗布手段と;(c)圧延材の圧延中は前記熱間圧延油塗布手段に熱間圧延油を供給し、圧延材が通過していない非圧延時は前記熱間圧延油塗布手段への熱間圧延油の供給を停止すると共に、前記熱間圧延油の供給が停止されている間のみ、前記潤滑油塗布手段に潤滑油を供給する潤滑制御手段と;を備える構成とする。
【0045】
【作用】
本願発明者等は、作業ロールクロス圧延機の補強ロールと作業ロール間の潤滑に関して種々検討した結果、以下の知見を得た。
【0046】
1.作業ロールクロス圧延機の補強ロールと作業ロール間の潤滑に際し振動やスリップの発生を考慮して潤滑性能を得るには、補強ロールかつ/または作業ロールのスラスト係数(摩擦係数)を制御することが必要である。
【0047】
2.同じ潤滑油を用いてスラスト係数(摩擦係数)を制御するには、潤滑油のロール表面へのスプレー圧力及び潤滑濃度を制御することが必要である。
【0048】
3.2種以上の潤滑油を用意し、潤滑油種を切り替えることによってもスラスト係数を制御することができ、この場合は同じ潤滑油による場合以上に大きくスラスト係数を制御することができる。
【0049】
なお、上記知見についての詳細は後述する。
本発明は以上の3点の知見に基づくものであり、第1の目的に係わる本発明において、スラスト係数演算手段でスラスト計数を求め、潤滑制御手段でスラスト係数が所定の値となるようにロール面に塗布される潤滑油のスプレー圧力及び潤滑油濃度の少なくとも一方を制御することによりスラスト係数を制御することができ(上記知見2)、これにより圧延条件あるいは圧延に伴う摩耗や焼き付きによりロール表面粗度が変化しても摩擦係数が大きくなることを防止し、ロールに負荷されるスラスト力が過大となりロール軸受の破損などトラブルを発生する事態を防止することができる。また、スラスト係数を制御するので、振動やスリップを起こすことなく適切な潤滑性能を得ることができ(上記知見1)、これにより安定した操業が可能となる。
【0050】
潤滑油のスプレー圧力及び潤滑油濃度でスラスト係数を制御する場合は、これ等を同時に制御してもよい。しかし、本願発明者等の検討によれば、同じ潤滑油を用いる場合は、スプレー圧力及び濃度がそれぞれある値になると効果が飽和してしまうこと、また飽和したときの摩擦係数はスプレー圧力で制御する時よりも潤滑油濃度で制御する時の方が低いことが分かった。従って、潤滑油のスプレー圧力が所定の範囲内にあるときにはまずスプレー圧力を制御し、潤滑油のスプレー圧力が所定の範囲の限界値にあるときには潤滑油濃度を制御することにより、円滑かつ連続的にスラスト係数を制御することができる。
【0051】
スプレー圧力及び潤滑油濃度に加えてスプレータイミングを制御することでスラスト係数を制御することにより、スラスト係数が小さくなり過ぎたときには潤滑油の供給を停止し、過度のスラスト係数の低下を防止することができる。
【0052】
この場合、上記のようにスプレー圧力及び潤滑油濃度でスラスト係数を制御した後、潤滑油の濃度が所定の範囲の下限の限界値にあるときにはスプレータイミングを制御すること、すなわち潤滑油の供給を停止することにより円滑かつ連続的にスラスト係数を制御しかつ過度のスラスト係数の低下を防止することができる。
【0053】
第2の目的に係わる本発明において、スプレー圧力及び潤滑油濃度に加えて潤滑油種の切換えを制御することにより、同じ潤滑油による場合よりも大きくスラスト係数を制御することができ、広い範囲にわたってスラスト係数を制御することができる(上記知見3)。
【0054】
また、上記のように油種を切り替えることによりハイスロール、ハイクロムロール、ニッケルグレインロールなどロールの材質によって大きくかわるロール間のスラスト係数をほぼ0.07以下の値で一定にし、ロール軸受などのハード機構に影響を与えない範囲のスラスト力に設定可能とする。これにより、圧延上必要なロールを自由に選択しても作業ロールクロス圧延が可能となる。
【0055】
この場合も、上記のようにスプレー圧力及び潤滑油濃度を制御した後、潤滑油の濃度が所定の範囲の上限の限界値にあるときに潤滑油種の切換えを制御することにより、広い範囲にわたって円滑かつ連続的にスラスト係数を制御することができる。
【0056】
更に、スプレー圧力及び潤滑油濃度に加えてスプレータイミング及び潤滑油種の切換えを制御することにより、広い範囲にわたってスラスト係数を制御しかつ過度のスラスト係数の低下を防止することができる。
【0057】
この場合、上記のようにスプレー圧力及び潤滑油濃度を制御した後、潤滑油の濃度が所定の範囲の下限の限界値にあるときにはスプレータイミングを制御し、潤滑油の濃度が所定の範囲の上限の限界値にあるときには潤滑油種の切換えを制御することにより、広い範囲にわたって円滑かつ連続的にスラスト係数を制御しかつ過度のスラスト係数の低下を防止することができる。
【0058】
なお、上記第2の目的に係わる油種の切替え制御に関し、これはスプレー圧力及び濃度制御と切り離して単独で実施してもよく、これによっても上記ロール材質の違いによるスラスト係数の変化を少なくし、スラスト力を制御できる。
【0059】
第3の目的に係わる本発明において、上補強ロール及び作業ロールと下補強ロール及び作業ロールのそれぞれで独立してスラスト係数を制御できるように2系統の潤滑制御手段を設けることにより、上下作業ロールの摩耗状況に応じて上下のスラスト係数を各々の目標値に向かって個別に制御することができ、これにより安定した操業が可能となる。
【0060】
第4の目的に係わる本発明において、潤滑油塗布手段からの戻り油を再使用する循環供給する潤滑油循環供給手段を採用するに際して、濃度制御手段で濃度計の検出信号に基づき潤滑油ニートオイル及び希釈用水の追加量を制御し、潤滑油の濃度を目標値に保つことにより、上記のように潤滑油濃度を制御してスラスト係数を制御することができる。また、結果として、潤滑ヘッダー部へロール冷却水の混入により潤滑油濃度が低下することを防止し、潤滑油濃度の低下でロール間摩擦係数が大きくなり、ロールに働くスラスト力が大きくなってロール軸受の破損などトラブルを発生する事態を防止できる。
【0061】
第5の目的に係わる本発明において、油面レベル制御手段でレベル計の検出信号に基づき潤滑油供給タンク内の潤滑油の油面レベルが目標値より高いときには潤滑油を排出し油面レベルを目標値に保つことにより、冷却水の侵入により潤滑油供給タンクがオーバーフローすることを防止し、タンクのオーバーフローにより潤滑油の供給を停止せざるを得なくなり、クロス圧延を不可とする事態を防止できる。
【0062】
また、油面レベル制御手段で潤滑油を排出する場合、潤滑油を単に捨てるだけであれば簡単であるが、そのまま捨てると油分を多く含み過ぎ環境問題につながる。また、油の原単位が増える。このため余剰潤滑油処理手段で、油面レベル制御手段により排出された潤滑油を油分濃度の高い潤滑油と油分濃度の低い潤滑油とに分離し、油分濃度の高い潤滑油は潤滑油供給タンクに戻し、油分濃度の低い潤滑油のみを外部に排出することにより、環境汚染を無くしかつ油の消費量を削減できる。
【0063】
なお、上記第5の目的に係わる油面レベル制御及び余剰潤滑処理手段に関し、これはスラスト係数の制御とは切り離して単独で実施しても良く、これによっても上記タンクのオーバーフローの防止、環境汚染の低下等の効果を得ることができる。
【0064】
第6の目的に係わる本発明において、ホットミルでは通常圧延時は熱間圧延油が使用されている。本発明に係わる潤滑油は基本的にはこの熱間圧延油と同じ系統の油をベースにするもので粘度あるいは鹸化価が異なるものである。従ってこの熱間圧延油が使用されている間はこれを利用し、熱間圧延油の供給が停止されている間のみ、潤滑油塗布手段に潤滑油を供給することにより、トータルとして油の消費量を押さえ油の原単位を下げることができるとともに、排出する油分を少なくし油処理作業を軽減することができる。
【0065】
【実施例】
本発明に基づく第1の実施例を図1〜図13により説明する。
図1において、100は作業ロール1,1′,補強ロール2,2′から成る4段圧延機であり、上補強ロールチョック61と図示されていないハウジングとの間に圧下スクリュー62及び油圧シリンダー63からなる圧下装置を備え、所定の板厚を得ることができる。また、圧延機100は作業ロールクロス圧延機であり、補強ロール2,2′は3及至4種以下の特定の角度を除きそのロール軸線が水平面内にて自在に傾斜しないように、また作業ロール1,1′はそのロール軸線が補強ロール2,2′の軸線に対して夫々交差すると共に、上下作業ロール1,1′がそのロール軸線を相互に交差するように、水平面内で補強ロール2,2′に対してそのロール軸線が傾斜し得るように構成されている。
【0066】
このような作業ロールクロス圧延機に作業ロールと補強ロール間を潤滑油により潤滑しロールクロスにより発生するスラスト力を低減する本実施例のロール間潤滑油供給システムが設けられている。このロール間潤滑油供給システムは次のように構成されている。すなわち、ロールクロスに伴い補強ロール2,2′及び作業ロール1,1′に発生するロール軸方向の力即ちスラスト力を検出するスラスト計として、補強ロール2,2′のロールチョックまたはキーパープレート部に設けられ補強ロールに負荷されるスラスト力を測定するロードセル4,4′及び作業ロール1,1′に負荷されるスラスト力をロールシフト用のシリンダーの油圧にて測定するプレッシャーセル5,5′が設けられ、下補強ロールチョック61′と図示されていないハウジングとの間に圧延荷重を検出する手段として圧延荷重計60が設けられている。また、補強ロールのロール面に潤滑油をスプレーし作業ロールと補強ロール間を潤滑する潤滑ヘッダー3,3′を含む潤滑油を循環供給する潤滑油循環供給設備101と、ロードセルあるいはプレッシャーセル4,4′,5,5′で検出されたスラスト力を圧延荷重計60で検出された圧延荷重で除したスラスト係数を計算するスラスト係数演算装置64と、スラスト係数が所定の値となるように潤滑油のロール表面へのスプレー圧力及びスプレータイミング、潤滑油濃度、及び潤滑油種の切換えを所定の態様で制御しスラスト係数を制御する潤滑制御装置102とが設けられている。ここで、スラスト係数演算装置64で計算されるスラスト係数は、補強ロール2,2′については補強ロールと作業ロールとの間の摩擦係数に等しく、作業ロール1,1′については補強ロールと作業ロール間の摩擦係数と作業ロールと板材との間の摩擦係数の代数和に相当する。
【0067】
潤滑油循環供給設備101は潤滑油供給タンク7を有し、潤滑油供給タンク7に蓄えられたエマルジョンタイプの潤滑油はスプレーポンプ8により潤滑油供給回路103を介して潤滑ヘッダー3,3’に送られ、補強ロール2,2′のロール表面に噴射される。潤滑ヘッダー3,3′からの潤滑油は潤滑油戻り回路104により潤滑油供給タンク7に戻される。潤滑油タンク7内において、潤滑油はアジテータ14により撹拌され、エマルジョン状態が得られる。
【0068】
潤滑制御装置102はスプレーコントローラ15、濃度コントローラ17及び油種切替コントローラ65を有し、スプレーコントローラ16により潤滑油のロール表面へのスプレー圧力及びスプレータイミングが制御され、濃度コントローラ17により潤滑油濃度が制御され、油種切換えコントローラ65により潤滑油種の切換えが制御される。
【0069】
スプレーコントローラ15によるスプレー圧力及びスプレータイミングの制御に関して、スプレー圧力は潤滑油供給回路103に設けられた圧力計10,10’によりチェックしながら比例減圧弁9,9’により調整される。噴射のオン,オフは電磁ストップバルブ12,12’にて切り替えることができる。同時に流量計11,11′により流量も計測されるが、この値は潤滑がなされているか否かの検出、インターロックに用いられる。
【0070】
濃度コントローラ17による濃度制御に関して、スプレーポンプ8の出口にて余分の潤滑油が分岐されタンクに戻されるバイパス回路に濃度計16を設け、潤滑油の濃度をチェックしながら潤滑油の濃度を目標値に保つためのニートオイルと水の追加量を算定し、バルブ21,23に開閉の信号を送り操作する。ニートオイルと水の実際の追加量はそれぞれ流量計20,22にて測定され、濃度コントローラ17へフィードバックされ、その量が必要十分か否かを判断、処理される。ニートオイルはニートオイルタンク18内に蓄えられており、ポンプ19により供給される。水は図示しない水源から供給される。
【0071】
油種切替コントローラ65による油種の切換え制御に関して、潤滑油循環供給設備101に潤滑油供給タンク7とは別の油種の異なる潤滑油を蓄えた潤滑油供給タンク43を設け、潤滑油供給回路102の3方弁45から潤滑油戻り回路103の3方弁49までを共通として潤滑ヘッダー3,3′への潤滑油の循環供給を行うようにし、3方弁45,49の切換えにより油種の切換えを行う。この潤滑油供給タンク43にも濃度制御のためのニートオイルタンク44、バルブ40,41等、潤滑油供給タンク7と同様の設備が付属している。
【0072】
また、図2に示すように、本実施例のロール間潤滑油システムは、潤滑油供給タンク7,43内の潤滑油の油面レベルを検出するレベル計24,50と、レベル計24,50の検出信号に基づき潤滑油供給タンク7,43内の潤滑油の油面レベルが目標値より高いときには潤滑油を排出し油面レベルを目標値に保つ油面レベル制御装置105と、油面レベル制御装置105により排出された潤滑油を油分濃度の高い潤滑油と油分濃度の低い潤滑油とに分離し、油分濃度の高い潤滑油は潤滑油供給タンク7,43に戻し、油分濃度の低い潤滑油のみを外部に排出する余剰潤滑油処理設備106とを備え、油面レベル制御装置105及び余剰潤滑油処理設備106はレベルコントローラ25を含む構成となっている。
【0073】
レベルコントローラ25による制御に関し、潤滑油供給タンク7の油面レベルが所定以上の高さになると、潤滑油戻し回路104に設けた3方弁29を切り替え、戻し油を余剰潤滑油処理設備106の潤滑油一時貯蔵タンク26へ一旦戻す。この潤滑油一時貯蔵タンク26は排出油を一時貯蔵するだけでなく油分と水分を
分離することに用いる。すなわち、潤滑油一時貯蔵タンク26は仕切板26aにより2つのチャンバ26b,26cに分けられており、一方のチャンバ26bに潤滑油供給タンク7から排出された潤滑油を一時的に貯蔵し、その時浮上した油分を仕切板26aをオーバーフローさせ別のチャンバ26cに移すことにより油分を多く含んだ潤滑水を集め、レベル計27の信号をもとにポンプ28により再度潤滑油供給タンク7に戻して再利用する。一方、油分を取られた水はタンク下方の排出口よりバルブ30を通して外部に排出される。潤滑油供給タンク43に対しても3方弁54、潤滑油一時貯蔵タンク51、レベル計52、ポンプ53、バルブ55により同様の油面レベル制御及び余剰潤滑油処理を行う。
【0074】
次に、本発明のロール間潤滑油供給システムにおける潤滑制御の考え方を説明する。
【0075】
本発明は以下の3点の知見に基づいている。
1.作業ロールクロス圧延機の補強ロールと作業ロール間の潤滑に際し振動やスリップの発生を考慮して適切な潤滑性能を得るには、補強ロールかつ/または作業ロールのスラスト係数(摩擦係数)を制御することが必要である。
【0076】
2.同じ潤滑油を用いてスラスト係数(摩擦係数)を制御するには、潤滑油のロール表面へのスプレー圧力及び潤滑濃度を制御することが必要である。
【0077】
3.2種以上の潤滑油を用意し、潤滑油種を切り替えることによってもスラスト係数を制御することができ、この場合は同じ潤滑油による場合以上に大きくスラスト係数を制御することができる。
【0078】
まず、上記1の点について説明する。
スラスト力をF、圧延荷重をP、スラスト係数をμとすると、これらの関係は、
【0079】
【数1】
F=μP …(1)
で表わされる。ここで、μはロール間の潤滑状態、すなわち、潤滑油の特性(粘度η、組成s他)、相対2面の粗さRa、相対滑り速度Vsやロール径R等によって変わる。すなわち、
【0080】
【数2】
μ=μ(η,s,Ra,Vs,R,etc) …(2)
である。スラスト力Fの値をほぼ一定にすることは圧延荷重Pの変化に対してμを変え調整することになるが、Pの変化は熱間圧延機の場合、600tonから4000ton程度変わる。このため、μの値は例えば0.1から0.017へと1/6に小さくする必要がある。この変化の幅は大変大きく、かつ潤滑状態を境界潤滑、混合潤滑、弾性流体潤滑、流体潤滑(図5参照;後述)と性格の異なる状態にする必要がある。
【0081】
勿論Fに変動幅を持たせることにより、μの調整幅を小さくすることができる。例えばスラスト軸受を壊さないためスラスト軸受容量よりスラスト力を大きくしないという制御である。
【0082】
ここで、ロール間の潤滑は他の圧延条件、例えば振動、スリップの発生等についての物理現象も合わせて考慮する必要がある。すなわち、潤滑状態は単にスラスト力を決めるだけでなく、例えば2面間のすべりの状態を決定するのであるから、スティックスリップの発生、更に振動、そしてミルとの共振等を左右する。また、ロール間の潤滑が良すぎると、ロールの円周方向の摩擦係数の低下になり、加減速時にロール間スリップを発生する。この場合必要なものは摩擦係数(スラスト係数)である。
【0083】
例えば、振動について考えると、ロール間の振動発生は、潤滑油の金属面への吸着力Qと潤滑油自身の剪断力τ、そしてロール表面の弾性率kによって決まる。
【0084】
今相対する2面が互いにすべりを発生し、相対変位xが生じたとき、互いの表面には、
【0085】
【数3】
τm =k・x …(3)
の力が逆向きに発生する。
【0086】
同時に2面間を潤滑する潤滑油内部にも相対変位に対応する剪断力が発生する。この剪断力τは潤滑油の粘度をη、2面間の距離をh、そして相対すべり速度をuとすると、
【0087】
【数4】
τ=η・u/h …(4)
であり、これに2面の接触長bを乗ずるとスラスト力F′が求まる。従って潤滑面の摩擦係数をμ、平均垂直圧力をpm とすると、
【0088】
【数5】
F′=τ・b=η・u/h・b=μ・pm …(5)
となる。
【0089】
従って、この力以上の力は2面間には働かないので、相対2面の変位xも、
【0090】
【数6】
xo =τ/k=μ・pm /k …(6)
に止まる。
【0091】
一方、金属面と潤滑油の接触点では潤滑油の金属への吸着力Qが働き、潤滑面での相対2面の金属接触を防止している。すなわち、
【0092】
【数7】
Q>F′ …(7)
の状態を維持している。
【0093】
ところが、F′がQより大きくなると潤滑油の金属面への吸着が維持できず潤滑切れ、油膜破断を起こす。このため2面は金属接触を発生し、2面の表面は上記(2) 式に基づき大きな変形をする。2面が離れるのは金属接触が断ち切られる時である。この時の剪断力τmmは潤滑膜の剪断力に比べ格段に大きく、このため変位xmmも格段に大きい。すなわち、
【0094】
【数8】
xmm=τmm/k …(8)
となる。従ってこの金属接触が断ち切られると(8) 式に基づき大きな変位を戻す力が働き、変位を零に戻すだけでなく逆方向に変位させ、振動を発生する。
【0095】
以上のことよりロール間のスティックスリップの発生限界は、
【0096】
【数9】
【0097】
ここに、xc :スティックスリップ発生限界表面変位
p:線荷重(Kg/mm)
a:定数
CL:定数
と表わされる。図3に上記発生限界のテスト結果を示す。例えば潤滑油AではCL=3であるものが潤滑油Bではエステルを増し、脂肪酸を加えることによりCL=4.5と大きくなり振動限界が増す。
【0098】
このような場合に、CLは潤滑油種により決まり、pm は圧延の条件により決まるから、振動を発生させないためにコントロールできるのはロール間μであることが分かる。
【0099】
さらに、このロール間のスラスト係数μはロール円周方向のロール間摩擦係数μr と密接な関係を持つ。ロール間の摩擦係数μt は、図4に示すようにμr とスラスト係数μの合成であるが、方向は各々の方向のスリップ率で決まる。加減速時、円周方向の摩擦係数が必要なときは、円周方向のスリップ率が増し合成摩擦係数の方向は円周方向を向くが、その最大値は円周方向にスリップがない場合のスラスト係数を越えない。従ってロール間の潤滑が良すぎてスラスト係数が低くなり過ぎると、そのままロールの円周方向の摩擦係数の低下になり加減速時にロール間スリップを発生する。このためスラスト係数をある一定値以上に保つ必要がある。
【0100】
上記の如き問題を解決するために、本発明ではスラスト係数を制御する。
【0101】
次に上記2及び3の点について説明する。
ロール間の潤滑状態は一般には図5に示すようなストライベック曲線によって表わされる。横軸に潤滑油の粘度ηとロールの周速差U=U1 −U2 の積を荷重Pによって除したηU/Pをとり、ηU/Pと縦軸に示す摩擦係数μの関係を示したものである。この中で領域Iは流体潤滑領域(おおよその油膜厚みh>0.25μm)、領域IIは弾性流体潤滑領域(おおよその油膜厚みh=0.025〜2.5μm)、さらに領域III は混合潤滑、領域IVは境界潤滑領域に分けることができる。
【0102】
本発明に係るロール間の潤滑は弾性流体潤滑領域及び混合潤滑領域であり、この中で前者は基本的に油膜が形成されている状態である。この領域での摩擦係数μはロール接触によるヘルツ偏平領域幅をbとすると、
【0103】
【数10】
【0104】
ここに、η:潤滑油粘度
b:ヘルツ接触幅
U1 −U2 :ロールの相対滑り速度
p:線圧
h:最小間隙
にて表わされ、しかもこの間隙hは弾性流体潤滑理論によれば例えば下式にて表わされる。
【0105】
【数11】
【0106】
ここに、R:等価ロール半径
従って、摩擦係数は(10)式と(12)式より下式のごとくなる。
【0107】
【数12】
【0108】
ここに、σmax :ヘルツ面圧
一方、潤滑油の必要量はこの間隙hとロール幅L、及びロール周速の積に比例し、例えば間隙を1μ、ロール幅を1800mm、ロール周速を250m/minとすると、(0.0001×180×250×102 )/103 =0.45(l/min)もあれば十分であり、潤滑油量を必要以上に増しても効果は変わらない。従ってロールの相対すべり速度U1 −U2 及び等価ロール半径が等しい条件下では、ロールの表面粗さや、接触荷重に対して摩擦係数をコントロールしようとすると、潤滑油の見掛けの粘度あるいは粘性係数ηを変えるしかない。
【0109】
従って弾性流体潤滑領域では基本的に(3) 式に示される如くロール間の摩擦係数は潤滑油種の特性により決まり、潤滑油の供給量やスプレー圧力にて摩擦係数が決まるものではない。
【0110】
一方、領域III の混合潤滑領域にては、ロール幅Lとヘルツ接触幅bの積である接触領域Sの中で大部分は油膜が形成されているが、一部分で単分子層に近い油膜が形成されるかあるいは場合によって金属接触が発生している領域と言える。従って充分な油膜が形成されている部分So での摩擦係数をμo 、単分子層に近い油膜あるいは金属接触の存在する部分SM の摩擦係数をμM とすると、見掛けのμは、
【0111】
【数13】
【0112】
となる。
【0113】
従って、この領域で見掛けのμを変えるには、油分の付着領域(油膜形成領域)を増すこと、言い換えると油分の付着効率をアップすることにより達成できる。エマルジョンタイプの潤滑油を用いる場合にはスプレー圧力を高くすることによりオイルのプレートアウトを促進して付着効率を向上させ、単分子層に近い油膜部分を少くし、そして金属接触をなくすことにより見掛けの摩擦係数を下げ得る。また、同じ条件にて潤滑油が供給されるとき噴射される潤滑油の濃度が高くなるとプレートアウトされる油量が増大し、付着効率がアップする。
【0114】
図6及び図7に潤滑油のスプレー圧力、濃度及び潤滑油種と摩擦係数と関係について行った実験結果を示す。図6及び図7から、スプレー圧力及び濃度が増加するに従い摩擦係数が下がること、しかし、同じ潤滑油を用いる場合は、スプレー圧力及び濃度がそれぞれ5Kg/cm2 あるいは6%を越えると効果が飽和してしまうこと、また飽和したときの摩擦係数はスプレー圧力で制御する時よりも潤滑油濃度で制御する時の方が低いこと、更に潤滑油Aを潤滑性能のより良い潤滑油Bに切り替えれば、更に低い摩擦係数が得られることが分かる。
【0115】
以上のように、同じ潤滑油を用いる場合はスプレー圧力及び濃度の少なくとも一方を変えることにより摩擦係数を変えることができ、この場合、スプレー圧力で制御するよりも潤滑油濃度で制御する方が摩擦係数を低くすることができ、また油種を切り替えることにより更に大きく摩擦係数を変えることができる。
【0116】
以上では圧延荷重の変化に対応して可能な限り大きく摩擦係数を変化させる観点から油種の切替えの必要性を説明した。しかし、油種の切替えはロール材質の面からも必要であり、以下このことを説明する。
【0117】
ロールの軸を互いにθだけ傾け接触させながら、これらを転動させたとき発生する軸方向の力を接触荷重で除したロール間のスラスト係数(摩擦係数)は、まずロールの表面粗度により変化する。例えば図8に示すように相手ロールを補強ロールに見立て鍛鋼ロール、表面粗度0.8μRaを、また潤滑油として潤滑油Aを用い、このロールをハイクロムロールと組合せた場合、ロール表面粗度が0.5μRa以下の時スラスト係数は0.04〜0.06であるが、表面粗度が2μRa程度となると0.06〜0.08と上昇する。この摩擦係数程度であれば問題ないが、もしこのロールがハイスロールの場合にはスラスト係数は更に0.1〜0.12と大きくなる。圧延荷重が仮に4000tonとするとスラスト力は400〜480tonとなる。これではスラスト力が過大となりスラスト軸受の容量も大変大きなものとならざるを得ず、ミル構造上大変不利となる。従ってこの摩擦係数μ=0.1〜0.12を0.04〜0.08のレベルに下げたい。このためには更に潤滑性の良い油が必要である。これは潤滑性能の良い潤滑油Bを使用することにより達成できる。
【0118】
ここで、図9に示す如く、例えば潤滑油の摩擦係数は含まれるエステルの性質と含有比率によって左右される。潤滑油供給タンク7に係わるニートオイルタンク18には低エステル含有比率のニートオイルが蓄えられており、潤滑油供給タンク43に係わるニートオイルタンク44には高エステル配合比率のニートオイルが蓄えられており、ロールの種類、ロールの表面粗度の差による摩擦係数の差を補うため上記のように油種を切り替え使用する。
【0119】
本実施例の潤滑制御装置102は以上の考えに基づきスラスト係数を制御するものである。
【0120】
まず、スラスト係数演算装置64にてロードセル4,4′及びプレッシャーセル5,5′で検出されたスラスト力を圧延荷重計60で検出された圧延荷重で除したスラスト係数を計算する。スラスト係数演算装置64にはこのスラスト係数の目標値または目標範囲として例えば4%±1%が与えられ、運転当初は初期値としてこれに応じた潤滑油、潤滑油濃度あるいはスプレー圧力が選ばれている。しかし、圧延の進行にともないロール表面粗度が変わり摩擦係数が変化し、スラスト係数が目標範囲から逸脱する場合がある。スラスト係数が目標範囲より逸脱した場合、スラスト係数演算装置64はスプレーコントローラ15、濃度コントローラ17及び油種切替コントローラ65を順次作動させ、スラスト係数が目標範囲に収まるよう潤滑油のスプレー圧力、潤滑油濃度、潤滑油種の選定、さらにはスプレータイミングを調整する。
【0121】
図10に本実施例に係る潤滑制御のシステムダイヤグラムを示す。
まず最初に、目標スラスト係数(相当摩擦係数)μ* をインプットする。このスラスト係数μ* のインプットに応じスイッチング回路が働き、初期値設定演算回路にてスプレー圧力Po 、濃度do 及び潤滑油種So が逆算される。これらは図6、図7及び図8に示したスラスト係数とスプレー圧力、濃度及び潤滑油種との関係により求められた関数μ=fs (s)・fd (d)・fp (p)・ft (t)から逆算して求められる。この初期設定条件にて決まる潤滑油供給状態に対し、ロール材質、ロール表面粗さ、そして圧延荷重に対応したスラスト力が発生する。このスラスト力Fをスラスト計(ロードセル4,4′及びプレッシャーセル5,5′)にて測定し、圧延荷重計60にて測定された圧延荷重Pにて除し、実スラスト係数(相当実摩擦係数)μを算出する。
【0122】
この実スラスト係数はフィードバックされ、目標スラスト係数μ* と比較され、その偏差Δμを修正する。そして、スプレー圧力による修正、濃度による修正、油種による修正、スプレータイミングによる修正を行う。これは、勿論一度にこれら全てのファクターより最適解を求めても良いが、ここでは先ず、スプレー圧力による修正、濃度による修正、油種による修正、そしてスプレータイミングによる修正を順次行う方法を取る。ただし図6及び図7に示す如く、スプレー圧力及び濃度は各々5Kg/cm2 あるいは6%を越えると効果が飽和してしまう。従ってスプレー圧力に関しては、圧力が1<P<5(Kg/cm2 )の範囲であることを確認する。この範囲の中にあればスプレー圧力にて調整する。もしスプレー圧力がP=1Kg/cm2 あるいはP=5Kg/cm2 という下限あるいは上限にある場合には、濃度を調整する。濃度も同様に1<d<6%であれば濃度にて調整し、d=1%あるいはd=6%の下限あるいは上限である場合には油種を変更する。さらに、スラスト係数が小さくなり過ぎ、スプレー圧力がP<1で濃度がd<1になると、潤滑油の供給を停止し過度のスラスト係数の低下を防止する。
【0123】
図1に戻り、潤滑制御装置102では図10に示すシステムダイヤグラムに基づく制御を行う。すなわち、スラスト力計4,4′,5,5′にて得られたスラスト力Fと圧延荷重計60にて得られた荷重Pよりスラスト係数演算装置64にて計算され得られたスラスト係数μが、目標スラスト係数μ* と偏差Δμを持つ場合、まずスプレーコントローラ15にこの偏差が送られる。スプレーコントローラ15では、現在のスプレー圧力が1<P<5Kg/cm2 であるか否かを判定し、もしその範囲内であれば必要調整量を割り出し比例減圧弁9,9′を調整する。もし圧力が上限5Kg/cm2 あるいは下限1Kg/cm2 にある場合にはさらに濃度コントローラ17に上記信号が送られる。濃度コントローラ17では先ず現状の濃度が1<d<6%の中にあるか否かを濃度計16の検出値をもとに判定し、もしその範囲内であるなら、ニートオイル供給バルブ21あるいは水供給バルブ23を開き濃度を調整する。実際にロールに噴射される潤滑油の濃度はスプレーポンプ8の出口にて余分の潤滑油が分岐されタンクに戻されるバイパス回路に設けた濃度計16により測定され、濃度コントローラ17にフィードバックされる。濃度コントローラ17は目標濃度に対しての偏差を計算し、ニートオイル、水の量を算定しバルブ21,22に開閉の信号を送り操作する。さらに濃度が上限6%あるいは下限1%にある場合には油種切替コントローラ65に信号が送られる。ここでスラスト係数の偏差に対応し、タンク7の潤滑油かあるいはタンク43に蓄えられている潤滑油かを選択する。この判断結果は切替バルブ45,49に送られ流路を切替えられる。油種を切り替えた後の制御は再びスプレー圧力、濃度の調整制御に戻る。また、スラスト係数が小さくなり過ぎてスプレー圧力がP<1で濃度がd<1になるとスプレーコントローラ15に信号が送られ、電磁ストップバルブ12,12′をOFFするように指示、実行する。
【0124】
次に、図2に示した油面レベル制御装置105及び余剰潤滑油処理設備106の動作について説明する。
【0125】
潤滑ヘッダー3,3′は図10及び図11に示すように多数のノズル70を有し、潤滑油のスプレーはこれらノズル70を用いて行われ、ロールに付着させるべき油以外は再び回収する。この回収のためノズル70はケーシング71内に位置し、ケーシング71のロール側開口部の周りにロール面に接触するシール72を備え、ロール冷却水の侵入を、またスプレー潤滑油のリークをできるだけ少なくしている。また、ケーシング71の上下にはローラ73が設けられ、このローラ73をロール面に接触させてロール面との位置関係を一定に保っている。従って通常は潤滑ヘッダー3,3′内でのロール冷却水の侵入量とスプレー潤滑油のリーク量はほぼバランスするか、あるいは出て行く方が1〜2(l/min)多くなっている。このため、タンク内潤滑油面のレベルをレベル計24または50の信号をレベルコントローラ25に送り、バルブ21,23または40,41を開き水あるいはニートオイルを不足分だけ補うことで潤滑システムのトータル油量を制御する。また、この時の濃度変化は濃度計16で検出され、上記の濃度コントローラ17により制御される。
【0126】
上記の如くタンク内レベル計24,50とレベルコントローラ25及び濃度計16と濃度コントローラ17を用い潤滑油供給タンク7,43内レベルと濃度はコントロールできるが、時として潤滑ヘッダー入側のシール72が摩耗し過ぎたり、あるいは、亀裂が入り冷却水が予想以上侵入してくる場合が考えられる。この場合は潤滑油供給タンク7または43の油面はどんどん上昇しオーバーフローする可能性がある。オーバーフローしても単なる水であれば問題ないが、潤滑油の場合には2〜6%の油分を含んでいるため、そのまま排水できない。もう少し厳密に考えれば潤滑油ヘッダー3、3’からの潤滑油の漏れ量及びロール冷却水の侵入量はロールの表面状態あるいは圧延材によって異なり、必ずしも一定ではない。このため潤滑油供給タンク7,43の油面レベルは一定に保たれず変動を余儀なくされる。レベルが下がった時はニートオイルあるいは水を追加すれば良いが、レベルが高くなった時はオーバーフローすることも考えられる。このため油面レベルが所定以上の高さになった時は、潤滑油戻し回路104に設けた3方弁29または54を切り替え、戻し油を潤滑油一時貯蔵タンク26または51へ一旦戻す。この潤滑油一時貯蔵タンク26または51は排出油を一時貯蔵するだけでなく油分と水分を分離するのにも用いる。すなわち、チャンバ26bまたは51bに潤滑油供給タンク7または43から排出された潤滑油を一時的に貯蔵し、その時浮上した油分を仕切板26aまたは51aをオーバーフローさせ別のチャンバ26cまたは51cに移すことにより油分を多く含んだ潤滑水を集め、レベル計27または52の信号をもとにポンプ28または53により再度潤滑油供給タンク7または43に戻して再利用する。一方油分を取られた水はタンク下方の排出口よりバルブ30または55を通して外部に排出される。
【0127】
以上のように構成した本実施例によれば、次の効果が得られる。
【0128】
(1)まず、本実施例では、作業ロールクロス圧延機の補強ロールと作業ロール間の潤滑に際し潤滑油のスプレー圧力、潤滑油濃度及び潤滑油種の切り替えを制御しスラスト係数を制御するので、圧延条件あるいは圧延に伴う摩耗や焼き付きによりロール表面粗度が変化しても摩擦係数が大きくなることが防止できる。このため、摩擦係数が大きくなることによりロールに負荷されるスラスト力が過大となり、ロール軸受の破損などトラブルを発生する事態を防止できる。
【0129】
(2)また、本実施例では、作業ロールクロス圧延機の補強ロールと作業ロール間の潤滑に際しスラスト係数を制御するので、振動やスリップを起こすことなく適切な潤滑性能を得ることができ、安定した操業を維持することができる。このことは、スラスト係数を制御せずにスラスト力を制御する従来の潤滑方法と本質的な違いである。
【0130】
すなわち、例えば特開平5−169108号公報では、クロス角あるいはロールに負荷されるスラスト荷重に応じて潤滑油の供給量を増減しスラスト力を制御している。しかし、まず、ロールクロスにより発生するスラスト力を圧延荷重にて除したスラスト係数(摩擦係数)は図13に示すごとく0°から0.5°の範囲のみで変わり、しかもこの変化はロール間の摩擦係数が変わることによるのではなく、ロール間での接触変位が弾性的かあるいはスベリによっているのかと言うことに影響されているものであり、その間でいわゆるすべり摩擦係数が変化しているものではない。加えて0°から0.5°の範囲のスラスト係数は0.5°以上のクロス角でのスラスト係数より小さい。従ってクロス角によって潤滑条件を変えることは大きな意味を持たない。
【0131】
一方、ロールに負荷されるスラスト力を測定し、これに応じて潤滑油量を変えることはスラスト力を制御するための1つの方法である。しかし、潤滑油の性能はスラスト力そのものを変えるのではなく、スラスト力を接触荷重にて除した値、いわゆる摩擦係数と密接に繋がっているものであり、スラスト力に応じて潤滑油量を変えても摩擦係数(スラスト係数)を制御することはできず、適切な潤滑性能を得ることはできない。
【0132】
しかも、上記従来技術ではいずれもスラスト力を制御するのに潤滑油の供給量を増減している。しかし、上述したように、ニートオイルを用いずエマルジョンタイプの潤滑油を使用する場合、潤滑性能は基本的にエマルジョンのプレートアウト性によって決まり、プレートアウトしてロール表面に付着する油分の量、すなわちスラスト係数はスプレー圧力によって変化する。従って潤滑性を調整するためにはスプレー圧力を変えることが重要である。また、同じスプレー圧力の下で潤滑性を変える場合、すなわち潤滑膜の厚みを変える場合、潤滑油の濃度を変えることが効果的である。同じスプレー圧力のもとで潤滑性を変えるために供給流量を増やす方法を採ると、流量が増すとき互いにプレートアウトを邪魔するため流量を増した割に効果が少ない。
【0133】
(3)また、潤滑油のスプレー圧力が所定の範囲内にあるときにはまずスプレー圧力を制御し、潤滑油のスプレー圧力が所定の範囲の限界値にあるときには潤滑油濃度を制御し、潤滑油の濃度が所定の範囲の下限の限界値にあるときにはスプレータイミングを制御し、潤滑油の濃度が所定の範囲の上限の限界値にあるときには潤滑油種の切換えを制御することにより、広い範囲にわたって円滑かつ連続的にスラスト係数を制御しかつ過度のスラスト係数の低下を防止することができる。
【0134】
(4)また、油種を切り替えることによりハイスロール、ハイクロムロール、ニッケルグレインロールなどロールの材質によって大きくかわるロール間のスラスト係数をほぼ0.07以下の値で一定にし、ロール軸受などのハード機構に影響を与えない範囲のスラスト力に設定可能とする。これにより、圧延上必要なロールを自由に選択しても作業ロールクロス圧延が可能となる。
【0135】
(5)更に、潤滑ヘッダー部へのロール冷却水の混入により潤滑油濃度が低下することも防止され、潤滑油濃度の低下によりロール間摩擦係数が大きくなり、ロールに働くスラスト力が大きくなってロール軸受の破損などトラブルを発生する事態を防止できる。
【0136】
(6)また、冷却水の侵入により潤滑油供給タンクがオーバーフローすることも防止され、タンクのオーバーフローにより潤滑油の供給を停止せざるを得なくなり、クロス圧延を不可とする事態を防止できる。
【0137】
(7)更に、油面レベル制御のため潤滑油を排出する場合、排出された潤滑油を油分濃度の高い潤滑油と油分濃度の低い潤滑油とに分離し、油分濃度の高い潤滑油は潤滑油供給タンクに戻し、油分濃度の低い潤滑油のみを外部に排出するので、環境汚染を無くしかつ油の消費量を削減できる。
【0138】
なお、上記(4)の効果に関し、潤滑油種の切換えよるスラスト係数の制御は単独で実施しても良く、この場合でもロール材質の変化に対しスラスト係数を適正な範囲に制御できる。
【0139】
また、上記(5)〜(7)の効果に関し、上記潤滑油濃度の制御、油面レベルの制御及び余剰潤滑油処理はスラスト係数の制御とは切り離し独立して実施しても良く、この場合でも上記(5)〜(7)の効果は得られる。
【0140】
本発明の他の実施例を図14により説明する。本実施例は簡易的なスラスト制御を行うため油種の切換えは行わず、かつ上作業ロールと上補強ロール間の摩擦係数と下作業ロールと下補強ロールの間の摩擦係数を独立して制御できるようにしたものである。
【0141】
すなわち、図14において、潤滑油供給タンク7、ニートオイルタンク18及び潤滑油一時貯蔵タンク26はそれぞれ1つづつ設置されており、潤滑油循環供給設備101Aの潤滑油供給回路103A及び潤滑油戻り回路104A、潤滑制御装置102A、油面レベル制御装置105A及び余剰潤滑油処理設備106Aはそれぞれ1種類の潤滑油を取り扱う1系統の構成となっている。
【0142】
一方、潤滑油供給回路103Aは上潤滑ヘッダー3用と下潤滑ヘッダー3′用の2系統の独立した回路103Aa,103Aa′からなり、スプレーポンプ8,8、スプレー圧力制御のための比例減圧弁12,12’、圧力計9,9’、流量計11,11’と濃度計16,16’も2系統設けられ、さらに濃度制御のためのニートオイルタンク18よりのニートオイル供給バルブ21,21’、流量計20,20’、供給ポンプ19,19’、さらに希釈のための水供給用バルブ23,23’、流量計22,22’を各々2系統設けている。
【0143】
圧延に伴いロールの肌荒れが激しくなり、しかも冷却条件が必ずしも同じでない上下作業ロールでは表面粗度が大きく異なる場合が出てくる。この場合、上下各々のロール群を同一の潤滑油でかつ同じ条件で潤滑すると、一方のロール群には適当であっても他方のロール群には不適当な場合がでてくる。このような場合、本実施例によれば、上下作業ロールの摩耗状況に応じて上下のスラスト係数を各々の目標値に向かって個別に制御することができ、これにより安定した操業が可能となる。
【0144】
本発明のさらに他の実施例を図15により説明する。本実施例は余剰潤滑油処理手段としてウルトラフィルタを用いたものである。
【0145】
すなわち、図15において、潤滑油供給タンク7、ニートオイルタンク18及び潤滑油一時貯蔵タンク26はそれぞれ1つづつ設置されており、潤滑油循環供給設備101Bの潤滑油供給回路103B及び潤滑油戻り回路104b、潤滑制御装置102B、油面レベル制御装置105B及び余剰潤滑油処理設備106Bはそれぞれ1種類の潤滑油を取り扱う1系統の構成となっている。
【0146】
また、余剰潤滑油処理設備106Bでは、潤滑油ヘッダー3,3’より戻される潤滑油を3方弁29にて切り替え、潤滑油一時貯蔵タンク26Bへ戻す回路の途中に例えば精密濾過フィルターあるいは限外濾過フィルター30を設け、油分と水を分離する。フィルター30で分離された油分は潤滑油一時貯蔵タンク26bに蓄えられ、適当なタイミングでポンプ28を用い潤滑油供給タンク7へ戻し、濾過された水分は常時システムの外へ排出する。
【0147】
潤滑油には2〜6%の油分がエマルジョン状態として含まれており、エマルジョンの大きさは概ね1〜40μ程度であるため、フィルターのメッシュを適切に選ぶことによりエマルジョンを水から分離できる。なお、エマルジョンの大きさは概ね1μから40μの大きさであるから、これを通さないフィルターであれば形式は問わない。
【0148】
本実施例によっても第1の実施例と同様に余剰潤滑油の処理に際して、排出する油分を少なくし、油の原単位を少なくすることができる。
【0149】
本発明のさらに他の実施例を図16及び図17により説明する。本実施例は熱間圧延油を潤滑油潤滑油として利用するものである。
【0150】
すなわち、図15において、補強ロール2,2′及び作業ロール1,1′のロール面に熱間圧延油をスプレーする熱間圧延油ヘッダー31,31′及び32,32′が設けられ、熱間油ヘッダー31,31′及び32,32′への熱間圧延油の供給、停止はバルブ33,33’のオン・オフによって制御される。
【0151】
バルブ33,33′のオン・オフは潤滑制御装置102Cのスプレーコントローラ15Cにより制御され、スプレーコントローラ15Cは圧延材の圧延中はバルブ33,33′にオン信号を送り、補強ロール2,2′及び作業ロール1,1′に熱間圧延油をスプレーし、圧延材が作業ロール1,1′間を通過していない非圧延時はバルブ33,33′にオフ信号を送り、熱間圧延油の供給を停止する。また、スプレーコントローラ15Cは、熱間圧延油を塗布するバルブ33,33’のオン信号により潤滑油スプレーを停止すべくバルブ12,12’にオフ信号を送り、逆に潤滑油の供給を停止するバルブ33,33’のオフ信号によりバルブ12,12’にオン信号を送る。場合によっては、オン、オフ信号の代わりに比例減圧弁9,9’の圧力を絞る制御を行っても良い。またそのタイミングは、タイマーを介在させることにより適当にずらすこともスプレーコントローラ15Cにて行われるものである。
【0152】
濃度コントローラ17Cはスラスト係数の入力はないが、目標値に一致するよう濃度を制御する点は先の実施例と同じである。また、それ以外の構成歯先の実施例と同じである。
【0153】
熱間圧延油の潤滑性能は作業ロールクロスミルのロール間潤滑油としては充分な性能を有する。しかしながら熱間圧延油は粘度を高くしているため高温のバーによっても瞬時には焼き切れずバー先端の噛み込み時スリップすることが懸念され、一般には圧延材が尻抜けする直前に供給をストップし作業ロール何回転かの間にロール表面に付着した油分を焼き切っている。しかしながら補強ロール表面に塗布された油は冷却水により瞬時に落されるのではなく、図17に示すシミュレーションテストのように数分掛かって冷却水に流し落され、また一部は作業ロールに転写後圧延材との間で焼き切られる。従ってロール間潤滑油の供給が止まっても途端にロール間スラスト力が増大することは無い。よってロールに負荷される荷重の低いバー間では潤滑油が塗布されなくともスラスト力が大巾に増大しトラブルを起こす可能性は少ない。しかし、本実施例では安全を見て熱間圧延油の供給がストップされている間のみ潤滑油をスプレーし、ロールクロスによる作業ロールと補強ロールに働くスラスト力を低減し、ロールクロスによるトラブルを皆無にするとともに、熱間圧延油をロール間潤滑油と併用することにより油の消耗量を削減する。
【0154】
本実施例によれば、熱間圧延油との相互利用により油の原単位を下げることができるとともに、排出する油分を少なくし油処理作業を軽減することができる。
【0155】
【発明の効果】
(1)本発明によれば、スラスト力が過大となり、ロール軸受の破損などトラブルを発生する事態を防止できる。
【0156】
(2)また、スラスト係数を制御することでスラスト力を制御するので、振動やスリップを起こすことなく適切な潤滑性能を得ることができ、これにより板クラウン及び形状の制御に優れた能力を持つ、作業ロールクロス圧延機を潤滑上のトラブルなく安定して操業でき、圧延機の能力を最大に引出し、高品質の製品を得られるとともに、イージーオペレーションと稼働率の向上が達成できる。
【0157】
(3)潤滑油のスプレー圧力及び潤滑油濃度、また必要に応じて潤滑油種、スプレータイミングを所定の相関関係をもって制御するので、広い範囲にわたって円滑かつ連続的にスラスト係数を制御しかつ過度のスラスト係数の低下を防止することができる。
【0158】
(4)油種を切り替えることによりハイスロール、ハイクロムロール、ニッケルグレインロールなどロールの材質によって大きくかわるロール間のスラスト係数をほぼ0.07以下の値で一定にし、ロール軸受などのハード機構に影響を与えない範囲のスラスト力に設定可能とする。これにより、圧延上必要なロールを自由に選択しても作業ロールクロス圧延が可能となる。
【0159】
(5)上下作業ロール表面性状の差により発生する上下ロール群でのスラスト係数を個別に制御でき、安定した操業を提供することができる。
【0160】
(6)潤滑ヘッダー部へのロール冷却水の混入により潤滑油濃度が低下することが防止され、潤滑油濃度の低下でロール間摩擦係数が大きくなり、ロールに働くスラスト力が大きくなりロール軸受の破損などトラブルを発生する事態を防止できる。
【0161】
(7)冷却水の侵入により潤滑油供給タンクがオーバーフローすることが防止され、タンクのオーバーフローにより潤滑油の供給を停止せざるを得なくなり、クロス圧延を不可とする事態を防止できる。
【0162】
(8)油面レベル制御のため潤滑油の排出に際して油分濃度の低い潤滑油のみを外部に排出するので、環境汚染を無くしかつ油の消費量を削減できる。
【0163】
(9)潤滑油と熱間圧延油との相互利用によりトータルとしての油の原単位を下げることができるとともに、排出する油分を少なくし油処理作業を軽減する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例による作業ロールクロス圧延機のロール間潤滑油供給システムの概略図である。
【図2】上記実施例のロール間潤滑油供給システムの油面レベル制御装置及び余剰潤滑油処理設備のみを示す概略図である。
【図3】ロール間潤滑に際しての振動発生限界テストの結果を示す図である。
【図4】ロール間の摩擦係数とスラスト係数とロール円周方向の摩擦係数との関係を示す図である。
【図5】ロール間の潤滑状態を示すストライベック曲線を示す図である。
【図6】潤滑油供給圧力と摩擦係数の関係を示す図である。
【図7】潤滑油濃度と摩擦係数の関係を示す図である。
【図8】ロール材質、粗度とスラスト係数の関係を示す図である。
【図9】エステル配合比率と摩擦係数との関係を示す図である。
【図10】潤滑制御の一実施例を示すシステムダイヤグラムである。
【図11】潤滑ヘッダーの側面図である。
【図12】潤滑ヘッダーの正面図である。
【図13】クロス角度とスラスト係数の関係を示す図である。
【図14】本発明の他の実施例による作業ロールクロス圧延機のロール間潤滑油供給システムの概略図である。
【図15】本発明の更に他の実施例による作業ロールクロス圧延機のロール間潤滑油供給システムの概略図である。
【図16】本発明のまた他の実施例による作業ロールクロス圧延機のロール間潤滑油供給システムの概略図である。
【図17】ロール表面付着油分の除去シミュレーションテスト結果を示す図である。
【符号の説明】
1,1’…作業ロール
2,2’…補強ロール
3,3’…潤滑ヘッダー
4,4’…スラスト計(ロードセル)
5,5’…スラスト計(プレッシャーセル)
6…圧延材
7…潤滑油供給タンク
8…潤滑油スプレーポンプ
9,9’潤滑油スプレー圧力調整比例減圧弁
10,10’…圧力計
11,11’…流量計
12,12’…スプレー開閉バルブ
13…潤滑油戻り回路3方弁
14…アジテーター
15…スプレーコントローラ
16…濃度計
17…濃度コントローラ
18,44…ニートオイルタンク
19…ニートオイル供給ポンプ
20ニートオイル供給流量計
21,40…ニートオイル供給バルブ
22…水供給流量計
23,41…水供給バルブ
24,50…潤滑油供給タンク油面レベル計
25…レベルコントローラ
26,51…潤滑油一時貯蔵タンク
27,52…レベル計
28,53…戻しポンプ
29,54…3方弁
30…油水分離フィルター
31,31’,32,32’…熱間圧延油供給ヘッダー
33,33’…熱間圧延油供給バルブ
7,43…潤滑油供給タンク
41,44…ニートオイル供給タンク
45,46,48,49…3方弁
64…スラスト係数計算装置
65…油種切替コントローラ
70…ノズル
72…シール
101…潤滑油循環供給設備
102…潤滑制御装置
103…潤滑油供給回路
104…潤滑油戻り回路
105…油面レベル制御装置
106…余剰潤滑油処理設備
Claims (19)
- 一対の作業ロールと、これら作業ロールをそれぞれ支持する一対の補強ロールとを備え、前記補強ロールは、そのロール軸線が特定角度以外の角度に水平面内で自在に傾斜しないように構成され、前記作業ロールは水平面内でそのロールの軸線が補強ロール軸線に対して交差しかつ相互に交差するように自在に傾斜し得るように構成され、前記作業ロールと補強ロール間を潤滑油により潤滑しロールクロスにより発生するスラスト力を低減する作業ロールクロス圧延機のロール間潤滑油供給システムにおいて、
(a)前記補強ロール及び作業ロールの少なくとも一方のロール面に潤滑油をスプレーし作業ロールと補強ロール間を潤滑する潤滑油塗布手段と;
(b)前記補強ロール及び作業ロールのうち少なくとも補強ロールに負荷されるスラスト力を圧延荷重で除したスラスト係数を求めるスラスト係数演算手段と;
(c)前記スラスト係数が所定の値となるように前記潤滑油塗布手段によりロール面に塗布される潤滑油のスプレー圧力及び潤滑油濃度の少なくとも一方を制御し、スラスト係数を制御する潤滑制御手段と;を備えることを特徴とするロール間潤滑油供給システム。 - 請求項1記載の作業ロールクロス圧延機のロール間潤滑油供給システムにおいて、前記潤滑制御手段は、潤滑油のスプレー圧力が所定の範囲内にあるときにはまずスプレー圧力を制御することによりスラスト係数を制御し、潤滑油のスプレー圧力が前記所定の範囲の限界値にあるときには潤滑油濃度を制御することによりスラスト係数を制御することを特徴とするロール間潤滑油供給システム。
- 請求項1記載の作業ロールクロス圧延機のロール間潤滑油供給システムにおいて、前記潤滑制御手段は、前記スプレー圧力及び潤滑油濃度に加えてスプレータイミングを制御することでスラスト係数を制御することを特徴とするロール間潤滑油供給システム。
- 請求項3記載の作業ロールクロス圧延機のロール間潤滑油供給システムにおいて、前記潤滑制御手段は、潤滑油のスプレー圧力が所定の範囲内にあるときにはまずスプレー圧力を制御することによりスラスト係数を制御し、潤滑油のスプレー圧力が前記所定の範囲の限界値にあるときには潤滑油濃度を制御することによりスラスト係数を制御し、潤滑油の濃度が所定の範囲の下限の限界値にあるときには前記スプレータイミングを制御することによりスラスト係数を制御することを特徴とするロール間潤滑油供給システム。
- 請求項1記載の作業ロールクロス圧延機のロール間潤滑油供給システムにおいて、前記潤滑制御手段は、前記スプレー圧力及び潤滑油濃度に加えて潤滑油種の切換えを制御することでスラスト係数を制御することを特徴とするロール間潤滑油供給システム。
- 請求項5記載の作業ロールクロス圧延機のロール間潤滑油供給システムにおいて、前記潤滑制御手段は、潤滑油のスプレー圧力が所定の範囲内にあるときにはまずスプレー圧力を制御することによりスラスト係数を制御し、潤滑油のスプレー圧力が前記所定の範囲の限界値にあるときには潤滑油濃度を制御することによりスラスト係数を制御し、潤滑油の濃度が所定の範囲の上限の限界値にあるときには前記潤滑油種の切換えを制御することによりスラスト係数を制御することを特徴とするロール間潤滑油供給システム。
- 請求項1記載の作業ロールクロス圧延機のロール間潤滑油供給システムにおいて、前記潤滑制御手段は、前記スプレー圧力及び潤滑油濃度に加えてスプレータイミング及び潤滑油種の切換えを制御することでスラスト係数を制御することを特徴とするロール間潤滑油供給システム。
- 請求項7記載の作業ロールクロス圧延機のロール間潤滑油供給システムにおいて、前記潤滑制御手段は、潤滑油のスプレー圧力が所定の範囲内にあるときにはまずスプレー圧力を制御することによりスラスト係数を制御し、潤滑油のスプレー圧力が前記所定の範囲の限界値にあるときには潤滑油濃度を制御することによりスラスト係数を制御し、潤滑油の濃度が所定の範囲の下限の限界値にあるときには前記スプレータイミングを制御することによりスラスト係数を制御し、潤滑油の濃度が所定の範囲の上限の限界値にあるときには前記潤滑油種の切換えを制御することによりスラスト係数を制御することを特徴とするロール間潤滑油供給システム。
- 請求項1記載の作業ロールクロス圧延機のロール間潤滑油供給システムにおいて、前記潤滑制御手段は、上補強ロール及び作業ロールと下補強ロール及び作業ロールのそれぞれで独立してスラスト係数を制御できるように2系統設けられていることを特徴とするロール間潤滑油供給システム。
- 請求項1記載の作業ロールクロス圧延機のロール間潤滑油供給システムにおいて、前記スラスト係数演算手段は、前記補強ロール及び作業ロールのうち少なくとも補強ロールに負荷されるスラスト力を検出する第1の検出手段と、圧延荷重を検出する第2の検出手段と、前記第1及び第2の検出手段で検出されたスラスト力と圧延荷重とからスラスト係数を計算する手段とを有することを特徴とするロール間潤滑油供給システム。
- 請求項1記載の作業ロールクロス圧延機のロール間潤滑油供給システムにおいて、潤滑油供給タンクと、前記潤滑油供給タンクから潤滑油を前記潤滑油塗布手段に供給する潤滑油供給回路と、前記潤滑油塗布手段からの潤滑油を前記潤滑油供給タンクに戻す潤滑油戻り回路とを更に備え、前記潤滑制御手段は、前記潤滑油供給タンク内の潤滑油の濃度を検出する濃度計と、前記濃度計の検出信号に基づき潤滑油ニートオイル及び希釈用水の追加量を制御し、潤滑油の濃度を目標値に保つ濃度制御手段とを有することを特徴とするロール間潤滑油供給システム。
- 請求項11記載の作業ロールクロス圧延機のロール間潤滑油供給システムにおいて、前記潤滑油供給タンク内の潤滑油の油面レベルを検出するレベル計と、前記レベル計の検出信号に基づき前記潤滑油供給タンク内の潤滑油の油面レベルが目標値より高いときには潤滑油を排出し油面レベルを目標値に保つ油面レベル制御手段を更に備えることを特徴とするロール間潤滑油供給システム。
- 請求項12記載の作業ロールクロス圧延機のロール間潤滑油供給システムにおいて、前記油面レベル制御手段により排出された潤滑油を油分濃度の高い潤滑油と油分濃度の低い潤滑油とに分離し、油分濃度の高い潤滑油は前記潤滑油供給タンクに戻し、油分濃度の低い潤滑油のみを外部に排出する余剰潤滑油処理手段を更に備えることを特徴とするロール間潤滑油供給システム。
- 請求項13記載の作業ロールクロス圧延機のロール間潤滑油供給システムにおいて、前記余剰潤滑油処理手段は、仕切板により分けられた少なくとも2つのチャンバを有しその一方のチャンバに前記油面レベル制御手段により排出された潤滑油を一時的に貯蔵し、前記仕切板をオーバーフローした油分濃度の高い潤滑油を他方のチャンバに移す潤滑油一時貯蔵タンクと、前記他方のチャンバ内の油分濃度の高い潤滑油を前記潤滑油供給タンクに戻す潤滑油移送手段と、前記一方のチャンバ内にオーバーフローせずに残った油分濃度の低い潤滑油をタンク底部に近い位置より外部に排出する手段とを有することを特徴とするロール間潤滑油供給システム。
- 請求項13記載の作業ロールクロス圧延機のロール間潤滑油供給システムにおいて、前記余剰潤滑油処理手段は、前記油面レベル制御手段により排出された潤滑油の油分と水分とを分離するフィルター手段と、前記フィルター手段で分離された油分を一時的に貯蔵する潤滑油一時貯蔵タンクと、前記潤滑油一時貯蔵タンク内の油分を潤滑油として前記潤滑油供給タンクに戻す潤滑油移送手段と、前記フィルター手段で分離された水分を外部に排出する手段とを有することを特徴とするロール間潤滑油供給システム。
- 一対の作業ロールと、これら作業ロールをそれぞれ支持する一対の補強ロールとを備え、前記補強ロールは、そのロール軸線が特定角度以外の角度に水平面内で自在に傾斜しないように構成され、前記作業ロールは水平面内でそのロールの軸線が補強ロール軸線に対して交差しかつ相互に交差するように自在に傾斜し得るように構成され、前記作業ロールと補強ロール間を潤滑油により潤滑しロールクロスにより発生するスラスト力を低減する作業ロールクロス圧延機のロール間潤滑油供給システムにおいて、
(a)前記補強ロール及び作業ロールの少なくとも一方のロール面に潤滑油をスプレーし作業ロールと補強ロール間を潤滑する潤滑油塗布手段と;
(b)前記補強ロール及び作業ロールのうち少なくとも補強ロールに負荷されるスラスト力を圧延荷重で除したスラスト係数を求めるスラスト係数演算手段と;
(c)前記スラスト係数が所定の値となるように前記潤滑油塗布手段によりロール面に塗布される潤滑油の油種を切換えてスラスト係数を制御する潤滑制御手段と;を備えることを特徴とするロール間潤滑油供給システム。 - 一対の作業ロールと、これら作業ロールをそれぞれ支持する一対の補強ロールとを備え、前記補強ロールは、そのロール軸線が特定角度以外の角度に水平面内で自在に傾斜しないように構成され、前記作業ロールは水平面内でそのロールの軸線が補強ロール軸線に対して交差しかつ相互に交差するように自在に傾斜し得るように構成され、前記作業ロールと補強ロール間を潤滑油により潤滑しロールクロスにより発生するスラスト力を低減する作業ロールクロス圧延機のロール間潤滑油供給システムにおいて、
(a)前記補強ロール及び作業ロールの少なくとも一方のロール面に潤滑油を スプレーし作業ロールと補強ロール間を潤滑する潤滑油塗布手段と;
(b)潤滑油供給タンク、前記潤滑油供給タンクから潤滑油を前記潤滑油塗布 手段に供給する潤滑油供給回路、前記潤滑油塗布手段からの潤滑油を前記潤滑油供給タンクに戻す潤滑油戻り回路を含む潤滑油循環供給手段と;
(c)前記潤滑油供給タンク内の潤滑油の濃度を検出する濃度計と;
(d)前記濃度計の検出信号に基づき潤滑油ニートオイル及び希釈用水の追加 量を制御し、潤滑油の濃度を目標値に保つ濃度制御手段;とを備え、
更に、前記潤滑油供給タンク内の潤滑油の油面レベルを検出するレベル計と、前記レベル計の検出信号に基づき前記潤滑油供給タンク内の潤滑油の油面レベルが目標値より高いときには潤滑油を排出し油面レベルを目標値に保つ油面レベル制御手段とを備えることを特徴とするロール間潤滑油供給システム。 - 請求項17記載の作業ロールクロス圧延機のロール間潤滑油供給システムにおいて、前記油面レベル制御手段により排出された潤滑油を油分濃度の高い潤滑油と油分濃度の低い潤滑油とに分離し、油分濃度の高い潤滑油は前記潤滑油供給タンクに戻し、油分濃度の低い潤滑油のみを外部に排出する余剰潤滑油処理手段を更に備えることを特徴とするロール間潤滑油供給システム。
- 一対の作業ロールと、これら作業ロールをそれぞれ支持する一対の補強ロールとを備え、前記補強ロールは、そのロール軸線が特定角度以外の角度に水平面内で自在に傾斜しないように構成され、前記作業ロールは水平面内でそのロールの軸線が補強ロール軸線に対して交差しかつ相互に交差するように自在に傾斜し得るように構成され、前記作業ロールと補強ロール間を潤滑油により潤滑しロールクロスにより発生するスラスト力を低減するとともに、熱間圧延油を使用して圧延を行う作業ロールクロス圧延機のロール間潤滑油供給システムにおいて、
(a)前記補強ロール及び作業ロールの少なくとも一方のロール面に潤滑油をスプレーし作業ロールと補強ロール間を潤滑する潤滑油塗布手段と;
(b)前記補強ロール及び作業ロールの少なくとも一方のロール面に熱間圧延油を塗布する熱間圧延油塗布手段と;
(c)圧延材の圧延中は前記熱間圧延油塗布手段に熱間圧延油を供給し、圧延材が通過していない非圧延時は前記熱間圧延油塗布手段への熱間圧延油の供給を停止すると共に、前記熱間圧延油の供給が停止されている間のみ、前記潤滑油塗布手段に潤滑油を供給する潤滑制御手段と;を備えることを特徴とするロール間潤滑油供給システム。
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