JP3612098B2 - ディスクバルブ - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は水栓や湯水混合栓等に用いられるディスクバルブに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
水栓や湯水混合栓等に用いられるディスクバルブは、2枚の円盤状の弁体を互いに摺接した状態で相対摺動させることによって、各弁体に形成された流体通路の開閉がなされる。例えば、水栓や湯水混合栓として使用されているフォーセットバルブは図2に示されるように、固定弁体30と可動弁体20を互いの摺接面21、31で接した状態にしておき、レバー40の操作で、可動弁体20を動かすことによって互いの弁体20、30に形成した流体通路22、32の開閉を行い、供給流体の流量調整をするようになっていた。
【0003】
そして、上記可動弁体20及び固定弁体30は、摺動性やシール性を保つために高い寸法精度が要求される上、互いに絶えず摺り合わされるために、摩耗が激しく、また、常に流体にさらされるために腐食も激しいことから、近年、高精度に加工されることが可能であり、耐摩耗性や耐触性に優れたセラミックスにより形成されるようになってきた。
【0004】
ところで、摺動性とシール性は相反するものであり、シール性を高めるために、摺接面を極めて平滑な面とし、これらの摺接面を持った一対の弁体同士を摺り合わせると、引っかかりや異音が発生し、さらには互いの弁体が張り付いて動かなくなるというリンキング(凝着)が生じることがあった。また、リンキングまでに至らなくても、操作回数を重ねるにつれ、次第にレバー操作力が上昇して行くことも知られていた。
【0005】
そこで、このリンキングを防ぐために、様々な解決策が提案されている。例えば、弁体を三次元網目構造の多孔質セラミックスとし、この開気孔中に潤滑材として樹脂やオイル等を含浸させたものがある(特開昭61−206875号、特開昭61−244980号、特開昭62−4949号、特開昭62−37517号、特公平5−50475号等各公報参照)。
【0006】
また、この様な液体潤滑材を用いたもの以外にも、固体潤滑材を使ったものとして、特開平1ー261570号公報に「摺動面にダイアモンド状カーボン薄膜を形成したメカニカルシール」に係わる発明が、特開平3ー223190号公報に「アモルファスダイアモンド薄膜を形成したセラミック製摺動部構造」に係る発明がそれぞれ開示されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
上記三次元網目構造の多孔質セラミックスに液体潤滑材を含浸させた摺動部材では、その液体潤滑材としてエンジン油、スピンドル油、ダイナモ油、タービン油、フッ素系オイル、シリコーン系オイル等が採用されている。しかし、この摺動部材を水栓、湯水混合栓等に適用すると、上記の潤滑材が人体に取り込まれる可能性が高く、人体に対して害となる恐れがあるという問題点があった。また、このような摺動部材は製造が困難で、摺動面の硬度が低いという不都合もあった。
【0008】
一方、特開平3ー223190号公報等にて開示されているアモルファスダイアモンドや合成疑似ダイアモンドなど、いわゆる非晶質硬質炭素膜をコーティングした摺動部材では、確かに操作力の改善が図られ、軽快な操作力を得ることができる場合もあるが、その操作力にはバラツキがあり、長期使用中にしだいに操作力が上昇していくなど安定性に欠けるものであった。
【0009】
これは、上記非晶質硬質炭素膜が主として非晶質な構造から構成されていることは明らかでも、それ以上の詳細な内部構造についての管理がされていなかったためである。すなわち、摺動性に最も影響を及ぼす非晶質硬質炭素膜の内部構造の評価が未確立であったために、様々な構造の非晶質硬質炭素膜を持つディスクバルブが混在したまま製品として使われ、この結果が当然ながら摺動性のバラツキとなって表れていたのである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
以上のような問題に鑑みて、本発明は母材表面に非晶質硬質炭素膜を被着して摺接面を形成したディスクバルブにおいて、上記非晶質硬質炭素膜は、レーザーラマン分光法によるラマンスペクトルのピークが1200〜1400cm−1と1500〜1600cm−1の少なくとも一方の範囲にあり、上記ピークは平坦部分に対する強度比が2倍以上であり、かつ上記ピークにおける最大強度の90%の頂部の幅が10cm−1以上となるようにしたものである。
【0011】
【実施例】
以下本発明の実施例を図によって説明する。
【0012】
図1は、本発明のディスクバルブの一例であるフォーセットバルブを構成する弁体のみを示している。可動弁体20はセラミックスからなる円盤状体で流体通路22を有し、一方の面を摺接面21としてある。また、固定弁体30はセラミックスからなる円盤状体で、流体通路32を有し、一方の面に非晶質硬質炭素膜34を形成して摺接面31としてある。
【0013】
そして、これら固定弁体30と可動弁体20が互いの摺接面21、31で接した状態としておいて、可動弁体20を動かすことによって、互いの弁体に備えた流体通路22、32の開閉を行い、供給流体の開閉、調整などの制御をするようになっている。
【0014】
この時、固定弁体30の摺接面31が非晶質硬質炭素膜34から成るため、摺動性、耐摩耗性が高く、レバーによる可動弁体20の操作力を低くすることができる。
【0015】
また、上記固定弁体30や可動弁体20を形成する材質としては、ヤング率が21000〜45000kg/mm、ビッカース硬度(Hv)が1000kg/mm 以上であるような極めて硬く変形しにくいセラミックスを用い、具体的にはアルミナ、ジルコニア、窒化珪素、炭化珪素、窒化アルミニウムを主成分とするセラミックスが最適である。
【0016】
アルミナであればSiO、MgO等、窒化珪素に対しては周期律表2a、3a族元素の酸化物又は窒化物、炭化珪素に対してはC、B、Al等、ジルコニアに対してはY、CaO、MgO、CeO等を添加して焼成すれば良く、実質的に3%以上の収縮を伴うことによって強固で堅牢かつ靱性および耐摩耗性に優れたセラミックスを得ることができる。そして、固定弁体30側は、得られたセラミックスに対して摺接面を研磨した後、非晶質硬質炭素膜34をコーティングすれば良い。
【0017】
ここで、上記非晶質硬質炭素膜(別名:合成疑似ダイヤモンド薄膜、ダイヤモンドライクカーボン、DLC、I−カーボン)とは、PVD法やCVD法などの薄膜形成手段によって得られる炭素膜のことをいい、その極めて低い摩擦係数により良好な摺動性が得られるものである。また、この非晶質硬質炭素膜はビッカース硬度(Hv)が3000〜5000kg/mmであるなど、非常に高い硬度もあわせ持っている。
【0018】
ところで、この非晶質硬質炭素膜は元素で言えばダイヤモンド等と共に炭素(C)として包括され、比重で言えば黒鉛や無定形炭素に近く、硬度など物性的にはダイヤモンドに近似しているという特徴を持つ。ゆえに、元素分析や比重、硬度、絶縁性、屈折率などの測定による分類は困難とされている。
【0019】
そして、CVD法やPVD法などの気相合成法によれば、上記非晶質硬質炭素膜はもちろんのこと、無定形炭素やグラファイトなどの各種結晶質カーボン、さらにはダイヤモンドさえまでもが形成可能なために、得られた膜の特定が困難で、品質管理をしにくいといった欠点があった。
【0020】
したがって、このような炭素膜の識別を行うためには、炭素膜の内部構造に敏感に反応するような分析方法が必要であり、本発明ではレーザー分光分析法を用いることにした。つまり、レーザーラマン分光分析法とはラマンスペクトルを測定することによって、材料の構造や結晶性等を詳細に分析できる手法であり、そのため好ましい特性を持った非晶質硬質炭素膜を特定することができるのである。
【0021】
なお、上記ラマンスペクトルとは次に示すようなラマン散乱光を観測したものである。即ち、試料にレーザー光を照射すると、光の電場のために原子や電子の電子分布がひずみ、原子や分子の分極が生じる。この分極が試料中に存在する格子振動等によって変調されると、電子分極はレーザー光と同じ振動数の光(レーリー光)の他に、異なる振動数をもつ非弾性散乱光を持つようになり、これをラマン散乱光というのである。
【0022】
そして、本発明者等が種々実験を行った結果、上記非晶質硬質炭素膜をレーザーラマン分光法により分析した時のラマンスペクトルのピークが、以下に示す条件を満たすようにすれば良いことを見出したのである。
【0023】
即ち、本発明の非晶質硬質炭素膜のラマンスペクトルの好適な例のチャート図を図3に示すように、ピークは1200〜1400cm−1と1500〜1600cm−1の少なくとも一方の範囲に存在し、最も高い強度のピークにおいて、ピーク強度Iはピーク以外の平坦部の強度Iに対する強度比I/Iが2倍以上となっており、かつ上記ピークにおける最大強度Iの90%以上の範囲を頂部とした時、最大強度Iの90%の頂部の幅dが10cm−1以上となるようなブロードなピークとなっていれば良いのである。そして、このようなブロードなピーク形状を有する非晶質硬質炭素膜は、摺動時に炭素膜が剥離することなく、しかも極めて滑らかな摺動性を得られるのである。
【0024】
ちなみに、各種炭素材料にレーザーラマン分光分析を行った時のラマンスペクトルを図4に示す。図4(a)に示すようにダイヤモンドでは1331cm−1に極めてシャープなピークが観測され、また完全なグラファイト構造(無限の平面リング構造)をしているHOPG(Highly Oriented Pyrolytic Graphite)では図4(b)のように1581cm−1付近に単一のシャープなピークを示し、グラファイト構造が乱れて結晶子の大きさが200Å程度となった熱分解炭素(PG:Pyrolytic Graphite)では図4(c)のように1355cm−1にもピークがあらわれる。
【0025】
これら図4に示すピークは、いずれも最大強度の90%の位置における頂部幅が10cm−1よりも小さい、極めてシャープなピークである点で、上記本発明の条件を満たしていない。そのため、これらのHOPGやPGなどのグラファイト、あるいはダイヤモンドのラマンスペクトルを示す炭素膜をセラミックス製の固定弁体30に形成し、セラミックス製の可動弁体20と組み合わせて摺動させると、膜が剥離したり、短期間で操作力がアップしたりしやすく、必要な摺動性を得ることが困難となる。
【0026】
なお、本発明のディスクバルブにおいて、非晶質硬質炭素膜を形成する母材表面の平坦度は3μm以下、好ましくは1μm以下とし、また表面粗さ(中心栓平均粗さ:Ra)は0.5μm以下が望ましい。これは、平坦度が3μmを超えるか又は表面粗さ(Ra)が0.5μmを超えるとリークの恐れが生じるためである。また、非晶質硬質炭素膜の膜厚Tは0.1〜2.0μmの範囲が望ましい。これは、膜厚Tが0.1μmより小さいと長期的な摺動によって膜が摩滅してなくなってしまう恐れがあり、一方膜厚Tが2.0μmより大きいと膨大な成膜時間を要し、実用的でなくなるためである。
【0027】
実際に、非晶質硬質炭素膜の膜厚Tを種々に変化させた時の、製作性と10万回摺動試験を行った後の耐久性について評価したところ、表1に示すように膜厚Tが0.1〜2.0μmの範囲内であれば、製作性、耐久性の両方を満足できることがわかる。
【0028】
【表1】
Figure 0003612098
【0029】
以上の実施例では、ディスクバルブを構成する固定弁体30に非晶質硬質炭素膜34を形成したものを説明してきたが、可動弁体20側に非晶質硬質炭素膜を形成して、固定弁体30側はセラミックス単体で形成しても良い。あるいは可動弁体20と固定弁体30の両方に非晶質硬質炭素膜を形成すればさらに好適である。
【0030】
また、非晶質硬質炭素膜34と摺動する相手材としては、上記実施例ではセラミックスと摺動する例を示したが、金属材や樹脂材等を相手材としても好適な摺動性を示すことができる。
【0031】
さらに、上記実施例では平面同士を摺動させるディスクバルブの例を示したが、この他に摺動面が円筒状や球面状等となったものでも本発明のセラミックス摺動部材を適用することもできる。
【0032】
したがって、本発明のセラミックス摺動部材は、ディスクバルブに限らず、ボールバルブやその他の各種弁部材、あるいはメカニカルシール、軸受、スライダーなど様々な用途に用いることができる。
【0033】
実験例次に、本発明に係るディスクバルブを図1のフォーセットバルブに例をとり、実験した結果を説明する。
【0034】
フォーセットバルブを構成する固定弁体30は、純度96%のアルミナ粉末を出発原料とし、これに0.5重量%のSiOと0.2重量%のMgOとCaOを添加し、さらにバインダーを加え、24時間攪拌後、スプレードライし、まず平均粒子径3.7μmのアルミナ造粒体を得た。この造粒体を金型プレスによって円盤形状に成形した後、酸化雰囲気中で約1600℃の焼成温度にて焼成し、研削加工と研磨加工を施して、表面に非晶質硬質炭素膜34のコーティングを施すことにより、直径5mmの流体通路32を有し、外径32mm、厚み5mm、平坦度1μm以下の固定弁体30を得た。
【0035】
なお、固定弁体30側の非晶質硬質炭素膜34の形成については次のような方法で行った。すなわち、まず10Pa程に減圧した真空チャンバー内のタングステンヒータを備えた基板に固定弁体30を取り付け、メタン(CH)ガスと水素(H)ガスを導入しながら、チャンバー内に組まれた電極間にマイクロ波(周波数2.45GHz)を印加する。すると、メタンガスはプラズマ分解し、固定弁体30がセットされている基板上に堆積し、炭素(C)からなる膜が得られるのである。
【0036】
このようなマイクロ波プラズマCVD法によって、固定弁体30の表面には炭素成分の膜を得ることができるが、ここでタングステンヒータによって加熱する基板の温度を常温〜800℃の間で変化させたり、ガスの流量Qを1〜30cc/分の間で変化させたり、あるいは真空度Pを0.01〜6000Paの間で変化させる等、成膜条件を広範囲に変化させることによって、様々な炭素構造をとる膜を形成した。
【0037】
そして、このようにして得られた炭素膜に対してレーザーラマン分光分析を行ったところ、図5〜8に示すように、それぞれ固有のラマンスペクトルを持つNo.1〜11の11種類の膜が得られた。
【0038】
なお、このときのレーザーラマン分光分析装置の測定条件は、レーザー波長488nm、中心波数1400cm−1、露光時間0.5秒、積算時間100回としたが、この条件以外でも1200〜1600cm−1付近のラマンスペクトルが精度良く測定できればかまわない。
【0039】
一方、これらの炭素膜をその他の方法で分析したところ、X線マイクロアナライザーを使った元素分析ではいずれも炭素(C)しか検出されず、全ての膜が炭素成分で成り立っているという以上何もつかめなかった。また、同様に比重、電気抵抗、硬度の測定装置、さらにはX線回折や透過型電子顕微鏡を用いても、上記のようにラマンスペクトルで分類された11種類の炭素膜を明確に識別することは不可能であった。したがって、レーザーラマン分光法を用いることにより、各種炭素膜をより厳密に分析できることがわかった。
【0040】
なお、図5〜8に示すレーザラマン分光分析で得られた11種類のラマンスペクトルにおいて、No.1の1331cm−1にシャープなピークが観測されるものはダイヤモンドであり、No.2の1581cm−1付近に単一のシャープなピークを示すものは完全なグラファイト構造(無限の平面リング構造)をしているHOPG(Highly Oriented Pyrolytic Graphite)であり、No.3の1581と1355cm−1にシャープなピークを示すものは熱分解炭素(PG:Pyrolytic Graphite)であることは知られているが、その他の膜構造解析については現在まで明解な見解は得られていない。
【0041】
しかし、材質名は特定できないにしても、レーザーラマン分光分析法を用いれば炭素膜を非破壊、非接触で、その場で直ちに測定可能なうえ、高分解能といった特長を持っている。そのため、レーザーラマン分光分析による製品評価は、摺動性など製品特性と相関が得られれば、理想的な品質管理体制を確立でき、品質維持には欠かせない評価方法となり得ることがわかる。
【0042】
一方、可動弁体20としては、固定弁体30と同じアルミナセラミックス単体で構成し、直径5mmの流体通路22を有し、外径25mm、厚み7mm、摺接面21の平坦度1μm以下とした。
【0043】
そして、図2に示すように、上記可動弁体20およびNo.1〜11の各種炭素膜を備えた固定弁体30を互いの摺接面21、31が摺動するようにケーシングによって軸力30kgfで押さえつけながら給水栓にセットし、80℃の温水を1kg/cmの圧力で注入し、レバー40を操作することにより出湯量を制御可能なフォーセットバルブを製作した。
【0044】
このようなフォーセットバルブに対し、可動弁体20をレバー40によって摺動させる試験を20万回行い、その後、可動弁体20を摺動させるときに必要なレバー40の押し付け力をプッシュプルゲージで測定し、操作力とした。
【0045】
結果は表2に示す通りである。この結果より、ダイヤモンド、HOPG、PGからなるNo.1〜3の炭素膜を備えたものでは、ピークにおける最大強度の90%の位置での幅が10cm−1未満とシャープなピークであるため、滑らかな操作力の基準である0.6kg以下の摺動性を20万回以上の長期にわたって満たすことができなかった。
【0046】
またNo.4、5の炭素膜はピークの位置が本発明の範囲内になく、しかもシャープなピークであり、さらにNo.6〜8の炭素膜は平坦部に対するピークの最大強度の比が2倍未満であることから、いずれも0.6kg以下の摺動性を20万回以上の長期にわたって満たすことができなかった。
【0047】
これに対し、本発明実施例であるNo.9〜11の炭素膜は、ラマンスペクトルのピークが1200〜1400cm−1と1500〜1600cm−1の少なくとも一方の範囲にあり、ピークの平坦部分に対する強度比が2倍以上であり、かつ上記ピークにおける最大強度の90%の位置での幅が10cm−1以上であるブロードなピーク形状を有していることから、0.6kg以下の摺動性を20万回以上の長期にわたって満たすことができた。
【0048】
【表2】
Figure 0003612098
【0049】
【発明の効果】
以上のように、本発明によれば、レーザーラマン分光法によるラマンスペクトルのピークが1200〜1400cm−1と1500〜1600cm−1の少なくとも一方の範囲にあり、上記ピークは平坦部分に対する強度比が2倍以上であり、かつ上記ピークにおける最大強度の90%以上の頂部の幅が10cm−1以上であるような非晶質硬質炭素膜を形成してディスクバルブを構成したことによって、長期間にわたって優れた摺動性と耐摩耗性を維持することの可能なディスクバルブを得ることができる。また、本発明によれば、レーザーラマン分光法によって非晶質硬質炭素膜の結晶構造を管理できることから、バラツキがなく安定した特性の摺動部材を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の摺動部材を用いたフォーセットバルブの弁体のみを示しており、(a)は斜視図、(b)は(a)中のX−X線断面図である。
【図2】一般的なフォーセットバルブを示す概略斜視図である。
【図3】本発明の摺動部材における非晶質硬質炭素膜のラマンスペクトルを示すチャート図である。
【図4】比較例である炭素膜のラマンスペクトルを示すチャート図である。
【図5】各種炭素膜のラマンスペクトルを示すチャート図である。
【図6】各種炭素膜のラマンスペクトルを示すチャート図である。
【図7】各種炭素膜のラマンスペクトルを示すチャート図である。
【図8】各種炭素膜のラマンスペクトルを示すチャート図である。
【符号の説明】
20:可動弁体
30:固定弁体
21、31:摺接面
22、32:流体通路
34:非晶質硬質炭素膜

Claims (1)

  1. 母材表面に非晶質硬質炭素膜を被着して摺接面を形成したディスクバルブにおいて、上記非晶質硬質炭素膜は、レーザーラマン分光法によるラマンスペクトルのピークが1200〜1400cm−1と1500〜1600cm−1の少なくとも一方の範囲にあり、上記ピークは平坦部分に対する強度比が2倍以上であり、かつ上記ピークにおける最大強度の90%の頂部の幅が10cm−1以上であることを特徴とするディスクバルブ
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