JP3615392B2 - ヒータ付き酸素センサ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、例えば内燃機関の排気ガス中の酸素濃度を検出するための酸素センサ、あるいは所定のガス中の酸素を検出するための酸素センサに関し、特に短時間に酸素センサを活性化温度まで加熱するヒータを備えた酸素センサに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、例えば自動車等の内燃機関の排ガス浄化の要求が高まり、車両の始動時やアイドル時など、排ガス温度が低い場合でも内燃機関の排ガス中の酸素濃度を良好に検出することができるように、ヒータ付き酸素センサが開発されている。例えば特開平4−157358号公報には、先端部が閉じた中空軸状をなし、それの内壁面に電極層を有する酸素検知素子と、その酸素検知素子の中空部内に配置されてその酸素検知素子を加熱する軸状の発熱体とを備えた酸素センサが開示されている。この酸素センサでは、酸素イオン電導性固体電解質によりほぼ試験管状に形成された酸素検知素子の内部空間に対し、軸状(棒状)の発熱体(ヒータ)がその先端内面に達するまで同心的に差し入れられており、その発熱体先端と酸素検知素子の先端内面とが接触又はごく近接するように組み付けられる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、この種のヒータ付き酸素センサにおいては、酸素検出素子が不均一に加熱された場合、十分に加熱されて活性化した部分と加熱不十分な高抵抗部分とが混在する形となる。この場合、検知素子の全体の電気抵抗値は、この高抵抗部分に支配されることが多いから、結果として素子の抵抗値が十分低くなり、活性化されるまでの時間、すなわちセンサの立ち上げ時間が長くなることが考えられる。ここで、上記従来の構成では、発熱体が酸素検知素子に対して同心的に設けられており、酸素検知素子は発熱体により周方向にほぼ均一に加熱され、活性化した領域も当該周方向に一様に形成される。また発熱体先端が酸素検知素子先端内面に接触又はごく近接しているので、発熱体先端から酸素検知素子への熱伝達もある程度期待できる。その結果、センサの立ち上がり時間を短くするという観点では一定の効果が得られるものと推考される。
【0004】
ところが、該従来の構成においては、軸状の発熱体や中空軸状の酸素検知素子の相対的な熱膨張により、発熱体先端と酸素検知素子の先端内面とが離れてしまって、熱伝達効率が低下したり、あるいは逆に両者が過度に押し付けられて無理な応力を生じ、耐久性に悪影響を及ぼすなど、熱膨張の影響を大きく受ける欠点がある。このことは、酸素検知素子の加熱状態のばらつき、ひいては酸素センサの特性のばらつきを生じる原因ともなりやすい。この場合、発熱体と酸素検知素子との間の接触状態を解消して、両者の間に始めから相当量の隙間を形成したのでは、当然のことながら熱伝達効率が低下して素子の立ち上がり時間が長くなる等の問題につながる。
【0005】
従って、素子の立ち上がり時間の短縮化を優先するためには、発熱体と酸素検知素子とを接触させる構成は必須となる。また、センサの立ち上がり時間短縮のためには、検知素子の均一加熱のために発熱体をこれに対して同心的に配置することの必然性が、当業界ではほぼ絶対常識のごとく認識されており、これに捕われる限りは、発熱体と酸素検知素子との接触部分は発熱体先端と酸素検知素子先端内面との間に形成する以外に方法はないということになる。その結果、酸素検知素子の先端内面と発熱体の先端とを接触又はごく近接させる上記従来の構成では、センサ立ち上がり時間を短縮する効果が得られる代償として、酸素センサの特性ばらつきの問題が必然的に生ずるので、酸素検知素子を短時間で効果的に加熱する上で必ずしも最善の手法とは言えない。
【0006】
本発明の課題は、中空軸状の酸素検知素子をその内部に収容した発熱体で短時間で効果的にセンサ活性化温度に加熱して、例えば車両の始動時やアイドル時などの、排気ガス温度が低い場合でも酸素センサが有効に作動し、しかもセンサ特性のばらつきも少なく抑さえるようにすることにある。
【0007】
【課題を解決するための手段及び作用・効果】
上述の課題を解決するために、請求項1のヒータ付き酸素センサ(以下、単に酸素センサともいう)は、以下の▲1▼〜▲3▼の要件、すなわち、▲1▼先端部が閉じた中空軸状をなし、それの内外面に電極層を有する酸素検知素子と、▲2▼該酸素検知素子の中空部内に配置されて該酸素検知素子を加熱する軸状の発熱体と、▲3▼発熱体を周方向に包囲するように形成され、酸素検知素子の内面に直接又は他部材を介して間接的に接触する固定部と、その固定部に対し発熱体の軸方向において少なくとも一方の側に連結されて発熱体を把持する発熱体把持部とを有し、固定部により発熱体を酸素検知素子の内側に固定する固定金具とを備え、その固定金具の固定部及び発熱体把持部の少なくともいずれかに、それら固定部ないし発熱体把持部の内面から突出して発熱体の外周面に当接するとともに、その発熱体を、発熱部の近傍において該発熱体の中心軸線が該酸素検知素子の中空部の中心軸線に対して片側に寄るように偏心した状態で位置決めする位置決め用突出部が形成されていることを特徴とする。ここで、そのような偏心(オフセット)の結果として、発熱体の発熱部の表面が、酸素検知素子の中空部内壁面に接触していることが望ましい(請求項12)。この場合は、酸素検知素子の中空部の中心軸線に対して発熱体の発熱部の近傍において該発熱体の中心軸線が偏心していることにより、該発熱体の発熱部の表面が、該酸素検知素子の中空部内壁面に接触する構成となる。
【0008】
発熱体の中心軸線を、上述のように酸素検知素子の中空部の中心軸線に対して片側に寄るように偏心させた場合、その偏心側において酸素検知素子は局所加熱され、当該酸素検知素子の中心軸線回りの加熱状態は不均一なものになると考えられる。そして、このように検知素子を不均一加熱する構成は、従来の常識と照合すれば、酸素検知素子の電気抵抗値が全体として十分低くなるまでに時間がかかり、結果としてセンサの立ち上がり時間を長くするのではないかという懸念が生ずるなど、不都合が極めて多いもののように思われる。ところが、本発明者らは、この一見望ましくないと思われる上記構成の採用により、意外にもセンサの活性化時間は従来と同等であるかあるいは却って短縮されることを見い出したのである。
【0009】
そして、発熱部が酸素検知素子と接触する上記横当て構造を例えば採用することで、発熱体の発熱部で発生する熱がその接触に基づき、その発熱部から酸素検知素子へ直接的に熱伝導するとともに、その接触点近傍の輻射熱も酸素検知素子に効果的に作用して、その酸素検知素子を短時間で昇温させることができ、センサ活性化時間が短縮される。また発熱体の発熱部が酸素検知素子の中空部内壁面に側方から接触した構造であれば、発熱部や酸素検知素子の熱膨張が生じても、発熱部の先端を酸素検知素子の先端内面に当てる構造に比べて、その熱膨張の影響を受けにくい。言い換えれば、そのような横当て構造をとることにより、発熱体や酸素検知素子が熱履歴を受けても、両者の接触状態を良好に保ち易くなるのである。
【0010】
また、発熱部を側方から酸素検知素子の中空部内壁面に当てるようにすれば、接触による直接的な熱伝導並びに輻射熱の効果により、先端同士で当てる構造よりも全体としての熱伝達効率は高くなる。そして、上記のように、酸素センサにおける酸素検知素子と発熱体の発熱部との接触状態を安定に保証できることにより、酸素検知素子の加熱状態のばらつきが減少し、このことが酸素センサとしての特性のばらつきを減少させる効果につながる。
【0011】
さらに、上述のような発熱体の偏心配置構造は、固定金具の固定部及び/又は発熱体把持部に形成された位置決め用突出部が発熱体の外周面に当接し、これを酸素検知素子の中空部内で上述のように偏心位置決めすることにより実現される。このような位置決め用突出部は、例えば固定金具が板金加工品で構成されている場合は、プレス加工等により簡単に形成できる。また、発熱体の中心軸線の中空部の中心軸線からの偏心量を、位置決め用突出部の固定部及び/又は発熱体把持部内面からの突出高さに応じて容易に調整できる利点も有する。
【0012】
なお、酸素検知素子の外面と中空部の内壁面とには、酸素検知素子を構成する固体電解質へ酸素を注入するための酸素分子の解離反応、及び該固体電解質から酸素を放出させるための酸素の再結合反応に対する可逆的な触媒機能(酸素解離触媒機能)を有する多孔質電極(例えばPt多孔質電極)を設けることができる。この場合、酸素検知素子の局所加熱を行っても、センサの立ち上がり時間が従来と同等レベルに維持されるか、あるいは却って短縮される要因としては、次のようなことが考えられる。
【0013】
すなわち、該方式の酸素センサでは、例えば酸素検知素子の内側に大気等の基準ガスを導入する一方、外側に排気ガス等の測定対象ガスを接触させ、酸素検知素子の内外の酸素濃度差に基づいて該酸素検知素子に生ずる濃淡電池起電力により、測定対象ガス中の酸素濃度が検出される。この場合、酸素イオン電導性固体電解質により形成された酸素検知素子に十分な濃淡電池起電力が生じるためには、酸素検知素子の電気抵抗値が十分小さくなることのほかに、酸素分子に対する解離ないし再結合反応に対する上記多孔質電極の触媒活性が十分に高められている必要がある。そして、センサの検出出力レベルは、酸素検知素子の電気抵抗値と上記多孔質電極の触媒活性との兼ね合いで決まることとなる。
【0014】
ここで、例えばPt等で構成された多孔質電極の触媒活性は、例えばZrO2系等の固体電解質の酸素イオン移動度よりも温度に対して急激に増大する傾向があるものと推測されている。そして、酸素検知素子が本発明の構成により局所加熱されると、固体電解質の活性化による酸素検知素子の電気抵抗減少は、不均一加熱のため酸素検知素子と発熱体とを同心配置する従来の構成ほどには進まないが、その局所加熱された部分は従来の構成よりも高温まで加熱されるので、当該部分で多孔質電極の触媒活性が高められて被測定ガス中の酸素分子の解離が促進され、その効果により固体電解質の濃淡電池起電力ひいてはセンサの検出出力レベルが補われ、結果としてセンサの立ち上がり時間が従来と同等か、それよりも短縮される効果が達成されるものと推測される。
【0015】
次に、請求項2の酸素センサにおいては、酸素検知素子の前記中空部に対し、該中空部の中心軸線を含むある仮想的な第一平面と、同じく中空部の中心軸線を含むとともに第一平面と直交する仮想的な第二平面とを設定して、該中空部をそれら第一平面と第二平面とによって4つの領域に分割した場合に、発熱体は、その中心軸線の中空部内に位置する部分の全体が、該中空部の上記4つの領域のいずれか1つに収まるように配置される。該構成は、換言すれば、発熱体の中心軸線の中空部内に位置する部分の全体が、中空部の4つの領域のいずれかに収まるように、上記仮想的な第一及び第二平面がどこかに必ず設定できるということを意味している。
【0016】
上記構成によってもたらされる作用・効果について、図15を用いて説明する。なお、以下においては説明の便宜のため、発熱部(42)は発熱体(3)の酸素検知素子(2)への挿入側端部に形成されており、酸素検知素子(2)の中空部内壁面(2a)はほぼ円筒状面をなすものと考える(ただし、中空部内壁面(2a)には、酸素検知素子(2)を固体電解質粉末の成形・焼成により製造する際に、成形時の離型性を高める等の目的で、底部側が縮径するテーパが付与されている場合もある)。まず図15(c)は、上記仮想的な第一及び第二平面P1,P2を如何に設定しようとも、上記平面P1,P2で区切られる中空部の4領域のいずれか1つに発熱体(3)の中心軸線O1を収めるのが不能な場合を示している。すなわち、中心軸線O1は検知素子(2)の中心軸線O2に対してかなり傾いて設定されており、結果として該中心軸線O1は上記4領域の2以上のものに必然的にまたがって位置せざるを得なくなっている。一方、図15(a)は、上記仮想的な第一及び第二平面P1,P2を適当に設定することで、4領域のいずれかに発熱体(3)の中心軸線O1を収めることが可能な場合を示している。この場合、発熱体(3)の中心軸線O1の検知素子(2)の中心軸線O2に対する傾斜は、図15(c)に示す場合と比べて必ず緩くなる。
【0017】
この両者を比較すれば、図15(c)に示す構成では、発熱部(42)の末端側の角部においては検知素子(2)の中空部内壁面(2a)までの距離が短くなり、発熱がこの部分にやや集中する傾向がある。これに対し、同図(a)に示す請求項2の構成は、発熱体(3)の中心軸線O1の検知素子(2)の中心軸線O2に対する傾斜が(c)の構成よりも緩やかであることから、発熱部(42)の側面が検知素子(2)の中空部内壁面(2a)に対しほぼ沿う形となり、発熱部(42)により検知素子(2)の壁部をより均一に加熱することができる。その結果、酸素センサの活性化時間を短縮する上でさらに大きな効果を期待できる。ただし、図15(c)に示す構成でも、発熱体(3)の中心軸線O1が検知素子(2)の中心軸線O2から偏心して位置することに変わりはなく、酸素センサの活性化時間を短縮する上で一定以上の効果が期待できることはいうまでもない。
【0018】
この場合、図15(b)に示すように、発熱体(3)は、該発熱体(3)の中心軸線O1が酸素検知素子(2)の中空部の中心軸線O2とほぼ平行となるように中空部内に配置されていれば、発熱部(42)の側面を検知素子(2)の中空部内壁面(2a)に対し沿わせる効果、ひいては検知素子(2)の壁部を均一加熱する効果がさらに顕著に達成される(請求項3)。
【0019】
次に、固定金具において位置決め用突出部は発熱体把持部に設けても、固定部に設けてもいずれでもよい(双方に設けることも可能である)。しかしながら、位置決め用突出部を固定部に設け、その固定部に連結する発熱体把持部のうち、いずれか一方を省略する構成とすれば、固定金具の発熱体軸線方向における長さを短くでき、ひいては酸素センサの上記軸線方向の長さを減じてこれをコンパクトに構成できるようになる。また、発熱体が1ケ所の把持部により把持される形としたから、例えば固定金具を装着した発熱体を酸素検知素子の中空部内に挿入してセンサを組み立てる際に、固定金具を介した過剰な横方向の力が発熱体に作用しにくくなり、ひいては組立時の発熱体の折損等を防止することができる。
【0020】
なお、上記構成の固定金具において省略すべき発熱体把持部は、発熱体の長手方向におけるいずれの側のものであってもよい。しかしながら、発熱体から遠い側のものを省略する構成、換言すれば請求項4のように、固定金具において、発熱体把持部を固定部に対し発熱体の発熱部に近い側にのみ連結する構成とすれば、発熱体は、センサの出力端子部等を介して外力の影響を受けやすい上記遠い側の把持が解除され、横方向の力を受けてもこれを緩和し易くなって、前述の折損等を防止する効果をさらに高めることができる。なお、より具体的には、請求項5のように位置決め用突出部を固定部に対し、前記発熱体把持部が連結されているのとは反対側の端部近傍において、該発熱体把持部の固定部への連結部に対応する位置に形成するようにすれば、発熱体の軸線方向において、位置決め用突出部による支持点(当接点)と発熱体把持部による支持点との間の距離を増すことができ、ひいては固定金具により発熱体をさらに安定的に位置決め支持させることが可能となる。
【0021】
次に、本発明の請求項7の酸素センサは、先端部が閉じた中空軸状をなし、それの内外面に電極層を有する酸素検知素子と、該酸素検知素子の中空部内に配置されて該酸素検知素子を加熱する軸状の発熱体とを備え、酸素検知素子の前記中空部に対し、該中空部の中心軸線を含むある仮想的な第一平面と、同じく前記中空部の中心軸線を含むとともに第一平面と直交する仮想的な第二平面とを設定して、該中空部をそれら第一平面と第二平面とによって4つの領域に区切ったときに、発熱体は、その中心軸線の中空部内に位置する部分の全体が、中空部の上記4つの領域のいずれか1つに収まるように配置され、発熱体の中心軸線が、中空部の中心軸線に対して片側に寄るように偏心していることを特徴とする。
【0022】
また、本発明の請求項8の酸素センサは、先端部が閉じた中空軸状をなし、それの内外面に電極層を有する酸素検知素子と、該酸素検知素子の中空部内に配置されて該酸素検知素子を加熱する軸状の発熱体とを備え、発熱体は、該発熱体の中心軸線が酸素検知素子の中空部の中心軸線とほぼ平行となり、かつその中心軸線が、中空部の中心軸線に対して片側に寄るように偏心していることを特徴とする。これら請求項7及び8の構成における作用・効果の要点は、請求項2及び3の構成において、図15を用いて説明したものと同じであるので説明は省略する。ただし、請求項7及び8の構成においては、発熱体の中心軸線を、中空部の中心軸線に対して片側に寄るように偏心させるための手段は、位置決め突出部を用いた請求項1の手法に限定されない。
【0023】
上記請求項7及び8の構成においては、発熱体を周方向に包囲するように形成され、酸素検知素子の内面に直接又は他部材を介して間接的に接触する固定部と、その固定部に対し発熱体の軸方向においてその両側に連結され、それぞれ発熱体を把持する1対の発熱体把持部とを有する固定金具を設けることができる(請求項9)。これによれば、2つの把持部によって発熱体をより安定的に保持することができる効果も新たに加わる。
【0024】
また、請求項7及び8の構成においては、発熱体を周方向に包囲するように形成され、酸素検知素子の内面に直接又は他部材を介して間接的に接触する固定部と、その固定部に対し発熱体の軸方向において該発熱体の先端に近い側の端部にのみ連結され、発熱体を把持する発熱体把持部とを有する固定金具を設けることもできる(請求項10)。この構成によれば、発熱体は1ケ所の把持部により、軸線と交差する向きにおいて若干の動きの自由度を生じた状態で把持されることとなる。従って、発熱体を固定金具とともに酸素検知素子の中空部内に挿入すると、該発熱体は先端部が酸素検知素子の内壁面との接触に伴い、これに追従して該内壁面に沿う形で位置決めされ、酸素センサの活性化時間を短縮する上でさらに大きな効果を期待することができる。また、センサを組み立てる際に、固定金具を介した過剰な横方向の力が発熱体に作用しにくくなり、ひいては組立時の発熱体の折損等を防止することができる。さらに、固定金具の発熱体軸線方向における長さを短くでき、ひいては酸素センサの上記軸線方向の長さを減じてこれをコンパクトに構成できるようになる。
【0025】
なお、上記請求項9及び10の構成において固定金具の発熱体把持部は、酸素検知素子の中空部に対し、該中空部の中心軸線を含むある仮想的な第一平面と、同じく前記中空部の中心軸線を含むとともに第一平面と直交する仮想的な第二平面とを設定して、該中空部をそれら第一平面と第二平面とによって4つの領域に区切ったときに、発熱体が、その中心軸線の中空部内に位置する部分の全体が、中空部の上記4つの領域のいずれか1つに収まるように、固定部に対し連結することができる。より具体的には、固定金具の発熱体把持部は、その中心軸線が、酸素検知素子の中空部の中心軸線から偏心してこれとほぼ平行な共通の軸線上に位置するように、固定部に対して連結することができる。
【0026】
固定金具は、具体的には、固定部が酸素検知素子の内側の電極層に接触する内部電極接続部とされた端子金具とすることができる(請求項6、11)。固定部が酸素検知素子からの出力取出し用の内部電極接続部を兼ねることにより、部品点数が削減されるので、センサをより安価に構成することが可能となり、組立工程も簡略化される。
【0027】
以上の本発明の酸素センサにおいて、前述のような発熱体の上記酸素検知素子に対する偏心配置にかかわらず、発熱体の発熱部の表面が酸素検知素子の中空部内壁面に接触はせず、ごく近接して位置する構成でもよい。このような構成でも、偏心していない場合に比べて、発熱部から酸素検知素子への熱輻射等の効果は高まるため、酸素センサの活性化時間を短縮する上で一定の効果がある。
【0028】
また、上記本発明の酸素センサの各構成においては、酸素検知素子の軸断面内側寸法DAと発熱体の軸断面外側寸法DBとの差ΔD=DA−DBが0.35mm以下となっていることが望ましい(請求項13)。ここで、酸素検知素子の軸断面内側寸法及び発熱体の軸断面外側寸法は、酸素検知素子内周面ないし発熱体外周面が円筒状面である場合には、その内径ないし外径を意味するものとする。また、上記内周面及び外周面が円形から外れた軸断面形状を有している場合には、これを同面積の円形断面に換算した場合の内径ないし外径を意味するものとする。さらに、上記軸断面寸法が、その軸方向において一定でない場合(例えばテーパ面状に形成されている場合)は、該軸断面寸法の軸方向における平均値で代表させるものとする。
【0029】
ΔD=DA−DBが0.35mmを超えると、酸素検知素子の活性化時間、ひいてはセンサ立ち上がり時間が長くなったり、あるいは該立ち上がり時間にセンサ個体間でのばらつきが生じやすくなる場合がある。例えば、発熱部を側方から酸素検知素子の中空部内壁面に当てる場合、ΔDが大きくなるとその横当て力に固体間ばらつきが生じやすくなることが、その原因として考えられる。なお、ΔDの値は、より望ましくは0.30mm以下に設定するのがよい。一方、ΔDが0.1mm未満になると、発熱体を酸素検知素子の中空部内への挿入が行いにくくなり、発熱体の酸素検知素子に対する組み付け能率を低下させる場合がある。それ故ΔDは0.1mm以上に設定するのがよく、より望ましくは0.15mm以上に設定するのがよい。
【0030】
また、検知素子の軸断面内側寸法DAと発熱体の軸断面外側寸法DBとの差ΔD=DA−DBの、DBに対する比ΔD/DBは、0.13以下となっていることが望ましい(請求項14)。ΔD/DBが0.13を超えると、請求項13と同様にセンサの立ち上がり時間が長くなったり、あるいはそのセンサ個体間でのばらつきが生じやすくなる場合がある。ΔD/DBは、より望ましくは0.10以下に設定するのがよい。
【0031】
なお、上記請求項13又は14の内容は、発熱体を1ケ所の把持部のみにより把持する請求項10の構成に適用した場合に特に有効である。すなわち、ΔDないしΔD/DBを上記範囲で調整することにより、酸素検知素子の内壁面との接触に伴い、発熱体の先端部は酸素検知素子の中空部内壁面にさらに沿いやすくなり、酸素センサの活性化時間を短縮する効果が一層高められるのである。
【0032】
次に、発熱体の発熱部が、その外周面の周方向の一部において発熱分布の疎なる発熱疎部分を有する場合に、その発熱疎部分以外の部分において当該発熱体の発熱部を酸素検知素子の中空部内壁面に接触させることができる。例えばセラミックグリーンシートに発熱抵抗パターンを印刷して、これを芯材に丸めて焼成することにより発熱部を形成する場合は、その継ぎ合わせ側で発熱パターンが疎になるため、例えばこれと反対側の発熱部表面を酸素検知素子の中空部内壁面に接触させることができる。つまり、発熱疎部分がその中空部内壁面に接触した場合でも一定の熱伝達の効果はあるが、それより発熱の充分生じる部分を接触させた方がより効果的であるという意味である。また、発熱体の発熱部が周方向に偏在することで、より小さな容積に発熱エネルギーが集中することになり、特にヒータ通電時間後の活性化時間を短縮する上で効果がある。
【0033】
また、発熱体の発熱部を発熱体の先端部に偏在させるようにすれば、酸素検知素子を速やかに加熱する上で有効である。つまり、発熱部を発熱体の全体に広げることもできるが、そうすると熱エネルギーが分散しやすくなる。有効な酸素検知素子の加熱にとっては、むしろ発熱部を発熱体の先端部に偏在させた方が、局部的に発熱し好ましいと言える。このような発熱部の局部的な発熱パターンと、前述の偏心による横当て構造との組合せにより、センサの活性化時間をより短縮することができる。
【0034】
さらに、発熱体が固定金具を介して酸素検知素子内に組み付けられるとともに、その固定金具によって発熱体の発熱部が、酸素検知素子の中空部内壁面に押し付けられている構造とすることができる。これによって前述のような横当て構造は一層安定に保証され、センサ特性のばらつき減少の効果はさらに高まる。
【0035】
上記本発明の各構成において使用される固定金具においては、固定部と発熱体把持部との間を、くびれた形態で連結する連結部を形成することができる。このようなくびれた形態の連結部が存在することにより、例えば発熱体が熱応力により変形しようとした際に、該連結部が弾性変形ないし塑性変形することで熱応力が緩和され、ひいては発熱体の破損等も生じにくくなる。
【0036】
【発明の実施の形態】
以下、図面に示すいくつかの実施例を参照しつつ、本発明の実施の形態を説明する。
(実施例1)
図1に示す酸素センサ1は、先端が閉じた中空軸状の固体電解質部材である酸素検知素子2と、軸状のセラミックヒータである発熱体3とを備え、それらの外殻を構成する各種部材の組立体として構成される。酸素検知素子2は酸素イオン電導性を有する固体電解質により構成されている。そのような固体電解質としては、Y2O3ないしCaOを固溶させたZrO2が代表的なものであるが、それ以外のアルカリ土類金属ないし希土類金属の酸化物とZrO2との固溶体を使用してもよい。また、ベースとなるZrO2にはHfO2が含有されていてもよい。
【0037】
この酸素検知素子2の中間部外側には、絶縁性セラミックから形成されたインシュレータ6,7、並びにタルクから形成されたセラミック粉末8を介して金属製の筒部材であるハウジング9が設けられ、酸素検知素子2はハウジング9と電気的に絶縁された状態で貫通している。また、図2に示すように、酸素検知素子2の内面及び外面には、そのほぼ全面を覆うように一対の電極層2b,2cが設けられている。これら電極層2b,2cはいずれも、酸素検知素子2を構成する固体電解質へ酸素を注入するための酸素分子の解離反応、及び該固体電解質から酸素を放出させるための酸素の再結合反応に対する可逆的な触媒機能(酸素解離触媒機能)を有する多孔質電極、例えばPt多孔質電極として構成されている。
【0038】
次に、ハウジング9の一方の開口部には、酸素検知素子2の先端側を所定の空間を隔てて覆うようにプロテクタ11が設けられ、プロテクタ11には排気ガスを透過させる複数のガス透過口12が形成され、これにより排気ガス中の酸素が酸素検知素子2の先端側表面に接触可能となっている。ハウジング9の他方の開口部には、第1のスリーブ14がインシュレータ6との間にリング15を介してかしめられ、このスリーブ14にさらに第2のスリーブ16が外側から嵌合・固定されている。このスリーブ16の図中上端側の開口は栓体17で封止され、またこれに続いてさらに内方に栓体18、及び19が設けられている。そして栓体17,18を貫通するようにリード線20,21が配置されている。
【0039】
一方のリード線20は、固定金具としての端子金具23のコネクタ部24及びこれに続く引出し線部25(絶縁管25aで覆われている)、並びに端子金具23の固定部としての内部電極接続部26を経て、前述の酸素検知素子2の図示しない内側の電極層と電気的に接続されている。他方のリード線21は、別の端子金具33のコネクタ部34及びこれに続く引出し線部35並びに外部電極接続部35bを経て、酸素検知素子2の図示しない外側の電極層と電気的に接続されている。また前述の発熱体3に通電するためのプラス側及びマイナス側の一対のヒータ端子部40が、発熱体3の基端部(図1において上端部)に固定され、これらヒータ端子部40を経て、発熱体3内に埋設された後述の発熱用抵抗回路に通電されるようになっている。なお図1で図示はしないが、一対のヒータ端子部40は、栓体17,18等を貫通して設けられたヒータ用の一対のリード線にそれぞれ接続される。
【0040】
このように構成された酸素センサ1は、酸素検知素子2の内側空間に対し、例えばリード線20,21の被覆部20a,21aと芯線20b,21bとの間に形成された空隙を介して基準ガスとしての大気が導入される一方、酸素検知素子2の外面にはプロテクタ11のガス透過口12を介して導入された排気ガスが接触し、該酸素検知素子2にはその内外面で生ずる酸素濃度差に応じて酸素濃淡電池起電力が生じる。そして、この酸素濃淡電池起電力を、排気ガス中の酸素濃度の検出信号として電極層2b,2cからリード線21,20を介して取り出す。ここで、酸素検知素子2は、排気ガス温が十分高温となっている場合には当該排気ガスで加熱されて活性化されるが、エンジン始動時など排気ガス温が低温である場合には前述の発熱体3で強制的に加熱することで活性化される。
【0041】
発熱体3は、通常はセラミックヒータであり、例えばアルミナを主とするセラミック棒45を芯材とし、図5に示すようにこのセラミック棒45の表面に例えば蛇行状に形成された抵抗線部(抵抗パターン)41(図7)からなる発熱部42を備える。これはシート状の外層セラミック部43(図7)に抵抗ペーストを所定のパターンで印刷し、これをセラミック棒45に巻き付けるように丸めて焼成したものである。セラミック棒45は外層セラミック部43の先端から若干突出しており、また抵抗パターン41にヒータ端子部40から延びる図示しない通電路を経て、発熱のための通電が行われる。このような発熱部42は発熱体3の先端側に偏って設けられ、その先端部で局部的に発熱するようになっている。
【0042】
そして、図5に示すように、発熱体3の発熱部42の近傍における中心軸線O1は、酸素検知素子2の中心軸線O2に対して片側に寄るように一定量δだけ偏心(オフセット)している。それによって、発熱体3の発熱部42の先端部表面が酸素検知素子2の中空部内壁面(以下、素子内壁面ともいう)2aに所定の面圧で押し付けられた状態で接触している。この接触位置は、図1から明らかなように酸素検知素子2の閉塞側先端からやや中間側へ寄ったところ、より好ましくは前述のプロテクタ11のガス透過口12にほぼ対応する位置にあたるとよい。
【0043】
また、図15(b)に概念的に示すように、酸素検知素子2の中空部に対し、該中空部の中心軸線O2を含むある仮想的な第一平面P1と、同じく中空部の中心軸線O2を含むとともに第一平面P1と直交する仮想的な第二平面P2とを設定して、該中空部をそれら第一平面P1と第二平面P2とによって4つの領域に分割した場合に、発熱体3は、その中心軸線O1の上記中空部内に位置する部分の全体が、該中空部の上記4つの領域のいずれか1つに収まるように配置されている。より具体的には、図5にも示すように発熱体3は、その中心軸線O1が中空部の中心軸線O2とほぼ平行となるように配置されている。これにより、発熱体3は、発熱部42の側面が検知素子2の中空部内壁面2aに対しほぼ沿う形となっている。
【0044】
ここで、上述のように発熱体3の中心軸線O1を上述の配置関係で酸素検知素子2の中空部の中心軸線O2から偏心させ、かつ発熱部42を素子内壁面2aに弾性的に押し付ける機能を果たしているのは端子金具23である。この場合、端子金具23は3つの役割を果たす。第一は、酸素検知素子2の内側の電極層の出力端子としてリード線20との電気的接続を図ること、第二は発熱体3を酸素検知素子2の内側に固定することであるが、これらは従来と同様の機能である。そして第三の機能が、発熱体3の先端部を素子内壁面2aに横当たり構造で弾性的に押し付けることである。
【0045】
図3に端子金具23の単体状態を、図4に端子金具23を発熱体3に組み付けた状態を示す。これらの図から明らかなように、前述の内部電極接続部26に関して発熱体3の先端側(すなわち発熱部42に近い側)に発熱体把持部27が形成されている。発熱体把持部27は、発熱体3の周囲を包囲するC字状の横断面形状を有している。そして、発熱体3を未挿入の状態では該発熱体3の外径よりは少し小さい内径を有し、発熱体3の挿入にともない弾性的に拡径してその摩擦力により該発熱体3を把持するものである。この発熱体把持部27は内部電極接続部26の軸方向端部の片側の1箇所にのみ設けられている。
【0046】
内部電極接続部26は、左右両側の縁に鋸刃状の接触部26aがそれぞれ複数形成された板状部分を円筒状に曲げ加工することにより、発熱体3を包囲する形態で形成されている。そして、その外周面と酸素検知素子2の中空部内壁面2aとの間の摩擦力によって発熱体3を該中空部に対し軸線方向に位置決めする役割を果たすとともに、上記複数の接触部26aの各先端部において内側の電極層2c(図2)と接触・導通するようになっている。また、発熱体3との間には所定の隙間が形成されている。なお、これら両側の接触部26aは、鋸刃の山に相当する部分と谷に相当する部分とが、左右両側で互い違いに形成されており、例えばセンサ組立時において内部電極接続部26を酸素検知素子2の内側に挿入する際に、左右の接触部26aが同時に酸素検知素子2の開口縁に引っ掛かったりする等のトラブルが生じにくくなり、ひいては内部電極接続部26の酸素検知素子2に対する組み付けが容易となる効果を有している。また、鋸刃状の各接触部26aの高さをやや大きく設定することにより、上記板状部分を筒状に曲げて内部電極接続部26を形成する際に、その曲げ方向の幅が増大して加工が行いやすくなる効果も合わせて達成される。
【0047】
また、内部電極接続部26には、発熱体把持部27が連結されているのとは反対側の端部近傍において、該発熱体把持部27の内部電極接続部26への連結部30に対応する位置に、その内面から突出して発熱体3の外周面に当接する位置決め用突出部50が形成されている。この位置決め突出部50は、例えば内部電極接続部26の壁部をプレス加工等により内向きに凹ませることにより形成されており、発熱体3を前述のように酸素検知素子2の中空部の中心軸線O2に対して偏心した状態で位置決めするためのものである。
【0048】
酸素検知素子2の中空部内壁面2aには、これを固体電解質粉末の成形・焼成により製造する際に、成形時の離型性を高める等の目的で、底部側が縮径する僅かなテーパが付与されている。これに対し発熱体3は、図5等に示すように、その中心軸線O1が検知素子2側の中心軸線O2とほぼ平行となるように配置されるわけであるから、発熱体3の基端側に向かうほど、発熱体3と中空部内壁面2aとの間に形成される隙間を大きくする必要がある。上記位置決め用突出部50は、該突出部50の形成位置におけるこの隙間量を所定の値に規定することにより、発熱体3が発熱部42の近傍において上記中空部内壁面2aと接触し、かつ2つの中心軸線O1と中心軸線O2とがほぼ平行となる位置関係を満足させる役割を果たしている。
【0049】
なお、酸素センサ1の製造工程では、発熱体3に端子金具23を固定した後、このアッセンブリを酸素検知素子2に挿入するのが普通である。ここで、発熱体3に対する酸素検知素子2の壁部からの拘束力が存在しないと仮定した場合に、発熱体把持部27の内部電極接続部26に対する半径方向の連結位置関係は、発熱体把持部27と位置決め突出部50とによって該発熱体3の中心軸線O1が酸素検知素子2の中空部の中心軸線O2に対し、発熱部42側が該中心軸線O2から遠ざかるように少し傾いた状態で保持されるように定められている。これにより、上記アッセンブリの挿入の際に、発熱体3の先端部は素子内壁面2aに弾性的に接触した状態でここを滑りつつ内部に挿入され、図4(c)に矢印で示すように、その中心軸線O1 が中空部の中心軸線O2と平行となる向きにその傾斜状態が矯正されつつ該検知素子2に対して装着されることとなる。また、発熱体把持部27と内部電極接続部26との間の連結部30は、両側から周方向にU字状の切欠を形成することによりくびれた形態で形成されている。そして、発熱体3の検知素子2への装着時には、これが内向きに弾性変形し、その弾性復帰力によって発熱体3の発熱部42を検知素子2の中空部内壁面2aに押し付け、図1のような横当たり形態を生じさせる。
【0050】
この状態で発熱体3には、素子内壁面2aが発熱体3に及ぼす応力、位置決め突出部50において発熱体3に作用する応力、発熱体把持部27において発熱体3に作用する応力とによって、これらの合成による曲げモーメントが生じるが、その曲げモーメントにより発熱体3が折れないように、言い換えれば発熱体3の許容強度範囲以上の応力が生じないようにされている。このような応力ひいては曲げモーメントの調整を図るのは、内部電極接続部26に隣接するくびれ形態の連結部30である。
【0051】
すなわち、連結部30は、上記挿入工程で発熱体把持部27及び位置決め突出部50を介して発熱体3に付与される曲げ力を吸収・緩和してその折損等を防止する役割も果たす。そして、その弾性力の調整は、くびれ部分の幅調整により可能となる。換言すれば、連結部30のくびれ幅を適切に設定することで、上記弾性力を適度な値に調整でき、図1の発熱体3の横当たり構造において、素子内壁面2aに対する弾性的な押付力を必要十分な値に確保できるのである。
【0052】
次に、図7(b)に示すように、発熱体3の外層セラミック部43がセラミック棒45に巻き付けられた際の接合隙間として、発熱体3の外周の1箇所に軸方向と平行なスリット状部44が生じ、この近傍では抵抗パターン41が存在せず、発熱疎部分となるが、発熱体3の素子内壁面2aの横当たり構造に際してはこのスリット状部44の反対側の発熱部42表面を素子内壁面2aに当てることが望ましい。これによって充分発熱する部分から直接的に酸素検知素子2に効果的な熱伝達が生じる。
【0053】
また、酸素検知素子2の中空部内壁面2aはテーパ状に形成されているが、その内径の平均値(以下、単に内径という)DAと発熱体3の外径DBとの差ΔD=DA−DBは0.1〜0.35mm、望ましくは0.15〜0.30mmに設定されている。また、上記ΔDの発熱体3の外径DBに対する比ΔD/DBは、0.13以下、望ましくは0.10以下に設定されている。
【0054】
以下、上記酸素センサ1の作用について説明する。
図6は、発熱体3の中心軸線O1と酸素検知素子2の中心軸線O2とが同心的な従来構造の比較例を示すもので、これと図5とを比較すると明らかなように、図5の本件実施例では、酸素検知素子2の中心軸線O2に対し、発熱体3の中心軸線O1がほぼ平行な状態で、酸素検知素子2の中心軸線O2から距離δだけ偏心し、その発熱部42の先端部表面が素子内壁面2aに側方から押し付けられた、いわば横当たり構造とでも称すべき形態となっている。なお、図5及び図6ともに、理解を容易にするために発熱体3と酸素検知素子2との隙間は実際のものより誇張して描かれているが、上述の偏心量δは、素子内壁面2aの内径を2.8〜3.2mm、発熱体3の外径を2.43〜2.63mmとしたとき、発熱体3と酸素検知素子2との間で過度な押し付け力を生ずることなく上記横当り構造を確実なものとするために、例えば0.085〜0.385mm程度の大きさに設定するのがよい。また図6の発熱部42’と比べて、図5の発熱部42は、前述のように発熱体3の先端側により狭い領域に偏って形成されている。
【0055】
このような発熱体3の素子内壁面2aに対する横当たり構造を採用することにより、発熱部42で生じた熱が上記接触に基づく熱伝導により速やかに酸素検知素子2に伝わってこれを加熱し、また発熱部42の上記接触部近傍の局部的に発熱した部分の熱輻射によっても酸素検知素子2が加熱される。そして、その熱伝導及び熱輻射による相乗的な熱伝達が、酸素検知素子2を急速に加熱し、活性化温度までの上昇時間を短縮する。
【0056】
ここで、図2に示すように酸素検知素子2は、その素子内壁面2aに横当て状態で配置された発熱部42により局所加熱されるのであるが、センサの立ち上がり時間は図6に示す従来構成のセンサと同等レベルに維持されるか、あるいは却って短縮される。その要因としては、次のようなことが考えられる。すなわち、酸素イオン電導性固体電解質により形成された酸素検知素子2に十分な濃淡電池起電力が生じるためには、酸素検知素子2の電気抵抗値が十分小さくなることのほかに、酸素分子に対する解離ないし再結合反応に対する電極層2b,2cの触媒活性が十分に高められている必要がある。そして、センサの検出出力レベルは、酸素検知素子2の電気抵抗値と上記2b,2cの触媒活性の兼ね合いで決まる。
【0057】
ここで、酸素検知素子2が発熱部42により局所加熱されると、固体電解質の活性化による酸素検知素子2の電気抵抗減少は、例えば図6に示す従来の構成ほどには進まないが、図2に示すように、その局所加熱された部分2dはより高温まで加熱されるので、当該部分で電極層2b,2cの触媒活性が高めらる。そして、電極層2bの触媒活性が向上すると被測定ガス中の酸素分子の解離が促進され、その効果により固体電解質の濃淡電池起電力ひいてはセンサの検出出力レベルが補われ、結果としてセンサの活性化時間(立ち上がり時間)が短縮されるものと推測される。
【0058】
また、発熱体3の中心軸線O1が検知素子2側の中心軸線O2とほぼ平行となるように配置することにより、発熱部42の側面が検知素子2の中空部内壁面2aに対しほぼ沿う形となり、発熱部42により酸素検知素子2の壁部をより均一に加熱することができるようになり、ひいては酸素センサの活性化時間短縮の効果がさらに高められている。
【0059】
さらに、図1に示すように、端子金具23において、発熱体把持部27が内部電極接続部26に対し発熱体3の発熱部42に近い側にのみ連結されているので、端子金具23の発熱体3の軸線方向における長さが短くなり、ひいては酸素センサ1は、その軸線方向の長さが減じられてコンパクトに構成されている。また、発熱体3が1ケ所の把持部27により把持される形としたから、端子金具23を装着した発熱体3を酸素検知素子2の中空部内に挿入してセンサ1を組み立てる際に、前述の通り、端子金具23を介した過剰な横方向の力が発熱体に作用しにくくなり、ひいては組立時の発熱体3の折損等を防止することができる。
【0060】
実験によれば、図6のような従来タイプのもので、例えばヒータ抵抗値を3〜3.5Ωに設定したとき、センサ活性化温度までの所要時間は20秒程度要するのに対し、図5の横当たり構造のものでは、同じヒータ抵抗値の条件で活性化温度に達するまでの所要時間が、単に偏心した場合で15秒程度、更に横接触した場合で9秒程度と大幅に短縮することが確認された。このことは、例えば自動車の始動時やアイドリング時等の、排気ガス温度が低い場合でも、酸素センサが従来に比べて相当早い段階から酸素濃度を適正に検出し、従来より高精度・高能力で排ガス浄化を達成することにつながる。
【0061】
以下、実施例1の酸素センサのいくつかの変形例について説明する。なお、上記実施例1の酸素センサ1と共通する部分には同一の符号を付与して説明は省略し、主にその相違点について以下に説明する。図18に示す酸素センサ200においては、端子金具23に代えて、内部電極接続金具120と、固定金具123とを設けた例である。内部電極接続金具120は、酸素検知素子2の中空部に対し、その開口側端部に嵌め込まれる筒状の内部電極接続部121を備え、その内部電極接続部121の後端側に、図1の酸素センサ1の端子金具23の、コネクタ部24及びこれに続く引出し線部25(絶縁管25aで覆われている)とを結合した構造を有している。
【0062】
図19に示すように、内部電極接続部121は、軸方向のスリット121bを有するC字状断面を有する略円筒状に形状を有し、自由状態において酸素検知素子2の開口側端部よりも少し大きい外径を有する。また、その後端面には、引出し線部25の一端がスリット121bと反対側の位置に一体化されている。図18に示すように、内部電極接続部121は、酸素検知素子2内に押し込まれることにより、スリット121bを縮小させつつ径方向に圧縮され、その弾性復帰力による摩擦で酸素検知素子2の内面に固定されるとともに、素子2の内面側の電極層2c(図2)と接し、引出し線部25を経て素子2からの出力電圧を取り出す役割を果たす。なお、内部電極接続部121の後端側開口縁には、外向きに突出する係止用凸部121aが周方向に沿って複数形成されている。これら係止用凸部121aは素子2の中空部の開口内縁と係合し、該素子2内において内部電極接続部121を軸線方向に位置決めする。
【0063】
一方、固定金具123は、図1の端子金具23からコネクタ部24及び引出し線部25を取り除いたものと略等価な形態を有する。発熱体把持部27は、発熱体3を把持する。他方、固定部126は、図1の端子金具23の内部電極接続部26に対応するものであり、形態もこれとほぼ同様である。そして、該固定金具123は内部電極接続部121内に押し込まれ、その外周面と内部電極接続部121の内壁面との間の摩擦力によって発熱体3を素子2の中空部に対し軸線方向に位置決めする役割を果たす。なお、固定部126は、内部電極接続部121を介して間接的に酸素検知素子2の内面に接する形となっている。
【0064】
次に、図8及び図9に示すように、端子金具23においては、2つの発熱体把持部27a,27bをそれぞれ連結部29,30を介して、内部電極接続部26に対しその軸線方向両側に連結する構成とすることもできる。また、位置決め突出部50は、発熱体把持部27a,27bのいずれかに形成するようにしてもよい。この場合、発熱体把持部の内径は、位置決め突出部50の突出量を考慮に入れて大きく設定しておく必要がある。
【0065】
例えば、図8の酸素センサ201では、発熱部42から遠い側の発熱体把持部27aに位置決め突出部50を形成している。図20の酸素センサ203は、その端子金具23を図18の酸素センサ200と同様に、内部電極接続金具120と固定金具123とで置き換えた例である。
【0066】
また、図9の酸素センサ202は、発熱部42から近い側の発熱体把持部27bに位置決め突出部50を形成した例であり、図21の酸素センサ204は、その端子金具23を内部電極接続金具120と固定金具123とで置き換えた例である。これらの場合は、発熱体3は、連結部29ないし30が位置するのとは反対側においてその発熱部42が酸素検知素子2の中空部内壁面2aに当接している。これにより、発熱体3は、図10に示すように該側にやや大きく傾いて、その中心軸線O1が中空部の中心軸線O2と所定の傾きθで交差する形態となっている。
【0067】
なお、図10においては、理解を容易にするために発熱体3と酸素検知素子2との隙間や傾きθを実際のものより誇張して描いている。ここで、発熱部42の近傍における中心軸線O1の酸素検知素子2の中心軸線O2に対する偏心量δと、傾きθとは、素子内壁面2aの内径を2.8〜3.2mm、発熱体3の外径を2.43〜2.63mmとしたとき、発熱体3と酸素検知素子2との間で過度な押し付け力を生ずることなく上記横当り構造を確実なものとするには、例えばδは0.085〜0.385mm、またθは0.1〜0.5°程度の大きさとするのがよい。
【0068】
(実施例2)
図11は、本発明の酸素センサの第二実施例を示すものである。なお、該酸素センサ150の構成において上記実施例1の酸素センサ1と共通する部分には同一の符号を付与して説明は省略し、主にその相違点について以下に説明する。
【0069】
すなわち、該酸素センサ150が次のように構成されている点で実施例1の酸素センサ1と相違する。すなわち、端子金具23は、実施例1の端子金具(図1)とほぼ同様に形成された内部電極接続部26を備え、発熱体3の軸方向において該内部電極接続部26の一方の側には、実施例1と同様の第一発熱体把持部27aが形成される一方、他方の側にも第二発熱体把持部27bが同様の構成で形成されている。ここで、図12に示すように、上記1対の発熱体把持部27a,27bは、その中心軸線が、酸素検知素子2の中空部の中心軸線O11から偏心してこれとほぼ平行な共通の軸線O10上に位置するように、内部電極接続部26に対して連結されている。
【0070】
具体的には、端子金具23においては、第一発熱体把持部27aと第二発熱体把持部27bとが、内部電極接続部26の各々対応する端部に対し、それぞれくびれた形態の第一及び第二連結部29及び30により、発熱体3の径方向において同じ側の周縁に一体的に接続されている。そして、これら連結部29,30は、内部電極接続部26の径方向内側に曲げられて段付き部を形成するとともに、その曲げ量を調整することにより、発熱体把持部27a,27bの中心軸線O10は、酸素検知素子2の中空部の中心軸線O11に対しほぼ平行な状態で、連結部29,30の形成側とは反対方向に所定の偏心量dで偏心させられている。
【0071】
このような端子金具23は、例えば図13に示すような形状の板状金属部材128を曲げ加工することにより製造することができる。すなわち、図13(a)に示すように板状金属部材128は、3つの部分127a、126及び127bが、その幅方向中間部において、連結部29及び30となるべき接続部129及び130により互いに一体化された形態をなし、同図(b)〜(d)に示すように、接続部129及び130の両側に張り出した部分を幅方向において筒状に丸めるように曲げ加工することにより、それぞれ第一発熱体把持部27a、内部電極接続部26及び第二発熱体把持部27bとなる。また、連結部29及び30は、同図(e)に示すように、発熱体把持部27a,27bの中心軸線O10が、所期の位置となるように段付き状に曲げ加工される。
【0072】
上記構成の酸素センサ150においても、基本的には実施例1の酸素センサ1と同様の効果を奏することができるほか、2つの把持部27a,27bにより発熱体3をより安定的に保持することができる効果も新たに加わる。
【0073】
なお、図22の酸素センサ205は、図11の酸素センサ150の端子金具23を、図18の酸素センサ200と同様に、内部電極接続金具120と固定金具123とで置き換えた例である。
【0074】
次に、図14の酸素センサ206においては、発熱体把持部27は、内部電極接続部26に対し発熱体3の軸方向において該発熱体3の先端に近い側の端部において1ケ所にのみ設けられている。この構成によれば、発熱体3は1ケ所の把持部27により、軸線と交差する向きにおいて若干の動きの自由度を生じた状態で把持されることとなる。従って、発熱体3を端子金具23とともに酸素検知素子2の中空部内に挿入すると、該発熱体3は、先端部が酸素検知素子2の内壁面との接触に伴い、これに追従して該内壁面に沿う形で位置決めされ、酸素センサの活性化時間を短縮する上でさらに大きな効果を期待することができるようになる。この場合、ΔDないしΔD/DBを前述の範囲で調整することにより、発熱体3の先端部は酸素検知素子2の中空部内壁面にさらに沿いやすくなり、酸素センサの活性化時間を短縮する効果が一層高められる。
【0075】
また、別の効果としては、センサを組み立てる際に、端子金具23を介した過剰な横方向の力が発熱体3に作用しにくくなり、ひいては組立時の発熱体3の折損等を防止することができる。さらに、端子金具23の発熱体軸線方向における長さを短くでき、ひいては酸素センサの上記軸線方向の長さを減じてこれをコンパクトに構成できるようになる。
【0076】
なお、図23の酸素センサ207は、図14の酸素センサ206の端子金具23を、図18の酸素センサ200と同様に、内部電極接続金具120と固定金具123とで置き換えた例である。
【0077】
以上、図面に示す実施例を参照しながら説明したが、本発明は以上の実施例の記載により限定的に解釈されるものでは決してなく、特許請求の範囲の趣旨を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識の基づく種々なる変更・改良が可能であることは言うまでもない。
【0078】
【実施例】
以下、実験例により、本発明の実施例をさらに詳しく説明する。
(実験例1)
図1に示す酸素センサ1を、酸素検知素子2のテーパ状の中空部内壁面の内径(平均値)DAと、発熱体3の外径DBとを表1に示す6つの組み合わせ条件で各種変化させ、各条件毎に50個ずつ作製した。ここで、酸素検知素子2は、ZrO2粉末に安定化成分としてのY2O3を配合して成形後、焼成することにより、Y2O3を8.5〜9.0重量%含有するZrO2固体電解質として形成されたものである。なお、ΔD(=DA−DB)及びΔD/DBの各条件毎の値も表1に合わせて示している。また、発熱体3の酸素検知素子2の中空部に対する挿入深さは47.4mm に固定した。さらに、発熱部42は、発熱体3の軸線方向における幅が4mmであり、12V通電時の出力が10Wのものを用いた。
【0079】
これらセンサ1の酸素検知素子2に対し、以下の性能試験を行った。すなわち、リード線21側(外側の電極層2b側)を、800kΩの抵抗器を介して直流定電圧電源(電圧4V)の正極端子に接続する一方、リード線20側(内側の電極層2c側)を接地した。この状態で発熱体3の発熱部42に対し14Vで定電圧通電して酸素検知素子2を加熱するとともに、酸素検出素子2に印加される分圧電圧に基づいてその電気抵抗値の時間的な変化を連続的にモニタした。そして、その電気抵抗値が5.6MΩに到達すれば酸素検出素子2が活性化したと判断し、通電開始からその活性化するまでの時間を、センサ立ち上がり時間として各センサ毎に測定した。表1に、各条件のセンサの立ち上がり時間の平均値と標準偏差とを示す。また、図16及び図17は、センサ立ち上がり時間の平均値Tav及び標準偏差σTをΔD及びΔD/DBに対してプロットしたものである。
【0080】
【表1】
【0081】
すなわち、図16においては、センサ立ち上がり時間の平均値TavはΔDの増加とともに増加することがわかる。また、ΔDが0.35mmを超えると、センサ立ち上がり時間の標準偏差σT、すなわちセンサ個体間でのばらつきが急激に大きくなっている。従って、上記センサ立ち上がり時間の個体間ばらつきを抑制するためには、該ΔDの値を0.35mm以下の範囲で設定することが望ましいといえる。一方、図17から、ΔD/DBの値は、0.13以下(より望ましくは、0.10以下)に設定することが、同様に上記立ち上がり時間の個体間ばらつきを抑制する上で望ましいこともわかる。
【0082】
(実験例2)
図11に示す酸素センサ150を、酸素検知素子2のテーパ状の中空部内壁面の内径(平均値)DAと、発熱体3の外径DBとを、実験例1と同様の6つの組み合わせ条件で各種変化させ、各条件毎に50個ずつ作製した。なお、酸素検知素子2と、発熱体3とは実験例1と同じものを用いた。また、発熱体3の酸素検知素子2の中空部に対する挿入深さは、47.4mm に固定した。そして、これらセンサ150に対し、実験例1と同様の性能試験を行った。表2に、各条件のセンサの立ち上がり時間の平均値Tavと標準偏差σTとを示す。
【0083】
【表2】
【0084】
すなわち、センサ立ち上がり時間の平均値TavはΔDの増加とともに増加することがわかる。また、ΔDが0.35mmを超えると、センサ立ち上がり時間の標準偏差σT、すなわちセンサ個体間でのばらつきが急激に大きくなっている。従って、上記センサ立ち上がり時間の個体間ばらつきを抑制するためには、該ΔDの値を0.35mm以下の範囲で設定することが望ましいといえる。一方ΔD/DBの値は、0.13以下(より望ましくは、0.10以下)に設定することが、同様に上記立ち上がり時間の個体間ばらつきを抑制する上で望ましいこともわかる。
【0085】
(実験例3)
図14に示す酸素センサ206を、酸素検知素子2のテーパ状の中空部内壁面の内径(平均値)DAと、発熱体3の外径DBとを、実験例1と同様の6つの組み合わせ条件で各種変化させ、各条件毎に50個ずつ作製した。なお、酸素検知素子2と、発熱体3とは実験例1と同じものを用いた。また、発熱体3の酸素検知素子2の中空部に対する挿入深さは、47.4mm に固定した。そして、これらセンサ206に対し、実験例1と同様の性能試験を行った。表3に、各条件のセンサの立ち上がり時間の平均値Tavと標準偏差σTとを示す。
【0086】
【表3】
【0087】
すなわち、センサ立ち上がり時間の平均値TavはΔDの増加とともに増加することがわかる。また、ΔDが0.35mmを超えると、センサ立ち上がり時間の標準偏差σT、すなわちセンサ個体間でのばらつきが急激に大きくなっている。従って、上記センサ立ち上がり時間の個体間ばらつきを抑制するためには、該ΔDの値を0.35mm以下の範囲で設定することが望ましいといえる。一方ΔD/DBの値は、0.13以下(より望ましくは、0.10以下)に設定することが、同様に上記立ち上がり時間の個体間ばらつきを抑制する上で望ましいこともわかる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例1の酸素センサの縦断面図。
【図2】図1の、発熱部と酸素検知素子との接触部付近を拡大して示す断面図。
【図3】図1の端子金具を単体状態で示す図。
【図4】図3の端子金具に発熱体を組み付けたアッセンブリを示す図。
【図5】図2の要部を概念化して示す部分断面図。
【図6】比較例の同様な部分断面図。
【図7】図1の発熱部の一例を示す図。
【図8】図1の酸素センサの変形例を示す縦断面図。
【図9】同じく別の変形例を示す縦断面図。
【図10】図9の発熱部近傍を概念化して示す部分断面図。
【図11】本発明の実施例2の酸素センサの縦断面図。
【図12】図11の端子金具を単体状態で示す図。
【図13】図12の端子金具を製造するための板状金属部材の一例を示す図。
【図14】実施例2の酸素センサの変形例を示す縦断面図。
【図15】本発明の酸素センサの作用の一部を参照例と比較して説明する概念図。
【図16】実験例で得られたTav及びσTのデータを、ΔDに対してプロットしたグラフ。
【図17】同じくTav及びσTのデータを、ΔD/DBに対してプロットしたグラフ。
【図18】図1の酸素センサの変形例を示す縦断面図。
【図19】その内部電極接続金具と固定金具とを示す分解斜視図。
【図20】図8の酸素センサの変形例を示す縦断面図。
【図21】図9の酸素センサの変形例を示す縦断面図。
【図22】図11の酸素センサの変形例を示す縦断面図。
【図23】図14の酸素センサの変形例を示す縦断面図。
【符号の説明】
1,150,200〜207 酸素センサ
2 酸素検知素子
2a 中空部内壁面(素子内壁面)
3 発熱体
23 端子金具(固定金具)
26 内部電極接続部(固定部)
27 発熱体把持部
27a 第一発熱体把持部
27b 第二発熱体把持部
29 連結部(第一連結部)
30 連結部(第二連結部)
42 発熱部
123 固定金具
126 固定部
Claims (7)
- 先端部が閉じた中空軸状をなし、それの内外面に電極層を有する酸素検知素子と、該酸素検知素子の中空部内に配置されて該酸素検知素子を加熱する軸状の発熱体と、前記発熱体を周方向に包囲するように形成され、前記酸素検知素子の内面に直接又は他部材を介して間接的に接触する固定部と、その固定部に対し前記発熱体の軸方向において少なくとも一方の側に連結されて前記発熱体を把持する発熱体把持部とを有し、前記固定部により前記発熱体を前記酸素検知素子の内側に固定する固定金具とを備え、その固定金具の前記固定部及び発熱体把持部の少なくともいずれかに、それら固定部ないし発熱体把持部の内面から突出して前記発熱体の外周面に当接するとともに、その発熱体を、発熱部の近傍において該発熱体の中心軸線が該酸素検知素子の中空部の中心軸線に対して片側に寄るように偏心した状態で位置決めする位置決め用突出部が形成されていることを特徴とするヒータ付き酸素センサ。
- 前記酸素検知素子の前記中空部に対し、該中空部の中心軸線を含むある仮想的な第一平面と、同じく前記中空部の中心軸線を含むとともに前記第一平面と直交する仮想的な第二平面とを設定して、該中空部をそれら第一平面と第二平面とによって4つの領域に分割した場合に、前記発熱体は、その中心軸線の前記中空部内に位置する部分の全体が、前記中空部の前記4つの領域のいずれか1つに収まるように配置されている請求項1記載の酸素センサ。
- 前記発熱体は、該発熱体の中心軸線が前記酸素検知素子の中空部の中心軸線とほぼ平行となるように前記中空部内に配置されている請求項1又は2に記載の酸素センサ。
- 前記固定金具において、前記発熱体把持部は前記固定部に対し前記発熱体の前記発熱部に近い側にのみ連結されており、前記位置決め用突出部は前記固定部に設けられている請求項1ないし3のいずれかに記載の酸素センサ。
- 前記位置決め用突出部は、前記固定部に対し、前記発熱体把持部が連結されているのとは反対側の端部近傍において、該発熱体把持部の固定部への連結部に対応する位置に形成されている請求項4記載の酸素センサ。
- 前記固定金具は、前記固定部が前記酸素検知素子の内側の電極層に接触する内部電極接続部とされた端子金具である請求項1ないし5のいずれかに記載の酸素センサ。
- 先端部が閉じた中空軸状をなし、その内外面に電極層を有する酸素検知素子と、該酸素検知素子の中空部内に配置されて該酸素検知素子を加熱する軸状の発熱体とを備え、前記酸素検知素子の前記中空部に対し、該中空部の中心軸線を含むある仮想的な第一平面と、同じく前記中空部の中心軸線を含むとともに前記第一平面と直交する仮想的な第二平面とを設定して、該中空部をそれら第一平面と第二平面とによって4つの領域に区切ったときに、前記発熱体は、その中心軸線の前記中空部内に位置する部分の全体が、前記中空部の前記4つの領域のいずれか1つに収まるように配置され、前記発熱体の中心軸線が前記中空部の中心軸線に対して片側に寄るように偏心していることを特徴とするヒータ付き酸素センサ。
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