JP3610283B2 - 移動式プレテンション装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、プレテンション方式によりコンクリートにプレストレスを導入する移動式プレテンション装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
図3の(A)の上段に示すように、コンクリート14に埋設されるプレテンション用PC鋼材5を、圧縮梁1の両端部に片持ち状に連設されたPC鋼材定着フレーム2A,2Bに梁長手方向と平行に張り渡した従来の移動式プレテンション装置においては、プレテンション用PC鋼材5が圧縮梁1に対して偏心しているので、緊張端側のPC鋼材定着フレーム2Aに設けた緊張用ジャッキ11でプレテンション用PC鋼材5を緊張させた際、図3の(A)の下段に示すように、圧縮梁1に曲げ応力が発生し、圧縮梁1の中央がプレテンション用PC鋼材5から遠ざかる方向に(例えば、図3が側面図である場合、圧縮梁1の中央が側面視において上方へ折れ曲がるように)変形する。
【0003】
そのため、上記の構造では、圧縮梁1等の部材寸法を大きくとって、曲げ応力に対抗する必要があり、その結果、移動式プレテンション装置が不可避的に大重量化し、移動式プレテンション装置としての長所が損なわれることになる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記の点に留意してなされたものであって、その目的とするところは、プレテンション用PC鋼材を緊張させた際、圧縮梁に軸力のみが作用するようにすることにより、部材寸法が小さくて済み、軽量化が可能な移動式プレテンション装置を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するために、本発明が講じた技術的手段は、次のとおりである。即ち、第1の発明による移動式プレテンション装置は、圧縮梁の両端部に一対のPC鋼材定着フレームが、梁長手方向と直角な支軸を備えたヒンジによって前記支軸周りで揺動自在に枢着され、両PC鋼材定着フレームの一端部側にプレテンション用PC鋼材が梁長手方向と平行に張り渡され、他端部側には反力PC鋼材が梁長手方向と平行に張り渡されていることを特徴としている(請求項1)。
【0006】
上記の構成によれば、両PC鋼材定着フレームの一端部側に張り渡されたプレテンション用PC鋼材を緊張させた際、両PC鋼材定着フレームがヒンジの支軸周りに揺動しようとすると、両PC鋼材定着フレームの他端部側に張り渡された反力PC鋼材がこれに対抗するので、両PC鋼材定着フレームは、ヒンジの支軸周りでの揺動が阻止され、圧縮梁には軸力のみが作用することになる。
【0007】
従って、圧縮梁は、軸力を負担するだけとなり、圧縮梁等の部材寸法が小さくて済むので、移動式プレテンション装置の軽量化が達成されることになる。
【0008】
第2の発明は、第1の発明を次の二点で改良したものであり、圧縮梁の両端部に一対のPC鋼材定着フレームが、ゴムヒンジを介して揺動自在に枢着され、両PC鋼材定着フレームの一端部側にプレテンション用PC鋼材が梁長手方向と平行に張り渡され、他端部側には反力PC鋼材が梁長手方向と平行に張り渡されていることを特徴としている(請求項3)。
【0009】
即ち、第1の発明では、PC鋼材定着フレームを圧縮梁の端部に揺動自在に枢着するヒンジが支軸を備えた揺動に方向性のある機械的なヒンジであるから、ヒンジ等の製造誤差によって、圧縮梁両端側のヒンジにおける支軸の平行度に狂いがあると、プレテンション用PC鋼材を緊張させた際、圧縮梁には、支軸方向(図3のBでは、紙面に垂直な方向)への曲げ応力が発生することになり、従って、これを回避するためには、厳格な製作精度、組付け精度が要求されることになる。
【0010】
しかるところ、第2の発明の構成によれば、PC鋼材定着フレームを圧縮梁の端部にゴムヒンジを介して揺動自在に枢着するので、PC鋼材定着フレームは、恰も球面軸受で支持されているように、あらゆる方向への揺動が可能である。従って、両PC鋼材定着フレームの一端部側に張り渡されたプレテンション用PC鋼材を緊張させた際、ゴムヒンジ等に多少の製造誤差があっても、圧縮梁には、側面視においても、平面視においても、曲げ応力が発生せず、常に軸力のみが作用することになり、厳格な製作精度、組付け精度が要求されないのである。
【0011】
また、第1の発明における機械的なヒンジでは、圧縮梁の軸方向に伸縮できないが、ゴムヒンジは圧縮梁の軸方向への伸縮も可能であるため、次の作用効果が得られることになる。即ち、コンクリートの硬化後、PC鋼材定着フレームとプレテンション用PC鋼材との定着用ナットを外すためには、再度、緊張用ジャッキをプレテンション時の緊張力以上の力(緊張力+αの力)で作動して、プレテンション用PC鋼材の余長部分(コンクリート端面から露出している部分)の伸びにより、定着用ナットにかかっているストレスを開放した状態で、定着用ナットを緩めることが必要であるが、第2の発明によれば、緊張用ジャッキで、再度、プレテンション用PC鋼材の緊張端を引っ張ったとき、ゴムヒンジが縮むので、+αの引張り力が小さくて済む。換言すれば、ゴムヒンジが縮む分、プレテンション用PC鋼材の余長部分の伸びが小さくても、定着用ナットを緩めることができる。従って、プレテンション用PC鋼材の余長を短くすることができ、プレストレストコンクリートの製造後、切除され、廃棄されるPC鋼材部分が少なくて済み、経済的である。
【0012】
尚、請求項2や請求項4に記載のように、ヒンジ(又はゴムヒンジ)に対する反力PC鋼材の偏心量が、ヒンジ(又はゴムヒンジ)に対するプレテンション用PC鋼材の偏心量よりも大に設定されていると、プレテンション用PC鋼材を緊張させた際に、反力PC鋼材に作用する引張り力(反力PC鋼材が負担する引張り力)が少なくて済むため、反力PC鋼材の使用本数が少なくて済み、軽量化に寄与することになる。また、反力PC鋼材に作用する引張り力が少ないことによって、反力PC鋼材の伸びが小さくなり、PC鋼材定着フレームのヒンジ(又はゴムヒンジ)周りでの回転角が小さくて済む。このことは、プレテンション用PC鋼材の定着用ナットを緩める際の緊張用ジャッキによる上述した+αの引張り力を低減することに寄与する。
【0013】
また、コンクリートに複数本のプレテンション用鋼材を埋設する場合、両PC鋼材定着フレームの一端部側に張り渡された複数本のプレテンション用鋼材の緊張端を一つの可動部材に連結した状態で、当該可動部材を大出力の緊張用ジャッキで引っ張るようにしてもよいが、請求項5に記載のように、両PC鋼材定着フレームの一端部側に張り渡された複数本のプレテンション用鋼材を、一つの油圧ポンプに接続されたプレテンション用鋼材と同数個の油圧ジャッキで個別に緊張させるように構成すれば、全てのプレテンション用鋼材が同じ力で引っ張られることになり、各プレテンション用鋼材の初期の緊張状態を一様に揃えるための予備緊張工程が不要になる利点がある。
【0014】
【発明の実施の形態】
図1、図2は、第1の発明に係る移動式プレテンション装置の一例を示す。1は、一対の縦フレームと、縦フレームに架設された複数本の横フレームとによって矩形の枠状に形成された圧縮梁である。圧縮梁1の両端部には、一対のPC鋼材定着フレーム2A,2Bが、梁長手方向と直角な支軸3を備えた機械的なヒンジ4によって前記支軸3周りで揺動自在に枢着されている。両PC鋼材定着フレーム2A,2Bの一端部側(図示の状態では、下端部側である。)には、PCストランド等のプレテンション用PC鋼材5が梁長手方向と平行に複数本(例えば、14本)張り渡されており、他端部側(図示の状態では、上端部側である。)には、PC鋼棒等の反力PC鋼材6が梁長手方向と平行に複数本(例えば、梁幅方向に4本ずつ、計8本)張り渡されている。
【0015】
プレテンション用PC鋼材5の両端には、ネジ切り加工の施されたテンションバー7がカップラー8を介して同芯状に接続されている。一方のテンションバー7は、それに螺合する定着用ナット9によって固定端側のPC鋼材定着フレーム2Bの外側面に定着され、他方のテンションバー7は、緊張端側のPC鋼材定着フレーム2Aの外側面にチェアー10を介して固定された緊張用ジャッキ(図示の例では、中央にテンションバー挿通孔が形成された油圧ジャッキを使用している。図示しないが、これらの油圧ジャッキは、プレテンション用PC鋼材5の予備緊張を行わなくても、均等な引張り力が得られるように、一つの油圧ポンプに互いに並列に接続されている。)11に固定され、緊張用ジャッキ11を伸長作動した状態で、チェアー10の隙間からテンションバー7に螺合する定着用ナット9を回転操作することにより、前記PC鋼材定着フレーム2Aの外側面に定着されるようになっている。
【0016】
反力PC鋼材6は、その両端部に形成されたネジ部に螺合する定着用ナット12により、PC鋼材定着フレーム2A,2Bの外側面に定着され、定着用ナット12の回転操作により所望の緊張状態が得られるようになっている。
【0017】
尚、圧縮梁1とPC鋼材定着フレーム2A,2Bとの間には、プレテンション用PC鋼材5や反力PC鋼材6を張り渡していない状態で、移動式プレテンション装置を移動する際に、圧縮梁1に対するPC鋼材定着フレーム2A,2Bの自由な揺動を阻止するためのターンバックル付き斜材13が着脱自在に取り付けられている。14は型枠(図示せず)内に打設されたコンクリートを示す。
【0018】
ヒンジ4に対する反力PC鋼材6の偏心量Lは、ヒンジ4に対するプレテンション用PC鋼材5の偏心量Lよりも大に設定されている。
【0019】
上記の構成によれば、図3の(B)に示すように、両PC鋼材定着フレーム2A,2Bの一端部側に張り渡されたプレテンション用PC鋼材5を緊張用ジャッキ11で緊張させた際、両PC鋼材定着フレーム2A,2Bがヒンジ4の支軸3周りに揺動しようとすると、両PC鋼材定着フレーム2A,2Bの他端部側に張り渡された反力PC鋼材6がこれに対抗するので、両PC鋼材定着フレーム2A,2Bは、ヒンジ4の支軸3周りでの揺動が阻止され、圧縮梁1には軸力のみが作用することになる。従って、圧縮梁1は、軸力を負担するだけとなり、圧縮梁1等の部材寸法が小さくて済むので、移動式プレテンション装置の軽量化が達成されることになる。
【0020】
殊に、ヒンジ4に対する反力PC鋼材6の偏心量Lが、ヒンジ4に対するプレテンション用PC鋼材5の偏心量Lよりも大に設定されているので、プレテンション用PC鋼材5を緊張させた際、プレテンション用PC鋼材5の緊張力をP、反力PC鋼材6の緊張力をPとすると、P×L=P×Lとなり、反力PC鋼材6に作用する緊張力(反力PC鋼材6が負担する引張り力)Pが少なくて済むため、反力PC鋼材6の使用本数が少なくて済み、軽量化に寄与することになる。
【0021】
図4〜図8は、第2の発明に係る移動式プレテンション装置の一例を示す。1は、一対の縦フレームと、縦フレームに架設された複数本の横フレームとによって矩形の枠状に形成された圧縮梁であり、圧縮梁1の両端部には、一対のPC鋼材定着フレーム2A,2Bが、ゴムヒンジ40によって揺動自在に枢着されている。15は、ゴムヒンジ40の抜止め用のボルト・ナット、16a,16bは、移動式プレテンション装置の移動装置を連結するためのブラケットである。
【0022】
前記ゴムヒンジ40としては、建物の免震装置を構成する積層ゴムをそのまま利用してもよいが、この例では、積層ゴムの面内方向への過度の変形を防止できるように工夫されたものを用いている。即ち、この例で使用されているゴムヒンジ40は、図9、図10に示すように、中央に孔の開いたゴムと鋼板からなる積層ゴム17と、それを挟持する状態にボルト18で固定されたソールプレート19及びベットプレート20とを備えている。ベットプレート20の内面中央には、円柱状の軸体21が突設されている。軸体21の先端部は、積層ゴム17の中央孔を通してソールプレート19の中央に形成された孔22に遊動自在に嵌め込まれており、軸体21の先端部と孔22との間に形成される環状の隙間には、ゴムリング23が嵌着されている。
【0023】
その他の構成は、図1、図2で示した移動式プレテンション装置と同じである。即ち、両PC鋼材定着フレーム2A,2Bの一端部側(図示の状態では、下端部側である。)には、PCストランド等のプレテンション用PC鋼材5が梁長手方向と平行に複数本(例えば、14本)張り渡されており、他端部側(図示の状態では、上端部側である。)には、PC鋼棒等の反力PC鋼材6が梁長手方向と平行に複数本(例えば、梁幅方向に4本ずつ、計8本)張り渡されている。
【0024】
プレテンション用PC鋼材5の両端には、ネジ切り加工の施されたテンションバー7がカップラー8を介して同芯状に接続されている。一方のテンションバー7は、それに螺合する定着用ナット9によって固定端側のPC鋼材定着フレーム2Bの外側面に定着され、他方のテンションバー7は、緊張端側のPC鋼材定着フレーム2Aの外側面にチェアー10を介して固定された緊張用ジャッキ(図示のれいでは、中央にテンションバー挿通孔が形成された油圧ジャッキを使用している。図示しないが、これらの油圧ジャッキは、プレテンション用PC鋼材5の予備緊張を行わなくても、均等な引張り力が得られるように、一つの油圧ポンプに互いに並列に接続されている。)11に固定され、緊張用ジャッキ11を伸長作動した状態で、チェアー10の隙間からテンションバー7に螺合する定着用ナット9を回転操作することにより、前記PC鋼材定着フレーム2Aの外側面に定着されるようになっている。
【0025】
反力PC鋼材6は、その両端部に形成されたネジ部に螺合する定着用ナット12により、PC鋼材定着フレーム2A,2Bの外側面に定着され、定着用ナット12の回転操作により所望の緊張状態が得られるようになっている。ゴムヒンジ40に対する反力PC鋼材6の偏心量Lは、ゴムヒンジ40に対するプレテンション用PC鋼材5の偏心量Lよりも大に設定されている。図中の13は着脱自在なターンバックル付き斜材、14は型枠(図示せず)内に打設されたコンクリートである。
【0026】
上記の構成によれば、図11に示すように、両PC鋼材定着フレーム2A,2Bの一端部側に張り渡されたプレテンション用PC鋼材5を緊張用ジャッキ11で緊張させた際、両PC鋼材定着フレーム2A,2Bがゴムヒンジ40を支点として揺動しようとすると、両PC鋼材定着フレーム2A,2Bの他端部側に張り渡された反力PC鋼材6がこれに対抗するので、両PC鋼材定着フレーム2A,2Bは、ゴムヒンジ40周りでの揺動が阻止され、圧縮梁1には、側面視において軸力のみが作用することになる。
【0027】
そして、ゴムヒンジ40に対する反力PC鋼材6の偏心量Lが、ゴムヒンジ40に対するプレテンション用PC鋼材5の偏心量Lよりも大に設定されているので、プレテンション用PC鋼材5を緊張させた際、プレテンション用PC鋼材5の緊張力をP、反力PC鋼材6の緊張力をPとすると、P×L=P×Lとなり、反力PC鋼材6に作用する緊張力(反力PC鋼材6が負担する引張り力)Pが少なくて済むため、反力PC鋼材6の使用本数が少なくて済み、図1、図2の例と同様に、装置の軽量化に寄与することになる。
【0028】
また、図13の(A)に示すように、PC鋼材定着フレーム2A,2Bを圧縮梁1の端部に揺動自在に枢着するヒンジが支軸3を備えた揺動に方向性のある機械的なヒンジ4である場合、ヒンジ等の製造誤差によって、圧縮梁両端側のヒンジ4における支軸軸芯pの平行度に狂いがあると、プレテンション用PC鋼材を緊張させた際、圧縮梁1には、図13の(A)に仮想線で示すように、平面視において曲げ応力が発生することになり、これを回避するためには、厳格な製作精度、組付け精度が要求されることになるが、上記の構成によれば、PC鋼材定着フレーム2A,2Bを圧縮梁1の端部にゴムヒンジ40を介して揺動自在に枢着するので、このような平面視における曲げ応力の発生も防止することができるのである。
【0029】
即ち、PC鋼材定着フレーム2A,2Bが圧縮梁1の端部にゴムヒンジ40を介して揺動自在に枢着されているので、PC鋼材定着フレーム2A,2Bは、恰も球面軸受で支持されているように、あらゆる方向への揺動が可能である。従って、両PC鋼材定着フレーム2A,2Bの一端部側に張り渡されたプレテンション用PC鋼材を緊張させた際、ゴムヒンジ40等に多少の製造誤差があっても、図13の(B)に示すように、圧縮梁1には、平面視においても、曲げ応力が発生しない。
【0030】
上記の結果として、圧縮梁1には、側面視においても、平面視においても、曲げ応力が発生せず、常に軸力のみが作用することになるから、圧縮梁1は、軸力を負担するだけとなり、圧縮梁1等の部材寸法が小さくて済むので、移動式プレテンション装置の軽量化が達成されることになる。
【0031】
また、ゴムヒンジ40は圧縮梁1の軸方向への伸縮も可能であるため、次の作用効果が得られることになる。即ち、コンクリート14の硬化後、PC鋼材定着フレーム2Aとプレテンション用PC鋼材5との定着用ナット9を外すためには、再度、緊張用ジャッキ11をプレテンション時の緊張力以上の力(緊張力+αの力)で作動して、プレテンション用PC鋼材5の余長部分(コンクリート端面から露出している部分)の伸びにより、定着用ナット9にかかっているストレスを開放した状態で、定着用ナット9を緩めることが必要であるが、上記の構成によれば、緊張用ジャッキ11で、再度、プレテンション用PC鋼材5の緊張端を引張ったとき、図12に示すように、ゴムヒンジ40が縮むので、+αの引張り力が小さくて済む。換言すれば、ゴムヒンジ40が縮む分、プレテンション用PC鋼材5の余長部分の伸びが小さくても、定着用ナット9を緩めることができる。
【0032】
殊に、ゴムヒンジ40に対する反力PC鋼材6の偏心量Lが、ゴムヒンジ40に対するプレテンション用PC鋼材5の偏心量Lよりも大に設定されているので、プレテンション用PC鋼材5を緊張させた際に、反力PC鋼材6に作用する引張り力(反力PC鋼材6が負担する引張り力)が少なくて済み、これによって反力PC鋼材6の伸びが小さくなり、PC鋼材定着フレーム2Aのゴムヒンジ40周りでの回転角が小さくて済むので、定着用ナット9を緩める際の緊張用ジャッキ11による上述した+αの引張り力を低減することに寄与する。
【0033】
これらの結果として、プレテンション用PC鋼材5の余長Lを短くすることができ、プレストレストコンクリートの製造後、切除され、廃棄されるPC鋼材部分が少なくて済み、経済的である。
【0034】
図14は、上記の移動式プレテンション装置を高架橋の橋梁用プレキャストコンクリートセグメント14aの製造に使用した例を示す。図中の24は、架台25上を走行する移動装置であり、移動式プレテンション装置に対する連結手段26a,26bと、それに連結された移動式プレテンション装置の昇降手段とを備えている。
【0035】
このような大型かつ大重量のプレストレストコンクリート製品を製造する場合、固定式プレテンション装置であれば、プレテンション用PC鋼材5に対するストレスを開放したときのプレテンション用PC鋼材5の縮みにより、プレストレストコンクリート製品側が不測に移動し、プレストレストコンクリート製品の位置修正が必要になることがあるが、移動式プレテンション装置では、プレストレストコンクリート製品の重量が移動式プレテンション装置よりも大であると、プレテンション用PC鋼材5に対するストレスを開放したときのプレテンション用PC鋼材5の縮みにより、移動式プレテンション装置側が移動することになり、プレストレストコンクリート製品の位置修正が不要になる利点がある。
【0036】
【発明の効果】
以上のとおり、本発明によれば、プレテンション用PC鋼材を緊張させた際、圧縮梁に軸力のみが作用することになり、部材寸法が小さくて済むため、移動式プレテンション装置の軽量化が可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1の発明に係る移動式プレテンション装置の一例を示す側面図である。
【図2】上記装置の一部切欠き平面図である。
【図3】作用を説明する概念図である。
【図4】第2の発明に係る移動式プレテンション装置の一例を示す側面図である。
【図5】上記装置の平面図である。
【図6】上記装置の拡大側面図である。
【図7】要部の側面図である。
【図8】要部の平面図である。
【図9】ゴムヒンジの分解斜視図である。
【図10】ゴムヒンジの断面図である。
【図11】作用を説明する概念図である。
【図12】作用を説明する概念図である。
【図13】作用を説明する概念図である。
【図14】上記装置を高架橋の橋梁用プレキャストコンクリートセグメントの製造に使用した例を示す側面図である。
【符号の説明】
1…圧縮梁、2A,2B…PC鋼材定着フレーム、4…ヒンジ、5…プレテンション用PC鋼材、6…反力PC鋼材、40…ゴムヒンジ。

Claims (5)

  1. 圧縮梁の両端部に一対のPC鋼材定着フレームが、梁長手方向と直角な支軸を備えたヒンジによって前記支軸周りで揺動自在に枢着され、両PC鋼材定着フレームの一端部側にプレテンション用PC鋼材が梁長手方向と平行に張り渡され、他端部側には反力PC鋼材が梁長手方向と平行に張り渡されていることを特徴とする移動式プレテンション装置。
  2. ヒンジに対する反力PC鋼材の偏心量が、ヒンジに対するプレテンション用PC鋼材の偏心量よりも大に設定されている請求項1に記載の移動式プレテンション装置。
  3. 圧縮梁の両端部に一対のPC鋼材定着フレームが、ゴムヒンジによって揺動自在に枢着され、両PC鋼材定着フレームの一端部側にプレテンション用PC鋼材が梁長手方向と平行に張り渡され、他端部側には反力PC鋼材が梁長手方向と平行に張り渡されていることを特徴とする移動式プレテンション装置。
  4. ゴムヒンジに対する反力PC鋼材の偏心量が、ゴムヒンジに対するプレテンション用PC鋼材の偏心量よりも大に設定されている請求項3に記載の移動式プレテンション装置。
  5. 両PC鋼材定着フレームの一端部側に張り渡された複数本のプレテンション用鋼材を、一つの油圧ポンプに接続されたプレテンション用鋼材と同数個の油圧ジャッキで個別に緊張させるように構成してあることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の移動式プレテンション装置。
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