JP3612780B2 - 光フィルタ - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、光通信や光計測等の分野に用いられ、光導波路型回折格子を利用して、所定波長の透過光や反射光をカットする光フィルタに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
光導波路型回折格子は、Ge等を添加した導波路の光誘起屈折率変化を用いて、導波部にブラッグ回折格子を形成したものである。この光導波路型回折格子は、特定波長の光のみを反射する反射フィルタとして利用できるほか、波長制御素子、センサ素子など、広い活用が期待されている。中でも、光導波路として光ファイバを用いたファイバグレーティングは、伝送路として用いられる光ファイバとの接続性もよいため重要となっている。
【0003】
光導波路型回折格子の作成方法としては、導波路の側面より紫外線干渉パターンを投影し、任意の周期で空間的に屈折率変化を形成する方法、例えば、2光束干渉法、位相格子干渉法、プリズム干渉法などが知られている。
【0004】
図2は、2光束干渉法の一例の構成図である。図中、11は光ファイバ、12はレーザ光、13はビームスプリッタ、14,15はミラーである。光ファイバ11は、Ge添加のコアを有したものであり、これに波長240nm付近の光を照射するとコア部の屈折率が上昇する。このような波長の紫外線をレーザ光12として照射する。レーザ光12をビームスプリッタ13によって2分し、それぞれを、ミラー14,15で光ファイバ11の側面に照射する。2分されたレーザ光は、光ファイバ11のコア部分において干渉し、干渉縞をコア部分に照射することになる。光ファイバ11のコア部分は、干渉縞に応じたパターンで屈折率の変化が生じ、回折格子が形成される。
【0005】
図3は、位相格子干渉法の一例の構成図である。図中、11は光ファイバ、12はレーザ光、16は位相格子である。レーザ光12を位相格子を通して光ファイバ11のコアに照射することによって、位相格子16の格子間隔に応じた回折格子を形成することができる。
【0006】
図4は、プリズム干渉法の一例の構成図である。図中、11は光ファイバ、12はレーザ光、17はプリズムである。光ファイバ11は、上述したGe添加のコアを有したものであり、これに紫外線レーザ光12を、プリズム16の1面に照射し、プリズム17内で屈折して生じた干渉縞を、光ファイバ11のコア部分に照射する。光ファイバ11のコア部分は、干渉縞に応じたパターンで屈折率の変化が生じ、回折格子が形成される。
【0007】
また、図2ないし図4で説明した光の干渉を利用して作成される回折格子の格子間隔は等間隔であり、特定の波長において反射特性を示す。
【0008】
このような等間隔の回折格子に対して、チャープトグレーティングが提案されており、例えば、Optical Fiber Communication Conference ’94,postdeadline paper−2、PD2−1〜PD2−4で知られている。
【0009】
図5は、チャープトグレーティングを説明する説明図である。図中、21は波長λの光信号、22は波長λの光信号、23は波長λの光信号、24は波長λの光信号、25は光ファイバである。波長の大小関係は、
λ>λ>λ>λ
である。チャープトグレーティングは、上述した回折格子の反射波長をファイバ長手方向にずらせたもの、すなわち、チャープさせるものである。このチャープトグレーティングにより波長分散を補償することが可能である。このチャープトグレーティングの例では、光ファイバ25は、紫外線光誘起屈折率変化によりコア部の屈折率を変化させたものであり、図示左側から入射された波長λ〜λの各光信号21〜24は、途中で入射側に反射される。すなわち、波長が長いものほど入射側から遠い位置で反射されるように、入射側から右側に向かって屈折率変化であるグレーティングの周期が徐々に大きくなるようにされている。また、これと反対に、入射側から右側に向かって屈折率変化であるグレーティングの周期が徐々に小さくなるようにされたものもある。また、用途によっては、グレーティングの周期は、一方向に増大、または、減少するものに限られず、適宜のパターンで格子間隔の異なる部分が形成されていてもよい。
【0010】
上述した光導波路型回折格子は、チャープトグレーティングを含め、光導波路の光軸に対して直交するように回折格子が形成されている。これに対して、ELECTRONICS LETTERS Vol.29 No.2(1993) pp.154−156には、光導波路の光軸に対して、傾斜した回折格子が形成されたものが記載されており、−4dBのロスを得ている。
【0011】
図6は、傾斜した光導波路型回折格子の作成方法の一例の説明図である。図中、図2と同様な部分には同じ符号を付して説明を省略する。この例では、図2で説明した2光束干渉法を用いている。図2と相違する点は、光ファイバ11が、傾斜角θの角度で傾斜して配置されていることである。上述した文献では、光ファイバ11の傾斜角θを8゜として、レーザ光12による干渉縞を照射している。この干渉縞によるコア部分の照射は、傾斜したコア部分に行なわれるから、形成される回折格子は、光軸に直交する面に対して傾斜したものとなる。上述した文献の例では、回折格子は、光軸と直交する面に対して8゜の傾斜角で形成される。
【0012】
図7は、傾斜した回折格子における反射光の説明図である。光ファイバのコア31における回折格子を1つの反射面として模式的に図示したものが、反射面32である。また、コア中を伝搬する光は、コアとクラッドの界面で反射しながら伝搬するが、ここでは、開口角に等しい角度で伝搬した光33として模式的に図示した。また、光33の波面には言及しないこととする。反射面32が、光ファイバのコア31の光軸と直交する面に対して角度θで傾斜しているとして、この光ファイバの開口角が同じθであるとする。そうすると、光33は、反射面32に直角に当たることになるから、反射光はもとの方向に反射され、ロスとはならない。光軸と平行な光35の反射光35は、2θの角度で反射する。この角度は、開口角より大きいから、クラッドから、光ファイバの外に放射される。したがって、反射面32の角度が開口角に等しい場合には、一部の光の反射光が外部に放射される。反射面32の角度が開口角より小さい場合には、外部に放射される反射光は減少する。また、反射面32の角度が開口角より大きい場合には、反射光は、全ての反射光が外部に放射される。しかし、仮想した反射面は、完全反射の条件を満たすような屈折率ではないから、透過光も生じる。
【0013】
コア内を伝搬した光のうちの反射条件を満足した波長の光が、傾斜した回折格子で全て反射して光ファイバの外部に放射されれば、光ロスフィルタとしては完全であるが、これを実現することはできない。回折格子の屈折率差を大きくし、また、回折格子の数を多くすることによって多重反射をさせて、損失比を増大させることができるが、せいぜい−20dB程度までである。望ましい損失比としては、−40dBを満足させる光ロスフィルタの実現は困難である。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたもので、損失比の大きい光フィルタを実現することを目的とするものである。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明は、請求項1に記載の発明においては、光フィルタにおいて、光導波路の光導波部に屈折率変化を生じさせた少なくとも2つの光導波路型回折格子を有し、少なくとも1つの光導波路型回折格子は、前記光導波路の光導波部の光軸に対して直交する光導波路型回折格子であり、他の少なくとも1つの光導波路型回折格子は、前記少なくとも1つの光導波路型回折格子に対して透過光の進行方向の手前側に配置されかつ前記光導波路の光導波部の光軸に対して傾斜する光導波路型回折格子であることを特徴とするものである。
【0016】
請求項2に記載の発明においては、請求項1に記載の光フィルタにおいて、前記光導波路の光導波部の光軸に対して傾斜する光導波路型回折格子の傾斜角度が、前記光軸に直交する面に対して前記光導波路の開口角以上であることを特徴とするものである。
【0017】
請求項3に記載の発明においては、請求項1または2に記載の光フィルタにおいて、光フィルタ内の前記光導波路型回折格子の透過減衰量の総和が40dB以上であることを特徴とするものである。
【0018】
請求項4に記載の発明においては、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の光フィルタにおいて、前記光導波路型回折格子がチャープトグレーティングであることを特徴とするものである。
【0019】
【作用】
本発明は、請求項1に記載の発明によれば、少なくとも2つの光導波路型回折格子を有する光フィルタのうち、少なくとも1つの光導波路型回折格子は、前記光導波路の光導波部の光軸に対して直交する光導波路型回折格子であり、反射部として作用する。また、他の少なくとも1つの光導波路型回折格子は、前記光導波路の光導波部の光軸に対して傾斜する光導波路型回折格子であり、損失部として作用する。損失部を反射部の透過光の進行方向の手前側に配置することによって、回折格子の反射条件を満たす波長の光は、透過光は、損失部の損失比と反射部の反射比の合計値によって減衰される。また、反射光は、損失部を往復することにより、損失部の損失比の2倍の損失比と反射部の反射損失の合計値によって減衰される。
【0020】
請求項2に記載の発明によれば、光導波路の光導波部の光軸に対して傾斜する光導波路型回折格子の傾斜角度が、光軸に直交する面に対して光導波路の開口角以上であることにより、損失比を大きくできる。
【0021】
請求項3に記載の発明によれば、光フィルタ内の前記光導波路型回折格子の透過減衰量の総和が40dB以上であることにより、実用上、問題なく、特定の波長成分を減衰させることができる。
【0022】
請求項4に記載の発明によれば、光導波路型回折格子がチャープトグレーティングであることにより、波長帯域の広い光フィルタを実現できる。
【0023】
【実施例】
図1は、本発明の光フィルタの一実施例の概略構成図である。図中、1は光ファイバ、2は損失部、3は反射部、4は入射光、5は透過光、6は反射光である。この実施例では、光ファイバ1に、2つの光導波路型回折格子を形成した。1つは、光ファイバ1の光軸に対して傾斜する光導波路型回折格子が形成されたもので、損失部2である。他の1つは、光ファイバ1の光軸に対して直交する光導波路型回折格子が形成されたもので、反射部3である。損失部2は、反射部3に対して、入射光4の透過光の進行方向の手前側に配置されている。
【0024】
2つの光導波路型回折格子の格子定数は同じであり、ともに波長λの光を反射させるものである。損失部2においては、波長λの光は、回折格子で大部分が反射され、光ファイバ1の外部に放射され、ロスさせることができる。反射部3においては、波長λの光は、回折格子で大部分が反射され、光ファイバ1のコア内を反射して伝搬する。
【0025】
損失部2の波長λの損失比を−20dB程度に作成することができる。また、反射部3における波長λの反射損失を0.04dB程度とする。そうすると、波長λの入射光4が0dBmとすると、損失部2と反射部3で−20dBずつ減衰され、透過光5は、−40dBmとなる。また、反射光6は、損失部2を往復することにより−40dB減衰され、反射部3の反射損失−0.04dBが加えられて、−40.04dBmとなる。
【0026】
この実施例における損失部2と反射部3の光導波路型回折格子は等間隔のものを用いたが、チャープトグレーティングのものを用いることができる。この場合には、光フィルタで、広い帯域の波長成分を減衰させることができる。
【0027】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、損失比の大きい光フィルタを実現することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の光フィルタの一実施例の概略構成図である。
【図2】2光束干渉法の一例の構成図である。
【図3】位相格子干渉法の一例の構成図である。
【図4】プリズム干渉法の一例の構成図である。
【図5】チャープトグレーティングを説明する説明図である。
【図6】傾斜した光導波路型回折格子の作成方法の一例の説明図である。
【図7】傾斜した回折格子における反射光の説明図である。
【符号の説明】
1…光ファイバ、2…損失部、3…反射部、4…入射光、5…透過光、6…反射光。

Claims (4)

  1. 光導波路の光導波部に屈折率変化を生じさせた少なくとも2つの光導波路型回折格子を有し、少なくとも1つの光導波路型回折格子は、前記光導波路の光導波部の光軸に対して直交する光導波路型回折格子であり、他の少なくとも1つの光導波路型回折格子は、前記少なくとも1つの光導波路型回折格子に対して透過光の進行方向の手前側に配置されかつ前記光導波路の光導波部の光軸に対して傾斜する光導波路型回折格子であることを特徴とする光フィルタ。
  2. 前記光導波路の光導波部の光軸に対して傾斜する光導波路型回折格子の傾斜角度が、前記光軸に直交する面に対して前記光導波路の開口角以上であることを特徴とする請求項1に記載の光フィルタ。
  3. 光フィルタ内の前記光導波路型回折格子の透過減衰量の総和が40dB以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の光フィルタ。
  4. 前記光導波路型回折格子がチャープトグレーティングであることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の光フィルタ。
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