JP3611651B2 - ポジ型感光性平版印刷版 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は感光性平版印刷版に関し、特にポジ型感光性平版印刷版に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、広く使用されているポジ型感光性平版印刷版は、支持体としての微細な粗面化処理を行ない、場合によってはアルカリエッチングによる表面清浄化を施した後、該アルミニウム板上に陽極酸化皮膜を設けて、その上にo−キノンジアジド化合物からなる感光層を設けたものである。o−キノンジアジド化合物は紫外線露光によりカルボン酸に変化することが知られており、従って、これをアルカリ水溶液で現像すると当該感光層の露光部のみが除去されて支持体表面が露出する。アルミニウム支持体の表面は親水性なので現像で支持体の表面が露出された部分(非画像部)は水を保持して油性インキを反発する。一方、現像によって感光層の除去されなかった領域(画像部)は、親油性なので水を反発し、インキを受け付ける。かかるポジ型感光性平版印刷版の現像液として使用されるアルカリ水溶液は、種々のものが知られているが、最も一般的に用いられているのは珪酸ナトリウム、珪酸カリウム等の珪酸塩水溶液である。その理由は珪酸塩の成分である酸化珪素SiO2 とアルカリ金属酸化物M2 Oの比率(一般に〔SiO2 〕/〔M2 O〕のモル比で表す)と両者の液中濃度を変えることによってある程度現像性の調節が可能とされるためである。
【0003】
しかし、上記の珪酸塩を主成分とする現像液においては、SiO2 濃度を高めると現像安定性は高まるが、SiO2 に起因する固形物が析出し易く、自動現機のノズルの目詰まりや、固着物による装置の汚れが水洗で溶解しにくいなどの問題を生じてしまうことが知られており、現像安定性に欠けることも知られている。また、現像液の廃液処理のさいに、中和処理を行おうとするとSiO2 に起因する液のゲル化が起こってしまい配管系が詰まるなどの不都合を生じ易い。このようなゲル化や固形物生成などの不都合を発生させず液の安定性を確保するにはpH12.7より高いpH値を常に維持する必要があり、従来のポジ型感光性平版印刷版の現像液はpH12.8〜13.2という高pHの現像液であった。しかし、このような高pHの現像液は、腐食性が強く、また廃液処理時の中和処理への負荷が非常に大きい。
これらの不都合を回避できる現像液として、現像安定化剤として、糖類、オキシム類、フェノール類、及びフッ素化アルコール類から選ばれる少なくとも1種の化合物を0.01モル/リットル以上含有し、かつアルカリ剤を含有する現像液、すなわち珪酸塩フリーの現像液が考えられるが、従来のポジ型感光性平版印刷版を現像しようとすると低pHによる感光層溶解性不足による現像不良や、アルミニウム支持体の陽極酸化皮膜が現像液で溶解され、現像液中に蓄積されて、カス、ヘドロとなって自動現像機の洗浄性を悪くしたり、スプレーの目詰まりを起こすなどという別の不都合点があった。
【0004】
また、珪酸塩を含まないpH10〜12.7程度の現像液で陽極酸化皮膜処理を施した基板を現像した場合、現像時に陽極酸化皮膜の溶解に伴い非画像部が白色化するという問題点もある。また、陽極酸化皮膜の溶解に伴い、陽極酸化皮膜の孔径が拡大し、そこへインキが入り込み、版を放置することで、インキがさらにとれにくくなるという問題点がある。このような現象を放置汚れと称している。さらに、珪酸塩を含む現像液においても、現像後、非画像部に感光層の一部がわずかに残存した場合、そこを消去すると汚れるという問題もあった。これを消去跡汚れと称している。
従来から支持体の陽極酸化皮膜への種々の処理が提案されている。現像時の溶解防止能があるといわれている水蒸気処理は、非画像部の白色化を防止することができるが、放置汚れの問題点は解消できなかった。一方、陽極酸化皮膜へのシリケート処理により、非画像部の白色化、放置汚れの問題は解決できるが、耐刷力が劣化するという欠点があった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的は、現像時における陽極酸化皮膜の溶解が防止され、また非画像部が白色化することなく、カスの発生や放置汚れが軽減あるいは解消され、且つ優れた耐刷力が得られる感光性平版印刷版を提供することである。本発明の目的はまた、消去跡汚れが軽減あるいは解消された感光性平版印刷版を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記目的を達成すべく鋭意検討を重ねた結果、粗面化処理及び陽極酸化処理を施した後、糖を含む水溶液で処理したアルミニウム支持体を使用することにより、現像時における陽極酸化皮膜の溶解が防止されて非画像部が白色化することなく、また放置汚れや消去跡汚れが軽減あるいは解消され、かつ優れた耐刷力を発揮する感光性平版印刷版が得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち本発明は、支持体が、粗面化処理、陽極酸化処理の後、糖を含む水溶液で処理されているアルミニウム板であることを特徴とするポジ型感光性平版印刷版に関する。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下に本発明のポジ型感光性平版印刷版について詳しく説明する。また感光性平版印刷版をPS版とも称す。
[支持体]
<アルミニウム板及びその粗面化処理、陽極酸化処理>
本発明において用いられるアルミニウム板は、純アルミニウムまたはアルミニウムを主成分とし微量の異原子を含むアルミニウム合金等の板状体である。この異原子には、ケイ素、鉄、マンガン、銅、マグネシウム、クロム、亜鉛、ビスマス、ニッケル、チタン等がある。合金組成としては、10重量%以下の異原子含有率のものである。本発明に好適なアルミニウムは、純アルミニウムであるが、完全に純粋なアルミニウムは、精錬技術上製造が困難であるため、できるだけ異原子を含まないものがよい。また、上述した程度の異原子含有率のアルミニウム合金であれば、本発明に使用し得る素材という事ができる。このように本発明に使用されるアルミニウム板は、その組成が特に限定されるものではなく、従来公知、公用の素材のものを適宜利用する事ができる。好ましい素材としては、JIS A 1050、同1100、同1200、同3003、同3103、同3005材が含まれる。本発明において用いられるアルミニウム板の厚さは、約0.1mm〜0.6mm程度である。アルミニウム板を粗面化処理するに先立ち、表面の圧延油を除去するための、例えば界面活性剤またはアルカリ性水溶液で処理する脱脂処理が必要に応じて行われる。
【0008】
アルミニウム板の表面を粗面化処理する方法としては、機械的に粗面化する方法、電気化学的に表面を溶解粗面化する方法および化学的に表面を選択溶解させる方法がある。機械的方法としては、ボール研磨法、ブラシ研磨法、ブラスト研磨法、バフ研磨法などと称せられる公知の方法を用いることが出来る。また、電気化学的な粗面化法としては塩酸または硝酸電解液中で交流または直流により行う方法がある。また、特開昭54−63902号公報に開示されているように両者を組み合わせた方法も利用することが出来る。
このように粗面化されたアルミニウム板は、必要に応じてアルカリエッチング処理及び中和処理された後、表面の保水性や耐摩耗性を高めるために陽極酸化処理が施される。アルミニウム板の陽極酸化処理に用いられる電解質としては多孔質酸化皮膜を形成するものならばいかなるものでも使用することができ、一般には硫酸、リン酸、蓚酸、クロム酸あるいはそれらの混酸が用いられる。それらの電解質の濃度は電解質の種類によって適宜決められる。
【0009】
陽極酸化の処理条件は用いる電解質により種々変わるので一概に特定し得ないが、一般的には電解質の濃度が1〜80%溶液、液温は5〜70℃、電流密度5〜60A/dm2 、電圧1〜100V、電解時間10秒〜5分の範囲にあれば適当である。
陽極酸化皮膜の量は1.0g/m2以上が好適であるが、より好ましくは2.0〜6.0g/m2の範囲である。陽極酸化皮膜が1.0g/m2未満であると耐刷性が不十分であったり、平版印刷版の非画像部に傷が付き易くなって、印刷時に傷の部分にインキが付着するいわゆる「傷汚れ」が生じ易くなる。
尚、このような陽極酸化処理は平板印刷版の支持体の印刷に用いる面に施されるが、電気力線の裏回りにより、裏面にも0.01〜3g/m2の陽極酸化皮膜が形成されるのが一般的である。
【0010】
<糖を含む水溶液による処理>
本発明の感光性平版印刷版は、上記のごとき処理を施し、さらに糖を含む水溶液で処理し得られたアルミニウム板を支持体として使用していることに特徴がある。
糖を含む水溶液による処理が施されていない場合、露光された感光層が現像によって除去された非画像部では白色化が起こり、また、現像液で溶解された陽極酸化皮膜が現像液中に蓄積されて、カス、ヘドロとなって自動現像機の洗浄性を悪くしたり、スプレーの目詰まりを起こすなどというの不都合が生じるとともに、陽極酸化皮膜の孔径が拡大し、印刷時にインキがとれにくくなり放置汚れがすすむ。一方、陽極酸化皮膜に糖を含む水溶液による処理がなされていると、現像液に対する陽極酸化皮膜の溶解が激減し、非画像部における白色化が軽減し、上記不都合点が解消される。
【0011】
上記水溶液による処理は、陽極酸化皮膜をこれらの水溶液と接触させて処理する。
本発明で使用する糖類としては、単糖類としては、グリセロール等のトリオース類、トレオースやエリスリトール等のテトロオース及び糖アルコール類、アラビノースやアラビトール等のペントース及び糖アルコール類、グルコースやソルビトール等のヘキソース及び糖アルコール類、D−グリセロ−D−ガラクトヘプトースやD−グリセロ−D−ガラクトヘプチトール等のヘプトース及び糖アルコール類、D−エリトロ−D−ガラクトオクチトール等のオクトース、D−エリトロ−L− グルコ− ノヌロース等のノノースを挙げることができる。
オリゴ糖類としては、サッカロース、トレハロース、ラクトースのような二糖類、ラフィノース、シクロデキストリンのような三糖類が挙げられる。
多糖類としては、アミロース、アラビナン、アルギン酸セルロースなどが挙げられる。
【0012】
本発明で使用する糖はまた、配糖体を包含する。本発明で用いる配糖体とは、糖部分と非糖部がエーテル結合等を介して結合している化合物をいう。これらの配糖体は非糖部分により分類することができ、その例としてアルキル配糖体、フェノール配糖体、クマリン配糖体、オキシクマリン配糖体、フラボノイド配糖体、アントラキノン配糖体、トリテルペン配糖体、ステロイド配糖体、からし油配糖体などを挙げることができる。
糖部分としては単糖類、オリゴ糖類、多糖類を挙げることができる。単糖類としてはグリセロール等のトリオース類、トレオースやエリスリトール等のテトロオース及び糖アルコール類、アラビノースやアラビトール等のペントース及び糖アルコール類、グルコースやソルビトール等のヘキソース及び糖アルコール類、D−グリセロ−D−ガラクトヘプトースやD−グリセロ−D−ガラクトヘプチトール等のヘプトース及び糖アルコール類、D−エリトロ−D−ガラクトオクチトール等のオクトース、D−エリトロ−L− グルコ− ノヌロース等のノノースを挙げることができる。オリゴ糖類としてはサッカロース、トレハロース、ラクトースのような二糖類、ラフィノース、シクロデキストリンのような三糖類が挙げられる。多糖類としてはアミロースやアラビナン等を挙げることができる。
糖部分としては単糖もしくはオリゴ糖が好ましく、より好ましくは単糖もしくは二糖である。
好ましい配糖体の例として下記一般式(I)の化合物を挙げることができる。
【0013】
【化1】
【0014】
(式中、Rは炭素原子数1〜20の直鎖もしくは分枝のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基を表す。)
上記一般式(I)のRで表される炭素原子数1〜20のアルキル基としては、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル、ノナデシル、エイコシル基などが挙げられ、これらアルキル基は直鎖または分枝していてもよく、環状アルキル基でもよい。
アルケニル基としては、例えばアリル、2−ブテニル基など、アルキニル基としては、例えば1−ペンチニル基が挙げられる。
【0015】
上記一般式(I)で表される具体的な化合物として、例えばメチルグルコシド、エチルグルコシド、プロピルグルコシド、イソプロピルグルコシド、ブチルグルコシド、イソブチルグルコシド、n−ヘキシルグルコシド、オクチルグルコシド、カプリルグルコシド、デシルグルコシド、2−エチルヘキシルグルコシド、2−ペンチルノニルグルコシド、2−ヘキシルデシルグルコシド、ラウリルグルコシド、ミリスチルグルコシド、ステアリルグルコシド、シクロヘキシルグルコシド、2−ブチニルグルコシドが挙げられる。これらの化合物は、配糖体の1種であるグルコキシドで、ブドウ糖のヘミアセタール水酸基が他の化合物をエーテル状に結合したものであり、例えばグルコースとアルコール類を反応させる公知の方法により得ることができる。これらのアルキルグリコシドの一部はドイツ Henkel 社で商品名グルコポン(GLUCOPON)として市販されており、本発明ではそれを使用することができる。
好ましい配糖体の別の例として、サポニン類、ルチントリハイドレート、ヘスペリジンメチルカルコン、ヘスペリジン、ナリジンハイドレート、フェノール− β−D− グルコピラノシド、サリシン、3’,5,7− メトキシ−7− ルチノシドを挙げることができる。
【0016】
本発明では、上記糖の1種または2種以上を併用して水溶液とすることができる。
水溶液中における糖の濃度は、一般に0.01〜20重量%が適当であり、好ましくは0.05〜10重量%である。0.01重量%未満では陽極酸化皮膜の溶解防止効果が減少し、非画像部の白色化、放置汚れが生じる傾向がある。また20重量%を越えると、陽極酸化皮膜の溶解防止効果は変わらないが、放置汚れが生じやすくなる。
25℃でのpHが2〜12、好ましくは8〜11のこれらの水溶液に、室温から100℃、好ましくは40〜70℃で、2秒〜5分、好ましくは5秒〜30秒接触させる。接触させる方法は、浸漬でもスプレーによる吹き付けでも、いかなる方法によってもかまわない。
上記水溶液の処理温度が25℃よりも低いと、陽極酸化皮膜の溶解防止効果が少なくなり、非画像部の白色化、放置汚れが生じる。また70℃以上にしても、陽極酸化皮膜の溶解防止効果は飽和し、熱エネルギーの損失につながる。
また上記水溶液のpHが2より低いと陽極酸化皮膜の溶解防止効果が少なくなり、非画像部の白色化、放置汚れが生じる。pHが12より高いと、糖を含む水溶液による処理時に陽極酸化皮膜が溶解し、白色化がすすむ。また放置汚れも生じる。
上記水溶液のpH調整には、pH調整が可能なものなら何れも使用することができる。具体的には、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、硫酸、硫酸ナトリウム、炭酸、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、リン酸、リン酸ナトリウムなどを挙げることができる。
【0017】
<下塗層>
以上のように、糖を含む水溶液による処理を施したあと、感光層を塗設する前に親水層を設けることが望ましい。好ましくは下記のような有機下塗層が設けられる。
有機下塗層に用いられる有機化合物は、例えばカルボキシメチルセルロース、デキストリン、アラビアゴム、2−アミノエチルホスホン酸などのアミノ基を有するホスホン酸類、置換基を有していてもよいフェニルホスホン酸、ナフチルホスホン酸、アルキルホスホン酸、グリセロホスホン酸、メチレンジホスホン酸及びエチレンジホスホン酸などの有機ホスホン酸、置換基を有してもよいフェニルリン酸、ナフチルリン酸、アルキルリン酸及びグリセロリン酸などの有機リン酸、置換基を有してもよいフェニルホスフィン酸、ナフチルホスフィン酸、アルキルホスフィン酸及びグリセロホスフィン酸などの有機ホスフィン酸、グリシンやβ−アラニンなどのアミノ酸類、及びトリエタノールアミンの塩酸塩などのヒドロキシル基を有するアミンの塩酸塩などから選ばれる。これらの1種を単独で使用してもよいし、あるいは2種以上を併用してもよい。
【0018】
この有機下塗層は次のような方法で設けることができる。
水またはメタノール、エタノール、メチルエチルケトンなどの有機溶剤もしくはそれらの混合溶剤に上記の有機化合物を溶解させた溶液をアルミニウム板上に塗布、乾燥して設ける方法と、水またはメタノール、エタノール、メチルエチルケトンなどの有機溶剤もしくはそれらの混合溶剤に上記の有機化合物を溶解させた溶液に、アルミニウム板を浸漬して上記有機化合物を吸着させ、しかる後、水などによって洗浄、乾燥して有機下塗層を設ける方法である。前者の方法では、上記有機化合物の0.005〜10重量%の濃度の溶液を種々の方法で塗布できる。例えば、バーコーター塗布、回転塗布、スプレー塗布、カーテン塗布などいずれの方法を用いてもよい。また、後者の方法では、溶液の濃度は0.01〜20重量%、好ましくは0.05〜5重量%であり、浸漬温度は20〜90℃、好ましくは25〜50℃であり、浸漬時間は0.1秒〜20分、好ましくは2秒〜1分である。
上記の溶液は、アンモニア、トリエチルアミン、水酸化カリウムなどの塩基性物質や、塩酸、リン酸などの酸性物質によりpHを調節し、pH1〜12の範囲で使用することもできる。また、感光性平版印刷版の調子再現性改良のために黄色染料を添加することもできる。
有機下塗層の乾燥後の被覆量は、2〜200mg/m2 が適当であり、好ましくは5〜100mg/m2 である。上記の被覆量が2mg/m2 より少ないと十分な耐刷性能が得られない。また、200mg/m2 より多くても同様である。
【0019】
<バックコート>
支持体の裏面には、必要に応じてバックコートが設けられる。かかるバックコートとしては、特開平5−45885号公報記載の有機高分子化合物および特開平6−35174号公報記載の有機または無機金属化合物を加水分解および重縮合させて得られる金属酸化物からなる被覆層が好ましく用いられる。
これらの被覆層のうち、Si(OCH3)4 、Si(OC2 H5)4 、Si(OC3 H7)4 、Si(OC4 H9)4 などの珪素のアルコキシ化合物が安価で入手し易く、それから得られる金属酸化物の被覆層が耐現像性に優れており特に好ましい。
【0020】
以下、本発明の感光性平版印刷版における感光層、その成分、現像処理等について説明する。
[感光層]
上記のようにして得られた支持体上に、公知のポジ型感光性組成物よりなる感光層を設けて、感光性平版印刷版を得る。
感光層の組成物としては、露光の前後で現像液に対する溶解性又は膨潤性が変化するものであればいずれも使用できる。以下、その代表的なものについて説明する。
<o−キノンジアジド化合物>
ポジ型感光性組成物の感光性化合物としては、o−キノンジアジド化合物が挙げられ、その代表としてo−ナフトキノンジアジド化合物が挙げられる。
o−ナフトキノンジアジド化合物としては、特公昭43−28403号公報に記載されている1,2−ジアゾナフトキノンスルホン酸クロライドとピロガロール−アセトン樹脂とのエステルであるものが好ましい。その他の好適なオルトキノンジアジド化合物としては、米国特許第3,046,120 号および同第3,188,210 号明細書中に記載されている1,2−ジアゾナフトキノン−5−スルホン酸クロリドとフェノール−ホルムアルデヒド樹脂とのエステルがあり、特開平2−96163号公報、特開平2−96165号公報、特開平2−96761号公報に記載されている1,2−ジアゾナフトキノン−4−スルホン酸クロリドとフェノール−ホルムアルデヒド樹脂とのエステルがある。その他の有用なo−ナフトキノンジアジド化合物としては、数多くの特許に報告され、知られているものが挙げられる。たとえば、特開昭47−5303号、同48−63802号、同48−63803号、同48−96575号、同49−38701号、同48−13354号、特公昭37−18015号、同41−11222号、同45−9610号、同49−17481号公報、米国特許第2,797,213 号、同第3,454,400 号、同第3,544,323 号、同第3,573,917 号、同第3,674,495 号、同第3,785,825 号、英国特許第1,227,602 号、同第1,251,345 号、同第1,267,005 号、同第1,329,888 号、同第1,330,932 号、ドイツ特許第854,890 号などの各明細書中に記載されているものをあげることができる。
【0021】
その他のo−ナフトキノンジアジド化合物としては、分子量1,000以下のポリヒドロキシ化合物と1,2−ジアゾナフトキノンスルホン酸クロリドとの反応により得られる化合物が挙げられる。このような化合物の具体例は、特開昭51−139402号、同58−150948号、同58−203434号、同59−165053号、同60−121445号、同60−134235号、同60−163043号、同61−118744号、同62−10645号、同62−10646号、同62−153950号、同62−178562号、同64−76047号、米国特許第3,102,809 号、同第3,126,281 号、同第3,130,047 号、同第3,148,983 号、同第3,184,310 号、同第3,188,210 号、同第4,639,406 号などの各公報または明細書に記載されているものを挙げることができる。
【0022】
とりわけ好ましいo−ナフトキノンジアジド化合物として、重量平均分子量2,000以上の、ポリヒドロキシ化合物のo−キノンジアジドスルホン酸エステルが挙げられる。該ポリヒドロキシ化合物としてはピロガロール・アセトン樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、クレゾールホルムアルデヒド樹脂、ヒドロキシスチレン樹脂およびハロゲン化ヒドロキシスチレン樹脂などが挙げられる。
o−ナフトキノンジアジド化合物の分子量が2,000以上の場合は、その分子量が2,000以下の場合と比較して、より良好な画像強度が得られる。
【0023】
これらのo−ナフトキノンジアジド化合物を合成する際は、ポリヒドロキシ化合物のヒドロキシル基に対して1,2−ジアゾナフトキノンスルホン酸クロリドを0.2〜1.2当量反応させることが好ましく、0.3〜1.0当量反応させることがさらに好ましい。1,2−ジアゾナフトキノンスルホン酸クロリドとしては、1,2−ジアゾナフトキノン−5−スルホン酸クロリドまたは1,2−ジアゾナフトキノン−4−スルホン酸クロリドを用いることができる。
また得られるo−ナフトキノンジアジド化合物は、1,2−ジアゾナフトキノンスルホン酸エステル基の位置及び導入量の種々異なるものの混合物となるが、ヒドロキシル基がすべて1,2−ジアゾナフトキノンスルホン酸エステルで転換された化合物がこの混合物中に占める割合(完全にエステル化された化合物の含有率)は5モル%以上である事が好ましく、さらに好ましくは20〜99モル%である。
本発明の感光性組成物中に占めるこれらのo−キノンジアジド化合物の量は10〜50重量%が適当であり、より好ましくは15〜40重量%である。
上述の分子量2,000以上のo−ナフトキノンジアジド化合物と、分子量2,000未満のo−ナフトキノンジアジド化合物を併用することもできる。この場合、後者のo−キノンジアジド化合物の割合は、全o−キノンジアジド化合物に対して50重量%以下であることが好ましく、更に好ましくは30重量%以下である。
【0024】
<高分子バインダー>
o−キノンジアジド化合物は単独でも感光層を構成するが、アルカリ水に可溶な樹脂を結合剤(バインダー)としてこの種の樹脂と共に使用することが好ましい。このようなアルカリ水に可溶性の樹脂としては、この性質を有するノボラック樹脂があり、たとえばフェノールホルムアルデヒド樹脂、m−クレゾールホルムアルデヒド樹脂、p−クレゾールホルムアルデヒド樹脂、o−クレゾールホルムアルデヒド樹脂、m−/p−混合クレゾールホルムアルデヒド樹脂、フェノール/クレゾール(m−,p−,o−又はm−/p−,m−/o−混合のいずれでもよい)混合ホルムアルデヒド樹脂などのクレゾールホルムアルデヒド樹脂などが挙げられる。その他、レゾール型のフェノール樹脂類も好適に用いられ、フェノール/クレゾール(m−,p−,o−又はm−/p−,m−/o−混合のいずれでもよい)混合ホルムアルデヒド樹脂が、好ましく、特に特開昭61−217034号公報に記載されているフェノール樹脂類が好ましい。
【0025】
また、フェノール変性キシレン樹脂、ポリヒドロキシスチレン、ポリハロゲン化ヒドロキシスチレン、特開昭51−34711号公報に開示されているようなフェノール性水酸基を含有するアクリル系樹脂、特開平2−866号に記載のスルホンアミド基を有するアクリル系樹脂や、ウレタン系の樹脂、等種々のアルカリ可溶性の高分子化合物も用いることができる。これらのアルカリ可溶性高分子化合物は、重量平均分子量が500〜20,000で数平均分子量が200〜60,000のものが好ましい。
かかるアルカリ可溶性の高分子化合物は1種類あるいは2種類以上を組合せて使用してもよく、一般的には全組成物の80重量%以下の添加量で用いられる。更に、米国特許第4,123,279 号明細書に記載されているように、t−ブチルフェノールホルムアルデヒド樹脂、オクチルフェノールホルムアルデヒド樹脂のような、炭素数3〜8のアルキル基を置換基として有するフェノールとホルムアルデヒドとの縮合物を併用することは画像の感脂性を向上させる上で好ましい。
【0026】
本発明の感光性平版印刷版用支持体に設ける感光層の高分子バインダーとして特に好ましいものに、1分子中に芳香族基を3つ以上有する成分の含有量が90重量%以上で、且つ重量平均分子量が10,000以上のノボラック型フェノール・ホルムアルデヒド樹脂がある。
以下、本明細書中では高分子バインダーにおける上記の1分子中に芳香族基を3つ以上有する成分を3核体以上の成分と称する。ここで、重量平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)のポリスチレン換算値をもって定義される。
かかるフェノール・ホルムアルデヒド樹脂は、フェノールとホルムアルデヒドもしくはパラホルムアルデヒド等のアルデヒド類とを酸性触媒を用いて縮合することにより合成される。特に本発明に用いられる重量平均分子量が10,000以上のフェノール・ホルムアルデヒド樹脂を得るには、フェノール1モルに対して0.7〜0.9モルのアルデヒド類を用いることが好ましい。アルデヒド類が0.7モル以下では十分な分子量が得られず、また0.9モルを越えるとゲル化物が生成し易くなり好ましくない。
縮合反応に用いる酸性触媒としては塩酸、硫酸、蟻酸、酢酸および蓚酸等を使用することができ、中でも蓚酸が好ましい。
【0027】
かくして得られたフェノール・ホルムアルデヒド樹脂が2核体以下の成分を10重量%以上含む場合は低分子量成分を、例えば分別沈澱、分別溶解、カラムクロマトグラフィー等の方法により除去し2核体以下の成分を10重量%以下にする必要がある。
2核体以下の成分を10重量%以上含むフェノール・ホルムアルデヒド樹脂は溶解性が高く、耐薬品性の点で劣り、また、重量平均分子量10,000未満のフェノール・ホルムアルデヒド樹脂は耐刷力(耐薬品性)で劣る。
また、従来のポジ型感光性平版印刷版のバインダーに用いられてきたクレゾール・ホルムアルデヒド樹脂ではpH12.5以下の現像液では現像できない。
このように、1分子中に芳香族基を3つ以上有する成分の含有量が90重量%以上で、且つ重量平均分子量が10,000以上のノボラック型フェノール・ホルムアルデヒド樹脂を使用することにより、比較的低いpHの現像液で現像が可能であり、かつ十分な耐刷力(耐薬品性)を付与することが可能である。
感光性組成物全量中に占める分子量10,000以上の該フェノール・ホルムアルデヒド樹脂の量は30〜90重量%であり、より好ましくは40〜70重量%である。
【0028】
感光性組成物には場合により、上記ノボラック型フェノール・ホルムアルデヒド樹脂以外のアルカリ可溶性樹脂を併用することができる。かかるアルカリ可溶性樹脂として、とりわけ、比較的低いpHの現像液を使用する場合には、pH12.5のアルカリ水に可溶で[ここで、pH12.5のアルカリ水に可溶な樹脂とは、水酸化ナトリウム0.11モルおよび塩化カリウム0.4モルを水に溶解して1リットルにした水溶液(pH12.5のアルカリ水溶液)1リットルを準備し、これに30.0gの樹脂を加え撹拌し、30分間で溶解するような樹脂を言う]、且つ重量平均分子量が10,000〜100,000であり、以下に示す(1)〜(4)のアルカリ可溶性基含有モノマーから選ばれる少なくとも一つ以上を重合成分として有する皮膜形成性樹脂が好ましい。
【0029】
(1)N−(4−ヒドロキシフェニル)アクリルアミドまたはN−(4−ヒドロキシフェニル)メタクリルアミド、o−、m−またはp−ヒドロキシスチレン、o−またはm−ブロモ−p−ヒドロキシスチレン、o−またはm−クロル−p−ヒドロキシスチレン、o−、m−またはp−ヒドロキシフェニルアクリレートまたはメタクリレート等の芳香族水酸基を有するアクリルアミド類、メタクリルアミド類、アクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類およびヒドロキシスチレン類、
(2)アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸およびそのハーフエステル、イタコン酸、無水イタコン酸およびそのハーフエステルなどの不飽和カルボン酸、
【0030】
(3)N−(o−アミノスルホニルフェニル)アクリルアミド、N−(m−アミノスルホニルフェニル)アクリルアミド、N−(p−アミノスルホニルフェニル)アクリルアミド、N−〔1−(3−アミノスルホニル)ナフチル〕アクリルアミド、N−(2−アミノスルホニルエチル)アクリルアミドなどのアクリルアミド類、N−(o−アミノスルホニルフェニル)メタクリルアミド、N−(m−アミノスルホニルフェニル)メタクリルアミド、N−(p−アミノスルホニルフェニル)メタクリルアミド、N−〔1−(3−アミノスルホニル)ナフチル〕メタクリルアミド、N−(2−アミノスルホニルエチル)メタクリルアミドなどのメタクリルアミド類、また、o−アミノスルホニルフェニルアクリレート、m−アミノスルホニルフェニルアクリレート、p−アミノスルホニルフェニルアクリレート、1−(3−アミノスルホニルフェニルナフチル)アクリレートなどのアクリル酸エステル類などの不飽和スルホンアミド、o−アミノスルホニルフェニルメタクリレート、m−アミノスルホニルフェニルメタクリレート、p−アミノスルホニルフェニルメタクリレート、1−(3−アミノスルホニルフェニルナフチル)メタクリレートなどのメタクリル酸エステル類などの不飽和スルホンアミド、
(4)トシルアクリルイミドのように置換基があってもよいフェニルスルホニルアクリルイミド、およびトシルメタクリルイミドのような置換基があってもよいフェニルスルホニルメタクリルイミド。
【0031】
更に、これらのアルカリ可溶性基含有モノマーの他に以下に記す(5)〜(14)のモノマーを共重合した皮膜形成性樹脂が好適に用いられる。
(5)脂肪族水酸基を有するアクリル酸エステル類およびメタクリル酸エステル類、例えば、2−ヒドロキシエチルアクリレートまたは2−ヒドロキシエチルメタクリレート、
(6)アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸アミル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸フェニル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸−2−クロロエチル、アクリル酸4−ヒドロキシブチル、グリシジルアクリレート、N−ジメチルアミノエチルアクリレートなどの(置換)アクリル酸エステル、
(7)メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸アミル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸−2−クロロエチル、メタクリル酸4−ヒドロキシブチル、グリシジルメタクリレート、N−ジメチルアミノエチルメタクリレートなどの(置換)メタクリル酸エステル、
【0032】
(8)アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド、N−ヘキシルアクリルアミド、N−ヘキシルメタクリルアミド、N−シクロヘキシルアクリルアミド、N−シクロヘキシルメタクリルアミド、N−ヒドロキシエチルアクリルアミド、N−ヒドロキシエチルアクリルアミド、N−フェニルアクリルアミド、N−フェニルメタクリルアミド、N−ベンジルアクリルアミド、N−ベンジルメタクリルアミド、N−ニトロフェニルアクリルアミド、N−ニトロフェニルメタクリルアミド、N−エチル−N−フェニルアクリルアミドおよびN−エチル−N−フェニルメタクリルアミドなどのアクリルアミドもしくはメタクリルアミド、
(9)エチルビニルエーテル、2−クロロエチルビニルエーテル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、オクチルビニルエーテル、フェニルビニルエーテルなどのビニルエーテル類、
【0033】
(10)ビニルアセテート、ビニルクロロアセテート、ビニルブチレート、安息香酸ビニルなどのビニルエステル類、
(11)スチレン、α−メチルスチレン、メチルスチレン、クロロメチルスチレンなどのスチレン類、
(12)メチルビニルケトン、エチルビニルケトン、プロピルビニルケトン、フェニルビニルケトンなどのビニルケトン類、
(13)エチレン、プロピレン、イソブチレン、ブタジエン、イソプレンなどのオレフィン類、
(14)N−ビニルピロリドン、N−ビニルカルバゾール、4−ビニルピリジン、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなど。
このようなアルカリ可溶性の皮膜形成性樹脂は1種類あるいは2種類以上を組み合わせて用いることができ、全感光性組成物の1〜50重量%の添加量で用いられる。
また、上記共重合体の他に、ポリビニルブチラール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂およびエポキシ樹脂等も用いられる。
【0034】
<感脂化剤>
更に、米国特許第4,123,279号明細書に記載されているように、t−ブチルフェノールホルムアルデヒド樹脂、オクチルフェノールホルムアルデヒド樹脂のような炭素数3〜8のアルキル基を置換基として有するフェノールとホルムアルデヒドとの縮合物を併用することは画像の感脂性を向上させる上で好ましい。
【0035】
<現像促進剤>
感光性組成物中には、感度を高めるために環状酸無水物類、フェノール類、有機酸類を添加することが好ましい。
環状酸無水物としては米国特許4,115,128号明細書に記載されている無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、3,6−エンドオキシ−Δ4 −テトラヒドロ無水フタル酸、テトラクロル無水フタル酸、無水マレイン酸、クロル無水マレイン酸、α−フェニル無水マレイン酸、無水コハク酸、無水ピロメリット酸などが使用できる。
フェノール類としては、ビスフェノールA、p−ニトロフェノール、p−エトキシフェノール、2,4,4’−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノン、4−ヒドロキシベンゾフェノン、4,4’,4”−トリヒドロキシ−トリフェニルメタン、4,4’,3”,4”−テトラヒドロキシ−3,5,3’,5’−テトラメチルトリフェニルメタンなどが挙げられる。
【0036】
更に、有機酸類としては、特開昭60−88942号公報、特開平2−96755号公報などに記載されている、スルホン酸類、スルフィン酸類、アルキル硫酸類、ホスホン酸類、リン酸エステル類およびカルボン酸類などがあり、具体的には、p−トルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルフィン酸、エチル硫酸、フェニルホスホン酸、フェニルホスフィン酸、リン酸フェニル、リン酸ジフェニル、安息香酸、イソフタル酸、アジピン酸、p−トルイル酸、3,4−ジメトキシ安息香酸、フタル酸、テレフタル酸、1,4−シクロヘキセン−2,2−ジカルボン酸、エルカ酸、ラウリン酸、n−ウンデカン酸、アスコルビン酸などが挙げられる。
上記の環状酸無水物類、フェノール類および有機酸類の感光性組成物中に占める割合は、0.05〜15重量%が好ましく、より好ましくは0.1〜5重量%である。
【0037】
<現像安定剤>
また、感光性組成物中には、現像条件に対する処理の安定性(いわゆる現像ラチチュード)を広げるため、特開昭62−251740号公報や特開平4−68355号公報に記載されているような非イオン界面活性剤、特開昭59−121044号公報、特開平4−13149号公報に記載されているような両性界面活性剤を添加することができる。
非イオン界面活性剤の具体例としては、ソルビタントリステアレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタントリオレート、ステアリン酸モノグリセリド、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレート、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルなどが挙げられる。
両性界面活性剤の具体例としては、アルキルジ(アミノエチル)グリシン、アルキルポリアミノエチルグリシン塩酸塩、2−アルキル−N−カルボキシエチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインやN−テトラデシル−N,N−ベタイン型(例えば、商品名アモーゲンK、第一工業(株)製)およびアルキルイミダゾリン系(例えば、商品名レボン15、三洋化成(株)製)などが挙げられる。
上記非イオン界面活性剤および両性界面活性剤の感光性組成物中に占める割合は、0.05〜15重量%が好ましく、より好ましくは0.1〜5重量%である。
【0038】
<焼き出し剤と染料>
感光性組成物中には、露光後直ちに可視像を得るための焼き出し剤や、画像着色剤としての染料や顔料を加えることができる。
焼き出し剤としては、露光によって酸を放出する化合物(光酸放出剤)と塩を形成し得る有機染料の組合せを代表として挙げることができる。具体的には、特開昭50−36209号、同53−8128号の各公報に記載されているo−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸ハロゲニドと塩形成性有機染料の組合せや、特開昭53−36223号、同54−74728号、同60−3626号、同61−143748号、同61−151644号および同63−58440号の各公報に記載されているトリハロメチル化合物と塩形成性有機染料の組合せを挙げることができる。かかるトリハロメチル化合物としては、オキサゾール系化合物とトリアジン系化合物とがあり、どちらも経時安定性に優れ、明瞭な焼き出し画像を与える。
【0039】
画像の着色剤としては、前述の塩形成性有機染料以外に他の染料も用いることができる。塩形成性有機染料も含めて、好適な染料として油溶性染料と塩基性染料を挙げることができる。具体的には、オイルイエロー#101、オイルイエロー#103、オイルピンク#312、オイルグリーンBG、オイルブルーBOS、オイルブルー#603、オイルブラックBY、オイルブラックBS、オイルブラックT−505(以上、オリエント化学工業(株)製)、ビクトリアピュアブルー、クリスタルバイオレット(CI42555)、メチルバイオレット(CI42535)、エチルバイオレット、ローダミンB(CI145170B)、マラカイトグリーン(CI42000)、メチレンブルー(CI52015)などを挙げることができる。また、特開昭62−293247号公報に記載されている染料は特に好ましい。
【0040】
<塗布溶剤>
感光性組成物は、上記各成分を溶解する溶媒に溶かして支持体のアルミニウム板上に塗布される。ここで使用される溶媒としては、特開昭61−95463号公報に記載されているような有機溶剤が単独あるいは混合して用いられる。
本発明の感光性組成物は、2〜50重量%の固形分濃度で溶解、分散され、支持体上に塗布・乾燥される。
<塗布量>
支持体上に塗設される感光性組成物の層(感光層)の塗布量は用途により異なるが、一般的には、乾燥後の重量にして0.3〜4.0g/m2 が好ましい。塗布量が小さくなるにつれて画像を得るための露光量は小さくて済むが、膜強度は低下する。塗布量が大きくなるにつれ、露光量を必要とするが感光膜は強くなり、例えば、印刷版として用いた場合、印刷可能枚数の高い(高耐刷の)印刷版が得られる。
【0041】
<塗布面質の向上>
感光性組成物中には、塗布面質を向上するための界面活性剤、例えば、特開昭62−170950号公報に記載されているようなフッ素系界面活性剤を添加することができる。好ましい添加量は、全感光性組成物の0.001〜1.0重量%であり、更に好ましくは0.005〜0.5重量%である。
<マット層>
上記のようにして設けられた感光層の表面には、真空焼き枠を用いた密着露光の際の真空引きの時間を短縮し、且つ焼きボケを防ぐため、マット層を設けることが好ましい。具体的には、特開昭50−125805号、特公昭57−6582号、同61−28986号の各公報に記載されているようなマット層を設ける方法、特公昭62−62337号公報に記載されているような固体粉末を熱融着させる方法などが挙げられる。
【0042】
[現像処理]
かくして得られたPS版は透明原画を通してカーボンアーク灯、水銀灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、タングステンランプなどを光源とする活性光線により露光された後、現像処理される。
<現像液主剤>
現像液のpHは10.0〜13.5程度であって、比較的低いpHの現像液を使用してもよい。例えば珪酸塩を含まないpH10.0〜12.7、より好ましくはpH11.0〜12.5の現像液を使用することもできる。
かかる現像液および現像補充液としては従来より知られているアルカリ水溶液が使用できる。例えば、珪酸ナトリウム、珪酸カリウム、珪酸リチウム、第3リン酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、第二リン酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、重炭酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、炭酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、ほう酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、水酸化ナトリウム、同アンモニウム、同カリウムおよび同リチウムなどの無機アルカリ剤が挙げられる。また、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノイソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、トリイソプロピルアミン、n−ブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、エチレンイミン、エチレンジアミン、ピリジン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルブチルアンモニウムヒドロキシドなどの有機アルカリ剤も用いられる。
【0043】
珪酸カリウム、珪酸リチウム、珪酸ナトリウム等の珪酸アルカリを含有する現像液の場合、印刷時の汚れが生じにくいという利点を有し、珪酸アルカリの組成がモル比で〔SiO2〕/〔M〕=0.5〜2.5(ここに〔SiO2〔M〕はそれぞれ、SiO2のモル濃度と総アルカリ金属のモル濃度を示す。)であり、かつSiO2を0.8〜8重量%含有する現像液が好ましく用いられる。また該像液中には、例えば亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、亜硫酸マグネシウムなどの水溶性亜硫酸塩や、レゾルシン、メチルレゾルシン、ハイドロキノン、チオサリチル酸などを添加することができる。これらの化合物の現像液中における好ましい含有量は0.002〜4重量%で、好ましくは、0.01〜1重量%である。
【0044】
更に、好ましい現像液主剤としては、pH10以上で緩衝作用を有する化合物を含むアルカリ溶液が挙げられる。かかる緩衝作用を有する化合物としては、酸解離定数(pKa )が10.0〜13.2のものが好ましく、Pergamon Press社発行のIONISATION CONSTANTS OF ORGANIC ACIDS IN AQUEOUS SOLUTION などに記載されているものから選ばれ、例えば2,2,3,3,− テトラフルオロプロパノール−1(pKa 12.74)、トリフルオロエタノール(同12.37)、トリクロロエタノール(同12.24)などのアルコール類、ピリジン−2−アルデヒド(同12.68)、ピリジン−4−アルデヒド(同12.05)などのアルデヒド類、ソルビトール(同13.0)、サッカロース(同12.7)、2−デオキシリボース(同12.61)2−デオキシグルコース(同12.51)、グルコース(同12.46)、ガラクトース(同12.35)、アラビノース(同12.34)、キシロース(同12.29)、フラクトース(同12.27)、リボース(同12.22)、マンノース(同12.08)、L−アスコルビン酸(同11.34)などの糖類、サリチル酸(同13.0)、3−ヒドロキシ−2− ナフトエ酸(同12.84)、カテコール(同12.6)、没食子酸(同12.4)、スルホサリチル酸(同11.7)、3,4−ジヒドロキシスルホン酸(同12.2)、3,4−ジヒドロキシ安息香酸(同11.94)、1,2,4−トリヒドロキシベンゼン(同11.82)、ハイドロキノン(同11.56)、ピロガロール(同11.34)、フェノール(同10.0)、o−クレゾール(同10.33)、レゾルシノール(同11.27)、p−クレゾール(同10.27)、m−クレゾール(同10.09)などのフェノール性水酸基を有する化合物、
【0045】
2−ブタノンオキシム(同12.45)、アセトキシム(同12.42)、1,2−シクロヘプタンジオンヂオキシム(同12.3)、2−ヒドロキシベンズアルデヒドオキシム(同12.10)、ジメチルグリオキシム(同11.9)、エタンジアミド ジオキシム(同11.37)、アセトフェノンオキシム(同11.35)などのオキシム類、アデノシン(同12.56)、イノシン(同12.5)、グアニン(同12.3)、シトシン(同12.2)、ヒポキサンチン(同12.1)、キサンチン(同11.9)などの核酸関連物質、他に、ジエチルアミノメチルホスホン酸(同12.32)、1−アミノ−3,3,3− トリフルオロ安息香酸(同12.29)、イソプロピリデンジホスホン酸(同12.10)、1,1−エチリデンジホスホン酸(同11.54)、1,1−エチリデンジホスホン酸1−ヒドロキシ(同11.52)、ベンズイミダゾール(同12.86)、チオベンズアミド(同12.8)、ピコリンチオアミド(同12.55)、バルビツル酸(同12.5)などの弱酸が挙げられる。
これらの緩衝作用を有する化合物は、先に述べたアルカリ剤と併用することによって、適宜適切なpH、例えばpH10.0〜12.7に調整して用いることができる。
また、これらの緩衝作用を有する化合物およびアルカリ剤は単独もしくは二種以上を組み合わせて用いることもできる。
これらのアルカリ緩衝剤の中で好ましいのは、スルホサリチル酸、サリチル酸、またはサッカロースおよびソルビトールなどの非還元糖と水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウムとを組み合わせたものである。
また、以上の緩衝作用を有する化合物・アルカリ剤はそれぞれ2種以上を混合して用いてもよい。
【0046】
<界面活性剤>
現像液および補充液には、現像性の促進や現像カスの分散および印刷版画像部の親インキ性を高める目的で必要に応じて種々界面活性剤や有機溶剤を添加できる。好ましい界面活性剤としては、アニオン系、カチオン系、ノニオン系および両性界面活性剤が挙げられる。
界面活性剤の好ましい例としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレンポリスチリルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル類、グリセリン脂肪酸部分エステル類、ソルビタン脂肪酸部分エステル類、ペンタエリスリトール脂肪酸部分エステル類、プロピレングリコールモノ脂肪酸エステル類、しょ糖脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸部分エステル類、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル類、ポリグリセリン脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレン化ひまし油類、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸部分エステル類、脂肪酸ジエタノールアミド類、N,N−ビス−2−ヒドロキシアルキルアミン類、ポリオキシエチレンアルキルアミン、トリエタノールアミン脂肪酸エステル、トリアルキルアミンオキシドなどの非イオン性界面活性剤、脂肪酸塩類、アビエチン酸塩類、ヒドロキシアルカンスルホン酸塩類、アルカンスルホン酸塩類、ジアルキルスルホ琥珀酸エステル塩類、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩類、分岐鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、アルキルフェノキシポリオキシエチレンプロピルスルホン酸塩類、ポリオキシエチレンアルキルスルホフェニルエーテル塩類、
【0047】
N−メチル−N−オレイルタウリンナトリウム塩、N−アルキルスルホ琥珀酸モノアミド二ナトリウム塩、石油スルホン酸塩類、硫酸化牛脂油、脂肪酸アルキルエステルの硫酸エステル塩類、アルキル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩類、脂肪酸モノグリセリド硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル硫酸エステル塩類、アルキルリン酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸エステル塩類、スチレン/無水マレイン酸共重合物の部分鹸化物類、オレフィン/無水マレイン酸共重合物の部分鹸化物類、ナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物類などのアニオン界面活性剤、アルキルアミン塩類、テトラブチルアンモニウムブロミド等の第四級アンモニウム塩類、ポリオキシエチレンアルキルアミン塩類、ポリエチレンポリアミン誘導体などのカチオン性界面活性剤、カルボキシベタイン類、アミノカルボン酸類、スルホベタイン類、アミノ硫酸エステル類、イミダゾリン類などの両性界面活性剤が挙げられる。以上挙げた界面活性剤の中でポリオキシエチレンとあるものは、ポリオキシメチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシブチレンなどのポリオキシアルキレンに読み替えることもでき、それらの界面活性剤もまた包含される。
【0048】
更に好ましい界面活性剤は分子内にパーフルオロアルキル基を含有するフッ素系の界面活性剤である。かかるフッ素系界面活性剤としては、パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルスルホン酸塩、パーフルオロアルキルリン酸エステルなどのアニオン型、パーフルオロアルキルベタインなどの両性型、パーフルオロアルキルトリメチルアンモニウム塩などのカチオン型およびパーフルオロアルキルアミンオキサイド、パーフルオロアルキルエチレンオキシド付加物、パーフルオロアルキル基および親水性基含有オリゴマー、パーフルオロアルキル基および親油性基含有オリゴマー、パーフルオロアルキル基、親水性基および親油性基含有オリゴマー、パーフルオロアルキル基および親油性基含有ウレタンなどの非イオン型が挙げられる。
上記の界面活性剤は、単独もしくは2種以上を組み合わせて使用することができ、現像液中に0.001〜10重量%、より好ましくは0.01〜5重量%の範囲で添加される。
【0049】
<現像安定化剤>
現像液および補充液には、種々現像安定化剤が用いられる。それらの好ましい例として、特開平6−282079号公報記載の糖アルコールのポリエチレングリコール付加物、テトラブチルアンモニウムヒドロキシドなどのテトラアルキルアンモニウム塩、テトラブチルホスホニウムブロマイドなどのホスホニウム塩およびジフェニルヨードニウムクロライドなどのヨードニウム塩が好ましい例として挙げられる。
更には、特開昭50−51324号公報記載のアニオン界面活性剤または両性界面活性剤、また特開昭55−95946号公報記載の水溶性カチオニックポリマー、特開昭56−142528号公報に記載されている水溶性の両性高分子電解質がある。
更に、特開昭59−84241号公報のアルキレングリコールが付加された有機ホウ素化合物、特開昭60−111246号公報記載のポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロック重合型の水溶性界面活性剤、特開昭60−129750号公報のポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンを置換したアルキレンジアミン化合物、特開昭61−215554号公報記載の重量平均分子量300以上のポリエチレングリコール、特開昭63−175858号公報のカチオン性基を有する含フッ素界面活性剤、特開平2−39157号公報の酸またはアルコールに4モル以上のエチレンオキシドを付加して得られる水溶性エチレンオキシド付加化合物と、水溶性ポリアルキレン化合物などが挙げられる。
【0050】
<有機溶剤>
現像液および現像補充液には更に必要により有機溶剤が加えられる。かかる有機溶剤としては、水に対する溶解度が約10重量%以下のものが適しており、好ましくは5重量%以下のものから選ばれる。例えば、1−フェニルエタノール、2−フェニルエタノール、3−フェニル−1−プロパノール、4−フェニル−1−ブタノール、4−フェニル−2−ブタノール、2−フェニル−1−ブタノール、2−フェノキシエタノール、2−ベンジルオキシエタノール、o−メトキシベンジルアルコール、m−メトキシベンジルアルコール、p−メトキシベンジルアルコール、ベンジルアルコール、シクロヘキサノール、2−メチルシクロヘキサノール、3−メチルシクロヘキサノールおよび4−メチルシクロヘキサノール、N−フェニルエタノールアミンおよびN−フェニルジエタノールアミンなどを挙げることができる。有機溶剤の含有量は使用液の総重量に対して0.1〜5重量%である。その使用量は界面活性剤の使用量と密接な関係があり、有機溶剤の量が増すにつれ、界面活性剤の量は増加させることが好ましい。これは界面活性剤の量が少なく、有機溶剤の量を多く用いると有機溶剤が完全に溶解せず、従って、良好な現像性の確保が期待できなくなるからである。
【0051】
<還元剤>
現像液および補充液には更に還元剤が加えられる。これは印刷版の汚れを防止するものであり、特に感光性ジアゾニウム塩化合物を含むネガ型感光性平版印刷版を現像する際に有効である。好ましい有機還元剤としては、チオサリチル酸、ハイドロキノン、メトール、メトキシキノン、レゾルシン、2−メチルレゾルシンなどのフェノール化合物、フェニレンジアミン、フェニルヒドラジンなどのアミン化合物が挙げられる。更に好ましい無機の還元剤としては、亜硫酸、亜硫酸水素酸、亜リン酸、亜リン酸水素酸、亜リン酸二水素酸、チオ硫酸および亜ジチオン酸などの無機酸のナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩などを挙げることができる。これらの還元剤のうち汚れ防止効果が特に優れているのは亜硫酸塩である。これらの還元剤は使用時の現像液に対して好ましくは、0.05〜5重量%の範囲で含有される。
【0052】
<有機カルボン酸>
現像液および補充液には更に有機カルボン酸を加えることもできる。好ましい有機カルボン酸は炭素原子数6〜20の脂肪族カルボン酸および芳香族カルボン酸である。脂肪族カルボン酸の具体的な例としては、カプロン酸、エナンチル酸、カプリル酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸およびステアリン酸などがあり、特に好ましいのは炭素数8〜12のアルカン酸である。また炭素鎖中に二重結合を有する不飽和脂肪酸でも、枝分かれした炭素鎖のものでもよい。
芳香族カルボン酸としてはベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環などにカルボキシル基が置換された化合物で、具体的には、o−クロロ安息香酸、p−クロロ安息香酸、o−ヒドロキシ安息香酸、p−ヒドロキシ安息香酸、o−アミノ安息香酸、p−アミノ安息香酸、2,4−ジヒドロキシ安息香酸、2,5−ジヒドロキシ安息香酸、2,6−ジヒドロキシ安息香酸、2,3−ジヒドロキシ安息香酸、3,5−ジヒドロキシ安息香酸、没食子酸、1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、2−ヒドロキシ−1−ナフトエ酸、1−ナフトエ酸、2−ナフトエ酸などがあるがヒドロキシナフトエ酸は特に有効である。
上記脂肪族および芳香族カルボン酸は水溶性を高めるためにナトリウム塩やカリウム塩またはアンモニウム塩として用いるのが好ましい。本発明で用いる現像液の有機カルボン酸の含有量は格別な制限はないが、0.1重量%より低いと効果が十分でなく、また10重量%以上ではそれ以上の効果の改善が計れないばかりか、別の添加剤を併用する時に溶解を妨げることがある。従って、好ましい添加量は使用時の現像液に対して0.1〜10重量%であり、よりこのましくは0.5〜4重量%である。
【0053】
<その他>
現像液および補充液には、更に必要に応じて、消泡剤および硬水軟化剤などを含有させることもできる。硬水軟化剤としては例えば、ポリリン酸およびそのナトリウム塩、カリウム塩およびアンモニウム塩、エチレンジアミンテトラ酢酸、ジエチレントリアミンペンタ酢酸、トリエチレンテトラミンヘキサ酢酸、ヒドロキシエチルエチレンジアミントリ酢酸、ニトリロトリ酢酸、1,2−ジアミノシクロヘキサンテトラ酢酸および1,3−ジアミノ−2−プロパノールテトラ酢酸などのアミノポリカルボン酸およびそれらのナトリウム塩、カリウム塩およびアンモニウム塩、アミノトリ(メチレンホスホン酸)、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)、トリエチレンテトラミンヘキサ(メチレンホスホン酸)、ヒドロキシエチルエチレンジアミントリ(メチレンホスホン酸)および1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸やそれらのナトリウム塩、カリウム塩およびアンモニウム塩を挙げることができる。
【0054】
このような硬水軟化剤はそのキレート化力と使用される硬水の硬度および硬水の量によって最適値が変化するが、一般的な使用量を示せば、使用時の現像液に0.01〜5重量%、より好ましくは0.01〜0.5重量%の範囲である。この範囲より少ない添加量では所期の目的が十分に達成されず、添加量がこの範囲より多い場合は、色抜けなど、画像部への悪影響がでてくる。
現像液および補充液の残余の成分は水であるが、更に必要に応じて当業界で知られた種々の添加剤を含有させることができる。
現像液および補充液は使用時よりも水の含有量を少なくした濃縮液としておき、使用時に水で希釈するようにしておくことが運搬上有利である。この場合の濃縮度は各成分が分離や析出を起こさない程度が適当である。
【0055】
[後処理]
以上の現像液で現像処理されたPS版は水洗水、界面活性剤などを含有するリンス液、アラビヤガムや澱粉誘導体等を主成分とするフィニッシャーや保護ガム液で後処理が施される。PS版の後処理にはこれらの処理を種々組み合わせて用いることができる。
近年、製版・印刷業界では製版作業の合理化および標準化のため、PS版用の自動現像機が広く用いられている。この自動現像機は一般に現像部と後処理部で構成されており、PS版を水平に搬送する装置と、各処理液槽およびスプレー装置とからなり、露光済みのPS版を水平に搬送しながら、ポンプで汲み上げた各処理液をスプレーノズルから吹き付けて、現像および後処理するものである。また、最近は処理液が満たされた処理液槽中に液中ガイドロールなどによってPS版を浸せき搬送させて現像処理する方法や、現像後一定量の少量の水洗水を版面に供給して水洗し、その廃水を現像液原液の希釈水として再利用する方法も知られている。
このような自動処理においては、各処理液に処理量や稼動時間等に応じてそれぞれの補充液を補充しながら処理することができる。また、実質的に未使用の処理液で処理するいわゆる使い捨て処理方式も適用できる。
このような処理によって得られた平版印刷版はオフセット印刷機にかけられ、多数枚の印刷に用いられる。
【0056】
【発明の効果】
本発明によれば、ポジ型感光性平版印刷版において粗面化処理、陽極酸化処理の後、糖を含む水溶液で処理したアルミニウム支持体を使用することにより、現像時における陽極酸化皮膜の溶解が防止でき、よって現像時の非画像部の白色化が防止でき、また放置汚れを軽減することができ、また消去跡汚れを軽減することができ、且つ優れた耐刷力を発揮する感光性平版印刷版を提供することができる。
【0057】
【実施例】
以下実施例をもって本発明を詳細に説明する。
実施例
厚さ0.24mmのJIS A1050アルミニウム板の表面をナイロンブラシと400メッシュのパミストンの水懸濁液を用い砂目立てした後、よく水で洗浄した。10%水酸化ナトリウムに70℃で60秒間浸漬してエッチングした後、流水で水洗後20%HNO3 で中和洗浄、水洗した。これをVA =12.7Vの条件下で正弦波の交番波形電流を用いて1%硝酸水溶液中で160クーロン/dm2 の陽極時電気量で電解粗面化処理を行った。その表面粗さを測定したところ0.6μm (Ra表示)であった。ひきつづいて30%のH2 SO4 水溶液中に浸漬し55℃で2分間デスマットした後、20%H2 SO4 水溶液中で電流密度14A/dm2 、陽極酸化皮膜量が2.5g/m2相当になるように陽極酸化し、水洗して基板[A]を作成した。
次にこの基板[A]を、サポニン1%水溶液に40℃、30秒間浸漬処理した後、水洗乾燥して基板[B]を作成した。次に基板[A]をグルコポン1%水溶液で70℃、30秒間浸漬処理した後、水洗乾燥して基板[C]を作成した。次に基板[A]をルチントリハイドレイト1%水溶液に50℃、30秒間浸漬処理した後、水洗乾燥して基板[D]を作成した。次に基板[A]をヘスペリジン1%水溶液で50℃、30秒間浸漬処理した後、水洗乾燥して基板[E]を作成した。次に基板[A]をサポニン0.005%水溶液に40℃、30秒間浸漬処理した後、水洗乾燥して基板[F]を作成した。次に基板[A]をサポニン30%水溶液に40℃、30秒間浸漬処理した後、水洗乾燥して基板[G]を作成した。次に基板[A]を100℃、1気圧において飽和した蒸気チャンバーの中で10秒間、水蒸気封孔処理して基板[H]を作成した。次に基板[A]をNa2 O・3SiO2 の3%水溶液に30℃で15秒間浸漬して、水洗、乾燥した後に、特開平4−282637号公報に記載されている組成 [フェニルホスホン酸 0.1g、1%H2 SO4 水溶液 12g 、メタノール 70g 、水 18g] を塗布して90℃、30秒間乾燥して基板[I]を作成した。
続いて基板[A]〜[I]に下記感光液を塗布して乾燥後の塗布重量が2.0g/m2となるように感光層を設けた。
【0058】
感光液
1,2−ジアゾナフトキノン−5−スルホニルクロリドと
ピロガロール−アセトン樹脂とのエステル化物
(重量平均分子量2,500) 45重量部
フェノールホルムアルデヒドノボラック樹脂
(重量平均分子量11,000、
3核体以上の成分の含有率95%) 80重量部
p−トルエンスルホニルメタクリルイミド(28モル%):
アクリロニトリル(21モル%):エチルアクリレート(51モル%)
共重合体 20重量部
2−(p−メトキシフェニル)−4,6
−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン 2重量部
オイルブルー#603
(オリエント化学工業(株)製) 1重量部
メガファック F−177
(大日本インキ化学工業(株)製フッ素系界面活性剤) 0.4重量部
メチルエチルケトン 1000重量部
プロピレングリコールモノメチルエーテル 1000重量部
【0059】
このようにして得られたPS版に原稿フィルムを通して1mの距離から3kwのメタルハライドランプを用いて60秒間露光した。その後、下記現像液にて浸漬型現像槽を有する市販の自動現像機PS−900V(富士写真フイルム(株)製)で現像処理した。
現像液
サリチル酸 0.1モル/リットル
サッカロース 0.1モル/リットル
テトラブチルアンモニウムブロマイド 0.001モル/リットル
NaOH (液pHを12.5に調整)
【0060】
現像の際の非画像部の白色化の観察は以下のように行った。
現像後にベタ部と非画像部を富士写真フィルム社製の消去液RP−1で消去、水洗した後、ベタ消去部と非画像部の消去部を次のように目視評価した。
○…ベタ部と非画像部の色の差がない。
×…非画像部がベタ消去部より明らかに白い
放置汚れの観察は以下のように行った。
SOR−M印刷機にて、2000枚印刷後、印刷を停止し、40分間放置する。その後、再度印刷機に取り付けて100枚印刷した。その時の、非画像部のインキの払われ方を観察し、次のように評価した。
○…インキの払われ方が速い
×…インキの払われ方が遅い(汚れやすい)
また、耐刷性の比較のためには、常法に従って多数枚印刷を行い5000枚印刷毎に、富士写真フイルム(株)製プレートクリーナーCL−1で画像部を拭きながら印刷を行い、印刷可能な枚数を測定し判定した。
結果を下記表1に示す。
【0061】
【表1】
【0062】
上記表に示される結果より明らかなように、本発明のポジ型感光性平版印刷版は、現像時において、陽極酸化皮膜の溶解が防止されており、よって非画像部の白色化及び放置汚れが軽減あるいは解消し、かつ優れた耐刷性を発揮した。
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