JP3610261B2 - 硬貨識別装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動販売機や両替機などにおいて投入硬貨の種類や真偽を識別する硬貨識別装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、この種の硬貨識別装置としては、特公昭63−57835号公報や特公平3−74438号公報に記載された電子式硬貨識別装置が知られている。この硬貨識別装置は、硬貨通路の一側部に配置され投入硬貨に交流磁界を印加する励磁コイルと、硬貨通路の他側部に配置され前記励磁コイルと電磁結合するとともに直列逆相接続された2つの受信コイルと、受信コイルの出力信号に基づき投入硬貨を識別する識別部とを有している。この硬貨識別装置では、通常、受信コイルが励磁コイルにより形成された交流磁界と磁界結合しているので、受信コイルから所定信号が出力される。硬貨通路内を硬貨が移動すると、励磁コイルが形成する交流磁界中において硬貨に渦電流が発生する。これにより磁界強度が変動するので受信コイルに誘起する信号も変動する。前記識別部は、識別対象となる硬貨(正貨)を投入した時に受信コイルから出力される信号の変動パターンを識別データとして記憶している。この識別データは、硬貨の材質,外形,厚さ,凹凸,模様などにより異なるものとなる。そして、受信コイルから出力された信号の変動パターンを識別データとして、記憶している正貨の識別データとを比較することにより硬貨の識別を行っている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、近年、硬貨偽造の手口が巧妙になってきており、従来の硬貨識別装置では正貨と偽造硬貨(偽貨)を識別することが困難になってきている。特に、正貨と偽貨とでは硬貨輪郭部の厚さが異なっているにも拘わらず、両者を識別できないケースが目立ってきた。
【0004】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、高精度に硬貨の識別を行うことができる硬貨識別装置を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項1では、硬貨通路の一側部に配置され該硬貨通路を移動する硬貨に交流磁界を印加する励磁コイルと、硬貨通路の他側部に配置され励磁コイルと磁界結合する受信コイルと、励磁コイルと受信コイルとの間の磁界中を硬貨が移動した際に前記受信コイルから出力される信号に基づいて硬貨を識別する識別手段とを備えた硬貨識別装置において、前記受信コイルは、第1受信コイルと、コイルの周回軸方向が第1受信コイルと共通で、且つ、第1受信コイルを中心として環状に配置された複数の第2受信コイルとからなり、前記複数の第2の受信コイルは、最小識別対象硬貨の径内に収まるように配置されていることを特徴とするものを提案する。
【0006】
本発明によれば、受信コイルが第1受信コイルと複数の第2受信コイルとからなるととともに、第2受信コイルは第1受信コイルを中心として環状に、且つ、最小識別対象硬貨の径内に収まるように配置されているので、特に輪郭部における硬貨の特徴を精度良く検出することができる。
【0007】
本発明の好適な態様の一例として、請求項2では、請求項1記載の硬貨識別装置において、前記第2受信コイルは、第1受信コイルの周回中心を通り硬貨の移動方向と平行な線を基準として非線対称となるように配置されていることを特徴とするものを提案する。
【0008】
本発明によれば、第2受信コイルが第1受信コイルの周回中心を通り硬貨の移動方向と平行な線を基準として非線対称となっているので、幾つかの第2受信コイルが同様の信号を出力することを防ぐことができる。すなわち、重複データの発生を防ぐことができるので高精度の識別を行うことができる。
【0009】
また、請求項3では、請求項1又は2何れか1項記載の硬貨識別装置において、前記第2受信コイルは、複数の系統毎に直列接続され、前記識別手段は、第1受信コイルから出力される信号と、前記直列接続された第2受信コイルから系統毎に出力される複数の信号に基づいて硬貨を識別することを特徴とするものを提案する。
【0010】
本発明によれば、複数の第2受信コイルが系統毎に直列接続しているので、識別手段に入力される出力信号数を少なくすることができる。これにより、識別手段において取り扱う識別データ数が少なくなるので簡略化した構成で硬貨の識別を行うことができる。
【0011】
本発明の好適な態様の一例として、請求項4では、請求項3記載の硬貨識別装置において、前記第2受信コイルは、第1受信コイルの周回中心線を通り硬貨の移動方向と平行な線を基準として非線対称となるように配置され、且つ、前記平行線を基準として2つに系統分けされていることを特徴とするものを提案する。
【0012】
本発明によれば、第2受信コイルが第1受信コイルの周回中心を通り硬貨の移動方向と平行な線を基準として非線対称となっており、この平行線を基準として前記系統分けがなされているので、系統毎に同様の信号を出力することを防ぐことができる。すなわち、重複データの発生を防ぐことができるので高精度の識別を行うことができる。
【0013】
さらに、本発明の好適な態様の一例として、請求項5では、請求項1〜4何れか1項記載の硬貨識別装置において、前記受信コイルは、励磁コイルの周回軸と第1受信コイルの周回軸が互いにずれて配置されていることを特徴とするものを提案する。
【0014】
本発明によれば、幾つかの第2受信コイルが同様の信号を出力することを防ぐことができる。すなわち、重複データの発生を防ぐことができるので高精度の識別を行うことができる。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明の一実施の形態に係る硬貨識別装置について図1〜図4を参照して説明する。図1は硬貨識別装置の励磁コイル部及び受信コイル部の構成についての説明図、図2は受信コイル部を通路側から見た正面図、図3は受信コイル部の配置を説明する図、図4は硬貨識別装置の回路構成を示すブロック図である。
【0016】
この硬貨識別装置は、図1に示すように、硬貨1が移動する硬貨通路2を挟んで一側部に配置した励磁コイル部10と、他側部に配置した受信コイル部20とを備えている。硬貨通路2は、図1における紙面を貫く方向に傾斜を設けて延びており、硬貨1はこの傾斜に沿って硬貨通路2を転がり移動する。
【0017】
励磁コイル部10は、ポットコア型の励磁コイル用磁心11と、励磁コイル用磁心11の軸11aに巻回された励磁コイル12を有している。励磁コイル部10は、励磁コイル12の周回中心軸が硬貨通路2を移動する硬貨1の表面と直交する方向となるとように配置されている。また励磁コイル部10は、励磁コイル12の周回中心軸が、識別対象となる最小径の硬貨1の中心位置を貫くような高さ位置に配置されている。
【0018】
受信コイル部20は、受信コイル用磁心21と、受信コイル用磁心21に巻回された第1受信コイル22及び第2受信コイル23〜30とを有している。受信コイル用磁心21は、円板状の基台21aと、基台21aの中心から突出した中心磁心21bと、基台21aの周縁部に等間隔に配置され前記中心磁心21bと同方向に突出するとともに中心磁心21bよりも径の小さい複数の周縁磁心21c〜21jとを一体的に形成した高透磁率のものである。第1受信コイル22は、中心磁心21bに巻回されている。第2受信コイル23〜30は、それぞれ周縁磁心21c〜21jに巻回されている。第2受信コイル23〜30は、図2において第1受信コイル22の中心を通る紙面水平線を基準として線対称に配置されている。しかしながら、図3に示すように、硬貨通路2の底面2aは傾斜しているので、第1受信コイル22の中心を通り底面2aと平行な線を基準とすると非線対称となっている。また、各受信コイル22〜30は、識別対象となる最小径の硬貨2の径内に収まるように配置されている。また、受信コイル部20は、励磁コイル部10と同様に、各受信コイル22〜30の周回中心軸が硬貨通路2を移動する硬貨1の表面と直交する方向となるとように配置されている。さらに、受信コイル部20は、第1受信コイル22の周回中心軸が、励磁コイル12の周回中心軸よりもややずれて配置されている。本実施の形態では紙面上側に3mm程度ずらして配置した。
【0019】
図4に示すように、励磁コイル10には、所定周波数の交流を発生する発振器40が接続されている。発振器40の周波数としては例えば70kHz程度である。この発振器40の駆動により励磁コイル20の周囲には交流磁界が生じる。ここで、励磁コイル部10の磁心11はポットコア型であるので発生した磁界は硬貨通路2側に集中する。この交流磁界は受信コイル部20と結合し、第1受信コイル22、第2受信コイル23〜30に誘導起電力が生じる。
【0020】
第2受信コイル23〜30は、2系統に分かれており各系統毎に直列同相接続されている。すなわち、図2における第1受信コイル22の中心よりも上側に配置されている第2受信コイル23〜26が直列同相接続され、下側に配置されている第2受信コイル27〜30が直列同相接続されている。図3を参照して前述したように、第2受信コイル23〜26と第2受信コイル27〜30は、第1受信コイル22の中心を通り底面2aと平行な線を基準とすると非線対称となっている。このため、各系統毎の出力信号は互いに異なる値を出力することになる。また、第2受信コイル23〜30の出力信号は、第1受信コイル22と比較して硬貨1の検出面積が小さいことから硬貨外周部の凹凸に対して敏感に反応する。第1受信コイル22、直列同相接続された第2受信コイル23〜26、直列同相接続された第2受信コイル27〜30からの計3系統の出力信号は、それぞれ増幅回路41a〜41c、平滑回路42a〜42c、A/D変換回路43を介して識別部44に入力される。
【0021】
識別部44は、比較部44aと識別データ記憶部44bを有している。比較部44aは、A/D変換回路43の出力データが常時入力されており、系統毎の出力データを所定の時間間隔をもって識別データ記憶部44bに上書き更新する。一方、比較部44aは、A/D変換回路43からの出力信号がピーク値となったか否かを検出する。また、比較部44aは、ピーク値を検出した時における識別データ記憶部44bに記憶されている各系統についてのデータを識別データとして用いる。他方、識別データ記憶部44bには、識別対象となる正貨の識別データが予め記憶されている。比較部44aは、前記ピーク値を検出した際に、A/D変換回路43から得られた識別データと予め記憶されている正貨の識別データとを比較し、投入された硬貨1の種別や正貨か偽貨であるかなどを識別する。
【0022】
このような硬貨識別装置を用いた硬貨識別について図5のグラフを参照して説明する。図5は、平滑回路から出力される各系統毎の出力信号を示すグラフである。図5では、縦軸に電圧を、横軸に時間をとっている。また、図5では、S1は第2受信コイル23〜26からなる第1の系統出力を表し、S2は第1受信コイル22からなる第2の系統出力を表し、S3は第2受信コイル27〜30からなる第3の系統出力を表している。
【0023】
硬貨識別装置に硬貨1が投入されていた状態では、励磁コイル部10により形成された交流磁界に誘導され、各系統には所定の信号が出力される。投入された硬貨1が交流磁界を通過すると硬貨1に渦電流が発生し、これにより磁界強度が変動する。そして、該磁界変動に伴い各系統毎の出力は図5のグラフのように変動する。
【0024】
識別部40は、第1の系統出力S1の最小値Apを検出すると、その時に識別データ記憶部40bに記憶されている各系統の識別データA1,B1,C1及び当該最小値Apを識別データとしてデータ記憶部に記憶しておく。同様にして、第2の系統出力S2の最小値Bpを検出すると、その時に識別データ記憶部40bに記憶されている各系統の識別データA2,B2,C2及び当該最小値Bpを識別データとしてデータ記憶部に記憶し、第3の系統出力S3の最小値Cpを検出すると、その時に識別データ記憶部40bに記憶されている各系統の識別データA3,B3,C3及び当該最小値Cpを識別データとしてデータ記憶部に記憶する。以上により計12個の識別データが得られる。一方、識別データ記憶部40bには、同様にして得た正貨についての識別データが予め記憶されている。比較部40aは、硬貨1の通過により得られた12個の識別データと、予め記憶されている識別データを比較することにより、硬貨1の種別等を識別する。
【0025】
このように本実施の形態に係る硬貨識別装置では、受信コイル部20が第1受信コイル22と複数の第2受信コイル23〜30とからなるととともに、第2受信コイル23〜30は第1受信コイル22を中心として最小識別対象硬貨の径よりも小さい環状に配置されているので、特に輪郭部における硬貨の特徴を精度良く検出することができる。また、第2受信コイル23〜30が第1受信コイル22の周回中心を通り硬貨の移動方向と平行な線を基準として非線対称となっているので、幾つかの第2受信コイルが同様の信号を出力することを防ぐことができる。すなわち、重複データの発生を防ぐことができるので高精度の識別を行うことができる。
【0026】
さらに、複数の第2受信コイル23〜30が系統毎に直列同相接続しているので、識別部40に入力される出力信号数を少なくすることができる。これにより、識別部40において取り扱う識別データ数が少なくなるので簡略化した構成で硬貨の識別を行うことができる。さらに、励磁コイル12の周回軸と第1受信コイル22の周回軸が互いにずれて配置されているので、系統毎に直列接続された第2受信コイル23〜30の出力信号は互いに異なった特性を有する。したがって、さらに精度良く硬貨の特徴を検出することができる。
【0027】
なお、本実施の形態では、8つの第2受信コイル23〜30を第1受信コイル22を中心として環状に等間隔で配置したが、本発明はこれに限定されるものではない。7つ以下又は9つ以上の第2受信コイルを配置するようにしても良い。また、第2受信コイルは、等間隔とならなくても良い。さらに、第2受信コイルを結ぶ線が楕円や歪んだ円になるように配置しても良い。
【0028】
また、本実施の形態では、8つの第2受信コイル23〜30を、第2受信コイル23〜26及び第2受信コイル27〜30の2系統に分け、それぞれ系統毎に直列同相接続したが、本発明はこれに限定されるものではない。3系統以上に分けてもよく、また、直列同相接続ではなく直列逆相接続としてもよい。
【0029】
さらに、本実施の形態では、硬貨を斜めに傾斜させた硬貨通路を転がり移動させたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、硬貨を鉛直方向に落下移動させたり、ベルトなどに載置して移動させても良い。
【0030】
【発明の効果】
以上詳述したように、請求項1の発明によれば、受信コイルが第1受信コイルと複数の第2受信コイルとからなるととともに、第2受信コイルは第1受信コイルを中心として環状に、且つ、最小識別対象硬貨の径内に収まるように配置されているので、特に輪郭部における硬貨の特徴を精度良く検出することができる。
【0031】
また、請求項2の発明によれば、第2受信コイルが第1受信コイルの周回中心を通り硬貨の移動方向と平行な線を基準として非線対称となっているので、幾つかの第2受信コイルが同様の信号を出力することを防ぐことができる。すなわち、重複データの発生を防ぐことができるので高精度の識別を行うことができる。
【0032】
さらに、請求項3の発明によれば、複数の第2受信コイルが系統毎に直列接続しているので、識別手段に入力される出力信号数を少なくすることができる。これにより、識別手段において取り扱う識別データ数が少なくなるので簡略化した構成で硬貨の識別を行うことができる。
【0033】
さらに、請求項4の発明によれば、第2受信コイルが第1受信コイルの周回中心を通り硬貨の移動方向と平行な線を基準として非線対称となっており、この平行線を基準として前記系統分けがなされているので、系統毎に同様の信号を出力することを防ぐことができる。すなわち、重複データの発生を防ぐことができるので高精度の識別を行うことができる。
【0034】
さらに、請求項5の発明によれば、幾つかの第2受信コイルが同様の信号を出力することを防ぐことができる。すなわち、重複データの発生を防ぐことができるので高精度の識別を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】硬貨識別装置の励磁コイル部及び受信コイル部の構成についての説明図
【図2】受信コイル部を通路側から見た正面図
【図3】受信コイル部の配置を説明する図
【図4】硬貨識別装置の回路構成を示すブロック図
【図5】平滑回路から出力される各系統毎の出力信号を示すグラフ
【符号の説明】
1…硬貨、2…硬貨通路、10…励磁コイル部、11…励磁コイル用磁心、12…励磁コイル、20…受信コイル部、21…受信コイル用磁心、22…第1受信コイル、23〜30…第2受信コイル
Claims (5)
- 硬貨通路の一側部に配置され該硬貨通路を移動する硬貨に交流磁界を印加する励磁コイルと、硬貨通路の他側部に配置され励磁コイルと磁界結合する受信コイルと、励磁コイルと受信コイルとの間の磁界中を硬貨が移動した際に前記受信コイルから出力される信号に基づいて硬貨を識別する識別手段とを備えた硬貨識別装置において、
前記受信コイルは、第1受信コイルと、コイルの周回軸方向が第1受信コイルと共通で、且つ、第1受信コイルを中心として環状に配置された複数の第2受信コイルとからなり、
前記複数の第2の受信コイルは、最小識別対象硬貨の径内に収まるように配置されている
ことを特徴とする硬貨識別装置。 - 前記第2受信コイルは、第1受信コイルの周回中心線を通り硬貨の移動方向と平行な線を基準として非線対称となるように配置されている
ことを特徴とする請求項1記載の硬貨識別装置。 - 前記第2受信コイルは、複数の系統毎に直列接続され、
前記識別手段は、第1受信コイルから出力される信号と、前記直列接続された第2受信コイルから系統毎に出力される複数の信号に基づいて硬貨を識別する
ことを特徴とする請求項1又は2何れか1項記載の硬貨識別装置。 - 前記第2受信コイルは、第1受信コイルの周回中心線を通り硬貨の移動方向と平行な線を基準として非線対称となるように配置され、且つ、前記平行線を基準として2つに系統分けされている
ことを特徴とする請求項3記載の硬貨識別装置。 - 前記受信コイルは、励磁コイルの周回軸と第1受信コイルの周回軸が互いにずれて配置されている
ことを特徴とする請求項1〜4何れか1項記載の硬貨識別装置。
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