JP3614175B2 - カルバペネム化合物の製造法 - Google Patents

カルバペネム化合物の製造法 Download PDF

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  • Nitrogen And Oxygen Or Sulfur-Condensed Heterocyclic Ring Systems (AREA)
  • Pharmaceuticals Containing Other Organic And Inorganic Compounds (AREA)

Description

【0001】
本発明は、新規なカルバペネム化合物の製造法に関し、さらに詳しくは、次式
【0002】
【化13】
Figure 0003614175
【0003】
式中、Rはカルボキシル基の保護基を表わし、Xは陰イオン残基を表わす、
で示されるカルバペネム化合物の簡便で収率のよい製造法に関する。
【0004】
上記式(I)のカルバペネム化合物は、そのRのカルボキシル保護基を除去せしめることにより本発明者らが先に提案した(特開昭64−25779号参照)優れた抗菌活性を有し抗菌剤として有用な、次式(A)
【0005】
【化14】
Figure 0003614175
【0006】
で示される化合物へ誘導することができ、したがって式(A)の化合物の合成中間体として有用である。
【0007】
本発明によれば、
(a)式
【0008】
【化15】
Figure 0003614175
【0009】
式中、Rはカルボキシル基の保護基を表わし、Rは水酸基の保護基を表わす、
で示される化合物のRの水酸基の保護基を脱離し、
(b)得られる式
【0010】
【化16】
Figure 0003614175
【0011】
式中、Rは上記の意味を有する、
で示される化合物を環化せしめ、さらに
(c)得られる式
【0012】
【化17】
Figure 0003614175
【0013】
式中、Rは上記の意味を有する、
で示される化合物をアシル化して当該化合物のオキソ基における反応性誘導体に変えた後、式
【0014】
【化18】
Figure 0003614175
【0015】
式中、Xは陰イオン残基を表わす、
で示されるメルカプト化合物と反応せしめることによる式
【0016】
【化19】
Figure 0003614175
【0017】
式中、RおよびXは上記の意味を有する、
で示されるカルバペネム化合物の製造法が提供される。
【0018】
本発明の上記方法は、上記反応の各工程(a)、(b)および(c)を、中間生成物を特に単離・精製することなく連続して行なうことができ、したがって、式(I)の化合物を大量に製造する工業的製造において特に有利である。
【0019】
また、本発明の別の利点は、上記反応の各工程(a)〜(c)を同一反応容器内で(すなわちワン・ポットで)行ない得ることである。
【0020】
なお、本明細書において、「低級」なる語は、この語が付された基または化合物の炭素原子数が1〜7個、好ましくは1〜4個であることを意味する。
【0021】
また、「カルボキシル基の保護基」はペプチド化学の分野においてカルボキシル基の保護基としてそれ自体既知の任意のカルボキシル保護基であることができ、例えばカルボン酸のエステル残基を例示することができる。かかるエステル残基の代表例としては、以下のものが挙げられる:
(a)低級アルキルエステル残基:例えばメチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、イソプロピルエステル、ブチルエステル、イソブチルエステル、tert−ブチルエステル、ペンチルエステル、ヘキシルエステルなど。
【0022】
(b)適当な置換基を少なくとも1個を有していてもよい低級アルキルエステル残基:例えばアセトキシメチルエステル、プロピオニルオキシメチルエステル、ブチリルオキシメチルエステル、バレリルオキシメチルエステル、ピバロイルオキシメチルエステル、ヘキサノイルオキシメチルエステル、1−(または2−)アセトキシエチルエステル、1−(または2−または3−)アセトキシプロピルエステル、1−(または2−または3−または4−)アセトキシブチルエステル、1−(または2−)プロピオニルオキシエチルエステル、1−(または2−または3−)プロピオニルオキシプロピルエステル、1−(または2−)ブチリルオキシエチルエステル、1−(または2−)イソブチリルオキシエチルエステル、1−(または2−)ピバロイルオキシエチルエステル、1−(または2−)ヘキサノイルオキシエチルエステル、イソブチリルオキシメチルエステル、2−エチルブチリルオキシメチルエステル、3,3−ジメチルブチリルオキシメチルエステル、1−(または2−)ペンタノイルオキシエチルエステル等の低級アルカノイルオキシ(低級)アルキルエステル残基;2−メシルエチルエステル等の低級アルカンスルホニル(低級)アルキルエステル残基;2−ヨードエチルエステル、2,2,2−トリクロロエチルエステル等のモノ(またはジまたはトリ)ハロ(低級)アルキルエステル残基;メトキシカルボニルオキシメチルエステル、エトキシカルボニルオキシメチルエステル、プロポキシカルボニルオキシメチルエステル、tert−ブトキシカルボニルオキシメチルエステル、2−メトキシカルボニルオキシエチルエステル、1−エトキシカルボニルオキシエチルエステル、1−イソプロポキシカルボニルオキシエチルエステル等の低級アルコキシカルボニルオキシ(低級)アルキルエステル残基;フタリジリデン(低級)アルキルエステル残基;(5−メチル−2−オキソ−1,3−ジオキソール−4−イル)メチルエステル、(5−エチル−2−オキソ−1,3−ジオキソール−4−イル)メチルエステル、(5−プロピル−2−オキソ−1,3−ジオキソール−4−イル)エチルエステル等の(5−低級アルキル−2−オキソ−1,3−ジオキソール−4−イル)(低級)アルキルエステルなど。
【0023】
(c)低級アルケニルエステル残基:例えばビニルエステル、アリルエステルなど。
【0024】
(d)低級アルキニルエステル残基:例えばエチニルエステル、プロピニルエステルなど。
【0025】
(e)適当な置換基を少なくとも1個有していてもよいアラルキルエステル残基:例えばベンジルエステル、4−メトキシベンジルエステル、4−ニトロベンジルエステル、フエネチルエステル、トリチルエステル、ベンズヒドリルエステル、ビス(メトキシフェニル)メチルエステル、3,4−ジメトキシベンジルエステル、4−ヒドロキシ−3,5−ジtert−ブチルベンジルエステルなど。
(f)適当な置換基を少なくとも1個有していてもよいアリールエステル残基:例えばフェニルエステル、4−クロロフェニルエステル、トリルエステル、tert−ブチルフェニルエステル、キシリルエステル、メシチルエステル、クメニルエステルなど。
【0026】
(g)その他:フタリジルエステルなど。
【0027】
かかるカルボキシル基の保護基のうち好ましいものとしては、ニトロ基で置換されていてもよいフェニル−低級アルキル基、および低級アルケニル基が挙げられ、さらに好ましくは4−ニトロベンジル基が挙げられる。
【0028】
さらに、「アミノ基の保護基」は、ペプチド化学の分野においてアミノ基の保護基としてそれ自体既知の任意のアミノ保護基であることができ、「水酸基の保護基」としては例えばトリメチルシリル、トリエチルシリル、tert−ブチルジメチルシリル、ジフェニル−tert−ブチルシリル等のシリル基、ベンジルオキシカルボニル、4−ニトロベンジルオキシカルボニル、2−ニトロベンジルオキシカルボニル等の置換または未置換のベンジルオキシカルボニル基、その他通常使用される水酸基の保護基が包含される。
【0029】
本発明により提供される式(I)で示される化合物の製造法を反応式で示せば以下の通りである。
【0030】
【化20】
Figure 0003614175
【0031】
式中、R、RおよびXは上記と同一の意味を有する。
【0032】
以下に、上記製造工程をさらに詳しく説明する。
【0033】
工程(a)
工程(a)は、式(II)の化合物においてRで示される水酸基の保護基を脱離させる工程である。
【0034】
例えば、Rがt−ブチルジメチルシリル基のようなトリオルガノシリル基である保護基の除去は、式(II)の化合物をメタノール、エタノール、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのような溶媒中で、塩酸、硫酸、酢酸などのような酸の存在下に、0〜100℃の温度で0.5〜18時間酸性加水分解することにより実施することができる。(上記「トリオルガノシリル基」は、より好ましくは低級アルキル基、フェニル基及びフェニルアルキル基から独立に選ばれる有機基で置換されたシリル基を包含する。)
なお、式(II)中においてRが4−ニトロベンジル基であり、Rがt−ブチルジメチルシリル基である次式(II−a)
【0035】
【化21】
Figure 0003614175
【0036】
ならびに式(II−a)のt−ブチルジメチルシリル基を工程(a)の操作により脱離して得た次式(III−a)
【0037】
Figure 0003614175
化合物は、特に形晶形態で得ることができるものである。
【0038】
の属化合物は、特に形晶形態で得ることができるものである。
【0039】
従来これら化合物はいずれも無晶形の粉末でしか得られておらず、特に工業的な規模での製造を考えた場合には化合物の純度が高く、取扱い易い結晶で単離・精製されることは特に好ましいものであるといえる。
【0040】
したがって、本発明の別の目的は上記式(II−a)および(III−a)で示される結晶形態の化合物を提供することでもある。
【0041】
工程(b)
工程(b)は、式(III)の化合物に金属触媒を作用させることによって環化せしめ、式(IV)で示されるオキソ化合物を得る工程である。
【0042】
該環化は、例えば式(III)の化合物を不活性有機溶媒、たとえばメタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール等のアルコール類;テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジオキサン等のエーテル類;酢酸エチル等のエステル類;ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素類;アセトン、ジメチルホルムアミド、ピリジンアセトニトリル等の中から適当に選択された溶媒、好適にはジクロロメタン、アセトンまたは酢酸エチル中で、金属触媒、例えば、ビス(アセチルアセトナト)Cu(II)、硫酸銅、銅粉末、酢酸ロジウム(II)、オクタン酸ロジウム(II)、または四酢酸鉛等、好適にはオクタン酸ロジウム(II)の存在下に、室温ないし溶媒の還流温度で1〜7時間撹拌することによって実施することができる。
【0043】
上記金属触媒の使用量は特に臨界的ではなく、適宜変更することができるが通常式(III)の化合物に対して0.2〜2.0重量%、より好ましくは0.5〜1.0重量%用いられる。これにより式(IV)の化合物がほぼ定量的に生成する。
【0044】
反応終了後、反応混合物から溶媒を減圧下に留去すれば、残渣として式(IV)の化合物を得ることもできるが、該反応混合物を何ら処理することなく、同じ反応容器内でそのまま次の工程に供する。
【0045】
工程(c)
工程(c)において、式(IV)の化合物のアシル化は、上記工程(b)で得られる式(IV)の化合物を含む反応混合物あるいは濃縮残渣として得られる式(IV)の化合物に、適当なアシル化剤を作用させることにより行なうことができる。
【0046】
このアシル化により上記式(IV)の化合物のオキソ基における反応性誘導体である次式
【0047】
【化23】
Figure 0003614175
【0048】
式中、Rはアシル基を表わし、
は前記と同一の意味を有する、
で示される化合物が生成する。
【0049】
しかして、上記アシル化反応に使用しうるアシル化剤としては次式
【0050】
【化24】
OH (VII)
式中、Rは上記と同一の意味を有する、
で示される酸もしくはその塩、又はその反応性誘導体、例えば次式
【0051】
【化25】
Hal (VII‐1)
式中、Halはハロゲン原子を表わし、
は上記と同一の意味を有する、
で示される酸ハロゲン化物や次式
【0052】
【化26】
O (VII‐2)
式中、Rは上記と同一の意味を有する、
で示される酸無水物等が挙げられる。
【0053】
ここで、Rによって示される「アシル基」としては、脂肪族アシル基、芳香族アシル基、複素環アシル基および芳香族基または複素環基で置換された脂肪族アシル基のようなカルボン酸、炭酸、スルホン酸、燐酸およびカルバミン酸から誘導されるアシル基が挙げられる。かかるアシル基の代表例を以下に掲げると、
(a)脂肪族アシル基:例えばホルミル、アセチル、プロピオニル、ブチリル、イソブチリル、バレリル、イソバレリル、ピバロイル、ヘキサノイル等の低級アルカノイル基のようなアルカノイル基;例えばメシル、エチルスルホニル、プロピルスルホニル、イソプロピルスルホニル、ブチルスルホニル、イソブチルスルホニル、ペンチルスルホニル、ヘキシルスルホニル等の低級アルキルスルホニル基のようなアルキルスルホニル基;例えばメチルカルバモイル、エチルカルバモイル等のN−アルキルカルバモイル基;例えばメトキシカルボニル、エトキシカルボニル、プロポキシカルボニル、ブトキシカルボニル、第三級ブトキシカルボニル等の低級アルコキシカルボニル基のようなアルコキシカルボニル基;例えばビニルオキシカルボニル、アリルオキシカルボニル等の低級アルケニルオキシカルボニル基のようなアルケニルオキシカルボニル基;例えばアクリロイル、メタクリロイル、クロトノイル等の低級アルケノイル基のようなアルケノイル基;例えばシクロプロパンカルボニル、シクロペンタンカルボニル、シクロヘキサンカルボニル等のシクロ(低級)アルカンカルボニル基のようなシクロアルカンカルボニル基;燐酸ジエチルのような燐酸ジ(低級)アルキル基など。
【0054】
(b)芳香族アシル基:例えばベンゾイル、トルオイル、キシロイル等のアロイル基;例えばN−フェニルカルバモイル、N−トリルカルバモイル、N−ナフチルカルバモイル等のN−アリールカルバモイル基;例えばベンゼンスルホニル、トシル等のアレーンスルホニル基;燐酸ジフェニル等の燐酸ジアリール基など。
【0055】
(c)複素環アシル基:例えばフロイル、テノイル、ニコチノイル、イソニコチノイル、チアゾリルカルボニル、チアジアゾリルカルボニル、テトラゾリルカルボニル等の複素環カルボニル基など。
【0056】
(d)芳香族基で置換された脂肪族アシル基:例えばフェニルアセチル、フェニルプロピオニル、フェニルヘキサノイル等のフェニル(低級)アルカノイル基のようなアラルカノイル基;例えばベンジルオキシカルボニル、フエネチルオキシカルボニル等のフェニル(低級)アルコキシカルボニル基のようなアラルコキシカルボニル基;例えばフエノキシアセチル、フエノキシプロピオニル等のフエノキシ(低級)アルカノイル基のようなアリールオキシアルカノイル基など。
【0057】
(e)複素環基で置換された脂肪族アシル基:例えばチエニルアセチル、イミダゾリルアセチル、フリルアセチル、テトラゾリルアセチル、チアゾリルアセチル、チアジアゾリルアセチル、チエニルプロピオニル、チアジアゾリルプロピオニル等の複素環(低級)アルカノイル基のような複素環アルカノイル基など。
【0058】
これらのアシル基はさらに、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル等の低級アルキル基;例えば塩素、臭素、沃素、フッ素のようなハロゲン;例えばメトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ等の低級アルコキシ基;例えばメチルチオ、エチルチオ、プロピルチオ、イソプロピルチオ、ブチルチオ、ペンチルチオ、ヘキシルチオ等の低級アルキルチオ基;ニトロ基等のような適当な置換基1個以上で置換されていてもよく、そのような置換基を有する好ましいアシル基としては、例えばクロロアセチル、ブロモアセチル、ジクロロアセチル、トリフルオロアセチル等のモノ(またはジまたはトリ)ハロアルカノイル基;例えばクロロメトキシカルボニル、ジクロロメトキシカルボニル、2,2,2−トリクロロエトキシカルボニル等のモノ(またはジまたはトリ)ハロアルコキシカルボニル基;例えばニトロベンジルオキシカルボニル、クロロベンジルオキシカルボニル、メトキシベンジルオキシカルボニル等のニトロ(またはハロまたは低級アルコキシ)アラルコキシカルボニル基;例えばフルオロメチルスルホニル、ジフルオロメチルスルホニル、トリフルオロメチルスルホニル、トリクロロメチルスルホニル等のモノ(またはジまたはトリ)ハロ(低級)アルキルスルホニル基等が挙げられる。
【0059】
アシル化剤としては、上記アシル基を式(IV)の化合物に導入しうるものが用いられるが、一般に、上記した式(VII−1)で示される酸ハロゲン化物、または式(VII−2)で示される酸無水物が好ましく用いられる。かかる酸ハロゲン化物の代表例としては、例えば塩化ベンゼンスルホニル、塩化p−トルエンスルホニル、塩化4−ニトロベンゼンスルホニル、塩化4−ブロモベンゼンスルホニル等のアレーンスルホニルハロゲン化物:例えば塩化メタンスルホニル、塩化エタンスルホニル、塩化トリフルオロメタンスルホニル等のさらにハロゲンを有していてもよい低級アルカンスルホニルハロゲン化物;例えばクロロ燐酸ジエチル等のハロ燐酸ジ(低級)アルキル;例えばクロロ燐酸ジフェニル等のハロ燐酸ジアリールなどが挙げられる。
【0060】
また、酸無水物の代表例としては、例えば、無水ベンゼンスルホン酸、無水p−トルエンスルホン酸、無水4−ニトロベンゼンスルホン酸等のアレーンスルホン酸無水物;例えば無水メタンスルホン酸、無水エタンスルホン酸、無水トリフルオロメタンスルホン酸等のハロゲンを有していてもよい低級アルカンスルホン酸無水物などが挙げられる。
【0061】
かかるアシル化剤の中で、より好ましいものとしては、クロロ燐酸ジエチルおよびクロロ燐酸ジフェニル等が挙げられる。
【0062】
式(IV)の化合物のアシル化反応において、アシル化剤として式(VI)で示される遊離の酸またはその塩を使用する場合には、常用の縮合剤の存在下に反応を行うのが好ましい。かかる縮合剤の代表例としては以下のものが挙げられる:
(a)カルボジイミド化合物:例えばN,N′−ジエチルカルボジイミド、N、N′−ジイソプロピルカルボジイミド、N,N′−ジシクロヘキシルカルボジイミド、N−シクロヘキシル−N′−モルホリノエチルカルボジイミド、N−シクロヘキシル−N′−(4−ジエチルアミノシクロヘキシル)カルボジイミド、N−エチル−N′−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドなど。
【0063】
(b)カルボニルジイミダゾール化合物:例えばN,N′−カルボニルジイミダゾール、N,N′−カルボニルビス(2−メチルイミダゾール)など。
【0064】
(c)ケテンイミン化合物:例えばペンタメチレンケテン−N−シクロヘキシルイミン、ジフェニルケテン−N−シクロヘキシルイミンなど。
【0065】
(d)その他:例えばエトキシアセチレン、1−アルコキシ−1−クロロエチレン、ポリ燐酸エチル、ポリ燐酸イソプロピル、オキシ塩化燐、三塩化燐、塩化チオニル、塩化オキザリル、2−エチル−7−ヒドロキシベンズイソキサゾリウム塩、2−エチル−5−(m−スルホフェニル)イソオキサゾリウムヒドロキシド分子内塩、1−(p−クロロベンゼンスルホニルオキシ)−6−クロロ−1H−ベンゾトリアゾール、およびN,N−ジメチルホルムアミドと塩化チオニル、ホスゲンあるいはオキシ塩化燐等との反応によって調製した所謂ビルスマイヤー試薬など。
【0066】
また、式(IV)の化合物のアシル化反応は、好適には、例えばリチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属;例えばカルシウム等のアルカリ土類金属;例えば水素化ナトリウム等のアルカリ金属水素化物;例えば水素化カルシウム等のアルカリ土類金属水素化物;例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物;例えば炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属炭酸塩;例えば炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等のアルカリ金属炭酸水素塩;例えばナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウム第三級ブトキシド等のアルカリ金属アルコキシド;例えば酢酸ナトリウム等のアルカン酸アルカリ金属塩;例えば炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム等のアルカリ土類金属炭酸塩;例えばトリメチルアミン、トリエチルアミン、N,N−ジイソプロピル−N−エチルアミン等のトリ(低級)アルキルアミン;例えばピリジン、ピコリン、ルチジン、N,N−ジメチルアミノピリジンのようなN,N−ジ(低級)アルキルアミノピリジン等のピリジン化合物;キノリン;例えばN−メチルモルホリン等のN−低級アルキルモルホリン;例えばN,N−ジメチルベンジルアミン等のN,N−ジ(低級)アルキルベンジルアミン等のような有機塩基または無機塩基の存在下の行うことができる。
【0067】
上記アシル化は通常約−20℃ないし約40℃の比較的低温で実施することができる。
【0068】
上記反応におけるアシル化剤および塩基の使用量は特に臨界的なものではなく、反応条件等に応じて適宜変えることができるが、アシル化剤も塩基も通常、出発原料である式(III)の化合物1モルに対して各々1〜2モル、好ましくは1〜1.5モルの割合で用いることができる。これにより式(VI)の化合物がほぼ定量的に生成する。
【0069】
このアシル化反応によって得られる式(VI)の化合物は反応混合物から単離することなく、同一反応容器内で次式
【0070】
【化27】
Figure 0003614175
【0071】
式中、Xは前記と同一の意味を有する、
で示されるメルカプトピラゾロトリアゾリウム又はその反応性誘導体を反応させることにより、目的化合物である式(I)で示されるカルバペネム化合物を得ることができる。
【0072】
上記式(VI)の化合物と式(V)のメルカプト化合物又はその反応性誘導体との反応は、一般に、前記アシル化反応において述べたと同様の有機塩基または無機塩基の存在下に、約−40℃ないし室温程度の温度で行なうことができる。式(V)のメルカプト化合物又はその反応性誘導体および上記塩基の使用量は臨界的なものではないが、通常、式(III)の化合物1モルに対して1〜2モル、好ましくは1.0〜1.5モルの割合で用いることができる。
【0073】
かくして得られる式(I)の化合物は、それ自体既知の分離、精製法により単離することができる。
【0074】
次に、化合物(I)の合成原料となり得る化合物(II−a)および(III−a)の結晶について詳細に説明する。
【0075】
本発明で提供される式(II−a)および(III−a)で示される化合物は、例えば次式
【0076】
【化28】
Figure 0003614175
【0077】
式中、
【0078】
【化29】
Figure 0003614175
【0079】
はt−ブチルジメチルシリル基を表わす、
で示される化合物から例えば後述の実施例3および4のような方法で製造することができる。製造された化合物(II−a)は例えば酢酸エチルとn−ヘキサンの混液から、化合物(III−a)は例えば酢酸エチルをn−ヘキサンの混液、あるいは酢酸エチルとイソプロピルエーテルの混液から再結晶させることができる。
【0080】
以上の如く製造されうる本発明の化合物(II−a)および(III−a)は偏光顕微鏡による観察、および粉末X線回折分析によって結晶であることが確認されており、特に粉末X線回折分析において特徴的ピークを有することによって同定される。そのピークパターンを下表(I)および(II)に示す。
【0081】
【表1】
Figure 0003614175
【0082】
【表2】
Figure 0003614175
本発明で提供される式(II−a)および式(III−a)で示される化合物の結晶は、固体安定性において無晶形物に比較しはるかに優れている。したがって、化合物(I)の工業的合成に際しては保存性・輸送性の高い有利な原料として利用することができる。
【0083】
また、本発明の方法により
合成された化合物(I)は、式中Rで表わされるカルボキシル基の保護基を脱離させることにより、抗菌剤として有用な下式(A)
【0084】
【化30】
Figure 0003614175
【0085】
で示される化合物に導くことができる。
【0086】
以下に、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの記載により何ら限定されるものではない。
【0087】
なお、本明細書の以下の記載においては次の略号を使用する。
【0088】
【化31】
Figure 0003614175
【0089】
: t−ブチルジメチルシリル基
PNB: 4−ニトロベンジル基
【0090】
【実施例】
実施例1
【0091】
【化32】
Figure 0003614175
【0092】
濃塩酸3.02ml(29.7mmol)とメタノール50mlの混液に、25℃下化合物(II−a)5.0g(9.9mmol)を加え撹拌した。2時間後炭酸水素ナトリウム5.00g(59.5mmol)、ジクロロメタン50ml及び飽和食塩水50mlで抽出した。得られた有機層全てを混合し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後溶媒を留去した。
【0093】
次いで、得られた残渣をジクロロメタン51mlに溶解させ、オクタン酸ロジウム(II)31mg(0.0398mmol)を加え加熱還流した。7時間後、反応液を−15℃に冷却し、クロロ燐酸ジフェニル2.95g(10.8mmol)を加え、ジイソプロピルエチルアミン2.32ml(13.0mmol)及び4−ジメチルアミノピリジン24mg(0.193mmol)のジクロロメタン溶液(ジクロロメタン20ml)を0.5時間かけて滴下し、さらに0.5時間撹拌した。
【0094】
反応終了後溶媒を留去し、アセトン12ml、アセトニトリル12ml及びジメチルホルムアミド1.2mlを加え溶解させた。次いで、この混液に、7℃にて6,7−ジヒドロ−6−メルカプト−5H−ピラゾロ[1,2−a][1.2.4]トリアゾリウムクロライド1.84g(10.44mmol)、ジイソプロピルエチルアミン2.32ml(13.04mmol)、および種晶として化合物(I)48mgを順次加え、4〜7℃で2時間撹拌し、さらにジクロロメタン30mlを加え1時間撹拌した。反応終了後、析出結晶を素早くろ取し、ジクロロメタン2mlとアセトン2mlの混液で2回、ジクロロメタン4mlで1回洗浄後、真空乾燥した。
【0095】
結果、化合物(I)を5.88g(収率70.0%)得た。
【0096】
H−NMR(CDCl)δ: 1.32(d,6H,J=6.0Hz)、3.35(m,1H)、3.65(m,1H)、4.20(m,1H)、4.42(m,1H)、4.60〜4.90(m,2H)、5.1〜5.3(m,3H)、5.36(ABq,2H,J=13.7Hz)、7.67(d,2H,J=8.5Hz)、8.21(d,2H,J=8.5Hz)、9.07(s,1H)、9.08(s,1H)
実施例2
【0097】
【化33】
Figure 0003614175
【0098】
化合物(III−a)585mg(1.5mmol)をジクロロメタン14mlに溶解し、オクタン酸ロジウム(II)3.5mg(0.0398mmol)を加え、3時間還流した。反応液を−15℃に冷却し、クロロ燐酸ジフェニル443mg(1.65mmol)を加え、続いてジイソプロピルエチルアミン256mg(1.98mmol)及び4−ジメチルアミノピリジン3.7mg(0.03mmol)のジクロロメタン溶液(ジクロロメタン3ml)を30分間かけて滴下した。この反応液をさらに、30分撹拌後溶媒を留去し、残渣にアセトニトリル1.9ml、アセトン1.9ml、ジメチルホルムアミド0.2mlを加えて溶解した。次にこの溶液に、氷冷下6,7−ジヒドロ−6−メルカプト−5H−ピラゾロ[1,2−a][1.2.4]トリアゾリウムクロライド373mg(2.1mmol)、ジイソプロピルエチルアミン340mg(2.63mmol)および種晶として化合物(I)5mgを添加した。2時間撹拌後、ジクロロメタン4.8mlを加えさらに1時間撹拌した。析出した結晶を集め、少量のジクロロメタン/アセトン=1/1混液とジクロロメタンで順次洗浄した後、真空乾燥を行ない化合物(I)598mg(収率76.5%)を得た。ここで得られた化合物のNMRデーターは実施例1で得られたものと完全に一致した。
【0099】
実施例3 (化合物(II‐a)の合成と結晶化)
【0100】
【化34】
Figure 0003614175
【0101】
クロル炭酸エチル156.2g(1.44mol)を乾燥ジクロロメタン2740mlに溶解し、約−20℃に冷却した。化合物(VII)361.8g(1.20mol)とトリエチルアミン157.9g(1.56mol)のジクロロメタン溶液(ジクロロメタン915ml)を前記の溶液中に、反応液の温度を約−15℃に保ちながら滴加し、反応液を0°〜5℃にて30分間撹拌した。続いてイミダゾール114.4g(1.68mol)を乾燥ジクロロメタン730mlに加えた溶液を、0°〜10℃にて前記反応液に添加し、0°〜5℃にてさらに30分間撹拌して化合物(VIII)の溶液を得た。
【0102】
別に、マグネシウムマロネート溶液を以下の操作により調整した。p−ニトロベンジルマロネート488.0g(2.04mol)を乾燥ジクロロメタン2740mlに懸濁し、窒素雰囲気下、塩化マグネシウム97.1g(1.02mol)を添加した。さらに、トリエチルアミン206.4g(2.04mol)を乾燥ジクロロメタン183mlで希釈した溶液を、反応液の温度を0°〜10℃に保ちならが添加し、その温度を保ったまま1時間、さらに室温にもどして30分撹拌した。
【0103】
この様にして合成したマグネシウムマロネート溶液を、前記化合物(VIII)の溶液に加え、60°〜65℃で2.5時間反応させた。
【0104】
反応終了後、反応液を室温まで冷却し、1N HCl、水、5%炭酸水素ナトリウム水溶液および飽和食塩水で順次洗浄した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥後ろ過し、化合物(IX)の溶液を得た。
【0105】
この溶液にp−ドデシルベンゼンスルホニルアジド472.4g(1.34mol)のジクロロメタン溶液(ジクロロメタン890ml)を加え、続いて窒素雰囲気下、15°〜25℃にて撹拌しながらトリエチルアミン31.4g(0.31mol)を加えた後、その温度を保ったまま1.5時間撹拌した。
【0106】
反応後、濃縮し、残渣にn−ヘキサンを加えて結晶化させた。結晶をろ取後真空乾燥し、化合物(II−a)の結晶455.6g(収率75.3%)を得た。この結晶は偏光顕微鏡で観察した結果偏光性をもち、結晶であることが確認された。
【0107】
化合物(II−a)の再結晶は以下の方法で行った。すなわち、前述の方法で得られた化合物(II−a)の結晶17.4gを酢酸エチル174mlに溶解後約50mlまで濃縮し、残渣にn−ヘキサン200mlを加えて晶出後ろ過した。結晶をn−ヘキサン20ml×2で洗浄後真空乾燥し、化合物(II−a)の再結々晶11.3g(収率64.9%)を得た。
【0108】
又、再結々晶について粉末X線回折分析を行い、前述の表(I)に記載した特徴的ピークを持つことを確認した。
【0109】
実施例4(化合物(III−a)の合成と結晶化)
【0110】
【化35】
Figure 0003614175
【0111】
クロル炭酸エチル156.2g(1.44mol)を乾燥ジクロロメタン2740mlに溶解し、約−20℃に冷却した。化合物(VII)361.8g(1.20mol)とトリエチルアミン157.9g(1.56mol)のジクロロメタン溶液(ジクロロメタン915ml)を前記の溶液中に、反応液の温度を約−15℃に保ちながら滴加し、反応液を0°〜5℃にて30分間撹拌した。続いてイミダゾール114.4g(1.68mol)を乾燥ジクロロメタン730mlに加えた溶液を、0°〜10℃にて前記反応液に添加し、0°〜5℃にてさらに30分間撹拌して化合物(VIII)の溶液を得た。
【0112】
別に、マグネシウムマロネート溶液を以下の操作により調整した。p−ニトロベンジルマロネート488.0g(2.04mol)を乾燥ジクロロメタン2740mlに懸濁し、窒素雰囲気下、塩化マグネシウム97.1g(1.02mol)を添加した。さらに、トリエチルアミン206.4g(2.04mol)を乾燥ジクロロメタン183mlで希釈した溶液を、反応液の温度を0°〜10℃に保ちながら添加し、その温度を保ったまま1時間、さらに室温にもどして30分撹拌した。
【0113】
この様にして合成したマグネシウムマロネート溶液を、前記化合物(VIII)の溶液に加え、60°〜65℃で2.5時間反応させた。
【0114】
反応終了後、反応液を室温まで冷却し、1N HCl、水、5%炭酸水素ナトリウム水溶液および飽和食塩水で順次洗浄した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥後ろ過し、化合物(IX)の溶液を得た。
【0115】
この溶液にp−ドデシルベンゼンスルホニルアジド472.4g(1.34mol)のジクロロメタン溶液(ジクロロメタン890ml)を加え、窒素雰囲気下、15°〜25℃にて撹拌しながらトリエチルアミン31.4g(0.31mol)を加えた後、その温度を保ったまま1.5時間撹拌した。
【0116】
反応液を濃縮後、得られた残基(化合物(II−a))にメタノール5180mlを加えて溶解し、濃塩酸267ml(3.25mol)を加えて室温(20〜25℃)で1.5〜2.5時間撹拌した。反応終了後、炭酸水素ナトリウムの粉末を加えて中和し、ジクロロメタン5180mlおよび飽和食塩水5180mlを加えて撹拌した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後ろ過し、濃縮した。酢酸エチルを加えてさらに減圧濃縮し、得られた残留物に酢酸エチル675mlを加えて溶解させた。この溶液を室温で1時間撹拌後、n−ヘキサンを加えて結晶化させ、化合物(III−a)の結晶339g(収率72%)を得た。
【0117】
この結晶は偏光顕微鏡で観察した結果偏光性をもち、結晶であることが確認された。又、X線回折分析を行い、前述の表(II)に記載した特徴的ピークを持つことを確認した。なお、X線回折分析には以下の操作で精製・再結晶された試料を用いた。すなわち、前述の方法で得られた化合物(III−a)の結晶20.3gをシリカゲルカラムおよび活性炭を用いて精製した後、酢酸エチル40mlに溶解し、撹拌しながらヘキサン160mlを加えて結晶させた。真空乾燥後、化合物(III−a)の再結々晶17.9g(収率88.3%)を得た。

Claims (2)

  1. (a)式
    Figure 0003614175
    式中、Rはカルボキシル基の保護基を表し、Rは水酸基の保護基を表す、
    で示される化合物のRの水酸基の保護基を脱離し、
    (b)得られる式
    Figure 0003614175
    式中、Rは上記の意味を有する、
    で示される化合物を環化せしめ、さらに、
    (c)得られる式
    Figure 0003614175
    式中、Rは上記の意味を有する、
    で示される化合物をアシル化して当該化合物のオキソ基における反応性誘導体に変えた後、式
    Figure 0003614175
    式中、Xは陰イオン残基を表す、
    で示されるメルカプト化合物と反応せしめることによる式
    Figure 0003614175
    式中、RおよびXは上記の意味を有する、
    で示されるカルバペネム化合物の製造法において、
    工程(a)で得られる化合物(III)および工程(b)で得られる化合物(IV)を単離することなく、工程(a)、(b)および(c)を連続的に行うことを特徴とする製造法。
  2. (b)式
    Figure 0003614175
    式中、Rはカルボキシル基の保護基を表す、
    で示される化合物を環化せしめ、
    (c)得られる式
    Figure 0003614175
    式中、Rは上記の意味を有する、
    で示される化合物をアシル化して当該化合物のオキソ基における反応性誘導体に変えた後、式
    Figure 0003614175
    式中、Xは陰イオン残基を表す、
    で示されるメルカプト化合物と反応せしめることによる式
    Figure 0003614175
    式中、RおよびXは上記上記の意味を有する、
    で示されるカルバペネム化合物の製造法において、
    工程(b)で得られる化合物(IV)を単離することなく、工程(b)および(c)を連続的に行うことを特徴とする製造法。
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