JP3611767B2 - 光重合性組成物、その組成物を用いた光機能性膜およびその光機能性膜の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、光重合によって微細パターンの形成を可能とする成分を含有する光重合性組成物、この光重合性組成物により作製される光機能性膜およびその光機能性膜の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
TN(Twisted Nematic) 液晶素子は、安定した表示性能、アクティブおよびパッシブマトリクスのいずれの方式にも適用が容易であるという利点に加えて、ノート型のパーソナルコンピュータなどの低消費電力を要求される製品にも適していることから、液晶表示素子の主流となっている。しかしながら、TN型液晶表示素子は、明状態と暗状態との表示制御を行うために偏光板を用いる必要があるため、入射光の多くが偏光板で遮られて損失となるといった問題を有している。
【0003】
このため、偏光板を用いない液晶表示素子への期待が高まっている。その中でも、高分子分散型液晶は、光利用効率が高いために有望視されている。高分子分散型液晶素子としては、例えば、伊達他、通信学会技報、Vol. 95, No 526, p131 (1996)に開示された液晶表示素子が挙げられる。この文献には、高分子層と液晶層とが交互に積層され、高分子層および液晶層が、基板に平行な平面構造、あるいは基板からある方向に傾斜した平面構造を持つHPDLC(ホログラフィック高分子分散型液晶)を用いた反射型液晶表示素子の作製について記載されている。
【0004】
このような反射型液晶表示素子は、その上に透明電極が形成されている一対のガラス基板間に、干渉露光法によってある波長に対応する層間隔で、高分子層と液晶層とが交互に積層された構造のHPDLC層(パターン)の形成後、裏面側に光吸収層が配置されるという工程で作製される。そして、この反射型液晶表示素子においては、マトリックスアレイ化された各画素の明状態と暗状態とが印加電圧によって制御される。
【0005】
各画素において、基本的な表示の原理は次のように説明される。透明電極間に電圧が印加されない場合、高分子層と液晶層との間に屈折率差が生じている。このため、HPDLC層における高分子層と液晶層との間隔に対応した波長の光だけが、ブラッグ反射の原理によってHPDLC層で反射される一方、他の波長の光はHPDLC層を透過して裏面の光吸収層で吸収される。したがって、このときの表示は明状態である。
【0006】
一方、透明電極間に電圧が印加される場合、液晶層の屈折率が変化して高分子層と液晶層との間の屈折率差がなくなる。このとき、ブラッグ反射が生じないので、表示面から入射する光の全てがHPDLC層を透過し、裏面の光吸収層で吸収される。したがって、このときの表示は暗状態である。
【0007】
このような用途では、高分子材料部分を従来のフォト工程により予め形成したり、高分子分散型液晶の形成のように、光重合反応により液晶と高分子とを相分離する手法で形成される。これらの作製方法では、いずれも、重合により形成される高分子をある特定の屈折率を持った媒体として、電界で屈折率が変調可能な材料である液晶を、小さな液滴またはある大きさを持った塊として扱っている(特公平7−62742号公報、SID ’95 Digest, 579 (1995)などを参照)。このように、液晶を1つの塊として区切るために高分子材料が用いられている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
前述の従来の技術には、いくつかの問題がある。例えば、高分子の形状を予め形成する方法では、未反応成分を取り除く工程が必要であるという問題や、形成された高分子構造物の形状、パターンのシャープさ、形成された高分子表面での結晶配向制御性における問題などが挙げられる。また、干渉光のような周期的に強度が変化する照射系でパターン(周期構造)を形成する方法では、重合反応が光によって引き起こされるだけでなく、反応過程で生じる化学種の拡散現象の影響を受け、光の照射による高分子の空間的特性(密度、屈折率、配光性等)の変化が小さくなる。この結果、液晶/高分子複合デバイスとして十分な効率を引き出すことができなくなる。これは、開始、連鎖、停止という重合反応の一連のメカニズムそのものが反応系で起こる現象に起因している。
【0009】
マスク露光や干渉露光法において、反応光の非照射部では光による直接のラジカルの発生はないが、光照射部から拡散してくるラジカル種によってラジカル重合が起こる。この非照射部で発生するラジカル重合を制御できないため、マスク露光や干渉露光法のいずれにおいても、光強度の高い部位と低い部位とでの高分子状態の相違を大きくすることが困難であった。
【0010】
本願出願人は、このような不都合を解消するための技術を、先に出願した特願平10−183000号にて記載している。この技術では、重合反応サイクル中の連鎖反応部分の反応性を、重合遅延剤を添加して制御することにより、非照射部での反応性を低下させて微細な構造を形成することができる。従来、重合遅延剤は、重合性化合物を保存する際に材料の自発的な重合反応の進行を防ぐために添加されている。しかしながら、上記の技術においては、重合遅延剤を、重合反応の制御のためにではなく、微細構造形成のための具体的な手法として用いている。
【0011】
また、光強度の高い部分と低い部分との高分子状態に大きな特性の変化を生じさせるために、重合開始剤の反応性を向上させる方法が特開平11−2802号公報に開示されている。この方法では、重合開始剤の反応性を向上させるために増感色素として機能する色素材料の添加を採用している。しかしながら、この方法は、重合自体を活発化するものの、微細な高分子分布構造を形成することは難しい。
【0012】
一方、作製された高分子および液晶からなるHPDLC層を用いた素子では、画素の明状態と暗状態とが印加電圧によって制御されるが、電圧印加時に重合した高分子の構造が動いたり崩れたりして信頼性の高い素子が得られないという問題もある。
【0013】
さらに、HPDLC層パターンを用いたカラー表示のためには、R,G,Bに相当する波長である各450、550、650nm付近に露光干渉ピッチを合わせる必要があり、露光用入射光の波長もそれに追従するように長くする必要がある。現実には、材料による長波長化が難しいため、別の手段として、短波長の光を大きな入射角(60°〜80°程度)で露光するオフアクシス露光(二光束干渉露光)などを採用することが考えられる。
【0014】
しかしながら、オフアクシス露光では、波長毎の入射角の制約から、R、G、Bの各々の反射角度を一致させることができない。そのため、現実的なデバイスとして、周囲光の入射に対してR、G、Bの反射方向が異なり、表示画素が持つべき加法混色が成り立たなくなる。例えば、青色反射機能を有する液晶/高分子複合デバイスを作製するために、重合開始剤(感度波長360nm)を添加することによって、高分子の一般的な反応波長である350nmに近い露光波長(Arレーザ,364nm)を用いてみたが、高分子層と液晶層とが交互に積層された構造のHPDLC層は得られなかった。また、前述のように、短い露光波長(364nm)を用いる場合、長波長域の赤を反射するホログラム(650nm程度のピッチ)を作製するには、90°近傍(80°を越える)といったかなり大きな入射角で光を入射させる必要があるため、技術的には困難である。このため、液晶/高分子複合デバイスにオフアクシス等の光学機能性を付与することが不可能であり、作業の容易性、効率性などが良くなかった。
【0015】
本発明は、従来の上記の問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、高分子層と液晶層とが交互に積層された構造のHPDLC層を長波長光による露光で容易に作製できる材料としての光重合性組成物、その光重合性組成物によって形成されるHPDLC層すなわち光機能性膜、およびその光機能性膜の製造方法を提供することにある。
【0016】
【課題を解決するための手段】
本発明の光重合性組成物は、上記の課題を解決するために、重合開始剤、増感色素、少なくとも1種類の重合性化合物および少なくとも1種類の重合遅延剤を含み、上記重合性化合物が屈折率異方性(異常光屈折率と常光屈折率との差)を有し、かつ異方性を反映する屈折率差が0.05以上ある化合物であり、該重合遅延剤が、上記重合性化合物に対し1重量%以上かつ30重量%以下であることを特徴としている。
【0017】
また、本発明の他の光重合性組成物は、重合開始剤、増感色素、少なくとも2種類の重合性化合物および少なくとも1種類の重合遅延剤を含み、上記重合性化合物が高分子化したときの互いの屈折率差が0.05以上ある化合物であり、該重合遅延剤が、上記重合性化合物に対し1重量%以上かつ30重量%以下であることを特徴としている。なお、この光重合性組成物における複数の重合性化合物は、屈折率異方性を有する化合物と有しない化合物との組み合わせであってもよい。
【0018】
上記のように構成される光重合性組成物に、光強度を空間的に変調する露光法によって光を照射して光重合させると、その結果得られる高分子において、密度、屈折率、凹凸形状および配向状態のいずれか1つ以上の物理量が空間的に分布し、かつその分布において微細パターン(100μm以下、特に10μm以下の幅)が形成される。パターンの形成では、物性的に高分子の密度や屈折率が異なる場合、パターンが書き込まれた領域(露光領域)と書き込まれていない領域(非露光領域)とで配向が異なる場合、パターンが書き込まれた部位に高分子成分が存在し、書き込まれていない部分に高分子成分が存在しない形状になる場合が考えられる。高分子成分が存在する領域と存在しない領域とで凹凸構造が形成される。
【0019】
なお、上記の高分子を光学素子(光機能性膜)として利用する際の特性として、50nm以上の反射波長域を得るためには、屈折率において次の条件を満たすことが必要である。つまり、屈折率異方性を有する少なくとも1種類の重合性化合物を用いる場合、その重合性化合物が0.05以上の屈折率差を示すことが必要である。また、少なくとも2種類の重合性化合物を用いる場合は、重合性化合物が高分子化したときの互いの屈折率差が0.05以上あることが必要である。
【0020】
重合性化合物については、1種類の化合物を用いるよりも、複数の化合物を用いる方が好ましい。1種類の化合物の場合、溶解度に制限があるために、その量を多くすることができず、所望の液晶/高分子複合材料を作製することが困難になることがある。一方、複数の化合物を用いる場合、化合物の総量が多くなっても、それぞれの化合物単体の量が低く抑えられるので、組成物を液晶に対して均一に相溶させることができる。
【0021】
また、上記光重合性組成物においては、上記重合遅延剤が、上記重合性化合物に対し5重量%以上かつ20重量%以下であることが、より好ましい。重合遅延剤の現実的な添加量には、重合性化合物毎に最適な範囲が存在しており、それを考慮すれば、最もよく使用される範囲として5重量%以上かつ20重量%以下が適当である。
【0022】
さらに、上記組成物における上記増感色素による光吸収が、上記重合性化合物の光重合を行うための露光波長において2%以上であることが好ましい。このような条件で、増感色素による光吸収が認められる場合、上記のような微細パターンが良好に形成される。また、後に詳述するように、上記のような条件で増感色素を用いることによって、結果として露光波長を長波長化させることができる。
【0023】
本発明の光機能性膜は、液晶および高分子からなる液晶/高分子複合体内に屈折率分布を有する周期構造が形成されている光機能性膜であって、前述の各光重合性組成物と液晶材料との混合組成物への光照射によって上記光重合性組成物が光重合された結果、上記液晶/高分子複合体が形成されている。
【0024】
上記の混合組成物への光照射によって光重合性組成物が光重合されると前述のような高分子が形成されるが、その高分子が微細パターンを形成することによって、液晶/高分子複合体において周期構造が形成される。
【0025】
上記の光機能性膜においては、上記重合性化合物の光重合を行うための露光波長の光強度分布が、ほぼ液晶/高分子複合体全体の平均屈折率×2倍の波長にあることが好ましい。このような露光波長を用いることによって、周期構造を容易に形成することができる。
【0026】
上記のような光機能性膜を作製するには、上記光重合性組成物の光重合のために少なくとも1つのコヒーレントな光束を用い、そのうちの1つの光束を、基板間に挟持された上記混合組成物に該基板面に対して垂直方向から入射させること、すなわち、マスク露光法、干渉露光法などの光強度を空間的に変調する手法を用いることが好ましい。
【0027】
このような手法を用いることによって、光重合性組成物に照射される光の強度が一様ではなく空間的に分布する露光状態が得られる。これにより、光機能性膜における高分子について、密度、屈折率、凹凸形状および配向状態のうちの少なくともいずれか1つの物理量の空間分布が微細パターンを形成する構造を容易に得ることができる。
【0028】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の一形態について図1ないし図6に基づいて説明すれば、以下の通りである。
【0029】
本実施の形態に係る反射型液晶表示素子は、図1に示すように、互いに対向する2枚の透明なガラス基板1・2を透光性基板として備えている。ガラス基板1の表面には、例えばインジウム錫酸化物(一般にITOと称される)からなる複数の透明電極3…が、互いに平行に配置されている。
【0030】
一方、ガラス基板2の表面には、例えばITOからなる複数の透明電極4…が透明電極3…と直交するように互いに平行に配置されている。上記の透明電極3…および透明電極4…上には、ラビング処理などの一軸配向処理が施された配向膜5・6がそれぞれ形成されている。配向膜5・6としては、ポリイミド、ナイロンまたはポリビニルアルコール等の有機高分子からなる膜またはSiO2斜方蒸着膜等が用いられる。配向膜5・6に有機高分子膜を用いた場合は、一般的に、液晶分子が電極基板に対してほぼ平行に配向するように配向処理がなされる。
【0031】
光機能性膜としてのHPDLC層7は、対向するようにして図示しないシール剤で貼り合わされたガラス基板1・2の間の空間内に配されている。HPDLC層7は、液晶層および高分子層が交互に積層されてなる液晶/高分子複合体である。その積層構造は、ガラス基板1・2に平行な平面構造、あるいはガラス基板1・2からある方向に傾斜した平面構造を持つ。このようなHPDLC層7は、後述するように、液晶材料と光重合性組成物との混合組成物を、後述する光学系41(図3参照)を用いて露光して光重合性組成物を重合させることによって得られる。
【0032】
また、セル厚が一定となるように、配向膜5・6間には、スペーサ8…が配置される。さらに、光入射側に位置するガラス基板2における、透明電極4が設けられた表面とは反対側の表面に、光拡散膜9が設けられている。この光拡散膜9は、表示面の正面輝度を高めるために、HPDLC層7によって反射された入射光を正面に集める機能を有しており、プリズムシートなどによって構成される。一方、光反射側に位置するガラス基板2における、透明電極3が設けられた表面とは反対側の表面に、光吸収膜10が設けられている。この光吸収膜10は、HPDLC層7を透過した入射光を吸収するために設けられており、例えば、1000Å以上の膜厚を有するシリコン薄膜や、カーボンブラック(活性炭)含有の樹脂コート膜からなる。
【0033】
上記の透明電極3・4が対向する各方形の領域により、図示しない画素領域が形成されている。この画素領域においては、透明電極3・4に電圧が印加されると、HPDLC層7における液晶層の屈折率が変化して高分子層と液晶層との間の屈折率差がなくなるので、ブラッグ反射が生じず、入射光の全てがHPDLC層7を透過し、光吸収膜10で吸収される結果、暗状態が得られる。一方、透明電極3・4に電圧が印加されない場合、高分子層と液晶層との間に屈折率差が生じるので、高分子層と液晶層との間隔に対応した波長の光だけが、ブラッグ反射によってHPDLC層7で反射される一方、他の波長の光がHPDLC層7を透過して光吸収膜10で吸収される結果、明状態が得られる。
【0034】
液晶と高分子材料とを組み合わせた機能性デバイスにおいては、セル寸法の制約から、高分子の密度、屈折率、凹凸形状、配向状態等の物理量の空間分布パターンに、例えば、100μm以下、特に10μm以下の幅といった高解像度が要求される。特に、高分子層と液晶層とが交互に積層した構造のHPDLC層7においては、ブラッグの反射条件より1μm以下の解像度が要求される。
【0035】
本実施の形態に係る光重合性組成物は、従来の液晶/高分子複合体や高分子内部で屈折率分布を持つ構造体などを形成する上で、光強度を空間的に変調する手法により、高分子の密度、屈折率、凹凸形状、配向状態のいずれか1つ以上の物理量の空間分布において、後述の露光パターンに応じた100μm以下、特に10μm以下の幅でパターンを形成することが可能である。また、本光重合性組成物は、組成物の構成成分として、重合開始剤、重合性化合物、重合遅延剤および増感色素を含んでいる。
【0036】
上記の重合性化合物としては、(i) 屈折率異方性を有し、かつ異方性を反映する屈折率差が0.05以上ある少なくとも1種類の化合物か、あるいは、(ii)高分子化した場合に屈折率差が0.05以上ある少なくとも2種類の化合物のいずれかが用いられる。(ii)の重合性化合物を用いる場合、重合反応条件が互いに異なる、屈折率異方性を持たない2種類以上の重合性化合物からなる組成物を用いることになる。このような組成物は、屈折率異方性を持たない化合物のみからなっていてもよいし、または屈折率異方性を持つ化合物と持たない化合物の両方からなっていてもよい。
【0037】
(i) において、1種類の化合物を用いた場合、溶解度に制限があるために、その量を多くすることができず、所望の液晶/高分子複合材料(混合物)を作製することが困難になることがある。一方、(i) および(ii)において、2種類以上の化合物を用いる場合、組成物(化合物の混合物)全体の量が多くなっても、それぞれの化合物単体の量が低く抑えられるので、組成物を液晶に対して均一に相溶させることができる。
【0038】
上記の重合遅延剤は、重合性化合物の総量に対し1重量%以上かつ30重量%以下、好ましくは5重量%以上かつ20重量%以下含まれている。また、増感色素は、パターン周期の2倍の波長に対して吸収が2%以上である。
【0039】
重合遅延剤の例として、その分子構造内に重合に寄与し得る不飽和結合と、それに接してπ電子結合で共役した官能基とを持ち、その集まりが1つの共役系を形成しうるような官能基の集合した部位を含む化合物を挙げることができる。この重合遅延剤は、重合性化合物の総量に対し1重量%以上かつ30重量%以下、好ましくは5重量%以上かつ20重量%以下の1種類以上から構成される。
【0040】
重合遅延剤として単一の化合物を用いた場合、その添加量が過剰であると、液晶性を損なったり、配向を乱したりするおそれがある。また、重合遅延剤の添加量が微量(1重量%より少ない)である場合は、その効果を十分発揮することができなくなる。さらに、重合遅延剤の現実的な添加量は、化合物毎に最適な範囲が存在しており、最もよく使用される範囲として5重量%以上かつ20重量%以下が適当である。
【0041】
増感色素としては、色素のエネルギー準位が重合開始剤のそれより低く、かつ重合開始剤との間でエネルギーの授受が可能な化合物であって、反応後に色素あるいは色素との反応により生成された化合物には、吸収が可視域にないことが望ましい。具体的には、増感色素は、重合反応前には可視域の露光波長の光を吸収し、重合開始剤に対してエネルギーの授受や反応が可能な化合物であり、重合反応終了時には光を吸収しなくなることが要求される。増感色素を用いた増感反応は、光によって励起されて活性化した増感色素が重合開始剤をアタックして重合反応が連鎖していくことによって起こる。
【0042】
本発明においては、高分子部分に機能を持たせるため、光重合時の照射光の空間的強度変調によるパターン化(例えば実用的な手法として光マスク露光法や光干渉露光法)を使うことで、重合後の構造内部に2次元的または3次元的な光学的な特性分布をもたらすことができる。
【0043】
ここで、光マスク露光法とは、2次元的に露光領域/非露光領域ができるように光透過性の平面基板上に遮光性材料によりパターンが形成された光マスクを使い、露光対象にこの光マスクを透過した光により照射することにより、2次元的にパターン化された露光部/非露光部を形成する手法である。また、光干渉露光法とは、コヒーレントな2つの光がある空間内で所定の角度で交差することで干渉し、空間的に光強度分布が生じる現象を利用して、厚みのある露光対象内でコヒーレントな2つの光を干渉させた領域で、空間的に露光させる方法である。
【0044】
素子の特性として、50nm以上の反射波長域を得るためには、0.05以上の屈折率差Δnが必要である。これは、文献(HAmaclcod,“Thin−Film Optical Filters, second edition ”, p120, Adam Hilger Ltd, Bristol, 1986)に準拠している。図2に、ある反射率を得るために必要な屈折率差とセル層とをまとめて示す。この図から分かるように、屈折率差0.05で90%以上の反射率を得るためには、素子のセル厚は10〜20μm程度必要になる。
【0045】
【実施例】
以下の手順で材料組成の調整、露光用評価セルの作製および露光を行い、その結果を評価した。
【0046】
〔液晶/光重合性組成物の調整〕
重合性組成物として、イソボニルアクリレートとジアクリレートとが重量比7対3で混合されたアクリレート混合物を使用し、重合開始剤として、Irgacure 369(チバガイギー製)またはその同等品を使用し、重合遅延剤として、p−phenylstyrene (以下、ppstと略記する)を使用し、増感色素として、DTX−S(チオキサン、日本化薬製)を使用した。重合性組成物に使用した化合物は、化合物自体が液晶性を示さないか、液晶性を示したとしても高温においてのみである。したがって、露光実験を行なう室温近傍では、重合性組成物のみで液晶性を示さない。
【0047】
イソボニルアクリレートおよびジアクリレートは、それぞれ屈折率異方性を示さない。また、これらの混合物は、1つの共重合性高分子になり、その高分子単独でも屈折率異方性を示さない。しかしながら、この高分子は、液晶と組み合わされたときに屈折率異方性を示すため、その値は、本来、異常光線の屈折率差Δne が約0.3,常光線の屈折率差Δno が約0.07である。ところが、液晶および高分子がドロップレット状態である場合には、屈折率異方性の値が上記の値の二乗平均となることが知られている。
【0048】
なお、高分子は、反応直後にドロップレットとして分散している(あるいはネットワーク構造になる)が、比重等の関係で最終的にはドロップレットとして均一に分散しなくなる。したがって、ドロップレット状の高分子は、安定状態で基板に付着したり、ネットワーク構造に取り込まれたりする。
【0049】
また、2種類以上の重合性化合物を使用する場合、上記の他に、次の化合物の組み合わせが考えられる。例えば、F(フッ素)で置換された部位を有するアクリレート(n=1.45以下)と、ジアクリレート、Brで置換された部位を有するアクリレートおよび熱重合性エポキシ系材料(いずれもn=1.5以上)の少なくとも1つとの組み合わせが好適である。
【0050】
重合開始剤および増感色素は、各々アクリレート混合物に対して1重量%であり、重合遅延剤(ppst)は、アクリレート混合物に対して1、3、5、30重量%の4種類を試した。重合遅延剤については、単一の化合物を多量添加すると、液晶の相系列を乱すので、単体として添加する量には限界がある。このため、2種類以上の重合遅延剤を添加することが、より好ましい。また、30重量%を超える添加量では、溶解せずに析出する可能性が高い。
【0051】
液晶として、TL213(メルクジャパン製)を使用した。このTL213は、(分散型液晶)PDLCに好適であり、高い屈折率異方性Δn(Δn≧0.2)を示す。この液晶と重合性化合物との割合は重量比で1対1である。液晶としては、高屈折率異方性を示し、かつ低いしきい値電圧で駆動が可能な液晶が好ましい。
【0052】
〔露光用評価セルの作製〕
空セルは、以下の工程によって作製される。
【0053】
まず、前述の2枚のガラス基板1・2(図1参照)のそれぞれに、ITOを90nmの厚さで形成してパターニングすることによって透明電極3・4を形成する。次いで、その上にポリイミド(日産化学製のSE−150)を塗布して配向膜5・6を形成し、この配向膜5・6に対しアンチパラレルラビングを施して2枚の電極基板を作製する。そして、これらの電極基板を10μmのセル厚となるように貼り合わせる。セル厚を制御するスペーサ8…としては、10μm径のプラスチックスペーサ(積水ファインケミカル製)を用いる。液晶/高分子複合材料が液晶状態であることから、この複合材料を通常の液晶と同様に注入法にて上記の空セルに注入する。このようにして、評価セルが得られる。
【0054】
上記の評価セルでは、パターン性を見る意図での実験であるため、配向制御を優先し、屈折率異方性を、液晶分子の配向を液晶/高分子複合材料の配向で固定化することで取り出す方法を適用した。
【0055】
〔光マスク露光法による100μm以下のパターン作製の確認〕
本実験では、液晶を混合しない状態での重合性組成物を用いて、光マスク露光による100μm以下の幅のパターン作製の確認を行った。そのため、重合性組成物が注入された評価セルの一方の透明ガラス基板上に、幅100μmと10μmとの2種類の光透過スリットを形成したフォトマスクを固定した。露光には、無偏光のUV光をコリメーションレンズを用いて平行光状態にし、基板に対して垂直方向から照射した。露光は、室温にて30秒間行った。
【0056】
得られたパターンを、高解像度の光学顕微鏡(カールツァイス社製)で評価した。100μmおよび10μmの幅のパターンにおいて、全てのパターンが形状として確認できた。
【0057】
なお、本実施例および後述の比較例1ないし3の全てにおいて、ガラス基板1には原則として1.1μm厚の#7059ガラス(コーニング社製)を用いたが、本実験のフォトマスク(後述の参照光側マスク31)に接する側のガラス基板2のみは、ガラス基板2の厚みによるパターンの解像度の低下を極力低減するために、50μm厚のAF−45ガラス(ショット社製)を用いた。
【0058】
〔光干渉露光法によるHPDLC層の作製〕
サンプルの液晶/光重合性組成物からなる混合組成物を注入した評価セルに物体光と参照光とを照射することにより、混合組成物中にレーザ光の干渉パターンを照射させた。レーザ光には、Arレーザ光(波長:364nm)およびKrレーザ光(波長:407nm)を用いた。この干渉パターンが照射された領域の混合物は、光強度の高い領域で重合性組成物(光重合性材料)が重合して高分子となり、また、光強度の低い領域には主に液晶が集まる。この結果、高分子と液晶とが分離され、液晶層と高分子層とからなる微細な層構造をなすHPDLC層7が形成される。その後、光拡散膜9および光吸収膜10(図1参照)を評価セルに形成すると、反射型液晶素子が完成する。
【0059】
このときの干渉露光は、図3に示す光学系41で行った。この光学系41において、レーザ光源11から出射した直線偏向のレーザ光は、2枚のミラー12・13により反射し、λ/2板18と偏光ビームスプリッタ20とにより2光束に分かれる。一方の光束は、ミラー14で反射した後にスペシャルフィルタ21を通過後、コリメートレンズ23により平行光束に変換されて参照光26として試料25の前面から照射される。もう一方の光束は、ミラー15で反射した後、λ/2板19により偏光を90度回転させ、ミラー16・17で反射した後にスペシャルフィルタ22を通過し、さらにコリメートレンズ24により平行光束に変換されて物体光27として試料25(評価セル)の後面から照射される。
【0060】
また、上記の試料25は、図4に示すように、参照光26および物体光27が照射される。ここで、試料25のガラス基板1側に参照光側マスク31が配され、ガラス基板2側に物体光側マスク32が配されている。参照光側マスク31には、遮光層31aがストライプ状パターンを形成するように設けられ、物体光側マスク32にも、同様の遮光層32aが設けられている。また、物体光側マスク32には、試料25側の表面にマイクロレンズアレイ32bが設けられている。
【0061】
この干渉露光においては、物体光27がマイクロレンズアレイ32bを通過することによって微小な面で形成される球面波に近い波面と、平面波である参照光26とによって生じる干渉パターンを、ガラス基板1・2間に充填された混合組成物に照射した。このとき、原理的には、回転放物面に近い干渉パターンが得られ、混合組成物中には、このようなパターンの液晶層および高分子層による微細な層構造7a…が形成される。また、混合組成物の他の部位にも、同様に干渉パターンを生じさせることによって、層構造7b…および層構造7c…が形成される。このようにして、HPDLC層7が形成される。
【0062】
また、この干渉露光において、参照光26をガラス基板1・2の面方向に対し30°傾いた方向から入射させた。これによって、ホログラムがオフアクシスとなるので、その方向から参照光26が入射したときにガラス基板1・2の法線方向を中心に拡散反射するような体積ホログラム層が形成される。
【0063】
ホログラムの反射によって、R、G、Bの各色の光反射性、オフアクシス性および拡散性を付与するために、本実施例では、光入射角を小さくすること、各光の反射構造の形成のために用いる光源の波長を制約し、かつ長波長(650nm程度)で反応させることなどが必要になる。また、R、G、Bの各色をそれぞれ反射させる構造を形成するに際して、露光に用いる光学系において、露光波長以外の構成を共通化することが望ましい。
【0064】
ホログラムを作製するには、上記のように参照光と物体光とが必要である。このうち、参照光は、ホログラムを再生する際には再生光(照明光/入射光)に置き換えられるため、その入射角をほとんど変えることができないので、その代わりに物体光の入射角を変えることになる。物体光は、レンズ等の光学機能形状をホログラムに付与するための光であるので、書き込まれる光学機能が設計通りに再生できるようにするには、その入射角を極力小さく、望ましくは0°に設定すべきである。
【0065】
ホログラム構造の基本周期構造は、下記のようにして表される。
【0066】
ここで、λを入射光波長とし、nH 、nL をそれぞれホログラム構造における高屈折率部の屈折率、低屈折率部の屈折率とし、dH 、dL をそれぞれ高屈折率部の層厚、低屈折率部の層厚とし、dH +dL を1周期とする。nH dH =λ/4およびnL dL =λ/4であることから次式が得られる。
nH dH +nL dL =λ/2
また、nH =nL +Δnであることから、これと上式とにより次式が得られる。
nL (dH +dL )+ΔndH =λ/2
【0067】
この式より、nL (dH +dL )+ΔndH が、凡そ材料(液晶/高分子複合体)全体の平均屈折率を表している。したがって、重合性化合物の光重合を行うための露光波長の光強度分布が、(材料全体の平均屈折率)×2倍の波長にあれば(露光波長が(材料全体の平均屈折率)×2倍であれば)、ホログラム構造を容易に形成することができる。
【0068】
〔結果〕
上記の手順で作製された評価セルは、HPDLC層7における液晶層と高分子層との屈折率差が生じており、表1に示すように、重合遅延剤が前述のいずれの量のときもホログラムが形成され、そのホログラムによる選択反射の色が確認された。ちなみに、重合遅延剤が20重量%である場合も、同様な結果が得られた。また、重合遅延剤が0.5重量%である場合は、ホログラムが形成されないことが確認された。そして、透明電極3・4に電圧を印加すると、液晶層と高分子層との屈折率差がなくなる結果、ホログラムが消失し、暗状態が得られた。これらの反射ピークから算出された屈折率差Δnは0.05であった。
【0069】
また、露光波長407nmにて作成された評価セルを、液体窒素で凍結された後に剥がし、液晶をイソプロピルアルコールで流し去った後、2DスキャンのAFM(原子間力顕微鏡)にて観察および測定した。その結果、0.18μmのパターン幅の計算値に対し、0.16μmの測定値が得られた。
【0070】
このように、本実施例では、レーザ光のような光幅が狭い光源での長波長化がなされていなかった現状に鑑みて、露光波長の拡大(400nm程度から最長650nm程度まで)を図っている。
【0071】
【表1】
【0072】
〔比較例1〕
比較例として、実施例の液晶/光重合性組成物と異なり、重合開始剤および重合遅延剤が各々アクリレート混合物に対して各々1重量%とするが、増感色素を加えない混合組成物を作製し、同様にして、セルにこの混合組成物を注入した後、波長364nmのArレーザ光および波長407nmのKrレーザ光を照射し、混合組成物中にレーザ光の干渉パターンを発生させた。その結果、364nmの波長ではホログラムが形成されたが、407nmの波長ではホログラムがわずかにしか観察されなかった。
【0073】
〔比較例2〕
比較例として、実施例の液晶/光重合性組成物から遅延剤が除かれるとともに、増感色素を含む混合組成物と含まない混合組成物(2種類の混合組成物)とを作製し、同様にして、セルにこの混合組成物を注入した後、波長364nmのArレーザ光および波長の407nmKrレーザ光を照射し、混合組成物中にレーザ光の干渉パターンを発生させた。その結果、それぞれの混合組成物材料が注入されたセルにおいて、364nmおよび407nmのいずれの波長でもホログラムは観察されなかった。
【0074】
〔比較例3〕
実施例の液晶/光重合性組成物から開始剤が除かれるとともに、(i) 遅延剤および増感色素を含む混合組成物、(ii)遅延剤を含むが増感色素を含まない混合組成物、(iii) 遅延剤を含まないが増感色素を含む混合組成物、および(iv)遅延剤および増感色素を含まない混合組成物(4種類の混合組成物)を作製し、同様にして、セルにこれらの混合組成物を注入した後、波長364nmのArレーザ光および407nmのKrレーザ光を照射し、混合組成物中にレーザ光の干渉パターンを発生させた。その結果、364nmおよび407nmのいずれの波長でもホログラムは観察されなかった。
【0075】
また、重合開始剤、重合遅延剤および増感色素が各々アクリレート混合物に対して1重量%であるとき、増感色素を含む液晶/光重合性組成物(実施例)と、増感色素を含まない液晶/光重合性組成物(比較例1)とによる反射率の違いを図5に示す。増感色素の存在する場合には、図5において実線で示すように、印加電圧がしきい値電圧付近(8〜10V)に達すると、反射率が大きく変化し、やがて液晶層と高分子層との屈折率差がなくなる。このように、増感色素が存在することにより、明状態と暗状態との変化を得ることができる。一方、増感色素の存在しない場合には、図5において一点鎖線で示すように、印加電圧の変化に対してほとんど反射率が変化しない。したがって、ホログラムの形成が可能な比較例1のサンプルでは、液晶/光重合性組成物が増感色素を含まないことによって明状態および暗状態を得ることができない。
【0076】
次に、用いた材料等の評価を行った。
【0077】
増感色素を含む液晶/光重合性組成物(実施例)と、増感色素を含まない液晶/光重合性組成物(比較例1)との吸収波長を図6に示す。実験を行った波長364nmにおいては、増感色素を含むときの吸収が0.55abs(55%)であり、増感色素を含まないときの0.17abs(17%)に比べて38%大きく、増感されていることが分かる。波長407nmにおいても、増感色素による光吸収が好適である2%以上(約3.7%)あり、増感されている。また、2%の光吸収を示す際の波長は約415nmである。
【0078】
また、用いたレーザ光は、一光束以上のコヒーレントな光であり、少なくとも1つの光束が基板面に対してほぼ垂直に入射するように調整されている。
【0079】
なお、確認までに、実施例におけるレーザ光を、より波長の長いYAGレーザの532nmに代えてこれら一連の実験を行った。しかしながら、いずれの場合にもホログラムは観察されなかった。これは、図6からわかるように、532nmの波長においては、本実験に用いた増感色素の効果が存在しないことによる。
【0080】
以上の実施例および比較例1〜3の結果をまとめて表2に示す。
【0081】
【表2】
【0082】
以上の結果より、増感色素による光吸収が、光重合を行なうための入射光の波長において2%以上あれば、ホログラム作製に顕著な効果を持つことが明確である。また、本実施例の方法によれば、現状では、液晶層とが交互に積層された構造(HPDLC層)を得ることができなかった露光波長である364nmや407nmによって、HPDLC層7を得ることができる。これは、露光波長の長波長化が達成できたことを意味する。
【0083】
【発明の効果】
以上のように、本発明の光重合性組成物は、重合開始剤、増感色素、少なくとも1種類の重合性化合物および少なくとも1種類の重合遅延剤を含み、上記重合性化合物が屈折率異方性を有し、かつ異方性を反映する屈折率差が0.05以上ある化合物であり、該重合遅延剤が、上記重合性化合物に対し1重量%以上かつ30重量%以下である構成である。
【0084】
また、本発明の光重合性組成物は、重合開始剤、増感色素、少なくとも2種類の重合性化合物および少なくとも1種類の重合遅延剤を含み、上記重合性化合物が高分子化したときの互いの屈折率差が0.05以上ある化合物であり、該重合遅延剤が、上記重合性化合物に対し1重量%以上かつ30重量%以下である構成である。
【0085】
上記の光重合性組成物に、光強度を空間的に変調する露光法によって光を照射して光重合させると、その結果得られる高分子において、密度、屈折率、凹凸形状および配向状態のいずれか1つ以上の物理量が空間的に分布し、かつその分布において微細パターンが形成される。したがって、この光重合性組成物を用いることによって、その高分子と液晶とからなる液晶/高分子複合体内に、高分子のパターンによる周期構造が形成された光機能性膜を得ることができるという効果を奏する。
【0086】
また、上記重合遅延剤が、上記重合性化合物に対し5重量%以上かつ20重量%以下であることで、適用可能な重合性化合物に対して適した重合遅延剤の添加量として、最もよく使用される範囲が定められる。それゆえ、重合遅延剤の添加量を実用的な範囲で設定することができるという効果を奏する。
【0087】
さらに、上記組成物における上記増感色素による光吸収が、上記重合性化合物の光重合を行うための露光波長において2%以上であることで、上記のような微細パターンを良好に形成するとともに、露光波長の長波長化を図ることができる。
【0088】
本発明の光機能性膜は、液晶および高分子からなる液晶/高分子複合体内に屈折率分布を有する周期構造が形成されている光機能性膜であって、前述のいずれかに記載の光重合性組成物と液晶材料との混合組成物への光照射によって上記光重合性組成物が光重合された結果、上記液晶/高分子複合体が形成されている構成である。
【0089】
光重合性組成物の光重合によって得られた高分子が前述のように微細パターンを形成することによって、液晶/高分子複合体において周期構造が形成される。したがって、高分子と液晶層とが交互に分布するような周期構造の光機能性膜を容易に得ることができるという効果を奏する。
【0090】
上記の光機能性膜においては、上記重合性化合物の光重合を行うための露光波長の光強度分布が、ほぼ液晶/高分子複合体全体の平均屈折率×2倍の波長にあるので、周期構造を容易に形成することができるという効果を奏する。
【0091】
光機能性膜の製造方法は、上記光重合性組成物の光重合のために少なくとも1つのコヒーレントな光束を用い、そのうちの1つの光束を、基板間に挟持された上記混合組成物に該基板面に対して垂直方向から入射させる方法である。
【0092】
このような手法を用いることによって、光重合性組成物に照射される光の強度が一様ではなく空間的に分布する露光状態が得られる。これにより、光機能性膜における高分子について、前述のような微細パターンを形成する構造を容易に得ることができる。したがって、高分子と液晶層とが交互に積層されるような構造の光機能性膜を容易に得ることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の一形態に係る反射型液晶表示素子の構成を示す断面図である。
【図2】所定の反射率を得るために必要な屈折率差と液晶表示素子のセル厚との関係を示すグラフである。
【図3】実施例1の光機能性膜を用いた反射型液晶表示素子の作製に用いた光学系を示す説明図である。
【図4】本発明の実施例に係る試料(評価セル)に物体光および参照光を照射してこれらの干渉パターンを発生させる構成を示す断面図である。
【図5】液晶/光重合性組成物に増感色素を含む場合(実施例)と含まない場合(比較例1)との印加電圧と反射率との関係を示すグラフである。
【図6】実施例および比較例に用いた材料の光吸収波長を示すグラフである。
【符号の説明】
1・2 ガラス基板(基板)
7 HPDLC層(光機能性膜)
7a〜7c 層構造(周期構造)
26 参照光(光束)
27 物体光(光束)
41 光学系
Claims (6)
- 重合開始剤、増感色素、少なくとも2種類の重合性化合物および少なくとも1種類の重合遅延剤を含み、上記重合性化合物が高分子化したときの互いの屈折率差が0.05以上ある化合物であり、該重合遅延剤が、上記重合性化合物に対し1重量%以上かつ30重量%以下であり、
上記増感色素は、色素のエネルギー準位が重合開始剤のそれより低く、かつ重合開始剤との間でエネルギーの授受が可能な化合物であって、反応後に色素あるいは色素との反応により生成された化合物には、吸収が可視域にないものであり、
上記重合遅延剤は、微細構造形成のために用いられることを特徴とする光重合性組成物;ただし、上記重合性化合物には、上記重合性遅延剤として指し示す化合物を含まない。 - 上記重合遅延剤が、上記重合性化合物に対し5重量%以上かつ20重量%以下であることを特徴とする請求項1に記載の光重合性組成物。
- 上記組成物における上記増感色素による光吸収が、上記重合性化合物の光重合を行うための露光波長において2%以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の光重合性組成物。
- 液晶および高分子からなる液晶/高分子複合体内に屈折率分布を有する周期構造が形成されている光機能性膜であって、請求項1ないし3のいずれかに記載の光重合性組成物と液晶材料との混合組成物への光照射によって上記光重合性組成物が光重合された結果、上記液晶/高分子複合体が形成されていることを特徴とする光機能性膜。
- 上記重合性化合物の光重合を行うための露光波長の光強度分布が、ほぼ液晶/高分子複合体全体の平均屈折率×2倍の波長にあることを特徴とする請求項4に記載の光機能性膜。
- 請求項4または5に記載の光機能性膜を製造する方法であって、上記光重合性組成物の光重合のために少なくとも1つのコヒーレントな光束を用い、そのうちの1つの光束を、基板間に挟持された上記混合組成物に該基板面に対して垂直方向から入射させることを特徴とする光機能性膜の製造方法。
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