JP3608059B2 - 化粧料 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は本化粧料が、健全な皮膚常在菌叢の維持・増進をはかり、その皮膚常在細菌が分泌するSOD様活性物質を高めることにより皮膚に大敵である皮膚表面の活性酸素を分解除去し、整肌、皮膚老化防止に役立つ化粧料、皮膚外用剤としての利用が期待される。
【0002】
【従来の技術】
生体にとって有害な活性酸素はOを代謝系に用いる生物に於いて恒常的に産生されるが、活性酸素の一種であるスーパーオキサイドアニオン(O )の不均化反応を触媒するSODは代表的な抗酸化酵素であり、この酵素活性により細胞はその酸素傷害から守られているといわれる。皮膚の健康科学においても、この活性酸素が太陽光紫外線による皮膚脂質酸化に介在し、皮膚老化の加速、また、肌のトラブルへの関与が注目され、SOD活性物質の化粧料、或いは、皮膚外用剤への応用が提案されてきた。(特開平1−96107)
【0003】
しかし、動物、あるいは、植物、微生物から精製される天然物由来SOD、あるいは、DNA組替体由来SODは、製造コストの上から、また、製剤の中での保存安定性など品質管理上からも問題を残していた。
【0004】
最近、皮膚表面に生息する皮膚常在細菌で好気的に生育する菌は、酸素に強く、また、直接太陽の紫外線をうけることから活性酸素に暴露されることが多く高い抗酸化能をもっていることが示唆されている。実際、代表的好気性常在細菌で最優勢菌スタフィロコッカス・エピデルミデスは、その培養液、或いは、その培養菌体破砕物が抗酸化性を示すことから、それらを配合する化粧品、外用剤の提案もなされている。(特開平6−271851)しかし、製剤としての不安定性において問題が残っていた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記のごとく、SODあるいは培養抗酸化性物質を化粧料に直接配合すると、臭いや色さらに使用時のSOD活性の保存安定性など品質管理上の問題解決が課題として残っていた。このようにSODおよび抗酸化物質の整肌作用に永年注目されてきたにもかかわらず化粧料への配合応用はまだ解決すべき点が多く残されている。本発明は、SOD或いはSOD様活性物質を常に皮膚の上で安定的に発現確保できるよう、直接化粧料に配合するのではなく、健常人の皮膚上に最も多く生育している有用な皮膚常在菌のSOD活性を効率よく分泌させる作用物質を配合することにより、皮膚の老化防止効果及び整肌作用を示す安価で安全な皮膚抗酸化性化粧料を提供することにある。
【0006】
特に、健康なヒトの皮膚の上で好気性菌として最優勢のものは、スタフィロコッカス・エピデルミデスで1×10個/cm程度で安定的常在皮膚細菌叢を形成している。このスタフィロコッカス・エピデルミデスは高い抗酸化能により皮膚表面に定着増殖し、SOD様活性物質を菌体外に分泌し、その結果紫外線などにより生じた皮膚上のO を消去して皮膚傷害を防止し、皮膚の健康度を増し、他細菌の感染を防止する役割などを果たしていると考えられている。実際、アトピー性皮膚炎等の傷害をもつ皮膚(荒れた肌)あるいは乾燥した肌では皮膚細菌フローラのバランスが崩れ、スタフィロコッカス・アウレウスやミクロコッカス属に属する有害菌が高い割合で見られる。優勢菌としてのスタフィロコッカス・エピデルミデスは、上記有害菌の増殖を抑制するので、軽度の皮膚傷害はスタフィロコッカス・エピデルミデスを選択的に増殖させることのできる化粧料を提供することによって、病原菌の増殖を抑制し皮膚傷害の改善効果を期待することも可能となる。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記問題を解決するために鋭意研究を重ね、スタフィロコッカス・エピデルミデスの菌体外SOD様比活性を高め、また貧栄養培地においても金属イオンであるマンガンと亜鉛を添加する事により同菌を短時間で増殖させ、長期間菌体外SOD様活性物質を維持されることができることを見出し本発明をするに至った。
【0008】
すなわち、本発明は皮膚上に常在するスタフィロコッカス・エピデルミデスを短期間で増殖させ、菌体外SOD様比活性を高めることのできる物質を配合する化粧料である。また、この化粧料は、皮膚細菌叢の正常化及びその菌体外分泌SOD様活性物質の活性を高めることによる整肌を達成する安定性の高い、安全な化粧料である。
本発明におけるスタフィロコッカス・エピデルミデスを短期間で増殖させ、菌体外SOD様比活性を高めることのできる物質としてのマンガンイオンの濃度範囲は、0.1〜10mMが、最適であり、亜鉛イオンは、0.1〜1mMが最適である。
本発明をよりよく説明するため、以下に実施例を記述する。
【0009】
(1)本発明の実効性を証明するため用いる微生物は、以下の実施例に用いられたごとく、健常人の皮膚に生息する代表的皮膚常在菌であるスタフィロコッカス・エピデルミデスであるか、あるいは、皮膚有害菌の代表としてスタフィロコッカス・アウレウス菌である。しかし、本発明を実施するため用いる細菌は、皮膚に存在する細菌として通過性のものも含めていずれの菌種、菌株を問わず用いる事が出来る。
【0010】
(2)本発明の実効性を証明するため用いた培地は、通常の富栄養培地だけでなく、金属イオン要求性を調べるため最小発育培地も用いた。すなわち、最小発育培地では、エネルギー源としてグルコース及び酵母エキスを添加し、pH調製のため炭酸カルシウムを添加したものを基礎培地とした。細菌の金属要求性は知られているが、あらかじめSODの活性中心となるマンガンをはじめとする数種類の金属イオンについて基礎培地に添加し、発育阻害の起こらない濃度を検討した。したがって、本発明において用いる最小発育培地は細菌類の生育可能な最少濃度の金属を添加したものと定義される。
【0011】
(3)本発明の実効性を証明するため用いた細菌の培養法は、上記菌株及び培地を用い、細菌を37℃の好気的条件下でロータリーシェーカー(120rpm)で培養した。
【0012】
(4)本発明の実効性を証明するため用いた試料調製法は、以下の通りである。まず、上記培地で十分に発育した菌を、冷却高速遠心機(佐久間製作所製)で10000rpm、10分、4℃にて菌体と培養上清に分離。ついで、培養上清のSOD活性測定にあたり以下のように濃縮した。培養上清に冷アセトンを最終濃度75%となるよう添加して−20℃冷凍庫に静置し、形成した沈殿物を冷却遠心分離機によって分離回収し、少量の精製水に溶解し凍結乾燥を行い、アセトン粉末試料を得た。この粉末体を精製水で溶解したものを菌体外分泌性成分試料とした。
【0013】
(5)本発明の実効性を証明するため用いたSOD様活性物質の測定として、ニトロブルーテトラゾリウム(NBT)法を用いた。この測定法は数ある測定法の中で比較的簡便で、感度が高く、ngオーダーまで検出が可能である。キサンチンオキシダーゼによりO を発生させ、O によるニトロブルーテトラゾリウムの発色度を波長560nmの吸光度で測定するものである。SODの存在によりO が不均化されるとNBTの発色阻害が起こり、この阻害率からSOD活性が求められる。この方法を用いて菌体外に分泌されるSOD様活性物質が培養上清試料のアセトン濃縮処理と併せ用いることにより高い感度で測定が可能となった。
【0014】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。しかし、本発明の範囲は以下の実施例に制限されるものではない。
【0015】
【実施例】
実験例1 スタフィロコッカス・エピデルミデスの発育に及ぼす金属イオンの影響について:
一連の実験に用いた基礎培地は、デイビス培地(リン酸水素二ナトリウム12水和物, 8g;リン酸二水素カリウム, 2g;クエン酸ナトリウム, 0.5g; 硫酸マグネシウム7水和物, 0.1g; 硫酸アンモニア, 1g; グルコース,0.5g/蒸留水 1リットル (pH7))に酵母エキス 0.1%及び炭酸カルシウムを1%添加したものを用いた。接種菌1×10個/mlとし、培養は37℃の恒温槽で行った。実験に用いた金属は硫酸銅、硫酸亜鉛、塩化マンガン、酸化亜鉛、硫酸第一鉄であり、濃度はそれぞれ 100μM,1mM,10mMとし、培養開始前に添加した。24時間の培養後標準寒天プレートに培養液を塗布し定法により生菌数を計測した。その結果を表1に示す。
【表1】
Figure 0003608059
【0016】
表1に示すごとく、塩化マンガン及び硫酸亜鉛、酸化亜鉛、硫酸第一鉄に発育促進効果が見られた。
【0017】
実験例2 皮膚から分離した菌に対する酸化亜鉛と塩化マンガンの生育促進及び阻害効果について:
実験例1においてスタフィロコッカス・エピデルミデス培養上清のSOD様活性物質を測定した結果、硫酸亜鉛及び塩化マンガンを添加した実験群が対照群より高い値を示したため、この2価金属イオンに注目した。このとき硫酸亜鉛に対して化粧品に広く用いられている酸化亜鉛を用い、硫酸第一鉄は酸化して変色し、皮膚に悪影響を及ぼす可能性があるので除外した。したがって酸化亜鉛及び塩化マンガンを添加した培地を用いてスタフィロコッカス・エピデルミデスの増殖曲線を検討した。両金属濃度は100μMとし、接種菌量は1×10個/mlとした。その結果を図1に示す。
【0018】
図1に示すごとく、酸化亜鉛及び塩化マンガンとの混合物においてスタフィロコッカス・エピデルミデスの増殖率に顕著な増大が認められた。
【0019】
また、スタフィロコッカス・エピデルミデス以外の皮膚常在菌についても同様な実験を行った。代表的なものとしてスタフィロコッカス・アウレウスIDD671株を用いて前述と同様な実験を行い、菌数の変化は波長595nmの吸光度で測定した。結果は図2に示す。
【0020】
図2に示すごとく、有害病原菌であるスタフィロコッカス・アウレウスは、有用常在細菌スタフィロコッカス・エピデルミデスと異なり、添加された酸化亜鉛、塩化マンガンによって特段の生育促進は認められず、また、阻害も認められなかった。
【0021】
実験例3 スタフィロコッカス・エピデルミデスの菌体外SOD様活性に及ぼす酸化亜鉛、塩化マンガンの影響:
次に、実験例1で見出された菌体外SOD様比活性の酸化亜鉛、塩化マンガンの添加で増加する現象が培養時間と関係あるか以下のごとく調べた。培養は実験例1と同様な条件で行い、SOD様活性は時間経過を追って測定した。各実験群につき試料数は3とし、平均値と標準偏差を算出した。以下に実験例3の実験方法についてさらに詳細説明する。
【0022】
試料調製法:試料の調整は培養は100mlのフラスコに50mlの培養液のスケールで行い、各時間毎に5mlずつサンプリングした。培養液はただちに遠心分離(10,000rpm,4℃,10分)して菌体と上清に分けた。集めた上清を氷冷し、−20℃のアセトンを終濃度75%になるように攪拌しながら添加して氷冷中で2時間放置する。そのあと再び遠心分離(10,000rpm,4℃,10分)して沈澱物を収集した。沈澱物を少量の精製水に溶解し、−80℃で凍結させ凍結乾燥を行い、アセトンを除去する。得られた乾燥粉末を精製水で溶解したものをサンプルとして用い、タンパク定量及びSOD様活性の測定を行った。
【0023】
タンパク定量法:タンパク質の定量にはLowry法を用いた。タンパク質を10〜100μgを含む試料 0.4 mlを試験管にとり、アルカリ銅溶液(1%硫酸銅1mlと2%ロッシェル塩1mlの混合液を2%炭酸ナトリウム, 0.1N 水酸化ナトリウム 100 mlに添加したもの)を2 ml添加して攪拌し、室温で10分間放置する。その後直ちに1Nフェノール試薬を0.2 ml添加攪拌した後、室温で30分間放置する。30分後に 750 nm で比色定量した。牛血清アルブミン(BSA、SIGMA社製)を標準液とした。
【0024】
SOD様活性物質の測定法:試験管に試料を50 μlをとり XOD(キサンチンオキシダーゼ)液(XODを0.5M硫酸アンモニウム,EDTA−2Na 1 mM溶液に溶解して−20℃に保存しておき、使用直前に溶解し、1分あたりのOD560nmの変化が0.0185になるように希釈したもの)を50μl添加し、攪拌せずに25℃水浴下に10分間おく。25℃に加温しておいたA液(0.1 mM キサンチン、 0.025 mM ニトロブルーテトラゾリウム、 0.1 mM EDTA−2Na、50 mM 炭酸ナトリウム緩衝液(pH10.2))を2.85 ml添加後、直ちに攪拌し、25℃水浴下で5分間おいた後、塩化銅溶液(0.2% CuCl・HO)を50μl添加して攪拌し、560nmで比色定量する。対照には試料の代わりに精製水を添加し、ブランクは試料及びXOD液を除いた0.2M硫酸アンモニウム溶液のみで測定した。SOD活性は吸光度変化が50%阻害されるときを1単位(U)と定義し、以下の計算式によって算出した。
SOD (U/ml)=[(対照OD − ブランクOD)/(試料OD − ブランクOD)−1]×20
【0025】
その結果を表2に示す。
【表2】
Figure 0003608059
【0026】
表2のごとく、酸化亜鉛及び塩化マンガンを単独あるいは混合し添加すると、培養初期において顕著な菌体外SOD比活性の増大が認められる結果を得た。
【0027】
実施例1 皮膚刺激性テスト(安全性について):
以上の結果にもとずいて、マンガン及び亜鉛を配合した化粧料の刺激性テストを行った。 化粧料の配合例として以下(表3)の溶液を濾紙に20μl浸み込ませ、成人男子(n=1)の前腕内側部皮膚上にテープで閉鎖貼布し、24時間後の皮膚刺激性について観察を行い、表4に示す結果を得た。
【0028】
【表3】
Figure 0003608059
【0029】
サンプル番号1,2は、マンガンと亜鉛の配合剤及び炭酸カルシウムの刺激性について調べるため、サンプル番号3は対照として作成した。肉眼による判定は、赤斑の観察及び刺激性は全く認められず安全性になんら問題はなかった。
【0030】
【表4】
Figure 0003608059
【0031】
次に、この発明にかかる化粧料の処方例を例示する。配合割合はすべて重量%で示す。なお、この発明は以下の処方例にかかる化粧料になんら限定されないのは言うまでもない。
【0032】
実施例2 化粧水の組成
【表5】
Figure 0003608059
【0033】
実施例3 カラミンローションの組成
【表6】
Figure 0003608059
【0034】
実施例4 スキンローションの組成
【表7】
Figure 0003608059
【0035】
実施例5 スキンクリームの組成
【表8】
Figure 0003608059
【0036】
【発明の効果】
本発明による金属イオンの亜鉛とマンガンを適量含有する化粧料を用いることにより、皮膚有用常在細菌叢の健全な育成と菌体からのSOD様活性物質分泌が促進され、皮膚有害菌の生育阻止、皮膚細胞の活性酸素傷害防止、皮膚細胞老化防止などの効果が期待される。
【図面の簡単な説明】
【図1】スタフィロコッカス・エピデルミデスの発育に及ぼす金属イオンの影響を示す図である。
【図2】スタフィロコッカス・アウレウスに対する酸化亜鉛と塩化マンガンの生育促進及び阻害効果を示す図である。

Claims (1)

  1. 皮膚上に常在するスタフィロコッカス・エピデルミデスの発育を増進させ、且つ当該菌体が生産分泌するスーパーオキサイド・ジスムターゼ(SOD)様活性物質の分泌を高める為の成分として0.1〜10mMの濃度範囲のマンガンイオン及び0.1〜1mMの濃度範囲の亜鉛イオンを含有する化粧料。
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