JP3613892B2 - 透明導電膜付き基板 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、錫を含有する酸化インジウム(ITO)多結晶透明導電膜が被覆された基板とその製造方法に関し、とりわけ液晶表示素子などの透明電極に好適に用いられる比抵抗が小さいITO透明導電膜に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、電子のキャリアを増大する方法として、酸化インジウム多結晶膜に錫をドープすることが行われている。この場合透明導電膜の電気抵抗を下げるため、多結晶膜の結晶中へドナーとなる錫のドーピングを有効に行うことが必要である。結晶中に錫を多く含有させ、高導電性に必要な高キャリア密度の膜とするには、蒸着原料の錫濃度を大きくすることにより、電気的に活性なドナーとして働く結晶中への錫の含有量を増加させることが行われていたが、この場合、結晶中に取り込まれないで結晶粒界に偏析する錫の量が多くなり、かえってITO膜の結晶成長が阻害され結晶性が低下し、したがって結晶粒径が小さくなってしまうという問題点があった。蒸発された錫が有効に結晶粒内に含有されずに、結晶粒界に偏析され、低比抵抗を有するITO膜を得ることができなかった。
【0003】
従来技術の錫ドープ酸化インジウムの透明導電膜は、結晶性が低下したことによりキャリアを捕獲する欠陥数が多く形成され、その欠陥にキャリアが捕獲される結果、電気伝導度に有効に寄与するキャリア密度が小さくなり、低比抵抗のITO膜を得ることが困難であった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、従来技術の有していた前述の欠点を解決しようとするものであり、透明で従来に比較してより低い比抵抗を有する透明導電膜およびその製造方法を提供するものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、透明基板上に錫を含有する酸化インジウム多結晶膜が被覆された透明導電膜付き基板であって、前記多結晶膜は、その膜の基板への被覆過程で膜の内部から表面に向かって錫含有量が大となるように結晶成長させられており、膜表面から5nm以内の表面層におけるIn原子数に対するSn原子数の比Aを9.0%以下、膜表面から30nm以上の内部におけるIn原子数に対するSn原子数の比Bを4.2%以上、かつA/Bの値を1<A/B≦1.26としたことを特徴とする透明導電膜付き基板である。
【0006】
本発明の透明導電膜の表面層および膜内部のそれぞれについてのIn原子数に対する錫原子数の比は、ESCA(エレクトロン スペクトロスコピー オブ ケミカルアナリシス)法(測定は、10KV、30mAのMgKαを用いる)により定量分析(In 3d積分強度/Sn 3d積分強度、いずれも感度係数補正済み)して求められる。膜内部の上記原子数の比は、膜表面から約30nmまたはそれ以上の厚みの膜を除去して測定される。また、表面層の原子数の比Aは、膜表面そのものまたは表面から5nm以内の厚みを除去して測定される。
前記表面層のIn原子数に対する錫原子数の比Aを前記内部のIn原子数に対する錫原子数の比Bで割った値は、錫原子の膜表面への、膜が被覆堆積される過程での拡散度合い(A/Bが大きい程、膜内部から表面層へ錫がより多く拡散しながら膜の被覆堆積が行われる)と推測できる。したがって、この値が大きい程、結晶粒の表面を形成している結晶粒界目指して錫がより多く拡散していると考えることができる。本発明者は、結晶粒界への錫の偏析現象と錫の表面からの深さ方向の含有量との関係を鋭意調べた結果、結晶粒内に錫をドープするに際し、できるだけ結晶粒界に入り込む膜の電気抵抗に悪影響を及ぼす錫量を少なくするためには、膜が基板上に堆積するときの結晶成長過程で、膜の表面である結晶粒界への錫の拡散を適度に制御することが必要であることをつきとめ、それには膜の堆積が完了した時点における膜表面のSn濃度と膜内部の錫濃度を特定の値に制御することが重要であることを見いだしたのである。
【0007】
すなわち、膜表面層のIn原子数に対するSn原子数比Aを前記内部のIn原子数に対するSn原子数比Bで割った値が1より大きく1.26以下とすることが必要であること、表面層のIn原子数に対するSnの原子数比が9.0%を越えると結晶中の電子に対する不純物散乱が強まり、キャリア(電子)易動度が低下し、抵抗が大きくなるので好ましくないこと、膜内部の錫の含有量が4.0%より少ないとドナーとして作用するSn原子数が少なくなるため、キャリア密度が少なくなり、抵抗が大きくなることを見い出したのである。
【0008】
結晶粒界は錫の過度の偏析や格子欠陥による歪が、ある限界に達したときにできる。よって、結晶粒界では欠陥が多いため、その部分ではキャリアは捕獲され易くなる。本発明の多結晶膜においては、電気的に活性なドナーとなるSnの多結晶粒内への含有量を多くなるようにされる。すなわち膜が基板上で被覆堆積する過程で、その結晶成長が阻害される錫の結晶粒界への偏析量が少なくなるようにされる。したがって、キャリア密度が大きく、かつ、キャリアが捕獲される確率が少ないため、低抵抗のITO膜とすることができる。
【0010】
【発明の実施の態様】
【実施例1】
図1は、本発明のITOを成膜するのに用いた成膜装置の断面図である。アーク放電プラズマは、アーク放電プラズマ発生源2と底部に永久磁石8を有しアノードとして作用する蒸着材料をその中に入れたハース7との間で、プラズマ発生用直流電源5によってアーク放電を行うことで生成される。かかるアーク放電プラズマ発生源2としては、複合陰極型プラズマ発生装置、又は圧力勾配型プラズマ発生装置、又は両者を組み合わせたプラズマ発生装置が好ましい。このようなプラズマ発生装置については、真空第25巻第10号(1982年)に記載されている。例えば、図2のような装置が挙げられる。複合陰極型プラズマ発生装置は、熱容量の小さい補助陰極17と、ホウ化ランタン(LaB6)からなる主陰極18とを有し、該補助陰極に初期放電を集中させ、それを利用して主陰極を加熱し、主陰極が最終陰極としてアーク放電を行うようにしたプラズマ発生装置である。補助陰極としてはW,Ta,Mo等の高融点金属のパイプ状のものが挙げられる。主陰極18は、円筒19に接して設けられ、補助陰極17は円板状熱シールド22を介して保持されている。円筒19の先端には、タングステンWからなる円板23が設けられている。水冷機構が設けられた陰極支持台20の中心部に設けられた放電ガス導入口21からプラズマ発生用のガスが導入され、そのガスは円板23の開口部を通過して成膜室6内に導かれ、排気口9を経て成膜室6外に排気ポンプにより排気される。また、圧力勾配型プラズマ発生装置とは、陰極と陽極との間に中間電極を介在させ、陰極領域を1torr程度に、陽極領域を10−4Torr以上に保って放電を行うものであり、陽極領域からのイオンの逆流による陰極の損傷がない上に、中間電極のない放電形式のものと比較して、放電電子流をつくり出すためのキャリアガスのガス効率が飛躍的に高く、大電流放電が可能であるという利点を有している。複合陰極型プラズマ発生装置と、圧力勾配型プラズマ発生装置とは、それぞれ上記のような利点を有しており、両者を組み合わせたプラズマ発生装置、即ち、陰極として複合陰極を用いるとともに中間電極も配したプラズマ発生装置は、上記利点を同時に得ることが出来るので本発明で用いるアーク放電プラズマ発生源として好ましい。
【0011】
図1に示すように、放電陰極としてのプラズマ発生源2、永久磁石3を内蔵した第1中間電極11、磁気コイル4を内蔵した第2中間電極12、大口径磁気コイル14を成膜室6の側壁に設置し、成膜室の底部に永久磁石8を下部に設けたハース7を設け、これらを蒸着手段とした。ハース7は放電プラズマ13の陽極として、プラズマ発生源2は陰極として作用する。磁気コイル4により形成された水平磁場によって成膜室6に引き出された放電プラズマ流13を蒸着原料が充填されたハース内に導くために、ハース7の底部に設けた永久磁石8の垂直磁場により、成膜室6内で下方に約90゜に曲げられ、蒸着原料を加熱蒸発する。基体15の背面に基体加熱機構16が設けられている。プラズマ発生用ガスはガス導入パイプ1から導入される。図3(a)は本発明の透明導電膜付き基板51の断面図で、透明基板52の表面に錫を含有する酸化インジウム多結晶膜53が被覆されている。図3(b)は、本発明により得られる多結晶膜の一実施例の結晶状態を示す図で、結晶粒子は結晶粒界によって連結されたように位置している。
【0012】
成膜室6内を真空排気ポンプによって2×10−5Torr以下の圧力に排気した後、カラーフィルター付きガラス基板15を200℃に加熱した状態で、放電ガス導入パイプ1から放電ガスとしてアルゴン(Ar)ガスを約30sccmを導入し、プラズマ発生装置にそれぞれ150Aの電流を供給し、ハ−ス7と永久磁石8により構成された2つの電極との間でアーク放電プラズマを生起させた。図1に示すように、プラズマビームはハースであるアノード電極の真上でハース下に取り付けられた永久磁石により90゜下方に曲げられ蒸着原料を加熱蒸発させる。なお、成膜中は酸素ガスを反応性ガス導入口10より約50sccm導入し、成膜中圧力3.0×10−3Torr、酸素分圧3.0×10−4Torrとした。放電電圧は90Vであった。そして200℃に加熱した基板を一定速度で移動させ、ITO膜を膜厚280nmまで成膜した。蒸発源としてはSn濃度が4.0wt.%であるITO焼結体を用いた。
【0013】
成膜されたITO膜の電気特性を表1に示す。キャリア密度が大きく、低比抵抗を有していた。本実施例で得られた透明導電膜の結晶粒径は700nmと大きかった。表1にESCAによる測定結果を示す。表面層にはIn原子数に対して錫の原子数比が5.1%含有され、表面層から30nm削った内部にはIn原子数に対して錫の原子数比が4.2%含有され、かつ、表面層のIn原子数に対する錫原子数比Aを内部のIn原子数に対する錫原子数比Bで割った値が1.21であった。結晶粒界に偏析したSn濃度が少ないため、結晶成長が阻害されず、結晶粒径は大きくなったと思われる。また、結晶中のドナーとして働くSnが多いため、キャリア密度は高く、1.15×10−4Ω・cmと低比抵抗のITO膜を得ることができた。
【0014】
【実施例2】
蒸着原料をSn濃度が5.0wt.%であるITO焼結体に変えた以外は、実施例1と同じようにして、膜厚280nmの透明導電膜を成膜した。成膜されたITO膜の電気特性を表1に示す。キャリア密度が大きく、低抵抗率を有していた。本実施例で得られた透明導電膜の結晶粒径は650nmと大きかった。表1にESCAによる測定結果を示す。前記表面層にはIn原子数に対して錫の原子数比が6.4%含有され、表面層から30nm削った内部にはIn原子数に対して錫の原子数比が5.3%含有され、かつ、表面層のIn原子数に対する錫原子数比Aを前記内部のIn原子数に対する錫原子数比Bで割った値が1.21であった。結晶粒界に偏析したSn濃度が少ないため、結晶成長が阻害されず、結晶粒径は大きくなったと思われる。また、結晶中のドナーとして働くSnが多いため、キャリア密度は高く、1.05×10−4Ω・cmと低比抵抗のITO膜を得ることができた。
【0015】
【実施例3】
蒸着原料をSn濃度が5.5wt.%であるITO焼結体に変えた以外は、実施例1と同じようにして膜厚280nmの透明導電膜を成膜した。成膜されたITO膜の電気特性を表1に示す。キャリア密度が大きく、低抵抗率を有していた。本実施例で得られた透明導電膜の結晶粒径は600nmと大きかった。表1にESCAによる測定結果を示す。表面層にはIn原子数に対して錫の原子数比が7.1%含有され、前記表面層から30nm削った内部にはIn原子数に対して錫の原子数比が5.8%含有され、かつ、表面層のIn原子数に対する錫原子数比Aを前記内部のIn原子数に対する錫原子数比Bで割った値が1.22であった。結晶粒界に偏析したSn濃度が少ないため、結晶成長が阻害されず、結晶粒径は大きくなったと思われる。また、結晶中のドナーとして働くSnが多いため、キャリア密度は高く、1.15×10−4Ω・cmと低比抵抗のITO膜を得ることができた。
【0016】
【実施例4】
実施例1と同様に蒸着原料をSn濃度が6.0wt.%であるITO焼結体に変えて膜厚280nm成膜した。成膜されたITO膜の電気特性を表1に示す。キャリア密度が大きく、低抵抗率を有していた。本実施例で得られた透明導電膜の結晶粒径は590nmと大きかった。表1にESCAによる測定結果を示す。表面層にはIn原子数に対して錫の原子数比が7.7%含有され、表面層から30nm削った内部にはIn原子数に対して錫の原子数比が6.4%含有され、かつ、表面層のIn原子数に対する錫原子数比Aを内部のIn原子数に対する錫原子数比Bで割った値が1.20であった。結晶粒界に偏析したSn濃度が少ないため、結晶成長が阻害されず、結晶粒径は大きくなったと思われる。また、結晶中のドナーとして働くSnが多いため、キャリア密度は高く、1.25×10−4Ω・cmと低比抵抗のITO膜を得ることができた。
【0017】
【実施例5】
蒸着原料をSn濃度が7.0wt.%であるITO焼結体に変えた以外は、実施例1と同じようにして膜厚280nmの透明導電膜を成膜した。成膜されたITO膜の電気特性を表1に示す。キャリア密度が大きく、低抵抗率を有していた。本実施例で得られた透明導電膜の結晶粒径は550nmと大きかった。表1にESCAによる測定結果を示す。表面層にはIn原子数に対して錫の原子数比が8.9%含有され、表面層から30nm削った内部にはIn原子数に対して錫の原子数比が7.1%含有され、かつ、表面層のIn原子数に対する錫原子数比Aを内部のIn原子数に対する錫原子数比Bで割った値が1.26であった。結晶粒界に偏析したSn濃度が少ないため、結晶成長が阻害されず、結晶粒径は大きくなったと思われる。また、結晶中のドナーとして働くSnが多いため、キャリア密度は高く、1.30×10−4Ω・cmと低比抵抗のITO膜を得ることができた。
【0018】
【実施例6】
実施例2と同様に蒸着原料をSn濃度が5.0wt.%であるITO焼結体を用いて、成膜中の圧力1.5×10−3Torr、酸素分圧0.6×10−3Torrに変えて膜厚280nm成膜した。この時の放電電圧は80Vであった。成膜されたITO膜の電気特性を表1に示す。キャリア密度が大きく、低抵抗率を有していた。本実施例で得られた透明導電膜の結晶粒径は540nmと大きかった。表1にESCAによる測定結果を示す。表面層にはIn原子数に対して錫の原子数比が5.5%含有され、表面層から30nm削った内部にはIn原子数に対して錫の原子数比が4.4%含有され、かつ、表面層のIn原子数に対する錫原子数比Aを内部のIn原子数に対する錫原子数比Bで割った値が1.25であった。結晶粒界に偏析したSn濃度が少ないため、結晶成長が阻害されず、結晶粒径は大きくなったと思われる。また、結晶中のドナーとして働くSnが多いため、キャリア密度は高く、1.22×10−4Ω・cmと低比抵抗のITO膜を得ることができた。
【0019】
【実施例7】
実施例2と同様に蒸着原料をSn濃度が5.0wt.%であるITO焼結体を用い、成膜中の圧力3.5×10−3Torr、酸素分圧1.2×10−3Torrに変えて膜厚280nm成膜した。この時の放電電圧は100Vであった。成膜されたITO膜の電気特性を表1に示す。キャリア密度が大きく、低抵抗率を有していた。本実施例で得られた透明導電膜の結晶粒径は600nmと大きかった。表1にESCAによる測定結果を示す。表面層にはIn原子数に対して錫の原子数比が6.0%含有され、表面層から30nm削った内部にはIn原子数に対して錫の原子数比が4.8%含有され、かつ、表面層のIn原子数に対する錫原子数比Aを内部のIn原子数に対する錫原子数比Bで割った値が1.24であった。結晶粒界に偏析したSn濃度が少ないため、結晶成長が阻害されず、結晶粒径は大きくなったと思われる。また、結晶中のドナーとして働くSnが多いため、キャリア密度は高く、1.22×10−4Ω・cmと低比抵抗のITO膜を得ることができた。
【0020】
【比較例1】
蒸着原料をSn濃度が2.5wt.%であるITO焼結体に変えた以外は、実施例1と同様にして膜厚280nmの透明導電膜を成膜した。成膜されたITO膜の電気特性を表1に示す。キャリア密度は小さく、低抵抗率を有していなかった。本比較例で得られた透明導電膜の結晶粒径は800nmと大きかった。しかし、表面層にはIn原子数に対して錫の原子数比が3.0%含有され、表面層から30nm削った内部にはIn原子数に対して錫の原子数比が2.6%含有され、かつ、表面層のIn原子数に対する錫原子数比Aを内部のIn原子数に対する錫原子数比Bで割った値が1.15であって、結晶粒界に偏析したSn濃度が少ないため、結晶成長が阻害されず結晶粒径は大きいが、結晶中のドナーとして働くSnが少ないため、キャリア密度は低く、1.60×10−4Ω・cmと低比抵抗のITO膜を得ることができなかった。
【0021】
【比較例2】
実施例1と同様な方法で、蒸着原料をSn濃度が8.0wt.%であるITO焼結体に変えて膜厚280nm成膜した。成膜されたITO膜の電気特性を表1に示す。キャリア密度は小さく、低抵抗率を有していなかった。本比較例で得られた透明導電膜の結晶粒径は300nmと小さかった。表1にESCAによる測定結果を示す。表面層にはIn原子数に対して錫の原子数比が10.0%含有され、表面層から30nm削った内部にはIn原子数に対して錫の原子数比が8.2%含有され、表面層のIn原子数に対する錫原子数比Aを内部のIn原子数に対する錫原子数比Bで割った値が1.26であった。結晶中のドナーとして働くSnが多いため、電子の不純物散乱が大きく易動度が小さいため、1.60×10−4Ω・cmと低比抵抗のITO膜を得ることができなかった。
【0022】
【比較例3】
直流スパッタリング法を用いて、ITO膜の成膜を行った。真空槽内を1.0×10−5Torrに排気し、蒸着原料上に設置したカラーフィルター付きガラス基板をヒーターにより200℃に加熱保持した。その後、真空槽内にアルゴンガスと酸素ガスを99:1の割合で導入し、成膜中の圧力3.0×10−3Torrで膜厚280nmを成膜した。蒸着原料としてはSn濃度が10.0wt.%であるITO焼結体ターゲットを用いた。成膜されたITO膜の電気特性を表1に示す。キャリア密度は小さく低抵抗率を有していないことが分かる。本比較例で得られた透明導電膜の結晶粒径は400nmと小さかった。表1にESCAによる測定結果を示す。表面層には、In原子数に対して錫の原子数比が12.8%含有され、表面層から30nm削った内部にはIn原子数に対して錫の原子数比が6.7%含有され、かつ、表面層のIn原子数に対する錫原子数比Aを内部のIn原子数に対する錫原子数比Bで割った値が1.91であった。結晶粒界でのSnの偏析が多いため、結晶成長が阻害され、結晶粒径は小さくなったと思われる。そのため結晶性が阻害され、キャリアの捕獲される確率が高くなり、そこにキャリアが捕獲されるためキャリア密度は少なく、1.70×10−4Ω・cmと低比抵抗のITO膜を得ることができなかった。
【0023】
【比較例4】
実施例2と同様の方法で、蒸着原料をSn濃度が5.0wt.%であるITO焼結体を用いて、成膜中の圧力1.2×10−3Torr、酸素分圧1.0×10−3Torrに変えて膜厚280nmまで成膜した。この時の放電電圧は110Vであった。成膜されたITO膜の電気特性を表1に示す。キャリア密度は小さく、低抵抗率を有していなかった。本比較例で得られた透明導電膜の結晶粒径は350nmと小さかった。表1にESCAによる測定結果を示す。表面層には、In原子数に対して錫の原子数比が10.1%含有され、表面層から30nm削った内部にはIn原子数に対して錫の原子数比が6.4%含有され、かつ、表面層のIn原子数に対する錫原子数比Aを内部のIn原子数に対する錫原子数比Bで割った値が1.60であった。結晶粒界でのSnの偏析が多いため、結晶成長が阻害され、結晶粒径は小さくなったと思われる。そのため、結晶粒界へのSnの偏析が多くなり、結晶性が阻害され、キャリアの捕獲される確率が高くなり、そこにキャリアが捕獲されるため、キャリア密度は少なく、1.62×10−4Ω・cmと低比抵抗のITO膜を得ることができなかった。
【0024】
【比較例5】
実施例2と同様な方法で、蒸着原料をSn濃度が5.0wt.%であるITO焼結体を用いて、成膜中の圧力3.7×10−3Torr、酸素分圧1.0×10−3Torrに変えて膜厚280nm成膜した。この時の放電電圧は69Vであった。成膜されたITO膜の電気特性を表1に示す。キャリア密度は小さく、低抵抗率を有していなかった。本比較例で得られた透明導電膜の結晶粒径は400nmと小さかった。表1にESCAによる測定結果を示す。表面層には、In原子数に対して錫の原子数比が9.0%含有され、表面層から30nm削った内部にはIn原子数に対して錫の原子数比が6.0%含有され、かつ、表面層のIn原子数に対する錫原子数比Aを内部のIn原子数に対する錫原子数比Bで割った値が1.50であった。結晶粒界でのSnの偏析が多いため、結晶成長が阻害され、結晶粒径は小さくなったと思われる。そのため、結晶粒界へのSnの偏析が多くなり、結晶性が阻害され、キャリアの捕獲される確率が高くなり、そこにキャリアが捕獲されるため、キャリア密度は少なく、1.61×10−4Ω・cmと低比抵抗のITO膜を得ることができなかった。
【0025】
【表1】
【0026】
【発明の効果】
本発明の多結晶膜は、成膜過程で膜内部から表面に向かうに従って、膜中のSn含有量が多くなるように制御して成膜されているので、Snの粒界偏析量が少なく結晶性が良い。したがってキャリアをトラップする欠陥が減少するので、高キャリア密度、高易動度を併せ有する。したがって低抵抗率の透明導電膜となる。
【0027】
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施に用いたアーク放電プラズマ蒸着装置の断面図である。
【図2】本発明の実施に用いた複合陰極型プラズマ発生源の詳細断面図である。
【図3】本発明の透明導電膜付き基板の断面図および透明導電膜の詳細図である。
【0028】
【符号の説明】
1・・ガス導入パイプ、2・・アーク放電プラズマ発生源、3・・永久磁石
4・・磁気コイル、5・・プラズマ発生用直流電源、6・・成膜室、
7・・ハース、8・・永久磁石、9・・排気口、
10・・雰囲気調整用ガス導入口、11・・第1中間電極、
12・・第2中間電極、13・・放電プラズマ流、14・・大口径磁気コイル、
15・・基板、16・・基板加熱ヒータ、17・・補助陰極、18・・主陰極、
19・・円筒、20・・陰極支持台、21・・放電ガス導入口、
22・・円板状熱シールド、23・・円板、24・・遮蔽物、
51・・透明導電膜付き基板、52・・透明基板、
53・・錫を含有する酸化インジウム多結晶導電膜、54・・結晶粒子、
55・・結晶粒界
Claims (3)
- 透明基板上に錫を含有する酸化インジウム多結晶膜が被覆された透明導電膜付き基板であって、前記多結晶膜は、その膜の基板への被覆過程で膜の内部から表面に向かって錫含有量が大となるように結晶成長させられており、膜表面から5nm以内の表面層におけるIn原子数に対するSn原子数の比Aを9.0%以下、膜表面から30nm以上の内部におけるIn原子数に対するSn原子数の比Bを4.2%以上、かつA/Bの値を1<A/B≦1.26としたことを特徴とする透明導電膜付き基板。
- 前記多結晶膜のキャリアの易動度が30cm2/V・S以上、キャリア密度が1.5×1021cm−3以上である請求項1に記載の透明導電膜付き基板。
- 前記多結晶膜の厚みが70nm以上である請求項1または2に記載の透明導電膜付き基板。
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