JP3607885B2 - 連鋳機制御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ビレット鋳造用小断面モールドの連続鋳造プロセスにおけるモールド溶鋼レベルと鋳造速度とを同時に制御するための連鋳機制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
スラブやブルームの連続鋳造プロセスでは、鋳造速度は操業条件から定まる一定の速度で鋳造され、タンディッシュストッパーを操作端として用いるモールド溶鋼レベル制御に悪影響を及ぼさないようなシステム構成となっており、小断面モールドの連続鋳造プロセスでは、鋳造速度を操作端としてモールド溶鋼レベル制御が行われている一方、その定常的な速度はタンディッシュからモールドヘの注入流量を制御する装置は用いず、浸漬ノズル径とタンディッシュ重量により定まる注入流量速度により必然的決められている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、溶鋼に含まれる介在物などが浸漬ノズルに付着するなどして注入流速が抑制されると、要求される鋳造速度の維持が困難となる場合が生ずる。一方、内質要求から軽圧下を行う必要がある場合は、適正な鋳造速度を確保することは、適正なシェル厚み時にタイミングよく圧下をかけることにより良好な品質を作り込む上で必須の条件となる。また、極端な場合にはノズルが完全に閉塞し、鋳造中止を余儀なくされる場合もある。そこで、浸漬ノズル径を広げ、ストッパーを用いた注入速度の調整を行う必要が生ずるが、小断面モールドでは微妙なタンディッシュストッパーの変位がモールド溶鋼レベルに大きな影響を与えるため、容易にタンディッシュストッパーにより注入流速を制御することは困難である。
【0004】
従って、本発明の目的は、モールド溶鋼レベルを安定に保ちつつ、タンディッシュストッパーにより鋳造速度の直流分を目標通りに制御し、良好な品質を確保することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するための本発明は、ビレット鋳造用小断面モールド内の溶融金属のレベルを連続的に検出するモールドレベル計と、鋳片の引抜き速度を検出する鋳造速度計と、鋳片を引き抜くピンチロールの速度を制御するピンチロール速度制御装置と、タンディッシュからモールドへ流入する溶鋼量を調整するタンディッシュストッパー及びその制御装置と、該モールドレベル計により検出されるモールドレベル信号とモールドレベル目標信号とを入力とし、該ピンチロール速度制御装置に対し速度指令を出力するモールドレベル制御装置と、該鋳片速度計により検出される鋳造速度信号と鋳造速度指令信号とを入力とし、該タンディッシュストッパー制御装置への開度指令を出力する鋳造速度制御装置とを具備することを特徴とする連鋳機制御装置である。
【0006】
即ち課題を解決するために、本発明では、以下の様に従来技術である鋳造速度を調整することによりモールド溶鋼レベルを制御するレベル制御ループに、新たに、ストッパー開度を調整することにより鋳造速度を制御する速度制御ループを設け、これらを併存させることにより、注入あるいは引抜き外乱によるレベル変動に対し、従来の鋳造速度による直接的レベル調整作用に加え、レベルを調整するために操作した鋳造速度をフィードバックしたストッパーにより、直接的には鋳造速度を制御しつつ、間接的にはレベルを調整する作用をもたせることにより、モールドレベル及び鋳造速度の同時制御を実現している。つまり、ストッパーを動作させるための鋳造速度フィードバック信号には、鋳造速度情報のみならず、モールドレベル情報を含ませる構成をとることにより、無理なく両者の制御を行えるようにしている。(本発明のシステム構成では鋳造速度信号をレベル信号にPI動作及びピンチロール速度系動特性というフィルタを通した信号という見方もできる。また、速度信号に対するストッパーの動作方向はレベルに対するものと同じである。)
このレベル制御ループ及び速度制御ループが、相互干渉しないよう、周波数軸上でそれぞれの制御ループの制御帯域を分離する。つまり、レベル制御ループにおいて操作量である鋳造速度変更が、もう一方の速度制御ループにおいて外乱とならない様、速度制御ループの制御帯域を低くし、これにより、鋳造速度制御ループの操作量であるストッパー開度変更の影響が、レベルに対する外乱となることを防ぐとともに、鋳造速度の直流分を目標の鋳造速度に維持することを可能とする。
【0007】
更に、上記のようにモールドレベル制御という意味では鋳造速度及びストッパーの両アクチュエータが動作するため、レベル制御ゲインは、レベル制御ループ及び速度制御ループの両制御ループゲインを総合的に考慮して設定する必要がある。そのため、ゲイン調整装置により、系全体としてみた見たレベル制御ゲインが適正な値となるよう調整を行う。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面により詳細に説明する。図1は、本発明のモールドレベル制御装置、鋳造速度制御装置及び制御対象の全体を示す略図である。
図1において、本発明の装置は、小断面モールド13内の溶鋼レベルを連続的に検出するモールドレベル計1からのモールドレベル信号14を、PID制御装置などのモールドレベル制御装置3に入力し、その演算出力をピンチロール駆動制御装置8の入力指令として、ピンチロール9を駆動することにより、モールドレベルのフィードバック制御ループを構成し、モールド溶鋼レベル制御を実現する。
【0009】
また、ロールの回転速度を検出することにより、引き抜き速度を連続的に検出する鋳造速度計2からの鋳造速度信号15を、ロウパスフィルタ6を介して、PID制御装置などの鋳造速度制御装置4に入力し、その演算出力をストッパー駆動制御装置7の入力指令として、ステッピングシリング10を介してストッパー11を駆動することにより、鋳造速度のフィードバック制御ループを構成し、鋳造速度制御を実現する。
【0010】
ここで、モールドレベル制御ループと鋳造速度制御ループとが共振現象を起こさないよう、両制御ループの周波数帯域をロウパスフィルタ6により分離するとともに、制御ゲイン調整装置5によりトータルの制御ループゲインを適正に保つ。つまり、本制御構成ではモールドレベルを低周波域では、鋳造速度制御ループの働きを介して、注入量制御により、高周波域では直接ピンチロール操作による、引き抜き量制御により行われることとなる。従って、低周波域で動作するストッパーと高周波域で動作するピンチロールの両アクチュエータの動作帯域が周波数軸上で、しっかり分離されていることが共振現象を回避するために必要となる。そのため、ストッパーの動作帯域を低周波域に限定すべく、鋳造速度信号15の高周波成分をロウパスフィルタ6によりカットし、それを実現している。この際、両アクチュエータの動作帯域分離周波数は、次のように決定する。つまり、分離周波数を無闇に高くしようとすると、共振が起こるので、ストッパーにより鋳造速度制御側が行われることから、鋳造速度制御の必要帯域を確保できる程度に抑えることが必要となる。これは鋳造速度制御における主要な外乱と考えられるタンディッシュ12の重量変化に対し、抑制可能な帯域を考えれば十分であると思われる。
【0011】
次に、制御ゲイン調整装置5の基本的な働きを、鋳造速度制御ループのレベル制御ゲインヘの寄与分を考慮することにより示す。(ここでは積分、微分作用は無視して考える。)レベル制御の比例ゲインをKp level[mm/sec/mm] ,鋳造速度制御ループの比例ゲインをKp speed[mm/mm/sec] とすると、レベルの1mm変化に対する速度変更量はKp level[mm/sec]となり、これに伴うストッパーへの動作指令はKp speed・Kp level[mm]となり、ストッパーの流量係数をKf[mm/sec/mm] とすると、レベル速度に換算した注入速度はKp speed・Kp level・Kf[mm/sec]となり、元々のレベル制御装置からの指令による鋳造速度変更量Kp level[mm/sec]と合わせると、Kp level・(1+Kp speed・Kf) [mm/sec]となる。つまり、鋳造速度制御ループが存在することにより、レベル制御ゲインに対し、見かけ上(1+Kp speed・Kf) 倍ゲインがアップしたことになる。従って、レベル制御ループのみが存在する場合の最適ゲイン(性能を出す上での最低限の安定余裕を見込んだある意味での限界ゲイン)がKp level optとすると、Kp levelあるいは、特にKp speedを調整する場合、
Kp level・(1+Kp speed・Kf)=Kp level opt
が常に成り立つよう、両制御ゲインが調整される必要がある。
【0012】
即ち、この機能を担うのが正に、制御ゲイン調整装置5の働きであり、これにより、一方の制御ループのゲイン調整結果が、もう一方の制御性能に影響しない。特に、鋳造速度制御ループゲインKp speed調整の影響がレベル制御性能に影響しない。
【0013】
図2は、本発明により周波数軸上で二つのアクチュエータ動作領域が分離されていることを示す図である。つまり、本制御系においてレベルを調整する上で、ストッパーによる注入操作と鋳造速度による引き抜き操作とが周波数軸上で分離されていることを示すものである。つまり、引き抜きあるいは注入外乱に対して、注入操作あるいは引き抜き操作のどちらにより対応しているかを周波数軸上で示したもので、本制御系における上記のような共振防止効果により、図2に示すごとく、低周波域ではストッパーによる注入量操作により、高周波域では鋳造速度による引き抜き量操作により行われていることが分かる。
【0014】
図3は、本発明により鋳造速度制御及びモールドレベル制御とを同時に実施した場合のタイムチャートを示すもので、本発明による制御を開始した時点より、鋳造速度が目標値を中心に制御されており、更にモールドレベルも安定していることが分かる。
【0015】
【発明の効果】
以上の様に本発明によれば、レベル制御ループにおいて操作量である鋳造速度変更が、もう一方の速度制御ループにおいて外乱とならない様、速度制御ループの制御帯域を低くし、これにより、鋳造速度制御ループの操作量であるストッパー開度変更の影響が、レベルに対する外乱となることを防ぐとともに、鋳造速度の直流分を目標の鋳造速度に維持することを可能とし、適正な鋳造速度を確保し、適正な品質を作り込む上で必須の性能をもたらす点で極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を適用する場合の制御システム全体の概要図である。
【図2】本発明により周波数軸上でアクチュエータ動作領域が分離されていることを示す図である。
【図3】本発明による制御結果を示すタイムチャートである。
【符号の説明】
1:モールドレベル計 2:鋳造速度計
3:モールドレベル制御装置 4:鋳造速度制御装置
5:制御ゲイン調整装置 6:ロウパスフィルタ
7:ストッパー駆動制御装置 8:ピンチロール駆動制御装置
9:ピンチロール 10:ステッピングシリング
11:ストッパー 12:タンディッシュ
13:モールド 14:モールドレベル信号
15:鋳造速度信号
Claims (2)
- ビレット鋳造用小断面モールド内の溶融金属のレベルを連続的に検出するモールドレベル計と、鋳片の引抜き速度を検出する鋳造速度計と、鋳片を引き抜くピンチロールの速度を制御するピンチロール速度制御装置と、タンディッシュからモールドへ流入する溶鋼量を調整するタンディッシュストッパー及びその制御装置と、該モールドレベル計により検出されるモールドレベル信号とモールドレベル目標信号とを入力とし、該ピンチロール速度制御装置に対し速度指令を出力するモールドレベル制御装置と、該鋳片速度計により検出される鋳造速度信号と鋳造速度指令信号とを入力とし、該タンディッシュストッパー制御装置への開度指令を出力する鋳造速度制御装置とを具備する連鋳機制御装置であって、前記モールドレベル制御装置と前記鋳造速度制御装置の両制御装置のゲインを所定の関係を満足するように調整するゲイン調整装置を具備することを特徴とする連鋳機制御装置。
- ビレット鋳造用小断面モールド内の溶融金属のレベルを連続的に検出するモールドレベル計と、鋳片の引抜き速度を検出する鋳造速度計と、鋳片を引き抜くピンチロールの速度を制御するピンチロール速度制御装置と、タンディッシュからモールドへ流入する溶鋼量を調整するタンディッシュストッパー及びその制御装置と、該モールドレベル計により検出されるモールドレベル信号とモールドレベル目標信号とを入力とし、該ピンチロール速度制御装置に対し速度指令を出力するモールドレベル制御装置と、該鋳片速度計により検出される鋳造速度信号を入力として該鋳造速度信号から低域信号を抽出するロウパスフィルタと、該ロウパスフィルタの出力信号と鋳造速度指令信号とを入力とし、該タンディッシュストッパー制御装置への開度指令を出力する鋳造速度制御装置とを具備する連鋳機制御装置であって、前記モールドレベル制御装置と前記鋳造速度制御装置の両制御装置のゲインを所定の関係を満足するように調整するゲイン調整装置を具備することを特徴とする連鋳機制御装置。
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