JP3611211B2 - 光ピックアップの非点収差測定方法、非点収差調整方法、及び非点収差測定装置 - Google Patents

光ピックアップの非点収差測定方法、非点収差調整方法、及び非点収差測定装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、対物レンズで収束させた光ビームを記録媒体に照射する光ピックアップの非点収差測定方法、非点収差調整方法、または非点収差測定装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
例えばCD又はDVD等の光ディスクを記録再生する際に用いられる光ピックアップにあっては、情報の書き込みや再生をするための光ビームを光ディスク表面の情報ピット列に対し常に正確に集光させる必要がある。そのためには、光ピックアップの光学系の収差、具体的には非点収差等を極力少なくすることが必要不可欠である。
【0003】
光ピックアップの非点収差を測定するには、レーザ干渉計を用いる方法が考えられる。しかし、この測定方法は、例えばレーザ干渉計と光ピックアップの光軸を正確に合わせる等、測定に手間と熟練を要し、生産工程において光ピックアップの光学系を調整するには不向きであった。
【0004】
そこで、従来、例えば特許文献1には、生産工程においても簡便に調整ができる光ピックアップの非点収差調整方法が提案されている。特許文献1の図11に基づきこの調整方法を説明すると、光ピックアップの焦点近傍に収束された光ビームのスポット像(光の進行方向に対し直交する方向に沿った光ビームの断面形状)を画像データとして取り込み、そのスポット像の真円度(縦横幅の比)を画像処理して計測する。スポット像の真円度が最も大きく(1に近く)なるように、対物レンズへの光ビームの入射角度を変化させることにより、光ピックアップの非点収差を補正する。
【0005】
【特許文献1】
特開2002−15435号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上述の非点収差調整方法は、光ビームの入射角度を変更して最終的に得られるスポット像が真円(又は略真円)であることを前提条件としている。つまり、上述の調整方法は、真円のスポット像を調整の基準としているので、例えば光ピックアップを構成するレンズ等の固有の収差等により、光ビームの入射角度を調整しても収束されるスポット像が真円にならないピックアップに対しては、上述の調整を行って非点収差を最少に補正することが困難であった。別言すれば、上述の非点収差調整方法で最適な非点収差の調整を行うためには、スポット像を真円にすべく、例えば光ピックアップの光学系を収差の少ない高品質の光学素子を用いて高精度に構成する必要があった。
【0007】
本発明はこうした従来の課題に鑑みてなされたものであり、例えば光ピックアップを構成する光学系の精度に依存せず、又は対物レンズにより収束される光ビームのスポット形状が真円でなくても、非点収差の測定が可能な光ピックアップの非点収差測定方法、非点収差測定装置、または当該測定方法を用いて簡易に非点収差を補正する等の光ピックアップの非点収差調整方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の発明は、対物レンズで収束させた光ビームを記録媒体に照射する光ピックアップの非点収差測定方法であって、前記光ビームの進行方向に直交する第1の方向において、前記光ビームのビーム径が最小となる前記進行方向上の第1の位置を求める第1の工程と、前記進行方向に直交し前記第1の方向に直交する第2の方向において、前記光ビームのビーム径が最小となる前記進行方向上の第2の位置を求める第2の工程と、前記進行方向上の前記第1の位置と前記第2の位置との差である第1の距離を求める第3の工程と、前記進行方向に直交し前記第1の方向を略45度傾けた第3の方向において、前記光ビームのビーム径が最小となる前記進行方向上の第3の位置を求める第4の工程と、前記進行方向に直交し前記第3の方向に直交する第4の方向において、前記光ビームのビーム径が最小となる前記進行方向上の第4の位置を求める第5の工程と、前記進行方向上の前記第3の位置と前記第4の位置との差である第2の距離を求める第6の工程とを備え、前記第1の距離と前記第2の距離により、前記光ピックアップの非点収差を測定することを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の発明は、対物レンズで収束させた光ビームを記録媒体に照射する光ピックアップの非点収差調整方法であって、前記光ビームの進行方向に直交する第1の方向において、前記光ビームのビーム径が最小となる前記進行方向上の第1の位置を求める第1の工程と、前記進行方向に直交し前記第1の方向に直交する第2の方向において、前記光ビームのビーム径が最小となる前記進行方向上の第2の位置を求める第2の工程と、前記進行方向上の前記第1の位置と前記第2の位置との差である第1の距離を求める第3の工程と、前記進行方向に直交し前記第1の方向を略45度傾けた第3の方向において、前記光ビームのビーム径が最小となる前記進行方向上の第3の位置を求める第4の工程と、前記進行方向に直交し前記第3の方向に直交する第4の方向において、前記光ビームのビーム径が最小となる前記進行方向上の第4の位置を求める第5の工程と、前記進行方向上の前記第3の位置と前記第4の位置との差である第2の距離を求める第6の工程と、前記第1の距離と前記第2の距離により、前記光ピックアップの非点収差を測定する第7の工程とを備え、前記第7の工程で得られた測定結果により、前記光ピックアップの非点収差を調整することを特徴とする。
【0010】
請求項5に記載の発明は、対物レンズで収束させた光ビームを記録媒体に照射する光ピックアップの非点収差測定装置であって、前記光ビームの進行方向に直交する第1の方向において、前記光ビームのビーム径が最小となる前記進行方向上の第1の位置と、前記進行方向に直交し前記第1の方向に直交する第2の方向において、前記光ビームのビーム径が最小となる前記進行方向上の第2の位置と、前記進行方向に直交し前記第1の方向を略45度傾けた第3の方向において、前記光ビームのビーム径が最小となる前記進行方向上の第3の位置と、前記進行方向に直交し前記第3の方向に直交する第4の方向において、前記光ビームのビーム径が最小となる前記進行方向上の第4の位置、の夫々を求める測定手段と、前記進行方向上の前記第1の位置と前記第2の位置との差である第1の距離、及び前記進行方向上の前記第3の位置と前記第4の位置との差である第2の距離を求める演算手段とを備え、前記第1の距離と前記第2の距離により、前記光ピックアップの非点収差を測定することを特徴とする。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明の好適な実施形態について、図面を参照しながら説明する。図1は、光ピックアップ5の非点収差を測定し、その結果に基づき前記非点収差を調整する方法を説明するための図である。
【0012】
同図において、光ディスクの記録再生装置に用いられる光ピックアップ5は、光ディスクに対して情報の記録再生をするための光ビームの光源であるレーザダイオード51と、光ビームの光路を変更する立上ミラー53と、光ビームを収束する対物レンズ54等を備えて構成されている。レーザダイオード51から発光された光ビームは、立上ミラー53で反射し、対物レンズ54で収束されて図示しない光ディスクの記録面に相当する位置に焦点が結ばれる。
【0013】
本非点収差測定及び調整を実施するにあたり、光ピックアップ5は、光ビームを投影面であるカバーガラス11aに向けて照射し、そのスポット像を投影する。撮像装置13は、カバーガラス11aに投影されたスポット像を撮像する。
【0014】
次に、本非点収差調整方法の手順を説明する。まず、対物レンズ54の位置を調整して、光ビームの焦点とカバーガラス11aとの距離(以下、「デフォーカス量」という)を、適宜変化させながら、カバーガラス11aに投影されている光ビームのスポット像Pnを、撮像装置13により順次撮像する。撮像された各々のスポット像Pnに対し、次に説明するスポット径の測定を行う。
【0015】
図2に示すように、順次撮像された各々のスポット像Pnに対し、第1の方向であるRAD方向におけるスポット径X1と、第1の方向と直交する第2の方向であるTAN方向における径Y1を測定する。なお、RAD(Radial)方向とは、光ディスクが装填された際の半径方向であり、TAN(Tangential)方向とは接線方向である。
【0016】
次に、上述のスポット像Pnの計測結果を用い、図3に示すように、デフォーカス量と各スポット径X1、Y1の関係を表す各特性曲線fx1、fy1を求める。そして、特性曲線fx1に基づき、スポット径X1が最小となるデフォーカス量に相当する値DF1を求め、更に特性曲線fy1に基づき、スポット径Y1が最小となるデフォーカス量に相当する値DF2を求める。そして、これらの値の差である値L0、すなわちL0=DF2−DF1を求める。このようにして求めた値L0は、光ビームがRAD方向に収束される焦点位置と、TAN方向に収束される焦点位置との距離(以下「焦点間距離」という)である。
【0017】
更に、撮像された各々のスポット像Pnに対し、上述の第1の方向に対して45度傾けた第3の方向におけるスポット径X2と、第3の方向と直交する第4の方向におけるスポット径Y2を測定し、上述と同様の演算で、焦点間距離L45を求める。
【0018】
すなわち、図4に示すように、各々のスポット像Pnに対し、第3の方向であるRAD方向に対し45度傾けた方向におけるスポット径X2と、第4の方向であるTAN方向に対し45度傾けた方向におけるスポット径Y2を測定する。そして、図5に示すように、デフォーカス量と各スポット径X2、Y2の関係を表す特性曲線fx2、fy2を求め、スポット径X2、Y2が最小となるデフォーカス量に相当する値DF3、DF4を求める。更に、これらの差である焦点間距離L45、すなわちL45=DF4−DF3を求める。
【0019】
ここで、焦点間距離L0、及びL45は光ピックアップ5の干渉計で測定される非点収差と非常に高い相関があることが確認されている。すなわち、この焦点間距離L0、L45を求めることにより、光ピックアップ5の非点収差を測定することができる。
【0020】
次に、上述の非点収差の測定方法で求めた測定結果により、光ピックアップ5の非点収差を調整する。具体的には、焦点間距離L0、L45の値に基づき、例えば、立上ミラー53のRAD、TAN方向への設置角度を調整することで対物レンズ54に入射する光ビームの入射角度を変化させ、非点収差を補正する。
【0021】
なお、本非点収差の調整方法を行うに先立ち、まず、計算により焦点間距離L0、L45と立上げミラー53の設置角度との関係式を求め、次に複数の光ピックアップを用いて、実装にて式を確立しておく。そして、本非点収差調整の際に、この関係式を用いて、求められた焦点間距離L0、L45に対応する立上ミラー53の調整すべき角度を求めて、その角度に基づき立上ミラー53の角度調整を行う。
【0022】
本実施形態の光ピックアップの非点収差測定方法及び調整方法によれば、光ビームがRAD方向に収束される焦点位置と、TAN方向に収束される焦点位置との焦点間距離L0を求める。また、この焦点間距離L0には非点収差の45度成分が含まれていないので、その45度成分を求めるために、RAD方向から45度傾けた方向に収束される焦点位置と、TAN方向から45度傾けた方向に収束される焦点位置との焦点間距離L45を求める。焦点間距離L0及びL45は、各々非点収差の0度成分及び45度成分と相関があるので、これら焦点間距離を求めることにより光ピックアップ5の非点収差を測定することができる。
【0023】
また、これらの焦点間距離に基づき非点収差を測定するので、無収差(非点収差がゼロ)状態において光ビームのスポット形状が楕円である光ピックアップに対しても、非点収差の測定または調整を精度良く行うことができる。
【0024】
また、予め確立された関係式を用いて、焦点間距離に対応する調整すべき立上ミラーの角度を求め、それに基づき立上ミラーの角度を調整して非点収差を補正するので、一度の調整工程で、非点収差を最適に調整することができ、調整作業も簡易になる。
【0025】
[実施例]
次に、本発明の好適な実施例について、図面を参照しながら説明する。なお、本実施例は、DVD(Digital Versatile Disc)の記録再生装置に用いられる光ピックアップの非点収差の自動調整について説明する。
【0026】
図6は、光ピックアップ5と、その非点収差調整を行う装置の構成を示すブロック図である。同図において、本非点収差の調整装置は、光ピックアップ5から照射される光ビームのスポット像を画像データとして取り込む画像処理装置1と、取り込まれたスポット像から非点収差を測定し、その測定結果に基づき非点収差を調整するための指令信号を出力する制御部3と、制御部3から出力された指令信号をアナログ値に変換するDAコンバータ4a、4b、4cと、DAコンバータから出力された指令値信号を増幅する増幅器5a、5b、5cと、揺動アクチュエータ6a、6bとを備えている。
【0027】
制御部3は、MPU(マイクロプロセッサユニット)、メモリ、及び画像データや指令信号等のデータの入出力を行う入出力部を備えた計算機システムであり、前記メモリに予め設定されているシステムプログラムに従って、本非点収差の測定及び調整を実行する。
【0028】
光ピックアップ5は、レーザダイオード51と、ハーフミラー55と、コリメータレンズ52と、立上ミラー53と、対物レンズ54等とを備えて構成されている。
【0029】
レーザ光源としてのレーザダイオード51は、DVDに対して記録再生を行うための光ビームをハーフミラー55に向けて出力する。ハーフミラー55は、入射する光の一部を透過し、その他を反射する特性を有し、レーザダイオード51からの光ビームをコリメータレンズ52に向けて反射する。コリメータレンズ52は、反射された光ビームを平行光に揃える。これにより、コリメータレンズ52と後述する対物レンズ54との間は光学的に無限系となっている。立上ミラー53は、コリメータレンズ52からの平行光ビームを対物レンズ54に向けて全反射するミラーである。対物レンズ54は、光ビームを図示しないDVDの情報ピットが形成されている情報記録面に焦点スポットを形成するためのレンズであり、本非点収差調整においては、次に説明する画像処理装置1のカバーガラス11に対して光ビームを収束し照射する。
【0030】
画像処理装置1は、光ピックアップ5からの光ビームのスポット像を投影するカバーガラス11と、投影されたスポット像を拡大して結像する結像光学系12と、拡大されたスポット像を電気信号に変換するCCD(Charge Coupled Device)素子13とを備えて構成されている。
【0031】
図7は、画像処理装置1の構成を例示する図である。カバーガラス11は、平板状の透明ガラスからなり、DVDの表面から情報記録面までの光学的距離に相当する、例えばDVDで用いられるポリカーボネイト0.6mmに相当する光学的距離を持つ厚みを有している。カバーガラス11の裏面は、半透明のハーフミラー面11aが蒸着されて形成されている。ハーフミラー面11aからの反射光によりフォーカスサーボがかけられ、ハーフミラー面11aを透過した透過光によりスポット像が投影される。
【0032】
結像光学系12は、対物レンズ121と、ミラー122と、凸レンズ123、124と、結像レンズ125とを備えて構成されている。結像光学系12は、ハーフミラー面11aに投影されたスポット像を、対物レンズ121で集光し、ミラー122を介して光路を変更した後、互いに焦点距離が異なる凸レンズ123、124により像を拡大する。そして、結像レンズ125によりCCD素子13にスポット像を結像する。CCD素子13は、結像されたスポット像を電気信号に変換して制御部3に出力する。
【0033】
DAコンバータ4a、4b、4cは、制御部3からの指令信号をアナログ値に変換し、各々増幅器5a、5b、5cに出力する。増幅器5a、5bは、DAコンバータ4a、4bからの指令値信号に基づき、各々揺動アクチュエータ6a、6bを駆動させるための駆動電圧を出力する。また、増幅器5cは、DAコンバータ4cの指令値信号に基づき、対物レンズ54のアクチュエータ541を駆動させるための駆動電圧を出力する。
【0034】
揺動アクチュエータ6a、6bは、駆動電圧に基づく角度にステージが揺動する電動式ゴニオステージであり、立上ミラー53に連結して設置されている。揺動アクチュエータ6aは、立上ミラー53をRAD方向に沿って揺動し、それにより、光ビームの光軸をRAD方向に沿って変化させる。揺動アクチュエータ6bは、立上ミラー53をTAN方向に揺動し、それにより、光ビームの光軸をTAN方向に沿って変化させる。
【0035】
アクチュエータ541は、光ピックアップ5に備えられ、対物レンズ54をその光軸方向に移動させ、デフォーカス量を変化させるアクチュエータである。
【0036】
図8は、制御部3に設定されているオブジェクトプログラムのブロック図である。制御部3には、測定手段S1と、演算手段S2と、非点収差調整手段S3のオブジェクトプログラムが備えられている。なお、非点収差の測定手段は、測定手段S1と演算手段S2とを備えて構成されている。
【0037】
このような構成の本非点収差調整装置の動作を説明する。まず、図8に示す測定手段S1及び演算手段S2は、光ピックアップ5の非点収差を測定する。次に、求められた非点収差に基づき、非点収差調整手段S3は、揺動アクチュエータ6a、6bを駆動し対物レンズ54に入射する光ビームの入射角を調整することで非点収差を補正する。
【0038】
本非点収差調整を行う際の各ステップについて、図9〜10に示すフローチャートに基づき詳細に説明する。
【0039】
まず、ステップS101において、測定手段S1は、カウンタ変数nを1に初期化する。次に、ステップS102において、DAコンバータ4cに対し指令信号を出力しアクチュエータ541を駆動して、光ピックアップ5の対物レンズ54の焦点を所定の測定開始位置にデフォーカスする。ここで、デフォーカス量とは、平行光ビームが対物レンズ54によって収束する焦点位置のハーフミラー面11aを基準とした相対距離をいう。そして、図11(a)に示すように、平行光ビームの焦点位置が、カバーガラス11のハーフミラー面11aよりも光ピックアップ5側(far)にあるとき、デフォーカス量は、負(−)の符号をとり、図11(b)に示すように、焦点位置がハーフミラー面11aよりも画像処理装置1側(near)にあるとき、正(+)の符号をとるものとする。本非点収差の測定を開始するデフォーカス量は、ハーフミラー面11aから例えば−1.7μmである(但し、この値に限定するものではない)。なお、測定手段S1は、予め記憶されているアクチュエータ541の駆動電圧値と対物レンズ54のデフォーカス量の関係式に基づき、DAコンバータ4cに対し指令信号を出力し、所定のデフォーカス量になるようアクチュエータ541を駆動する。
【0040】
次に、ステップS103において、配列変数DF(n)に当該デフォーカス量を記憶する。ステップ103では、配列変数DF(1)に測定開始のデフォーカス量を記憶することになる。
【0041】
次に、ステップS104において、画像処理装置1は、ハーフミラー面11aに投影された光ビームのスポット像を結像光学系12で拡大し、CCD素子13に結像する。そして、測定手段S1は、ハーフミラー面11aに投影されたスポット像を画像データとして取り込む。
【0042】
次に、ステップS105において、測定手段S1は、図2に示したRAD方向におけるスポット像Pnの径X1を計測する。そして、ステップS106において、スポット径X1を配列変数X1(n)に記憶する。
【0043】
次に、ステップS107において、測定手段S1は、TAN方向におけるスポット像Pnの径Y1を計測する。そして、ステップS108において、スポット径Y1を配列変数Y1(n)に記憶する。
【0044】
次に、ステップS109において、図4に示すように、RAD方向に対して45度傾けた方向(「RAD+45度方向」と表記)におけるスポット像Pnの径X2を計測する。そして、ステップS110において、スポット径X2を配列変数X2(n)に記憶する。
【0045】
次に、ステップS111において、測定手段S1は、TAN方向に対して45度傾けた方向(「TAN+45度方向」と表記)におけるスポット像Pnの径Y2を計測する。そして、ステップS112において、スポット径Y2を配列変数Y2(n)に記憶する。
【0046】
次に、ステップS113において、当該デフォーカス量と測定終了のデフォーカス量の値とを比較する。ここで、測定終了のデフォーカス量は、例えば+1.3μmである。
【0047】
当該デフォーカス量が測定終了のデフォーカス量よりも小さければ、ステップS114において、デフォーカス量を所定量、例えば約0.3〜0.5μmインクリメントする。デフォーカス量のインクリメントは、既に述べたように、制御部3が指令信号を出力し、アクチュエータ541がその指令信号に基づいて対物レンズ54を光軸方向に駆動することにより行われる。そして、ステップS115において、変数nを+1インクリメントし、ステップS116において、配列変数DF(n)にインクリメントした当該デフォーカス量を記憶する。そして、ステップS104〜S112においてスポット像Pnの径の測定を再び行う。
【0048】
デフォーカス量をインクリメントしながら上述の測定を行い、ステップS113において、当該デフォーカス量が測定終了の位置以上であると判定すると、図10に示すステップS117以降を実行する。
【0049】
ステップS117〜S120において、図12に示すように、デフォーカス量DF(n)、RAD方向のスポット径X1(n)、TAN方向のスポット径Y1(n)の測定結果を用い、各々のスポット径が最小となるデフォーカス量を求める。
【0050】
具体的には、ステップS117において、測定手段S1は、例えば最小2乗法により、デフォーカス量DF(n)とRAD方向のスポット径X1(n)の関係を近似する二次の回帰曲線fx1を求める。そして、ステップS118において、ステップS117と同様に、デフォーカス量DF(n)とTAN方向のスポット径Y1(n)の関係を近似する二次の回帰曲線fy1を求める。
【0051】
次に、ステップS119において、得られた回帰曲線fx1に基づき、スポット像の径X1(n)が最小値を示すデフォーカス量に相当する値DF1を求める。また、ステップS120において、得られた回帰曲線fy1に基づき、スポット径Y1(n)が最小値を示すデフォーカス量に相当する値DF2を求める。
【0052】
次に、ステップS121〜S124において、図13に示すように、デフォーカス量DF(n)、RAD+45度方向のスポット径X2(n)、TAN+45度方向のスポット径Y2(n)の測定結果を用い、各々のスポット径が最小となるデフォーカス量を求める。
【0053】
具体的には、ステップS121において、測定手段S1は、デフォーカス量DF(n)とRAD+45度方向のスポット径X2(n)の関係を近似する二次の回帰曲線fx2を求める。次に、ステップS122において、デフォーカス量DF(n)とTAN+45度方向のスポット径Y2(n)の関係を近似する二次の回帰曲線fy2を求める。
【0054】
次に、ステップS123において、得られた回帰曲線fx2に基づき、スポット像の径X2(n)が最小値を示すデフォーカス量に相当する値DF3を求める。また、ステップS124において、得られた回帰曲線fy2に基づき、スポット像の径Y2(n)が最小値を示すデフォーカス量に相当する値DF4を求める。
【0055】
次に、演算手段S2は、ステップS125において、数式(1)に示すように、値DF2と値DF1の差である焦点間距離L0を求める。焦点間距離L0は、光ビームがRAD方向に収束される焦点と、それに直交するTAN方向に収束される焦点との間の距離である。
【0056】
【数1】
Figure 0003611211
【0057】
また、ステップS126において、演算手段S2は、数式(2)に示すように、値DF4と値DF3の差である焦点間距離L45を求める。焦点間距離L45は、光ビームがRAD+45度方向に収束される焦点と、それに直交するTAN+45度方向に収束される焦点との間の距離である。
【0058】
【数2】
Figure 0003611211
【0059】
次に、ステップS127において、演算手段S2は、数式(3)に示す一次関数F1で焦点間距離L0を変換して、非点収差の0度成分AS0を求める。
【0060】
【数3】
Figure 0003611211
【0061】
次に、ステップS128において、演算手段S2は、数式(4)に示す一次関数F2で焦点間距離L45を変換して、非点収差の45度成分AS45を求める。
【0062】
【数4】
Figure 0003611211
【0063】
なお、変換関数F1、F2は、制御部3のメモリに予め記憶され、同一型式の光ピックアップを対象にした本非点収差の測定の際には、同一の変換関数F1、F2を用いる。
【0064】
ステップS129において、演算手段S3は、数式(5)に示すように非点収差の0度成分AS0と45度成分AS45の2乗平均を演算することにより、非点収差量ASmagを求める。また、ステップS130において、数式(6)により非点収差角度ASθを求める。
【0065】
【数5】
Figure 0003611211
【0066】
なお、図14(a)は、複数の光ピックアップに対し、本非点収差の測定により求めた焦点間距離L0と、干渉計により測定した非点収差の0度成分(RADとTAN方向における非点収差)との交点をマークで示したグラフである。同図に示すように、焦点間距離L0と干渉計による測定値は、非常に高い相関を有することが確認されている(例えば相関係数が0.96)。数式(3)の変換関数F1は、このような測定を行い、焦点間距離L0と干渉計による測定値の関係を一次関数で近似したものである。つまり、焦点間距離L0を求め、変換関数F1で変換すれば、干渉計で測定される非点収差成分にほぼ相当する値を得ることができる。
【0067】
また、図14(b)は、同じく本非点収差の測定により求めた焦点間距離L45と、干渉計により測定した同方向に基づく非点収差の45度成分(RAD+45度と、TAN+45度方向における非点収差)との交点をマークで示したグラフである。同図に示すように、焦点間距離L45と干渉計による測定値は、非常に高い相関を有することが確認されている(例えば相関係数が0.99)。数式(4)の変換関数F2は、このような測定を行い、焦点間距離L45と干渉計による測定値の関係を一次関数で近似したものである。つまり、焦点間距離L45を求め、変換関数F2で変換すれば、干渉計で測定される非点収差成分にほぼ相当する値を得ることができる。ちなみに、非点収差の単位はλ(干渉計で使用する測定光の波長)であり、変換関数F1、F2によって、焦点間距離L0、L45は、非点収差の単位をλとした値に換算される。
【0068】
このように、画像処理装置1を介して取り込んだスポット像を測定手段S1及び演算手段S2により焦点間距離L0、L45を求めることで、相当する非点収差を測定することができる。
【0069】
次に、図8に示した非点収差調整手段S3は、求められた焦点間距離L0、L45の値に基づき、揺動アクチュエータ6aを駆動して、立上ミラー53をRAD方向に沿ってΔθRADだけ角度を変化させ、また、揺動アクチュエータ6bを駆動して、立上ミラー53をTAN方向に沿ってΔθTANだけ角度を変化させる。なお、立上ミラー53の角度変化量は、上述したように、予め確立されている焦点間距離と立上ミラーの設置角度との関係式により求められる。
【0070】
なお、L0、L45、及び立上げミラー53の設置角度の関係式は制御部3のメモリに予め記憶され、同一型式の光ピックアップを対象にした本非点収差調整の際には、同一の関係式を用いる。
【0071】
このように、非点収差調整手段S3では、求められた焦点間距離L0、L45を、上述の関係式に基づいて、計算を行うことで得られる立上ミラー53の最適な調整角度に基づき調整を行い、非点収差を補正する。なお、本非点収差調整終了後、立上ミラー53は接着剤等で固定される。
【0072】
本実施例では、非点収差の測定におけるデフォーカス範囲を、−1.7〜+1.3μmとしたが、本発明はそれに限るものではない。例えば、本非点収差の測定により得られる焦点間距離と干渉計による非点収差の測定値との間に充分な相関(例えば相関係数が0.8以上)が確保されるように、デフォーカス範囲を実験的に求めてもよい。
【0073】
また、本非点収差調整は、DVDの記録再生装置に用いられる光ピックアップのみならず、例えばCD(Compact Disc)、光磁気ディスク(MO;Magneto Optical Disk)等の光ディスク用光ピックアップにも応用できる。
【0074】
このように、本実施例の光ピックアップの非点収差調整装置によれば、光ビームがRAD方向に収束される焦点位置と、TAN方向に収束される焦点位置との焦点間距離L0を求める。更に、RAD方向から45度傾けた方向に収束される焦点位置と、TAN方向から45度傾けた方向に収束される焦点位置との焦点間距離L45を求める。焦点間距離L0及びL45は、各々非点収差の0度成分及び45度成分と相関があるので、これら焦点間距離を求めることにより光ピックアップ5の非点収差を測定することができる。
【0075】
また、焦点間距離L0、L45を求めることで非点収差の0度成分及び45度成分を測定できるので、非点収差の成分から非点収差の量(絶対値)及び非点収差の角度が得られる。
【0076】
また、焦点間距離L0、L45に基づき非点収差を測定するので、無収差(非点収差がゼロ)状態において光ビームのスポット形状が楕円である光ピックアップに対しても、非点収差の測定または調整を精度良く行うことができる。
【0077】
また、上述の非点収差の測定結果に基づき、予め計算及び実験で確立されている焦点間距離と立上ミラーの設置角度の関係式から調整すべき角度に立上ミラーを調整することで非点収差を補正するので、一度の調整工程で非点収差を最適に調整することができ、調整作業も簡易になる。
【0078】
また、スポット径を画像処理して測定することにより、非点収差の測定または調整を自動化することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態に係る非点収差測定及び調整方法を表す図である。
【図2】スポット像の径を測定する方法を表す図である。
【図3】デフォーカス量とスポット径の関係を表すグラフである。
【図4】スポット像の径を測定する方法を更に表す図である。
【図5】デフォーカス量とスポット径の関係を更に表すグラフである。
【図6】本発明の実施例に係る非点収差調整装置を示すブロック図である。
【図7】本発明の実施例に係る画像処理装置の構成を示すブロック図である。
【図8】本発明の実施例に係るオブジェクトプログラムのブロック図である。
【図9】本発明の実施例に係る非点収差調整装置の動作を示すフローチャートである。
【図10】本発明の実施例に係る非点収差調整装置の動作を更に示すフローチャートである。
【図11】デフォーカス量を説明するための図である。
【図12】デフォーカス量とスポット径の関係を表すグラフである。
【図13】デフォーカス量とスポット径の関係を更に表すグラフである。
【図14】焦点間距離と干渉計による非点収差の相関を表すグラフである。
【符号の説明】
1…画像処理装置 11a…投影面(ハーフミラー)
13…撮像装置(CCD素子) 3…制御部
5…光ピックアップ 53…立上ミラー
54…対物レンズ L0、L45…焦点間距離
S1…測定手段 S2…演算手段
S3…非点収差調整手段

Claims (5)

  1. 対物レンズで収束させた光ビームを記録媒体に照射する光ピックアップの非点収差測定方法であって、
    前記光ビームの進行方向に直交する第1の方向において、前記光ビームのビーム径が最小となる前記進行方向上の第1の位置を求める第1の工程と、
    前記進行方向に直交し前記第1の方向に直交する第2の方向において、前記光ビームのビーム径が最小となる前記進行方向上の第2の位置を求める第2の工程と、
    前記進行方向上の前記第1の位置と前記第2の位置との差である第1の距離を求める第3の工程と、
    前記進行方向に直交し前記第1の方向を略45度傾けた第3の方向において、前記光ビームのビーム径が最小となる前記進行方向上の第3の位置を求める第4の工程と、
    前記進行方向に直交し前記第3の方向に直交する第4の方向において、前記光ビームのビーム径が最小となる前記進行方向上の第4の位置を求める第5の工程と、
    前記進行方向上の前記第3の位置と前記第4の位置との差である第2の距離を求める第6の工程とを備え、
    前記第1の距離と前記第2の距離により、前記光ピックアップの非点収差を測定することを特徴とする光ピックアップの非点収差測定方法。
  2. 対物レンズで収束させた光ビームを記録媒体に照射する光ピックアップの非点収差調整方法であって、
    前記光ビームの進行方向に直交する第1の方向において、前記光ビームのビーム径が最小となる前記進行方向上の第1の位置を求める第1の工程と、
    前記進行方向に直交し前記第1の方向に直交する第2の方向において、前記光ビームのビーム径が最小となる前記進行方向上の第2の位置を求める第2の工程と、
    前記進行方向上の前記第1の位置と前記第2の位置との差である第1の距離を求める第3の工程と、
    前記進行方向に直交し前記第1の方向を略45度傾けた第3の方向において、前記光ビームのビーム径が最小となる前記進行方向上の第3の位置を求める第4の工程と、
    前記進行方向に直交し前記第3の方向に直交する第4の方向において、前記光ビームのビーム径が最小となる前記進行方向上の第4の位置を求める第5の工程と、
    前記進行方向上の前記第3の位置と前記第4の位置との差である第2の距離を求める第6の工程と、
    前記第1の距離と前記第2の距離により、前記光ピックアップの非点収差を測定する第7の工程とを備え、
    前記第7の工程で得られた測定結果により、前記光ピックアップの非点収差を調整することを特徴とする光ピックアップの非点収差調整方法。
  3. 前記第1の距離と前記第2の距離により、前記対物レンズに入射する前記光ビームの入射角を調整することを特徴とする請求項2に記載の光ピックアップの非点収差調整方法。
  4. 前記光ビームのビーム径は、スポット像の径であることを特徴とする請求項2または3に記載の光ピックアップの非点収差調整方法。
  5. 対物レンズで収束させた光ビームを記録媒体に照射する光ピックアップの非点収差測定装置であって、
    前記光ビームの進行方向に直交する第1の方向において、前記光ビームのビーム径が最小となる前記進行方向上の第1の位置と、
    前記進行方向に直交し前記第1の方向に直交する第2の方向において、前記光ビームのビーム径が最小となる前記進行方向上の第2の位置と、
    前記進行方向に直交し前記第1の方向を略45度傾けた第3の方向において、前記光ビームのビーム径が最小となる前記進行方向上の第3の位置と、
    前記進行方向に直交し前記第3の方向に直交する第4の方向において、前記光ビームのビーム径が最小となる前記進行方向上の第4の位置、
    の夫々を求める測定手段と、
    前記進行方向上の前記第1の位置と前記第2の位置との差である第1の距離、及び前記進行方向上の前記第3の位置と前記第4の位置との差である第2の距離を求める演算手段とを備え、
    前記第1の距離と前記第2の距離により、前記光ピックアップの非点収差を測定することを特徴とする光ピックアップの非点収差測定装置。
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