JP2001181316A - 光重合性組成物、その組成物を用いた光機能性膜およびその光機能性膜の製造方法 - Google Patents

光重合性組成物、その組成物を用いた光機能性膜およびその光機能性膜の製造方法

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JP2001181316A
JP2001181316A JP37004799A JP37004799A JP2001181316A JP 2001181316 A JP2001181316 A JP 2001181316A JP 37004799 A JP37004799 A JP 37004799A JP 37004799 A JP37004799 A JP 37004799A JP 2001181316 A JP2001181316 A JP 2001181316A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 高分子層と液晶層とが交互に積層した構造の
HPDLC(ホログラフィック高分子分散型液晶)層を
得るための光重合性組成物を提供する。 【解決手段】 液晶表示素子のHPDLC層7を形成す
るための液晶/光重合性組成物(混合組成物)のにおけ
る光重合性組成物の構成成分として、重合開始剤、増感
色素、少なくとも1種類の重合性化合物および少なくと
も1種類の重合遅延剤を含む。また、増感色素を含むこ
とによる光重合性組成物の光吸収が、入射光の波長にお
いて2%以上である。ガラス基板1・2の垂直方向から
光を照射することによって光重合性組成物の光重合を行
う。その結果得られた高分子について、密度、屈折率、
凹凸形状、配向状態のいずれか1つ以上の物理量の空間
分布が微細なパターンとして形成される。したがって、
液晶/高分子複合材料内には、そのパターンに基づいた
屈折率分布および周期構造が形成される。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、光重合によって微
細パターンの形成を可能とする成分を含有する光重合性
組成物、この光重合性組成物により作製される光機能性
膜およびその光機能性膜の製造方法に関するものであ
る。
【0002】
【従来の技術】TN(Twisted Nematic) 液晶素子は、安
定した表示性能、アクティブおよびパッシブマトリクス
のいずれの方式にも適用が容易であるという利点に加え
て、ノート型のパーソナルコンピュータなどの低消費電
力を要求される製品にも適していることから、液晶表示
素子の主流となっている。しかしながら、TN型液晶表
示素子は、明状態と暗状態との表示制御を行うために偏
光板を用いる必要があるため、入射光の多くが偏光板で
遮られて損失となるといった問題を有している。
【0003】このため、偏光板を用いない液晶表示素子
への期待が高まっている。その中でも、高分子分散型液
晶は、光利用効率が高いために有望視されている。高分
子分散型液晶素子としては、例えば、伊達他、通信学会
技報、Vol. 95, No 526, p131 (1996)に開示された液晶
表示素子が挙げられる。この文献には、高分子層と液晶
層とが交互に積層され、高分子層および液晶層が、基板
に平行な平面構造、あるいは基板からある方向に傾斜し
た平面構造を持つHPDLC(ホログラフィック高分子
分散型液晶)を用いた反射型液晶表示素子の作製につい
て記載されている。
【0004】このような反射型液晶表示素子は、その上
に透明電極が形成されている一対のガラス基板間に、干
渉露光法によってある波長に対応する層間隔で、高分子
層と液晶層とが交互に積層された構造のHPDLC層
(パターン)の形成後、裏面側に光吸収層が配置される
という工程で作製される。そして、この反射型液晶表示
素子においては、マトリックスアレイ化された各画素の
明状態と暗状態とが印加電圧によって制御される。
【0005】各画素において、基本的な表示の原理は次
のように説明される。透明電極間に電圧が印加されない
場合、高分子層と液晶層との間に屈折率差が生じてい
る。このため、HPDLC層における高分子層と液晶層
との間隔に対応した波長の光だけが、ブラッグ反射の原
理によってHPDLC層で反射される一方、他の波長の
光はHPDLC層を透過して裏面の光吸収層で吸収され
る。したがって、このときの表示は明状態である。
【0006】一方、透明電極間に電圧が印加される場
合、液晶層の屈折率が変化して高分子層と液晶層との間
の屈折率差がなくなる。このとき、ブラッグ反射が生じ
ないので、表示面から入射する光の全てがHPDLC層
を透過し、裏面の光吸収層で吸収される。したがって、
このときの表示は暗状態である。
【0007】このような用途では、高分子材料部分を従
来のフォト工程により予め形成したり、高分子分散型液
晶の形成のように、光重合反応により液晶と高分子とを
相分離する手法で形成される。これらの作製方法では、
いずれも、重合により形成される高分子をある特定の屈
折率を持った媒体として、電界で屈折率が変調可能な材
料である液晶を、小さな液滴またはある大きさを持った
塊として扱っている(特公平7−62742号公報、SI
D '95 Digest, 579 (1995)などを参照)。このように、
液晶を1つの塊として区切るために高分子材料が用いら
れている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】前述の従来の技術に
は、いくつかの問題がある。例えば、高分子の形状を予
め形成する方法では、未反応成分を取り除く工程が必要
であるという問題や、形成された高分子構造物の形状、
パターンのシャープさ、形成された高分子表面での結晶
配向制御性における問題などが挙げられる。また、干渉
光のような周期的に強度が変化する照射系でパターン
(周期構造)を形成する方法では、重合反応が光によっ
て引き起こされるだけでなく、反応過程で生じる化学種
の拡散現象の影響を受け、光の照射による高分子の空間
的特性(密度、屈折率、配光性等)の変化が小さくな
る。この結果、液晶/高分子複合デバイスとして十分な
効率を引き出すことができなくなる。これは、開始、連
鎖、停止という重合反応の一連のメカニズムそのものが
反応系で起こる現象に起因している。
【0009】マスク露光や干渉露光法において、反応光
の非照射部では光による直接のラジカルの発生はない
が、光照射部から拡散してくるラジカル種によってラジ
カル重合が起こる。この非照射部で発生するラジカル重
合を制御できないため、マスク露光や干渉露光法のいず
れにおいても、光強度の高い部位と低い部位とでの高分
子状態の相違を大きくすることが困難であった。
【0010】本願出願人は、このような不都合を解消す
るための技術を、先に出願した特願平10−18300
0号にて記載している。この技術では、重合反応サイク
ル中の連鎖反応部分の反応性を、重合遅延剤を添加して
制御することにより、非照射部での反応性を低下させて
微細な構造を形成することができる。従来、重合遅延剤
は、重合性化合物を保存する際に材料の自発的な重合反
応の進行を防ぐために添加されている。しかしながら、
上記の技術においては、重合遅延剤を、重合反応の制御
のためにではなく、微細構造形成のための具体的な手法
として用いている。
【0011】また、光強度の高い部分と低い部分との高
分子状態に大きな特性の変化を生じさせるために、重合
開始剤の反応性を向上させる方法が特開平11−280
2号公報に開示されている。この方法では、重合開始剤
の反応性を向上させるために増感色素として機能する色
素材料の添加を採用している。しかしながら、この方法
は、重合自体を活発化するものの、微細な高分子分布構
造を形成することは難しい。
【0012】一方、作製された高分子および液晶からな
るHPDLC層を用いた素子では、画素の明状態と暗状
態とが印加電圧によって制御されるが、電圧印加時に重
合した高分子の構造が動いたり崩れたりして信頼性の高
い素子が得られないという問題もある。
【0013】さらに、HPDLC層パターンを用いたカ
ラー表示のためには、R,G,Bに相当する波長である
各450、550、650nm付近に露光干渉ピッチを
合わせる必要があり、露光用入射光の波長もそれに追従
するように長くする必要がある。現実には、材料による
長波長化が難しいため、別の手段として、短波長の光を
大きな入射角(60°〜80°程度)で露光するオフア
クシス露光(二光束干渉露光)などを採用することが考
えられる。
【0014】しかしながら、オフアクシス露光では、波
長毎の入射角の制約から、R、G、Bの各々の反射角度
を一致させることができない。そのため、現実的なデバ
イスとして、周囲光の入射に対してR、G、Bの反射方
向が異なり、表示画素が持つべき加法混色が成り立たな
くなる。例えば、青色反射機能を有する液晶/高分子複
合デバイスを作製するために、重合開始剤(感度波長3
60nm)を添加することによって、高分子の一般的な
反応波長である350nmに近い露光波長(Arレー
ザ,364nm)を用いてみたが、高分子層と液晶層と
が交互に積層された構造のHPDLC層は得られなかっ
た。また、前述のように、短い露光波長(364nm)
を用いる場合、長波長域の赤を反射するホログラム(6
50nm程度のピッチ)を作製するには、90°近傍
(80°を越える)といったかなり大きな入射角で光を
入射させる必要があるため、技術的には困難である。こ
のため、液晶/高分子複合デバイスにオフアクシス等の
光学機能性を付与することが不可能であり、作業の容易
性、効率性などが良くなかった。
【0015】本発明は、従来の上記の問題に鑑みてなさ
れたものであり、その目的は、高分子層と液晶層とが交
互に積層された構造のHPDLC層を長波長光による露
光で容易に作製できる材料としての光重合性組成物、そ
の光重合性組成物によって形成されるHPDLC層すな
わち光機能性膜、およびその光機能性膜の製造方法を提
供することにある。
【0016】
【課題を解決するための手段】本発明の光重合性組成物
は、上記の課題を解決するために、重合開始剤、増感色
素、少なくとも1種類の重合性化合物および少なくとも
1種類の重合遅延剤を含み、上記重合性化合物が屈折率
異方性(異常光屈折率と常光屈折率との差)を有し、か
つ異方性を反映する屈折率差が0.05以上ある化合物
であり、該重合遅延剤が、上記重合性化合物に対し1重
量%以上かつ30重量%以下であることを特徴としてい
る。
【0017】また、本発明の他の光重合性組成物は、重
合開始剤、増感色素、少なくとも2種類の重合性化合物
および少なくとも1種類の重合遅延剤を含み、上記重合
性化合物が高分子化したときの互いの屈折率差が0.0
5以上ある化合物であり、該重合遅延剤が、上記重合性
化合物に対し1重量%以上かつ30重量%以下であるこ
とを特徴としている。なお、この光重合性組成物におけ
る複数の重合性化合物は、屈折率異方性を有する化合物
と有しない化合物との組み合わせであってもよい。
【0018】上記のように構成される光重合性組成物
に、光強度を空間的に変調する露光法によって光を照射
して光重合させると、その結果得られる高分子におい
て、密度、屈折率、凹凸形状および配向状態のいずれか
1つ以上の物理量が空間的に分布し、かつその分布にお
いて微細パターン(100μm以下、特に10μm以下
の幅)が形成される。パターンの形成では、物性的に高
分子の密度や屈折率が異なる場合、パターンが書き込ま
れた領域(露光領域)と書き込まれていない領域(非露
光領域)とで配向が異なる場合、パターンが書き込まれ
た部位に高分子成分が存在し、書き込まれていない部分
に高分子成分が存在しない形状になる場合が考えられ
る。高分子成分が存在する領域と存在しない領域とで凹
凸構造が形成される。
【0019】なお、上記の高分子を光学素子(光機能性
膜)として利用する際の特性として、50nm以上の反
射波長域を得るためには、屈折率において次の条件を満
たすことが必要である。つまり、屈折率異方性を有する
少なくとも1種類の重合性化合物を用いる場合、その重
合性化合物が0.05以上の屈折率差を示すことが必要
である。また、少なくとも2種類の重合性化合物を用い
る場合は、重合性化合物が高分子化したときの互いの屈
折率差が0.05以上あることが必要である。
【0020】重合性化合物については、1種類の化合物
を用いるよりも、複数の化合物を用いる方が好ましい。
1種類の化合物の場合、溶解度に制限があるために、そ
の量を多くすることができず、所望の液晶/高分子複合
材料を作製することが困難になることがある。一方、複
数の化合物を用いる場合、化合物の総量が多くなって
も、それぞれの化合物単体の量が低く抑えられるので、
組成物を液晶に対して均一に相溶させることができる。
【0021】また、上記光重合性組成物においては、上
記重合遅延剤が、上記重合性化合物に対し5重量%以上
かつ20重量%以下であることが、より好ましい。重合
遅延剤の現実的な添加量には、重合性化合物毎に最適な
範囲が存在しており、それを考慮すれば、最もよく使用
される範囲として5重量%以上かつ20重量%以下が適
当である。
【0022】さらに、上記組成物における上記増感色素
による光吸収が、上記重合性化合物の光重合を行うため
の露光波長において2%以上であることが好ましい。こ
のような条件で、増感色素による光吸収が認められる場
合、上記のような微細パターンが良好に形成される。ま
た、後に詳述するように、上記のような条件で増感色素
を用いることによって、結果として露光波長を長波長化
させることができる。
【0023】本発明の光機能性膜は、液晶および高分子
からなる液晶/高分子複合体内に屈折率分布を有する周
期構造が形成されている光機能性膜であって、前述の各
光重合性組成物と液晶材料との混合組成物への光照射に
よって上記光重合性組成物が光重合された結果、上記液
晶/高分子複合体が形成されている。
【0024】上記の混合組成物への光照射によって光重
合性組成物が光重合されると前述のような高分子が形成
されるが、その高分子が微細パターンを形成することに
よって、液晶/高分子複合体において周期構造が形成さ
れる。
【0025】上記の光機能性膜においては、上記重合性
化合物の光重合を行うための露光波長の光強度分布が、
ほぼ液晶/高分子複合体全体の平均屈折率×2倍の波長
にあることが好ましい。このような露光波長を用いるこ
とによって、周期構造を容易に形成することができる。
【0026】上記のような光機能性膜を作製するには、
上記光重合性組成物の光重合のために少なくとも1つの
コヒーレントな光束を用い、そのうちの1つの光束を、
基板間に挟持された上記混合組成物に該基板面に対して
垂直方向から入射させること、すなわち、マスク露光
法、干渉露光法などの光強度を空間的に変調する手法を
用いることが好ましい。
【0027】このような手法を用いることによって、光
重合性組成物に照射される光の強度が一様ではなく空間
的に分布する露光状態が得られる。これにより、光機能
性膜における高分子について、密度、屈折率、凹凸形状
および配向状態のうちの少なくともいずれか1つの物理
量の空間分布が微細パターンを形成する構造を容易に得
ることができる。
【0028】
【発明の実施の形態】本発明の実施の一形態について図
1ないし図6に基づいて説明すれば、以下の通りであ
る。
【0029】本実施の形態に係る反射型液晶表示素子
は、図1に示すように、互いに対向する2枚の透明なガ
ラス基板1・2を透光性基板として備えている。ガラス
基板1の表面には、例えばインジウム錫酸化物(一般に
ITOと称される)からなる複数の透明電極3…が、互
いに平行に配置されている。
【0030】一方、ガラス基板2の表面には、例えばI
TOからなる複数の透明電極4…が透明電極3…と直交
するように互いに平行に配置されている。上記の透明電
極3…および透明電極4…上には、ラビング処理などの
一軸配向処理が施された配向膜5・6がそれぞれ形成さ
れている。配向膜5・6としては、ポリイミド、ナイロ
ンまたはポリビニルアルコール等の有機高分子からなる
膜またはSiO2斜方蒸着膜等が用いられる。配向膜5・6
に有機高分子膜を用いた場合は、一般的に、液晶分子が
電極基板に対してほぼ平行に配向するように配向処理が
なされる。
【0031】光機能性膜としてのHPDLC層7は、対
向するようにして図示しないシール剤で貼り合わされた
ガラス基板1・2の間の空間内に配されている。HPD
LC層7は、液晶層および高分子層が交互に積層されて
なる液晶/高分子複合体である。その積層構造は、ガラ
ス基板1・2に平行な平面構造、あるいはガラス基板1
・2からある方向に傾斜した平面構造を持つ。このよう
なHPDLC層7は、後述するように、液晶材料と光重
合性組成物との混合組成物を、後述する光学系41(図
3参照)を用いて露光して光重合性組成物を重合させる
ことによって得られる。
【0032】また、セル厚が一定となるように、配向膜
5・6間には、スペーサ8…が配置される。さらに、光
入射側に位置するガラス基板2における、透明電極4が
設けられた表面とは反対側の表面に、光拡散膜9が設け
られている。この光拡散膜9は、表示面の正面輝度を高
めるために、HPDLC層7によって反射された入射光
を正面に集める機能を有しており、プリズムシートなど
によって構成される。一方、光反射側に位置するガラス
基板2における、透明電極3が設けられた表面とは反対
側の表面に、光吸収膜10が設けられている。この光吸
収膜10は、HPDLC層7を透過した入射光を吸収す
るために設けられており、例えば、1000Å以上の膜
厚を有するシリコン薄膜や、カーボンブラック(活性
炭)含有の樹脂コート膜からなる。
【0033】上記の透明電極3・4が対向する各方形の
領域により、図示しない画素領域が形成されている。こ
の画素領域においては、透明電極3・4に電圧が印加さ
れると、HPDLC層7における液晶層の屈折率が変化
して高分子層と液晶層との間の屈折率差がなくなるの
で、ブラッグ反射が生じず、入射光の全てがHPDLC
層7を透過し、光吸収膜10で吸収される結果、暗状態
が得られる。一方、透明電極3・4に電圧が印加されな
い場合、高分子層と液晶層との間に屈折率差が生じるの
で、高分子層と液晶層との間隔に対応した波長の光だけ
が、ブラッグ反射によってHPDLC層7で反射される
一方、他の波長の光がHPDLC層7を透過して光吸収
膜10で吸収される結果、明状態が得られる。
【0034】液晶と高分子材料とを組み合わせた機能性
デバイスにおいては、セル寸法の制約から、高分子の密
度、屈折率、凹凸形状、配向状態等の物理量の空間分布
パターンに、例えば、100μm以下、特に10μm以
下の幅といった高解像度が要求される。特に、高分子層
と液晶層とが交互に積層した構造のHPDLC層7にお
いては、ブラッグの反射条件より1μm以下の解像度が
要求される。
【0035】本実施の形態に係る光重合性組成物は、従
来の液晶/高分子複合体や高分子内部で屈折率分布を持
つ構造体などを形成する上で、光強度を空間的に変調す
る手法により、高分子の密度、屈折率、凹凸形状、配向
状態のいずれか1つ以上の物理量の空間分布において、
後述の露光パターンに応じた100μm以下、特に10
μm以下の幅でパターンを形成することが可能である。
また、本光重合性組成物は、組成物の構成成分として、
重合開始剤、重合性化合物、重合遅延剤および増感色素
を含んでいる。
【0036】上記の重合性化合物としては、(i) 屈折率
異方性を有し、かつ異方性を反映する屈折率差が0.0
5以上ある少なくとも1種類の化合物か、あるいは、(i
i)高分子化した場合に屈折率差が0.05以上ある少な
くとも2種類の化合物のいずれかが用いられる。(ii)の
重合性化合物を用いる場合、重合反応条件が互いに異な
る、屈折率異方性を持たない2種類以上の重合性化合物
からなる組成物を用いることになる。このような組成物
は、屈折率異方性を持たない化合物のみからなっていて
もよいし、または屈折率異方性を持つ化合物と持たない
化合物の両方からなっていてもよい。
【0037】(i) において、1種類の化合物を用いた場
合、溶解度に制限があるために、その量を多くすること
ができず、所望の液晶/高分子複合材料(混合物)を作
製することが困難になることがある。一方、(i) および
(ii)において、2種類以上の化合物を用いる場合、組成
物(化合物の混合物)全体の量が多くなっても、それぞ
れの化合物単体の量が低く抑えられるので、組成物を液
晶に対して均一に相溶させることができる。
【0038】上記の重合遅延剤は、重合性化合物の総量
に対し1重量%以上かつ30重量%以下、好ましくは5
重量%以上かつ20重量%以下含まれている。また、増
感色素は、パターン周期の2倍の波長に対して吸収が2
%以上である。
【0039】重合遅延剤の例として、その分子構造内に
重合に寄与し得る不飽和結合と、それに接してπ電子結
合で共役した官能基とを持ち、その集まりが1つの共役
系を形成しうるような官能基の集合した部位を含む化合
物を挙げることができる。この重合遅延剤は、重合性化
合物の総量に対し1重量%以上かつ30重量%以下、好
ましくは5重量%以上かつ20重量%以下の1種類以上
から構成される。
【0040】重合遅延剤として単一の化合物を用いた場
合、その添加量が過剰であると、液晶性を損なったり、
配向を乱したりするおそれがある。また、重合遅延剤の
添加量が微量(1重量%より少ない)である場合は、そ
の効果を十分発揮することができなくなる。さらに、重
合遅延剤の現実的な添加量は、化合物毎に最適な範囲が
存在しており、最もよく使用される範囲として5重量%
以上かつ20重量%以下が適当である。
【0041】増感色素としては、色素のエネルギー準位
が重合開始剤のそれより低く、かつ重合開始剤との間で
エネルギーの授受が可能な化合物であって、反応後に色
素あるいは色素との反応により生成された化合物には、
吸収が可視域にないことが望ましい。具体的には、増感
色素は、重合反応前には可視域の露光波長の光を吸収
し、重合開始剤に対してエネルギーの授受や反応が可能
な化合物であり、重合反応終了時には光を吸収しなくな
ることが要求される。増感色素を用いた増感反応は、光
によって励起されて活性化した増感色素が重合開始剤を
アタックして重合反応が連鎖していくことによって起こ
る。
【0042】本発明においては、高分子部分に機能を持
たせるため、光重合時の照射光の空間的強度変調による
パターン化(例えば実用的な手法として光マスク露光法
や光干渉露光法)を使うことで、重合後の構造内部に2
次元的または3次元的な光学的な特性分布をもたらすこ
とができる。
【0043】ここで、光マスク露光法とは、2次元的に
露光領域/非露光領域ができるように光透過性の平面基
板上に遮光性材料によりパターンが形成された光マスク
を使い、露光対象にこの光マスクを透過した光により照
射することにより、2次元的にパターン化された露光部
/非露光部を形成する手法である。また、光干渉露光法
とは、コヒーレントな2つの光がある空間内で所定の角
度で交差することで干渉し、空間的に光強度分布が生じ
る現象を利用して、厚みのある露光対象内でコヒーレン
トな2つの光を干渉させた領域で、空間的に露光させる
方法である。
【0044】素子の特性として、50nm以上の反射波
長域を得るためには、0.05以上の屈折率差Δnが必
要である。これは、文献(HAmaclcod,“Thin-Film Opti
calFilters, second edition ”, p120, Adam Hilger L
td, Bristol, 1986)に準拠している。図2に、ある反
射率を得るために必要な屈折率差とセル層とをまとめて
示す。この図から分かるように、屈折率差0.05で9
0%以上の反射率を得るためには、素子のセル厚は10
〜20μm程度必要になる。
【0045】
【実施例】以下の手順で材料組成の調整、露光用評価セ
ルの作製および露光を行い、その結果を評価した。
【0046】〔液晶/光重合性組成物の調整〕重合性組
成物として、イソボニルアクリレートとジアクリレート
とが重量比7対3で混合されたアクリレート混合物を使
用し、重合開始剤として、Irgacure 369(チバガイギー
製)またはその同等品を使用し、重合遅延剤として、p-
phenylstyrene (以下、ppstと略記する)を使用
し、増感色素として、DTX−S(チオキサン、日本化
薬製)を使用した。重合性組成物に使用した化合物は、
化合物自体が液晶性を示さないか、液晶性を示したとし
ても高温においてのみである。したがって、露光実験を
行なう室温近傍では、重合性組成物のみで液晶性を示さ
ない。
【0047】イソボニルアクリレートおよびジアクリレ
ートは、それぞれ屈折率異方性を示さない。また、これ
らの混合物は、1つの共重合性高分子になり、その高分
子単独でも屈折率異方性を示さない。しかしながら、こ
の高分子は、液晶と組み合わされたときに屈折率異方性
を示すため、その値は、本来、異常光線の屈折率差Δn
e が約0.3,常光線の屈折率差Δno が約0.07で
ある。ところが、液晶および高分子がドロップレット状
態である場合には、屈折率異方性の値が上記の値の二乗
平均となることが知られている。
【0048】なお、高分子は、反応直後にドロップレッ
トとして分散している(あるいはネットワーク構造にな
る)が、比重等の関係で最終的にはドロップレットとし
て均一に分散しなくなる。したがって、ドロップレット
状の高分子は、安定状態で基板に付着したり、ネットワ
ーク構造に取り込まれたりする。
【0049】また、2種類以上の重合性化合物を使用す
る場合、上記の他に、次の化合物の組み合わせが考えら
れる。例えば、F(フッ素)で置換された部位を有する
アクリレート(n=1.45以下)と、ジアクリレー
ト、Brで置換された部位を有するアクリレートおよび
熱重合性エポキシ系材料(いずれもn=1.5以上)の
少なくとも1つとの組み合わせが好適である。
【0050】重合開始剤および増感色素は、各々アクリ
レート混合物に対して1重量%であり、重合遅延剤(p
pst)は、アクリレート混合物に対して1、3、5、
30重量%の4種類を試した。重合遅延剤については、
単一の化合物を多量添加すると、液晶の相系列を乱すの
で、単体として添加する量には限界がある。このため、
2種類以上の重合遅延剤を添加することが、より好まし
い。また、30重量%を超える添加量では、溶解せずに
析出する可能性が高い。
【0051】液晶として、TL213(メルクジャパン
製)を使用した。このTL213は、(分散型液晶)P
DLCに好適であり、高い屈折率異方性Δn(Δn≧
0.2)を示す。この液晶と重合性化合物との割合は重
量比で1対1である。液晶としては、高屈折率異方性を
示し、かつ低いしきい値電圧で駆動が可能な液晶が好ま
しい。
【0052】〔露光用評価セルの作製〕空セルは、以下
の工程によって作製される。
【0053】まず、前述の2枚のガラス基板1・2(図
1参照)のそれぞれに、ITOを90nmの厚さで形成
してパターニングすることによって透明電極3・4を形
成する。次いで、その上にポリイミド(日産化学製のS
E−150)を塗布して配向膜5・6を形成し、この配
向膜5・6に対しアンチパラレルラビングを施して2枚
の電極基板を作製する。そして、これらの電極基板を1
0μmのセル厚となるように貼り合わせる。セル厚を制
御するスペーサ8…としては、10μm径のプラスチッ
クスペーサ(積水ファインケミカル製)を用いる。液晶
/高分子複合材料が液晶状態であることから、この複合
材料を通常の液晶と同様に注入法にて上記の空セルに注
入する。このようにして、評価セルが得られる。
【0054】上記の評価セルでは、パターン性を見る意
図での実験であるため、配向制御を優先し、屈折率異方
性を、液晶分子の配向を液晶/高分子複合材料の配向で
固定化することで取り出す方法を適用した。
【0055】〔光マスク露光法による100μm以下の
パターン作製の確認〕本実験では、液晶を混合しない状
態での重合性組成物を用いて、光マスク露光による10
0μm以下の幅のパターン作製の確認を行った。そのた
め、重合性組成物が注入された評価セルの一方の透明ガ
ラス基板上に、幅100μmと10μmとの2種類の光
透過スリットを形成したフォトマスクを固定した。露光
には、無偏光のUV光をコリメーションレンズを用いて
平行光状態にし、基板に対して垂直方向から照射した。
露光は、室温にて30秒間行った。
【0056】得られたパターンを、高解像度の光学顕微
鏡(カールツァイス社製)で評価した。100μmおよ
び10μmの幅のパターンにおいて、全てのパターンが
形状として確認できた。
【0057】なお、本実施例および後述の比較例1ない
し3の全てにおいて、ガラス基板1には原則として1.
1μm厚の#7059ガラス(コーニング社製)を用い
たが、本実験のフォトマスク(後述の参照光側マスク3
1)に接する側のガラス基板2のみは、ガラス基板2の
厚みによるパターンの解像度の低下を極力低減するため
に、50μm厚のAF−45ガラス(ショット社製)を
用いた。
【0058】〔光干渉露光法によるHPDLC層の作
製〕サンプルの液晶/光重合性組成物からなる混合組成
物を注入した評価セルに物体光と参照光とを照射するこ
とにより、混合組成物中にレーザ光の干渉パターンを照
射させた。レーザ光には、Arレーザ光(波長:364
nm)およびKrレーザ光(波長:407nm)を用い
た。この干渉パターンが照射された領域の混合物は、光
強度の高い領域で重合性組成物(光重合性材料)が重合
して高分子となり、また、光強度の低い領域には主に液
晶が集まる。この結果、高分子と液晶とが分離され、液
晶層と高分子層とからなる微細な層構造をなすHPDL
C層7が形成される。その後、光拡散膜9および光吸収
膜10(図1参照)を評価セルに形成すると、反射型液
晶素子が完成する。
【0059】このときの干渉露光は、図3に示す光学系
41で行った。この光学系41において、レーザ光源1
1から出射した直線偏向のレーザ光は、2枚のミラー1
2・13により反射し、λ/2板18と偏光ビームスプ
リッタ20とにより2光束に分かれる。一方の光束は、
ミラー14で反射した後にスペシャルフィルタ21を通
過後、コリメートレンズ23により平行光束に変換され
て参照光26として試料25の前面から照射される。も
う一方の光束は、ミラー15で反射した後、λ/2板1
9により偏光を90度回転させ、ミラー16・17で反
射した後にスペシャルフィルタ22を通過し、さらにコ
リメートレンズ24により平行光束に変換されて物体光
27として試料25(評価セル)の後面から照射され
る。
【0060】また、上記の試料25は、図4に示すよう
に、参照光26および物体光27が照射される。ここ
で、試料25のガラス基板1側に参照光側マスク31が
配され、ガラス基板2側に物体光側マスク32が配され
ている。参照光側マスク31には、遮光層31aがスト
ライプ状パターンを形成するように設けられ、物体光側
マスク32にも、同様の遮光層32aが設けられてい
る。また、物体光側マスク32には、試料25側の表面
にマイクロレンズアレイ32bが設けられている。
【0061】この干渉露光においては、物体光27がマ
イクロレンズアレイ32bを通過することによって微小
な面で形成される球面波に近い波面と、平面波である参
照光26とによって生じる干渉パターンを、ガラス基板
1・2間に充填された混合組成物に照射した。このと
き、原理的には、回転放物面に近い干渉パターンが得ら
れ、混合組成物中には、このようなパターンの液晶層お
よび高分子層による微細な層構造7a…が形成される。
また、混合組成物の他の部位にも、同様に干渉パターン
を生じさせることによって、層構造7b…および層構造
7c…が形成される。このようにして、HPDLC層7
が形成される。
【0062】また、この干渉露光において、参照光26
をガラス基板1・2の面方向に対し30°傾いた方向か
ら入射させた。これによって、ホログラムがオフアクシ
スとなるので、その方向から参照光26が入射したとき
にガラス基板1・2の法線方向を中心に拡散反射するよ
うな体積ホログラム層が形成される。
【0063】ホログラムの反射によって、R、G、Bの
各色の光反射性、オフアクシス性および拡散性を付与す
るために、本実施例では、光入射角を小さくすること、
各光の反射構造の形成のために用いる光源の波長を制約
し、かつ長波長(650nm程度)で反応させることな
どが必要になる。また、R、G、Bの各色をそれぞれ反
射させる構造を形成するに際して、露光に用いる光学系
において、露光波長以外の構成を共通化することが望ま
しい。
【0064】ホログラムを作製するには、上記のように
参照光と物体光とが必要である。このうち、参照光は、
ホログラムを再生する際には再生光(照明光/入射光)
に置き換えられるため、その入射角をほとんど変えるこ
とができないので、その代わりに物体光の入射角を変え
ることになる。物体光は、レンズ等の光学機能形状をホ
ログラムに付与するための光であるので、書き込まれる
光学機能が設計通りに再生できるようにするには、その
入射角を極力小さく、望ましくは0°に設定すべきであ
る。
【0065】ホログラム構造の基本周期構造は、下記の
ようにして表される。
【0066】ここで、λを入射光波長とし、nH 、nL
をそれぞれホログラム構造における高屈折率部の屈折
率、低屈折率部の屈折率とし、dH 、dL をそれぞれ高
屈折率部の層厚、低屈折率部の層厚とし、dH +dL
1周期とする。nH H =λ/4およびnL L =λ/
4であることから次式が得られる。 nH H +nL L =λ/2 また、nH =nL +Δnであることから、これと上式と
により次式が得られる。 nL (dH +dL )+ΔndH =λ/2
【0067】この式より、nL (dH +dL )+Δnd
H が、凡そ材料(液晶/高分子複合体)全体の平均屈折
率を表している。したがって、重合性化合物の光重合を
行うための露光波長の光強度分布が、(材料全体の平均
屈折率)×2倍の波長にあれば(露光波長が(材料全体
の平均屈折率)×2倍であれば)、ホログラム構造を容
易に形成することができる。
【0068】〔結果〕上記の手順で作製された評価セル
は、HPDLC層7における液晶層と高分子層との屈折
率差が生じており、表1に示すように、重合遅延剤が前
述のいずれの量のときもホログラムが形成され、そのホ
ログラムによる選択反射の色が確認された。ちなみに、
重合遅延剤が20重量%である場合も、同様な結果が得
られた。また、重合遅延剤が0.5重量%である場合
は、ホログラムが形成されないことが確認された。そし
て、透明電極3・4に電圧を印加すると、液晶層と高分
子層との屈折率差がなくなる結果、ホログラムが消失
し、暗状態が得られた。これらの反射ピークから算出さ
れた屈折率差Δnは0.05であった。
【0069】また、露光波長407nmにて作成された
評価セルを、液体窒素で凍結された後に剥がし、液晶を
イソプロピルアルコールで流し去った後、2Dスキャン
のAFM(原子間力顕微鏡)にて観察および測定した。
その結果、0.18μmのパターン幅の計算値に対し、
0.16μmの測定値が得られた。
【0070】このように、本実施例では、レーザ光のよ
うな光幅が狭い光源での長波長化がなされていなかった
現状に鑑みて、露光波長の拡大(400nm程度から最
長650nm程度まで)を図っている。
【0071】
【表1】
【0072】〔比較例1〕比較例として、実施例の液晶
/光重合性組成物と異なり、重合開始剤および重合遅延
剤が各々アクリレート混合物に対して各々1重量%とす
るが、増感色素を加えない混合組成物を作製し、同様に
して、セルにこの混合組成物を注入した後、波長364
nmのArレーザ光および波長407nmのKrレーザ
光を照射し、混合組成物中にレーザ光の干渉パターンを
発生させた。その結果、364nmの波長ではホログラ
ムが形成されたが、407nmの波長ではホログラムが
わずかにしか観察されなかった。
【0073】〔比較例2〕比較例として、実施例の液晶
/光重合性組成物から遅延剤が除かれるとともに、増感
色素を含む混合組成物と含まない混合組成物(2種類の
混合組成物)とを作製し、同様にして、セルにこの混合
組成物を注入した後、波長364nmのArレーザ光お
よび波長の407nmKrレーザ光を照射し、混合組成
物中にレーザ光の干渉パターンを発生させた。その結
果、それぞれの混合組成物材料が注入されたセルにおい
て、364nmおよび407nmのいずれの波長でもホ
ログラムは観察されなかった。
【0074】〔比較例3〕実施例の液晶/光重合性組成
物から開始剤が除かれるとともに、(i) 遅延剤および増
感色素を含む混合組成物、(ii)遅延剤を含むが増感色素
を含まない混合組成物、(iii) 遅延剤を含まないが増感
色素を含む混合組成物、および(iv)遅延剤および増感色
素を含まない混合組成物(4種類の混合組成物)を作製
し、同様にして、セルにこれらの混合組成物を注入した
後、波長364nmのArレーザ光および407nmの
Krレーザ光を照射し、混合組成物中にレーザ光の干渉
パターンを発生させた。その結果、364nmおよび4
07nmのいずれの波長でもホログラムは観察されなか
った。
【0075】また、重合開始剤、重合遅延剤および増感
色素が各々アクリレート混合物に対して1重量%である
とき、増感色素を含む液晶/光重合性組成物(実施例)
と、増感色素を含まない液晶/光重合性組成物(比較例
1)とによる反射率の違いを図5に示す。増感色素の存
在する場合には、図5において実線で示すように、印加
電圧がしきい値電圧付近(8〜10V)に達すると、反
射率が大きく変化し、やがて液晶層と高分子層との屈折
率差がなくなる。このように、増感色素が存在すること
により、明状態と暗状態との変化を得ることができる。
一方、増感色素の存在しない場合には、図5において一
点鎖線で示すように、印加電圧の変化に対してほとんど
反射率が変化しない。したがって、ホログラムの形成が
可能な比較例1のサンプルでは、液晶/光重合性組成物
が増感色素を含まないことによって明状態および暗状態
を得ることができない。
【0076】次に、用いた材料等の評価を行った。
【0077】増感色素を含む液晶/光重合性組成物(実
施例)と、増感色素を含まない液晶/光重合性組成物
(比較例1)との吸収波長を図6に示す。実験を行った
波長364nmにおいては、増感色素を含むときの吸収
が0.55abs(55%)であり、増感色素を含まな
いときの0.17abs(17%)に比べて38%大き
く、増感されていることが分かる。波長407nmにお
いても、増感色素による光吸収が好適である2%以上
(約3.7%)あり、増感されている。また、2%の光
吸収を示す際の波長は約415nmである。
【0078】また、用いたレーザ光は、一光束以上のコ
ヒーレントな光であり、少なくとも1つの光束が基板面
に対してほぼ垂直に入射するように調整されている。
【0079】なお、確認までに、実施例におけるレーザ
光を、より波長の長いYAGレーザの532nmに代え
てこれら一連の実験を行った。しかしながら、いずれの
場合にもホログラムは観察されなかった。これは、図6
からわかるように、532nmの波長においては、本実
験に用いた増感色素の効果が存在しないことによる。
【0080】以上の実施例および比較例1〜3の結果を
まとめて表2に示す。
【0081】
【表2】
【0082】以上の結果より、増感色素による光吸収
が、光重合を行なうための入射光の波長において2%以
上あれば、ホログラム作製に顕著な効果を持つことが明
確である。また、本実施例の方法によれば、現状では、
液晶層とが交互に積層された構造(HPDLC層)を得
ることができなかった露光波長である364nmや40
7nmによって、HPDLC層7を得ることができる。
これは、露光波長の長波長化が達成できたことを意味す
る。
【0083】
【発明の効果】以上のように、本発明の光重合性組成物
は、重合開始剤、増感色素、少なくとも1種類の重合性
化合物および少なくとも1種類の重合遅延剤を含み、上
記重合性化合物が屈折率異方性を有し、かつ異方性を反
映する屈折率差が0.05以上ある化合物であり、該重
合遅延剤が、上記重合性化合物に対し1重量%以上かつ
30重量%以下である構成である。
【0084】また、本発明の光重合性組成物は、重合開
始剤、増感色素、少なくとも2種類の重合性化合物およ
び少なくとも1種類の重合遅延剤を含み、上記重合性化
合物が高分子化したときの互いの屈折率差が0.05以
上ある化合物であり、該重合遅延剤が、上記重合性化合
物に対し1重量%以上かつ30重量%以下である構成で
ある。
【0085】上記の光重合性組成物に、光強度を空間的
に変調する露光法によって光を照射して光重合させる
と、その結果得られる高分子において、密度、屈折率、
凹凸形状および配向状態のいずれか1つ以上の物理量が
空間的に分布し、かつその分布において微細パターンが
形成される。したがって、この光重合性組成物を用いる
ことによって、その高分子と液晶とからなる液晶/高分
子複合体内に、高分子のパターンによる周期構造が形成
された光機能性膜を得ることができるという効果を奏す
る。
【0086】また、上記重合遅延剤が、上記重合性化合
物に対し5重量%以上かつ20重量%以下であること
で、適用可能な重合性化合物に対して適した重合遅延剤
の添加量として、最もよく使用される範囲が定められ
る。それゆえ、重合遅延剤の添加量を実用的な範囲で設
定することができるという効果を奏する。
【0087】さらに、上記組成物における上記増感色素
による光吸収が、上記重合性化合物の光重合を行うため
の露光波長において2%以上であることで、上記のよう
な微細パターンを良好に形成するとともに、露光波長の
長波長化を図ることができる。
【0088】本発明の光機能性膜は、液晶および高分子
からなる液晶/高分子複合体内に屈折率分布を有する周
期構造が形成されている光機能性膜であって、前述のい
ずれかに記載の光重合性組成物と液晶材料との混合組成
物への光照射によって上記光重合性組成物が光重合され
た結果、上記液晶/高分子複合体が形成されている構成
である。
【0089】光重合性組成物の光重合によって得られた
高分子が前述のように微細パターンを形成することによ
って、液晶/高分子複合体において周期構造が形成され
る。したがって、高分子と液晶層とが交互に分布するよ
うな周期構造の光機能性膜を容易に得ることができると
いう効果を奏する。
【0090】上記の光機能性膜においては、上記重合性
化合物の光重合を行うための露光波長の光強度分布が、
ほぼ液晶/高分子複合体全体の平均屈折率×2倍の波長
にあるので、周期構造を容易に形成することができると
いう効果を奏する。
【0091】光機能性膜の製造方法は、上記光重合性組
成物の光重合のために少なくとも1つのコヒーレントな
光束を用い、そのうちの1つの光束を、基板間に挟持さ
れた上記混合組成物に該基板面に対して垂直方向から入
射させる方法である。
【0092】このような手法を用いることによって、光
重合性組成物に照射される光の強度が一様ではなく空間
的に分布する露光状態が得られる。これにより、光機能
性膜における高分子について、前述のような微細パター
ンを形成する構造を容易に得ることができる。したがっ
て、高分子と液晶層とが交互に積層されるような構造の
光機能性膜を容易に得ることができるという効果を奏す
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の一形態に係る反射型液晶表示素
子の構成を示す断面図である。
【図2】所定の反射率を得るために必要な屈折率差と液
晶表示素子のセル厚との関係を示すグラフである。
【図3】実施例1の光機能性膜を用いた反射型液晶表示
素子の作製に用いた光学系を示す説明図である。
【図4】本発明の実施例に係る試料(評価セル)に物体
光および参照光を照射してこれらの干渉パターンを発生
させる構成を示す断面図である。
【図5】液晶/光重合性組成物に増感色素を含む場合
(実施例)と含まない場合(比較例1)との印加電圧と
反射率との関係を示すグラフである。
【図6】実施例および比較例に用いた材料の光吸収波長
を示すグラフである。
【符号の説明】
1・2 ガラス基板(基板) 7 HPDLC層(光機能性膜) 7a〜7c 層構造(周期構造) 26 参照光(光束) 27 物体光(光束) 41 光学系
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 徳丸 照高 大阪府大阪市阿倍野区長池町22番22号 シ ャープ株式会社内 (72)発明者 橋本 健吾 大阪府大阪市阿倍野区長池町22番22号 シ ャープ株式会社内 Fターム(参考) 2H025 AB14 AB17 AB20 AC01 BC14 BC34 BC43 BH05 BJ00 CA00 CA41 CC20 DA03 DA40 EA01 2H089 HA04 KA08 LA09 NA24 SA03 TA04 4F071 AA33 AA33X AA42 AF30 AF31 BA02 BB02 BB12 BC01 4J011 AA05 NA12 NB03 QA03 QA12 SA64 UA01 UA02

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】重合開始剤、増感色素、少なくとも1種類
    の重合性化合物および少なくとも1種類の重合遅延剤を
    含み、上記重合性化合物が屈折率異方性を有し、かつ異
    方性を反映する屈折率差が0.05以上ある化合物であ
    り、該重合遅延剤が、上記重合性化合物に対し1重量%
    以上かつ30重量%以下であることを特徴とする光重合
    性組成物。
  2. 【請求項2】重合開始剤、増感色素、少なくとも2種類
    の重合性化合物および少なくとも1種類の重合遅延剤を
    含み、上記重合性化合物が高分子化したときの互いの屈
    折率差が0.05以上ある化合物であり、該重合遅延剤
    が、上記重合性化合物に対し1重量%以上かつ30重量
    %以下であることを特徴とする光重合性組成物。
  3. 【請求項3】上記重合遅延剤が、上記重合性化合物に対
    し5重量%以上かつ20重量%以下であることを特徴と
    する請求項1または2に記載の光重合性組成物。
  4. 【請求項4】上記組成物における上記増感色素による光
    吸収が、上記重合性化合物の光重合を行うための露光波
    長において2%以上であることを特徴とする請求項1な
    いし3のいずれかに記載の光重合性組成物。
  5. 【請求項5】液晶および高分子からなる液晶/高分子複
    合体内に屈折率分布を有する周期構造が形成されている
    光機能性膜であって、請求項1ないし4のいずれかに記
    載の光重合性組成物と液晶材料との混合組成物への光照
    射によって上記光重合性組成物が光重合された結果、上
    記液晶/高分子複合体が形成されていることを特徴とす
    る光機能性膜。
  6. 【請求項6】上記重合性化合物の光重合を行うための露
    光波長の光強度分布が、ほぼ液晶/高分子複合体全体の
    平均屈折率×2倍の波長にあることを特徴とする請求項
    5に記載の光機能性膜。
  7. 【請求項7】請求項5または6に記載の光機能性膜を製
    造する方法であって、上記光重合性組成物の光重合のた
    めに少なくとも1つのコヒーレントな光束を用い、その
    うちの1つの光束を、基板間に挟持された上記混合組成
    物に該基板面に対して垂直方向から入射させることを特
    徴とする光機能性膜の製造方法。
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