JP3610410B6 - 異種遺伝子を安定に組み込んだ酵母菌株 - Google Patents

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本発明は、染色体の幾つかの異種遺伝子がその染色体中に安定に組み込まれた酵母菌株(yeast strain)に関する。本発明はさらに、幾つかの異種因子の活性に連結した複合機能を酵母中で発現させる方法、および特に、1つまたは複数の、異種のシトクロムP450のモノオキシゲナーゼ活性を、酵母中で発現させる方法に関する。
シトクロムP450(これ以降、P450と略す)は、非常に多様性のあるモノオキシゲナーゼ型の活性を有する、膜酵素のスーパーファミリーを構成する。それらの活性は、広い範囲の分野への適用に使用されることができる。非制限的な事例で示すと、以下のものが挙げられる。
− 酸素原子を挿入する反応により、引き続き又はその代わりに、炭素−炭素または炭素−水素結合の転移により、および酸素を種々のヘテロ原子(硫黄、窒素、リン)に添加することにより、本質的に無制限の数の親油性分子の生物学的変換。P450は、大気中の酸素を、酸化剤として利用する。
− ヒト肝臓での、天然のまたは人工的な非生体由来の分子(汚染物質、医療用製品、添加物)の代謝による、毒性代謝物または変異原性代謝物の形成のインビトロ診断。そのような予測は、薬学的に重要な新しい分子の開発の場合には、特に非常に重要である。
− 毒性または環境を汚染する分子の同定および破壊。こうした広い分野への適応の見地から、異種型のP450、およびそれらを欠く微生物中でのそれらの活性の発現は、明らかに注目に値する。そこで、2つの問題が明らかになった。第一には、真核生物のP450の膜特性は、真核タイプの宿主微生物の使用を望ましいものとし、こうして酵母が選択されることになった。第二には、これらの酵素は、特殊な電子伝達体の役割を担う「関連酵素群」の存在下のみ機能する。シトクロムP450の多様性は甚だしいものであるが、「関連する酸化還元酵素」は、数が少なく、シトクロムb5、NADPH−シトクロムb5リダクターゼ、および最も特異的なこととして、NADH−シトクロムP450リダクターゼを含む。さらに、フェーズIIと呼ばれるある種の酵素、例えばミクロソームのエポキシドの加水分解酵素は、異なるP450同志の間での代謝的カップリングに、またはある種の反応、例えば多環式炭化水素の代謝の際に形成される、高度に反応性の化学中間体の破壊において、必要とされ得る。
異種シトクロムP450の酵母での、高いインビボ発現レベルは、P450の機能発揮に必須のこれらの「関連する酸化還元酵素」が、相互におよびP450に関連する適切な化学量論的速度で、酵母で共発現され得る場合にのみ、高いレベルの活性がもたらされる。最近のデータは、以下のものを示す。
−リダクターゼ/異種P450の過度に低いモル比率は、リダクターゼが不足する結果として、低い比活性をもたらす。
−リダクターゼ/異種P450の過度に高いモル比率は、不全型の触媒リサイクルの数の大いなる増加、および過剰なリダクターゼによる細胞に有害な酸素含有ラジカル産生の結果として、P450の重要な分画の破壊をもたらす。その帰結は、細胞の生存能力の喪失であるか、あるいはシトクロムP450の破壊による活性の落ち込みでさえある。
−シトクロムb5/P450の過度に低いモル比率は、クラスBのP450の活性の低下をもたらす。さらに、高いレベルのシトクロムb5の存在は、過剰なリダクターゼのレベルに連結した毒性作用に対して、保護的効果を発揮するように見える。
−シトクロムb5/P450の過度に高いモル比率は、クラスAのP450の活性の阻害をもたらし、非結合の細胞内ヘム量を減少させる可能性があり、よって細胞には毒性であり得る。
これらの問題を解決するために、合成遺伝子の染色体への組み込みによって、いかなる異種P450活性の発現のためにも最適化され得る酵素的環境を、安定的に、および(培養培地の組成により)調節され得る様式で発現する、1セットの酵母菌株が、本発明に従い構築された。
多くの刊行物が、異種シトクロムP450の酵母での発現を記載してきた。にもかかわらず、インビボで高い活性を許容する細胞環境の最適化の問題は、ほとんど取り組まれることはなく、生成されたタンパク質は、しばしば分析的な目的またはインビトロでの研究目的に使用されていた。
活性の最適化の問題は、これまで2つの方法で取り組まれてきた。
−NADPH−シトクロムP450リダクターゼ(同種または異種の)およびシトクロムP450それ自身を、人工的に同一ポリペプチド鎖に結合させた融合タンパク質の構築による。
−P450リダクターゼのための発現ユニットおよび異種P450のための発現ユニットの両方を、同一プラスミドに有するベクターの使用による。
これら両システムは、換言すれば融合タンパク質(P450−P450リダクターゼ)またはプラスミドの共発現ベクターを構築するものであり、重大な欠点を有している。
1 − 融合タンパク質(P450−リダクターゼ)の構築は、融合の分子設計の見地から、現在の知識水準では(経験的に試行錯誤で行うアプローチによるものを除いて)、最適化するには難しい長い操作である。関心が単一の活性に集中しているとき、および長い研究がそれに向けられ得るとき、これは、理論的には本物の欠点ではない。しかしながら、それは、手段を問題点に適応させるために、合理的な時間内で、幾つかのタイプの活性が試験されなければならない開発のプロセスの際には重大な欠点である。この事実に加えて、このシステムは、それに固有の3つの主要な欠点を有する。
− 第一は、リダクターゼ量のP450量に対する比率の調整が行えないことである。リダクターゼは論理的にシトクロムよりもかなり速い触媒サイクルを有する故に、活性の最適な比率は、必ずしも1:1ではなく、P450ごとに変動し得、同一のP450に対してさえ基質ごとに変動し得る。
− 第二は、融合タンパク質合成の乏しい収率(または乏しい安定的)から起こる。これは、ほとんどの場合、P450単独での発現に対する、融合タンパク質の発現レベルの大幅な低下として表れる。この低下は、それが全てではないにしても、融合物の収率が減じることに起因する比活性の増大のほとんどの原因となる。
− 第三の欠点は、このアプローチを、2を越えるタンパク質の融合に一般化しようとすることに関する、技術的ではないにしても少なくとも実際的な不可能性である。
2 − 幾つかの異種タンパク質の、単一プラスミドからの共発現は、一見して優れたアプローチのように思える。にもかかわらず、そのような大きなプラスミドは、最も特徴的に(および、これがほとんどの場合なのであるが)同一のプロモーター成分が異なる遺伝子のために使用されるときに、潜在的に遺伝子的に不安定である。この不安定性は、産業的応用において、明確な問題となる。
さらに、使用される多コピー性のプラスミドは、各細胞中にコピー数がランダムに分布する結果として、これら2つの酵素(リダクターゼおよびP450)のそれぞれの発現レベルが非常に異なる細胞集団を生み出す。得られるモノオキシゲナーゼ活性(これは、実際的に有用な値である)は、そのとき二乗則分布の平均値である。この値は、均一で高いレベルのリダクターゼを有する細胞環境中でP450が発現された(多コピー性プラスミドであっても)場合に達成される活性値よりも、明らかな理由をもって、低いことは確かである。
本発明による、異種シトクロムP450のモノオキシゲナーゼ活性を酵母で発現させる方法は、そのゲノム中にNADPH−シトクロムP450リダクターゼおよびシトクロムb5の遺伝子が組み込まれ、それによりNADPHリダクターゼおよびシトクロムb5を共発現する酵母菌株が、異種シトクロムP450遺伝子発現のためのカセットを有するプラスミドで形質転換されることを特徴とする。
異種P450の発現に適切な状況を表出する酵母菌株の安定性は、細胞に関連する一般的な毒性、複数の異種P450の活性発現、およびそれらに関連する酵素の見地から、必須の特徴である。多くの外来性遺伝子が同時に組み込まれなければならないとき、この問題は、本質的に決定的な重要性を帯びる。
1つ以上の外来性遺伝子を有する酵母菌株に導入される異種活性の、消失または改変をもたらす主たる予知可能な遺伝子的な不安定性は、以下のものである。
(a)異種遺伝子群の1つの突然変異による不活性化。そのような事象は、一般に、異種遺伝子の、または少なくとも関連する活性の細胞に対する毒性の結果として、自然に選択される。
(b)異型接合型の遺伝子座内での、野生型遺伝子の重複(変換)時における、異種遺伝子の組換えによる欠失(図解1を参照)。それは、(a)と同一の効果および野生型の同型接合型的状況をもたらす効果の両方を有する故に、その選択的利点は2倍である。
図解1
....XXX....YYYY....ZZZ→....XXX....YYYY....ZZZ...
....XXX.....hhhhh....ZZZ→..XXX....YYYY.....ZZZ..
XXXおよびZZZ:野生型の遺伝子間配列。
hhhhhh:異種遺伝子。
YYYYY:組み込みの標的である野生型遺伝子。
(c)異種遺伝子の1つの除去、または、異型接合型の遺伝子座で起こり得る、その後に胞子形成、続いて自然交差が起こる減数分裂的組換えにより(異種遺伝子に直接的には連結しないが、所望の活性に関して重要な機能を有する、未知の内在性の異型接合型遺伝子の転座に関連する)菌株の重要な性質の進化。
これらのメカニズムを熟考して、本発明の多重組み込み型菌株の構築に対する、安定性の基準の確定がもたらされた。
そのほとんど一般的な局面では、本発明の主題は、その染色体ゲノム中に幾つかの異種遺伝子が安定的に組み込まれ、それらの発現を可能とする酵母菌株であり、それは以下を特徴とする。
−1−この酵母菌株は、異型接合型である異種遺伝子を有する遺伝子座および接合型遺伝子座を例外として、対立遺伝子(allele)が同質遺伝子である二倍体菌株である。
−2−異型接合型遺伝子座は、野生型遺伝子を有する対立遺伝子を欠いている。および、
−3−異種遺伝子は、誘導および調節可能なプロモーターの制御下に置かれる。
好ましくは、それぞれの異型接合型遺伝子座は、2つの対立遺伝子間で配列相同性がなく(問題となる対立遺伝子は、それ故に、異種または人工的な遺伝子を含有している)、あるいは、それぞれの異型接合体において2つの対立遺伝子間で相同な配列が、解読方向に関して逆向きに配向している。
好ましくは、発現をもたらすための成分および構造遺伝子を含む異種遺伝子の発現のためのユニットは、該異種遺伝子がこの菌株の増殖速度に対して負の因子を構成するときには、選択可能なマーカーを含む。
とくに適切な実施形態では、それぞれの対立遺伝子における同じゲノムの遺伝子座は、2つの異なる異種遺伝子発現のために使用され、それはまた異型接合型二倍体の遺伝子座を形成する。
異種遺伝子は、例えば少なくとも100倍の、上述のタイプ(a)の不安定性に関連する逆選択性を排除可能とする、好ましくは高度に調節可能な誘導プロモーターの制御下に置かれる。
異種遺伝子を有する遺伝子座および接合型遺伝子座(PES1−34株およびPES1−53株の構築によ理、下記に図解される)を例外として、完全に同質遺伝子である二倍体菌株の使用は、タイプ(c)の不安定性の減少を可能とする。
野生型の二倍体(または機能的な等価物)のコピーの異型接合型遺伝子座での欠如は、それぞれの異型接合型遺伝子座が異種遺伝子および欠失の(必要な場合には、マーカーを含む)いずれかの基準を満たす異種遺伝子(または、例えばカセットGAL10−CYC1−Yred−tPGKのような人工的遺伝子)から構成されることを可能にすることから、変換の選択的利点を排除しながら、上述のタイプ(b)の不安定性の減少を可能とする。
それぞれの異型接合型遺伝子座における、異種のまたは人工的な遺伝子を含む2つの対立遺伝子間の配列の相同性が欠如するか、あるいは、PES1−34およびPES1−35の場合のようにこれを欠く場合、可能な相同的配列の逆向きの配向を使用すると、上述のタイプ(b)または(c)の不安定性の減少が可能となる。
選択可能なマーカーが存在することは、容易に同定可能な表現型を誘導しない異種発現のための全てのユニットにおいて、または少なくとも、正常な条件下で菌株を使用するときの増殖速度に負の因子を構成する異種機能を有するあらゆる対立遺伝子においては、適切なことである(マーカーは、増殖に対する効果が、例えば改変されたリダクターゼ遺伝子のように正である場合には、無意味である)。
適切な実施態様においては、本発明の酵母菌株は、組み込まれる異種遺伝子が多段階の生物学的変換の連鎖、または複合機能の構築を構成する、因子をコードすることを特徴とする。
酵母、または異種のNADPH−シトクロムP450リダクターゼ遺伝子および異種のシトクロムb5遺伝子が安定的に組み込まれる、菌株が特に言及され得る。
好ましくは、NADPH−シトクロムP450リダクターゼ遺伝子は、内在性のNADPH−シトクロムP450リダクターゼの遺伝子座に組み込まれる。
より特異的には、相当する遺伝子が酵母菌株のゲノムに組み込まれる、ヒトエポキシドヒドロラーゼおよびNADPH−シトクロムP450リダクターゼを共発現する酵母菌株もまた、言及され得る。
本発明によれば、サッカロミセス・セレビシエ(Sacc haromyces cerevisiae)菌株への使用が、特によく為されるだろう。
本発明の菌株は、複合機能、特に多段階の生物学的変換の連鎖の構成因子を、酵母で発現する方法において有用である。最初に与えられる異種因子に関連する主要な活性は、以下のもので特徴づけられる。即ち、本発明に従って酵母菌株が形質転換され、該菌株は該複合機能に対して寄与する他の異種因子を共発現し、対応遺伝子が該他の因子に組み込まれる染色体ゲノムにおいて、該菌株は、該最初の異種遺伝子の発現のためのカセットを有するプラスミドで形質転換される。
特に、本発明の主題は、酵母での異種シトクロムP450のモノオキシゲナーゼ活性の発現方法であり、本発明のNADPH−シトクロムP450リダクターゼおよびシトクロムb5を共発現する酵母菌株は、NADPH−シトクロムP450リダクターゼおよびシトクロムb5の遺伝子を組み込まれているゲノムにおいて、異種シトクロムP450遺伝子の発現カセットを担うプラスミドを使用して形質転換されることを特徴とする。
好ましくは、シトクロムb5は、シトクロムP450と同じ異型の種であろう。
この方法では、高いレベルのリダクターゼが発現される条件下で、ヒトシトクロムP450を、異種シトクロムP450の特異的な安定化剤として、および幾つかのP450の特異的な活性化剤として、使用するのが好ましいだろう。
幾つかの異種遺伝子を酵母ゲノム中に安定的に且つ共に組み込む、新規で一般的な方法に加えて、本発明の主題は、異種シトクロムP450の活性の発現に、より特別に適切である1セットの菌株PES1(P450発現菌株シリーズ1)の構築に対するその適用である。PES1のセットは、6個の半数体の起源菌株(これらは、PES1−3、PES1−3UおよびPES1−4菌株の場合には単独で使用され得る)、および該半数体の起源菌株の組合せにより形成される3個の二倍体の菌株(PES1−34、PES1−31、PES1−42)を包含する。このセットの各成分は、理論的にいかなる種類の異種P450の発現カセットを担うプラスミドでも容易に形質転換され得る。このセットの菌株(PES1−3、PES1−3D、PES1−3U、PES1−4、PES1−34、PES1−31、PES1−42)は、異種P450の機能に関連する酸化還元酵素の発現レベルに関して、広い範囲の状況に適合する。このセットは、それぞれの種のP450の発現に対する最適な状況を決定でき、次いで迅速に利用できる。この概念を他の活性の共発現に敷衍する可能性も提示され、リダクターゼを過剰発現する一方で、ヒトミクロソームのエポキシドヒドロラーゼも発現する菌株(PES1−53)の構築によって概説される。提示された方法で構築され、異種シトクロムP450、論理的なあらゆる起源およびそれらの特別な酵素的環境を共発現する酵母菌株は、医療製品ならびに他の生体内異物分子の評価システムならびに代謝シミュレーションの構築に、および多段階の生物学的変換システム、解毒システム、あるいは汚染清浄化システムの製造における適用が見出される。
構築される菌株は、いかなる選択手段が欠如していても、遺伝的に安定である。それらの主要な特徴は、以下の通りである。
− このセットの菌株は、特別に改変された遺伝子座、特に交配型の遺伝子座(mating−type loci)を例外として、互いに完全に同質遺伝子である。
− NADPH−シトクロムP450リダクターゼおよびシトクロムb5は、発現され得る異種シトクロムP450のレベルおよび性質とは独立した均一なレベルで、各細胞中で生産される。
− リダクターゼおよびb5の総レベルは、発現され得る異種P450のレベルとは独立して、培養培地の組成の改変によって調整される。
− リダクターゼおよびb5の最大の総発現レベルは、生成される異種P450のものと、少なくとも等しい(モル比率および最大誘導において)もので有り得る。
− (非誘導条件で)生成され得るリダクターゼおよび異種b5の最小レベルは、上述のリダクターゼおよびb5の最大レベルよりも、少なくとも10倍少ない。
− リダクターゼは、シトクロムb5とは独立に過剰生成され得る。
− これらの菌株は、一般的なプラスミド使用に必要とされる選択可能なマーカーを有し、上述の特徴とは独立して、異種シトクロムP450の発現に「優れた宿主」である。
本発明はまた、下記に示す半数体および二倍体の酵母菌株のセット(PES1)からも構成される。
半数体の成分:
− 成分PES1−1およびPES1−2は、それらが各々、半数体交配型aおよびアルファ型のS.cerevisiae酵母菌株W303.1Bである故に、それ自身は新規ではない。
成分PES1−3は、新規である。それは、PES1−2から、以下のようにして構築される。
1 − NADPH−シトクロムP450リダクターゼの内在性コーディングフレームの上流に位置する最初のKpn1部位と、これと同じコーディングフレームの最初のコドンとの間にある、PES1−2酵母のゲノム配列を除去する。
2 − 除去された配列を、Kpn1(ハーフサイト)から始めて以下の順序に並べたもので置換する。(S.cerevisiaeの)オロチジン−5−リン酸脱炭酸酵素をコードする遺伝子、S.cerevisiae)のGAL10遺伝子のフラグメント、この遺伝子の転写開始配列および合成配列の数個のヌクレオチドを含むS.cerevisiaeのCYC1遺伝子のフラグメント。
− 成分PES1−4もまた、新規である。それは、PES1−3から、以下のように導かれる。
1 − PES1−3(上述)の機能的なURA3遺伝子の直前にあるKpn1ハーフサイトと、この位置(以前は、野生型NADPH−シトクロムP450リダクターゼ遺伝子のプロモーター部分にあった)の(リダクターゼ遺伝子のコーディングフレームの配向に関して)5′側にある最初のBspMI部位との間にあるゲノム配列を、除去する。
2 − (BamHI部位から開始する)NADPH−450リダクターゼのコーディングフレームの全体を、3′側にある最初のBspMI部位まで(上述と同じ形式)、3′側のそのフランキング部分とともに、除去する。
3 − 除去された部分は、以下の順序で、3′側にあるBspMI部位が位置する端部から開始して、以下の順序で部分的に置換される。(S.cerevisiaeの)オロチジン−5−リン酸脱炭酸酵素をコードする遺伝子、S.cerevisiaeのGAL10遺伝子のフラグメント、この遺伝子の転写開始配列を含むS.cerevisiaeのCYC1遺伝子のフラグメント、その後には合成配列の数個のヌクレオチドおよびヒトシトクロムb5遺伝子の完全なコーディングフレームが続き、その後には短い合成配列が続き、その後に該遺伝子の3′フランキング配列を含む酵母のホスホグリセリン酸キナーゼ遺伝子のフラグメントが続く。
4 − この菌株の交配型の特徴は、αからaへと変わる。二倍体の成分:
PSE1−34菌株は、半数体菌株であるPSE1−3とPSE1−4との二倍体で構成される。
PSE1−31菌株は、半数体菌株であるPSE1−3とPSE1−1との二倍体で構成される。
PSE1−42菌株は、半数体菌株であるPSE1−4とPSE1−2との二倍体で構成される。
PSE1−12菌株は、半数体菌株であるPSE1−1とPSE1−2との二倍体で構成される。
最後に、従って本発明の主題は、異種シトクロムP450の発現を可能にする酵母菌株に対応するセットであり、それは、このセットの各メンバーが、本発明の方法による異種シトクロムP450の発現カセットを有するプラスミドで形質転換されることを可能にし、このセットの異なる菌株は、それらの染色体ゲノムにNADPH−シトクロムP450リダクターゼおよびシトクロムb5遺伝子を組み込んだものであり、これらの遺伝子のそれぞれの発現レベルは、異なる菌株の間で様々であり、その結果、このセットにより、各々の特別なシトクロムP450の発現に最適な菌株を決定することができる。
本発明の他の利点および特徴は、下記の詳細な説明を参照して、明らかになるだろう。
図1は、酵母のNADPH−シトクロムP450リダクターゼ遺伝子を含む、酵母ゲノムDNAの制限地図を示す。
図2は、プラスミドPGP1およびPYred−L/V8からの、プラスミドPGP1PCの構築を示す。
図3は、プラスミドPGP1PおよびPFL39からの、プラスミドPGP1DT5の構築を示す。
図4は、プラスミドPG1P、PYeINT1−1およびPHb5/V8からの、プラスミドPYEHB1の構築を示す。
図5は、単一の開始菌株とは異なる菌株の、構築の図解を示す。
図6は、酵素EcoRIを使用する完全消化によるプラスミドPGP1−PCの線状化、および得られたフラグメントのゲノムへの相同組換えによる組み込みを示す。
図7は、PES1−1菌株の内在性NADPH−シトクロムP450リダクターゼ遺伝子座に、TRP1マーカーを導入して、PES1−3D株を得ることを示す。
図8は、PES1−1の内在性NADPH−シトクロムP450リダクターゼ遺伝子座に、GAL10−CYC1ハイブリッドプロモーター、ヒトシトクロムb5のコーディングフレーム、およびPGK遺伝子のターミネーター部分から構成される人工的遺伝子を導入して、PES1−4株を得ることを示す。
図9は、PES1−1株のリダクターゼ遺伝子座において、ヒトエポキシドヒドロラーゼの発現カセットにより置換して、PES1−5株を得ることを示す。
図10は、異なる菌株中での、Yred遺伝子座の物理的な構造を示す。
図11は、異なる菌株における、NADPH−シトクロムP450リダクターゼおよびシトクロムb5の発現レベルを、生化学的にアッセイした結果を示す。
図12は、ヒトシトクロムP450 1A1の安定性に対する、シトクロムb5およびリダクターゼの発現レベルの効果を示す図解である。
図13は、ベンゾ(a)ピレンをPES1−2、PES1−3およびPES1−53とともにインキュベートして形成される、または、形質転換してマウスシトクロムP450 1A1を発現するようになった、この汚染物質の代謝産物のHPLC分離を示す。
表1は、構築された菌株の重要な遺伝子型を要約したものである。
表2は、図11の図解に示される結果を再現する。
表3は、異種シトクロムP450の活性を発現するために構築された菌株の有用性を示す。
本発明の菌株の構築方法は、当業者にとっての公知技術、特に、交配型遺伝子座を除いて同質遺伝子である二倍体菌株を獲得するためのhoプラスミドによる半数体の交配型シフト(mating−type shift)、それに続く、異なる交配型遺伝子座を有する半数体の交雑(cross)についての、以下の詳細な説明により明らかにされる。
− 起源の酵母菌株(W303.1B)は、非常に広い範囲で使用されている標準実験室菌株〔standard laboratory strain〕である。それを発現のために使用することは、多数の刊行物の対象になっている。
− 該構築において、起源の要素として使用する全ての遺伝子及び遺伝子フラグメントの配列は、公表されており、データベースで自由に利用できる。対応するDNAフラグメントは、慣用手段により実験室的に最初に再クローン化〔recloned ab initio〕するか又は公有ドメイン〔public domain〕の配列データからPCR(ポリメラーゼ連鎖反応)により再クローン化した。
− 分子生物学的構築のために使用する手段は慣用技術である。
1.プラスミドの構築
1.1 使用した遺伝子及びDNA配列
− ヒトシトクロムb5:コーディングフレームを、公表されている配列及びヒト肝臓cDNAからPCRにより再クローン化した(Yoo,M.,& Steggles,A.W.(1988)Biochem.Biophys.Res.Commun.156,576−580;Urban,P.,Cullin,C.& Pompon,D.(1990)Biochimie 72,463−472)。
− NADPH−シトクロムP450リダクターゼ:酵母遺伝子のコーディングフレームを菌株PES1−2のゲノムDNA及び公表されている配列からPCRにより再クローン化した(Yabusaki,Y.,Murakami,H.& Ohkawa,H.(1988)J.Biochem.(Tokyo)103,1004−1010,Urban,1990)。5′−及び3′−フランキング部は、PES1−2のHind IIIゲノムフラグメントライブラリーで実験室的に分離したクローンから得た。
− ヒトエポキシドヒドロラーゼ:コーディングフレームを、公表されている配列から導出したcDNA、ヒト肝臓及びプライマーからPCRによりクローン化した(Skoda,R.C.,Demierre,A.,McBride,O.W.,Gonzalez,F.J.,& Meyers,U.A.(1988)J.Biol.Chem.263,1549−1554)。
− URA3マーカー及びGAL10−CYC1プロモーター:配列はプラスミドpLGSD5から抽出した(Guarente,L.,Yocum,R.R.& Gifford,P.(1982)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 79,7410−7414)。
− PGK遺伝子ターミネーター:配列は、公表されている配列(Mellow、J.,Dobson,M.J.,Roberts,N.A.,Tulte,M.F.,Emtag,J.S.,White,S.,Lowe,P.A.,Patel,T.,Kingsman,A.J.& Kingsman,S.M.(1982)Gene24,1−14)及びPES1−2から再クローン化した。
− TRP1マーカー:配列はプラスミドpFL39から抽出される(Bonneau,N.,Ozier−Kalogeropoulos,O.Li,G.,Labouesse,M.,Minvielle−Sebastia,L.& Lacroute,F.(1991)Yeast,印刷中)。
1.2. プラスミドpGP1−PC
酵母NADPH−シトクロムP450リダクターゼ(Yred)遺伝子を包含する、酵母ゲノムDNAの約9−kbpのHind IIIフラグメントを、pUC19にクローン化してpGP1とした。添付の図1に挿入のおおよその制限地図を示す。最初に、その3′末端がYred遺伝子のコーディングフレームの5′側の333bpに位置している2.5−kbpのKpn1フラグメント(図1参照)を、ベクターpUC19のKpn1部位に、該フラグメントに包含されているBspMI部位にYredの5′−非コーディング配列に隣接させる配向〔orientation〕でクローン化する。得られるベクターpGP1−PCは約11kbpを包含する(図2)。
1.3 プラスミドpGP1−DT5
Yred遺伝子を包含するpGP1の4.2−kbpのPst1フラグメントをpUC19のPst1部位にサブクローン化〔subcloned〕してpGP1Pを得る。その後、プラスミドpGP1PをBspMIで部分消化して、そこから得られる、pUC19ならびにYredの5′−及び3′−フランキング配列を包含する4−kbpのフラグメントを、酵母のTRP1遺伝子を包含する850bpのフラグメント(プラスミドpFL39(Bonneau 1991)をB q IIIで完全消化〔total digestion〕した後、DNAポリメラーゼで処理することにより得られる)をクローニングするためのベクターとして使用する。クローン化したフラグメントはTRP1遺伝子のXba1部位がYred遺伝子の5′−フランキング部のBspMI部位から200bpに位置するように配向する(図3参照)。
1.4 プラスミドpYeHB1
プラスミドpGP1PをBspMIで部分消化し、Yredコーディングフレームを包含する2875bpのフラグメントを分離する。該フラグメントを、Bq III部位を包含する10−bpのオリゴヌクレオチドで置換してpYeint1−1(図4)を得る。URA3遺伝子、GAL10−CYC1プロモーター、ヒトシトクロムb5コーディングフレーム及びPGK遺伝子のターミネーター部を包含するHb5/V8の2.5−kbpのHind IIIフラグメント(アーバン、1990)を、(平滑末端とした後に)Bq III部位(DNApol.1で処理してふさいだ部位)で開いたベクターPYeint1−1にクローン化する。配向は、得られるベクターがURA3遺伝子をYred遺伝子の3′−非コーディング部に隣接した位置に包含するように選択する(図4)。
1.5 プラスミドpYeHEH
ヒトミクロソームエポキシドヒトロラーゼのコーディングフレームを、公表されている配列の3′末端の24ヌクレオチド上の2つの相補的なプライマーを使用するPCRにより(シトクロムb5をクローン化するために使用する方法と類似の方法で)増幅する。各プライマーの5′末端には、非相同BamHI部位が包含されている。次いで、それにより得られるBamHIフラグメントをベクターpYeDP1/8−2(Cullin,C.,& Pompon,D.(1988)Gene 65,203−217)のBamHI部位に正確な配向でクローン化する。その後、得られたプラスミドから、発現カセットを包含するHind IIIフラグメントを抽出し、得られる3′末端をクレノウ処理〔Klenow treatment〕によりふさいで、Bq III部位で開いたベクターPYeINT1−1にクローニングできるようにした後、末端を更にクレノウを使用してふさぐ。配向は、ここから得られるベクターがURA3マーカーをオリジナルのYred遺伝子の3′−非コーディング部に隣接した位置に包含するように選択する。ここから得られるプラスミドpYeHEHは、ヒトシトクロムb5のコーディングフレームの代わりに、ヒトエポキシドヒドロラーゼのコーディングフレームが存在することを除いてpYeHB1と類似している。
2.酵母菌株の構築
2.1 一般的記載
全酵母菌株を、W303.1Bの名称で当業者に知られている単一の出発菌株から構築した(図5参照)。該菌株は半数体(交配型アルファ)であり、公知の突然変異としてura3、Ade2、His1、Trp1、Leu2を包含する。これは、正常に呼吸し、炭素源としてガラクトースを使用できる。該菌株を均質性のために、以下、PES1−2と名付ける。異なる菌株のYred遺伝子座の構造を図解的に一括して図10に示す。
2.2 菌株PES1−1
該半数体菌株(交配型a)は、菌株PES1−2から、公知の方法に従って適用されるHoプラスミド法を使用した交配型交換により構築した(Methods in enzymology,vol.194,pp132−146)。従って、菌株PES1−1は(交配型遺伝子を除いて)菌株PES1−2と遺伝子的に完全に同質である。
2.3 菌株PES1−12
該菌株は、菌株PES1−1とPES1−2との間の交雑だけで得られる二倍体である。二倍体の特徴は酢酸培地での胞子形成の能力により確認される。構築の結果、該二倍体はその遺伝子の全て(交配型遺伝子座を除く)について同型接合である。
2.4 菌株PES1−3及びPES1−3U
該半数体菌株(交配型アルファ)は、天然のリダクターゼコーディングフレームをGAL10−CYC1誘導プロモーターの制御下に置くために以下の手順により修飾された内在性のNADPH−シトクロムP450リダクターゼ遺伝子座を除いてPES1−2と完全に遺伝子的に同質である。該手順は:
1− PES1−2株を、酵素Eco RIを使用する完全消化により二重鎖化した〔doubly linearized〕プラスミドpGP1−PCで(標準塩化リチウム法を使用して)形質転換し(図6参照)、URA+形質転換細胞を選択する。
2− こうして選択した形質転換細胞を、グルコース含有完全培地(YPGA)でPES1−2と比較したスロー成長〔slow growth〕、及び、ガラクトース含有完全培地(YPGaIA)でPES1−2に対する同等の成長を基礎として分類する。
3− これらの基準に合うクローンの一つを選んでPES1−3の名称で貯蔵する。
4− PES1−3のura3表現型の自然突然変異体を、ウラシル及び5−フルオロオロト酸を含有する培地上に形成したレプリカにより選択する。安定なURA-突然変異体(復帰割合10-7未満)を、これは他のいかなる基準によってもPES1−3から識別できないが、PES1−3Uの名称で貯蔵する。
5− その後、関係するNADPH−シトクロムP450リダクターゼ遺伝子座の遺伝子型及び表現型を試験する(3.1参照)。
2.5 PES1−3D株
該半数体は、内在性NADPH−シトクロムP450リダクターゼ遺伝子座を除いてPES1−1と完全に遺伝子的に同質である。該遺伝子座は、コーディングフレームの全て並びに5′及び3′−フランキング配列の部分とともに除去するために修飾された。その後、欠失部位〔site of the deletion〕にTRP1マーカーを挿入する(図7参照)。
1− 二倍体菌株PES1−12を、酵素Pst1を使用する完全消化により二重鎖化したプラスミドpGP1−DT5で(標準塩化リチウム法を使用して)形質転換し、TRP+形質転換細胞を選択する。
2− このようにして得た2、3のクローンの二倍体細胞は、酢酸培地で胞子形成する。得られる四分子を分析する。YPGAグルコース含有完全培地でPES1−1と比較してスロー成長を示すTRP+半数体クローンを選択した後、それらの交配型標識〔mating−type sign〕並びにそれらのガラクトース含有培地(YPGa1A)での及びグリセロール含有培地(N3)での成長能力を測定するために交雑(crossing)により試験する。
3− これらの基準に合う交配型標識“a"のクローンの一つを選択してPES1−3Dの名称で貯蔵する。
4− 関係するNADPH−シトクロムP450リダクターゼ遺伝子座の遺伝子型及び表現型を試験する(3.1参照)。
2.6 PES1−4株
該半数体菌株(交配型アルファ)は、内在性NADPH−シトクロムP450リダクターゼ遺伝子座を除いてPES1−1と完全に遺伝子的に同質である。該遺伝子座を、リダクターゼコーディングフレームの全てが(5′及び3′−フランキング配列の部分とともに)除去されるように修飾した。その後、以下の手順により、開放された部位に、GAL10−CYC1ハイブリッドプロモーター、ヒトシトクロムb5コーディングフレーム及びPGK遺伝子のターミネーター部分からなる人工遺伝子を挿入する(図8参照)。
半数体菌株PES1−3Dを、酵素BamHI及びHind IIIを使用する完全消化により二重鎖化したプラスミドpYe−HB1で(塩化リチウム法を使用して)形質転換した後、URA+形質転換細胞を選択する。
TRP-表現型、およびYPGA又はUPGa1A培地におけるスロー成長(PES1−1と比較)を有し、且つグリセロール含有培地(N3)で成長するURA+半数体クローンを選択する。
NADPH−シトクロムP450リダクターゼ遺伝子座に関係する遺伝子型及びシトクロムb5に関する表現型を試験する(3.1.参照)。
2.7 菌株PES1−31
該菌株は、菌株PES1−3(URA3)及びPES1−1(Ura3)から形成される二倍体である。成長後、URA+二倍体のための試験に基いて選択する。該菌株は、PES1−34及びPES1−42と同様に、NADPH−シトクロムP450リダクターゼ遺伝子座のため及び交配型遺伝子座のためにのみ異型接合体〔heterozygous〕である。リダクターゼ遺伝子のコピーの一方は野生型であり、他方はGAL10−CYC1プロモーター(これはURA3マーカーを包含する)の制御下にある。
2.8 PES1−34株
該株は、PES1−3U株(Ura3)及びPES1−4株(URA3)から形成される二倍体である。成長後、URA+二倍体のための試験に基いて選択する。リダクターゼ遺伝子の単一の修飾されたコピーはGAL10−CYC1プロモーターの制御下にあり(該株は不活性なUra3マーカーを包含する)、他方の遺伝子座では、リダクターゼコーディングフレームは欠失し、シトクロムb5のための発現カセット(これは機能的なURA3マーカーを包含する)により置換される。
2.9 PES1−42株
該株は、PES1−4株(URA3)及びPES1−2株Ura3)から形成される二倍体である。成長後、URA+二倍体のための試験に基いて選択する。該株はP450リダクターゼ遺伝子の単一の機能的な野生型コピーを包含する。第二のリダクターゼ遺伝子座は、シトクロムb5のための発現カセット(これは機能するURA3マーカーを包含する)が占有している。
2.10 PES1−5株
該株は、以下の手順でヒトエポキシドヒドロラーゼのためのカセットにより置換されるリダクターゼ遺伝子座を除いてPES1−1株と遺伝子的に同質である(図9参照)。
1− PES1−1株を、酵素Hind III及びSal1で完全二重消化により鎖状化したベクターpYeHEHで形質転換し、URA3クローンを選択する。
2− 形質転換細胞から、グルコース含有完全培地(YPGA)で成長割合がPES1−3Dのものと類似であり且つグリセロール含有培地(N3)で成長するクローンを選択する。
3− ヒトエポキシドヒドロラーゼを発現するクローンを選択してPES1−5の名称で貯蔵する。
4− NADPH−シトクロムP450リダクターゼ遺伝子座に関連する遺伝子型及びエポキシドヒドロラーゼについての関連する表現型を試験する(3.1参照)。
2.11 PES1−53株
該株は、PES1−5株及びPES1−3U株から形成される二倍体である。成長後、URA+二倍体のための試験に基いて選択する。該二倍体株は以下を包含する:
− 二つのオリジナルのリダクターゼ遺伝子座〔loci〕の一方、GAL10−CYC1プロモーターの制御下のYredコーディングフレーム(該遺伝子座は不活性なUra3マーカーを包含する)。
− 他方のオリジナルヒドロラーゼ遺伝子座は欠失し、ヒトエポキシドヒドロラーゼのための発現カセットにより置換されている。これも活性なURA3マーカーを包含する。
3.構築された菌株の遺伝的特徴
3.1 遺伝型の性質
構築した菌株の重要な遺伝子型を一括して表1に示す。異なる菌株におけるYred遺伝子座の物理的な構造を図10に示す。これは以下のように確認された。
− PES1−1、PES1−2、PES1−12:野生型Yred遺伝子座。
− PES1−3及びPES1−3U:(a1)コーディングフレームのコーディング及び非コーディング鎖の5′及び3′末端にそれぞれ存在する二つのプライマーを使用するYred ORF(2.1kbp)のPCR増幅。(b1)GAL10−CYC1プロモーターの3′末端に存在する第一のプライマー及びコーディングフレームの非コーディング鎖の5′末端に存在する第二のものを使用する2.2kbpバンドのPCR増幅。(c1)EcoRIで消化してYred ORFから製造したプローブで視覚化した後のゲノムDNAのサザンブロッティング。
− PES1−3D:(a2)試験“a1及びb1"の2.1kbp及び2.2kbpバンドの増幅はない。(b2)TRP1プローブを使用する“c1"と同じ試験。
− PSE1−4:(a3)コーディングフレームのコーディング及び非コーディング鎖の5′及び3′末端にそれぞれ存在する二つのプライマーを使用するシトクロムb5 ORF(405bp)のPCR増幅。試験“a2"におけるような増幅はない。(b3)GAL10−CYC1プロモーターの3′末端に存在する第一のプライマー及びb5コーディングフレームの非コーディング鎖の5′末端に存在する第二のものを使用する0.40−kbpバンドのPCR増幅。(c3)EcoRIで消化し、ヒトb5コーディングフレームから製造したプローブで視覚化した後のゲノムDNAのサザンブロッティング。
− PES1−31:(a4)試験“b1及びc1"、胞子形成による二倍体状態の確認。
− PES1−34:(a5)試験“a1、b1、b3、c1、c3"、胞子形成による二倍体状態の確認。
− PES1−42:(a6)試験“a1、b3、c3"、胞子形成による二倍体状態の確認。
− PES−5及びPES1−53:それぞれPES1−4及びPES1−34のための確認と同じ。但し、エポキシドヒドロラーゼ配列をシトクロムb5のものに代えて使用する。
菌株のセットの栄養要求特性を部分的補足最少培地のディッシュ上のレプリカにより測定する。
4.酵素アッセイ
4.1 ミクロソームフラクションの培養及び調製
異なる菌株を以下の組成の半合成培地で適度に撹拌しながら(軌道撹拌器で100rpm)温度28℃で培養する。
SWA6培地:D−グルコース20g/l(w/v)、酵母含窒素塩基〔yeast nitrogen base〕(Difco)0.7%(w/v)、カゼイン酸加水分解物0.1%(w/v)、アデニン40mg/l、トリプトファン20mg/l。
SWA5培地:D−ガラククトース20g/l(w/v)、酵母含窒素塩基(Difco)0.7%(w/v)、カゼイン酸加水分解物0.1%(w/v)、アデニン40mg/l、トリプトファン20mg/l。
SW6培地:D−ガラククトース20g/l(w/v)、酵母含窒素塩基(Difco)0.7%(w/v)、カゼイン酸加水分解物0.1%(w/v)、トリプトファン20mg/l。
SW5培地:D−ガラクトース20g/l(w/v)、酵母含窒素塩基(Difco)0.7%(v/w)、カゼイン酸加水分解物0.1%(w/v)、トリプトファン20mg/l。
培養液(250ml)を、細胞濃度が培養液1ml当たり2.5×107個に到達した時に停止させる。その後、2500gで5分間の遠心分離により細胞を集める。
細胞ペレットを、50mMトリス−HCl緩衝液pH7.4,5mM EDTA,100mM KCl、20mMベータ−メルカプトエタノールの35mlに取った後、細胞を20℃で10分間インキュベートし、その後、10,000gで3分間再度遠心分離する。細胞ペレットを、50mMトリス−HCl緩衝液pH7.4,1mM EDTA,0.6Mソルビトール(破裂緩衝液〔rupture buffer〕と呼ぶ)の35mlで洗浄した後、細胞懸濁液を(上記と同様に)45mlねじぶたしたチューブ内で遠心分離させた。その後、ペレットの体積の二倍に等しい体積の破裂緩衝液を添加して非常に濃厚な懸濁液を形成させる。その直後に、細胞懸濁液の表面からちょうど見える十分な量の(直径が0.45−0.5mmのブラウンタイプ〔Braun type〕の)ガラスビーズを添加する。その後、チューブを2分間垂直に激しく振る(1秒当り3振動)。その後、破裂緩衝液3mlを添加し、チューブを5秒間ボルテックススターラーにかける。ビーズの間に存在する液体を他のチューブに移し変える(但し、ビーズは移さない)。残存するビーズに再度破裂緩衝液3mlを添加し、該操作(ボルテックス攪拌及び移し変え)を再度開始する。該抽出を三回繰り返す。一体とした抽出液(約10ml)を10,000gで15分間遠心分離する。上清を他のチューブに移し、その容量を破裂緩衝液を用いて10mlに調整した。4M NaCl溶液300μlを添加した後、ポリエチレングリコール4000の40%(w/v)水溶液3.5mlを添加する。混合物を0℃で15分間放置した後、10,000gで10分間遠心分離する。上澄みを注意深く除去し、ペレット表面(ミクロソームフラクションを含有する)及びチューブ表面を、50mMトリス−HCl緩衝液pH7.4,1mM EDTA,20%(v/v)グリセロールの少量(テイクアップ緩衝液〔take−up buffer〕という)でペレットが再度懸濁しないように洗浄する。ペレットをテイクアップ緩衝液1ml中に再度懸濁させ、該懸濁液を、直径が0.3mmの針(二回曲げてZ型である)を装備するシリンジに汲込んで放出させてホモジナイズする。その後、ミクロソームを200μlのアリコートに分配し、−80℃で冷凍して貯蔵する。
4.2 活性の試験
NADPH−シトクロムP450リダクターゼ
活性は、NADPH(100μg/ml)の存在下に1mM EDTAを含むpH7.4の50mM トリス−HCl緩衝液中で、10μMの濃度のウマ心臓シトクロム(シグマ タイプVI)の還元を測定することにより試験された。活性は、550nmにおける21mM−1の吸収の微分係数(differential coefficient)を用いて計算する。1単位の活性は20℃で1分間当たり1ナノモルのシトクロムを還元できる(ミクロソームの懸濁液の形態の)酵素量として定義される。活性はピアスBCA試験(Pierce's BCA test)を用いて測定されたミクロソーム蛋白の総量に関連する。
シトクロムb5及びシトクロムP450
これらシトクロム濃度は、上記のような示差分光光度法(differential spectrophotometry)により測定される(アーバン、1990)。
シトクロムP450 1A1のEROD(エトキシレゾルフィ ン O−脱エチル化酵素)活性が、1mM EDTA、0.1mg/mlのNADPH、1μMの7−エトキシレゾルフィン及びアリコート(一般に、ミクロソーム懸濁液10μl)の50mM トリス−塩酸緩衝液(pH7.4)を含む細胞中、22℃で586nm(530nmに調整された励起状態)における蛍光の増加を測定することにより決定される。該活性は、標品のレゾルフィンを用いた装置の較正後に1分間当たりに形成されるレゾルフィンをピコモルとして計算され、表現される。
P450 IIIA4のテストステロン 6ベータ−ヒドロ ラーゼ活性は、230μlの50mM トリス−塩酸緩衝液(pH7.4)、1mM EDTA、0.05mg/mlのNADPH、80μMのテストステロンを用いて、ミクロソーム懸濁液のアリコート(一般に、20μl)を15分間インキュベートすることにより、測定される。反応は、トリフルオロ酢酸を5μl加えることにより停止され、水層をジクロロメタン500μlで抽出する。窒素気流下に溶媒を留去した後、乾燥残渣(ステロイド類)をメタノール/水(1:3 v/v)混合液40μl中に取り、形成された代謝物をアセトニトリル/水グラジエントで溶出するC18逆相カラムのHPLC(高速液体クロマトグラフィー)で分離される。代謝物の同定及び定量は、標準生成物を用いた較正との比較によりなされる。
エポキシド・ヒドロラーゼ
エポキシド・ヒドロラーゼ活性は、1mMのスチレンオキシドを含む、50mM トリス−塩酸緩衝液(pH7.4)、1mM EDTA 400μl中で、ミクロソーム懸濁液のアリコート(一般に、40μl)をインキュベートすることにより測定される。対応するジオールの形成は、リファレンスとして標品ジオールを用いてC18逆相カラムのHPLC分離により定量される。
− ベンゾ(a)ピレン7,8−ジオールへのベンゾ (a)ピレンの生物変換活性は、マウス1A1ファミリーのシトクロムP450をコードする発現プラスミドccP1/V60(クリン及びポンポン、1990)で形質転換されたPES1−53株のミクロソーム画分に示される。総蛋白100μgに相当する量の酵母ミクロソームは、1mM EDTA、15μMベンゾ(a)ピレン、および0.1mg/mlのNADPHを含む250μlの50mM トリス−塩酸緩衝液(pH7.4)で15分間インキュベートされる。反応は、10μlのトリフルオロ酢酸を加えて停止させる。水層を塩化ナトリウムで飽和し、代謝物をジクロロメタンで抽出した後、代謝物は標準的な手順に従いC18逆相HPLCで分離される。
構築された1セットの株は、以下のものを含む:
− 与えられたP450の定義された活性の発現に最適なP450に関連する酸化還元酵素環境を迅速に同定できる分析手段;
− このセットで、要求に最も適切な株の同定後の製造手段。
4.3 該セットの株の個々の性質は,以下の通りである。
PSE1−3株:
この株についてなされる遺伝子工学操作は、酵母NADP H−シトクロムP450リダクターゼ遺伝子の天然の調節を破壊し、この蛋白の合成をGAL10酵母遺伝子のUSA(上流活性化配列)を構成する人工ハイブリッドプロモーター、およびCYC1酵母遺伝子の転写開始配列の転写制御下に置くことになる。
ガラクトースを含有する培地で培養すると、この株は親株であるPSE1−2で存在するレベルの20〜30倍高いNADPH−シトクロムP450リダクターゼのレベルを発現する。
一方、ガラクトースの非存在下では、存在するリダクターゼのレベルは、極めて低く(実際に検出できない)、これは親PSE1−2)で存在するレベルよりも少なくとも100倍低い。
これら両極端の中間の発現レベルは、ガラクトースによる誘導を限られた時間(0〜12時間)行うか、またはガラクトースとグルコースの好適な混合物の存在する培地を用いることにより可能である。
バイオテクノロジーの適用に非常に重要な事実が注目されるべきである:PSE1−3株とPSE1−31株は酵母に対し外在性のDNA配列(特にバクテリアの配列)を含んでいない。導入された合成配列の希なフラグメントは、非常に短く(10塩基対以下)、天然に宿主に多くのコピーが見出されると思われる“平凡な”配列である。
PSE1−4
この株は、2つの特徴を有する:
− それは、NADPH−シトクロムP450リダクターゼ(外在性及び内在性のいずれでもない)を発現しない。
− それは、通常レベル(野生株のレベル)の酵母シト クロムb5と、条件付きのレベル(ガラクトース含有培養培地では高く、グルコース含有培養培地では極めて低い)のヒトシトクロムb5を両方とも発現する。結果として、唯一の炭素源としてのガラクトースの存在下に発現されるシトクロムb5の総レベル(酵母+ヒト)は、半数体野生株PSE1−1の外在性b5のレベルの2〜3倍高い。
PSE1−34
炭素源としてグルコースを含有する培養培地で培養したとき、この株はPSE1−12株(リファレンス野生株二倍体)よりも2倍低いNADPH−シトクロムP450リダクターゼの総レベル、通常レベルの酵母シトクロムb5(リファレンス野生株のレベル)および無視できるレベルのヒトシトクロムb5(酵母シトクロムb5のレベルより少なくとも100倍近い)を発現する。
炭素源としてガラクトースを含有する培養培地で培養したとき、この株はリファレンス野生株の約10倍のNADPH−シトクロムP450リダクターゼの総レベル、野生株のレベルと同等の酵母シトクロムb5レベルおよび酵母シトクロムb5の2〜3倍のヒトシトクロムb5のレベルを発現する。
PSE1−31
グルコース含有培養培地で、この株は野生株二倍体PSE1−21の1/2のレベルに等しいシトクロムP450リダクターゼレベルを発現する。ガラクトース含有培養培地で、それはPSE1−34株と類似したNADPH−シトクロムP450リダクターゼのレベルを発現する。この株は、外来性のシトクロムb5は発現しないが、内在性のシトクロムb5の野生株レベルを発現する。
PSE1−42
培養条件(グルコースまたはガラクトース)に無関係に、この株は、PSE1−34株と同じシトクロムb5のレベル(内在性及びヒト)、および野生型二倍体のPSE1−12株の約1/2のリダクターゼレベルを発現する。
表2に、これら株の主な特徴を要約する。
4.4 生化学試験の結果
4.4.1 NADPH−シトクロムP450リダクターゼおよびシトクロムb5の発現レベル
NADPH−シトクロムP450およびシトクロムb5(内在性酵母型及びヒト型)の発現レベルは、構築される株の標準培養条件下(4.1参照)で測定される。
結果は、一方では表2に示され、他方では図11に図解的に示される。
該結果は、以下のコメントを要する:
− SWA5ガラクトース含有培地で培養されたPES1−3株のリダクターゼ活性は、野生株の活性との比較で約30倍増加する。この増加は、PES1−34株及びPES1−31株の10倍のオーダーである。これに対し、SWA6グルコース含有培地(抑制培地)では、検出できない(野生株のレベルより少なくとも100倍低い)。
− シトクロムb5の発現レベルの活性は、分析上の問題を生じる。実際、酵母は使用されるアッセイ試験(調べられる活性に関連しないが、唯一の利用可能な定量試験である)で、ヒトシトクロムb5と区別できない内在性シトクロムb5を発現する。内在性シトクロムb5は、かなりの量存在するにもかかわらず、望ましい対象の哺乳類のシトクロムb5と等価であるとは思われず、該対称は、それによりヒトの異種シトクロムb5の発現を適正化する、シトクロムb5と酵母中で産生されるヒトP450との相互作用の研究である。にもかかわらず、使用されるアッセイ(2つの総量をアッセイする)での2つの形態のシトクロムb5の各々の寄与は、二倍体株の遺伝子アッセイの発現比率を仮定し、集合的なデータ(表2及び図11参照)の分析により評価される。この分析は、外在性シトクロムb5の発現に応じた内在性シトクロムb5の調節機序の知識不足のためにヒトシトクロムb5濃度を明確に計算することができないが、ミクロソーム蛋白mg当たり、約100pmolの大きさのオーダーに中心を置く発現レベルの範囲を導く。重要な点は、そのようなレベルが現在の技術を用いて酵母中で生産されるP450のレベルで正確に化学量論(P450はモルでb5と1:1のコンプレックスを形成する)であることである。にもかかわらず、構築された株の総シトクロムb5レベルの少なく明確な増加(約2倍)は、酵母およびヒトのシトクロムb5の不等のために、機能的に非常に重要である(以下を参照)。
4.4.2 異種シトクロムP450活性に対するリダクターゼおよびシトクロムb5のレベルの影響
異種シトクロムP450の活性発現のために構築された株の値は、表3に記載される実施例により示される。これらの実施例は、例示として示され、可能な適用を制限するものではない。データは、以下の実験により得られる:
− 酵母発現ベクターpYeDP60(クリン、1988;レナウド、ジェイ.ピー.、クリン、シー.、ポンポン、ディー.、ビューン、ピー、& マンスイ、ディー.(1990)、Eur.J.Biochem.194,889−896;アーバン、1990、ゴウティエ、ジェイ.シー.ら、(1991)原稿作成中)のBamHIおよびEcoRI部位の間にクローン化されるマウスシトクロムP450 1A1並びにヒトシトクロムP450 1A1および3A4(サブタイプNF25)のコーディングフレームを含有する発現プラスミドが、PES1シリーズの菌株に(塩化リチウム形質転換により)導入され、アデニンに対しプロトトロフィック(prototrophic)な性質を示すクローンが選択される。形質転換体が、ml当たり2.2×107の細胞密度になるまでSW5ガラクトース含有合成培地で培養され、次いでミクロソーム画分が調製される(クリン、1988;レナウド、1990;アーバン、1990;ゴウティエ、1991)。該ミクロソーム画分は、上記のように7−エトキシレゾルフィン O−脱エチル化酵素(EROD)、テストステロン6ベータ−ヒドロキシラーゼおよびベンゾ(a)ピレンモノオキシゲナーゼ活性を試験する。
該結果は、以下のコメントを要する:
− 例えばPES1−3におけるP450リダクターゼの過剰生産は、試験される1A1ファミリーのシトクロムP450の比活性(酵素ターンオーバー数)の顕著な増加(条件により5〜10倍)を誘導する。この増加のファクターは、ヒトP450 3A4の場合には40〜60倍にも達する。にもかかわらず、この比活性の増加は、P450 1A1の場合、酵素の相当な画分の破壊と、多分活性型P450の不活性型P420への変換を誘導する酸化的過程を伴う。
図12は、この事実を示す:野生型のリダクターゼレベルを発現するPES1−2株(標識されたW(N))の場合、ヒトP450 1A1の僅かな肩の存在が、420nmで検出され、これは、P450の大部分が天然型であることを示す。これに対し、リダクターゼを過剰発現するPES1−4株(標識されたW(R))の場合、P450のスペクトルは、強力に減弱され、420nmで最大を示す。ヒトシトクロムb5を発現し、酵母リダクターゼを過剰発現するPES1−34株(標識されたW(R、B))の場合、スペクトルは通常の外観を回復する;実際、P420変性型は検出できなくなる。表3の試験は、EP1−3株のそれと比較してPES−34株に存在する低いリダクターゼレベルにもかかわらず、P450の比活性(ターンオーバー数)が、これらの条件下でも最大になることを示す。これは、NADH−シトクロムP450リダクターゼを過剰発現する該株のヒトシトクロムb5の発現が、最大の比活性を許容しつつP450 1A1を安定化する二重の効果を有することを示す。
にもかかわらず、ヒトシトクロムb5の共発現(coexpression)効果は、考慮されるシトクロムP450の型により変化する。シトクロムP450 3A4の場合、特別な安定化効果は観察されない。一方、強力な活性化効果が観察される。表3は、シトクロムb5のみの発現は、一定のリダクターゼレベルでのテストステロンに対するP450 3A4の比活性を7倍増加させることを示す。ヒトシトクロムb5がリダクターゼが過剰生産されると同時に発現されたとき、得られる活性は72倍の多量に達する。
結論としては、試験される両方の型のP450について、ヒトシトクロムb5の産生は、安定性と比活性の両方の観点から相当な利点を生じる。注目点は、内在性の酵母シトクロムb5は、その存在がヒトシトクロムb5と同等か、または幾つかの株ではより高いにもかかわらず、これらの特別の効果を欠如しているように見えることである。結果として、シトクロムb5の性質(哺乳類)は、重要な因子であることが明らかになった。
PSE1−34株において、技術的アプローチにより、3つの異種遺伝子の単一調節の制御下に高いレベルでの発現を許容しつつ、遺伝的不安定のリスクを制限することが可能になる。すなわち:
1/ リダクターゼ、シトクロムb5およびP450の発現のために、の同一の誘導可能なプロモーターを使用し、それによりこれら酵素の持続的過剰生産または結果としての異種モノオキシゲナーゼ活性に連結した毒性効果を避けることができる。
2/ 異型接合性二倍体の形態で、2つの異なる異種遺伝子の発現のために同一のゲノム遺伝子座を使用する。これにより、調節または発現される機能の損傷となり得る組合せ結果を制限できる。
3/ プラスミドとゲノムの間の相同的組換えから得られる可能性のある不安定のリスクを避けるために、組み込まれたリダクターゼおよびb5遺伝子と同一のプロモーターと異なる3′−フランキング配列を用いた、P450のための発現プラスミドの使用。
4.4.3 PES1−5株とPES1−53株におけるヒトエポキシドヒドロラーゼの発現及びベンゾ(a)ピレンの生物変換
PES1−5株とPES1−53株におけるスチレンオキシドヒドロラーゼ活性の試験は、スチレンオキシドから、ミクロソーム蛋白mg当たり1分間に約1〜2nmolの2−フェニル−2−ヒドロキシエタノールの形成を示す。この活性は、PES1シリーズの他の株では検出できない。PES1−53株のリダクターゼ活性は、PES1−34株のそれに匹敵する。シトクロムP450 1A1をコードする発現プラスミドで形質転換されたPES1−53株は、ベンゾ(a)ピレンとのインキュベーション中に形成されたベンゾ(a)ピレン7,8−オキシドを加水分解して、インジッツ(in sit u)でベンゾ(a)ピレン7,8−ジオールにすることができる。これらの活性は、図13に示され、図13は、マウスシトクロムP450 1A1を発現するように形質転換されたPES1−2株、PES1−3株およびPES1−53株と該汚染物質をインキュベートする間に形成されるベンゾ(a)ピレンの代謝物のHPLC分離を示す。
明らかに、PES1−53株のみが、ベンゾ(a)ピレン−7,8−ジオールを大量に生成することを可能とする。この分子は、発癌性の産業汚染物質であるベンゾ(a)ピレンの分解(degradation)における重要な中間体である。
5.適用分野
適用分野(field of applications)としては、まず第一に、シトクロムP450の上科(superfamily)の全てのメンバーの活性の酵母における発現及びそれを成し得る適用を包含する。事実、記載されたシステムのすべては、多工程の異種生物変換(multistep heterologous bioconversion)などの複雑な機能が実施できる全ての複遺伝子性の異種発現システムに(P450のそれ以外のものにさえも)演繹的に拡張することができる。
− 導入されたシトクロムP450のアイソエンザイムに応じて、いかなるタイプの生物変換(引き続く生成物の抽出かその他のもの)、そこで、上記拡張を用いることによる適当な多工程の生物変換を行う。
− 種々雑多な毒性又は発癌性の汚染物質の検出、同定、アッセイおよび破壊(導入されたP450のタイプによる)。このタイプの適用は、数種のシトクロムP450の、リレー酵素(relay enzyme)例えばエポキシドヒドロラーゼの、グルタチオントランスフェラーゼ及びグルコロネート(glucoronate)トランスフェラーゼのような脱活性化酵素の、及びトランスポーター例えば“多薬物耐性蛋白質(Multi−drugsresistance protein)”の共発現(coexpression)を包含する。
− ヒトの活性を正確に再現し、代謝物の性質とレベルについての各種活性の役割を定性的及び定量的に分析する可能性を含む、ヒトにおける医薬品の代謝のシミュレーションのためのインビトロシステムの製造
次の株は、1992年7月7日に、75015 パリ リュ デュ ドクトール ルー25 パスツール インスティチュートのコレクシオン ナシオナル ド クルチュール ド ミクロオルガニスムス(Collection Nationale de Cultures de Microorganismes)[ナショナル コレクション オブ マイクロオーガニズム カルチャーズ(National Collection of Microorganism Cultures)]に寄託された:
PES 1−1 番号I−1230
PES 1−2 番号I−1231
PES 1−3 番号I−1232
PES 1−4(S) 番号I−1233
PES 1−4(AS)**(W(B)と称される) 番号I−1234
*:S=センス(sense)
**:AS=アンチセンス
Figure 0003610410
Figure 0003610410
Figure 0003610410
(a):ミクロソーム蛋白質1mg当りのNADPH−シトクロムリダクターゼ活性として測定
(b):示差スペクトロスコピー(differential spectroscopy)により測定され、ミクロソーム蛋白質1mg当りで計算された(ヒトシトクロムb5+内在性酵母シトクロムb5)
(c)全b5におけるヒトb5の推定寄与
L:SWA5培地での培養後に得られたデータ
G:SWA6培地での培養後に得られたデータ
*:PES1−3及びPES1−34
Figure 0003610410

Claims (14)

  1. 染色体ゲノムに1又はそれ以上の異種遺伝子が安定に組み込まれ、それらの発現を可能とする酵母菌株であって、
    1 − 該酵母菌株が、上記異種遺伝子を担う遺伝子座および交配型遺伝子座を除いて、対立遺伝子が同質遺伝子型である二倍体株であり、
    2 − 異型接合型遺伝子座(heterozygous loci)が、野生型遺伝子を担う対立遺伝子を欠如しており、且つ、
    3 − 異種遺伝子が、誘導可能で調節可能なプロモーターの制御下におかれている
    ことを特徴とする酵母菌株。
  2. 各異型接合型遺伝子座が、異種の又は人工の遺伝子を含む二つの対立遺伝子の間で配列相同性を有しないことを特徴とする請求項1に記載の菌株。
  3. 各異型接合体(heterozygote)における二つの対立遺伝子の間で相同性を有する配列が、反対方向に配向していることを特徴とする請求項1に記載の菌株。
  4. 異種遺伝子の発現用ユニットが、該異種遺伝子が該菌株の成長速度に対する負の因子を構成する場合に、選択し得るマーカーを含むことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の菌株。
  5. 各対立遺伝子上の同一ゲノム座(genomic locus)が、二つの異なる異種遺伝子の発現に使用され、こうして異型接合型二倍体遺伝子座を形成することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の菌株。
  6. 組み込まれた異種遺伝子が、多段階の生物学的変換の連鎖を構成するか又は複合機能を構成する因子をコードすることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の菌株。
  7. 染色体ゲノム中に、酵母の又は異種のNADPH−シトクロムP450リダクターゼ遺伝子及び異種のシトクロムb5遺伝子が安定に組み込まれていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の菌株。
  8. NADPH−シトクロムP450リダクターゼ遺伝子が、内在的NADPH−シトクロムP450リダクターゼ遺伝子座に組み込まれていることを特徴とする請求項7に記載の菌株。
  9. ヒトエポキシドヒドロラーゼ遺伝子及びNADPH−シトクロムP450リダクターゼ遺伝子を、それらが組み込まれている染色体ゲノムにおいて共発現(coexpress)することを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の菌株。
  10. 当該株が、サッカロミセス セレビシアエ株(Saccharomyces cerevisiae strain)である請求項1乃至9のいずれかに記載の菌株。
  11. その主たる活性が第一の異種因子に連結している、複合機能、特に多段階の生物学的変換の連鎖を構成する因子を、酵母において発現させる方法であって、請求項1乃至10のいずれかに記載の酵母菌株が形質転換され、該株が上記複合機能に寄与する他の異種因子を共発現し、その染色体ゲノムに該他の因子に対応する遺伝子が組み込まれており、上記株が上記第一の異種遺伝子の発現用カセットを担っているプラスミドで形質転換されることを特徴とする方法。
  12. 異種シトクロムP450のモノオキシゲナーゼ活性を、酵母において発現させる方法であって、染色体ゲノム中にNADPH−シトクロムP450リダクターゼ遺伝子及びシトクロムb5遺伝子が組み込まれている、NADPH−シトクロムP450リダクターゼ及びシトクロムb5を共発現する請求項1乃至10のいずれかに記載の酵母菌株が、異種シトクロムP450遺伝子の発現用カセットを担っているプラスミドを用いて形質転換されることを特徴とする方法。
  13. シトクロムb5が、シトクロムP450と同一の種のものであることを特徴とする請求項12に記載の方法。
  14. 異種シトクロムP450の発現を可能とする請求項1乃至8及び10のいずれかに記載の酵母菌株のセットであって、このセットの各メンバーが、請求項12の方法に従って、異種シトクロムP450の発現用カセットを担っているプラスミドで形質転換されることができ、このセットの異なる菌株は、それらの染色体のゲノム中にNADPH−シトクロムP450リダクターゼ遺伝子及びシトクロムb5遺伝子が組み込まれており、これら遺伝子のそれぞれの発現レベルが各菌株の間で異なっており、そのため、各特定のシトクロムP450の発現のための最適株を決定することができる上記セット。
JP1993502625A 1991-07-15 1992-07-15 異種遺伝子を安定に組み込んだ酵母菌株 Expired - Lifetime JP3610410B6 (ja)

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FR91/08884 1991-07-15
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JPH06508761A JPH06508761A (ja) 1994-10-06
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